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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060091
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20220407BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20220407BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
H03F3/45 220
H03F3/68
H03F3/34 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168100
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 君彦
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC12
5J500AC13
5J500AF15
5J500AF17
5J500AH25
5J500AH32
5J500AK01
5J500AM05
5J500AM13
5J500AT03
5J500DP02
(57)【要約】
【課題】差動増幅回路においてオペアンプの性能を維持しつつオフセット電圧又はドリフト電圧を低減する。
【解決手段】差動増幅回路100は、第一及び第二の入力抵抗211,212の出力端の電位差を増幅するオペアンプ22、第一の入力抵抗211の出力端に接続される帰還抵抗23、及び第二の入力抵抗212の出力端に接続される第一の抵抗素子24を有する基礎差動増幅回路20を備える。さらに差動増幅回路100は、オペアンプ22よりもオフセット電圧又はドリフト電圧が小さな高精度オペアンプ31を備え、高精度オペアンプ31は、反転入力端子(-)に第一の入力抵抗211の出力端が接続され、出力端子に第二の入力抵抗212の出力端が接続される。そして高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)には、基準信号Vbとして基礎差動増幅回路20のみの状態におけるオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生ずる電位に相当する電位が入力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの電位信号がそれぞれ入力される第一及び第二の入力抵抗、前記第一及び第二の入力抵抗の出力端の電位差を増幅するオペアンプ、一端に前記第一の入力抵抗の出力端が接続され他端に前記オペアンプの出力端子が接続される帰還抵抗、及び一端に前記第二の入力抵抗の出力端が接続され他端に基準電位が接続される第一の抵抗素子を有する基礎差動増幅回路と、
反転入力端子に前記第一の入力抵抗の出力端が接続されるとともに出力端子に前記第二の入力抵抗の出力端が接続され、前記オペアンプよりもオフセット電圧又はドリフト電圧が小さな高精度オペアンプと、を備え、
前記高精度オペアンプの反転入力端子には、基準信号として前記基礎差動増幅回路のみの状態における前記オペアンプの非反転入力端子に生ずる電位に相当する電位が入力される、
差動増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の差動増幅回路であって、
前記高精度オペアンプの出力端子と前記第二の入力抵抗の出力端との間に第二の抵抗素子を配置した、
差動増幅回路。
【請求項3】
請求項2に記載の差動増幅回路であって、
前記第一の入力抵抗に入力される前記電位信号の周波数の増加に応じて、前記高精度オペアンプにおける出力端子及び反転入力端子の間を通電する通電手段をさらに備える、
差動増幅回路。
【請求項4】
請求項3に記載の差動増幅回路であって、
前記通電手段は、前記高精度オペアンプにおける出力端子及び反転入力端子の間に接続されるコンデンサを含む、
差動増幅回路。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の差動増幅回路であって、
前記第一の入力抵抗の出力端と前記高精度オペアンプの反転入力端子との間に接続される第三の抵抗素子をさらに備え、
前記第三の抵抗素子は、前記第二の抵抗素子に対して同等の抵抗値を持つ、
差動増幅回路。
【請求項6】
請求項5に記載の複合差動増幅回路であって、
前記高精度オペアンプは、前記電位信号の周波数が所定の閾値よりも高い場合は、ボルテージフォロワ回路として調整信号を前記抵抗素子と前記他の抵抗素子とに出力する、
差動増幅回路。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の差動増幅回路であって、
一端が前記第二の入力抵抗の入力端に接続されるとともに他端が前記高精度オペアンプの非反転入力端子に接続される第四の抵抗素子と、
一端が前記第四の抵抗素子の他端に接続されるとともに他端が前記基準電位に接続される第五の抵抗素子と、を備え、
前記第四の抵抗素子及び前記第五の抵抗素子の抵抗値は、前記第四の抵抗素子に対する前記第五の抵抗素子の分圧比が前記第二の入力抵抗に対する前記第一の抵抗素子の分圧比と同等となるように定められる、
差動増幅回路。
【請求項8】
請求項7に記載の差動増幅回路であって、
前記第一の入力抵抗の入力端と前記基準電位との間に介在し、互いに直列接続された前記第四の抵抗素子及び第五の抵抗素子に対して同等の抵抗値を持つ抵抗回路をさらに備える、
差動増幅回路。
【請求項9】
請求項2から8のいずれか一項に記載の差動増幅回路であって、
前記オペアンプは、利得帯域幅積が数MHz以上である高速オペアンプである、
差動増幅回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の差動増幅回路であって、
前記基準信号は、下記の式(1)により定められる、
差動増幅回路。
【数1】
ただし、
Vbは、前記基準信号であり、
V2は、前記第二の入力抵抗に入力される前記電位信号であり、
R1は、前記第二の入力抵抗の抵抗値であり、
R2は、前記第一の抵抗素子の抵抗値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の入力抵抗の出力端の電位差を増幅するオペアンプと、オペアンプの出力端子から一方の入力端子に帰還する経路に配置される帰還抵抗と、オペアンプの他方の入力端子に接続される抵抗素子と、を備える差動増幅回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-25254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような一般的な差動増幅回路においては、オペアンプのオフセット電圧又はドリフト電圧により差動増幅回路の出力信号に誤差が生じてしまう。この対策として、オペアンプよりもオフセット電圧又はドリフト電圧が小さな高精度オペアンプに置き換えたとしても、オフセット電圧又はドリフト電圧は抑えられるものの、高精度オペアンプに置き換えることで利得帯域幅積やスルーレートなどの差動増幅回路の性能が制限されることもある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、差動増幅回路においてオペアンプの性能を維持しつつオフセット電圧又はドリフト電圧を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、差動増幅回路は、二つの電位信号がそれぞれ入力される第一及び第二の入力抵抗、前記第一及び第二の入力抵抗の出力端の電位差を増幅するオペアンプ、第一の入力抵抗の出力端に接続される帰還抵抗、及び第二の入力抵抗の出力端に接続される第一の抵抗素子を有する基礎差動増幅回路を備える。さらに差動増幅回路は、反転入力端子に前記第一の入力抵抗の出力端が接続されるとともに出力端子に前記第二の入力抵抗の出力端が接続され、前記オペアンプよりもオフセット電圧又はドリフト電圧が小さな高精度オペアンプを備える。そして、前記高精度オペアンプの非反転入力端子には、基準信号として前記基礎差動増幅回路のみの状態における前記オペアンプの非反転入力端子に生ずる電位に相当する電位が入力される。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、高精度オペアンプの非反転入力端子に、基礎差動増幅回路のみの状態におけるオペアンプの非反転入力端子に生ずる電位に相当する電位を入力することにより、高精度オペアンプの出力端子にオペアンプのオフセット電圧又はドリフト電圧に相当する差分が得られる。この差分に応じてオペアンプの反転入力端子から高精度オペアンプを経由してオペアンプの非反転入力端子に負帰還がかかるため、オペアンプの入力端子間の電位差が小さくなる。それゆえ、オペアンプの性能を維持しつつオフセット電圧又はドリフト電圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態における差動増幅回路の構成を示す回路図である。
図2図2は、第一実施形態における差動増幅回路を構成する基準信号生成部の詳細構成を示す回路図である。
図3図3は、第二実施形態における差動増幅回路の構成を示す回路図である。
図4図4は、第二実施形態における差動増幅回路を構成する高周波通電部及び基準信号生成部の詳細構成を示す回路図である。
図5A図5Aは、第二実施形態における低周波領域での差動増幅回路の動作を説明するための図である。
図5B図5Bは、第二実施形態における高周波領域での差動増幅回路の動作を説明するための図である。
図6図6は、第二実施形態における差動増幅回路のシミュレーション解析における設定条件を示す図である。
図7図7は、第二実施形態における差動増幅回路のオフセット電圧に関する周波数特性の一例を示す図である。
図8A図8Aは、第二実施形態における差動増幅回路の出力ノイズに関する周波数特性の一例を示す図である。
図8B図8Bは、比較対象として基礎差動増幅回路のみの出力ノイズに関する周波数特性の一例を示す図である。
図9図9は、第二実施形態における差動増幅回路の同相信号除去比に関する周波数特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
【0010】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における差動増幅回路100の構成を示す回路図である。
【0011】
差動増幅回路100は、二つの電位信号の差分を増幅する演算増幅回路であり、一対の入力端子11,12と、基礎差動増幅回路20と、オフセット電圧抑制回路30と、基準信号生成部40と、出力端子50と、を備える。
【0012】
一対の入力端子11,12は、外部から第一及び第二の電位信号V1,V2をそれぞれ入力する。具体的には、第一の入力端子11には第一の電位信号V1が供給され、第二の入力端子12には第二の電位信号V2が供給される。
【0013】
基礎差動増幅回路20は、一対の入力抵抗21と、オペアンプ22と、帰還抵抗23と、第一の抵抗素子24と、を備える。
【0014】
一対の入力抵抗21は、二つの電位信号V1,V2がそれぞれ入力される二つの抵抗素子である。一対の入力抵抗21は、第一の入力抵抗211及び第二の入力抵抗212により構成される。以下では、第一の入力抵抗211及び第二の入力抵抗212は、単に、入力抵抗211及び入力抵抗212と称する。
【0015】
本実施形態における入力抵抗211及び入力抵抗212は、互いに同等の抵抗値R1を持つ。一例として抵抗値R1は、2[kΩ]に設定される。入力抵抗211の一端である入力端は、第一の入力端子11に対して接続され、入力抵抗212の入力端は、第二の入力端子12に対して接続される。
【0016】
オペアンプ22は、第一の入力抵抗211の他端である出力端と第二の入力抵抗212の他端である出力端との間の電位差を増幅する増幅器である。オペアンプ22は、入力抵抗211の出力端に生じる電位が入力される反転入力端子(-)と、入力抵抗212の出力端に生じる電位が入力される非反転入力端子(+)と、反転入力端子(-)及び非反転入力端子(+)間の電位差に基づく差分信号が出力される出力端子と、を有する。
【0017】
本実施形態におけるオペアンプ22は、直流信号又は交流信号に対応する一般的なオペアンプにより構成される。これに代えてオペアンプ22は、例えば利得帯域幅積(Gain Band Width Product)が数[MHz]以上である高速オペアンプにより構成されてもよい。オペアンプ22の利得帯域幅積とは、利得の変動が小さい周波数帯域の上限を表す一つの指標のことである。
【0018】
帰還抵抗23は、オペアンプ22の出力端子から反転入力端子(-)に帰還される電流経路に配置され、入力抵抗211の出力端に接続される抵抗素子である。帰還抵抗23は、オペアンプ22の出力端子と反転入力端子(-)との間に接続され、帰還抵抗23の抵抗値R2を調整することで基礎差動増幅回路20の増幅率が変化する。
【0019】
帰還抵抗23の抵抗値R2は、入力抵抗211,212の抵抗値R1に対して同じ値でもよく異なる値でもよい。本実施形態において帰還抵抗23の抵抗値R2は、入力抵抗211,212の抵抗値R1に対して同じ値、例えば2[kΩ]に設定される。
【0020】
第一の抵抗素子24は、入力抵抗212の出力端に接続される抵抗素子であり、基礎差動増幅回路20の基準となる電位に設定された基準電位9に対して接続される。第一の抵抗素子24の抵抗値を調整することで基礎差動増幅回路20の増幅率が変化する。
【0021】
第一の抵抗素子24の抵抗値は、帰還抵抗23に対して同じ値に設定される。本実施形態において第一の抵抗素子24は、帰還抵抗23に対して同等の抵抗値R2に設定され、基準電位9は、接地電位である0[V]に設定される。
【0022】
このような構成により、基礎差動増幅回路20では、抵抗値R1で抵抗値R2を除して得られる値を示す倍率で、オペアンプ22が第一の電位信号V1から第二の電位信号V2を差し引いて得られる電位差を増幅し、増幅した差分信号を出力端子50に出力する。
【0023】
基礎差動増幅回路20の接続構成については、入力抵抗211の出力端と帰還抵抗23の一端との接点がオペアンプ22の反転入力端子(-)に接続され、オペアンプ22の出力端子と帰還抵抗23の他端との接点が差動増幅回路100の出力端子50に接続される。また、入力抵抗212の出力端と第一の抵抗素子24の一端との接点がオペアンプ22の非反転入力端子(+)に接続され、第一の抵抗素子24の他端が基準電位9に対して接続される。
【0024】
続いて、基礎差動増幅回路20に対して接続されるオフセット電圧抑制回路30の構成について説明する。
【0025】
オフセット電圧抑制回路30は、基礎差動増幅回路20を構成するオペアンプ22のオフセット電圧又はドリフト電圧を小さく補正するための調整回路である。本実施形態におけるオフセット電圧抑制回路30は、高精度オペアンプ31及び第二の抵抗素子32を備える。
【0026】
高精度オペアンプ31は、基礎差動増幅回路20よりもオフセット電圧が小さな増幅器である。本実施形態ではオフセット電圧が小さな増幅器には、オペアンプ22よりもオフセット電圧が小さな増幅器と、オペアンプ22よりもドリフト電圧が小さな増幅器と、が含まれる。
【0027】
高精度オペアンプ31としては、例えば、低オフセットアンプ、ゼロドリフトアンプ、又は低ドリフトアンプが挙げられる。ゼロドリフトアンプは、例えば、オートゼロ方式、チョッパー方式、又はこれらの組合せを採用した一般的な回路構成を有する。
【0028】
なお、上述のような構成を有する高精度オペアンプ31の利得帯域幅積は、オペアンプ22の利得帯域幅積よりも狭くなりやすい。言い換えれば、高精度オペアンプ31の動作周波数範囲は、オペアンプ22の動作周波数範囲よりも狭くなりやすい。
【0029】
高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の二つの入力端子を介して入力抵抗212の出力端から入力抵抗211の出力端へ負帰還がかかるように配置される。すなわち、高精度オペアンプ31は、入力抵抗211の出力端の電圧を増幅し、入力抵抗212の出力端に電圧が印加されるように配置される。
【0030】
これにより、高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位をフィードバックし、フィードバックした電位と基準信号Vbとの差分を小さくするための調整信号を第二の抵抗素子32の出力端に印加する。
【0031】
本実施形態では、高精度オペアンプ31は、基準信号Vbが入力される非反転入力端子(+)と、入力抵抗211及び帰還抵抗23の接点に生じる電位が入力される反転入力端子(-)と、上記の調整信号を出力するための出力端子と、を有する。
【0032】
高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に、基準信号Vbとして基礎差動増幅回路20のみの状態におけるオペアンプ31の非反転入力端子(+)に生ずる電位に相当する電位が入力される。基礎差動増幅回路20のみの状態とは、差動増幅回路100からオフセット電圧抑制回路30を取り除いた状態(回路構成)のことである。
【0033】
このように、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に入力される基準信号Vbは、基礎差動増幅回路20のみの状態におけるオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生ずる電位に基づいて生成される。
【0034】
ここで、高精度オペアンプ31を用いてオペアンプ22の入力オフセット電圧を小さくするのに必要とされる基準信号Vbの大きさについて詳細に説明する。なお、入力オフセット電圧とは、オペアンプ22の出力電圧が0Vになるときの非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)間の電圧差のことである。
【0035】
まず、差動増幅回路100からオフセット電圧抑制回路30を省略した状態におけるオペアンプ22の出力端子に生じる出力電位Voutは、次式(1)により表わすことができる。
【0036】
【数1】
【0037】
なお、R1は、一対の入力抵抗21の抵抗値であり、R2は、帰還抵抗23及び第一の抵抗素子24の抵抗値である。V1は、第一の入力端子11に生じる電位であり、V2は、第一の入力端子11に生じる電位であり、Voffは、オペアンプ22の入力オフセット電圧である。
【0038】
このとき、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-は、次式(2)により表わすことができる。
【0039】
【数2】
【0040】
上式(2)のように、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-には、入力オフセット電圧Voffに加えて、オペアンプ22の非反転入力端子(+)に生じる第1項の電位V+が重畳されている。同様に、オペアンプ22の反転入力端子(-)から高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)にフィードバックされる電位も、入力オフセット電圧Voffにオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生じる電位V+が重畳されている。
【0041】
それゆえ、高精度オペアンプ31を用いて入力オフセット電圧Voffを小さくするには、高精度オペアンプ31にフィードバックされる電位からオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生じる電位V+を取り除くことが好ましい。
【0042】
したがって、本実施形態においては、フィードバックされる電位からオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生じる電位V+を取り除くために、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に、次式(3)で得られる電位値を示す基準信号Vbが入力される。
【0043】
【数3】
【0044】
このように基準信号Vbが設定されることで、高精度オペアンプ31の出力端子からオペアンプ22の非反転入力端子(+)に対して入力オフセット電圧Voffに相当する電位を付与することができる。
【0045】
なお、基準信号Vbは、高精度オペアンプ31を用いてオペアンプ22の入力オフセット電圧Voffが小さくなればよいので、オペアンプ22の入力オフセット電圧Voffが小さくなる範囲において上式(3)に示した電位値からズラしてもよい。例えば、オペアンプ22の入力オフセット電圧Voffが上式(3)に示した電位値よりも十分に大きい場合は、基準信号Vbを上式(3)に示した電位値から0[V]に近づけるようにしてもよい。
【0046】
第二の抵抗素子32は、高精度オペアンプ31の出力端子と入力抵抗212の出力端との間に接続される。このように、第二の抵抗素子32は、高精度オペアンプ31の出力端子と第二の入力抵抗212の出力端との間に配置される。第二の抵抗素子32は、例えば、高精度オペアンプ31による負帰還制御の感度を調節するために用いられる。また、第二の抵抗素子32は、高精度オペアンプ31の発振を抑制するために用いられてもよい。
【0047】
第二の抵抗素子32の抵抗値R3は、高精度オペアンプ31の出力信号によってオペアンプ22の非反転端子(+)に与えられる電位が、第二の電位信号V2により入力抵抗212及び第一の抵抗素子24の接点に生じる電位に比べて大きくなり過ぎないように定められる。
【0048】
第二の抵抗素子32の抵抗値R3は、入力抵抗211及び入力抵抗212の抵抗値R1、並びに、帰還抵抗23及び第一の抵抗素子24の抵抗値R2に対して同じ値でもよく異なる値でもよい。本実施形態において第二の抵抗素子32の抵抗値R3は、抵抗値R1及びR2に対して同じ値、例えば2[kΩ]に設定される。
【0049】
なお、本実施形態では一対の入力抵抗21、帰還抵抗23、第一の抵抗素子24、及び第二の抵抗素子32の各々が一つの抵抗器で実現されているが、複数の抵抗器で実現されてもよい。
【0050】
続いて、オフセット電圧抑制回路30における接続構成について説明する。
【0051】
高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)は、入力抵抗211と帰還抵抗23との接点に接続されるとともにオペアンプ22の反転入力端子(-)に接続され、高精度オペアンプ31の出力端子は、第二の抵抗素子32の一端に接続される。第二の抵抗素子32の他端は、入力抵抗212と第一の抵抗素子24との接点に接続されるとともにオペアンプ22の非反転入力端子(+)に接続される。そして高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)は、基準信号生成部40に接続される。
【0052】
基準信号生成部40は、基準信号Vbを生成してそれを高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に供給する。基準信号生成部40は、例えば、外部電源により実現されてもよく、或いは、入力抵抗212の入力される第二の電位信号V2に基づいて基準信号Vbを生成する回路により実現されてもよい。
【0053】
次に、差動増幅回路100の出力端子50に生じる出力電位Voutについて説明する。
【0054】
まず、差動増幅回路100において、キルヒホッフの法則により、次の式(4)及び式(5)が導出される。また、高精度オペアンプ31の出力端子に生じる調整信号VLAは、次式(6)のように表わすことができ、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-は、次式(7)のように表わすことができる。
【0055】
【数4】
【0056】
なお、上式(6)において、Aは、高精度オペアンプ31のオープンループゲインであり、VL+は、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に生じる電位値であり、VL+は、高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)に生じる電位値である。ここでは、VL+は、上式(3)に示した基準信号Vbとしている。
【0057】
続いて、上式(4)をオペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-について解くと、次式(8)が導出され、上式(5)をオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生じる電位V+について解くと、次式(9)が導出される。
【0058】
【数5】
【0059】
そして、式(9)の左辺に上式(7)を代入するとともに式(9)の右辺の調整信号VLAに上式(6)を代入することにより、次式(10)が導出される。
【0060】
【数6】
【0061】
続いて、式(10)をオペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-について解くと、次式(11)が導出される。
【0062】
【数7】
【0063】
ここで、式(11)の右辺に上式(8)を代入した式を差動増幅回路100の出力電位Voutについて解くと、次式(12)が導出される。
【0064】
【数8】
【0065】
式(12)に示したX、Y及びZは、それぞれ次式(13)の通りである。
【数9】
【0066】
ここで、高精度オペアンプ31のオープンループゲインAが十分に大きければ次式(14)の条件が成立するので、差動増幅回路100の出力電位Voutにおいては、次式(15)のように、入力オフセット電圧が無視できるほど小さくなる。したがって、入力オフセット電圧が無い差動増幅回路100を実現することができる。
【0067】
【数10】
【数11】
【0068】
このように、上式(14)の条件が成立するように、一対の入力抵抗21の抵抗値R1と、帰還抵抗23及び第一の抵抗素子24の抵抗値R2と、第二の抵抗素子32の抵抗値R3とを調整することにより、オペアンプ22のオフセット電圧を抑制することができる。
【0069】
次に、基準信号生成部40の構成例について図2を参照して説明する。
【0070】
図2は、本実施形態における基準信号生成部40の詳細構成を示す回路図である。本実施形態における基準信号生成部40は、互いに直列接続された第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42を備える分圧回路40Aである。
【0071】
分圧回路40Aにおいて、入力端子401は、入力抵抗212の入力端に対して接続され、入力端子402は、基準電位9に対して接続される。そして出力端子403は、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に接続される。
【0072】
本実施形態では、第四の抵抗素子41が、入力抵抗212に対して同等の抵抗値R1を持つ第一抵抗であり、第五の抵抗素子42が、第一の抵抗素子24に対して同等の抵抗値R2を持つ第二抵抗である。すなわち、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42の各抵抗値は、第四の抵抗素子41に対する第五の抵抗素子42の分圧比が入力抵抗212に対する第一の抵抗素子24の分圧比(R2/R1)に対して同等となるように定められている。これにより、上式(3)に示した基準信号Vbが高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に供給される。
【0073】
なお、高精度オペアンプ31における非反転入力端子(+)の電位が基準信号Vbとなればよいので、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42は、それぞれ上述の抵抗値R1及び抵抗値R2を持つものに限られない。例えば、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42の抵抗値は、第四の抵抗素子41に対する第五の抵抗素子42の分圧比が入力抵抗212に対する第一の抵抗素子24の分圧比に対して同等であれば、それぞれ抵抗値R1,R2とは異なる値であってもよい。
【0074】
第四の抵抗素子41の一端が入力抵抗212の入力端に接続され、第四の抵抗素子41の他端が第五の抵抗素子42の一端に接続され、第五の抵抗素子42の他端が基準電位9に接続される。そして高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)が、第四の抵抗素子41の他端と第五の抵抗素子42の一端との間の接点に接続される。
【0075】
このように、基準信号生成部40は、入力抵抗212及び第一の抵抗素子24にそれぞれ対応する第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42を用いて、入力抵抗212に入力される第二の電位信号V2を分圧することにより基準信号Vbを生成する。これにより、差動増幅回路100において基準信号Vbを生成する外部電源を用意しなくてもよい。
【0076】
また、入力抵抗212及び第一の抵抗素子24に対応する第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42と第二の電位信号V2とを用いることにより上式(3)を満たす基準信号Vbが精度よく生成されるので、オペアンプ22のオフセット電圧を確実に低減することができる。
【0077】
なお、式(14)においてR3=0としてよい。そのため、本実施形態においては第二の抵抗素子32はなくてもよい。また、本実施形態では高精度オペアンプ31によってオペアンプ22の入力端子間に負帰還がかかるように構成されていればよく、例えば、高精度オペアンプ31の負帰還ループに回路素子が挿入されてもよい。
【0078】
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0079】
本実施形態における差動増幅回路100は、二つの電位信号V1,V2がそれぞれ入力される第一及び第二の入力抵抗211,212と、第一及び第二の入力抵抗211,212の出力端の電位差を増幅するオペアンプ22とを有する基礎差動増幅回路20を備える。さらに基礎差動増幅回路20は、第一の入力抵抗211の出力端に接続される帰還抵抗23と、第二の入力抵抗212の出力端に接続される第一の抵抗素子24とを有する。
【0080】
さらに差動増幅回路100は、オペアンプ22よりもオフセット電圧又はドリフト電圧が小さな高精度オペアンプ31を備え、高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)に第一の入力抵抗211の出力端が直接又は間接的に接続され、高精度オペアンプ31の出力端子に第二の入力抵抗212の出力端が直接又は間接的に接続される。
【0081】
そして、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)には、基準信号Vbとして、基礎差動増幅回路20のみの状態におけるオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生ずる電位に相当する電位が入力される。
【0082】
この構成によれば、高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の反転入力端子(-)から高精度オペアンプ31自身を経由してオペアンプ22の非反転入力端子(+)に負帰還がかかるように配置される。そして、高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に入力される基準信号Vbは、基礎差動増幅回路20のみの状態におけるオペアンプ22の非反転入力端子(+)に生ずる電位に基づいて生成される。それゆえ、高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の反転入力端子(-)からフィードバックされた電位V-を基準信号Vbで減じて差分を取得するにより、オペアンプ22のオフセット電圧又はドリフト電圧に相当する成分を抽出することができる。
【0083】
そのため、高精度オペアンプ31は、抽出した上記差分に応じて、オペアンプ22の反転入力端子(-)、高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)を経由してオペアンプ22の非反転入力端子(+)に負帰還するよう動作する。これにより、オペアンプ22の入力端子間の電位差が小さくなるので、オペアンプ22のオフセット電圧又はドリフト電圧を低減することができる。したがって、オペアンプ22の性能を維持しつつオペアンプ22の入力オフセット電圧又はドリフト電圧を低減することができる。
【0084】
これに加え、本実施形態における差動増幅回路100には、高精度オペアンプ31の出力端子と第二の入力抵抗212の出力端との間に第二の抵抗素子32が配置される。これにより、高精度オペアンプ31の負帰還制御の感度を適切に調整することが可能になる。それゆえ、例えば高精度オペアンプ31の発振を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態における第二の抵抗素子32は、高精度オペアンプ31の出力端子と第二の入力抵抗212の出力端との間に接続される。そして高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-をフィードバックし、フィードバックした電位V-と基準信号Vbとの差分を小さくするための調整信号を第二の抵抗素子32に出力する。
【0086】
また、本実施形態における差動増幅回路100は、第四の抵抗素子41と第五の抵抗素子42とを備える。第四の抵抗素子41の一端は入力抵抗212の入力端に接続されるとともに第五の抵抗素子42の他端は高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に接続される。そして第五の抵抗素子42の一端は第四の抵抗素子41の他端に接続されるとともに第五の抵抗素子42の他端は基準電位9に接続される。
【0087】
このとき、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42の抵抗値は、第四の抵抗素子41に対する第五の抵抗素子42の分圧比が、入力抵抗212に対する第一の抵抗素子24の分圧比に対して同等となるように定められる。
【0088】
この構成によれば、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42の接点から上式(3)に示した基準信号Vbが高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)に供給される。これにより、高精度オペアンプ31においてオペアンプ22の入力オフセット電圧に相当する電位差を確実に抽出することができる。これに加え、外部電源を用意しなくて済むので、簡易な構成により基準信号Vbを生成することができる。
【0089】
このように、差動増幅回路100において、入力抵抗212及び第一の抵抗素子24にそれぞれ対応する第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42を配置することにより、基準信号Vbの高精度化と回路構成の簡素化という二つの相反する効果を同時に実現することができる。
【0090】
また、本実施形態における基準信号Vbは、上式(3)により定められる。これにより、高精度オペアンプ31において、オペアンプ22の反転入力端子(-)に生じる電位V-から基準信号Vbを減じることでオペアンプ22の入力オフセット電圧を的確に抽出してオペアンプ22の非反転端子(+)に付与することができる。したがって、精度よくオペアンプ22のオフセット電圧を低減することができる。
【0091】
(第二実施形態)
第一実施形態における高精度オペアンプ31は、上記の式(12)乃至式(14)より、オープンループゲインの高い周波数領域での使用が前提であるが、高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限は、オペアンプ22の利得帯域幅積よりも低い。
【0092】
その結果、高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い周波数を有する二つの電位信号V1,V2が差動増幅回路100に入力されると、高精度オペアンプ31の出力信号に含まれる出力ノイズが大きくなってしまう。
【0093】
そこで、高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い周波数帯域において高精度オペアンプ31で増大する出力ノイズの影響を抑制するための回路構成を追加した実施形態について図3を参照して説明する。
【0094】
なお、以下では高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い周波数帯域のことを高周波領域と称し、この高周波領域よりも低い周波数帯域のことを低周波領域と称する。
【0095】
図3は、第二実施形態における差動増幅回路101の構成を示す回路図である。
【0096】
差動増幅回路101は、図1に示した差動増幅回路100の構成に加え、第三の抵抗素子33及び高周波通電部34を備えている。
【0097】
本実施形態では、差動増幅回路101のうち高周波通電部34以外の構成については、基本的に差動増幅回路100と同じ構成である。そのため、以下では、互いに同じ構成については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0098】
本実施形態におけるオペアンプ22は、高周波領域でも動作可能な高速オペアンプによって構成される。例えば、高速オペアンプの利得帯域幅積は100[MHz]程度である。
【0099】
第三の抵抗素子33と高周波通電部34は、高周波領域において、高精度オペアンプ31の出力である調整信号の一部をオペアンプ22の反転入力端子(-)に供給するための機能を有する。
【0100】
本実施形態では、第三の抵抗素子33は、高精度オペアンプ31からの調整信号がオペアンプ22の反転入力端子(-)及び非反転入力端子(+)の双方に等しく分配されるよう、第二の抵抗素子32の抵抗値R3と同等の抵抗値に設定される。
【0101】
第三の抵抗素子33の一端は、入力抵抗211の出力端、オペアンプ22の反転入力端子(-)及び帰還抵抗23の一端に接続される。本実施形態では第三の抵抗素子33が一つの抵抗器で実現されているが、複数の抵抗器で実現してもよい。第三の抵抗素子33を複数の抵抗器で実現する場合は、第二の抵抗素子32も同じ構成にするのが好ましい。これにより、高精度オペアンプ31からの調整信号を精度よく二等分することが可能となる。
【0102】
高周波通電部34は、第一又は第二の電位信号V1,V2の周波数の増加(上昇)に応じて、高精度オペアンプ31における出力端子及び反転入力端子(-)の間を通電する通電手段を構成する。高周波通電部34は、例えば、高周波信号を通過させる素子やスイッチ回路により構成される。
【0103】
一例として高周波通電部34は、第一又は第二の電位信号V1,V2の周波数が所定の閾値よりも高いか否かに応じて高精度オペアンプ31における出力端子及び反転入力端子(-)の間を導通状態又は非導通状態に切り替えるスイッチ回路を備える。なお、所定の閾値は、高精度オペアンプ31の利得帯域幅積の上限値に基づいてあらかじめ定められ、例えば100[Hz]に設定される。
【0104】
この例では、高周波通電部34は、第一又は第二の電位信号V1,V2の周波数が所定の閾値以下であるか否かを示す制御信号を受信する。この制御信号は、利用者の入力操作によって生成されてもよく、あるいは、高周波通電部34が、不図示の周波数分析センサから電位信号V1,V2の周波数を示す出力信号を取得してその出力信号に応じて制御信号を生成してもよい。
【0105】
高周波通電部34は、第一又は第二の電位信号V1,V2の周波数が所定の閾値以下である旨を示す制御信号を受信すると、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間を非導通状態にするようスイッチ回路を制御する。これにより、高精度オペアンプ31のオープンループゲインが十分に大きくなるので、オペアンプ22のオフセット電圧を低減することができる。
【0106】
一方、高周波通電部34は、周波数が所定の閾値よりも高い旨を示す制御信号を受信すると、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間を導通状態にするようスイッチ回路を制御する。これにより、高精度オペアンプ31は、ユニティゲイン動作するボルテージフォロワ回路として機能するとともに、高精度オペアンプ31から出力される調整信号が、第二の抵抗素子32と第三の抵抗素子33との双方に等しく分配される。
【0107】
それゆえ、オペアンプ22の反転入力端子(-)及び非反転入力端子(+)には、高精度オペアンプ31からの調整信号を互いに等しく分配した信号が同相信号として入力されるので、オペアンプ22において同相信号が相殺される。
【0108】
このように、高精度アンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い周波数を有する第一の電位信号V1を高精度オペアンプ31に入力することに起因して高精度オペアンプ31で増大するノイズは、オペアンプ22において除去される。
【0109】
次に、差動増幅回路101の具体的な構成例について図4を参照して説明する。
【0110】
図4は、本実施形態における差動増幅回路101の詳細構成を示す回路図である。図4には、高周波通電部34としてコンデンサ34Aが示され、基準信号生成部40として分圧回路40Bが示されている。他の構成は、図3に示した差動増幅回路101の構成と同じであるため、ここでは主にコンデンサ34A及び分圧回路40Bの構成について説明する。
【0111】
コンデンサ34Aは、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間に接続される。そしてコンデンサ34Aは、第一の電位信号V1の周波数が高くなるにつれてコンデンサ34A自身のインピーダンスが小さくなって通電しやくなるという特性を有する。
【0112】
コンデンサ34Aの一端は、抵抗素子33の他端と高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)とに接続され、コンデンサ34Aの他端は、第二の抵抗素子32の一端と高精度オペアンプ31の出力端子とに接続される。
【0113】
本実施形態におけるコンデンサ34Aは、高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限以下ではコンデンサ34Aのインピーダンスが高いので、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間は絶縁状態となる。高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限は、例えば、高精度オペアンプ31のオープンループゲインが最大値から半減する周波数である。
【0114】
一方、コンデンサ34Aは、高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い高周波領域において、コンデンサ34Aのインピーダンスが低下するので、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間を通電する。
【0115】
それゆえ、コンデンサ34Aの静電容量Cは、コンデンサ34Aに入力される交流信号の周波数が高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限近傍から高くなるにつれてコンデンサ34Aのインピーダンスが低下するように定められる。例えばコンデンサ34Aの静電容量Cは、100[nF]に設定される。
【0116】
このように、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)とを繋ぐ帰還経路にコンデンサ34Aを配置することにより、第一の電位信号V1の周波数の増加に応じて上記帰還経路を絶縁状態から通電状態へと遷移させることができる。
【0117】
続いて、基準信号生成部40として機能する分圧回路40Bについて説明する。
【0118】
分圧回路40Bは、図2に示した分圧回路40Aの構成に加え、入力抵抗211の入力端と基準電位9との間に介在する抵抗回路43を備えている。抵抗回路43は、一又は複数の抵抗素子によって構成される。
【0119】
抵抗回路43は、互いに直列接続された第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42に対して同等の抵抗値を持つ。具体的には、抵抗回路43の抵抗値は、第四の抵抗素子41の抵抗値R1と第五の抵抗素子42の抵抗値R2とを加算した値(R1+R2)に設定される。
【0120】
これにより、抵抗回路43、入力抵抗211及び帰還抵抗23の各抵抗値の総和は、第四の抵抗素子41、第五の抵抗素子42、入力抵抗212及び第一の抵抗素子24の各抵抗値の総和に対して同じ値となる。すなわち、第一の入力端子11に対して接続される負荷抵抗の大きさは、第二の入力端子12に対して接続される負荷抵抗の大きさに比して同等になる。
【0121】
それゆえ、第一の入力端子11からオペアンプ22の反転入力端子(-)に流れる第一電流信号の位相と第二の入力端子12からオペアンプ22の非反転入力端子(+)に流れる第二電流信号の位相とが一致しやすくなる。したがって、図2に示した分圧回路40Aに比べて、第二電流信号の第一電流信号に対する信号遅延が小さくなるので、信号遅延に起因するオペアンプ22の出力誤差を小さくすることができる。
【0122】
本実施形態における抵抗回路43は、互いに直列接続される抵抗素子431及び抵抗素子432により構成される。具体的には、抵抗素子431の一端は、入力抵抗211の入力端に接続され、抵抗素子431の他端は、抵抗素子432の一端に接続される。そして抵抗素子432の他端は、基準電位9に対して接続される。
【0123】
抵抗素子431は、第四の抵抗素子41に対して同じ抵抗値を持ち、第四の抵抗素子41と同一の部品によって構成される。抵抗素子432は、第五の抵抗素子42に対して同じ抵抗値を持ち、第五の抵抗素子42と同一の部品によって構成される。
【0124】
このように、分圧回路40Aを構成する第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42に対して対称性を有するように抵抗回路43を構成することにより、分圧回路40Aの設置に伴う第二電流信号の信号特性の変化を第一電流信号に対しても付与することができる。それゆえ、単に第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42に対して同じ抵抗値を持つ一つの抵抗素子を配置する場合に比べて、分圧回路40Aの設置に起因するオペアンプ22の出力誤差を低減することが可能となる。
【0125】
次に、本実施形態における差動増幅回路101の動作について図5A及び図5Bを参照して説明する。
【0126】
図5Aは、第一の電位信号V1の周波数が高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限以下であるときの差動増幅回路101の動作を説明するための図である。図5Bは、第一の電位信号V1の周波数が高周波帯域にあるときの差動増幅回路101の動作を説明するための図である。
【0127】
図5Aに示すように、第一の電位信号V1の周波数が高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限以下である場合には、コンデンサ34Aのインピーダンスが大きくなり、高精度オペアンプ31のオープンループゲインが十分に大きくなる。そのため、高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の入力オフセット電圧が小さくなるよう、自己を介してオペアンプ22の反転入力端子(-)から非反転入力端子(+)へ負帰還をかける。
【0128】
一方、第一の電位信号V1の周波数が高周波帯域にある場合には、高精度オペアンプ31には有効周波数帯域の上限よりも高い周波数を有する交流信号が入力される。その結果、高精度オペアンプ31に有効周波数帯域の上限以下の周波数を有する交流信号を入力した場合に比べて、高精度オペアンプ31から発生するノイズが増大する。
【0129】
このとき、第一の電位信号V1の周波数が高周波帯域にある場合には、図5Bに示すように、コンデンサ34Aのインピーダンスが小さくなり、高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子(-)との間が通電状態となる。
【0130】
そのため、高精度オペアンプ31は、ボルテージフォロワ回路として動作するとともに、高精度オペアンプ31の出力端子の後段には、第三の抵抗素子33及び帰還抵抗23と第二の抵抗素子32及び第一の抵抗素子24とオペアンプ22とによって差動増幅回路が構成される。
【0131】
これにより、高精度オペアンプ31の出力信号は、オペアンプ22の反転入力端子(-)に接続された抵抗素子33及び帰還抵抗23による第一経路と、オペアンプ22の非反転入力端子(+)に接続された第二の抵抗素子32及び第一の抵抗素子24による第二経路と、に互いに等しく分配される。そして、二等分された分配信号は、同相信号としてオペアンプ22の二つの入力端子にそれぞれ入力されるので、高精度オペアンプ31の出力信号に含まれるノイズは、オペアンプ22において除去される。
【0132】
したがって、第一及び第二の電位信号V1,V2の周波数が高精度オペアンプ31の有効周波数帯域の上限よりも高い周波数であっても、高精度オペアンプ31から発生する増大したノイズを抑制しつつ、オペアンプ22のオフセット電圧又はドリフト電圧を小さくすることができる。
【0133】
なお、本実施形態では基準信号生成部40として分圧回路40Bを採用したが、これに代えて図2に示した分圧回路40A又は外部電源を採用してもよい。
【0134】
次に、差動増幅回路101の周波数特性について図6乃至図9を参照して説明する。より詳細には、差動増幅回路101のシミュレーション解析を実行して得られた解析結果とともに、比較対象としてオフセット電圧抑制回路30を省いた一般的な差動増幅回路である基礎差動増幅回路20のみの回路構成の解析結果を併せて説明する。
【0135】
図6は、シミュレーション解析において設定された差動増幅回路101のパラメータの数値を示す図である。
【0136】
差動増幅回路101のシミュレーション解析において、第一及び第二の入力抵抗211,212と第四の抵抗素子41と抵抗素子431の各抵抗値R1を2[kΩ]とし、帰還抵抗23と第一の抵抗素子24と第五の抵抗素子42と抵抗素子432の各抵抗値R2を2[kΩ]とした。さらに、第二の抵抗素子32と第三の抵抗素子33の各抵抗値R3も2[kΩ]とした。
【0137】
また、オペアンプ22の利得帯域幅積を145[MHz]とし、高精度オペアンプ31の利得帯域幅積は3[MHz]とした。
【0138】
図7は、図6に示した差動増幅回路101の出力のオフセット電圧に関する解析結果を示す図である。
【0139】
図7には、差動増幅回路101の解析結果が実線により示されており、縦軸は、差動増幅回路101の出力のオフセット電圧であり、横軸は、時間[ms]である。ここでは比較対象として、基礎差動増幅回路20のみの回路構成の解析結果が破線により示されている。
【0140】
図7に示すように、基礎差動増幅回路20のみの回路構成においては、電位信号V1,V2の周波数の上昇に関わらず、オペアンプ22の出力のオフセット電圧が-800[μV]のまま一定である。
【0141】
これに対し、オフセット電圧抑制回路30を備えた差動増幅回路101においては、低オフセット電圧の高精度オペアンプ31の入力オフセット電圧がオペアンプ22の入力オフセット電圧よりも小さくほぼ0(ゼロ)[μV]で一定である。そのため、オペアンプ22の出力のオフセット電圧は、高精度オペアンプ31と同様に、ほぼ0[μV]となる。
【0142】
このように、非反転入力端子(+)に基準信号Vbが入力された高精度オペアンプ31をオペアンプ22の反転入力端子(-)から非反転入力端子(+)に負帰還がかかるように配置することにより、オペアンプ22の出力のオフセット電圧を低減することができる。
【0143】
次に、差動増幅回路101の出力ノイズに関する周波数特性について説明する。
【0144】
図8Aは、図6に示した差動増幅回路101の出力ノイズに関する周波数特性の解析結果を示す図であり、図8Bは、基礎差動増幅回路20のみの出力ノイズに関する周波数特性の解析結果を示す図である。
【0145】
図8A及び図8Bの横軸は、共通の周波数軸であり、二つの電位信号V1,V2の周波数を示す。図8Aの縦軸は、差動増幅回路101の出力ノイズにおける1Hzあたりの雑音電圧密度であり、図8Bの縦軸は、基礎差動増幅回路20のみの出力ノイズの雑音電圧密度である。
【0146】
図8A及び図8Bに示すように、低周波領域において、差動増幅回路101の出力ノイズは、比較対象である基礎差動増幅回路20のみの出力ノイズに比べて1,000分の一程度と非常に小さい。言い換えれば、差動増幅回路101においては1/fノイズが十分に低減されている。
【0147】
出力ノイズが極めて小さくなる理由は、オペアンプ22の反転入力端子(-)に入力される電圧信号が、高精度オペアンプ31を経由してオペアンプ22の非反転入力端子(+)に負帰還されるからである。これにより、低周波領域での出力ノイズは高精度オペアンプ31の特性によって決定されるので、オペアンプ22から出力される信号のノイズ成分が減少する。
【0148】
続いて、差動増幅回路101の同相信号除去比(CMRR)に関する周波数特性について説明する。
【0149】
図9は、図6に示した差動増幅回路101の同相信号除去比に関する周波数特性をシミュレーション解析した結果を示す図である。この解析結果は、差動増幅回路101を構成する抵抗素子のバラツキが考慮されている。
【0150】
図9には、差動増幅回路101の解析結果が実線により示されており、縦軸が差動増幅回路101の同相信号除去比であり、横軸が差動増幅回路101に入力される二つの電位信号V1,V2の周波数である。ここでは、比較対象として一般的な差動増幅回路である基礎差動増幅回路20のみの回路構成の解析結果が破線により示されている。
【0151】
図9に示すように、低周波数領域においては、差動増幅回路101の同相信号除去比は、基礎差動増幅回路20のみの回路構成の同相信号除去比に比べて高い。
【0152】
この理由は、図8A及び図8Bで述べた通り、高精度オペアンプ31によりオペアンプ22の反転入力端子(-)からオペアンプ22の非反転端子(+)に負帰還がかかるからである。さらに、オペアンプ22で同相信号成分が相殺されて同相信号除去比が向上する。
【0153】
一方、高周波領域においては、差動増幅回路101の同相信号除去比は、基礎差動増幅回路20のみの回路構成の同相信号除去比に対して同等のレベルに維持される。
【0154】
この理由は、高精度オペアンプ31の帰還経路に配置されたコンデンサ34Aが通電状態となり、ユニティゲイン動作する高精度オペアンプ31の出力信号を二つに分配した同相信号がオペアンプ22の二つの入力端子に入力されるからである。
【0155】
これにより、オペアンプ22と第一乃至第三の抵抗素子24,32,33と帰還抵抗23とから構成される差動増幅回路によって同相信号が除去されるので、動作周波数範囲の超過に伴う高精度オペアンプ31の出力ノイズを低減することができる。それゆえ、オペアンプ22の同相信号除去比が大きく低下するのを抑制することができる。
【0156】
このように、差動増幅回路101では、オペアンプ22により構成される基礎差動増幅回路20の周波数帯域以下の全帯域において、一般的な差動増幅回路である基礎差動増幅回路20のみの回路構成に対して同等以上の同相信号除去比を実現することができる。
【0157】
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0158】
本実施形態における差動増幅回路101は、第一実施形態における差動増幅回路100と同様の作用効果を奏する。
【0159】
さらに本実施形態においては、第一の入力抵抗211に入力される電位信号V1の周波数の増加に応じて、高精度オペアンプ31における出力端子及び反転入力端子(-)の間を通電する通電手段として高周波通電部34を備える。
【0160】
この構成によれば、図5Bに示したように、高精度オペアンプ31からの調整信号が二つに分流し、分流した二つの同相信号がオペアンプ22の二つの入力端子に入力される。これにより、オペアンプ22では分流した二つの同相信号同士が打ち消されるので、高周波領域において高精度オペアンプ31で増大する出力ノイズを低減することができる。
【0161】
また、本実施形態において、高周波通電部34は、高精度オペアンプ31における出力端子及び反転入力端子(-)の間に接続されるコンデンサ34Aを含む。コンデンサ34Aを用いることより、高周波通電部34を簡易な回路構成にしつつ、高周波領域において高精度オペアンプ31における出力端子と反転入力端子との間に交流信号を通すことができる。
【0162】
これにより、電位信号V1,V2の周波数が所定の閾値よりも高い場合は、高精度オペアンプ31は、ボルテージフォロワ回路としてユニティゲイン動作する。そして高精度オペアンプ31は、オペアンプ22の反転入力端子(-)からフィードバックされた電位V-と基準信号Vbとの差分を示す調整信号を第二の抵抗素子32と他の抵抗素子33との双方に出力する。
【0163】
それゆえ、高精度オペアンプ31の出力信号を二つに分配した同相信号がそれぞれオペアンプ22の二つの入力端子に供給されるので、オペアンプ22において高精度オペアンプ31の出力信号に含まれる増大ノイズを低減することができる。
【0164】
また、本実施形態における差動増幅回路101は、第一の入力抵抗211の出力端と高精度オペアンプ31の反転入力端子(-)との間に接続される第三の抵抗素子33をさらに備える。そして第三の抵抗素子33は、第二の抵抗素子32に対して同等の抵抗値R3を持つ。
【0165】
これにより、高精度オペアンプ31の出力信号を二等分した同相信号がそれぞれオペアンプ22の二つの入力端子に供給されるので、オペアンプ22において高精度オペアンプ31の出力信号に含まれる増大ノイズを取り除くことができる。
【0166】
本実施形態において、差動増幅回路101は、第二の入力抵抗212に対して同等の抵抗値R1を持つ第四の抵抗素子41と、第一の抵抗素子24に対して同等の抵抗値R2を持つ第五の抵抗素子42とを備える。すなわち、第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42の抵抗値は、第四の抵抗素子41に対する第五の抵抗素子42の分圧比が入力抵抗212に対する第一の抵抗素子24の分圧比と比べて同等となるように定められる。
【0167】
そして、第四の抵抗素子41の一端が第二の入力抵抗212の入力端に接続されるとともに第四の抵抗素子41の他端が第五の抵抗素子42の一端に接続され、第五の抵抗素子42の他端が基準電位9に接続される。そして高精度オペアンプ31の非反転入力端子(+)は、第四の抵抗素子41と第五の抵抗素子42との間に接続される。
【0168】
これに加え、差動増幅回路101は、第一の入力抵抗211の入力端と基準電位9との間に介在し、互いに直列接続された第四の抵抗素子41及び第五の抵抗素子42に対して同等の抵抗値(R1+R2)を持つ抵抗回路43を備える。
【0169】
このように、第一の入力抵抗211の入力端と基準電位9との間に抵抗回路43を配置することにより、第一の入力抵抗211の入力端に対して接続される負荷抵抗と第二の入力抵抗212の入力端子に対して接続される負荷抵抗が同等となる。それゆえ、抵抗回路43を配置しない場合に比べて、オペアンプ22の二つの入力端子に供給される電流信号間の遅延が小さくなるので、遅延に起因するオペアンプ22の出力誤差を小さくすることができる。
【0170】
本実施形態におけるオペアンプ22は、利得帯域幅積が数MHz以上である高速オペアンプである。これにより、差動増幅回路101において、高速オペアンプの性能を維持しつつ高速オペアンプのオフセット電圧又はドリフト電圧を低減することができる。
【0171】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0172】
例えば、第一実施形態では差動増幅回路100に基準信号生成部40として分圧回路40Aを設置したが、これに代えて図4に示した分圧回路40Bを設置してもよい。この場合も、第二実施形態と同様、オペアンプ22の二つの入力端子に供給される電流信号間の遅延を抑えることができる。
【0173】
また、第二実施形態ではオフセット電圧抑制回路30に第二の抵抗素子32及び第三の抵抗素子33が設置したが、第二の抵抗素子32及び第三の抵抗素子33の各々にコンデンサが並列接続されてもよい。
【符号の説明】
【0174】
20 基礎差動増幅回路
21 一対の入力抵抗
211、212 第一の入力抵抗、第二の入力抵抗
23 帰還抵抗
24 第一の抵抗素子
31 高精度オペアンプ
32、33 第二の抵抗素子、第三の抵抗素子
34 高周波通電部(通電手段)
34A コンデンサ
41、42 第四の抵抗素子、第五の抵抗素子
43 抵抗回路
100、101 差動増幅回路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9