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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060100
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電床構造
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20220407BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20220407BHJP
   E01C 9/00 20060101ALI20220407BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
B60M7/00 X
H02J50/10
E01C9/00
E04F15/18 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168113
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】片桐 博臣
(72)【発明者】
【氏名】佐相 直紀
(72)【発明者】
【氏名】中坪 順哉
【テーマコード(参考)】
2D051
2E220
【Fターム(参考)】
2D051AB03
2D051AD05
2D051AG11
2D051CA01
2D051EA06
2E220AA02
2E220AA16
2E220AA51
2E220AA59
2E220BB04
2E220FA13
2E220GB01X
2E220GB02X
2E220GB32X
2E220GB34X
2E220GB35X
2E220GB39X
(57)【要約】
【課題】床の厚みを薄くできかつ短時間で施工できる、ワイヤレス給電床構造を提供すること。
【解決手段】ワイヤレス給電床構造1は、電動で走行する車両2にワイヤレスで給電する。このワイヤレス給電床構造1は、既存床3上に接着されたグランド10と、グランド10上に接着された、4mmの厚みを有する絶縁層12と、絶縁層12上に接着された送電電極14を含む保護層15と、を備える。送電電極14は、高周波電源17から電力が供給され、車両2の受電電極20に誘導電流を発生させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動で走行する車両にワイヤレスで給電するワイヤレス給電床構造であって、
基盤上に設けられた金属層と、
前記金属層を前記基盤に接着する接着層と、
前記接着層上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に接着された、送電電極を含む保護層と、を備え、
前記送電電極は、高周波電源から電力が供給され、前記車両の受電電極に誘導電流を発生させることを特徴とするワイヤレス給電床構造。
【請求項2】
前記絶縁層を前記接着層に接着する粘着層または第2接着層を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項3】
前記絶縁層は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、および天然ゴムのうち、少なくとも1つ以上の材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項4】
前記金属層は、接着剤が金属層上方から下方に通過するのに十分な開口を有し、かつワイヤレス給電を行う周波数の表皮深さ以上の厚みを有する、銅、ステンレス、またはアルミニウムのうち、少なくとも1つ以上の材料を含む金属体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項5】
前記保護層は、16kV/mmの強さの電界で破壊しないことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項6】
前記保護層は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル樹脂のうち、少なくとも1つ以上の材料を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項7】
前記保護層の上面には、コーテイング層が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のワイヤレス給電床構造。
【請求項8】
前記送電電極は、ワイヤレス給電を行う周波数の表皮深さ以上の厚みを有する、銅、ステンレス、またはアルミニウムの金属体で、かつ、上方に前記保護層、下方に粘着層を有するテープ材であり、端部がエッチング加工されて突起部がないことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のワイヤレス給電床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動で走行する車両にワイヤレスで給電するワイヤレス給電床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車、電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle)等に対して、ワイヤレス給電により床面から給電することが行われている。このワイヤレス給電としては、床面に設置された送電電極に高周波の交流電流を流して磁場を発生させ、この磁場により受電電極に誘導電流を発生させて車両のモータを駆動する磁界共鳴方式がある。ワイヤレス給電床の構造として、例えば、以下のような構造が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、床スラブや路盤などの基体と、基体に積層された金属部材と、金属部材に積層された基体側部材と、基体側部材の上に所定間隔で並べて配置される第一導体および第二導体と、基体側部材の上に第一導体および第二導体を挟んで積層された表面部材と、を備える、ワイヤレス給電床構造が示されている。基体側部材および表面部材は、アスファルト材料またはセメント系材料にセラミックス等を混入させた素材からなる。第一導体および第二導体は、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属製のシート部材である。
特許文献2には、基体と、基体上に積層されたグランド板と、グランド板の上に積層された絶縁性を有する基層材と、基層材の上に設けられた第一給電電極および第二給電電極と、基層材の上に給電電極を挟んで積層された誘電損失の少ない素材からなる表層材と、を備えるワイヤレス給電床構造が示されている。基層材および表層材は、アスファルト材料またはセメント系材料にセラミックスを混入させた素材からなる。
特許文献3には、床下地表面に銅箔または平織りメッシュを貼着し、その上に、エポキシ樹脂の樹脂モルタルを塗布して樹脂モルタル層を設け、その上に硬質ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの仕上げ塗り床材を塗布して仕上げ塗り床層を設けたワイヤレス給電床用塗り床構造が示されている。
【0004】
特許文献1のワイヤレス給電床構造では、基体側部材および表面部材がアスファルト材料やセメント系材料であり、床の厚みが10mm以上となるため、車両の走行時に床面に段差が生じる場合があった。また、基体側部材および表面部材を構成するアスファルト材料やセメント系材料が硬化するまでに時間がかかることから、稼働中の生産施設内にリニューアル工事で施工することが難しい、という問題があった。
特許文献2のワイヤレス給電床構造についても、基層材および表層材がアスファルト材料やセメント系材料であり、同様の問題が生じていた。
特許文献3のワイヤレス給電床用塗り床構造についても、床下地表面上に樹脂モルタルを塗布するため、同様の問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-163798号公報
【特許文献2】特開2018-065407号公報
【特許文献3】特開2019-203301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、床の厚みを薄くできかつ短時間で施工できる、ワイヤレス給電床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤレス給電床構造(例えば、後述のワイヤレス給電床構造1)は、電動で走行する車両(例えば、後述の車両2)にワイヤレスで給電するワイヤレス給電床構造であって、基盤(例えば、後述の既存床3)上に設けられた金属層(例えば、後述のグランド10)と、前記金属層を前記基盤に接着する接着層(例えば、後述の接着層11)と、前記接着層上に設けられた絶縁層(例えば、後述の絶縁層12)と、前記絶縁層上に接着された、送電電極(例えば、後述の送電電極14)を含む保護層(例えば、後述の保護層15)と、を備え、前記送電電極は、高周波電源から電力が供給され、前記車両の受電電極に誘導電流を発生させることを特徴とする。
この開示によれば、各層同士を接着する乾式工法によりワイヤレス給電床を構築したので、施工が比較的容易であり、短工期でワイヤレス給電床を構築できる。
【0008】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記絶縁層を前記接着層に接着する粘着層(例えば、後述の粘着層13)または第2接着層を備えていてもよい。
また、本開示のワイヤレス給電床構造では、6MHz以上15MHz以下の周波数帯における熱損失が他の周波数帯における熱損失よりも少ない樹脂材料を含む絶縁層を乾式工法により形成してもよい。このようにすれば、ワイヤレス給電床の厚みを薄くできるうえに、絶縁層に含まれる水分やカーボンが少ないから、誘電正接の上昇を抑制することができ、電力伝送効率に優れたワイヤレス給電床を実現できる。
本開示のワイヤレス給電床構造では、絶縁層は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、および天然ゴムのうち、少なくとも1つ以上の材料を含んでいることが好ましい。
【0009】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記保護層は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル樹脂のうち、少なくとも1つ以上の材料を含んでいてもよく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル樹脂のうち、少なくとも1つ以上の材料が複合化されて形成される床の仕上げ層であってもよい。
この開示によれば、誘電正接の上昇を抑制することができ、より電力伝送効率に優れたワイヤレス給電床を実現できる。
【0010】
保護層(仕上げ層)は、タイヤとの摩擦に対する耐摩耗性に優れ、ワイヤレス給電の際に発生する高周波電界に対する高い絶縁耐力を有する材料であるポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル樹脂のうち、少なくとも1つ以上の材料を複合化させて形成することができる。
この開示によれば、この保護層は、タイヤとの摩耗により材料の厚みが低下した場合や、絶縁耐力を超える電界が加わることによって保護層が放電破壊した場合でも、自己消化性を有することで火災に至らない材料で形成されることになる。なお、自己消火性は、大気中で熱源が無くなった際に自ら消化する性質のことで、火源があると燃え続けるが、火源が無くなると燃焼を継続することが出来ない物性の性能である。また、保護層は、厚さが薄く(100μm以下)、誘電正接が少ない(カーボンなどの抵抗体を含まず、高周波電界に対して低損失)などの特性を有することが好ましい。
【0011】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記金属層は、開口を設けた金属シートで形成されてもよい。
ここでいう開口とは、隣接する金属材同士の間に設けた隙間や、単体の金属材に施されたメッシュ加工を含むものとする。よって、開口を設けた金属シートは、メッシュ加工をした金属に限定したものではない。
この開示によれば、開口を設けた金属シートで金属層を形成したので、薄くて基盤との接着強度が高い金属層を基盤上に容易に施工できる。
また、金属シートの金属材同士の間または金属シート単体に開口を設けることによって、基盤に金属シートを接着する際、空気が混入するのを抑制できる。
また、基盤上に金属シートを敷いて、この上から接着剤を塗布することで、金属シートを基盤に接着するとともに、絶縁層を接着するための接着層を同時に形成できるので、工期を短縮できる。
【0012】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記金属層は、接着剤が金属層上方から下方に通過するのに十分な開口を有し、かつワイヤレス給電を行う周波数の表皮深さ以上の厚みを有する、銅、ステンレス、アルミニウムのうち、少なくとも1つ以上の材料を含む金属体を用いることができ、また、端部をエッチング加工することで突起部がないようにしてもよい。
グランドを箔ではなく開口を有するメッシュとすることで、メッシュサイズを接着剤が含侵できるサイズとして、かつ高周波電界の表皮深さを満足した厚みにすることで一回での施工が可能となる。その結果、床材の厚みが薄くでき、かつ短期間で施工可能となる。
【0013】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記保護層は、16kV/mmの強さの電界で破壊しないことが好ましい。
この開示によれば、誘電正接の上昇を抑制することができ、より電力伝送効率に優れたワイヤレス給電床を実現できる。
【0014】
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記保護層の上面に、コーテイング層が設けられていてもよい。コーテイング層は、耐傷付き性付与、滑り性付与、または耐薬品性付与などの目的で設けられている。
本開示のワイヤレス給電床構造では、前記送電電極は、ワイヤレス給電を行う周波数の表皮深さ以上の厚みを有する、銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属体を用いることができ、かつ、上方に前記保護層、下方に粘着層を有するテープ材であり、端部をエッチング加工することで突起部がないようにすることができる。
この開示によれば、送電電極を、保護層を有する粘着テープにすることで、車両の走行により電極が破損した場合でも補修が比較的容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、床の厚みを薄くできかつ短時間で施工できる、ワイヤレス給電床を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電床構造の斜視図である。
図2】ワイヤレス給電床構造の断面図である。
図3】ワイヤレス給電床構造の電力伝送試験の試験結果を示す図である。
図4】試験体1~3についての絶縁破壊の強さの測定結果を示す図である。
図5】試験体4~6についての絶縁破壊の強さの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、電気自動車、電動カート、AGV等にワイヤレスで給電を行うワイヤレス給電床構造である。ワイヤレス給電床構造は、絶縁層を樹脂材料で形成して、グランド(金属層)、絶縁層、送電電極を含む保護層を乾式工法で接着したものである。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電床構造1の斜視図である。図2は、ワイヤレス給電床構造1の断面図である。
【0018】
ワイヤレス給電床構造1は、電動で走行する車両2にワイヤレスで給電するものである。このワイヤレス給電床構造1は、鉄筋コンクリート造の基盤としての既存床3上に設けられた金属層としてのグランド10と、グランド10を既存床3に接着する接着層11と、接着層11上に設けられた絶縁層12と、絶縁層12を接着層11に接着する粘着層13と、絶縁層12上に粘着層16で接着された、送電電極14を含むポリオレフィンなどを含む感電防止用の保護層15と、を備える。なお、図示しないが、絶縁層12は接着層11でグランド10に接着されていてもよい。
【0019】
グランド10は、電磁漏れや電磁干渉から送電電極14を保護するシールドであり、例えば、銅箔またはステンレス製の平織り金網である。
絶縁層12は、6MHz以上15MHz以下の周波数帯における熱損失が6MHz未満および15MHzを超える周波数帯における熱損失よりも少なく、かつ、水分やカーボンを含まない樹脂材料、例えばポリオレフィン樹脂からなる。
また、例えば、グランド10の厚みは、35μmであり、絶縁層12の厚みは、4mmであり、送電電極14の厚みは、35μmである。また、保護層15の厚みは、送電電極14が設けられた部分で65μm、その他の部分で100μmである。よって、ワイヤレス給電床構造1の全体の厚みは、約4mmとなる。また、例えば、35μmの厚みのグランドおよび電極を銅で構築した際には、開口率(金属面積/全体面積×100)を60%以上とすることで、電極をグランドで確実に覆うことができ、電磁漏れや電磁干渉を防止することが可能となる。
【0020】
送電電極14は、高周波電源17から電力が供給され、車両2の後述の受電電極20に誘導電流を発生させる。
車両2は、受電電極20と、受電電極20で発生した誘導電流により車輪21を駆動させる図示しない駆動装置と、を備えている。この車両2は、駆動装置により車輪21が回転することで、ワイヤレス給電床構造1の保護層15上を図1中矢印方向に移動する。
【0021】
以上のワイヤレス給電床構造1は、例えば、以下の手順で施工する。
まず、銅箔またはステンレス製の平織り金網からなるシートを用意し、既存床3上にこの金属製のシートを配置して接着剤を塗布することで、接着剤にシートを含浸させて、このシートをグランド10とし、硬化した接着剤を接着層11とする。次に、ポリオレフィン樹脂製のシートを用意し、接着層11の上に粘着材を塗布して粘着層13とし、この粘着層13の上にポリオレフィン樹脂製のシートを敷いて、絶縁層12とする。次に、下面に粘着層16を有しかつ金属製の長尺状のシートが内蔵されたポリオレフィン樹脂製のシート(テープ材)を用意し、絶縁層12の上にこのシートを敷くことで、粘着層16が絶縁層12の上に接着される。このシートの金属製の部分を送電電極14とし、ポリオレフィン樹脂製の部分を保護層15とする。
【0022】
以上のワイヤレス給電床構造の耐久性を確認するため、キャスターチェア試験を行った。具体的には、本発明のワイヤレス給電床構造(グランド10の厚みが35μm、絶縁層の厚みが4mm、送電電極の厚みが35μm、保護層の厚みが100μm)について、荷重100kgでキャスターを3000回回転させた。その結果、本発明のワイヤレス給電床構造に割れやたわみが発生しないことを確認できた。
また、ポリオレフィン樹脂からなる保護層については、絶縁破壊が懸念されるため、厚さ4mmのポリオレフィン樹脂について、JIS C 2110-1の規格による絶縁耐力試験を行った。その結果、約100kV/mmの絶縁耐力を確認できた。
【0023】
また、以上のワイヤレス給電床構造について、電力伝送試験を行った。具体的には、本発明のワイヤレス給電床構造(グランド10の厚みが35μm、絶縁層の厚みが4mm、送電電極の厚みが35μm、保護層の厚みが100μm)について、送電電極と受電電極との距離を10mmとし、高周波電源から500Wの電力を入力して、受電電極の出力を測定した。その結果、図3に示すように、6.78MHz付近の周波数で受電電力がおよそ400Wとなり、電力伝送効率が約80%となることを確認できた。
【0024】
また、6種類の誘電体材料を試験体1~6とし、各試験体につき6つの試料を作成して絶縁破壊の強さを測定した。試験体1は、CS-A-t2000-PVC(ポリ塩化ビニル)である。試験体2は、CS-B-t600-Olefin(オレフィン樹脂)である。試験体3は、CS-A-t150-PVC(ポリ塩化ビニル)である。試験体4は、CS-D-t100-PET(ポリエチレンテレフタラート)である。試験体5は、CS-E-t100-PET(ポリエチレンテレフタラート、厚さ0.1mmt)である。試験体6は、CS-F-t160-acryl(アクリル樹脂、厚さ0.16mmt)である。図4および図5は、試験体1~6についての絶縁破壊の強さの測定結果である。
【0025】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)グランド(金属層)10、絶縁層12、送電電極14、および保護層15をシート材とし、これらシート材を接着する乾式工法によりワイヤレス給電床構造1を構築したので、施工が比較的容易であり、短工期でワイヤレス給電床を構築できる。
また、従来のワイヤレス給電床構造では、床の厚みが10mm程度であったが、本発明のワイヤレス給電床構造1では、絶縁層12をポリオレフィン樹脂で形成したことにより、床の厚みを4mm程度まで薄くでき、既存床3の床面との間に生じる段差を小さくできる。
また、絶縁層12をポリオレフィン樹脂で形成したので、絶縁層12に含まれる水やカーボンが少ないから、誘電正接の上昇を抑制することができ、電力伝送効率に優れたワイヤレス給電床構造1を実現できる。
また、予め、送電電極14を感電防止用の保護層15と一体に成形したので、送電電極14を確実にかつ精度よく保護できる。
また、グランド(金属層)10、絶縁層12、および送電電極14を含む保護層15はそれぞれ硬化材であるので、各層を工場にて高い精度管理のもとで製造して、接着剤を用いた乾式工法によりワイヤレス給電床構造1を構築可能である。
(2)グランド10を銅箔またはステンレス製の平織り金網としたので、既存床3上にグランド10を容易に施工できる。
(3)保護層15をポリオレフィン樹脂で形成したので、保護層15に含まれる水分やカーボンが少ないため、誘電正接の上昇を抑制することができ、より電力伝送効率に優れたワイヤレス給電床を実現できる。
【0026】
(4)保護層15を絶縁耐力に優れるポリオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、またはアクリル樹脂で形成することで、保護層(仕上げ層)15がタイヤとの摩擦に対する耐摩耗性に優れ、ワイヤレス給電の際に発生する高周波電界に対する高い絶縁耐力を有する。よって、保護層15が高強度であり、車両2が本発明のワイヤレス給電床上を走行する際に放電が発生した場合でも、発火することはなく自己消化性が発揮されることが望ましい。
(5)金属層であるグランド10は、接着剤がグランド10上方から下方に通過するのに十分な開口を有するメッシュ状とし、かつワイヤレス給電を行う周波数の表皮深さ以上の厚みを有する、銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属体であり、端部をエッチング加工することで突起部がない。よって、メッシュ状のグランド10への接着剤の含侵させる際には、高周波電界の表皮深さを満足した厚みを容易に形成できる。よって、床材の厚みが薄くでき、かつ短期間での施工が可能となる。
(6)送電電極14を含む保護層15は、金属製の長尺状のシートが内蔵されたポリオレフィン樹脂製のシートを用意し、絶縁層12の上にこのシートを接着してポリオレフィンで形成した。よって、車両の走行により電極が破損した場合でも補修が比較的容易となる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記の実施形態では、絶縁層をポリオレフィンで形成したが、ポリオレフィンに限定することなく、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、および天然ゴムのうち、少なくとも1つ以上の材料から形成してもよい。
また、上述の実施形態では、保護層をポリオレフィンで形成したが、ポリオレフィンに限定することなく、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、およびアクリル樹脂のうち、少なくとも1つ以上の材料を複合化して形成してもよい。
上述の実施形態では、ワイヤレス給電床構造1を既存床3上に設けたが、これに限らず、新設の床スラブ上に設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…ワイヤレス給電床構造 2…車両 3…既存床(基盤)
10…グランド(金属層) 11…接着層 12…絶縁層 13…粘着層
14…送電電極 15…保護層 16…粘着層 17…高周波電源
20…受電電極 21…車輪

図1
図2
図3
図4
図5