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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060110
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】人工呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20220407BHJP
   A61M 16/01 20060101ALI20220407BHJP
   A61M 16/16 20060101ALI20220407BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20220407BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220407BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220407BHJP
【FI】
A61M16/00 305Z
A61M16/01 Z
A61M16/16 Z
A61M16/00 390Z
B29C64/10
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168124
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】511132443
【氏名又は名称】石北 直之
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】石北 直之
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AH63
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
(57)【要約】
【課題】電気的な駆動源を必要とせず、心肺蘇生に用いることができる新しい人工呼吸器を提供する。
【解決手段】人工呼吸器1は、通気路2eを有する管2と、リリーフ弁3と、自発呼吸弁4とを備えており、管2は、患者の呼気及び吸気が通過可能であるメインポート2bと、メインポート2bに通気路2eを通じて連通するリリーフ弁ポート2cと、メインポート2bに通気路2eを通じて連通する自発呼吸弁ポート2dとを有し、リリーフ弁3は、リリーフ弁ポート2cに設けられ、通気路2eの圧力に応じて開いて通気路2eを管2の外と連通して圧力を開放可能に構成されており、自発呼吸弁4は、自発呼吸弁ポート2dに設けられ、患者が自発呼吸する吸気圧に応じて開いて通気路2eを管2の外と連通して吸気可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気路を有する管と、リリーフ弁と、自発呼吸弁とを備える人工呼吸器であって、
前記管は、
患者の呼気及び吸気が通過可能であるメインポートと、
前記メインポートに前記通気路を通じて連通するリリーフ弁ポートと、
前記メインポートに前記通気路を通じて連通する自発呼吸弁ポートとを有し、
前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁ポートに設けられ、前記通気路の圧力に応じて開いて前記通気路を前記管の外と連通して前記圧力を開放可能に構成されており、
前記自発呼吸弁は、前記自発呼吸弁ポートに設けられ、前記患者が自発呼吸する吸気圧に応じて開いて前記通気路を前記管の外と連通して吸気可能に構成されている、
人工呼吸器。
【請求項2】
前記自発呼吸弁は、前記吸気圧に応じて作動する吸気弁を有し、
前記自発呼吸弁ポートは、前記吸気弁を開閉可能に収容する弁室を有する、
請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項3】
前記自発呼吸弁は、
前記自発呼吸弁ポートに装着する装着部と、前記自発呼吸弁ポートの内部と前記管の外とを連通する吸気孔とを有する蓋部材と、
前記吸気圧により作動して前記吸気孔を開閉する吸気弁とを備える、
請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項4】
前記自発呼吸弁は、
前記吸気弁を前記吸気孔に対して押圧して前記吸気孔を閉塞し、所定の前記吸気圧に応じて前記吸気弁が変位するように弾性変形する押圧部材を備える
請求項3記載の人工呼吸器。
【請求項5】
前記管は、前記通気路が複数の分岐路により構成される分岐管である、
請求項1~4何れか1項記載の人工呼吸器。
【請求項6】
前記管は、前記通気路に気体を導入するインプットポートを有する、
請求項1~5何れか1項記載の人工呼吸器。
【請求項7】
前記管は、樹脂を材料とする3Dプリント造形体である、
請求項1~6何れか1項記載の人工呼吸器。
【請求項8】
前記リリーフ弁は、前記通気路の圧力に応じて開閉可能な調圧弁と、前記調圧弁を収容する本体部とを有しており、
前記調圧弁と前記本体部は、樹脂を材料とする3Dプリント造形体である、
請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項9】
前記自発呼吸弁は、前記吸気圧に応じて作動する吸気弁と、前記自発呼吸弁ポートに装着されて前記自発呼吸弁ポートの内部に前記吸気弁を収容する蓋部材とを有しており、
前記吸気弁と前記蓋部材は、樹脂を材料とする3Dプリント造形体である、
請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項10】
前記人工呼吸器は、さらに、前記メインポートと連通する人工鼻を備える、
請求項1~9何れか1項記載の人工呼吸器。
【請求項11】
請求項1~10何れか1項記載の人工呼吸器と、
一端が前記人工呼吸器の前記メインポートに接続され、他端が患者に繋がる患者側呼吸部材とを備える、
人工呼吸器ユニット。
【請求項12】
請求項1~10何れか1項記載の人工呼吸器を備える手動式肺人工蘇生器。
【請求項13】
請求項1~10何れか1項記載の人工呼吸器を備える吸入麻酔器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、麻酔薬吸入補助装置に用いることができ、簡易な構造でありながら、弁体が気体の圧力によって自動で適切に開閉動作するリリーフ弁を提案している(特許文献1)。このリリーフ弁は、電気的な駆動源を必要とせず、例えば人工呼吸器や吸入麻酔器に備えるAPL弁(Adjustable pressure limiting valve)として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2017/115866公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のリリーフ弁と同様に、電気的な駆動源を必要としない簡易な構造でありながら人工呼吸器として用いることができる呼吸器用デバイスは、本発明者の知る限り存在しない。本発明は、心肺蘇生に用いることができる新しい人工呼吸器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、通気路を有する管と、リリーフ弁と、自発呼吸弁とを備える人工呼吸器であって、前記管は、患者の呼気及び吸気が通過可能であるメインポートと、前記メインポートに前記通気路を通じて連通するリリーフ弁ポートと、前記メインポートに前記通気路を通じて連通する自発呼吸弁ポートとを有し、前記リリーフ弁は、前記リリーフ弁ポートに設けられ、前記通気路の圧力に応じて開いて前記通気路を前記管の外と連通して前記圧力を開放可能に構成されており、前記自発呼吸弁は、前記自発呼吸弁ポートに設けられ、前記患者が自発呼吸する吸気圧に応じて開いて前記通気路を前記管の外と連通して吸気可能に構成されている、人工呼吸器として構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、簡易な構造の人工呼吸器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態による人工呼吸器の正面図。
図2図1の人工呼吸器の正面、右側面、平面を含む分解斜視図。
図3図1のIII-III線に沿うリリーフ弁の断面図。
図4図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の正面図。
図5図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の平面図。
図6図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の底面図。
図7図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の右側面図。
図8図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の左側面図。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図。
図10図1の人工呼吸器用の自発呼吸弁付き管の正面、右側面、平面を含む斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一態様による実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。以下の説明で「上」、「下」、「左」、「右」の方向を示す用語は、説明の便宜のために使用するものであり、人工呼吸器1の使用方法、使用態様を示すものではない。本明細書及び特許請求の範囲に記載する「第1」、「第2」・・・「第7」の用語は、発明や実施形態の異なる構成要素を区別するための識別用語として使用するものであり、特定の順序や優劣等を示すものではない。したがって当初明細書に記載の無い「第8」以上を用いることもある。
【0009】
人工呼吸器1は、管2と、リリーフ弁3と、自発呼吸弁4とを備える。人工呼吸器1は、少ない部品点数と簡易な構成により構成することが可能である。
【0010】
管2の説明
【0011】
管2は、中空管で形成されている。本実施形態の管2は、3Dプリンタで成形して得られる樹脂成形体(3Dプリント造形体)である。このため管2は、金型成形によらず容易に製造することができる。管2は、全体が分岐管として形成されている。具体的には管2は、複数に分岐する本体部2aと、メインポート2bと、リリーフ弁ポート2cと、自発呼吸弁ポート2dとを有する。本体部2aはY字形状に分岐しており、図1で示すように、Y字の下端にはメインポート2bが設けられ、Y字の左上端にはリリーフ弁ポート2cが設けられ、Y字の右上端には自発呼吸弁ポート2dが設けられている。このような管2の内部には、通気路2eが形成されている。本実施形態の通気路2eは、本体部2aの形状と同じようにY字形状である。
【0012】
ここで本体部2aから分岐するリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dとの間には支持部2fが形成されている。支持部2fは、3Dプリント時に造形台への定着を助けるとともに管2の反り返りを防止するために設けられている。すなわち、この支持部2fを設けることで、3Dプリント時に必要とされるラフトやサポート材が無くても管2を造形することが可能となっている。また、支持部2fは、リリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dとを繋ぐ補強壁として形成されている。一般的にY字管は、二股に分岐しており、Y字の左上管と右上管との間に隙間が形成されている。そのためY字管をぶつけたり落としたりした際に、左上管と右上管とが折れて破損することがある。これに対して本実施形態の管2では、支持部2fがリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dとを一体に繋いで補強することができる。本実施形態の支持部2fは、薄板形状に形成されている。より具体的にはリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dの肉厚と同程度の厚みで形成されている。このため支持部2fを設けても、管2(人工呼吸器1)の重量増加を抑え、人工呼吸器1が軽量となるように構成することができる。
【0013】
管2には、表示部2gが設けられている。具体的には、メインポート2bと隣接する位置に第1の表示部2g1が設けられ、リリーフ弁ポート2cと隣接する位置に第2の表示部2g2が設けられ、自発呼吸弁ポート2dと隣接する位置に第3の表示部2g3が設けられている。第1の表示部2g1と、第2の表示部2g2と、第3の表示部2g3は、いずれも樹脂成形体の表面に設けた凹凸する形状面として形成されている。そのため人工呼吸器1を使用することによって、例えばシールのように剥がれて表示が消失することが無いようにされている。
【0014】
第1の表示部2g1は、「PATIENT」の文字列と位置合わせ記号とを含む。本実施形態の位置合わせ記号は、三角記号である。第1の表示部2g1は、メインポート2bが人工呼吸器1における患者側接続端であることを示す。人工呼吸器1を使用する際に第1の表示部2g1を見ることで、メインポート2bを正しく患者側呼吸部材に接続できるようにしている。
【0015】
第2の表示部2g2は、「VENT」の文字列と位置合わせ記号とを含む。本実施形態の位置合わせ記号は、三角記号である。第2の表示部2g2の文字列「VENT」は「VENTIRATOR」の略語であり、リリーフ弁ポート2cが人工呼吸器1におけるリリーフ弁3の接続口であることを示す。そして第2の表示部2g2に位置合わせ記号(三角記号)を設けることで、後述するリリーフ弁3に設ける位置合わせ記号(三角記号)との位置合わせが容易となり、リリーフ弁3をリリーフ弁ポート2cに適切に組み付けることができる。
【0016】
第3の表示部2g3は、自発呼吸弁ポート2dに対する自発呼吸弁4の組立手順を示す組立指示記号を含む。組立指示記号は、部品形状を模った部品記号である。第3の表示部2g3には、図1で示すように下から順番に、管2と、押圧ばね4aと、吸気弁4bと、蓋部材4cの各部品記号を含む。このように複数の部品記号を組み付け順に表示することで、自発呼吸弁4に必要な構成部品を確認できるようにし、且つ自発呼吸弁4の複数の構成部品を正しい向きと順序で組み付けることができるようにしている。
【0017】
メインポート2bとリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dは、いずれも円筒形状である。しかしながら、リリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dとの間には支持部2fが形成されているため、リリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dは全周にわたって完全な円筒形状とは言えない。このようにメインポート2bとリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dは、すべて内径及び外径と、外周形状とが異形状である。したがって、メインポート2bに対する患者側呼吸部材を、リリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dに対して接続することは不可能であり、その逆もまた不可能であるため、人工呼吸器1を誤って組み立てることが無いようにされている。
【0018】
メインポート2bは、円筒形状に形成されている。メインポート2bは、本体部2aにおける第1の表示部2g1を付した環状傾斜部2iよりも、外径が小さくなるように形成されている。メインポート2bは患者側呼吸部材に挿入される。このとき環状傾斜部2iは、メインポート2bに挿入された患者側呼吸部材の先端が当接可能であるため、患者側呼吸部材への過剰な挿入を止めるストッパーとして機能する。したがってメインポート2bには患者側呼吸部材を適切に接続することができる。
【0019】
メインポート2bに接続する「患者側呼吸部材」は、人工鼻ユニットの接続口、人工鼻ユニットに接続した蛇管の接続口、患者に装着する蘇生用マスクの接続口、蘇生用マスクに接続した蛇管の接続口、経鼻もしくは経口による気管内挿管チューブや、気管切開チューブ、声門上器具(ラリンジアルマスク)の接続口などを例示することができる。メインポート2bは、それらの患者側呼吸部材に対して挿入によって容易に接続することができる。特に救急現場のように、医療設備や医療器材が整っていない治療現場でも、気管内挿管チューブ等に容易に接続することが可能であり、容易且つスピーディに人工呼吸器1を組み立てて使用することができる。
【0020】
リリーフ弁ポート2cは、円筒形状に形成されており、外周上の1か所が支持部2fと繋がっている。より具体的には、支持部2fは、リリーフ弁ポート2cの開口側端部に到達する位置まで繋がっている。したがってリリーフ弁ポート2cの外周に、例えば患者側呼吸部材を誤って接続してしまうことを防ぐことができる。リリーフ弁ポート2cの内周面は、後述するリリーフ弁3の接続部3a1を圧入して取付けるリリーフ弁保持部2c1となっている。したがって、リリーフ弁3は、リリーフ弁ポート2cに挿入されることで、管2に容易に取付けることができる。
【0021】
自発呼吸弁ポート2dは、円筒形状に形成されている。自発呼吸弁ポート2dは、前述のリリーフ弁ポート2cと同様に、外周上の1か所が支持部2fと繋がっている。より具体的には、支持部2fは自発呼吸弁ポート2dの開口側端部に到達する位置まで繋がっている。したがって自発呼吸弁ポート2dの外周に、例えば患者側呼吸部材を誤って接続してしまうことを防ぐことができる。また、自発呼吸弁ポート2dの内径は、リリーフ弁ポート2cの内径よりも大きく形成されている。そのためリリーフ弁3の接続部3a1を誤って自発呼吸弁ポート2dに挿入しても大きな隙間ができてしまい固定することができない。したがって、自発呼吸弁ポート2dにはリリーフ弁3を取付けることができないようにしている。
【0022】
自発呼吸弁ポート2dの内側には、収容部2d1が形成されている。収容部2d1の上端側(自発呼吸弁ポート2dの開口端側)には、後述の自発呼吸弁4の蓋部材4cを圧入して固定する嵌合受け部2d2が形成されている。本実施形態の嵌合受け部2d2は、嵌合溝として形成されている。したがって、自発呼吸弁4の蓋部材4cを押し込むことで、容易に蓋部材4cを嵌合受け部2d2に嵌合させて、自発呼吸弁ポート2dに固定することができる。
【0023】
リリーフ弁3の説明
【0024】
リリーフ弁3は、本体部3a、調圧弁3b、調圧ばね3c、調圧操作部3d、ストッパー3eを備えている。リリーフ弁3は、APL弁(Adjustable pressure limiting valve)として機能するように構成されている。本実施形態のリリーフ弁3を構成する本体部3a、調圧弁3b、調圧ばね3c、調圧操作部3d、ストッパー3eは、いずれも3Dプリンタで成形して得られる樹脂成形体(3Dプリント造形体)である。このためリリーフ弁3は、金型成形によらず容易に製造することができる。
【0025】
本体部3aは、筒状に形成されている。本体部3aは、接続部3a1と弁箱3a2とを有する。接続部3a1は円筒形状に形成されており、リリーフ弁ポート2cに挿入することで、リリーフ弁3が管2に固定される。これによりリリーフ弁3は管2と一体の構造体として構成される。他方、リリーフ弁ポート2cから接続部3a1を抜去することで、管2からリリーフ弁3を取り外すことができる。つまりリリーフ弁3は管2に着脱可能として構成されている。接続部3a1の外周面には「PATIENT」の文字列と位置合わせ記号でなる第4の表示部3f1が形成されている。本実施形態の位置合わせ記号は三角記号であり、これを前述した第2の表示部2g2の三角記号と位置合わせをすることで、リリーフ弁3を適切にリリーフ弁ポート2cに接続することができる。
【0026】
接続部3a1の上端には湾曲外周面でなる拡径部3a3が形成されている。拡径部3a3の内周面には、弁座3a4が形成されており、弁座3a4には本体部3aの軸方向に沿って貫通する弁孔3a5が形成されている。接続部3a1から調圧操作部3dに向かう通気方向における弁孔3a5の二次側には、弁箱3a2が位置しており、その内部には弁室3a6が形成されている。弁室3a6は、円柱状の収容空間として形成されており、調圧弁3bと調圧ばね3cが収容されている。弁室3a6の上端(本体部3aの二次側開口端)の側には、押圧量調整部3a7が形成されている。本実施形態の押圧量調整部3a7は、後述する調圧操作部3dの螺合部3d1と係合する螺合受け部として形成されている。
【0027】
本体部3aの外周面には、リリーフ弁3の組立手順を示す組立指示記号でなる第5の表示部3f2が、リリーフ弁3の表面形状として形成されている。第5の表示部3f2は、本体部3a、調圧弁3b、調圧ばね3c、調圧操作部3dの各部品記号を含む。このように複数の部品記号を組み付け順に表示することで、リリーフ弁3に必要な構成部品を確認できるようにし、且つリリーフ弁3の複数の構成部品を正しい向きと順序で組み付けることができるようにしている。
【0028】
本体部3aの上端には、現在設定されている調圧弁3bの作動圧力を示す圧力指示部3a8が形成されている。圧力指示部3a8は、本体部3aの上端開口縁を部分的に欠如する凹部として形成されており、その凹部の高さ範囲内に位置する後述する設定圧力表示部3d2が、現在設定されている作動圧力を示している。このように設定圧力表示部3d2は、凹部という形状によって現在設定している作動圧力を分かりやすく表示することができる。
【0029】
本体部3aの上端にはストッパー取付部3a9が形成されている。ストッパー取付部3a9は、前述したストッパー3eの取付台座として形成されている。ストッパー取付部3a9にストッパー3eを圧入することで容易に取付けることができ、これによって調圧操作部3dが本体部3aから離脱することを防ぐことができる。
【0030】
調圧弁3bは、円盤形状に形成されている。前記通気方向における調圧弁3bの一次側面には凸部3b1が形成されている。凸部3b1の先端面3b2が弁座3a4に対して接触又は離間することで、弁孔3a5が開閉する。つまり先端面3b2は、「第1の受圧面」として形成されており、ここに空気の圧力が作用して調圧弁3bが開くように作動する。凸部3b1の外周には、凸部3b1を包囲するように環状受圧部3b3が形成されている。環状受圧部3b3は、先端面3b2が弁座3a4から離れて、弁室3a6に流入した空気の圧力を受ける「第2の受圧面」として構成されている。そのため環状受圧部3b3の内面は角部の無い湾曲凹面として形成されていて、流入する空気が淀まずスムーズに流れるように構成されている。そして環状受圧部3b3が空気の圧力を受けることで、弁孔3a5から離間した調圧弁3bがさらに弁孔3a5から離間するように変位することができる。環状受圧部3b3の外側には、環状周壁部3b4が形成されている。環状周壁部3b4は、その内周面が環状受圧部3b3を形成し、その外周面は弁室3a6を形成する弁箱3a2の内周面との間に通気間隙を形成する。空気はその通気間隙を通じて調圧弁3bの二次側面に流出する。
【0031】
調圧ばね3cは、円錐型の圧縮コイルばねにより構成されており、調圧弁3bの作動圧力(開弁圧)を設定する部材である。調圧ばね3cの小径側となる一次側端部は調圧弁3bの二次側面に当接しており、大径側となる二次側端部は調圧操作部3dの端部と当接している。
【0032】
調圧操作部3dは、調圧弁3bが開閉するための圧力を調整する機能と、弁室3a6に流入する空気を外に排気する機能とを有する。調圧操作部3dの一次側端部には、螺合部3d1が形成されている。螺合部3d1の外周面には弁箱3a2の押圧量調整部3a7と螺合する雄ねじが形成されている。螺合部3d1と押圧量調整部3a7の螺合量を調整することで、調圧ばね3cに常時加える与圧の大きさと調圧弁3bが開閉する作動圧力を設定することができる。このように調圧操作部3dを回転させる容易な操作によって、調圧弁3bの作動圧力を調整することができる。
【0033】
螺合部3d1には、ストッパー3eに対して当接することで調圧操作部3dが本体部3aから抜け出るのを防ぐ係止面3d11が形成されている。さらにこの係止面3d11には、回転規制突起3d12が形成されている。調圧操作部3dを本体部3aに対して螺合を解除する方向に回転操作し続けると、回転規制突起3d12がストッパー3eに当接する。するとそれ以上、調圧操作部3dを回転させることができなくなる。この螺合が最も緩い状態が、調圧弁3bが作動する最低圧(最低の作動圧力(調圧弁3bの開弁圧))に設定されている状態であり、具体的には手動式肺人工蘇生器に求められる規格(例えば、ISO10651-4:2002)に要求される5cmHOとなっている。
【0034】
作動圧力の設定は、螺合部3d1の上に形成されている設定圧力表示部3d2を目視するとよい。設定圧力表示部3d2は、複数の第6の表示部3f3を設けることによって形成されている。第6の表示部3f3は、複数の円錐台状環状面をリリーフ弁3の軸方向に連続して多段に配置して形成されている。各円錐台状環状面には、螺合量が少なく作動圧力が低い順に「MIN」、「MID」、「MAX」の文字列が、樹脂成形体の表面形状(抜き文字状の凹部)として形成されている。
【0035】
設定圧力表示部3d2の上には、ハンドル3d3が形成されている。ハンドル3d3は、大きく外向きに突出する円盤状に形成されていて、これにより掴みやすく回転操作を容易に行えるようにしている。
【0036】
ハンドル3d3の上には、排気管3d4が形成されている。排気管3d4は、円筒状に形成されている。排気管3d4の内周面には、排気管3d4の中心軸に対して放射状に形成した複数の内壁3d41が形成されている。このような内壁3d41を形成することで、排気管3d4の内部には気管カニューレや気管内挿管チューブのような小径の医療用途の管材等であっても物理的に接続できないようにしている。また、排気管3d4の外径は、誤接続を防止するために、特定の蛇管(内径φ18mm)に対してのみ挿入して接続できるように細く形成されている。
【0037】
排気管3d4には、円弧状に排気管3d4の開口縁を部分的に周方向に欠如する脱気用凹部3d42が形成されている。排気管3d4の開口縁が凹凸の無い直線的な端面形状であると、排気管3d4が平面物によって閉塞されやすくなるが、脱気用凹部3d42を設けることで平面物によって塞がれ難くすることができ、リリーフ弁3を適切に動作させることができる。
【0038】
排気管3d4には、「OUT」の文字列と排気方向の記号を示す第7の表示部3f4が樹脂成形体の表面形状として形成されている。これにより排気管3d4が、空気を排出する部位であること、すなわちリリーフ弁3を適切に空圧作動させるために閉塞してはならない注意すべき部位であることを、容易に理解することができる。
【0039】
調圧操作部3dには、中心軸に沿って貫通する排気路3d5が形成されている。排気路3d5は、本体部3aの弁室3a6をリリーフ弁3の外と連通する通気経路として形成されている。
【0040】
自発呼吸弁4の説明
【0041】
自発呼吸弁4は、患者が自発呼吸する吸気圧により開いて管2の通気路2eに空気を取り入れるように機能する。自発呼吸弁4は、押圧ばね4a、吸気弁4b、蓋部材4cを備えている。これらの部品を自発呼吸弁ポート2dに組み付けることで自発呼吸弁4が構成される。自発呼吸弁4の構成部品は、いずれも3Dプリンタで成形して得られる樹脂成形体(3Dプリント造形体)である。このため自発呼吸弁4は、金型成形によらず容易に製造することができる。
【0042】
押圧ばね4aは、円錐型の圧縮コイルばねにより構成されており、吸気弁4bの作動圧(開弁圧)を設定する部材である。押圧ばね4aの大径側となる一次側端部は自発呼吸弁ポート2dの収容部2d1に形成されている支持面2d3に配置される。支持面2d3は、円錐形状面として形成されており、押圧ばね4aを収容部2d1に組み込む際にセンタリングして配置されるようにしている。押圧ばね4aの小径側となる二次側端部は吸気弁4bの一次側面に対して当接して、これを常時押圧している。
【0043】
吸気弁4bの形状は、前述したリリーフ弁3の調圧弁3bと同一である。すなわち、吸気弁4bは、凸部4b1、先端面4b2、環状受圧面4b3、環状周壁部4b4を有し、それらの機能は調圧弁3bと同じである。したがって重複説明を省略する。
【0044】
蓋部材4cは、蓋部4c1と装着部4c2を有する。蓋部4c1は、円盤状に形成されており、その中央には蓋部4c1を貫通する吸気孔4c3が形成されている。蓋部4c1の外面には吸気孔4c3から放射状に形成した複数の通気溝4c4が形成されている。このため平面物が蓋部4c1の外面と接触しても、通気溝4c4が通気経路となるため、吸気孔4c3を完全に塞ぐことがなく、適切に自発呼吸弁4を作動することができる。そして人工呼吸器1の安全性を高めることができる。通気溝4c4と反対側の蓋部4c1の内面には、吸気孔4c3を包囲するように吸気孔用弁座4c5が形成されている。この吸気孔用弁座4c5には、押圧ばね4aの押圧を受ける吸気弁4bが当接している。したがって患者が自発呼吸する所定の吸気圧(開弁圧)までは吸気弁4bが吸気孔用弁座4c5を閉塞している。そして、吸気圧が所定の設定値を超えると、押圧ばね4aの押圧力に対抗して吸気弁4bが変位して吸気孔用弁座4c5が開放される。
【0045】
装着部4c2は、蓋部4c1の内面の外周縁側から円筒状に伸長する部位として形成されている。蓋部4c1の内面と隣接する装着部4c2の外周面には、嵌合部4c6が形成されている。嵌合部4c6は、前述のように自発呼吸弁ポート2dの嵌合受け部2d2に圧入により嵌合される。これにより蓋部材4cは、容易に自発呼吸弁ポート2dに固定することができる。
【0046】
装着部4c2の内径は、吸気弁4bの外径よりも僅かに大きく形成されている。具体的には、装着部4c2の内径は、リリーフ弁3の本体部3aの内径と等しい。つまり吸気弁4bは、リリーフ弁3の調圧弁3bと同様に、装着部4c2の内径面との間に通気間隙を形成している。これによって吸気弁4bは、装着部4c2の内径面をガイド面として、安定した姿勢で自発呼吸弁4の中心軸方向に沿って変位することができる。したがって、自発呼吸弁4においては、装着部4c2の内側空間が、吸気弁4bが作動する弁室4c7を形成している。
【0047】
人工呼吸器1の製造方法
【0048】
人工呼吸器1を構成するには、管2、リリーフ弁3、自発呼吸弁4の構成部品を3Dプリンタにより造形する。そして、リリーフ弁3を第5の表示部3f2で示す順序で組み立てる。管2の自発呼吸弁ポート2dには、自発呼吸弁4の構成部品である第3の表示部2g3で示す順序で組み立てる。これにより自発呼吸弁4を一体構造で備える管2が形成される。最後に、管2のリリーフ弁ポート2cにリリーフ弁3の接続部3a1を接続する。このように3Dプリンタのみを使って、特段の組立工具を使わなくても、簡単な組立作業によって、人工呼吸器1を製造することができる。
【0049】
人工呼吸器1を用いる医療機器の実施態様
【0050】
人工呼吸器1のメインポート2bには、前述のように様々な「患者側呼吸部材」を接続することができる。ここで一例としてメインポート2bは、図示しない人工鼻ユニットの接続口に対して接続することができる。人工鼻ユニットは、インプットポートを有しており、インプットポートには、空気や酸素と空気の混合ガスを供給する配管を接続したり、空気または酸素ボンベ、エアコンプレッサー等を、酸素チューブを介して接続することができる。このような人工鼻ユニットを備える人工呼吸器1によれば、人工鼻ユニットを含めて簡易な構成で人工呼吸器1を実現することができる。
【0051】
また、排気管3d4には、蛇管を接続することができ、蛇管には例えば排気(患者の呼気)に含まれる麻酔ガスを浄化する浄化フィルタを接続することもできる。
【0052】
このように人工呼吸器1は、組み合わせる器械によって多用途で利用可能であり、その一例を以下に示す。以下の各実施態様は、適宜、蛇管や呼吸管を含む構成としてもよい。以下の各実施態様は、さらに、例えば蘇生用マスクや気管内挿管チューブ等の患者側呼吸部材と人工呼吸器1のメインポート2bとの間にスパイロメーターなどの換気量測定器を設けて、1回換気流量(呼吸量)をモニター可能な構成とすることもできる。
【0053】
〔1〕手動式肺人工蘇生器
【0054】
第1の実施態様として、人工呼吸器1は、患者が装着し人工呼吸器1のメインポート2bに繋がる蘇生用マスクや気管内挿管チューブ等の「患者側呼吸部材」と、人工呼吸器1の例えば人工鼻ユニットに設けたインプットポートに繋がる蘇生バッグやフットポンプ等の「手動式気体供給器」と、を少なくとも備えることで、「手動式肺人工蘇生器」として実施することができる。これによれば一般的な手動式肺人工蘇生器に人工呼吸器機能を付与することができる。動力となる空気を供給する方法は、専門の知識がなくても行うことが可能であり、蘇生バッグを揉む、またはフットポンプを踏んで空気を供給し続けさえすれば、リリーフ弁14が圧力を自動で調節可能であるため、手動でも安全に使用できる。また、フットポンプを使用する場合には、足で換気することができて両手が空くので、患者の処置が同時にできて便利である。この手動式肺人工蘇生器は、さらに、蘇生バッグ等の手動式気体供給器に繋がる酸素ガスや混合ガスを給するガス供給源を備える構成とすることもできる。
【0055】
〔2〕人工呼吸器ユニット
【0056】
第2の実施態様として、人工呼吸器1は、患者が装着し人工呼吸器1のメインポート2bに繋がるマスク又は挿管等の「患者側呼吸部材」と、人工呼吸器1のインプットポートに繋がる空気と酸素との混合ガス等を「気体」として供給する「ガス供給源」とを少なくとも備えることで、空圧作動式の「人工呼吸器ユニット」として実施することができる。これによれば、震災時、停電時、すべての人工呼吸器が使用中で空きが無い時などのように、電気的な駆動源を備える人工呼吸器を使えない状況でも、人工呼吸器を行うことができる。
【0057】
〔3〕吸入麻酔器
【0058】
第3の実施態様として、人工呼吸器1は、患者が装着し人工呼吸器1のメインポート2bに繋がるマスク等の「患者側呼吸部材」と、人工呼吸器1のインプットポートに繋がる麻酔ガスを「気体」として供給する「麻酔ガス供給源」と、排気管3d4に繋がる蛇管に接続した「麻酔ガス浄化フィルタ」とを少なくとも備えることで、「吸入麻酔器」として実施することができる。これによれば、簡易な装置構造で吸入麻酔器を実現することができる。
【0059】
人工呼吸器1の効果
【0060】
以下、主要な実施形態の構成を取り上げてそれに対応する効果を説明する。
【0061】
人工呼吸器1は、通気路2eを有する管2と、リリーフ弁3と、自発呼吸弁4とを備えており、管2は、患者の呼気及び吸気が通過可能であるメインポート2bと、メインポート2bに通気路2eを通じて連通するリリーフ弁ポート2cと、メインポート2bに通気路2eを通じて連通する自発呼吸弁ポート2dとを有し、リリーフ弁3は、リリーフ弁ポート2cに設けられ、通気路2eの圧力に応じて開いて通気路2eを管2の外と連通して圧力を開放可能に構成されており、自発呼吸弁4は、自発呼吸弁ポート2dに設けられ、患者が自発呼吸する吸気圧に応じて開いて通気路2eを管2の外と連通して吸気可能に構成されている。このように人工呼吸器1は、電気的な駆動源を必要とせず、簡易な構造でありながら人工呼吸器1として機能する新しい肺人工蘇生器用のデバイスを実現することができる。
【0062】
人工呼吸器1のメインポート2bを「患者側呼吸部材」である例えば人工鼻ユニットに接続する。人工鼻ユニットのさらに一次側は、患者に装着する気管内挿管チューブ等の他の「患者側呼吸部材」に接続されている。また患者には空気と酸素の混合ガス等が供給されている。このような使用状態において患者の気道内圧が所定の閾値、すなわちリリーフ弁3の調圧弁3bの設定された作動圧力(開弁圧)を超えると調圧弁3bが開いて、排気管3d4を通じて空気を外部に排気する。これにより患者の気道内圧の過剰な上昇を抑制することができる。
【0063】
人工呼吸器1は、単回使用の「使い捨て人工呼吸器」として構成することができる。これによれば、人工呼吸器1を複数の患者で使い回すことにより生じる感染症の予防に役立てることができる。
【0064】
前記実施形態の人工呼吸器1は、すべての構成部品を3Dプリントにより成形した樹脂成形体として構成している。金型成形を行うための成形機のような大型設備を用意しなくても、3Dプリンタがあれば人工呼吸器1を製造することが可能である。したがって樹脂成形機のような製造設備を配置することが難しい僻地、離島、飛行機、宇宙船、宇宙ステーション等であっても、人工呼吸器1を製造することが可能である。また、人工呼吸器1が3Dプリント造形体であれば、必要な数量だけオンデマンドで製造することが可能であり経済的である。さらに、人工呼吸器1が3Dプリント造形体であれば、サイズの拡大と縮小のアレンジが容易であるため、様々な体格の動物に適したカスタマイズにも対応することが可能である。そして、金属部材と樹脂部材とに分けた分別廃棄が不要な「使い捨て人工呼吸器」として構成することができる。
【0065】
人工呼吸器1のすべての構成部品は、樹脂成形体にて構成することができ、人工呼吸器1を装着したまま、金属の持ち込みができないMRI室を利用することができる。また、低コスト化も図ることができる。
【0066】
自発呼吸弁4は、吸気圧に応じて作動する吸気弁4bを有し、自発呼吸弁ポート2dは、吸気弁4bを開閉可能に収容する弁室4c7を有する。これによれば、管2の自発呼吸弁ポート2dに自発呼吸弁4を一体に構成できる。そのため人工呼吸器1により人工呼吸管理下にある意識が無い患者が突然意識を取り戻し、自発呼吸により深呼吸をした場合でも、自発呼吸弁4が開弁して患者の吸気を助けることができる。この場合、吸気経路は、自発呼吸弁4、管2の本体部2aの通気路2e、メインポート2bとなる。したがって、さらに、人工呼吸器1の安全性を向上することができる。
【0067】
自発呼吸弁4は、自発呼吸弁ポート2dに装着する装着部4c2と、自発呼吸弁ポート2dの内部と管2の外とを連通する吸気孔4c3とを有する蓋部材4cと、吸気圧により作動して吸気孔4c3を開閉する吸気弁4bとを備える。これによれば、管2の自発呼吸弁ポート2dに自発呼吸弁4を一体に構成できる。したがって、さらに、人工呼吸器1の安全性を向上することができる。
【0068】
自発呼吸弁4は、吸気弁4bを吸気孔4c3に対して押圧して吸気孔4c3を閉塞し、所定の前記吸気圧に応じて吸気弁4bが変位するように弾性変形する押圧ばね4aを備える。これにより自発呼吸弁4は電気的な駆動源を必要とせず空圧で作動させることができる。
【0069】
管2は、通気路2eが複数の分岐路により構成される分岐管にて構成できる。これによれば、管2をシンプルに構成することができ、3Dプリントによる製造を容易にすることができる。
【0070】
リリーフ弁3は、通気路2eの圧力に応じて開閉可能な調圧弁3bと、調圧弁3bを収容する本体部3aとを有しており、調圧弁3bと本体部3aは、樹脂を材料とする3Dプリント造形体にて構成できる。これによればリリーフ弁3を3Dプリンタにて容易に製造することができる。
【0071】
自発呼吸弁4は、吸気圧に応じて作動する吸気弁4bと、自発呼吸弁ポート2dに装着されて自発呼吸弁ポート2dの内部に吸気弁4bを収容する蓋部材4cとを有しており、吸気弁4bと蓋部材4cは、樹脂を材料とする3Dプリント造形体にて構成できる。これによれば自発呼吸弁4を3Dプリンタにて容易に製造することができる。
【0072】
実施形態の変形例
【0073】
前記実施形態では、人工呼吸器1の構成部品をすべて3Dプリント造形体とする例を示したが、金型成形による樹脂成形体としてもよい。
【0074】
前記実施形態では、人工呼吸器1の各部品を樹脂で構成する例を示したが、各部品の全部または一部を金属製としてもよい。金属製の場合、切削体、鋳造体、金属3Dプリンタによる3Dプリント造形体などの基本的な製造方法の違いを問わず、金属材料で製造したものであれば、どのようなものでもよい。これにより、人工呼吸器1と各部品の耐久性を高めることできる。例えば調圧ばね3c、押圧ばね4aは、樹脂成形体である例を示したが、金属ばねでもよい。
【0075】
前記実施形態では、管2に支持部2fを設ける例を示したが、支持部2fを無くしてリリーフ弁ポート2cと自発呼吸弁ポート2dとの間に隙間があるように構成してもよい。
【0076】
前記実施形態では、管2(本体部2a)がY字形状である例を示したが、T字形状でもよい。3つの開口端を有する形状ではなく、さらに4つ以上の開口端を有する形状とし、使わない開口端は着脱可能な蓋で閉止しておいてもよい。
【0077】
前記実施形態では通気路2eに気体を導入するインプットポートを管2に設けない例を示したが、管2にインプットポートを設けてもよい。このインプットポートには、空気や酸素と空気の混合ガスを供給する配管を接続したり、空気または酸素ボンベ、エアコンプレッサー等を、酸素チューブを介して接続することができる。
【0078】
前記実施形態では第1の表示部2g1~第7の表示部3f4を樹脂成形体の表面形状として設ける例を示したが、それらはレーザーによる刻印部や貼り付けた印刷シールによって構成することもできる。
【0079】
なお、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の構成及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0080】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、人工呼吸器1、人工呼吸器ユニット、手動式肺人工蘇生器、吸入麻酔器の構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 人工呼吸器
2 管
2a 本体部
2b メインポート
2c リリーフ弁ポート
2c1 リリーフ弁保持部
2d 自発呼吸弁ポート
2d1 収容部
2d2 嵌合受け部
2d3 支持面
2e 通気路
2f 支持部
2g 表示部
2g1 第1の表示部
2g2 第2の表示部
2g3 第3の表示部
2i 環状傾斜部
3 リリーフ弁
3a 本体部
3a1 接続部
3a2 弁箱
3a3 拡径部
3a4 弁座
3a5 弁孔
3a6 弁室
3a7 押圧量調整部
3a8 圧力指示部
3a9 ストッパー取付部
3b 調圧弁
3b1 凸部
3b2 先端面
3b3 環状受圧部
3b4 環状周壁部
3c 調圧ばね
3d 調圧操作部
3d1 螺合部
3d11 係止面
3d12 回転規制突起
3d2 設定圧力表示部
3d3 ハンドル
3d4 排気管
3d41 内壁
3d42 脱気用凹部
3d5 排気路
3e ストッパー
3f 表示部
3f1 第4の表示部
3f2 第5の表示部
3f3 第6の表示部
3f4 第7の表示部
4 自発呼吸弁
4a 押圧ばね(押圧部材)
4b 吸気弁
4b1 凸部
4b2 先端面
4b3 環状受圧部
4b4 環状周壁部
4c 蓋部材
4c1 蓋部
4c2 装着部
4c3 吸気孔
4c4 通気溝
4c5 吸気孔用弁座
4c6 嵌合部
4c7 弁室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10