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  • 特開-熱交換器のヘッダプレート構造 図1
  • 特開-熱交換器のヘッダプレート構造 図2
  • 特開-熱交換器のヘッダプレート構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060111
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】熱交換器のヘッダプレート構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/26 20060101AFI20220407BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F28F9/26
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168125
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】小室 朗
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
(72)【発明者】
【氏名】久保田 熙
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065AA07
3L065BA11
3L103AA01
3L103AA06
3L103AA10
3L103CC02
3L103CC09
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD32
3L103DD34
(57)【要約】
【課題】 複合型熱交換器に配置されるダミーチューブ挿通孔6の近傍の偏平チューブ32及び、ヘッダプレート1に生じる熱応力及び歪みを低減させること。
【解決手段】 ダミーチューブ挿通孔6とそれに隣接する端部チューブ挿通孔5とのピッチH2を、その部分以外の各チューブ挿通孔4間のピッチH1より大きくする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する短辺部と、その両短辺部間を連結する一対の長辺部とからなる偏平な多数のチューブ挿通孔(4)が底面(10)に形成された細長いヘッダプレート(1)と、
前記ヘッダプレート(1)にシールリング(31)を介して、カシメ固定されるタンク本体(21)と、
前記ヘッダプレート(1)に端部が挿通されて、その挿通部がろう付固定されてコアを形成する偏平チューブ(32)と、
を具備し、
前記多数のチューブ挿通孔(4)の短辺部がヘッダプレート(1)の幅方向に位置して、それらのチューブ挿通孔(4)が互いにヘッダプレート(1)の長手方向に離間して配置されており、
前記タンク本体(21)内には、それを長手方向に複数に区画する一対の仕切部(22)を有し、前記チューブ挿通孔(4)のうち、前記仕切部(22)の間に配置されたチューブ挿通孔(4)がダミーチューブ挿通孔(6)として形成され、前記ダミーチューブ挿通孔(6)の位置でコアが区画された熱交換器のヘッダプレート構造において、
前記ダミーチューブ挿通孔(6)の両側に隣接して配置された前記チューブ挿通孔(4)が端部チューブ挿通孔(5)として形成されており、
前記ダミーチューブ挿通孔(6)と、それに隣接する前記端部チューブ挿通孔(5)とのピッチ(H2)が、その部分以外の各チューブ挿通孔(4)間のピッチ(H1)より大きいことを特徴とする熱交換器のヘッダプレート構造。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器のヘッダプレート構造において、
前記ダミーチューブ挿通孔(6)と、それに隣接する前記端部チューブ挿通孔(5)とのピッチ(H2)が、その部分以外の各チューブ挿通孔(4)間のピッチ(H1)の1.1以上、大きいことを特徴とする熱交換器のヘッダプレート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱媒体を流通することができる熱交換器のヘッダプレート構造に関し、特に、偏平チューブ及びヘッダプレートに生じる熱応力及び歪みの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の熱交換器は、複数の熱媒体を流通することができるように、第1コア34と第2コア35を一体化したものである。
これは図3(A)に示す如く、ヘッダプレート1の中間にダミーチューブ挿通孔6を配置し、その両側に一対の第1コア34と第2コア35を配置したものである。各コア34、35には等間隔に、チューブ挿通孔4がヘッダプレート1に穿孔されており、各チューブ挿通孔4の間隔はダミーチューブ挿通孔6の両側に位置するチューブ挿通孔4のピッチH1と、各コア34、35のチューブ挿通孔4間のピッチH1とが同一である。
これにより、熱交換器を組み立てる際に、ダミーチューブ挿通孔6とチューブ挿通孔4とを区別することなく組み立てることができ、組み立ての作業性を向上させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-115991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された熱交換器は、第1コア34と第2コア35に流入する各熱媒体に温度差が存在すると、それらのコア34、35間に熱歪みが生じる。そして、熱交換器が稼働される毎に、両コア34、35間に熱応力が生じ、永年使用によりタンクの仕切部近傍の偏平チューブに亀裂が生じるおそれがある。
そこで本発明は、タンクの仕切部近傍の偏平チューブに生じる熱応力及び歪みの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、一対の対向する短辺部と、その両短辺部間を連結する一対の長辺部とからなる偏平な多数のチューブ挿通孔4が底面10に形成された細長いヘッダプレート1と、
前記ヘッダプレート1にシールリング31を介して、カシメ固定されるタンク本体21と、
前記ヘッダプレート1に端部が挿通されて、その挿通部がろう付固定されてコアを形成する偏平チューブ32と、
を具備し、
前記多数のチューブ挿通孔4の短辺部がヘッダプレート1の幅方向に位置して、それらのチューブ挿通孔4が互いにヘッダプレート1の長手方向に離間して配置されており、
前記タンク本体21内には、それを長手方向に複数に区画する一対の仕切部22を有し、前記チューブ挿通孔4のうち、前記仕切部22の間に配置されたチューブ挿通孔4がダミーチューブ挿通孔6として形成され、前記ダミーチューブ挿通孔6の位置でコアが区画された熱交換器のヘッダプレート構造において、
前記ダミーチューブ挿通孔6の両側に隣接して配置された前記チューブ挿通孔4が端部チューブ挿通孔5として形成されており、
前記ダミーチューブ挿通孔6と、それに隣接する前記端部チューブ挿通孔5との間隔H2が、その部分以外の各チューブ挿通孔4間のピッチH1より大きいことを特徴とする熱交換器のヘッダプレート構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の熱交換器のヘッダプレート構造において、
前記ダミーチューブ挿通孔6と、それに隣接する前記端部チューブ挿通孔5とのピッチH2が、その部分以外の各チューブ挿通孔4間のピッチH1の1.1以上、大きいことを特徴とする熱交換器のヘッダプレート構造である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ダミーチューブ挿通孔6と、それに隣接する端部チューブ挿通孔5とのピッチH2が、その部分以外の各チューブ挿通孔4間のピッチH1より大きいものである。
これにより、偏平チューブ32の熱膨張により発生する応力をチューブ間の間隔が大きいヘッダプレートに分散させることで、応力を低下させることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記ピッチH2が、各コア部34、35の各偏平チューブ4間のピッチH1の1.1以上、大きいので、応力の分散効果が高く、熱応力が低減することで、熱交換器の耐久性をさらに効果的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の熱交換器の正面図。
図2図1におけるII-II矢視方向の部分横断面図(A)及び(A)のB-B矢視断面図。
図3】従来の熱交換器の部分横断面図(A)及び(A)のB-B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の熱交換器の正面図であり、図2(A)は図1のII-II矢視方向の部分横断面図、図2(B)は図2(A)のB-B矢視断面図である。
この熱交換器のタンクは、タンク本体21とヘッダプレート1により構成されている。
タンク本体21は、この実施例では合成樹脂材からなり、ヘッダプレート1に接続される側に開口を有する箱状に形成されている。その開口に対向してヘッダプレート1に底面10が形成されている。タンク本体21の開口の縁には、図示しないタンク本体21の外側に向けて膨出した小フランジが形成されている。
そして、タンク本体21の内部には、一例として、偏平チューブ32の短手方向の幅一本分程度離間して、一対の仕切部22が対向して配置されている。その仕切部22は、図2(B)に記載の如く、タンク本体21の長手方向の中間位置に形成されており、タンク本体21の底からヘッダプレート1の底面10に向けて形成されている。その仕切部22の端部がそれぞれ環状のシールリング31を介してヘッダプレート1の底面10に接続されている。
一対の仕切部22によってタンク本体21の内部が区分され、その一対の仕切部22の両側に、第1タンク部23と第2タンク部24が形成される。
【0011】
ヘッダプレート1は、平面方形で細長く形成されている。ヘッダプレート1の底面10には、図2(A)に示す如く、一対の対向する短辺部と、その両短辺部間を連結する一対の長辺部とからなる複数の偏平なチューブ挿通孔4が形成されている。チューブ挿通孔4の短辺部はヘッダプレート1の幅方向に位置しており、それらのチューブ挿通孔4が互いにヘッダプレート1の長手方向に離間して配置されている。
このヘッダプレート1には、ヘッダプレート1の長手方向の中間部の位置、具体的には、タンク本体21に形成された一対の仕切部22の間に相当する位置に、ダミーチューブ挿通孔6(チューブ挿通孔4と同様に一対の短辺部と一対の長辺部とからなる)が形成されている。
そのダミーチューブ挿通孔6を挟んで、その両側に端部チューブ挿通孔5(チューブ挿通孔4と同様に一対の短辺部と一対の長辺部とからなる)及びチューブ挿通孔4が順に並列されている。
各チューブ挿通孔4及び端部チューブ挿通孔5、並びにダミーチューブ挿通孔6の内周は同一である。各挿通孔4、5、6の孔縁には、タンク本体21の内側に向けて突出するバーリング8が形成されている。バーリング8の頂部近傍の内側は、偏平チューブ32と接合しやすいように、平坦な面に形成されている。
【0012】
ヘッダプレート1の外周には、図1に記載の如く、タンク本体21側に立ち上がる外周壁が形成されており、その先端部にカシメ用の爪部13が形成されている。
チューブ挿通孔4の形成された底面10には、図2(A)に示す剛性部14が形成されている。
この剛性部14の底面10の外周縁とヘッダプレート1の外周壁との間に、図2(A)に示すように、溝11が形成される。剛性部14の底面10は、ダミーチューブ挿通孔6及び端部チューブ挿通孔5の形成されている底面10の剛性よりも高くなる。この剛性部14は、例えば、タンク本体21側に向けて膨出するリブや、剛性部14の領域の全体を隆起して設けることができる。また、剛性部14の領域内に形成されるチューブ挿通孔4のバーリング高さを、高く形成することができる。
この熱交換器は、多数の偏平チューブ32が並列されてコアを形成している。各挿通孔4、5、6には偏平チューブ32の端部が挿通され、偏平チューブ32と各挿通部4、5、6のバーリング8の接合面との間がろう付固定されている。各偏平チューブ32間には、図2(B)のように、コルゲートフィン33を配置することができる。
【0013】
ヘッダプレート1の溝11、及びダミーチューブ挿通孔6とそれに隣接する端部チューブ挿通孔5の間にあるチューブ間シール面12に、図2(A)、図2(B)に示す如く、シールリング31が配置される。ヘッダプレート1に、シールリング31を介して、タンク本体21の開口が嵌着される。そして、ヘッダプレート1の爪部13がタンク本体21の小フランジ側にカシメられることにより、図1に示す如く、タンク本体21とヘッダプレート1とが固定される。
一対の仕切部22は、図2(B)に示す如く、チューブ間シール面12の位置で、それらの先端がシールリング31に当接する。
【0014】
ダミーチューブ挿通孔6と、タンク本体21内の一対の仕切部22と、そのダミーチューブ挿通孔6に挿入される偏平チューブ32とにより、そのダミーチューブ挿通孔6を境にして、ヘッダプレート1の長手方向の両側でコアが区分される。
第1タンク部23側には第1コア34が配置され、第2タンク部24側に第2コア35が配置され、それらのコア34、35に異なる熱媒体を流通させることができる。一例として、第1コア34にはエンジン冷却水が流通し、第2コア35にはオイルクーラのオイルやインバータ等の電子回路用冷却水を流通させることができる。
【0015】
上述の熱交換器は、各コア34、35に流入する熱媒体に温度差がある場合、それらのコア34、35間に熱歪みが生じ、熱交換器が稼働される毎に、両コア34、35間に熱応力が生じる。特に、両コア34、35の境となるタンク本体21の仕切部22の近傍に位置する偏平チューブ32に熱応力が生じやすい。
ダミーチューブ挿通孔6及び端部チューブ挿通孔5が形成された底面10の領域については、それらの挿通孔5、6の周縁部の剛性を、それ以外の剛性に対して弱く形成するため、剛性部14が形成されていない。これにより、タンク本体21の仕切部22の近傍に位置するダミーチューブ挿通孔6及び端部チューブ挿通孔5に挿通される偏平チューブ32に生じる応力を吸収している。端部チューブ挿通孔5の数が多くなるほど、その効果が顕著になる。この例では、ダミーチューブ挿通孔6の両側に隣接してそれぞれ3つの端部チューブ挿通孔5が形成されている。
【0016】
この実施例は、より効果的に仕切部22の近傍に生じる熱応力を低減するための構造を有する。
ダミーチューブ挿通孔6と、それに隣接する端部チューブ挿通孔5とのピッチH2が、その部分以外の各チューブ挿通孔4間のピッチH1よりも大である。
その部分以外の各チューブ挿通孔4間とは、各端部チューブ挿通孔5間と、ダミーチューブ挿通孔6を中心にして最外側に位置する端部チューブ挿通孔5に隣接するチューブ挿通孔4間、さらにその外側に位置する各チューブ挿通孔4間のことをいう。
このように、両チューブ挿通孔6、5間のピッチH2を広げることにより、ダミーチューブ挿通孔6に隣接する端部チューブ挿通孔5との間に発生する応力を、ヘッダプレート1のダミーチューブ挿通孔6とそれに隣接する端部チューブ挿通孔5の間の領域に分散させることができる。それ故、そこに発生する応力を低下させることが可能となる。
一例として、ピッチH2は、ピッチH1の1.1以上とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、複数の熱媒体を流通することができる熱交換器として利用することができ、特に、ラジエータの構造に好適である。
【符号の説明】
【0018】
1 ヘッダプレート
4 チューブ挿通孔
5 端部チューブ挿通孔
6 ダミーチューブ挿通孔
8 バーリング
10 底面
11 溝
12 チューブ間シール面
13 爪部
14 剛性部
【0019】
21 タンク本体
22 仕切部
23 第1タンク部
24 第2タンク部
【0020】
31 シールリング
32 偏平チューブ
33 コルゲートフィン
34 第1コア
35 第2コア
H1 ピッチ
H2 ピッチ
図1
図2
図3