(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060115
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20220407BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
B23K26/382
H05K3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168132
(22)【出願日】2020-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新井 利博
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168CB04
4E168EA11
4E168EA15
4E168JB01
4E168KA18
(57)【要約】
【課題】プリント基板にレーザを使用して穴あけを行うためのレーザ加工において、複数の穴あけを順次行う場合、ガルバノスキャナへの負担を軽減できるような加工順路で加工を行う。
【解決手段】レーザ照射の範囲となるスキャンエリアを略矩形の短冊状の複数のエリアに分割し、前記複数のエリアをさらに略矩形の短冊状の複数のサブエリアに分割し、前記サブエリア内における穴あけ位置が、前記エリアの長手方向で隣接するサブエリア間で、サブエリア内の穴の加工順路の方向が、相互に逆になるように決定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の複数の加工位置にレーザ照射を行う経路を加工前に決定するようにしたレーザ加工方法において、レーザ照射の範囲となるスキャンエリアを略矩形の短冊状の複数のエリアに分割し、前記複数のエリアをさらに略矩形の短冊状の複数のサブエリアに分割し、前記サブエリア内における穴あけ位置が、エリアの長手方向で隣接するサブエリア間で、サブエリア内の穴の加工順路の方向が、相互に逆になるような経路に決定することを特徴とする、レーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法を実行する制御部を備えていることを特徴とする、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板にレーザを使用して穴あけを行うためのレーザ加工において、複数の穴あけを順次行う場合の加工順路の決定方法を改善したレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の穴あけを順次行う場合の加工順路の決定方法として、特許文献1に記載されるように、加工時間を短縮するため最短経路となるように加工順路を決定する方法や、特許文献2に記載されるように、熱影響により加工精度が低下しないように加工順路を決定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-195112号公報
【特許文献2】特開2008-049398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、レーザの加工地点の位置を決めるガルバノスキャナにとって、一方向への連続移動や、左右または、上下方向の繰返し移動は、ガルバノスキャナ内部の軸受に負担がかかるため、寿命を低下させる要因の一つとなっていた。そこで、本願発明は、ガルバノスキャナへの負担を軽減できる加工順路を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工方法は以下の通りである。被加工物の複数の加工位置にレーザ照射を行う経路を加工前に決定するようにしたレーザ加工方法において、レーザ照射の範囲となるスキャンエリアを略矩形の短冊状の複数のエリアに分割し、前記複数のエリアをさらに略矩形の短冊状の複数のサブエリアに分割し、前記サブエリア内における穴あけ位置が、前記エリアの長手方向で隣接するサブエリア間で、サブエリア内の穴の加工順路の方向が、相互に逆になるように決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、穴あけ位置がランダムに配置されていても、ガルバノスキャナのX方向とY方向の駆動が交互に行われるので、ガルバノスキャナの負担が軽減されて、ガルバノスキャナの寿命の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施例となるレーザ穴あけ装置のブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施例におけるスキャンエリアの分割図である。
【
図3】本発明の第1の実施例となる、エリアの分割図である。
【
図4】本発明の第1の実施例となる、加工順路を説明する図である。
【
図5】本発明の第1の実施例となる、加工順路を説明する図である。
【
図6】本発明の第1の実施例となる、加工順路を説明する図である。
【
図7】本発明の第1の実施例となる、加工順路を説明する図であり。
【
図8】本発明の第2の実施例となる、スキャンエリアの分割図である。
【
図9】本発明の第2の実施例となる、加工順路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
本発明の第1の実施例について説明する。
図1は本発明の第1の実施例となるレーザ穴あけ装置のブロック図である。
図1において、1は穴あけ加工を行うプリント基板、2はプリント基板1が載置されるテーブル、3はレーザパルスの照射位置を移動させるためのレーザ走査系で、ここには、X軸系とY軸系のための一対のガルバノスキャナ4や集光(fθ)レンズ5等が設けられる。6はレーザパルスをレーザ走査系3に供給するレーザパルス供給系で、ここにはレーザパルスを発振させるレーザ発振器7や分岐制御によってレーザ走査系3へのレーザパルスの出力制御を行う音響光学変調器(AOM)8等が含まれる。
【0009】
9はテーブル2のX軸方向とY軸方向の位置制御を行うテーブル制御部で、固定位置のレーザ走査系3に対しテーブル2を相対移動させることによりレーザ走査系3によるスキャンエリアの位置を変化させるためのものである。10はレーザ走査系3内のガルバノスキャナ4の動作を制御するガルバノ制御部、11はレーザパルス供給系6でのレーザ走査系3へのレーザパルスの出力を制御するレーザ制御部である。テーブル制御部9とガルバノ制御部10には、それぞれX軸系のものとY軸系のものの一対が備えられているが、
図1では省略して示してある。
【0010】
ガルバノスキャナ4によるレーザ照射の範囲となるスキャンエリアはX軸方向とY軸方向に特定の長さを持つ矩形をしており、固定位置のレーザ走査系3に対しテーブル2を相対移動させることによりスキャンエリアを移動させ、プリント基板1の加工領域全体を加工するようになっている。
【0011】
図1において、20は装置全体の動作を制御する全体制御部で、例えばプログラム制御の処理装置によって実現され、いくつかの要素が含まれる。そのうちの一つである加工計画部21は、加工動作を始める前に、加工データファイル22に格納されたプリント基板1の加工データに基づき、以下で説明するような加工順路の決定も含んだ加工動作を制御するための加工プログラムを作成し、それを加工プログラムファイル23に格納する。加工制御部24は加工を行う段階で加工プログラムファイル23に格納された加工プログラムを読出し、それに基づいてテーブル制御部9、ガルバノ制御部10及びレーザ制御部11を制御し、加工動作を実行する。なお、
図1において、テーブル制御部9、ガルバノ制御部10及びレーザ制御部11は、全体制御部20とは別個に構築してあるが、これらの全部あるいは一部は、全体制御部20の中の要素として構築されていてもよい。
【0012】
本実施例において、加工順路は以下の方法で決定する。
図2は本実施例におけるスキャンエリアの分割図である。まず、
図2に示すように、任意の間隔で略矩形の短冊状に、エリア1~Nとして分割する。本実施例においては、各エリア1~NがY方向に隣接して並ぶように分割している。次に、各エリア1~Nをさらに略矩形の短冊状に、エリアの長手方向と垂直になるようにサブエリアとして分割する。
図3は、本実施例における、エリアの分割図である。例えば、エリア1については、サブエリア1.1~1.Nのように分割する。各エリア内のサブエリアは、X方向に隣接して並ぶことになり、各サブエリアの幅は、加工する穴の最小穴間距離以下となるようにする。このようにして、スキャンエリア全体をサブエリア1.1~N.Nに分割する。
【0013】
次に、
図4に示すように、スキャンエリアの任意の角に位置するサブエリア1.1内で、サブエリアの長手方向で最もスキャンエリアの端に近い穴を始点とし、サブエリアの長手方向に沿って、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。
【0014】
サブエリア1.1内の加工順路が決定したら、同一エリア1内で隣接するサブエリア1.2内の穴を、スキャンエリアの端から最も遠い位置にある穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。なお、各サブエリア内の終点は、次に加工順路が決定されるサブエリア内の始点につながる。
【0015】
サブエリア1.2内の加工順路が決定したら、同一エリア1内で隣接し、加工順路が未決定のサブエリア1.3内の穴を、スキャンエリアの端に最も近い穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。このように繰り返していき、エリア1内のすべてのサブエリア(1.1~1.N)内の穴の加工順路を決定していく。エリア1内の最後のサブエリアである1.N内の加工順路が決定したら、つまりエリア1内のすべての穴の加工順路が決定したら、
図5に示すようにエリア1.Nに隣接するエリア2.N内の穴を、エリア1に最も近い穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。
【0016】
サブエリア2.N内の加工順路の決定が完了したら、同一エリア2内で、加工順路が決定されていない、隣接するサブエリア2.N-1内の穴を、エリア1から最も遠い位置にある穴を始点とし、該始点に接近する方向に加工順路を決定する。サブエリア2.N-1内の加工順路が決定したら、同一エリア2内で隣接する、加工順路が未決定のサブエリア2.N-2内の穴を、エリア1に最も近い穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。このように繰り返していき、エリア2内のすべてのサブエリア内の穴の加工順路を決定していく。
【0017】
エリア2内のすべての穴の加工順路が決定したら、エリア1から遠ざかる方向にサブエリアエリア2.1に隣接するエリア3.1内の穴を、エリア1に最も近い位置にある穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。
【0018】
この並び順はつまり、隣接するサブエリア間で、サブエリア内の穴の加工順路の長手方向の向きが、相互に逆になるように配置するものといえる。このように繰り返していき、スキャンエリア内にあるすべての穴の加工順路を決定する。
【0019】
なお、加工すべき穴が存在しないサブエリアについては、
図6や
図7に示すように該サブエリアを飛ばし、該サブエリアに隣接するサブエリア内の加工順路を決定する。また、加工すべき穴が存在しないエリアについては、そのエリアを飛ばし、そのエリアに隣接する次のエリア内のサブエリアの加工順路を決定する。
【0020】
上記のように、各サブエリア内ではY方向に沿って略一列に穴位置が配列される。一方で、各エリア内におけるサブエリアはX方向に配列される。そのため、加工時には、各サブエリア内におけるY方向の移動が支配的なガルバノ駆動と、隣接するサブエリアへのX方向の移動が支配的なガルバノ駆動とが、交互に動作することになる。このように交互の動作とすることで、ガルバノスキャナに対する負担が軽減する。
【0021】
なお、本実施例においては、各エリアが
図1のY方向に並ぶようにし、各サブエリアが各エリア内でX方向に並ぶように配置した。しかし、本実施例の配置を90°回転させた配置、つまり、各エリアをX方向に並ぶように配列し、各サブエリアが各エリア内でY方向に並ぶような配置にしてもよい。この場合には、本実施例のXとYとを入れ替えた方法で加工順路を決定すればよい。
【0022】
なお、本実施例の配置による加工順路と、本実施例の配置を90°回転させた加工順路とを、スキャンエリア毎に交互に入れ替えるようにすると、ガルバノスキャナのX方向の駆動とY方向の駆動との割合が等しくなるので、ガルバノスキャナの負担をさらに軽減できる。
次にエリア1について、第1の実施例と同様の方法で、全てのサブエリアの加工順路を決定する。サブエリア1.Nの加工順路を決定したら、サブエリア2.1内で、エリア2の長辺が接するスキャンエリアの端辺に最も近い穴を始点とし、該始点から遠ざかるように経路を決定する。サブエリア2.1内の加工順路を決定したら、同一エリア2内で、加工順路が決定されていない、隣接するサブエリア2.2内の穴を、該端辺から最も遠い位置にある穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。サブエリア2.2内の加工順路が決定したら、同一エリア2内で隣接する、加工順路が未決定のサブエリア2.3内の穴を、該端辺に最も近い穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。このように繰り返していき、エリア2内のすべてのサブエリア(2.1~2.N)内の穴の加工順路を決定していく。
エリア2内のすべての穴の加工順路が決定したら、エリア2.Nが接するエリア3.1内の穴を、エリア3の長手方向の辺が接するスキャンエリアの端辺から最も近い位置にある穴を始点とし、該始点から遠ざかる方向に加工順路を決定する。このように繰り返していき、スキャンエリア内のすべての穴の加工順路を決定する。なお、各サブエリアの幅を、最小の穴間距離よりも短い任意の値とすることは、第1の実施例と同様である。
上記の加工順路では、Y軸方向の駆動が支配的となる移動と、X軸方向の駆動が支配的となる移動とが、交互に繰り返されるので、全体として、一方向への連続移動や、左右方向または上下方向の繰返しを行わなくなるので、ガルバノスキャナを構成するモータの軸の変摩耗等の原因となる動作を軽減できる。これにより、ガルバノモータの使用寿命の低下を軽減できる。