(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060140
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】芳香カートリッジ
(51)【国際特許分類】
A24B 15/16 20200101AFI20220407BHJP
【FI】
A24B15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081468
(22)【出願日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2020167766
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB22
4B043BC02
4B043BC10
4B043BC19
4B043BC24
4B043BC28
(57)【要約】
【課題】ワサビ由来の良好な風味を有し、かつ健康に有用な芳香カートリッジを提供する。
【解決手段】 芳香カートリッジは、電気的加熱手段を有する吸引器具に装着され、前記電気的加熱手段により加熱されることによってエアロゾルを発生させる。芳香カートリッジは、筒状のカバーと、前記カバーに収容され、加熱されることによって芳香成分を含有するエアロゾルを発生させる芳香基材と、前記カバーに収容されたフィルタと、ワサビ抽出物と、を含む。前記ワサビ抽出物は、液状若しくは固体状をなすか、又はカプセル化されて、前記芳香カートリッジのいずれか1箇所以上に含有されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的加熱手段を有する吸引器具に装着され、前記電気的加熱手段により加熱されることによってエアロゾルを発生させる芳香カートリッジにおいて、
筒状のカバーと、
前記カバーに収容され、加熱されることによって芳香成分を含有するエアロゾルを発生させる芳香基材と、
前記カバーに収容されたフィルタと、
ワサビ抽出物と、を含み、
前記ワサビ抽出物は、液状若しくは固体状をなすか、又はカプセル化されて、前記芳香カートリッジのいずれか1箇所以上に含有されていることを特徴とする芳香カートリッジ。
【請求項2】
前記ワサビ抽出物は、アリルイソチオシアネートを含む請求項1に記載の芳香カートリッジ。
【請求項3】
前記アリルイソチオシアネートを芳香カートリッジ1本当たり、1~50mg含む、請求項2に記載の芳香カートリッジ。
【請求項4】
前記ワサビ抽出物は、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【請求項5】
前記6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを芳香カートリッジ1本当たり、0.1~5mg含む、請求項4に記載の芳香カートリッジ。
【請求項6】
前記ワサビ抽出物は、油脂、アルコール系溶媒から選ばれた溶媒に溶解して含有されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【請求項7】
前記芳香基材は、植物の粉砕乾燥物と、エアロゾルフォーマと、前記ワサビ抽出物と、を前記芳香基材に収着させる収着剤と、を含み、
前記ワサビ抽出物は、前記芳香基材の原料中に混合されて含有されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【請求項8】
前記芳香基材及び前記フィルタの間に配置された支持部材と、を含み、
前記ワサビ抽出物は、カプセル化されて、(a)前記芳香基材の中、(b)前記芳香基材と前記支持部材の間、(c)前記支持部材の中、(d)前記支持部材と前記フィルタの間、(e)前記フィルタの中、から選ばれた少なくとも1箇所に配置されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【請求項9】
前記カプセルは、前記ワサビ抽出物が、アルギン酸塩、ペクチンから選ばれたゲル化剤を含むペースト液で被覆され、
該ペースト液がカルシウムイオンによって凝固して形成されたものである、請求項8に記載の芳香カートリッジ。
【請求項10】
前記ワサビ抽出物の他に、前記芳香成分として清涼化剤、風味料、香料から選ばれた少なくとも1種が含有されている、請求項1乃至9のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【請求項11】
前記カプセルは、前記ワサビ抽出物及び前記芳香成分を内包する請求項1乃至10のいずれかに記載の芳香カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的加熱手段を有する吸引器具に装着され、当該電気的加熱手段によって加熱されることによって芳香成分を含有するエアロゾルを発生させることが可能な芳香カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
ワサビには、ユーザが食した際に鼻に抜ける独特の風味がある。このため、ワサビは、香辛料として広く使用されている。タバコに関してワサビの利用を開示した文献として、例えば、特許文献1には、オーラルタバコの香味の材料として、ホースラディッシュ(ワサビ)を用いることが記載されている。
【0003】
また、ワサビの独特の風味を食品に添加することも行われている。例えば、特許文献2においては、ワサビ香気成分を封入したマイクロカプセルを含有せしめたドレッシングタイプ調味料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表2011/122567号公報
【特許文献2】特開平9-65853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、少ない芳香成分の含有量で、かつ深みのある風味を提供することが可能な芳香カートリッジの開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ワサビ由来の良好な風味を有し、かつ健康に有用な芳香カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の芳香カートリッジは、電気的加熱手段を有する吸引器具に装着され、前記電気的加熱手段により加熱されることによってエアロゾルを発生させる芳香カートリッジにおいて、筒状のカバーと、前記カバーに収容され、加熱されることによって芳香成分を含有するエアロゾルを発生させる芳香基材と、前記カバーに収容されたフィルタと、ワサビ抽出物と、を含み、前記ワサビ抽出物は、液状若しくは固体状をなすか、又はカプセル化されて、前記芳香カートリッジのいずれか1箇所以上に含有されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ワサビ抽出物が液状若しくは固体状をなして、又はカプセル化されて、前記芳香カートリッジのいずれか1箇所以上に含有されていることにより、芳香基材から発生するエアロゾルにワサビ抽出物を含有させることが可能となる。その結果、ユーザは、エアロゾルと一緒に芳香基材から発生した芳香成分及び気化したワサビ抽出物を吸引することができる。ワサビ抽出物は、ワサビ由来の良好な風味を有し、かつ健康に有用である。
【0009】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記ワサビ抽出物は、アリルイソチオシアネートを含むことが好ましい。
【0010】
このような態様によれば、ユーザは、エアロゾルと一緒に芳香基材から発生した芳香成分及び気化したアリルイソチオシアネートを吸引することができる。アリルイソチオシアネートは、ユーザが感じることができる芳香成分の風味を深めることができる。よって、芳香カートリッジに深みのある風味を付与することが可能となる。
【0011】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記アリルイソチオシアネートを芳香カートリッジ1本当たり、1~50mg含むことが好ましい。
【0012】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記ワサビ抽出物は、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含むことが好ましい。
【0013】
このような態様によれば、ユーザは、エアロゾルと一緒に芳香基材から発生した芳香成分及び気化した6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを吸引することができる。6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、例えば、ユーザの体内において抗酸化作用、抗炎症等の効果を発揮することができる。
【0014】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを芳香カートリッジ1本当たり、0.1~5mg含むことが好ましい。
【0015】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記ワサビ抽出物は、油脂、アルコール系溶媒から選ばれた溶媒に溶解して含有されていることが好ましい。
【0016】
上記態様によれば、ワサビ抽出物を、油脂、アルコール系溶媒から選ばれた溶媒に溶解して含有させることにより、例えば、芳香基材やフィルタに混合、含浸させ又は、カプセル化しやすくすることができる。
【0017】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記芳香基材は、植物の粉砕乾燥物と、エアロゾルフォーマと、前記ワサビ抽出物と、を前記芳香基材に収着させる収着剤と、を含み、前記ワサビ抽出物は、前記芳香基材の原料中に混合されて含有されていることが好ましい。
【0018】
上記態様によれば、ワサビ抽出物が、芳香基材の原料中に混合されて含有されていることにより、芳香基材が加熱されたとき、芳香基材から発生する芳香成分と、気化したワサビ抽出物の成分とが、エアロゾルと一緒に放出される。従って、ユーザは、芳香成分による香りを楽しみつつ、ワサビ抽出物を効果的に吸引することができる。
【0019】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記芳香基材及び前記フィルタの間に配置された支持部材と、を含み、前記ワサビ抽出物は、カプセル化されて、(a)前記芳香基材の中、(b)前記芳香基材と前記支持部材の間、(c)前記支持部材の中、(d)前記支持部材と前記フィルタの間、(e)前記フィルタの中、から選ばれた少なくとも1箇所に配置されていることが好ましい。
【0020】
上記態様によれば、ワサビ抽出物がカプセル化されて配置されているので、加熱によりカプセルの被膜が溶融され、電気的加熱手段により被膜が破壊され、又は、喫煙時にユーザが押圧してカプセルの被膜を破壊することにより、ワサビ抽出物が流出する。したがって、ユーザは、高濃度のワサビ抽出物を吸引することができ、より高い芳香成分の風味が期待できる。また、カプセルにワサビ抽出物を内包することにより、ワサビ抽出物の揮発を防止することができる。
【0021】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記カプセルは、前記ワサビ抽出物が、アルギン酸塩、ペクチンから選ばれたゲル化剤を含むペースト液で被覆され、該ペースト液がカルシウムイオンによって凝固して形成されたものであることが好ましい。
【0022】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記ワサビ抽出物の他に、前記芳香成分として清涼化剤、風味料、香料から選ばれた少なくとも1種が含有されていることが好ましい。
【0023】
上記態様によれば、ワサビ抽出物の他に、前記芳香成分として、清涼化剤、風味料、香料から選ばれた少なくとも1種が含有されていることにより、ワサビ抽出物が清涼感等の風味を改良し、より深い風味を提供することが可能となる。
【0024】
本発明の芳香カートリッジにおいて、前記カプセルは、前記ワサビ抽出物及び前記芳香成分を内包することが好ましい。
【0025】
上記態様によれば、カプセルの被膜が破壊されると、ワサビ抽出物及び芳香成分がカプセルの外部に放出される。すなわち、ユーザは、芳香カートリッジを使用する際に、より多くのワサビ抽出物及び芳香成分をエアロゾルに含ませることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の芳香カートリッジによれば、ワサビ抽出物が芳香カートリッジのいずれか1箇所以上に含有されているため、ユーザは、喫煙によってワサビ抽出物を摂取することが可能となる。すなわち、ユーザは、ワサビ由来の良好な風味を味わうことができ、かつ抗酸化作用、抗炎症等の健康に有用な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図5】
図1の芳香基材の製造工程を示すフロー図である。
【
図6】
図5の原料(A2)製造工程を示すフロー図である。
【
図7】
図1の芳香基材の他の製造工程を示すフロー図である。
【
図8】実施形態2に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図9】実施形態3に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図10】実施形態4に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図11】実施形態5に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図12】実施形態6に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図13】実施形態7に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図14】実施形態8に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図15】実施形態9に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【
図16】他のカプセルの形態を示す実施形態9に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施形態1]
以下、図面を参照して、本発明に係る芳香カートリッジの、一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る芳香カートリッジの斜視図である。
図2は、芳香カートリッジの展開斜視図である。
図3は、
図1のA-A線に沿った拡大断面図である。
図4は、本実施形態に係る芳香カートリッジの斜視図である。
【0029】
[芳香カートリッジ100の構成]
図1及び
図2に示すように、芳香カートリッジ100は、加熱式タバコのカートリッジに用いることができる。以下、芳香カートリッジ100が、電気的加熱手段を有する吸引器具である加熱式タバコに用いられるカートリッジである例について説明する。
【0030】
芳香カートリッジ100は、筒状のカバー10と、カバー10の一端側に収容された芳香基材20と、カバー10の他端側に収容されたフィルタ30と、カバー10に収容され、かつ芳香基材20及びフィルタ30の間に配された支持部材40と、を備える。本実施形態においては、芳香基材20、支持部材40及びフィルタ30は、カバー10の一端側から他端側に向かって軸方向に沿って配設されている。
【0031】
カバー10は、芳香基材20を覆う巻紙11と、巻紙11の外側から芳香基材20、支持部材40及びフィルタ30を覆う基材12と、基材12の外側からフィルタ30の外周部分を更に覆うチップペーパー13とで構成されている。基材12は、巻紙11及びチップペーパー13と接着や熱融着などの手段で接合されている。
【0032】
巻紙11、基材12及びチップペーパー13は、例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属箔などによって構成することができ、これらがラミネートされた複合シートであってもよい。また、巻紙11、基材12及びチップペーパー13の内面には、接着剤層やホットメルト層などの接着又は融着可能な層が形成されていてもよい。
【0033】
本実施形態において、巻紙11は、芳香基材20をまとめて柱状に形成する役割をなす。基材12は、芳香基材20、支持部材40及びフィルタ30を連結する役割をなす。チップペーパー13は、ユーザが芳香カートリッジ100を口で咥える部分(マウスピース)を補強する役割をなす。尚、カバー10は、巻紙11、基材12及びチップペーパー13が個別に構成されるものに限定されるものではなく、例えば、巻紙11、基材12及びチップペーパー13が一体化された一枚のシートで構成されていてもよい。
【0034】
本実施形態においては、
図2及び
図3にも示すように、芳香基材20、支持部材40及びフィルタ30は、カバー10の一端側から他端側に向かって軸方向に沿って配設されている。
【0035】
芳香基材20は、例えば、棒状、短冊状、粉体状、顆粒状、ペレット状、小片状、シート状、繊維状、多孔質状またはブロック状の構成要素の集合体である。本実施形態においては、芳香基材20は、短冊状の構成要素によって全体として円筒状に形成されている。
【0036】
芳香基材20は、加熱式喫煙具の電気的加熱手段によって加熱されることにより、エアロゾルを発生させることが可能である。芳香基材20としては、タバコ植物に限らず、非タバコ植物を原料とする植物の粉砕乾燥物と、エアロゾルを発生させることが可能なエアロゾルフォーマと、加熱されることによって溶融する熱融解性物質とを含有するものが好ましく用いられる。芳香基材20の構成については後述する。
【0037】
フィルタ30は、芳香基材20から発生する主流煙又は、エアロゾルに対して一定の通気性を有し、かつ主流煙又はエアロゾルに含まれている固形粒子を捕捉し、有害成分などを吸着する機能を有するものが好ましく用いられる。フィルタ30の形状は、特に限定されず、カバー10で包むことができる形状であればよい。
【0038】
フィルタ30としては、例えば、アセテート繊維を用いたアセテートフィルタ、アセテートフィルタに活性炭を含有するチャコールフィルタ、フィルタ30の外周面からカバー10の軸方向に亘って凹んで形成されている複数の溝を有するAFT(Advanced Filter Technology)などを用いることができる。本実施形態においては、フィルタ30は、カバー10の基材12の内周面に接着、溶着などの固定手段によって固定されている。
【0039】
支持部材40は、
図2及び
図3にも示すように、芳香基材20とフィルタ30との間に位置し、それぞれに隣接して配されている。支持部材40は、カバー10の内周面の形状に応じた外周面を有する形状であり得る。本実施形態においては、支持部材40は、全体として円筒状に形成されている。支持部材40は、カバー10に接着、溶着などの固定手段で固定され、本実施形態においては、基材12の内周面に固定されている。
【0040】
支持部材40は、その一端側から他端側に通気可能な構造を有し、かつ芳香基材20の他端側への移動を規制する機能があれば、その形状は限定されない。
【0041】
支持部材40は、本実施形態においては、その軸方向に貫通する1又は複数の通気路41を有する。通気路41は、本実施形態においては、支持部材20の外周面において、周方向に等間隔、かつ軸方向に沿って形成された4つの凹状の溝及びカバー10の内周面によって画定されている。
【0042】
また、通気路41は、例えば、支持部材40の一端面から他端面にかけて、軸方向に貫通するように形成された1又は複数の貫通孔で構成されていてもよい。通気路41は、例えば、支持部材40の軸心に沿って形成された中央の通気路と、この中央の通気路を囲むように、周方向に並んで配置され、同じく軸方向に貫通するように形成された複数の通気路とで構成されていてもよい。
【0043】
また、支持部材40は、隔壁の端面形状が六角形で軸方向に貫通する通気路を複数有するハニカム構造体などで構成されていてもよい。更に、支持部材40は、例えば、連続気泡が形成されている多孔質体で構成されていてもよい。
【0044】
支持部材40は、カバー10の軸方向の一方又は、両方の端面、好ましくは芳香基材20側に配される端面において、吸引器具の電気的加熱手段を挿入された際に、芳香基材20のカバー10の軸方向への移動を規制可能な形状をなしていることが好ましい。ここで、芳香基材20のカバー10の軸方向への移動を規制可能な形状とは、例えば、芳香基材20の材料の移動が実用上の支障がない程度に規制できる形状であればよい。
【0045】
支持部材40がこのように形成されていることにより、加熱式喫煙具の芳香基材20を加熱する電気的加熱手段が芳香カートリッジ100の一端側から挿入された際に、支持部材40が芳香基材20の他端側への移動を規制する。言い換えれば、支持部材40は、芳香基材20を支持することができる。
【0046】
また、支持部材40は、芳香基材20から発生された芳香成分を含有するエアロゾルが通過する際に、高温のエアロゾルを冷却することができる。このため、支持部材40は、芳香カートリッジ100の燃焼温度又は、加熱温度に応じた耐熱性を有する部材によって形成されている。例えば、芳香カートリッジ100が加熱式喫煙具のカートリッジである場合、支持部材は、200~350℃程度の耐熱性を有する部材で形成されているとよい。
【0047】
このような部材としては、例えば、紙、樹脂、ゴム、木材、金属、及び、セラミック等が挙げられるが、種々の形状に成形加工可能な樹脂であることがより好ましい。
【0048】
樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル(EVA)系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂、ABS系樹脂、及び、生分解性プラスチック等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、芳香カートリッジ100は使用された後は廃棄物となるため、自然環境保護という観点から生分解性プラスチックが好ましい。
【0049】
生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、及び、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。
【0050】
芳香カートリッジ100の芳香基材20は、吸引器具(図示せず)の電気的加熱手段によって、室温又は外気温から200℃以上の加熱目標温度に加熱される。したがって、芳香基材20は、室温又は外気温から加熱目標温度までの昇温過程を経ることになる。ユーザは、昇温過程の終了直後から芳香カートリッジ100から発せられたエアロゾルを吸引することが可能となる。
【0051】
[芳香基材20の構成]
芳香基材20は、加熱されることによって芳香を発生する植物の粉砕乾燥物と、加熱されることによってエアロゾルを発生するエアロゾルフォーマと、ワサビ抽出物と、を含む。したがって、芳香基材20は、加熱されることによって芳香成分を含有するエアロゾルを発生させることが可能である。尚、芳香基材20は、加熱されることによって溶融する熱融解性物質と、架橋ポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルピロリドンと、香料のうち少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。
【0052】
尚、芳香成分は、エアロゾルに含まれ、かつユーザの嗅覚を刺激することが可能な物質である。芳香成分としては、例えば、芳香基材20に含有されている植物の粉砕乾燥物の揮発成分、及びこの揮発成分の芳香を補助することが可能な芳香剤が挙げられる。
【0053】
芳香基材20は、この他にも、例えば、芳香基材20の成形性を向上させることが可能な成形剤、エアロゾルフォーマ及び植物の粉砕乾燥物を結合して一体化することに寄与する結合剤、芳香基材20に芳香剤を留めさせることが可能な収着剤及び芳香基材20の保存性を向上させることが可能な保存剤を含んでいてもよい。
【0054】
図4に示すように、芳香基材20は、ワサビ抽出物を含まない第1の基材21と、ワサビ抽出物を含む第2の基材22と、で構成される2つの層構造を有して形成されている。
図4において、第1の基材21は、先端側に配されている。第2の基材22は、基端側に配される。第2の基材22は、例えば、液状のワサビ抽出物を含浸させることによって形成することができる。
【0055】
尚、第1の基材21及び第2の基材22の配置は、このような例には限定されず、例えば、第2の基材22を先端側に配置し、第1の基材21を基端側に配してもよい。また、第1の基材21及び第2の基材22を複数配置してもよい。例えば、第1の基材21及び第2の基材22を芳香カートリッジ100の軸方向に沿って交互に配置してもよい。
【0056】
(植物の粉砕乾燥物)
植物の粉砕乾燥物としては、例えば、タバコの葉、茎の他、非タバコ植物の葉、茎、花、種子、果実、樹皮、根などが挙げられる。
【0057】
植物の粉砕乾燥物は、特に、中国茶、紅茶、バラ、モクセイ科モクセイ属モクセイ種の植物、ラベンダー、サフランの花、ラッキョウ、エシャロット、ニンニク、タマネギ、コンニャクの地下茎、カリン、ミカン科ミカン属の植物(ダイダイ・ウンシュウミカン・ナツダイダイ・ポンカン・ハッサク・イヨカン・イーチャンレモン・カラタチ・オレンジ・マンダリンオレンジ・カボス・キシュウミカン・キノット・グレープフルーツ・コウジ・サンボウカン・シトロン・ジャバラ・スダチ・タチバナ・タンゴール・ナツミカン・ハナユズ・ヒュウガナツ・ヒラミレモン(シークヮーサー)・ブンタン(ザボン)・ユズ・ライム・レモン・コブミカン等)、バラ科モモ属モモ種の植物、リンゴ、パイナップル、マンゴー、キンカン、メロン、ザクロ、ウメ、アンズ、ブルーベリー、バラ科オランダイチゴ属の植物、ラズベリー、バナナ、及び、ブドウの果実、シソ科ハッカ属のペパーミント系植物(ペパーミント、ニホンハッカ、アップルミント、ウォーターミント、コルシカミント、ペニーロイヤルミント等)、シソ科ハッカ属のスペアミント系植物(スペアミント、ホースミント、ミドリハッカ、チリメンハッカ、ジンジャーミント等)、イヌハッカ、コウスイハッカ(レモンバーム)、キダチハッカ(セイボリー)、ヤナギハッカ(ヒソップ)、及び、ナス科タバコ属タバコ種の植物の地上茎葉の中から選択される少なくとも一つ以上を含むことが、ユーザに心地よい芳香を提供するために相応しいが、これらに限定されるものではない。
【0058】
植物の粉砕乾燥物は、芳香カートリッジ100そのものから漂う香りと定義するフレグランスと、芳香カートリッジ100を加熱した際に空間に漂う香りと定義するアロマと、芳香カートリッジ100を加熱してエアロゾルと共に吸引した時に口に漂う香りと定義するフレーバの三要素を兼ね備えることが好ましい。
【0059】
フレグランスを構成する植物の粉砕乾燥物(以下、フレグランス材とも称する)としては、中国茶、紅茶、バラ、モクセイ科モクセイ属モクセイ種の植物、ラベンダー、サフランの花、ナス科タバコ属タバコ種の植物の地上茎葉の中から選択される少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
【0060】
アロマを構成する植物の粉砕乾燥物(以下、アロマ材とも称する)としては、ラッキョウ、エシャロット、ニンニク、タマネギ、コンニャクの地下茎、及び、ナス科タバコ属タバコ種の植物の地上茎葉の中から選択される少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
【0061】
フレーバを構成する植物の粉砕乾燥物(以下、フレーバ材とも称する)としては、カリン、ミカン科ミカン属の植物(ダイダイ・ウンシュウミカン・ナツダイダイ・ポンカン・ハッサク・イヨカン・イーチャンレモン・カラタチ・オレンジ・マンダリンオレンジ・カボス・キシュウミカン・キノット・グレープフルーツ・コウジ・サンボウカン・シトロン・ジャバラ・スダチ・タチバナ・タンゴール・ナツミカン・ハナユズ・ヒュウガナツ・ヒラミレモン(シークヮーサー)・ブンタン(ザボン)・ユズ・ライム・レモン・コブミカン等)、バラ科モモ属モモ種の植物、リンゴ、パイナップル、マンゴー、キンカン、メロン、ザクロ、ウメ、アンズ、ブルーベリー、バラ科オランダイチゴ属の植物、ラズベリー、バナナ、ブドウの果実、シソ科ハッカ属のペパーミント系植物(ペパーミント、ニホンハッカ、アップルミント、ウォーターミント、コルシカミント、ペニーロイヤルミント等)、シソ科ハッカ属のスペアミント系植物(スペアミント、ホースミント、ミドリハッカ、チリメンハッカ、ジンジャーミント等)、イヌハッカ、コウスイハッカ(レモンバーム)、キダチハッカ(セイボリー)、ヤナギハッカ(ヒソップ)、ナス科タバコ属タバコ種の植物の地上茎葉の中から選択される少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
【0062】
(エアロゾルフォーマ)
エアロゾルフォーマは、芳香基材20が加熱されたときに、エアロゾルを発生させるために添加される。エアロゾルフォーマとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチルなどが使用できるが、特に、グリセリン、プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0063】
<ワサビ抽出物>
ワサビ抽出物は、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートのうち、少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0064】
(アリルイソチオシアネート)
アリルイソチオシアネートは、病原性細菌、かび、酵母などに対し抗菌性効果があることが報告されている(木苗直秀,増田修一:「沢わさびの機能性」,日本食品素材研究会誌,Vol.11,pp.64-74(2008))。アリルイソチオシアネートは、沢ワサビ、カラシ、キャベツ、ホースラディッシュ及び大根などのアブラナ科の植物、並びにナスタルチウムなどに含まれている。アリルイソチオシアネート含有物質としては、上記植物の抽出物を用いることもできる。特に沢ワサビ又はカラシの抽出物を用いるのが好ましい。
【0065】
尚、上記植物の抽出物は、アリルイソチオシアネート以外にも様々な芳香成分を含有している。これらの芳香成分は、一般式RN=C=Sで表される化合物(式中、Rは、フェニル基又はCH3 -S-基で置換された、又は置換されていない環状、直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいは直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換された、又は置換されていないフェニル基又はベンジル基を表す)からなっている。
【0066】
上記の一般式RN=C=Sで表される化合物として、例えば、沢ワサビの抽出物は、メチルイソチオシアネート、イソプロピルイソチオシアネート、n-ブチルイソチオシアネート、イソブチルイソチオシアネート、1-メチルプロピルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、n-アミルイソチオシアネート、イソアミルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネート、3-メチルチオプロピルイソチオシアネート、n-ヘキシルイソチオシアネート、β-フェニルエチルイソチオシアネート、6-ヘプテニルイソチオシアネート、4-メチルチオブチルイソチオシアネート、5-メチルチオアミルイソチオシアネート、6-メチルチオヘキシルイソチオシアネート、及び7-メチルチオヘプチルイソチオシアネートなどを含んでおり、カラシの抽出物は、メチルイソチオシアネート、イソプロピルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、n-ブチルイソチオシアネート、イソブチルイソチオシアネート、1-メチルプロピルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、イソアミルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、3-メチルチオプロピルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、及びβ-フェニルエチルイソチオシアネートなどを含んでおり、ホースラディッシュは、イソプロピルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、n-ブチルイソチオシアネート、イソブチルイソチオシアネート、1-メチルプロピルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、n-アミルイソチオシアネート、イソアミルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネート、3-メチルチオプロピルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、β-フェニルエチルイソチオシアネート、及び6-ヘプテニルイソチオシアネートなどを含んでいる。_
【0067】
一般式RN=C=Sで表される化合物を含有する抽出物は、上記植物から、例えば、圧搾法、抽出法、及び水蒸気蒸留法などによって得ることが可能である。抽出法には、不揮発性溶剤又は揮発性溶剤を用いる方法、溶剤で抽出した後該溶剤を除去するエキストラクトの製造法、及び天然物のアルコール抽出液で希釈溶剤としてアルコールをそのまま含有する芳香チンキ剤の製造法などがある。一般式RN=C=Sで表される化合物を含有する抽出物は、いずれも、水蒸気蒸留物として添加するのが好ましい。ただし、その抽出法に限られるものではなく、食品等に用いられる抽出法であれば、どのような抽出法を用いても構わない。
【0068】
例えば、上記の植物の乾燥物から抽出溶媒を用いてイソチオシアネート類の抽出を行うことができる。抽出溶媒は、水以外の溶媒が使用できるが、特に純度99%以上のエタノールが望ましい。純度の低いエタノールは原料中のイソチオシアネート類以外の成分まで溶出させてしまうため好ましくはない。
【0069】
アルコール以外の抽出溶媒として食用油を使用することもできる。食用油は、菜種油、コーン油、大豆油、ゴマ油、米油、椿油、ベニバナ油、パーム油、綿実油、ひまわり油、エゴマ油、オリーブ油、ピーナツ油、アーモンド油、アボカド油、ヘーゼルナッツ油、クルミ油、グレープシード油、魚油等が使用できる。
【0070】
抽出条件は、植物種、イソチオシアネート類の種類などに応じて、公知技術に照らし合わせて任意に設定することができる。例えば、本わさびの場合、原料に対して4~10倍量の溶媒を添加して、撹拌しながら常温で2時間程度抽出を行うことができる。
【0071】
抽出操作の後は、イソチオシアネート類を含んだ溶媒と、固形分を分離する分離操作が行われる。分離操作は、ろ紙によるろ過や、膜ろ過、遠心分離などの方法を選択して用いることができる。
【0072】
このようにして得られた抽出液(イソチオシアネート類を含有した抽出溶媒)はそのまま、あるいは濃縮、粉末化、して用いることが可能である。
【0073】
尚、本発明においては、ワサビ抽出物として、より高純度に精製されたアリルイソチオシアネートを用いることもでき、又は合成したアリルイソチオシアネートを用いることもできる。
【0074】
本発明では、アリルイソチオシアネートを、芳香カートリッジ1本当たり、1~50mg含むことが好ましく、3~40mg含むことがより好ましく、5~30mg含むことが最も好ましい。芳香カートリッジ100の1本当たりのアリルイソチオシアネートの含有量が1mg未満では、風味を高めるなどの効果が十分に得られなくなる可能性があり、50mgを超えると、辛味が強すぎて喫煙に適さなく可能性がある。尚、アリルイソチオシアネートの含有量は、ガスクロマトグラフィーで測定することができる。
【0075】
尚、ワサビ抽出物は、後述する熱融解物質や、エアロゾルフォーマ等に溶解させて、芳香基材20中に含有させることができる。また、ワサビ抽出物は、カプセル化して、芳香カートリッジのいずれか1又は複数個所に配置して含有させることもできる。
【0076】
(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート)
6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、ワサビ抽出物に含まれている。したがって、芳香カートリッジにワサビ抽出物を添加することにより、アリルイソチオシアネートと共に、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートも含有させることができる。また、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを別途添加することもできる。6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、化学的な合成法により得ることができるが、植物から抽出・精製したものでもよい。
【0077】
このような植物としては、例えば、バティス科(Bataceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ブレッシュネイデラ科(Bretschneideraceae)、フウチョウソウ科(Capparaceae)、パパイア科(Caricaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、ギロステモン科(Gyrostemonaceae)、リムナンテス科(Limnanthaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ペンタディプランドラ科(Pentadiplandraceae)、ヤマゴボウ科(Phytolaccaceae)、トベラ科(Pittosporaceae)、モクセイソウ科(Resedaceae)、サルウァドラ科(Salvadoraceae)、トウァリア科(Tovariaceae)、ノウゼンハレン科(Tropaeolaceae)、の植物等を挙げることができる。具体的には、例えば、わさび(Wasabia japonica)[別名:本わさび]、西洋わさび(Armoracia rusticana)[別名:山わさび]、Batis maritima(和名不詳)、からし(Brassica juncea)、ブロッコリー(Brassica oleracea var.italica)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ナズナ(Capsella bursa-pastoris)、クレソン(Nasturtium officinale)、Bretschneidera sinensis(和名不詳)、ケッパー(Capparis spinosa)、パパイア(Carica papaya)、Drypetes roxburghii(和名不詳);Putranjiva roxburghii(和名不詳)、Tersonia brevipes(和名不詳)、Limnanthes douglasii(和名不詳)、ワサビノキ(Moringa oleifera)、Pentadiplandra brazzeana(和名不詳)、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)、Bursaris spinosa var.incana(和名不詳)、シノブモクセイソウ(Reseda alba)、Salvadora persica(和名不詳)、Tovaria pendula(和名不詳)、キンレンカ(Tropaeolum majus)等が挙げられる。
【0078】
6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、上記の植物から得られるものに限定されるものではなく、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含有するすべての天然資源を原料として用いることができる。
【0079】
6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの抽出・精製方法としては、例えば、上述したアリルイソチオシアネートの抽出方法を用いることができる。
【0080】
6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、例えば、以下のような化学合成法により得ることができる。
【0081】
6-クロロヘキサノールをCH3-SNaと還流して6-メチルチオヘキサノールを得る。これに塩化チオニル(SOCl2)を作用させて、6-クロロヘキシルメチルサルファイドを得る。
【0082】
次にガブリエル法を用いて、フタルイミドカリウム塩により、アミノ基を導入し、N-(6-メチルチオヘキシル)-フタルイミドを生成する。これにヒドラジン水和物を加えて還流し、6-メチルチオヘキシルアミンを得た後、チオカルボニルクロライドを作用させて、6-メチルチオヘキシルイソチオシアネートを得る。
【0083】
得られた6-メチルチオヘキシルイソチオシアネートを、m-クロロ過安息香酸でメチルチオ基を酸化し、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを得る(Morimitsu et. al., J.Biol.Chem., 277, 3456, 2002)。
【0084】
このようにして得られた6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、そのまま、あるいは濃縮、粉末化、して用いることが可能である。
【0085】
本発明では、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを、芳香カートリッジ1本当たり、0.1~5mg含むことが好ましく、0.3~4mg含むことがより好ましく、0.5~3mg含むことが最も好ましい。芳香カートリッジ100の1本当たりの6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの含有量が0.1mg未満では、抗酸化作用、抗炎症等の効果が十分に得られなくなる可能性があり、5mgを超えると、製造コストが増大し、かつ芳香カートリッジ100から発生されるエアロゾルの風味が薄くなる傾向がある。尚、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の手段を用いて定量することができる。
【0086】
尚、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、後述する熱融解物質や、エアロゾルフォーマ等に溶解させて、芳香基材20中に含有させることができる。また、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、カプセル化して、芳香カートリッジのいずれか1又は複数個所に配置して含有させることもできる。
【0087】
(熱融解物質)
熱融解性物質は、比較的低温で溶解して、芳香基材20から発生する芳香成分を溶解させ、気化させて、エアロゾルフォーマと一緒に発散されやすくするために添加される。また、熱溶融性物質は、常温では植物の粉砕乾燥物及び/又は芳香剤を固定させる役割もなす。
【0088】
熱融解物質は、融点が50~100℃の範囲にあり、好ましくは、50~80℃の範囲にあり、より好ましくは60~67℃の範囲にある。熱融性解物質の融点が50℃未満であると、夏場などの気温の高い時期に熱溶融性物質が溶解して、べた付きが生じる恐れがある。また、熱融性解物質の融点が100℃を超えると、芳香基材の昇温過程の初期の段階で熱融性解物質が十分に融解されず、加熱式喫煙具による昇温過程終了直後のエアロゾルの芳香が不足する傾向がある。
【0089】
尚、熱融解物質の融点は、例えば、JIS K2235に規定されるパラフィンワックスの融点測定方法に準拠して測定することができる。すなわち、所定の融点試験器を用い、融かした試料を試験官に入れ、15秒ごとに融点測定用温度計の示度を読みとり、温度降下が一定範囲内(0.1℃以内の差が5回続いた時)にあるときの温度を融点として測定することができる。
【0090】
熱融解物質は、粉末状であることが好ましい。熱融解物質の平均粒径は、125~355μmであることが好ましく、150~300μmであることがより好ましく、180~250μmであることがより更に好ましい。尚、平均粒径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置などによって測定することができる。本発明における平均粒径とは、メディアン径を意味するものとする。
【0091】
熱融解物質の平均粒径が大きすぎると、その総表面積が小さくなるため、熱源との接触機会が減少する。その結果、熱融解物質が十分に溶融されず、昇温過程終了直後におけるエアロゾル中の芳香成分の濃度が低減する傾向がある。
【0092】
熱融解物質の外径が小さすぎると、後述する芳香基材20に熱融解物質が分散した海島構造を形成することが困難となる。その結果、熱融解物質の各々が凝集した塊状物として芳香基材20に存在するため、熱源との接触による融解速度が低下する領域ができ、昇温過程終了直後におけるエアロゾル中の芳香成分の濃度が低減する傾向がある。熱融解性物質は、芳香基材20において2~20質量%、好ましくは、3~15質量%、より好ましくは、5~15質量%含有されていることが好ましい。
【0093】
植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ及び熱融解物質の配合量は、煙成分及び芳香成分の揮発量の均衡を取るために、それぞれ、55~75質量%、20~40質量%、及び、2~15質量%であることが好ましく、60~70質量%、25~35質量%、3~10質量%であることがより好ましい。
【0094】
熱融解物質は、「加熱されることによって、融点又は軟化点を示し、非ニュートン流体となる有機化合物」であれば特に限定されるものではない。熱融解物質は、一般的に蝋及びワックスと称される有機化合物が好ましく、蝋及びワックスとして代表的な石油系天然ワックス、合成ワックス、植物系天然蝋及び動物系天然蝋を使用することができる。また、蝋及びワックスとしても使用されるロジンが属する各種タッキファイアー(粘着付与剤)を使用することができる。これらは、単体で使用することも、これらの中から選択される少なくとも一つ以上を含む混合物として使用することもできる。
【0095】
熱融解物質としては、好ましい融点を有する点や、風味付与の点から、植物系天然蝋や動物系天然蝋が好ましく使用される。植物系天然蝋としては、例えば、ハゼ蝋、ウルシ蝋、カルナウバ蝋、サトウキビ蝋、パーム蝋、カンデリラ蝋などを用いることができる。また、動物系天然蝋としては、蜜蝋、鯨蝋、イボタ蝋、羊毛蝋、シェラックなどを用いることができる。これらは、本発明で規定する融点が50~100℃の範囲のものを得やすく、また、それ自体好ましい風味を有しているので、エアロゾルの芳香を高めることができる。これらの天然蝋の中でも、カルナウバ蝋、蜜蝋、ワセリン、パラフィンワックスが特に好ましく、融点が62~65℃で芳香成分を豊富に含有する蜜蝋が最も好ましい。
【0096】
植物系天然蝋及び動物系天然蝋は、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステルが主成分である。植物系天然蝋及び動物系天然蝋は、様々な炭素数の脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステルの混合物であり、遊離の脂肪酸及び遊離の脂肪族アルコールや炭化水素等も含まれている。したがって、植物系天然蝋及び動物系天然蝋は、分子量分布が広く、融点の温度域が広く、融解時の粘性が高いという特徴がある。
【0097】
石油系天然ワックスは、炭化水素化合物であるため、芳香成分及びエアロゾルフォーマとの相互作用が小さく、風味に悪影響を与えにくいという利点を有している。石油系天然ワックスとしては、例えば、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等を好ましく使用することができる。
【0098】
これらの石油系天然ワックス、分子構造に基づく融点の温度域に差異がある。ワセリンは、分岐状炭化水素と脂環式炭化水素の混合物であり、融点の温度域の幅が36~60℃と広い。
パラフィンワックスは、直鎖状炭化水素が主成分であり、結晶性が高く、40~70℃の融点を示すものがほとんどであり、融点の温度域の幅が狭い。
【0099】
マイクロクリスタリンワックスは、分岐状炭化水素と飽和環状炭化水素の混合物であり、結晶性は低いが、分子量が高く、これらの中では最も高い60~90℃の融点を示し、融点の温度域の幅もワセリンに次いで広い。
【0100】
これらの石油系天然ワックスは、いずれも、原油から抽出された炭化水素化合物である。パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスは、熱融解時の溶融粘度及び表面エネルギーが低く、かつ芳香成分及びエアロゾルフォーマとの相互作用も少ない。
【0101】
このようなパラフィンワックスとしては、例えば、日本精蝋株式会社製の標準品であるParaffin Wax-115、120、125、130、135、140、145、150、155があり、そのいずれも好ましく用いられる。また、特殊なパラフィンワックス、例えば、日本精蝋株式会社製の特製品である高純度精製パラフィンワックスであるHNP系列品、特定用途向けのSP系列品、特殊な製法で製造されたイソパラフィンが主成分のEMW系列品も好ましく用いられる。また、マイクロクリスタリンワックスは、例えば、日本精蝋株式会社製のHi-Micシリーズのいずれも好ましく用いられる。
【0102】
合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、ポリエチレン(PE)ワックス、変性PEワックス、ポリプロピレン(PP)ワックス、変性PPワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を好ましく使用することができる。
【0103】
特に、フィッシャー-トロプシュワックスは直鎖状炭化水素系有機化合物であるため、熱融解時の溶融粘度及び表面エネルギーが低く、かつエアロゾルフォーマや芳香成分との相互作用も小さい。フィッシャー-トロプシュワックスとしては、中融点品C80等(融点:約85~88℃)等を使用することができる。
【0104】
また、PEワックス並びに変性PEワックス、及び、PPワックス並びに変性PPワックスも、炭化水素化合物であり、好ましく使用することができる。具体的には、三井化学株式会社製「ハイワックス(登録商標)」、三洋化成工業株式会社製「サンワックス」、「ビスコール」等、BYK製「CERAFAK(登録商標)929、950、913,914、915」等を好ましく使用することができる。
【0105】
特に、メタロセン触媒ポリオレフィンワックスは、分子量分布が狭くより好ましい。例えば、メタロセン触媒PEワックスである三井化学株式会社製「エクセレックス(登録商標)」は、分子量分布及び組成分布が狭いため、89~128℃の融点を有するが、熱融解時の溶融粘度が低く、このようなポリオレフィン系ワックスとして非常に優れている。
【0106】
また、熱融解物質としては、上記の他に、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコールなどを用いることもできる。脂肪酸アミドとしては、モノアミドとビスアミドが適している。モノアミドとしては、ステアリン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、エルカ酸モノアミドが、約72~105℃の融点を有しており好ましい。
【0107】
本発明の芳香カートリッジ100には、芳香成分として、植物の粉砕乾燥物の揮発成分の他に、芳香剤を含有させることが好ましい。芳香剤としては、例えば、メントール等の清涼化剤、コーヒーから抽出した成分等の風味料、香料等が挙げられる。芳香剤は、これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0108】
(清涼化剤)
清涼化剤としては、例えば、メントール、メントール誘導体、メントン、メントン誘導体、メンタンカルボン酸アミド、2,3-ジメチル-2-(2-プロピル)-酪酸誘導体、メンタン、メンタン誘導体、L-カルボン、キシリトール、ユーカリ精油、ハッカ油、スペアミント精油、スピラントール等を使用することできる。清涼化剤は、アリルイソチオシアネートとの相互作用によって、清涼感を向上させることができるため好ましく採用される。
【0109】
(風味料)
風味料としては、例えば、コーヒーから抽出した成分が挙げられる。コーヒーから抽出した成分は、例えば、カフェイン、ピリジン、メチルピラジン、酢酸、フルフリルアルコール、シクロテン、1H-ピロールカルボアルデヒド、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシアセトン、フルフラール、メチルフルフラール、マルトール等のコーヒーの芳香成分を含むことが好ましい。
【0110】
コーヒーから抽出した成分としては、例えば、コーヒー豆の粉末、コーヒーエキス、コーヒー香料、生コーヒーエキス等を用いることができる。
【0111】
コーヒーから抽出した成分は、1本の芳香カートリッジ100の芳香基材20中に、0.3~60mg含むとよく、1.5~30mg含むことが好ましく、3~15mg含むことがさらに好ましい。
【0112】
コーヒーから抽出した成分は、芳香基材20に対して、0.1~20質量%含むとよく、0.5~10質量%含むことが好ましく、1~5質量%含むことがさらに好ましい。
【0113】
(香料)
香料としては、天然香料、合成香料、調合香料の何れも使用できる。また、フレーバー(食品添加物)でも、フレグランス(化粧品香料)でも使用できる。
【0114】
該香料の香りの種類としては、シトラス系、フローラル系、フルーツ系、ミルク系、シプレー系、オリエンタル系、(嗜好)飲食品系、既製(嗜好)喫煙具系、バニラ系、ミント系、甘味料系、スパイス系、ナッツ系、酒類系が挙げられる。
【0115】
中でも、シトラス系、フルーツ系、ミント系等の清涼感を感じる香料;チョコレート、ミルク、コーヒー等の(嗜好)飲食品系等のリラックスを感じる香料;バニラ系、フローラル系、甘味料系等の甘味を感じる香料;等が好ましい。
【0116】
本発明の芳香カートリッジ100には、ワサビ抽出物の他に、覚醒効果、鎮静効果等の効能を有する生理活性物質を含有させることもできる。このような生理活性物質としては、例えば、カテキン、カフェイン、テアニン等が挙げられる。
【0117】
(カテキン)
カテキンとしては、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレートを含むことが好ましく、これらのカテキンの中でも特に、エピカテキン、エピガロカテキンを含むことが好ましい。本発明では、これらのカテキンを高純度に含む精製されたカテキンを用いることもできるが、カテキンを含有する植物体から適当な溶媒を用いて抽出した抽出物や、該抽出物からカテキン含有量が高まるように粗精製した粗精製物を用いることもできる。
【0118】
カテキンを含有する植物体としては、例えば煎茶、ほうじ茶、かぶせ茶、玉露等から選ばれる茶葉を用いることができる。カテキンは、これらの茶葉から、水、エタノール、メタノールなどのアルコール、アセトンなどの溶媒を用いて抽出し、必要により更に分画することにより得ることができる。例えば、茶葉を熱水で抽出して得られた抽出物を酢酸エチル等の有機溶媒で分画して乾燥することにより、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン、(+)カテキン等のカテキン類を30~98質量%含有する粉末を得ることができる。
【0119】
カテキンを含む粉末は、カテキンを0.03質量%以上含有するものが好ましく、0.1~5質量%含有することがより好ましく、1~4質量%含有することがさらに好ましい。カテキンを高濃度で含むカテキン粉末は、各社から市販されており、これらの市販品を用いることもできる。
【0120】
尚、カテキンの含有量は、例えば、酒石酸鉄法(茶業研究報告71(1990)43-74)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の方法で定量することができる。
【0121】
(カフェイン)
カフェインは、コーヒーの最も特徴的な成分で、お茶やココア、コーラなどの食品にも多く含まれている。カフェインの効能としては、眠気覚ましなどの興奮作用や尿の排出を促す利尿作用などが広く知られており、この他にも「自律神経の働きを高める」 「集中力を高め作業能力を向上させる」 「運動能力を向上させる」など、様々な効果が明らかになっている。カフェインを含むことにより、エアロゾルを吸入したユーザの気持ちをすっきりさせたり、眠気を覚ましたり、解熱鎮痛作用を付与することができる。
【0122】
カフェインは、1本の芳香カートリッジ100中に、1~50mg含むことが好ましく、5~30mg含むことがより好ましく、10~20mg含むことがさらに好ましい。カフェインは、後述する風味料としてのコーヒーから抽出した成分に含まれる1の成分として添加することもできる。
【0123】
(テアニン)
テアニンは、例えば、茶葉を熱水で抽出した抽出物の他、緑茶葉の粉末、緑茶葉エキス、緑茶葉の香料等を用いて芳香基材20に含有させることができる。芳香基材20がテアニンを含むことにより、エアロゾルを吸入したユーザの交感神経の働きを抑えてリラックスさせることができる。
【0124】
テアニンは、1本の芳香カートリッジ100の芳香基材20中に、不安傾向が低いユーザがリラックス効果を得るために10~100mg含むとよく、20~80mg含むことが好ましく、30~60mg含むことがさらに好ましい。不安傾向が高いユーザがリラックス効果を得るために20~120mg含むとよく、30~100mg含むことが好ましく、40~80mg含むことがさらに好ましい。
【0125】
また、テアニンは、芳香基材20に対して、不安傾向が低いユーザがリラックス効果を得るために3.3~33質量%含むとよく、6.6~26質量%含むことが好ましく、10~24質量%含むことがさらに好ましい。不安傾向が高いユーザがリラックス効果を得るために、芳香基材20に対して、6.6~10質量%含むとよく、10~33.3質量%含むことが好ましく、13.3~26.6質量%含むことがさらに好ましい。尚、テアニンが芳香基材20に対して100質量%以上含む場合、例えば、上述のカプセルにテアニンを封入して芳香カートリッジ100に含有させるとよい。
【0126】
(収着剤)
収着剤は、吸引器具で使用される前にワサビ抽出物や、清涼化剤や香料などの芳香剤が揮発することを防止するために用いることができる。収着剤を用いることにより、ユーザは長期保管がなされた芳香カートリッジ100であっても十分な芳香を味わうことが可能となる。収着剤は、上述のように、植物の粉砕乾燥物の揮発成分、ワサビ抽出物や、清涼化剤や香料などの芳香剤を芳香基材20に留めさせることができる。
【0127】
収着剤の好ましい態様の1つとして、植物の粉砕乾燥物の揮発成分、ワサビ抽出物及び芳香剤を吸着することにより芳香発生基材20に留めさせる収着剤を用いることが好ましい。例えば、芳香剤がメントールである場合、メントールは、フェノール性水酸基を有する。したがって、収着剤としては、フェノール性水酸基を吸着することが可能な、例えば、架橋ポリビニルピロリドン(PVPP:Polyvinylpolypyrrolidone)、ポリビニルピロリドン(PVP:Polyvinylpyrrolidone)等の親水性架橋高分子を用いることが好ましい。
【0128】
また、収着剤によって芳香基材20に収着させる成分は、植物の粉砕乾燥物の揮発成分、清涼化剤、風味剤、及び香料等が挙げられる。例えば、植物の粉砕乾燥物の揮発成分であるニコチンは、窒素を含む5員複素環式化合物を有する。したがって、収着剤としては、窒素を含む5員複素環式化合物と相互作用が形成されると考えられる架橋PVPを用いることができる。
【0129】
収着剤に架橋PVP及び/又はPVPを用いる場合、収着剤は、植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ及び熱融解物質の総量100質量%に対し、4~25質量%含有されているとよく、5~20質量%含まれることがより好ましい。
【0130】
また、収着剤としては、包摂化合物を形成することができるものが好ましい。このような収着剤としては、シクロデキストリンが挙げられる。
【0131】
シクロデキストリンは、様々な大きさの水酸基やカルボキシル基を有する化学物質と包摂化合物を形成することが知られており、α、β、及び、γ-シクロデキストリンのうち、いずれも用いることができる。特に、β-シクロデキストリンは、メントール等の清涼化剤と包摂化合物を形成し、メントールに対する収着剤として最適である。
【0132】
収着剤にシクロデキストリンを用いる場合、収着剤は、植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ及び熱融解物質の総量100質量%に対し、0.1~1.2質量%含有されているとよく、0.2~1.0質量%含有されていることがより好ましい。
【0133】
また、収着剤は、ワサビ抽出物、カテキン、カフェイン、テアニンなどの生理活性物質を吸着保持させる役割もなす。尚、収着剤としては、PVPP及びシクロデキストリンの両者を含んでいることが更に好ましい。
【0134】
(成形剤)
成形剤は、芳香基材20の物理強度を補強するために用いられる。成形剤としては、例えば、セルロース繊維、微結晶セルロースなどを用いることができる。
【0135】
セルロース繊維としては、例えば、サトウキビ、タケ、ムギ、コメ、エスパルト、ジュート、麻、木材などのセルロース繊維が好ましく用いられる。これらのセルロース繊維の繊維径は、5~25μmが好ましく、また繊維長は、0.25~6mmが好ましい。このような範囲の繊維径及び繊維長のセルロース繊維を用いることにより、芳香基材20の構成成分を結束する効果を高めることが可能となる。
【0136】
また、微結晶セルロースは、平均粒径が70~120μmであることが好ましい。微結晶セルロースの平均粒径が70μm未満であると、芳香基材20の収縮の抑制及び芳香基材20と成形加工機との癒着の防止を図ることが困難となる傾向がある。微結晶セルロースの平均粒径が、120μmを超えると、芳香基材20が破断し易くなる傾向がある。尚、微結晶セルロースの平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。本発明における平均粒径とは、メディアン径を意味するものとする。
【0137】
また、微結晶セルロースの質量平均分子量(Mw)は、20,000~60,000であることが好ましい。微結晶セルロースの質量平均分子量(Mw)が20,000未満であると、芳香基材20の収縮を抑制する効果が乏しくなる傾向がある。微結晶セルロースの質量平均分子量(Mw)が、60,000を超えると、芳香基材20が破断し易くなる傾向がある。
【0138】
成形剤は、植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ及び熱融解物質の総量100質量%に対し、2~25質量%含有されているとよく、好ましくは、3~20質量%含まれるとよい。成形剤がこのような態様で芳香基材20に含有されることによって、上記機能を果たすと共に、成形剤が植物の粉砕乾燥物及びエアロゾルフォーマの揮発物の発生の弊害となることを防止することができる。
【0139】
(結合剤)
結合剤は、芳香基材を構成する植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ、熱融解性物質などの原料を結着させるために用いられる。結合剤としては、例えば、多糖類系高分子、セルロース系高分子、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0140】
多糖類系高分子としては、例えば、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンシードガム、アラビアゴム、大豆多糖類、ローカストビーンガム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天等を用いることができる。多糖類系高分子は、強度及び上記成形加工性という観点から、グルコマンナン、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、タマリンシードガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、及び、キサンタンガムが好ましく、中性多糖類のグルコマンナン、グアーガム、タマリンシードガム、及び、ローカストビーンガムがより好ましい。
【0141】
セルロース系高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、CMCのナトリウム塩、CMCのカリウム塩、CMCのカルシウム塩、カルボキシエチルセルロースのナトリウム塩、カルボキシエチルセルロースのカリウム塩、カルボキシエチルセルロースのカルシウム塩等を用いることができる。セルロース系高分子は、芳香基材20の強度及び成形加工性という観点から、CMCのナトリウム塩、CMCのカリウム塩、カルボキシエチルセルロースのナトリウム塩、カルボキシエチルセルロースのカリウム塩が好ましい。
【0142】
結合剤としては、多糖類系高分子と、セルロース系高分子とを併用することが好ましい。この場合、多糖類系高分子としては、グルコマンナン、グアーガム、タマリンシードガム、ローカストビーンガムを用いることが好ましい。また、セルロース系高分子としては、CMCのナトリウム塩、CMCのカリウム塩、カルボキシエチルセルロースのナトリウム塩、カルボキシエチルセルロースのカリウム塩を用いることが好ましい。このように、多糖類系高分子と、セルロース系高分子とを併用することにより、芳香基材20の強度及び成形加工性の向上を図ることができる。
【0143】
結合剤は、植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ、及び、熱融解物質の総量100質量%に対し、5~30質量%含有されていることが好ましく、8~28質量%含有されていることがより好ましい。このような含有量で結合剤が芳香基材20に含有されていることにより、芳香基材20の強度及び成形加工性を向上させることができ、植物の粉砕乾燥物及びエアロゾルフォーマの揮発物の発生等への悪影響を回避することができる。
【0144】
また、本発明の芳香基材20においては、結合剤と成形剤の両方が含有されていることが好ましい。この場合、結合剤と成形剤の配合比は、質量比で1:1~1:25であることが結束効果の上で好ましい。
【0145】
(保存剤)
芳香カートリッジを長期的に保存するために、保存剤を用いるとよい。保存剤としては、例えば、ソルビン酸カリウム及び/又は安息香酸ナトリウムを用いることができる。保存剤は、植物の粉砕乾燥物、エアロゾルフォーマ、及び、熱融解物質の総量100質量%に対し、0.005~0.04質量%含まれていることが好ましい。
【0146】
次に、芳香基材20の第2の基材22の製造方法について説明する。
図5は、芳香基材20の第2の基材22の製造工程の一実施形態を示している。
図5に示すように、フレグランスを構成する植物の粉砕乾燥物であるフレグランス材、フレーバを構成する植物の粉砕乾燥物であるフレーバ材等を含む原料(A)及びアロマを構成する植物の粉砕乾燥物であるアロマ材等を含む原料(B)を混合する混合工程が行われる。混合工程は、熱融解物質の融点未満で行われる。混合工程は、例えば、公知のミキサーを用いて行うことができる。
【0147】
原料(A)は、フレグランスを構成する植物の粉砕乾燥物であるフレグランス材を含有する原料(A1)、フレーバを構成する植物の粉砕乾燥物であるフレーバ材、ワサビ抽出物及び熱融解物質を含有する原料(A2)、微結晶セルロースのアルコール水溶液、結合剤のアルコール水溶液及び収着剤のアルコール水溶液を含有する原料(A3)及びエアロゾルフォーマ、芳香剤及び成形剤を含有する原料(A4)を混合して、熟成させることにより得られる。
【0148】
尚、原料(A1)~原料(A4)の混合は、熱融解物質の融点未満で行われる。また、この混合工程は、例えば、公知のミキサーを用いて行うことができる。
【0149】
原料(A1)は、フレグランス材を除菌した後に粉砕することにより得られる。
【0150】
原料(A2)は、フレーバ材、ワサビ抽出物及び熱融解物質の混合物を除菌した後に粉砕することにより得られる。具体的には、
図6に示すように、フレーバ材を除菌した後に所定の大きさとなるように粉砕する。また、粉末状の熱融解物質とワサビ抽出物とを熱融解物質の融点以上で加熱混合して冷却した後に、所定の大きさになるように粉砕する。当該粉砕物と粉末状のフレーバ材とを圧縮・せん断混合し、冷却した後に粉砕して原料(A2)を作成するようにするとよい。
【0151】
原料(A3)は、微結晶セルロースのアルコール水溶液、結合剤のアルコール水溶液及び収着剤(架橋ポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルピロリドン)のアルコール水溶液を混合して得られる。尚、アルコール水溶液は、純水とエタノールの混合液である。
【0152】
原料(A4)は、エアロゾルフォーマ、芳香剤及び成形剤を混合することにより得られる。
【0153】
熟成は、例えば、15~30℃の温度条件下で、3~14日行うことが好ましい。熟成は、芳香成分の保持という観点から、20±2℃の温度条件下で、4~7日行うことがより好ましい。温度が30℃を超える、又は、熟成期間が14日を超えると、カビの発生や腐敗の可能性が高まる傾向がある。
【0154】
原料(B)は、アロマを構成する植物の粉砕乾燥物であるアロマ材を含有する原料(B1)及び保存剤を含有する原料(B2)を混合することにより得られる。尚、原料(B1)及び(B2)の混合は、例えば、公知のミキサーを用いて行うことができる。
【0155】
原料(B1)は、アロマ材を除菌した後に粉砕することにより得られる。
原料(B2)は、保存剤を純水に溶解させることにより得られる。
【0156】
このようにして原料(A)及び原料(B)を混合する混合工程を行うことによって、芳香基材20に植物の粉砕乾燥物が混合された熱融解物質の粉末が分散した海島構造を形成することができる。
【0157】
次いで、混合工程で得られた混合物を圧縮・せん断加工してシート状に形成することが行われる。圧縮・せん断加工においては、例えば、3本ロールを用いて行うことができる。3本ロールで圧縮・せん断加工を行うことによって、空気を抱き込み、水を蒸発させながらシート状に成形することができる。
【0158】
このようにして得られたシートは、内部に空気を含む多孔質的な構造が形成されている。その結果、密度の低い芳香基材20を得ることが可能となるとなる。また、3本ロールのロールは、極めて平坦な表面であるため、シートの表面が平坦に形成される。
【0159】
すなわち、芳香基材20は、圧縮・せん断加工において、内部に空気を含む多孔質的な構造を有するため低密度であり、かつその表面が凹凸のない平坦に形成されたものとなる。
【0160】
圧縮・せん断加工によってシート状に形成された混合物は、所定の形状及び大きさに裁断され裁断工程が行われる。シート状の混合物は、例えば、短冊状に加工される。
【0161】
尚、第1の基材21については、第2の基材22の原料のからワサビ抽出物を除いて、上述の製造方法によって作成することができる。このようにして作成された第1の基材21及び第2の基材22を含む芳香基材20は、カバー10上に、フィルタ30及び支持部材40と共に載置される。次いで、これらを包むようにカバー10が丸められ、カバー10の端部同士が固定されることによって、芳香カートリッジ100が製造される。
【0162】
このように、混合工程、圧縮・せん断工程及び裁断工程が、熱融解物質の融点未満で行われることにより、熱融解物質の融解により芳香基材20全体に拡がること防止し、芳香基材20における熱融解物質の海島構造を維持することが可能となる。
【0163】
芳香基材20に植物の粉砕乾燥物が混合された熱融解物質の粉末が分散した海島構造が形成されると、熱融解物質が芳香基材20に島状をなして分散配置されることになる。
【0164】
熱融解物質は、植物の粉砕乾燥物に含浸されている場合よりも、芳香基材20に島状をなして分散配置されている方が、融解した際に流動しやすくなり、植物の粉砕乾燥物から発生する芳香成分が含有されやすくなる。また、流動する熱融解物質がエアロゾルフォーマと接触して、芳香成分がエアロゾルフォーマと一緒にエアロゾルとなって揮発しやすくすることができる。
【0165】
その結果、植物の粉砕乾燥物の芳香成分を効率よく揮発することが可能である。したがって、ユーザは、加熱式喫煙具の昇温過程の終了直後の芳香カートリッジ100から発せられたエアロゾルを吸引した際に、芳香をより十分味わうことができる。
【0166】
尚、ワサビ抽出物は、原料(B)に添加するようにしてもよい。
図7は、芳香基材20の製造工程の他の実施形態を示している。
図7に示すように、ワサビ抽出物を原料(B)に添加する場合は、例えば、原料(B1)に添加するとよい。
この場合、
図7に示した態様、すなわち、フレーバ材をアロマ材に置き換えて原料(B1)を作成するとよい。
【0167】
以上のように、本発明の芳香カートリッジ100によれば、ワサビ抽出物が液状若しくは固体状をなすか、又はカプセル化されて、芳香カートリッジ100のいずれか1箇所に含有されていることにより、芳香基材20から発生するエアロゾルにアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含有させることが可能となる。その結果、ユーザは、エアロゾルと一緒に芳香基材20から発生した芳香成分及び気化したアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを吸引することができる。したがって、ユーザは、芳香成分による香りを感じつつ、深みのある風味を味わうことができる。
【0168】
[実施形態2]
実施形態2の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物がカプセル化されて含有されている点で実施形態1の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態1の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0169】
図8は、実施形態2に係る芳香カートリッジ100を示している。
図8に示すように、ワサビ抽出物を封入されたカプセル50は、芳香基材20に内包されている。より具体的には、カプセル50は、芳香基材20において芳香カートリッジ100の軸方向の中間に配されている。
【0170】
尚、芳香基材20は、カプセル50の形状、大きさに応じて適宜調整するとよい。芳香基材20は、カプセル50を内包する場合、顆粒状、粉状、ペースト状等に形成することが好ましい。このように芳香基材20を構成することにより、カプセル50を内包しやすくすることができる。
【0171】
カプセル50は、例えば、シームレスカプセルである。カプセル50は、ユーザによって喫煙時に外力を受けることで潰れた際に、又は、吸引器具の電気的加熱手段によって加熱された際に、内部に封入された液体のワサビ抽出物を放出する。例えば、ユーザが、カプセル50を収容するカバー10を押圧する等によってカプセル50が壊れ、カプセル50内に封入された液体のワサビ抽出物が放出される。また、電気的加熱手段によってカプセル50が押圧されることにより、カプセルの被膜が破壊され、カプセル50内に封入された液体のワサビ抽出物が放出される。あるいは、吸引器具の電気的加熱手段によって芳香基材20が加熱されることにより、カプセル50のシェルが溶融又は破壊されて、カプセル50内に封入された液体のワサビ抽出物が放出される。
【0172】
カプセル50において、ワサビ抽出物を封入するシェル(外殻)には、種々の材料を用いることができる。例えば、一般的に製薬産業で利用される種々のシェルを使用することができ、そのようなシェルは、例えば、ゼラチンベースとしてもよいし、或いは、変性セルロースのようなポリマー材料で形成してもよい。
【0173】
またカプセル50は、例えば、次のように製造することができる。まず、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含有する植物から得られた抽出物、精製されたアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート等を、アルコール系溶媒や油脂に溶解させる。次いで、この溶液をアルギン酸ナトリウム(アルギン酸塩)、ペクチン等のゲル化剤を含むペースト液で包むように製粒した後、カルシウムイオンを含む、例えば塩化カルシウム水溶液などに落下させ、ゲル化剤をゲル化させることにより製造することができる。
【0174】
カプセル50の製粒は、例えば、二重パイプの吐出口の内側からワサビ抽出物、外側からゲル化剤を含むペースト液を同時に押出して、所定量ずつ塩化カルシウム水溶液に落下させることにより行うことができる。
【0175】
粒子の形成や安定補助として、高分子構造を有する多糖類や蛋白質を使用することもできる。具体的には、カラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、ゼラチン、キサンタンガム、ファーセレラン等を粒子の形成や安定補助として用いることができる。また、粒子の水分調整は、冷風乾燥等、粒子製造時の仕込水の調整によって行うことができる。
【0176】
カプセル50に封入されるワサビ抽出物としては、前述したような油脂、アルコール系の溶媒にアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが溶解した液状のものを用いることできる。
【0177】
例えば、芳香カートリッジ100が吸引器具に挿入された際に、電気的加熱手段に近接する位置にカプセル50が配される場合、アルコール系の溶媒にアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが溶解したものを用いるとよい。電気的加熱手段が加熱された際に、アルコール系の溶媒が揮発し、ユーザは、より効果的にアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することが可能となる。
【0178】
例えば、芳香カートリッジ100が吸引器具に挿入された際に、電気的加熱手段から離れた位置にカプセル50が配される場合、油脂の溶媒にアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが溶解したものを用いるとよい。ユーザは、油脂の香りと共に、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することが可能となる。
【0179】
このように、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50を芳香カートリッジ100に含有させることにより、ユーザは、芳香カートリッジ100を使用する直前にカプセル50を破壊して、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを吸引することができる。したがって、ユーザは、アリルイソチオシアネートによって高められた芳香成分の香りを楽しみつつ、深みのある風味を味わうことができる。また、ワサビ抽出物をカプセルに充填して保持させることにより、保管中におけるアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの揮発、成分の変性などを防ぎやすくすることができる。
【0180】
[実施形態3]
実施形態3の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50が配されている位置が実施形態2の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態2の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0181】
図9は、実施形態3に係る芳香カートリッジ100を示している。
図9に示すように、ワサビ抽出物を封入されたカプセル50は、芳香基材20に内包されている。より具体的には、カプセル50は、芳香基材20において支持部材40の近傍に配されている。
【0182】
これによって、芳香基材20が加熱されて揮発する芳香成分と、カプセル50から放出されるアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートとが混じりやすくなり、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを芳香成分と一緒に吸引しやすくすることができる。また、揮発したアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートがエアロゾルの流路に生成することにより、ユーザは、高濃度のアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することができる。
【0183】
[実施形態4]
実施形態4の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50の態様が実施形態2の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態2の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0184】
図10は、実施形態4に係る芳香カートリッジ100を示している。
図10に示すように、ワサビ抽出物を封入された複数のカプセル50は、芳香基材20に内包されている。より具体的には、6個のカプセル50が、芳香基材20において分散して配されている。尚、カプセル50は、複数のカプセルのうち少なくとも1つに、ワサビ抽出物を封入されていればよい。カプセル50には、上述の清涼化剤、香料等が封入されていてもよい。
【0185】
これによって、複数のカプセル60のそれぞれからワサビ抽出物が流出するので、芳香基材20中に均一にワサビ抽出物を流出させることができる。
【0186】
[実施形態5]
実施形態5の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50の配される位置が実施形態2の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態2の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0187】
図11は、実施形態5に係る芳香カートリッジ100を示している。
図11に示すように、ワサビ抽出物を封入されたカプセル50は、芳香カートリッジ100の軸方向において芳香基材20と、支持部材40の間に配されている。より具体的には、本実施形態においては、カプセル50は、楕円体に形成されている。尚、芳香基材20と、支持部材40の間には、カプセル50を収容する空隙が形成されている。
【0188】
これによれば、カプセルから流出するワサビ抽出物が、芳香基材20から発生するエアロゾルや芳香成分に接触して、エアロゾル中にアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが高濃度で含有されやすくなるので、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを効果的に吸引することができる。
【0189】
[実施形態6]
実施形態6の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50の配される態様が実施形態5の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態5の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0190】
図12は、実施形態6に係る芳香カートリッジ100を示している。
図12に示すように、芳香カートリッジ100の軸方向において芳香基材20と支持部材40の間に空隙が設けられ、ワサビ抽出物を封入された複数のカプセル50と、混合球60とが上記空隙に配されている。より具体的には、本実施形態においては、球体に形成されているカプセル50が2個と、混合球60が1個配されている。尚、カプセル50は、2つのカプセルのうち少なくとも1つに、ワサビ抽出物を封入されていればよい。カプセル50には、上述の清涼化剤、香料等の芳香剤が封入されていてもよい。
【0191】
また、混合球60は、カプセル50と同等の大きさを有し、カプセル50よりも固い素材、例えば、樹脂によって形成されている。
【0192】
したがって、例えば、ユーザは、芳香カートリッジ100を振ると、空隙でカプセル50と混合球60が衝突する。カプセル50は、混合球60との衝突により破壊され、ワサビ抽出物を放出する。
【0193】
このように、カプセル50及び混合球60を配することにより、ユーザは、カプセル50を破壊しやすくなる。
【0194】
[実施形態7]
実施形態7の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が封入されたカプセル50の配される位置が実施形態5の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態5の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0195】
図13は、実施形態7に係る芳香カートリッジ100を示している。
図13に示すように、芳香カートリッジ100の軸方向において支持部材40と、フィルタ30との間に空隙が形成されている。ワサビ抽出物を封入されたカプセル50は、上記空隙に配されている。本実施形態においては、カプセル50は、楕円体に形成されている
【0196】
このように、カプセル50を、支持部材40と、フィルタ30との間に配置することにより、カプセル50を破壊したときに、ワサビ抽出物がフィルタ30に含浸されやすくし、フィルタ30を通して、高濃度のワサビ抽出物を吸引することができる。すなわち、ユーザは、カプセル50が吸い口側であるフィルタ30に近い位置に配されているため、より高濃度のアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することが可能となる。
【0197】
[実施形態8]
実施形態8の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が含有されている態様が実施形態1の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態1の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0198】
図14は、実施形態8に係る芳香カートリッジ100を示している。
図14に示すように、ワサビ抽出物は、フィルタ30に含有されている。
【0199】
フィルタ30は、例えば、液状のワサビ抽出物をフィルタ30に含浸させた後、乾燥することにより作成することができる。フィルタ30は、このような態様に限られず、例えば、粉末状のワサビ抽出物をフィルタ30に分散させることによっても作成することができる。
【0200】
このように、ワサビ抽出物をフィルタ30に含有させることにより、高温に加熱される芳香基材20の熱の影響をできるだけ避けて、ワサビ抽出物から発生するアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを吸引することができる。
【0201】
尚、ワサビ抽出物は、フィルタ30の外周部を覆うカバー10に設けられていてもよい。この場合、ワサビ抽出物は、カバー10のチップペーパー13に設けられていることが好ましい。
【0202】
チップペーパー13にワサビ抽出物を設ける場合、チップペーパー13に上述の液状のワサビ抽出物を含浸させて乾燥させることにより設けるとよい。
【0203】
したがって、ユーザは、芳香カートリッジ100を咥えると、唇がワサビ抽出物が含浸されたチップペーパー13に触れる。その際に、唇からユーザの体内にワサビ抽出物が摂取される。このように、ユーザの皮膚、すなわち唇からワサビ抽出物を摂取しても、アリルイソチオシアネートによって高められた芳香成分を感じることができる。
【0204】
チップペーパー13にワサビ抽出物を設ける場合、ワサビ抽出物が含浸されたフィルタ30を用いるとよい。ユーザは、このような芳香カートリッジ100を使用した際に、主流煙に含まれているアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することができ、かつ唇からもアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを摂取することができる。また、フィルタ30から揮発したアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートがチップペーパー13にしみこむことにより、チップペーパー13のアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの濃度が高まり、皮膚からのアリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの摂取を促進させることが可能となる。
【0205】
[実施形態9]
実施形態9の芳香カートリッジ100は、ワサビ抽出物が含有されている態様が実施形態8の芳香カートリッジ100と異なる。実施形態8の芳香カートリッジ100と同一の構成については、同一の箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0206】
図15は、実施形態8に係る芳香カートリッジ100を示している。
図15に示すように、ワサビ抽出物を封入されたカプセル50は、フィルタ30に内包されている。より具体的には、カプセル50は、フィルタ30において芳香カートリッジ100の軸方向の中間に配されている。
【0207】
尚、フィルタ30に配されるカプセル50の大きさは、特には限定されないが、上述の実施形態のカプセルよりも大きくして設置することができる。すなわち、芳香基材20に配するカプセル50の大きさを大きくすると、芳香基材20の量が減少する。また、上述の間隙にカプセル50を配する場合、カプセルを大きくすると、間隙もそれに合わせて広く形成するため芳香カートリッジ100の軸方向の長さが長くなる。しかし、フィルタ30にカプセル50に配する場合、このような問題は生じないため、他の位置に配するカプセルよりも大きいカプセルを配置することができる。
【0208】
このように、カプセル50をフィルタ30に内包することにより、フィルタ30をつまんでカプセル50を破壊しやすくすることができ、カプセル50が破壊されて流出するワサビ抽出物をフィルタ30に効果的に含浸させることができる。
【0209】
尚、カプセル50の形状は、球状に限られず、例えば、
図16に示すように楕円体状に形成されるものであってもよい。カプセル50の形状を楕円体にすることにより、より多くのワサビ抽出物をカプセル50に封入することができると。また、カプセル50の長さが長くなるので、指で押圧したときに、カプセル50を破裂させやすくすることができる。
【0210】
尚、ワサビ抽出物は、カプセル以外の材料に含まれていてもよい。例えば、ポリウレタン等のスポンジ材、軽石等の多孔質材料に液状のワサビ抽出物を含浸させて用いてもよい。このように、スポンジ材や多孔質材料にワサビ抽出物を含浸させることにより、芳香基材20に含浸させた場合よりも多くのワサビ抽出物を含浸させることができる。また、カプセル50にワサビ抽出物を内包させる場合よりも容易に芳香カートリッジ100を作成することが可能となる。
【実施例0211】
[試験例1](風味の官能評価)
ワサビ抽出物及び架橋ポリビニルピロリドンを含む芳香基材を実施例として作成し、ワサビ抽出物及び架橋ポリビニルピロリドンのうち少なくとも一方を含まない芳香基材を比較例として作成し、両者のエアロゾルの風味を評価した。ワサビ抽出物としては、以下の要領で得た沢ワサビの抽出物を用いた。すなわち、低温ですりおろした沢ワサビ根茎をエタノールに加え撹拌した。このエタノール溶液に対して遠心分離を行い、上清を得た。この上清に食用油を加え、エバポレーターでエタノールを蒸発させることにより、エタノールに含まれている沢ワサビの抽出成分を食用油中に移行させて抽出物を得た。当該抽出物には、アリルイソチオシアネート及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが14.2:1の含有比率で含まれている。
【0212】
(試料の作成:実施例1)
表1に示す配合で実施例1の芳香カートリッジ100を作成した。具体的には、植物の粉砕乾燥物(アロマ材、フレグランス材及びフレーバ材)、ワサビ抽出物(アリルイソチオシアネート含有物質及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含む)、エアロゾルフォーマ及び熱融解物質の配合を基本配合とした。実施例1において、基本配合は、植物の粉砕乾燥物及びワサビ抽出物(アリルイソチオシアネート含有物質及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含む)を65質量%、エアロゾルフォーマを25質量%、熱融解物質を10質量%とした。
【0213】
基本配合100質量部に対して、芳香剤を15質量部、結合剤を23質量部、収着剤を21質量部、保存剤を0.005質量部及び純水を20質量部を添加して実施例1の芳香カートリッジ100を作成した。尚、純水は成形加工のために添加されるが、成形加工後に乾燥されることによって芳香基材から除去される。
【0214】
【0215】
植物の粉砕乾燥物は、原料(B1)のアロマ材としてこんにゃく粉、原料(A1)のフレグランス材として紅茶及びモクセイ花、原料(A3)のフレーバ材としてアマチャヅルを用いた。
【0216】
原料(A4)のエアロゾルフォーマは、グリセリン及びプロピレングリコールを用いた。
原料(A2)の熱融解物質は、蜜蝋を用いた。
原料(A4)としての芳香剤は、ハッカ油及びメントールを用いた。
原料(A3)の結合剤は、CMCナトリウム塩及びサトウキビ繊維を用いた。
原料(A3)の収着剤は、架橋ポリビニルピロリドン及びβ-シクロデキストリンを用いた。
原料(B2)の保存剤は、ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウムを用いた。
【0217】
原料(A1)及び(A2)は、
図6に示した態様で作成した。具体的には、原料(A1)は、フレグランス材は、除菌した後に粉末状に粉砕して得た。原料(A2)は、フレーバ材、ワサビ抽出物(アリルイソチオシアネート含有物質及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含む)及び熱融解物質をヘンシェルミキサーで粗混合した後、圧縮・剪断して混合し、0℃以下に冷却した後に粉砕して作製した。また、原料(A1)及び(A2)は、80メッシュの篩によって、平均粒径が約250μmに選別されたものを用いた。
【0218】
また、
図6に示した態様で、原料(A)及び(B)を用いて芳香カートリッジ100を作製した。具体的には、原料(A)及び(B)をニーダーにより混合する混合工程を行った。
【0219】
次いで、3本ロールを用いて混合物をシート状に成形する圧縮・せん断工程を行った。圧縮・せん断工程では、厚さが0.28±0.02mmとなるようにシート状に成形した。圧縮・剪断工程は蜜蝋の融点以下で行った。
その後、シートを裁断する裁断工程が行われた。裁断工程においては、幅1.5±0.1mm、長さ約240mmとなるようにシートを裁断した。
【0220】
このようにして得られた芳香基材を所定量の充填率となるように紙巻きした。次いで、紙巻きされた芳香基材を、長さ11.5~12.0mmとなるように断裁した後乾燥することによって、芳香カートリッジ100を製造した。
【0221】
(比較例1の作成)
表4に示す配合で比較例1の芳香カートリッジ100を作成した。比較例1は、原料(A2)のワサビ抽出物(アリルイソチオシアネート含有物質及び6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを含む)を含まない点が実施例1とは異なる。その他は、実施例1乃至3と同一であるので、原料及び製造方法の説明を省略する。
【0222】
【0223】
(官能試験)
加熱式喫煙具を用いて実施例1及び比較例1の芳香カートリッジ100のエアロゾルの風味を10名のパネラーが評価した。
【0224】
10名のパネラーのうち8名のパネラーは、実施例1の芳香カートリッジ100が比較例1の芳香カートリッジ100よりも、ワサビの香りとメンソール及びハッカの清涼感が比較例よりも強く感じ、かつワサビの特有の刺激感を感じた。尚、同パネラーは、アリルイソチオシアネートの抗菌作用により、口臭が減少したと評価した。さらに、同パネラーは、ワサビ由来の良好な風味が比較例よりも感じると評価した。尚、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、抗酸化作用、抗炎症等の効果を有するため、ユーザへの抗酸化作用、抗炎症等の健康に有用な効果を期待することができる。