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特開2022-60142温調装置及び温調装置用静電整流器並びに温調装置の効率改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060142
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】温調装置及び温調装置用静電整流器並びに温調装置の効率改善方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20220407BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F25B41/40 Z
H05F3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094537
(22)【出願日】2021-06-04
(62)【分割の表示】P 2020167634の分割
【原出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】519264678
【氏名又は名称】昴テクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501212955
【氏名又は名称】エイム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】小川 修
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA41
5G067DA40
(57)【要約】
【課題】媒体の電気的な課題を解決し、より高い冷却効率を達成することができる温調装置、静電整流器、及び温調装置の冷却効率改善方法を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る温調装置は、導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置であって、媒体管に電気的に接続され、周波数20kHz以上40kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を供給する静電整流器と、を備えるものである。
さらに、他の観点である温調装置の冷却効果改善方法は、上記温調装置の冷却効率改善方法であって、上記温調装置用静電整流器により、周波数20kHz以上40kHz以下で繰り返されるパルス状の減衰波信号を前記媒体管に供給するものである。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、
前記媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置であって、
前記媒体管に電気的に接続され、周波数20kHz以上60kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を供給する静電整流器と、を備える温調装置。
【請求項2】
前記媒体は、極性媒体である請求項1記載の温調装置。
【請求項3】
前記筐体と前記媒体管は電気的に絶縁又は抵抗を介して接続されている請求項1記載の温調装置。
【請求項4】
前記パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期は2MHz以上10MHz以下である請求項3記載の温調装置。
【請求項5】
空調装置である請求項1記載の温調装置。
【請求項6】
周波数20kHz以上60kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を供給する温調装置用静電整流器。
【請求項7】
前記パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期は2MHz以上10MHz以下である請求項6記載の温調装置用静電整流器。
【請求項8】
導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、
前記媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置の効率改善方法であって
前記温調装置は前記媒体管に接続される静電整流器と、を備え、
前記静電整流器により、周波数20kHz以上60kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を前記媒体管に供給する温調装置の効率改善方法。
【請求項9】
当該パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期が2MHz以上10MHz以下の減衰波信号を前記媒体管に供給する請求項8記載の温調装置の効率改善方法。
【請求項10】
前記温調装置は空調装置である請求項8記載の温調装置の効率改善方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調装置及び温調装置用静電整流器並びに温調装置の効率改善方法に関する。より具体的には、空調装置等の製品に好適に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
食品等様々な物質を保存する場合において、低温で保存することは非常に重要である。この低温で保存するための機器としては、冷蔵庫やクーラー等の冷却装置が一般的に流通している。
【0003】
一般に冷却装置は、冷媒を冷却することによりこの冷媒の冷熱を冷却対象となる物質(冷却対象物質)に直接又は間接的に供給することで冷却対象物質を冷却することが可能となる。
【0004】
また、このための冷媒としては、安定性や熱伝達効率が良いこと等があげられるが、更に近年は地球環境への影響を抑える必要及び需要が極めて高くなっており、現在ではHFC(ハイドロフルオロカーボン)等が主流となりつつある。これらの冷媒に関しては、例えば下記特許文献1等にその記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-121927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記冷媒は、冷媒としての要求性能を満たすことができているものであるが、その使用電力量すなわち冷媒の冷却効率に課題が残る。
【0007】
上記課題について具体的に説明すると、冷媒はその分子構造中においてフッ素原子を含んでいるため、その分子構造内に対称性がないような場合極性を備えているものが多く、この冷媒が冷媒管内を流動する際、冷媒と冷媒管の摩擦や冷媒分子同士の摩擦等により静電気が発生することになる。そしてこの静電気は冷媒管内表面に残存し、冷媒を捕捉してしまい、冷媒の流動性が低下してしまうといった課題がある。また、冷媒自身もその極性及び静電気により集合してクラスターとなりこの問題を大きくしてしまうといった課題がある。
【0008】
この課題に関し、静電気を逃すための冷媒管をアースすることが検討されているが、これを行うと、冷媒管に対する電気的な処理は全てシールドされ、これ以上の電気的な対策は難しいといった問題がある。
【0009】
またこの課題は冷媒について説明するものであるが、媒体一般に言えるものである。すなわち、冷却のための媒体(冷媒)だけに限られず、加熱のための媒体(加熱媒体)にもいえることである。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、媒体の電気的な課題を解決し、より高い熱伝達効率を達成することのできる温調装置及び温調装置用静電整流器並びに効率改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、上記課題を解決する本発明の一観点に係る温調装置は、導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置であって、媒体管に電気的に接続され、周波数20kHz以上60kHz以下以下で繰り返されるパルス状の信号を供給する静電整流器と、を備えるものである。
【0012】
また、本観点においては、媒体は、極性媒体であることが好ましい。
【0013】
また、本観点においては、筐体と前記媒体管は電気的に絶縁又は抵抗を介して接続されていることが好ましい。
【0014】
また、本観点においては、パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期は2MHz以上10MHz以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る温調装置用静電整流器は、周波数20kHz以上60kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を供給するものである。
【0016】
また、本観点においては、パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期は2MHz以上10MHz以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一観点に係る温調装置の効率改善方法は、導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置の効率改善方法であって、温調装置は前記媒体管に接続される静電整流器と、を備え、静電整流器により、周波数20kHz以上60kHz以下で繰り返されるパルス状の信号を前記媒体管に供給するものである。
【0018】
また、本観点において、当該パルス状の信号は減衰波であり、当該減衰波の周期が2MHz以上10MHz以下の減衰波信号を前記媒体管に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によって、媒体の電気的な課題を解決し、より高い熱伝達効率を達成することのできる温調装置及び温調装置用静電整流器並びに温調装置の効率改善方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る温調装置の機能ブロック図である。
図2】形成される媒体のクラスターについてのイメージ図である。
図3】媒体のクラスターが小さくなる場合のイメージ図である。
図4】実施形態に係る温調装置の静電整流器が発するルス状減衰波信号の波形の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る温調装置の静電整流器の回路の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る温調装置の他の一例を示す図である。
図7】実施例に係る静電整流器により発生する波形信号を示す図である。
図8】実施例における実験系を示す図である。
図9】実施例における実験結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0022】
(冷却装置)
図1は、本実施形態に係る温調装置(以下、「本装置」という。)の機能ブロック図である。本図で示すように、本温調装置1は、導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管2と、媒体管2を収容する筐体3と、を備えた温調装置であって、筐体3と媒体管2は電気的に絶縁されており、さらに、媒体管2に接続される静電整流器4と、を備えるものである。
【0023】
本温調装置は、収容等を行う対象物に対して冷却を行う冷却装置であっても、加熱を行う加熱装置であってもよいが、説明を簡便にする観点から冷却装置の場合の例で説明する。すなわち、本温調装置は、冷却装置及び加熱装置を含む概念であり、下記の例で「冷却装置」という場合は必要に応じて「温調装置」と読み替えることが可能であり、「冷媒」という場合は必要に応じて「媒体」と読み替えることが可能である。
【0024】
本温調装置1が冷却装置の場合、製品として様々な形態を採用することができ、例えば冷蔵庫、冷凍庫、エアーコンディショナー(エアコン、クーラー、半導体製造装置工程等のクリーンルーム等の空調)等の空調装置、チラー、ヒートポンプ等を例示することができる。ただし、本実施形態では説明を簡便に行うため、冷蔵庫の具体的な一例を用いて説明する。なお、冷却装置は、一般に、冷媒に対する圧縮、凝縮液化、膨張気化、圧縮、の冷凍サイクルを利用して冷却を行う装置である。
【0025】
本図で示すように、本温調装置1は、媒体管2、筐体3、静電整流器4を備えているが、これ以外にも、温調装置1として冷却又は加熱対象となる物(対象物)を収容する保温室5等を有することが好ましい。保温室5を備えることでこの保温室5内に冷却したい対象物を収納し、冷やすことが可能となる。なお、冷却装置の場合は冷蔵室や冷凍室が該当し、加熱装置の場合は加熱室が該当する。
【0026】
また、本温調装置1において、媒体管2は、循環経路を形成しており、その途中においてコンプレッサ6、放熱器7、冷却器8等に接続されている。媒体管2内に収容される媒体は、この内部を循環する際、コンプレッサ7により圧縮されて液化し、放熱器7によって媒体から熱を外部に放出させ、更に、冷却器8により周囲の熱(具体的には保温室5内の熱)を吸収し媒体を気化させる。すなわち、冷却器8周囲に冷熱を供給することができ、温調装置即ち冷却装置として機能することが可能となる。
【0027】
なお、本温調装置1において、媒体は、限定されるわけではないが、極性媒体であることが本温調装置1の効果を顕著に発現させることができる観点から好ましい。極性媒体の場合、その極性により媒体効率が高いという特徴がある一方、その極性ゆえ媒体クラスターが形成されてしまうといった課題がある。より具体的に説明すると、媒体分子中に存在する塩素やフッ素等のハロゲンはその極性が高いため隣接する媒体分子と相互作用が生じクラスターを形成しやすい。このクラスターが生じると媒体管内においてはクラスター単位での流動が生じることとなり、結果としてその熱交換効率が下がり、媒体としての機能を十分に発揮することができない。図2に、クラスターのイメージ図を示しておく。しかしながら、後述するように本温調装置、静電整流器を用いることで、この媒体分子間の相互作用を解消し、クラスターを解消させやすくなる。すると熱伝達効率が改善されることにある。そのため、極性媒体であることが好ましい。
【0028】
ここで繰り返しとなる部分もあるが、クラスターの解消について詳細に説明しておく。上記の通り極性媒体を用いると媒体分子中の偏った電荷により分子間には結合しようとする力が発生する。しかしながら、この集団内の分子は都度組む相手を変えながらクラスターを形成しているため、一定のダイナミズムをもったモデルで自由電子(和電子)を加えていくことで、クラスターを小さくし、媒体の効率を改善することができる。この場合のイメージを図3に示しておく。
【0029】
また、本温調装置1において、極性媒体としては、特に限定されるわけではないが、冷媒の場合、R32(CH)、及び、R125(CHF)並びにこれらの混合物を例示することができるがこれに限定されない。
【0030】
また、本温調装置1において、筐体3は、上記冷却管2、保温室5、コンプレッサ6、放熱器7、冷却器8等を収容することができる部材である。筐体3により、これら構成要件を一体のものとして保持することが可能となる。また筐体3には、保温室5を保持する一方、この保温室を出し入れするための摺動部材及び扉部材を備えていてもよく、更には保温室5の密封性を高めるためのパッキン部材等を備えていることが好ましい。
【0031】
また、本温調装置1において、上記の通り筐体3と媒体管2は電気的に絶縁されている。具体的には、媒体管2はその循環経路においてアースを取っていない、接地されていない状態を意味する。一般的な温調装置では、接地していない場合帯電する恐れが強くこの帯電による不具合を避けるため冷却管2そのものを接地させる又はこれを収容する筐体3を電気的に接続させて接地させる。しかしながら、本温調装置1では、後述の静電整流器によって帯電状態を制御する必要から敢えて筐体3と電気的に絶縁、接地させない状態を維持する。ところで、媒体管2は筐体3に収容される必要から物理的に接触、保持させる必要があるが、これら接触、保持は、電気的な絶縁性能を有する物質、例えば絶縁性のゴム等を用い、冷却管2を筐体3内及びその周囲に設置することが可能となる。ただし、電気的に完全に絶縁されていない場合でも、静電整流器による信号を十分に伝達できる状態であれば、抵抗を介して電気的に接続された状態とすることも可能ではある。
【0032】
また、本温調装置1における静電整流器4は、パルス状の信号を供給する。繰り返しの部分もあるが、本温調装置1における静電整流器4が供給するのは電圧(振幅)が時間とともに変化する電気信号であるが、この電気信号の波形は、パルス状の信号である。「パルス状」とは一定期間ごとにその信号が現れることを意味する。また、本温調装置においてパルス状の信号は、減衰波信号であることがより効率的な熱伝達効率を達成するうえで好ましい。ここで「減衰波信号」とは、時間とともにその振幅の大きさが減少していく周期的に繰り返される信号を意味するが、パルスとこれに重なっている高調波を含んでもよい。なお図4に、静電整流器4が発するパルス状の減衰波信号の一例を示しておく。
【0033】
また、本温調装置1において、静電整流器4は、周波数20kHz以上40kHz以下で繰り返されるパルス状の減衰波信号を供給するものであることが好ましく、より好ましくは、33kHz以下である。この周波数はいわゆるパルスの周波数である。繰り返し時間でいうと20μs以上50μs以下の間隔でパルス状の減衰波信号が供給されるものであって、より好ましくは30μs以下である。この効果については推論の部分もあるが、上記範囲のパルス状の信号を与えることで、媒体に対して脈動的に和電子を供給することが可能となり、これが媒体のクラスターに振動となり伝わり、クラスターを分解するよう力が加わるものと考えられる。減衰波とすることでこの効果はより顕著となる。なおここで「和電子」とは、極性を中性にするために用いられる電子をいう。
【0034】
また、本温調装置1では、減衰波である場合に、その一減衰波信号内における信号の周期は、2MHz以上10MHz以下であることが好ましく、より好ましくは5MHz以下である。この周波数は一減衰波信号内の周期を意味するものであり、その時間間隔でいうと0.1μs以上0.5μs以下であり、好ましくは0.2μs以下である。この範囲の波を追加する効果についても上記のパルス状の減衰波信号と同様推論の部分もあるが、減衰波信号とすることでパルスの衝撃を効果的に媒体に伝達することができるようになると考えられる。
【0035】
また、本温調装置1の静電整流器4は、電源、より具体的には外部電源、更に具体的には家庭用電源から電力の供給を受け、上記パルス状の減衰波信号を生成し、媒体管に電気的に接触することでこの減衰波信号を、媒体管を介して媒体に供給する。静電整流器4の構造としては、上記の通り減衰波信号を生成することができる限りにおいて限定されず、例えば図5で示すような回路により実現可能である。
【0036】
本図で示すように、本回路図で示すように、静電整流器4は、外部の交流電源に接続され、この交流電源を直流に変換するADコンバータ41と、基礎信号を生成する信号発生器42、これらの入力を受けるオペアンプ43、オペアンプ43の出力を伝達する出力端44と、を少なくとも有して構成される。これにより電源から電力の供給を受け、出力端
から冷却管に上記信号を供給することが可能となる。また、これらの間には適宜電圧等を調整するためのコンデンサ及び抵抗を配置することが可能である。
【0037】
また、本温調装置1において、静電整流器4は、媒体管2の周囲に電気的に接続され、媒体に電荷を供給することが可能となる。より具体的には静電整流器の出力端を媒体管に接触させることで、電荷の供給を可能とする。この場合において、出力端を接触させる位置は、導電性の媒体管の循環経路内であればどの位置であってもよいが、電荷供給の効率を考慮すると、気体状態である部位よりは液体状態の部位に近い位置であることが好ましく、より好ましくは冷却された状態の部位であることがより好ましい。すなわち、コンプレッサと放熱器の間に配置しておくことが好ましい。
【0038】
ところで、本温調装置1は、静電整流器4を備えていることが特徴の一つであるところ、それ以外の構成要件については市販されているものを用いることも可能である。すなわち、一般に販売されている冷蔵庫等の温調装置に筐体と媒体管の絶縁処理を施したのち、静電整流器4を取り付け、上記信号を供給するようにしてもよい。これにより簡便に改良が可能である。
【0039】
(方法)
上記の記載から、本温調装置1を用いた温調装置の冷却効率改善方法(以下「本方法」という。)は明らかであるが、念のため、本方法について説明する。本方法は、上記の記載から明らかであるが、導電性を備えた材質により形成され、媒体を収容して循環させる媒体管と、媒体管を収容する筐体と、を備えた温調装置の効率改善方法であって、筐体と媒体管は電気的に絶縁されており、さらに、媒体管に接続される静電整流器と、を備え、静電整流器により、周波数20kHz以上40kHz以下で繰り返されるパルス状の減衰波信号であって、減衰波内における周期が2MHz以上10MHz以下の減衰波信号を媒体管に供給するものである。これらによる効果については上記した通りである。
【0040】
以上、本温調装置1及び本方法は、媒体の電気的な課題を解決し、より高い熱伝達効率を達成することができる。
【0041】
(他の形態)
上記温調装置1は、冷蔵庫の例を用いて説明したが、静電整流器4と媒体を循環させる循環経路を形成する冷却管を有するものである限りにおいて限定されず、例えばいわゆる冷却塔(クーリングタワー)を用いた冷却システムに適用することも可能である。この場合の概略図を図6に示しておく。
【0042】
本図で示す冷却システムは、例えばビルなどの建物内に配置されるものであって、建物内に分岐して張り巡らされる媒体管と、ビルの屋上等において設置される冷却塔を備えて構成されている。媒体管は建物内に張り巡らされ、冷却対象となるものに接触し、その熱を吸収する。そして、この吸収した熱を冷却塔において放熱させることで建物内及びこの建物内の冷却対象物の少なくともいずれかを冷却させることができる。そして、上記の通り、静電整流器を冷却管に接続し、媒体に対して上記信号を印加し、電荷を供給させることで冷却効率を向上、改善させることが可能となる。更に、クーリングタワーの場合で、媒体が水である場合、パルス状の信号によって水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどによって発生する管路壁に付着するスケールを除去することが可能となるといった効果もある。
【0043】
なお、本実施形態では、上記の通り説明を分かり易くする観点から冷却装置を例に説明したが、加熱装置としての適用も可能である。この加熱装置としては、例えば床暖房装置、給湯装置、ボイラー等を例示することができるがこれに限定されない。
【実施例0044】
ここで、上記温調装置について実際に試作し、その効果を確認した。以下説明する。
【0045】
まず、上記図で示す静電整流器の電気回路を実際に作製し、パルス状の減衰波信号を発生させることとした。図7に、実際に発生するパルス状の減衰波信号について示しておく。本図はオシロスコープによる信号波の観察結果である。なお、図中(B)は(A)の部分拡大図である。この結果、40μsごとにパルス状の信号が印加され、このパルス状の信号内を詳細に確認すると、200ns(0.2μs)の周期の減衰波となっていることが確認できた。
【0046】
次に、上記作製した静電整流器の出力を電極に接続し、極性媒体の一例として水を満たした水槽に投入し、その酸化還元電位、pH等の各物性について確認を行った。なお図8にこの実験系の図を、図9にそのうち酸化還元電位(ORP電位)の結果を示す。
【0047】
本図で示すように、静電整流器によりパルス状の減衰波を投入することでORP電位が時間とともに低くなっていることが確認でき、それ以外の物性値についてはほとんど影響がなかった。
【0048】
そして、この状態で、電極に接続した水に冷熱を加え、冷却効率を確認したところ、静電整流器に接続していない状態では3度程度しか減少しなかった一方、静電整流器に接続した状態では6度程度温度が減少したことを確認した。すなわち、本実施例により、本温調装置、静電整流器の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、温調装置、静電整流器、温調装置の冷却効率改善方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
1・・・温調装置
2・・・媒体管
3・・・筐体
4・・・静電整流器
5・・・保温室5
6・・・コンプレッサ
7・・・放熱器
8・・・冷却器



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9