(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060175
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】抽出用シート材
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220407BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
B65D65/40 D
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161176
(22)【出願日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020167518
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】村岡 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】石原 良一
(72)【発明者】
【氏名】山口 南生子
【テーマコード(参考)】
3E086
4L047
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB51
3E086CA11
3E086DA08
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐことができる抽出用シート材を提供する。
【解決手段】スパンボンド不織布層5と第一メルトブロー不織布層10と第二メルトブロー不織布層20とをこの順で積層してなる抽出用シート材1であって、第二メルトブロー不織布層20を構成する樹脂の融点が、スパンボンド不織布層5を構成する樹脂の融点、及び第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂の融点より低くなるように設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布層と第一メルトブロー不織布層と第二メルトブロー不織布層とをこの順で積層してなる抽出用シート材であって、
前記第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点が、前記スパンボンド不織布層を構成する樹脂の融点、及び前記第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点より低くなるように設定された抽出用シート材。
【請求項2】
前記第二メルトブロー不織布層が内側となるように折って前記第二メルトブロー不織布層を重ね合わせた所定部分を前記スパンボンド不織布層側から加熱挟圧するヒートシール処理により形成される溶着部において、
前記第二メルトブロー不織布層由来の樹脂が、前記スパンボンド不織布層に到達することなく前記第一メルトブロー不織布層の厚み内に入り込んでいる請求項1に記載の抽出用シート材。
【請求項3】
前記第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点と、前記第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点との差が、30℃以上に設定されている請求項1又は2に記載の抽出用シート材。
【請求項4】
前記第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、0.4~30μmである請求項1~3の何れか一項に記載の抽出用シート材。
【請求項5】
前記第一メルトブロー不織布層の目付が、1~10g/cm2である請求項1~4の何れか一項に記載の抽出用シート材。
【請求項6】
前記第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、16.5μm以下であり、且つ前記第二メルトブロー不織布層の平均繊維径が、13.6μm以下である請求項1~5の何れか一項に記載の抽出用シート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド不織布層と第一メルトブロー不織布層と第二メルトブロー不織布層とを積層した抽出用シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層との2層からなる不織布シートは、一般に比較的丈夫で抽出性に優れているため、コーヒー、紅茶、出汁等を抽出するための抽出用シート材として使用されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
特許文献1に記載される抽出用シート材は、ポリエステル系の繊維からなるスパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを有し、抽出用シート材の繊維間隙と3%モジュラスを調節することにより、透明性及び成分抽出性の向上と、粉漏れの低減との両立を実現し、製造又は加工中における不良品の発生を防ぐことができるものである。
【0004】
特許文献2に記載される抽出用シート材は、繊維の耐熱性を高めたスパンボンド不織布層と、加熱により速やかに軟化して流動化するメルトブロー不織布層とから構成されており、短時間でシールしても大きなシール強度を得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/216047号
【特許文献2】国際公開第2015/147119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の抽出用シート材は何れも、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを積層したものであり、スパンボンド不織布層はその構成繊維の間隙が大きいため、ヒートシールしたときに溶融した樹脂が、スパンボンド不織布層の外側に漏れ出し(以下、「裏抜け」と称する。)、シールバーが汚染される虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐことができる抽出用シート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る抽出用シート材の特徴構成は、
スパンボンド不織布層と第一メルトブロー不織布層と第二メルトブロー不織布層とをこの順で積層してなる抽出用シート材であって、
前記第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点が、前記スパンボンド不織布層を構成する樹脂の融点、及び前記第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点より低くなるように設定されたことにある。
【0009】
本構成の抽出用シート材によれば、スパンボンド不織布層と第一メルトブロー不織布層と第二メルトブロー不織布層とがこの順で積層されて構成されている。スパンボンド不織布層を構成する樹脂繊維は、繊維同士が部分的に熱圧着されているので、樹脂繊維間に比較的大きな隙間がある状態となる。一方、第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂繊維は、製造時に熱風で延伸しているため繊維同士が自己融着し、さらに、スパンボンド不織布層を構成する樹脂繊維の一部にも融着しているため、三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が維持される。また、本構成の抽出用シート材によれば、第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点が、スパンボンド不織布層を構成する樹脂の融点、及び第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点より低くなるように設定されている。このため、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂が溶融しても、第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂は溶融せずに三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が維持される。その結果、ヒートシール処理時に溶融した第二メルトブロー不織布層の樹脂がスパンボンド不織布層側の表面に漏れ出ようとしても、第一メルトブロー不織布層によって阻止されることになり、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐことができる。
【0010】
本発明に係る抽出用シート材において、
前記第二メルトブロー不織布層が内側となるように折って前記第二メルトブロー不織布層を重ね合わせた所定部分を前記スパンボンド不織布層側から加熱挟圧するヒートシール処理により形成される溶着部において、
前記第二メルトブロー不織布層由来の樹脂が、前記スパンボンド不織布層に到達することなく前記第一メルトブロー不織布層の厚み内に入り込んでいることが好ましい。
【0011】
本構成の抽出用シート材によれば、ヒートシール処理によって形成される溶着部において、第二メルトブロー不織布層由来の樹脂がスパンボンド不織布層に到達することなく第一メルトブロー不織布層の厚み内に入り込んでいる。これにより、第二メルトブロー不織布層由来の樹脂がスパンボンド不織布層の表面に裏抜けしない。
【0012】
本発明に係る抽出用シート材において、
前記第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点と、前記第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点との差が、30℃以上に設定されていることが好ましい。
【0013】
本構成の抽出用シート材によれば、第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点と、第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂の融点との差が、十分な大きさ(30℃以上)に設定されているので、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂が溶融しても、第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂は溶融せずに三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が確実に維持される。従って、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けするのを確実に防ぐことができる。
【0014】
本発明に係る抽出用シート材において、
前記第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、0.4~30μmであることが好ましい。
【0015】
本構成の抽出用シート材によれば、第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、0.4~30μmであることにより、一定以上の生産効率、及びフィルタ機能を確保しつつ第一メルトブロー不織布層を構成する繊維を極細化させて、ヒートシール処理時における、第二メルトブロー不織布層を構成する繊維の溶融樹脂が第一メルトブロー不織布層を構成する繊維の間隙により入り込み難くすることができる。これにより、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けすることを防止する効果をさらに向上させることができる。
【0016】
本発明に係る抽出用シート材において、
前記第一メルトブロー不織布層の目付が、1~10g/cm2であることが好ましい。
【0017】
本構成の抽出用シート材によれば、第一メルトブロー不織布層の目付が、1~10g/cm2であることにより、第一メルトブロー不織布層の厚みや繊維の間隙が適度なものとなり、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けすることを防止する効果をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明に係る抽出用シート材において、
前記第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、16.5μm以下であり、且つ前記第二メルトブロー不織布層の平均繊維径が、13.6μm以下であることが好ましい。
【0019】
本構成の抽出用シート材によれば、第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、16.5μm以下であり、且つ第二メルトブロー不織布層の平均繊維径が、13.6μm以下であることにより、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けすることを防止する効果が特に顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係る抽出用シート材を模式的に示し、(a)は断面図、(b)はスパンボンド不織布層を構成する繊維の絡まり状態図、(c)は第一メルトブロー不織布層を構成する繊維の絡まり状態図、(d)は第二メルトブロー不織布層を構成する繊維の絡まり状態図、(e)はスパンボンド不織布層、第一メルトブロー不織布層、及び第二メルトブロー不織布層の積層状態の繊維の絡まり状態図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る抽出用シート材の製造方法の手順を示し、(a)は第一工程の説明図、(b)は第二工程の説明図、(c)は第三工程の説明図である。
【
図3】
図3は、抽出用シート材を加工した抽出用バッグを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X´線断面図である。
【
図4】
図4は、抽出用シート材におけるヒートシール処理の対象部分の断面を示し、(a)はヒートシール処理前の状態図、(b)はヒートシール処理後の
図3(b)のY-Y´線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の抽出用シート材に関する実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図に示される抽出用シート材の層構造のサイズ関係は、発明の理解を容易にするため適宜誇張してあり、実際のサイズ関係をそのまま反映したものとは限らない。また、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
【0022】
<抽出用シート材の層構造>
図1は、本発明に係る抽出用シート材1を模式的に示し、(a)は断面図、(b)はスパンボンド不織布層5を構成する繊維の絡まり状態図、(c)は第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の絡まり状態図、(d)は第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の絡まり状態図、(e)はスパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20の積層状態の繊維の絡まり状態図である。
図1(a)に示す抽出用シート材1は、紅茶、及び緑茶等の茶類、並びに鰹、及び昆布等の出汁の抽出用バッグの素材として用いられるシート材であり、スパンボンド不織布層5と、第一メルトブロー不織布層10と、第二メルトブロー不織布層20とを積層した構造を有する。
【0023】
<スパンボンド不織布層>
スパンボンド不織布層5は、主に成分抽出性に影響を及ぼす層であり、スパンボンド法により製造されたスパンボンドウェブからなる。スパンボンド法は、紡糸ノズルから押し出された溶融樹脂に高速のガス流を吹き付けることにより牽引、延伸させつつ冷却固化して繊維を形成し、この繊維をコレクター上に集積してウェブとする不織布の製造方法である。スパンボンド法では、必要に応じて、フラットロールを用いてウェブの厚さを調整したり、熱エンボスロールを用いて部分的熱接着処理を施したりする。一般に、スパンボンド法により製造されたスパンボンドウェブは、メルトブロー法により製造されたメルトブローウェブよりも高い強度が得られるため、抽出用バッグに加工したときにスパンボンド不織布層5を外側に配することで、輸送時等に抽出用バッグどうしが接触することで繊維が解れることを抑制することができる。抽出用シート材1が茶類及び出汁の抽出に適した高い成分抽出性を有するためには、スパンボンド不織布層5として繊維の間隙が大きいスパンボンドウェブを用いる必要がある。スパンボンドウェブにおける繊維の間隙は、スパンボンドウェブを製造するにあたり単位面積当たりの繊維長を調整することにより、その大きさをある程度制御することが可能である。ここで、「単位面積当たりの繊維長」とは、単位面積の不織布に含まれるすべての繊維について、それらの長さを合計した値と規定する。
【0024】
<第一、第二メルトブロー不織布層>
第一メルトブロー不織布層10は、ヒートシール処理を行ったときに、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂がスパンボンド不織布層5へと抜けようとするのを阻止するための層である。一方、第二メルトブロー不織布層20は、ヒートシール処理を行ったときに抽出用シート材1どうしを溶着させるための層である。第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20は何れも、メルトブロー法により製造されたメルトブローウェブからなる。メルトブロー法は、紡糸ノズルから押し出された溶融樹脂に高温高速のガス流を吹き当てることにより、その溶融樹脂を引き伸ばして繊維化しつつ飛散させ、これをコレクター上に集積してシート状に固化させる不織布の製造方法である。
【0025】
図1(e)は、スパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20の積層状態の繊維の絡まり状態図である。
図1(e)において、スパンボンド不織布層5を構成する繊維は、繊維同士が部分的に熱圧着されているので、繊維間に比較的大きな隙間がある状態となる。一方、第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維は、製造時に熱風で延伸しているため繊維同士が自己融着し、さらに、スパンボンド不織布層5を構成する繊維の一部にも融着しているため、三次元的に繊維の間隙が小さい状態が維持される。また、第二メルトブロー不織布層20を構成する樹脂の融点は、スパンボンド不織布層5を構成する樹脂の融点、及び第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂の融点より低くなるように設定されている。このような構成の抽出用シート材1に対してヒートシール処理を行った場合、第二メルトブロー不織布層20を構成する樹脂繊維が溶融しても第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂繊維は溶融せずに三次元的に繊維間隙が小さい状態が維持される。
【0026】
[抽出用シート材の通気量]
抽出用シート材1は、紅茶、及び緑茶等の茶類、並びに鰹、及び昆布等の出汁の抽出に好適に用いるために、成分抽出性の指標となる通気量が150cc/cm2・sec以上であることが好ましい。通気量が150cc/cm2・sec未満である場合、抽出対象の成分抽出性に劣る虞がある。
【0027】
[抽出用シート材の目付]
抽出用シート材1の目付は、10~30g/m2であることが好ましい。抽出用シート材1の目付が10g/m2未満である場合、抽出用シート材1の強度が不足する虞がある。抽出用シート材1の目付が30g/m2を超える場合、通気量が小さくなることで、抽出対象の成分抽出性に劣る虞がある。抽出用シート材1の目付が上記の範囲であれば、抽出対象の成分抽出性に優れ、且つ良好な強度を有するものとなる。
【0028】
[各不織布層の構成繊維材料]
スパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ビニロン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの中でも、ポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂としては、直鎖状ポリエステルや共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合体、及びポリ乳酸(PLA)を好適に用いることができる。ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合体としては、酸成分のテレフタル酸/イソフタル酸の重合比を適度な範囲に調整したもの、並びにテレフタル酸を主成分とし、イソフタル酸以外の5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、及びフタル酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスルトール等のジオール成分とを適当な比率で重合させたものを好適に用いることができる。また、ポリエステル系樹脂には、例えば、各種エラストマー類等の衝撃性改良剤、結晶核剤、着色防止剤、艶消し剤、酸化防止剤、耐熱剤、可塑剤、滑剤、耐候剤、着色剤、顔料等を適宜添加することができる。
【0029】
[各不織布層の形態]
スパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20の夫々の不織布層を構成する繊維の形態としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、2種類の樹脂を組み合わせた芯鞘構造の複合繊維等が挙げられる。繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、一般的な丸型の他、扁平型、楕円型、三角型、中空型、Y型、T型、U型等の異型であってもよい。
【0030】
[スパンボンド不織布層の平均繊維径]
スパンボンド不織布層5を構成する繊維の平均繊維径は、10~30μmであることが好ましく、より好ましくは13~26μmである。平均繊維径が10μm未満である場合、抽出用シート材1の成分抽出性が劣る虞がある。平均繊維径が30μmを超える場合、スパンボンド不織布層5の強度が不足する虞がある。なお、「平均繊維径」とは、不織布シートを構成する繊維の太さの平均値であり、例えば、繊維の断面形状が丸形である場合、平均繊維径には、その直径の平均値を用い、繊維の断面形状が扁平型、楕円型、多角形等の異型である場合、平均繊維径には、繊維の断面積と同面積の円の直径の平均値を用いる。このような平均繊維径は、例えば、顕微鏡を使用して不織布シートの断面の観察を行い、複数本の繊維を選択して、夫々の繊維径を計測して平均値を求めることで決定することができる。
【0031】
[スパンボンド不織布層の目付]
スパンボンド不織布層5の目付は、8~25g/m2であることが好ましく、より好ましくは15g/m2以下である。目付が8g/m2未満である場合、スパンボンド不織布層5の強度が不足する虞がある。目付が25g/m2を超える場合、強度、裏抜けの問題は生じなくなるが、抽出対象の成分抽出性に劣る虞がある。
【0032】
[第一メルトブロー不織布層の平均繊維径]
第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の平均繊維径d1は、0.4~30μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~21μmであり、さらに好ましくは0.5~16.5μmである。一般に、メルトブロー法は、メルトブローウェブを形成する繊維を極細化できることがメリットである。本発明の抽出用シート材1では、第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維を極細化させて、平均繊維径d1を上記の範囲とすることで、ヒートシール処理時における、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂が第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の間隙に入り込み難くすることにより、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂がスパンボンド不織布層5側の表面に裏抜けすることを防止する効果をさらに向上させることができる。平均繊維径d1が0.4μm未満である場合、裏抜けを防止する効果には優れるが、生産効率が低く、第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の間隙が狭くなりすぎて目詰まりが生じ、フィルタ機能が損なわれる虞がある。平均繊維径d1が30をμmを超える場合、ヒートシール処理時における、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂が第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の間隙に入り込みやすくなり、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂の裏抜け防止効果が十分に得られない虞がある。
【0033】
[第一メルトブロー不織布層の目付]
第一メルトブロー不織布層10の目付は、1~10g/m2であることが好ましく、より好ましくは8g/m2以下である。目付が1g/m2未満である場合、ヒートシール処理時における、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂の裏抜け防止効果が十分に得られない虞や、第一メルトブロー不織布層10の強度が不足する虞がある。目付が10g/m2を超える場合、抽出用シート材1全体としての通気量が小さくなることで、抽出対象の成分抽出性に劣る虞がある。目付が上記の範囲であれば、ヒートシール処理時における、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の樹脂の裏抜け防止効果をさらに向上させることができる。
【0034】
[第二メルトブロー不織布層の平均繊維径]
第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の平均繊維径d2は、スパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10の目付にも左右されるが、第一メルトブロー不織布層10と比較して細すぎないことが好ましく、0.4~30μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~13.6μmである。平均繊維径d2が0.4μm未満である場合、ヒートシール処理時に抽出用シート材1どうしを融着させる効果が十分に得られない虞がある。平均繊維径d2が30μmを超える場合、ヒートシール処理において第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維を溶融させるための処理時間が長くなり、後述する抽出用バッグ100の製造効率が低下する虞がある。
【0035】
[第二メルトブロー不織布層の目付]
第二メルトブロー不織布層20の目付は、1~10g/m2であることが好ましく、より好ましくは4~7g/m2である。目付が1g/m2未満である場合、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層20において溶融した樹脂の量が不足し、適切なシール強度が得られない虞がある。目付が10g/m2を超える場合、抽出用シート材1全体としての通気量が小さくなることで、抽出対象の成分抽出性に劣る虞がある。第二メルトブロー不織布層20の目付が上記の範囲であれば、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層20において溶融した樹脂が適切な量となることで、ヒートシール処理により適切な接着性が得られ、且つ抽出用シート材1が成分抽出性に優れたものとなる。
【0036】
[第二メルトブロー不織布層のメルトフローレイト]
第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維は、当該繊維を構成する樹脂の融点より70~120℃高い温度におけるメルトフローレイトが150~270g/10minであることが好ましい。
【0037】
第二メルトブロー不織布層20となる溶融樹脂の一部は、第一メルトブロー不織布層10の繊維の間隙に入り込んだ状態で固化する。これにより、第二メルトブロー不織布層20由来の樹脂がスパンボンド不織布層5の表面に裏抜けしない。
【0038】
第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の融点と、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の融点との差は、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは42~106℃である。両不織布層10,20の融点の差が30℃以上であれば、ヒートシール処理において処理温度を、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維の融点よりも十分に高く設定することで、スパンボンド不織布層5や第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維を溶融させることなく、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維を短時間で溶融させることができる。
【0039】
<抽出用シート材の製造方法>
図2は、本発明に係る抽出用シート材1の製造方法の手順を示し、(a)は第一工程の説明図、(b)は第二工程の説明図、(c)は第三工程の説明図である。本発明に係る抽出シート材1の製造方法について、
図2を用いて以下に説明する。
【0040】
[第一工程(スパンボンド不織布層形成工程)]
図2(a)に示すように、押出機51から溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金52へと圧送し、紡糸した糸を、エジェクタ53を介して冷却延伸し、コンベヤ54のコンベヤネット54a上に開繊・堆積させてウェブ状のスパンボンド不織布層5を構成するスパンボンドウェブ35を形成する。
【0041】
[第二工程(第一メルトブロー不織布層形成工程)]
次いで、
図2(b)に示すように、コンベヤ59のコンベヤネット59aで搬送する、第一工程で形成したウェブ状のスパンボンド不織布層5の表面に、押出機57から溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金58へと圧送し、高温圧縮空気にて延伸紡糸し、固化する前に集積させることで、ウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を構成する第一メルトブローウェブ41を積層したシートを形成する。
【0042】
[第三工程(第二メルトブロー不織布層形成工程)]
そして、
図2(c)に示すように、コンベヤ64のコンベヤネット64aで搬送する、第一工程、第二工程で形成した積層シート40の表面に、押出機62から、第一工程、第二工程で使用したものより融点の低い熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸口金63へと圧送し、高温圧縮空気にて延伸紡糸し、固化する前に集積させることでウェブ状の第二メルトブロー不織布層20を構成する第二メルトブローウェブ42を形成する。その後、フラットロール又はエンボスロールなどを用いて、ウェブ状の不織布層の厚さを調整したり部分的熱接着処理したりすることで、スパンボンド不織布層5と第一メルトブロー不織布層10と第二メルトブロー不織布層20とを積層した構造を有する抽出用シート材1を得ることができる。
【0043】
なお、上記製造方法では、各製造工程に1つずつの押出機、紡糸口金を示したが、これに限定されるものではなく、各工程で2基以上の押出機、紡糸口金を用いて、複数の種類の樹脂によりウェブを積層してもよい。
【0044】
上記の第一工程から第三工程を包含する製造方法で、ウェブ状の不織布層を形成する例を示したが、以下に示す方法を適宜採用し、各層、または全体を積層一体化し、抽出シート材1を製造することができる。
【0045】
(積層一体化方法例1)
第一工程で形成したウェブ状のスパンボンド不織布層5の表面に、第二工程にてウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を形成して得られた積層体に部分的熱接着処理を行い、その後、第三工程のウェブ状の第二メルトブロー不織布層20を形成する方法である。ここで、部分的熱接着処理工程は、例えば、凹凸の表面構造を有する加熱したエンボスロールと平滑なフラットロールとの間に、繊維状樹脂をネット上に開繊・堆積させて形成したウェブを通過させることによってなされる。熱圧着される部分の面積比率(部分熱圧着率)は、不織布表面の全体面積に対して5.0~30.0%であることが好ましい。
【0046】
積層一体化方法例1によれば、第一工程にて形成したウェブ状のスパンボンド不織布層5上に第二工程にて形成するウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を積層した後、部分的熱接着処理にて一体化することで、ウェブ状のスパンボンド不織布層5にウェブ状の第一メルトブロー不織布層10が入り込んだ形で強固に一体化されたスパンボンド不織布層5と第一メルトブロー不織布層10との積層体が形成される。その後、ウェブ状の第二メルトブロー不織布層20を集積することで、ウェブ状の第二メルトブロー不織布層20が、該シート形成時に第一メルトブロー不織布層10を越えてスパンボンド不織布層5に到達することを防ぎ、抽出用シート材1をヒートシール処理する時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐ効果を高めることができる。
【0047】
(積層一体化方法例2)
第一工程でウェブ状のスパンボンド不織布層5を形成した後、部分的熱接着処理工程を行った後、第二工程にてウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を固化する前に集積することで、スパンボンド不織布層5とウェブ状の第一メルトブロー不織布層10との積層シートを形成し、その後、第三工程のウェブ状の第二メルトブロー不織布層20を固化する前に積層し、シートを形成する方法である。
【0048】
積層一体化方法例2によれば、部分的熱接着処理が施されたスパンボンド不織布層5を予め形成することにより、積層一体化方法例1と比較して、ウェブ状の第一メルトブロー不織布層10がスパンボンド不織布層5に貫入しづらくなるが、スパンボンド不織布層5の上にウェブ状の第一メルトブロー不織布層10が一体化されることで、ウェブ状の第一メルトブロー不織布層10のネットワークが形成され、ウェブ状の第二メルトブロー不織布層20がウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を越えてスパンボンド不織布層5に到達することを防ぎ、抽出用シート材1をヒートシール処理する時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐ効果をある程度、高めることができる。
【0049】
(積層一体化方法例3)
ウェブ状のスパンボンド不織布層5を形成するスパンボンド不織布層形成工程と、ウェブ状のスパンボンド不織布層5の表面にウェブ状の第一メルトブロー不織布層10を形成する第一メルトブロー不織布層形成工程と、ウェブ状の第一メルトブロー不織布層10の表面にウェブ状の第二メルトブロー不織布層20を形成する第二メルトブロー不織布層形成工程を順に行った後、部分的熱接着処理工程を行うことで、スパンボンド不織布層5、第一メルトブロー不織布層10、及び第二メルトブロー不織布層20の積層体を得る方法である。
【0050】
積層一体化方法例3によれば、第一工程、第二工程、及び第三工程でウェブ状の不織布層を形成した後、部分的熱接着処理工程により一体化するため、第三工程にて形成されるウェブ状の第二メルトブロー不織布層20がやや、ウェブ状のスパンボンド不織布層5に抜けやすく、抽出用シート材1をヒートシール処理する時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐ効果がやや劣るものの、第一メルトブロー不織布層10を介さない場合と比較すれば、裏抜け防止の効果が得られる。
【0051】
なお、積層一体化の方法は、上記の方法例1~3だけでなく、各工程後に部分的熱接着処理を各々施す、フラットロール間を通して、繊維の形状を失わない程度に全体に圧力を加えて一体化させる方法等を組み合わせるなど、様々な態様を取ることができる。
【0052】
<抽出用バッグ>
図3は、抽出用シート材1を加工した抽出用バッグ100を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X´線断面図である。
図3(a)及び(b)に示すように、抽出用バッグ100は、内部に茶葉粉末等の抽出材料103が封入されたティーバッグであり、袋部101の三辺に溶着部102が形成されている。
【0053】
袋部101は、抽出用シート材1の構造がそのまま維持された部分であり、茶類及び出汁の抽出に適した高い成分抽出性を有する。
【0054】
図4(a)は、抽出用シート材1におけるヒートシール処理の対象部分の断面を示し、ヒートシール処理前の状態図である。溶着部102は、第二メルトブロー不織布層20が内側となるように抽出用シート材1を二つ折りにして重ね合わせた部分の端縁部をヒートシール処理によって溶着した部分であり、
図4(a)に示すように、第二メルトブロー不織布層20を互いに対向させ、スパンボンド不織布層5側からシールバーHにより加熱挟圧することにより形成される。
【0055】
図4(b)は、
図3(b)のY-Y´線における溶着部102の部分断面図である。溶着部102では、第二メルトブロー不織布層20を構成する繊維が溶融し再度固化した樹脂溶着層25が形成されることで、重ね合わせられた抽出用シート材1が一体化している。ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層20において溶融した樹脂の一部は、シールバーHの挟圧力により、第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の間隙に入り込むため、抽出用バッグ100の溶着部102では、第一メルトブロー不織布層10を構成する繊維の間隙に第二メルトブロー不織布層20由来の樹脂溶着層25の一部がスパンボンド不織布層5に到達することなく第一メルトブロー不織布層10の厚み内に入り込んだ状態となる。その一方で、溶着部102では、スパンボンド不織布層5に樹脂が入り込まずにスパンボンド不織布層5のそのままの形態が維持されている。
【0056】
本実施形態の抽出用シート材1において、スパンボンド不織布層5を構成する樹脂繊維は、繊維同士が部分的に熱圧着されているので、樹脂繊維間に比較的大きな隙間がある状態となる。一方、第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂繊維は、製造時に熱風で延伸しているため繊維同士が自己融着し、さらに、スパンボンド不織布層5を構成する樹脂繊維の一部にも融着しているため、三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が維持される。また、本構成の抽出用シート材1においては、第二メルトブロー不織布層20を構成する樹脂の融点が、スパンボンド不織布層5を構成する樹脂の融点、及び第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂の融点より低くなるように設定されている。このため、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層20を構成する樹脂が溶融しても、第一メルトブロー不織布層10を構成する樹脂は溶融せずに三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が維持される。その結果、ヒートシール処理時に溶融した第二メルトブロー不織布層20の樹脂がスパンボンド不織布層5側の表面に漏れ出ようとしても、第一メルトブロー不織布層10によって阻止されることになり、ヒートシール処理時に溶融樹脂が裏抜けするのを防ぐことができる。
【0057】
以上、本発明の抽出用シート材について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【実施例0058】
以下、本発明の抽出用シート材の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
本発明の特徴構成を有する抽出用シート材(実施例1~8)、及び本発明の特徴構成を有しない抽出用シート材(比較例1及び2)をそれぞれ作製し、裏抜け評価を行った。
【0060】
(実施例1)
前述した第一工程(スパンボンド不織布層形成工程)により、ポリエチレンテレフタレート(PET(融点:252~256℃))の樹脂繊維からなるウェブ状のスパンボンド不織布層を形成した。次いで、前述した第二工程(第一メルトブロー不織布層形成工程)により、第一工程で形成したウェブ状のスパンボンド不織布層の表面にポリエチレンテレフタレート(PET(融点:252~256℃))の樹脂繊維からなるウェブ状の第一メルトブロー不織布層を形成した。その後、ウェブ状のスパンボンド不織布層、及びウェブ状の第一メルトブロー不織布層の積層体に対して、部分熱圧着率15%の部分的熱接着処理を行った。さらに、前述した第三工程(第二メルトブロー不織布層形成工程)により、第一メルトブロー不織布層の表面に低融点ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート共重合体(co-PET(融点:200~210℃))の樹脂繊維からなるウェブ状の第二メルトブロー不織布層を形成した。その後、フラットロールの間を通すことで、実施例1の抽出用シート材を得た。実施例1の抽出用シート材全体の目付は18g/m2であり、スパンボンド不織布層の目付は10g/m2であり、第一メルトブロー不織布層の目付は2g/m2であり、第二メルトブロー不織布層の目付は6g/m2であった。実施例1の抽出用シート材の断面を電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像において、スパンボンド不織布層を構成する繊維の直径を10箇所で測定し、その平均値として求めた平均繊維径は、13.6μmであった。実施例1の抽出用シート材における第一メルトブロー不織布層、及び第二メルトブロー不織布層についても同様の測定法により測定した結果、第一メルトブロー不織布層の平均繊維径は、13.6μmであり、第二メルトブロー不織布層の平均繊維径は、10.3μmであった。
【0061】
(実施例2~8)
第一工程~第三工程において、シートの移動速度、樹脂を溶融させる加熱温度、溶融樹脂に当てる空気流の温度、溶融樹脂の噴射距離等を適宜調整した。実施例7の抽出用シート材では、第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂繊維として、融点が150~160℃の低融点ポリエステル(co-PET)を用いた。実施例8の抽出用シート材では、第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂繊維として、融点が162℃程度のポリ乳酸(PLA)を用いた。その他は、実施例1に準じた手順で実施例2~8の抽出用シート材を得た。
【0062】
(比較例1及び2)
実施例1の抽出用シート材における第一メルトブロー不織布層を形成していない点以外は、実施例1に準じた手順により、PET(融点:252~256℃)の樹脂繊維からなるスパンボンド不織布層(外層)と、co-PET(融点:200~210℃)の樹脂繊維からなるメルトブロー不織布層(内層)とを形成して構成される比較例1及び2の抽出用シート材を得た。
【0063】
(裏抜け評価)
長尺状の抽出用シート材をロータリー式自動充填包装機械(株式会社トパック製)にセットし、所定箇所をシールバーで挟持して面溶着し、全4辺のうち3辺の縁部に幅8mmの面溶着部が形成された80mm×100mmの矩形の袋体を形成しつつ、袋体に麦茶用抽出材料7gを封入することで、抽出用バッグを製造した。このときのシールバーの温度は、トップシール部を150℃、サイドシール部を170℃とした。ロータリー式自動充填包装機械を10分間運転したときのシールバーからの抽出用シート材の剥離性を観察し、繊維の裏抜けの程度を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
(評価基準)
◎:抽出用シート材がシールバーに接着することなく、抽出用バッグを製造できる。
○:抽出用シート材がシールバーにやや接着するが、抽出用バッグを問題なく製造できる。
×:抽出用シート材がシールバーに接着し、抽出用バッグを製造するにあたり不具合が生じる。
【0064】
実施例1~8の抽出用シート材、及び比較例1及び2の抽出用シート材について、各層、及び全体の目付、各層の平均繊維径、及び各層の融点、並びに裏抜け評価の結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
実施例1~8の抽出用シート材は、裏抜け評価において、ロータリー式自動充填包装機械を用いて抽出用バッグを連続して問題なく製造することができた。実施例1~8の抽出用シート材では、ヒートシール処理時に第二メルトブロー不織布層を構成する樹脂が溶融しても、第一メルトブロー不織布層を構成する樹脂は溶融せずに三次元的に樹脂繊維の間隙が小さい状態が維持されていた。このように、実施例1~8の抽出用シート材は、ヒートシール処理時に溶融した第二メルトブロー不織布層の樹脂がスパンボンド不織布層側の表面に漏れ出ようとしても、第一メルトブロー不織布層によって阻止されて、裏抜けが防止されていることが確認された。特に、実施例1~3、5、及び7~8の抽出用シート材は、第一メルトブロー不織布層の平均繊維径が、16.5μm以下であり、且つ第二メルトブロー不織布層の平均繊維径が、13.6μm以下であるため、裏抜け防止効果が特に顕著なものであった。
【0067】
一方、比較例1及び2の抽出用シート材は、裏抜け評価において、抽出用シート材がシールバーに接着し、ロータリー式自動充填包装機械を用いて抽出用バッグを製造するにあたり不具合が生じた。比較例1及び2の抽出用シート材は、実施例1~8の抽出用シート材における第一メルトブロー不織布層を備えていない。このため、比較例1及び2の抽出用シート材では、ヒートシール処理時に、内層を構成するco-PETが溶融し、溶融したco-PETが、外層を構成するスパンボンド不織布層側の表面に漏れ出てしまい、裏抜けが生じていると考えられる。