(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060183
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】レーダ装置およびレーダ装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/87 20060101AFI20220407BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20220407BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021162467
(22)【出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】10 2020 212 476.0
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ショール
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ホレンダー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・バウアー
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AF03
5J070AK22
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】独立特許請求項の特徴を有するレーダ装置およびレーダ装置の動作方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、送受信機構および信号処理機構を備えたレーダ装置に関する。送受信機構は、第1の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第1の測定範囲を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力する。さらに送受信機構は、第2の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第2の測定範囲を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力する。信号処理機構は、第1および第2のセンサ信号を評価する。第1の間隔範囲は、第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なる。第2の間隔範囲の間隔は、設定された最小間隔より大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の設定された間隔範囲内でのレーダ装置(100)からの間隔を有する第1の測定範囲(B1)を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力し、および第2の設定された間隔範囲内での前記レーダ装置(100)からの間隔を有する第2の測定範囲(B2)を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力するように構成された送受信機構(1)と、
前記第1のセンサ信号および前記第2のセンサ信号を評価するように構成された信号処理機構(2)と
を備えたレーダ装置(100)であって、
前記第1の間隔範囲が、前記第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なっており、かつ
前記第2の間隔範囲の間隔が、設定された最小間隔(d1)より大きいレーダ装置(100)。
【請求項2】
前記第2の測定範囲(B2)が、前記第1の測定範囲(B1)に隣接しているかまたは部分的に前記第1の測定範囲(B1)と重なっている、請求項1に記載のレーダ装置(100)。
【請求項3】
前記送受信機構(1)が、第1のレーダセンサコンポーネント(11)であって、前記第1の測定範囲(B1)を捕捉し、かつ前記第1のセンサ信号を出力するように構成された第1のレーダセンサコンポーネント(11)を有しており、および第2のレーダセンサコンポーネント(12)であって、前記第2の測定範囲(B2)を捕捉し、かつ前記第2のセンサ信号を出力するように構成された第2のレーダセンサコンポーネント(12)を有している、請求項1または2に記載のレーダ装置(100)。
【請求項4】
前記第1のレーダセンサコンポーネント(11)の距離分解能が、前記第2のレーダセンサコンポーネント(12)の距離分解能とは異なっている、請求項3に記載のレーダ装置(100)。
【請求項5】
前記送受信機構(1)が1つのレーダセンサコンポーネントを有しており、前記レーダセンサコンポーネントが、第1の測定モードでは、前記第1の測定範囲(B1)を捕捉し、かつ前記第1のセンサ信号を出力するために動作可能であり、第2の測定モードでは、前記第2の測定範囲(B2)を捕捉し、かつ前記第2のセンサ信号を出力するために動作可能である、請求項1または2に記載のレーダ装置(100)。
【請求項6】
前記送受信機構(1)が、前記送受信機構(1)により前記第2の測定範囲(B2)を捕捉するために生成されたベースバンド信号のうち、設定された最小周波数より小さい周波数成分を抑制するために形成されたバンドパスフィルタ(141)を含んでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダ装置(100)。
【請求項7】
前記送受信機構(1)がアンチエイリアシングフィルタを含んでおり、前記アンチエイリアシングフィルタが前記バンドパスフィルタ(141)を含んでいる、請求項6に記載のレーダ装置(100)。
【請求項8】
前記設定された最小周波数が、前記ベースバンド信号の最大周波数の偶数の約数である、請求項6または7に記載のレーダ装置(100)。
【請求項9】
前記送受信機構(1)が、
前記ベースバンド信号を提供するように構成されたオーバーサンプリング型アナログデジタル変換器(13)と、
前記バンドパスフィルタ(141)を含んでおり、かつ前記アナログデジタル変換器(13)によって提供された前記ベースバンド信号をフィルタリングするように構成されたデジタルデシメーションフィルタ(14)と
を含んでいる、請求項6から8のいずれか一項に記載のレーダ装置(100)。
【請求項10】
前記送受信機構(1)がさらに、前記第2の測定範囲(B2)を捕捉するために生成されたベースバンド信号の周波数をより低い周波数にシフトするように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のレーダ装置(100)。
【請求項11】
レーダ装置(100)を使って、第1の設定された間隔範囲内での前記レーダ装置(100)からの間隔を有する第1の測定範囲(B1)を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力するステップ(S1)と、
前記レーダ装置(100)を使って、第2の設定された間隔範囲内での前記レーダ装置(100)からの間隔を有する第2の測定範囲(B2)を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力するステップ(S2)と、
前記レーダ装置(100)を使って、前記第1のセンサ信号および前記第2のセンサ信号を評価するステップ(S3)と
を有する前記レーダ装置(100)の動作方法であって、
前記第1の間隔範囲が、前記第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なっており、かつ
前記第2の間隔範囲の間隔が、設定された最小間隔(d1)より大きい動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置およびレーダ装置の動作方法に関する。本発明はとりわけ自動車分野で使用するためのレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダセンサは、自動車分野では、アダプティブクルーズコントロールのような快適機能および緊急ブレーキアシスタントのような安全機能を実現するために用いられる。ビデオカメラを使用する場合、生成されたカメラ画像は最初に解釈されなければならない。これとは異なりレーダセンサは、物理量が直接的に測定されることが有利である。
【0003】
レーダセンサは、アンテナ構造を介して高周波レーダビームを送信し、かつオブジェクトで反射されたビームを受信する。この場合、捕捉されるオブジェクトは停止または移動していてよい。受信したレーダビームを使って、オブジェクトに対する間隔ならびに方向、つまり方位角および/または仰角が計算され得る。これに加え、レーダセンサに対するオブジェクトの相対速度が計算され得る。典型的なレーダセンサは、76~81GHzの周波数範囲で働く。
【0004】
快適機能および安全機能を実現するための総合システムは、様々な形態の超音波センサ、後方に向けられたビデオカメラ、ステレオビデオカメラ、暗視カメラ、およびレーダセンサを含み得る。レーダセンサは、例えば遠くの範囲または中間の間隔範囲を捕捉するために形成され得る。遠くの範囲を捕捉するためのレーダセンサは、例えば250メートルまでの間隔範囲を捕捉し得る。中間の間隔範囲を捕捉するためのレーダセンサは、例えば約160メートルまでの間隔範囲を捕捉し得る。
【0005】
したがってレーダを使って監視されることになる範囲はしばしば、大きな到達距離および減少した角度範囲を有する遠くの範囲、つまり前方へ向かう細長いローブを含んでいる。これに対して中間の範囲は、可能な限り幅広い捕捉範囲を特色とするが、より小さい到達距離を有している(「360°の帯状地帯」)。
【0006】
両方の範囲を監視するために、共通のまたは別々のアンテナが使用され得る。センサの形態に応じて、細長いローブの範囲は、アンテナハードウェアの変更によって、またはデジタルビームフォーミングのような信号処理措置によって生成される。しかしながらこれにより、多くの送信アンテナを備えたセンサの場合、大きなデータ量が生じ、したがって、異なる範囲には異なる送信アンテナを、例えば専用のハードウェアと共に、TXビームステアリングおよび送信アンテナの相応の構成により、使用することが有利である。
【0007】
FMCW(英語:frequency-modulated continuous wave)レーダセンサでは、連続的なレーダ信号の送信周波数がランプ状に変調される。受信信号と送信信号の混合によりベースバンド信号が生成され、続いてこのベースバンド信号が評価される。例示的な角度分解型FMCWレーダセンサが独国特許出願公開第102013212090号明細書から知られている。高速ランプを用いるFMCWセンサでは、ホモダイン原理によってベースバンドが生成され、このベースバンドの周波数は、目標の間隔に支配されている。
【0008】
通常は、0Hzから最大周波数までの周波数範囲をサンプリングし、かつデジタル信号に変換するよう形成されたアナログデジタル変換器が用いられ、その際、最大周波数は、所望の最大距離によって決定される。大きな到達距離を達成するには、相応に高いサンプリングレートが、そこから推論される大きなデータ量を伴って使用されなければならない。その代わりにまたはそれに加えて、距離分解能が、ランプストロークの選択によって減少されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013212090号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、独立特許請求項の特徴を有するレーダ装置およびレーダ装置の動作方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
すなわち第1の態様により、本発明は、送受信機構および信号処理機構を備えたレーダ装置に関する。送受信機構は、第1の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第1の測定範囲を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力する。さらに送受信機構は、第2の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第2の測定範囲を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力する。信号処理機構は、第1および第2のセンサ信号を評価する。第1の間隔範囲は、第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なる。第2の間隔範囲の間隔は、設定された最小間隔より大きい。
【0012】
第2の態様により、本発明は、レーダ装置の動作方法に関する。レーダ装置を使って、第1の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第1の測定範囲が捕捉され、かつ第1のセンサ信号が出力される。さらにレーダ装置を使って、第2の設定された間隔範囲内でのレーダ装置からの間隔を有する第2の測定範囲が捕捉され、かつ第2のセンサ信号が出力される。レーダ装置を使って、第1のセンサ信号および第2のセンサ信号が評価される。第1の間隔範囲は、第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なる。第2の間隔範囲の間隔は、設定された最小間隔より大きい。
【0013】
本発明の利点
このレーダ装置は、2つの異なる測定範囲を捕捉する。この場合、概念「測定範囲」とは、空間的な範囲のことであり、つまり、レーダ放射を使って監視される範囲であり、この範囲から、オブジェクトによる反射が捕捉され得る。測定範囲は、例えば最小間隔、最大間隔、および特定の角度範囲を特徴とし得る。第1の測定範囲は、例えばほぼ扇形の形状を有することができ、つまり1つの円弧および2つの円半径によって画定され得る。ただし一般的には、第1の測定範囲がより複雑な形状を有してもよく、例えばローブ状であり得る。これとは異なり、少なくとも第2の測定範囲は、特定の最小間隔のところから始まっており、例えば最大間隔まで広がっている。例えば、第2の測定範囲は円環の断片、つまり円環の、2つの円半径の間に挟まれた部分の形状を有し得る。第2の測定範囲もまた、より複雑な形状、例えばローブのうちの最小間隔を超える範囲を有し得る。
【0014】
複数の範囲および幾つかの送信アンテナを用いるセンサの場合、従来的には、重なった距離範囲内の目標が「二重にサンプリング」される。これにより、必要より大きなデータ量が記録される。それゆえ本発明によれば第2の測定範囲は、設定された最小間隔より大きな間隔だけを含んでいる。これにより、二重のサンプリングが回避または少なくとも減少される。
【0015】
したがって本発明は、異なる捕捉範囲を使用する場合に、必要とされるデータ量を減らすことを可能にする。
【0016】
レーダ装置の一変形形態によれば、第2の測定範囲は第1の測定範囲に隣接している。第2の測定範囲は第1の測定範囲と部分的に重なっていてもよい。とりわけ、第1の間隔範囲の最大間隔は、第2の間隔範囲の最小間隔に実質的に相当し得る。例えば、第2の測定範囲、つまり遠くの範囲に対するフィルタリングの適合およびデータ減少により、測定範囲が相応に調整され得る。
【0017】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構が第1のレーダセンサコンポーネントを有する。第1のレーダセンサコンポーネントは、第1の測定範囲を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力するために形成されている。さらにレーダ装置は、第2のレーダセンサコンポーネントであって、第2の測定範囲を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力するために形成された第2のレーダセンサコンポーネントを含んでいる。したがってこれらの測定範囲は、異なるレーダセンサコンポーネントまたはアンテナ構成によって捕捉され得る。これは、別々のアンテナを備えた別々の機構であり得る。ただしこれらのレーダセンサコンポーネントが1つの共通のアンテナを有することもできる。
【0018】
レーダ装置の一変形形態によれば、第1のレーダセンサコンポーネントの距離分解能は、第2のレーダセンサコンポーネントの距離分解能とは異なる。これは例えば、FMCW法での異なる周波数偏移の選択によって達成され得る。こうして第1の間隔範囲、つまり近くの範囲には非常に良い距離分離能を、および第2の間隔範囲、つまり遠くの範囲にはより悪い距離分離能を付与することができる。これにより、これらの範囲のサンプリングレートも、ベースバンド周波数も異なることができ、このベースバンド周波数によって近くの範囲と遠くの範囲の間の移行が行われる。
【0019】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構が1つのレーダセンサコンポーネントを有しており、このレーダセンサコンポーネントは、第1の測定モードでは、第1の測定範囲を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を出力するために動作可能である。さらにこのレーダセンサコンポーネントは、第2の測定モードでは、第2の測定範囲を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を出力するために動作可能である。したがってこれらの測定範囲は、同じレーダセンサコンポーネントまたはアンテナ構成によって捕捉され得る。
【0020】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構が、送受信機構により第2の測定範囲を捕捉するために生成されたベースバンド信号のうち、設定された最小周波数より小さい周波数成分を抑制するために形成されたバンドパスフィルタを含んでいる。ベースバンド信号の減少により、データ量を減らすことができ、かつシステムの費用が低減され得る。
【0021】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構がアンチエイリアシングフィルタを含んでおり、このアンチエイリアシングフィルタはバンドパスフィルタを含んでいる。バンドパスフィルタは、現況技術で使用されるローパスフィルタの代わりに使用され得る。
【0022】
レーダ装置の一変形形態によれば、設定された最小周波数は、ベースバンド信号の最大周波数の偶数の約数である。例えば、設定された最小周波数は帯域幅の半分または帯域幅の4分の1に相当し得る。このような周波数は、技術的に容易に実現でき、かつ少ない電流消費を特色とする。半分の帯域幅の使用は、例えば、近くの範囲が、遠くの範囲の距離の約半分をカバーする場合に有利である。例えば、近くの範囲が約100メートルまでの距離をカバーし、かつ遠くの範囲が約100メートルから約200メートルまでの距離をカバーし得る。
【0023】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構が、ベースバンド信号を提供するために形成されたオーバーサンプリング型アナログデジタル変換器を含んでいる。レーダ装置はデジタルデシメーションフィルタをさらに含んでおり、このデジタルデシメーションフィルタは、バンドパスフィルタを含んでおり、かつアナログデジタル変換器によって提供されたベースバンド信号をフィルタリングするために形成されている。デシメーションフィルタにはバンドパスフィルタが簡単に組み込まれ得る。
【0024】
レーダ装置の一変形形態によれば、送受信機構はさらに、第2の測定範囲を捕捉するために生成されたベースバンド信号の周波数をより低い周波数にシフトするために形成されている。これは事実上、バンドパスフィルタリングに相当し、なぜなら低い周波数が切り取られるからである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】測定範囲を解説するための、本発明の一実施形態によるレーダ装置の概略的な平面図である。
【
図2】
図1で図解したレーダ装置の概略的なブロック図である。
【
図3】例えば従来技術で使用され得るような、ベースバンドにおけるローパスフィルタを示す図である。
【
図4】本発明によるレーダ装置で使用するためのバンドパスフィルタを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるレーダ装置の動作方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
すべての図で、同じまたは機能的に同じ要素および装置には同じ符号が付されている。プロセスステップのナンバリングは、明瞭さに役立ち、かつ概して特定の時間的な順番を含意していない。とりわけ、複数のプロセスステップを同時に実施してもよい。
【0027】
図1は、測定範囲B1、B2を解説するための、レーダ装置100の概略的な平面図を示している。レーダ装置100は、第1の測定範囲B1も第2の測定範囲B2も捕捉するために形成されている。第1の測定範囲B1の角度範囲は、第2の測定範囲B2の角度範囲より大きいことが好ましい。さらに第1の測定範囲B1の最大間隔d1は、第2の測定範囲B2の最大間隔d2より小さい。さらに第2の測定範囲B2は、第1の測定範囲B1に隣接しており、したがって第1の測定範囲B1の最大間隔d1と第2の測定範囲B2の最大間隔d2の間の間隔を含んでいる。よって第1の測定範囲B1は、近くの範囲または中間の間隔範囲に相当し、かつ第2の測定範囲B2は遠くの範囲に相当する。
【0028】
本発明は、測定範囲B1およびB2の図解した形態には限定されない。さらなる実施形態によれば、第2の測定範囲B2が部分的に第1の測定範囲B1と重なっていてもよい。さらに違う形状の測定範囲も可能である。とりわけ、測定範囲の角度の広がりが間隔と共に変化することもできる。
【0029】
図2は、レーダ装置100の概略的なブロック図を示している。レーダ装置100のコンポーネントは、MMIC(英語:Monolithic Microwave Integrated Circuit)内で実現され得る。
【0030】
レーダ装置100は送受信機構1を含んでおり、送受信機構1は、
図1で示した第1の測定範囲B1を捕捉し、かつ第1のセンサ信号を生成し、および
図1で示した第2の測定範囲B2を捕捉し、かつ第2のセンサ信号を生成する。送受信機構1は、第1の測定範囲B1を捕捉するための第1のアンテナ構成を備えた第1のレーダセンサコンポーネント11を含んでいる。さらに送受信機構1は、第2の測定範囲B2を捕捉するための第2のアンテナ構成を備えた第2のレーダセンサコンポーネント12を含んでいる。これに相応して、各測定範囲のために別々のアンテナ構成が設けられている。
【0031】
送受信機構1は、第2のレーダセンサコンポーネント12によって送信および受信された信号に基づいてベースバンド信号を提供するために、オーバーサンプリング型アナログデジタル変換器13を含んでいる。送受信機構1は、デジタルデシメーションフィルタ14をさらに含んでおり、このデジタルデシメーションフィルタ14は、バンドパスフィルタ141を含んでおり、かつアナログデジタル変換器13によって提供されたベースバンド信号をフィルタリングするために形成されている。この場合、バンドパスフィルタは、ベースバンド信号のうち、設定された最小周波数より小さい周波数成分を抑制する。設定された最小周波数は、ベースバンド信号の最大周波数の偶数の約数であることが好ましい。
【0032】
第1のレーダセンサコンポーネント11のためにも、ベースバンド信号を提供するための(不図示の)アナログデジタル変換器と、ベースバンド信号をフィルタリングするためのローパスフィルタとが設けられ得る。その代わりに、アナログデジタル変換器13および(第1のレーダセンサコンポーネント11のためには好ましくはローパスフィルタとして動作する)フィルタ141が、第1のレーダセンサコンポーネント11によって生成された送信信号を処理するためにも設けられていてもよい。例えば、第1のレーダセンサコンポーネント11と第2のレーダセンサコンポーネント12のセンサ信号が交互に処理され得る。
【0033】
第1のレーダセンサコンポーネント11の距離分解能は、第2のレーダセンサコンポーネント12の距離分解能とは異なり得る。バンドパスフィルタ141の設計は、近くの範囲の最大ベースバンド周波数にはリンクしていない。むしろ、フィルタのバンドエッジの選択は、周波数偏移との組み合わせで、当該エッジでの距離範囲の一致をもたらし得る。
【0034】
レーダ装置100は、第1のセンサ信号および第2のセンサ信号を評価する信号処理機構2をさらに含んでいる。信号処理機構2はとりわけ、第1のセンサ信号と第2のセンサ信号のデータ融合を実施し得る。
【0035】
とはいえ本発明はこの形態には限定されない。とりわけ、送受信機構1が、アンテナ素子を備えた1つのレーダセンサコンポーネントだけを有することもできる。この送受信機構1は、2つの異なる測定モードで動作可能である。第1の測定モードでは第1の測定範囲B1が捕捉され、第2の測定モードでは第2の測定範囲B2が捕捉される。
【0036】
さらに送受信機構1がアンチエイリアシングフィルタを含んでいてもよく、このアンチエイリアシングフィルタはバンドパスフィルタ141を含んでいる。
【0037】
バンドパスフィルタ141は、MMICの高周波モジュール内で、および好ましくはアナログデジタル変換器に空間的に近接して実現され得る。バンドパスフィルタ141は、アナログフィルタとしてアナログデジタル変換器13の前に、または(
図2で示したように)デジタルフィルタとしてアナログデジタル変換器13の後に形成され得る。アナログデジタル変換器13が、オーバーサンプリングおよびデジタルデシメーションフィルタと共に用いられる場合、新たなバンドパスフィルタ141が簡単に組み込まれ得る。デジタルフィルタの場合、周波数シフトも組み込むことができ、したがってエイリアシング効果を暗示的に利用しなくてよい。このようなバンドパスフィルタ141は、RFCMOS(英語:Radio Frequency Complementary Metal-Oxide Semiconductor)技術を使用して、簡単かつ好適に実現され得る。
【0038】
最後に、送受信機構1は、第2の測定範囲B2を捕捉するために生成されたベースバンド信号の周波数を、より低い周波数にシフトするためにも形成され得る。
【0039】
図3は、例えば従来技術で使用され得るような、ベースバンドにおける典型的なローパスフィルタを示している。正規化された周波数f
norm(単位:Radiant/Sample)の関数としてのマグニチュード(単位:デシベル)(Magn/dB)が示されている。レーダ装置からのオブジェクトの小さな間隔に相当する小さな周波数が、全体的に捕捉されており、さらにその後のデータ評価の際に考慮される。すなわち従来技術によるレーダシステムは、アナログデジタル変換器により、0Hzから最大周波数までのベースバンド信号をサンプリングする。マイクロコントローラは、すべてのデータを処理し、かつドップラーFFT(高速フーリエ変換)のために保存もしなければならない。
【0040】
実際の受信システムでは、アンチエイリアシングフィルタを備えたアナログデジタル変換器を、サンプリングレートが最大発生周波数の約2倍に相当するように設計でき、これにより、利用可能な伝送されるベースバンドは0HzからFs/2までになり、このFsはサンプリング周波数を意味する。ただしこれは実際の信号に基づいて-Fs/2からFs/2までの範囲に相当する。IQミキサでは単側波帯処理を行うことができ、したがってベースバンドは実質的に0HzからFs/2まで広がっている。ただし、必要な複素数に基づいて同じデータ量が必要とされる。
【0041】
図4は、本発明によるレーダ装置100で使用するためのバンドパスフィルタを示している。MMIC内でのフィルタリングは、もはやベースバンド全体ではなく、ベースバンドの一部のみがサンプリングおよび伝送されるように行われる。可能な一形態は、ベースバンドの上半分だけを伝送することである。IQシステムでは、この上半分はFs/4からFs/2までの範囲に相当する。つまりバンドパスフィルタ141は、周波数がFs/4未満のすべての信号を抑制する。これにより、ナイキストのサンプリング定理によりサンプリングレートが減少され得る。この場合、サンプリングレートは信号の帯域幅に依存する。比較的高い周波数はエイリアシングによって下の範囲に変換され得るが、これは、フィルタリングによりそれ以前にそこにあった信号が抑制されたので問題ない。
【0042】
実際のシステムでは、サンプリングレートをフィルタリング後に減少でき、かつエイリアシング効果を利用してもよい。
【0043】
図5は、レーダ装置、とりわけ上述のレーダ装置100の動作方法のフロー図を示している。
【0044】
第1のプロセスステップS1では、レーダ装置100を使って、第1の設定された間隔範囲内でのレーダ装置100からの間隔を有する第1の測定範囲B1が捕捉される。第1のセンサ信号が出力される。第1の間隔範囲は、第2の間隔範囲とは少なくとも部分的に異なる。第2の間隔範囲のすべての間隔が、設定された最小間隔より大きい。
【0045】
第2のプロセスステップS2では、レーダ装置100を使って、第2の設定された間隔範囲内でのレーダ装置100からの間隔を有する第2の測定範囲B2が捕捉される。第2のセンサ信号が出力される。
【0046】
レーダ装置100は第3のプロセスステップS3では、第1および第2のセンサ信号を評価する。とりわけ、第1のセンサ信号と第2のセンサ信号のデータ融合が実施され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 送受信機構
2 信号処理機構
11 第1のレーダセンサコンポーネント
12 第2のレーダセンサコンポーネント
13 アナログデジタル変換器
14 デシメーションフィルタ
100 レーダ装置
141 バンドパスフィルタ
B1 第1の測定範囲
B2 第2の測定範囲
d1 第1の測定範囲B1の最大間隔、最小間隔
d2 第2の測定範囲B2の最大間隔
【外国語明細書】