(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060184
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】水性剥離剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 9/00 20060101AFI20220407BHJP
C09D 9/04 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C09D9/00
C09D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162470
(22)【出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020167728
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北尾 成史
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038RA01
4J038RA02
4J038RA06
4J038RA12
4J038RA14
4J038RA16
(57)【要約】
【課題】環境負荷が小さく、優れた剥離効果を有するとともに、非引火性及び非引火性の持続性に優れた水性剥離剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の剥離剤組成物は、(A)水、及び(B)芳香族アルコールとともに、(C)固形パラフィンを特定量混合してなるものであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水、及び、
(B)芳香族アルコール、
を含有する水性剥離剤組成物であって、
さらに、(C)固形パラフィン0.01重量%以上10重量%以下を混合してなるものであることを特徴とする水性剥離剤組成物。
【請求項2】
(A)水20重量%以上60重量%以下、
(B)芳香族アルコール40重量%以上80重量%以下、及び、
(C)固形パラフィン0.01重量%以上10重量%以下、
を混合してなるものであることを特徴とする水性剥離剤組成物。
【請求項3】
さらに、(D)芳香族有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性剥離剤組成物。
【請求項4】
さらに、(E)界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水性剥離剤組成物。
【請求項5】
さらに、(F)揮発防止剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の水性剥離剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷が小さく、優れた剥離効果を有するとともに、非引火性及び塗付後の非引火性の持続性に優れた水性剥離剤組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜(旧塗膜)を塗り替える方法として、旧塗膜の上に新しい塗料を塗装する方法、または、旧塗膜を一旦剥離し新しい塗料を塗装する方法等が挙げられる。従来コストや工期短縮等の面から旧塗膜に上に新しい塗料を塗装する方法で塗り替える場合が多く、現在旧塗膜の上に2回ないし3回以上塗り重ねた建築物、土木構造物は数多く存在する。
【0003】
しかし、既に劣化した旧塗膜の上に新しい塗料を何重にも塗り重ねると、塗膜自体が重くなり基材に負荷を与える恐れがある。また塗膜自体の厚みが厚くなりすぎ空間を圧迫してしまう場合もある。さらに近年では高機能性塗膜が登場し、塗膜の上に新しい塗料を塗装すること自体が難しい場合もある。
【0004】
このような問題から、最近では旧塗膜を一旦剥離する方法が多くなってきている。
旧塗膜を剥離する方法としては、サンダー処理、ブラスト処理、高圧水噴射、タガネハツリ等の物理的手法、薬剤、溶剤を利用した化学的手法等が挙げられるが、最近では、下地損傷、粉塵飛散等の問題、環境配慮、安全性等の観点から、水性剥離剤を利用した化学的手法が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-84164号公報
【特許文献2】WO2018/179925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1、2では、水、芳香族アルコール(ベンジルアルコール)を基本組成とする水性剥離剤が記載されており、環境負荷が小さく、剥離性効果を有することが記載されている。
しかしながら、水性剥離剤は、通常、塗付後1時間から48時間程度経過後、旧塗膜の軟化後に剥離作業を行うものであるが、塗付後時間経過後に引火するおそれがあり、例えば、剥離作業中の塗膜や、剥離後の塗膜等では、その危険性が想定され得る場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、(A)水、(B)芳香族アルコールに、さらに、(C)固形パラフィンを特定量混合することにより、環境負荷が小さく、優れた剥離効果を有するとともに、非引火性及び塗付後の非引火性の持続性に優れた水性剥離剤組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.(A)水、及び、
(B)芳香族アルコール、
を含有する水性剥離剤組成物であって、
さらに、(C)固形パラフィン0.01重量%以上10重量%以下を混合してなるものであることを特徴とする水性剥離剤組成物。
2.(A)水20重量%以上60重量%以下、
(B)芳香族アルコール40重量%以上80重量%以下、及び、
(C)固形パラフィン0.01重量%以上10重量%以下、
を混合してなるものであることを特徴とする水性剥離剤組成物。
3.さらに、(D)芳香族有機溶媒を含有することを特徴とする1.または2.に記載の水性剥離剤組成物。
4.さらに、(E)界面活性剤を含有することを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の水性剥離剤組成物。
5.さらに、(F)揮発防止剤を含有することを特徴とする1.から4.のいずれかに記載の水性剥離剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性剥離剤組成物は、環境負荷が小さく、優れた剥離効果を有するとともに、非引火性及び塗付後の非引火性の持続性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の水性剥離剤組成物は、(A)水(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)芳香族アルコール(以下、「(B)成分」ともいう。)とともに、(C)固形パラフィン(以下、「(C)成分」ともいう。)0.01重量%以上10重量%以下を混合してなるものであることを特徴とする。
【0012】
本発明で用いる(B)成分は、例えば、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ナフトール等が挙げられる。本発明では特に、ベンジルアルコールを用いることが好ましい。
このような(B)成分と(A)成分を混合することで、優れた剥離効果を有するとともに、非引火性及び塗付後の非引火性の持続性に優れた水性の剥離剤を得ることができる。
【0013】
本発明で用いる(C)成分は、融点が30℃以上70℃以下(好ましくは、35℃以上65℃以下)の固形パラフィンである。
このような(C)成分を、組成物全量に対し、0.01重量%以上10重量%以下(好ましくは0.03重量%以上8重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以上5重量%以下)を混合することで、塗付後、時間経過後の非引火性を付与することができ、優れた非引火性の持続性を得ることができる。
【0014】
また、(A)成分、(B)成分の配合量は、組成物全量に対し、(A)成分20重量%以上60重量%以下(好ましくは25重量%以上55重量%以下、より好ましくは30重量%以上50重量%以下)、(B)成分40重量%以上80重量%以下(好ましくは45重量%以上75重量%以下、より好ましくは50重量%以上70重量%以下)であることが好ましい。
このような範囲であることによって、環境負荷が小さく、剥離効果、非引火性により優れた剥離剤を得ることができる。
【0015】
本発明の水性剥離剤は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分以外に、(D)芳香族溶剤(以下、「(D)成分」ともいう。)、(E)界面活性剤(以下、「(E)成分」ともいう。)、(F)揮発防止剤(以下、「(F)成分」ともいう。)を含有することができる。
【0016】
本発明で用いる(D)成分は、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、クメン、シメン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。本発明では、炭素数6~15(好ましくは7~12)の芳香族溶剤(好ましくは芳香族炭化水素溶剤)、特に、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、クメン、シメン、トリメチルベンゼンから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。なお、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系芳香族溶剤は、環境負荷軽減、臭気軽減等の点から、好ましくは、含まないか、あるいは、(D)成分全量に対し、10重量%以下であることが好ましい。また、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル溶剤は、環境負荷軽減、臭気軽減等の点から、好ましくは、含まないか、あるいは、(D)成分全量に対し、90重量%以下(より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下)であることが好ましい。
このような(D)成分は、特に剥離効果の向上が期待できる成分である。また(D)成分は、特に(B)成分、(C)成分と相溶しやすく、(B)成分及び(C)成分と(D)成分の相乗効果により、より優れた剥離効果、非引火性の持続性効果を得ることができる。
また(D)成分の配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、0.1重量%以上10重量%以下(好ましくは0.3重量%以上8重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上5重量%以下)であることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる(E)成分は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等特に限定されない。本発明では、例えば、アルキル基とオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルあるいは、その硫酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、スルホン酸エステル塩、コハク酸塩、コハク酸エステル塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用することが好ましい。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。また、オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位等が挙げられ、繰り返し単位が6以上50以下、好ましくは8以上30以下であること好ましい。またアルキル基としては、炭素数6以上30以下(好ましくは炭素数8以上24以下)であることが好ましい。
このような(E)成分は、(A)成分と(B)成分の乳化分散体を形成し、分散安定性を高めることができる。また(D)成分とともに混合することで、剥離効果、剥離効果の持続性に優れた剥離剤を得ることができる。
また(E)成分の配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、0.1重量%以上10重量%以下(好ましくは0.5重量%以上8重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上6重量%以下)であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる(F)成分は、例えば、グリセリン、ブタントリオール、2-メチル-プロパントリオール、ペンタントリオール、2-メチル-ブタントリオール、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、2-エチル-ブタントリオール、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ペンタンテトロール、ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン等の4価アルコール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール、
トリペンタエリスリトール等の8価アルコール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミン、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸等のベンゼンテトラカルボン酸、メリット酸等のベンゼンヘキサカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、トリアミノトリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。本発明では特に、3価アルコールから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、さらにグリセリンを用いることが好ましい。
このような(F)成分は、(A)成分と(B)成分の揮発を防止し、剥離効果の持続性、塗付後の非引火性の持続性を高めることができる。
また(F)成分の配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、0.1重量%以上20重量%以下(好ましくは0.5重量%以上18重量%以下、より好ましくは1重量%以上15重量%以下)であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の水性剥離剤は、上記成分以外に、例えば、脂肪族溶剤、増粘剤、酸化剤、還元剤、樹脂、ワックス、芳香剤、着色剤、染料等を含有することができる。
【0020】
脂肪族溶剤としては、例えば、炭素数6以上30以下(好ましくは炭素数8以上24以下、より好ましくは炭素数10以上22以下、さらに好ましくは炭素数12以上20以下)の脂肪族溶媒を用いることができ、剥離効果の持続性の向上が期待できる成分である。
脂肪族溶剤としては、例えば、次に例示するもの等が挙げられ、必要に応じ、これらのうち1種または2種以上を使用できる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族炭化水素
例えば、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、ペンタデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアルコール
第一級、第二級、第三級等特に限定されないが、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール 、エライジルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、エルシルアルコール、イソヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、イソヘプタノール、4-メチル-1-ヘキサノール、3-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-2-メチル-1-ブタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、6-メチル-2-ヘプタノール、イソノナノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、2-ブチルオクタノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、2-ヘキシルデカノール、イソヘキサデカノール、2-ヘキシルデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、2-オクチルドデカノール、イソヘンエイコサノール、18-メチルエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、2-デシルテトラデカノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアルコール
例えば、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオール、エイコサンジオール、ヘンイコサンジオール、ドコサンジオール、トリコサンジオール、テトラコサンジオール、ペンタコサンジオール、ヘキサコサンジオール、ヘプタコサンジオール、オクタコサンジオール、ノナコサンジオール、トリアコサンジオール、リシノレイルアルコール等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノカルボン酸
例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸 、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸、サピエン酸、オレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、ミード酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、エイコサジエン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、オズボンド酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、リシノール酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘプタデセン酸、ペトロセリン酸、エレオステアリン酸、ボセオペンタエン酸、ガドレイン酸、エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソノナデカン酸、イソエイコサン酸、2-オクチルドデカン酸、2-デシルテトラデカン酸等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジカルボン酸
例えば、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノエステル
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノカルボン酸とアルコールの反応生成物である脂肪族モノエステル、あるいは、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノアルコールとカルボン酸の反応生成物である脂肪族モノエステル等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジエステル
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジカルボン酸とアルコールの反応生成物である脂肪族ジエステル、あるいは、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジアルコールとカルボン酸の反応生成物である脂肪族ジエステル等が挙げられる。
なお、脂肪族モノエステル、脂肪族ジエステルの生成で使用されるアルコールとしては、上記脂肪族モノアルコール、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールから選ばれる1種以上が挙げられる。また、カルボン酸としては、上記脂肪族モノカルボン酸、あるいはメタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族エーテル
例えば、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ケトン
例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、イソホロン等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアミン
例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イコシルアミン、ドコシルアミン、テトラコシルアミン、ペンタコシルアミン、ヘキサコシルアミン、ヘプタコシルアミン、オクタコシルアミン、ノナコシルアミン、トリアコンチルアミン、オレイルアミン、リノレイルアミン、エルカアミン、リシノレイルアミン等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアミン
例えば、ヘキシルジアミン、ヘプチルジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族モノアミド
例えば、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、テトラデカンアミド、ヘキサデカンアミド、オクタデカンアミド、イコサンアミド、ドコサンアミド、テトラコサンアミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド、エルカ酸アミド等、また、上記炭素数6以上30以下の脂肪族モノカルボン酸とアミンの反応生成物である脂肪族モノアミド等が挙げられる。
・炭素数6以上30以下の直鎖状、分岐状の飽和、不飽和脂肪族ジアミド
例えば、上記炭素数6以上30以下の脂肪族ジカルボン酸とアミンの反応生成物である脂肪族ジアミド等が挙げられる。
なお、脂肪族モノアミド、脂肪族ジアミドの生成で使用されるアミンとしては、例えば、上記脂肪族モノアミン、あるいは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミンから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
本発明では特に脂肪族溶剤として、炭素数6以上12以下(好ましくは炭素数8以上12以下)の脂肪族溶媒と、炭素数13以上30以下(好ましくは炭素数14以上24以下)の脂肪族溶媒を併用したものを用いることができる。
また脂肪族溶剤として、脂肪族炭化水素、脂肪族モノアルコール、脂肪族モノエステル、脂肪族ジエステル、脂肪族モノアミド、脂肪族ジアミドから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、特に、脂肪族炭化水素と、脂肪族モノエステル及び/または脂肪族ジエステルを併用したものを用いることができる。
また脂肪族溶剤の配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、10重量%以下(好ましくは8重量%以下)であることが好ましく、脂肪族溶剤を配合する場合は0.5重量%以上とすることが好ましい。
【0022】
増粘剤としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、ソーコナイト、スティーブンサイト、フルオロヘクトライト、ラポナイト、レクトナイト、バーミキュライト、イライト、マカタイト、カネマイト、イリエライト、マガディアイト、ケニヤアイト等の粘土鉱物、膨潤性シリカ、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリアクリル酸重合体等を用いることができる。
また増粘剤の配合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、0.1重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上15重量%以下含有することが好ましい。
【0023】
酸化剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、サリチル酸、ケイ皮酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アルギン酸、グリコール酸、グルコン酸、グルタミン酸、トルエンスルホン酸、ニコチン酸、尿酸、ハロゲン置換酢酸、ベンゼンスルホン酸、過酸化水素、過塩素酸塩、過ホウ酸塩等が挙げられる。
【0024】
還元剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0025】
酸化剤、還元剤の混合量は、特に限定されないが、組成物全量に対し、その合計量が10重量%以下、さらには0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0026】
樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、樹脂形態は、水可溶型、水分散型、溶剤可溶型、NAD型、自己乳化型、粉末型等特に限定されない。
【0027】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、ペトロラタム、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ラノリン、みつろう、フィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられ、液状または固形状特に限定されず、1種または2種以上を用いることができる。また、液状のパラフィンワックス及びその誘導体を用いることもできる。
【0028】
また、上記(D)成分、上記脂肪族溶剤以外の溶媒として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N-メチルピロリドン、スルホラン、クロロブタン、ブロムヘキサン、ジクロロメタン、1,2?ジクロロエタン、1,1?ジクロロエタン、クロロホルム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、トリグリセリド、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール等を使用することもできる。
なお本発明では、クロロブタン、ブロムヘキサン、ジクロロメタン、1,2?ジクロロエタン、1,1?ジクロロエタン、クロロホルム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素系溶剤は、臭気等の観点から、使用しないほうが好ましい。
【0029】
本発明の剥離剤組成物は、上記成分を混合して得ることができる。また、本発明の剥離剤組成物のpHは、環境負荷軽減、安全性、作業性等の観点から3以上14以下、さらには3.5以上8以下、特に4以上7以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の剥離剤組成物は、建築物、土木構造物等の表面に形成された塗膜を剥離するもので、適用できる塗膜としては、特に限定されないが、例えば、JIS K5621「一般用さび止めペイント」、JIS K5651「アミノアルキド樹脂塗料」、JIS K5658「建築用耐候性上塗り塗料」、JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5668「合成樹脂エマルション模様塗料」、JIS K5670「アクリル樹脂系非水分散形塗料」、JIS A6909「建築用仕上塗材」等が挙げられる。
【0031】
本発明の剥離剤組成物は、このような塗膜の上に、好ましくは0.2kg/m2以上5.0kg/m2以下、より好ましくは0.3kg/m2以上3.0kg/m2以下で塗付すればよい。塗装器具としては特に限定されず、例えば、ローラー、刷毛、鏝、ヘラ、スプレー、ガン等を用いて塗装すればよい。
【0032】
また本発明の剥離剤組成物は、30分から2時間程度で軟化し剥離を開始することができ、さらに24時間から48時間経過後も軟化が持続している。そのため、翌日など、施工者のタイミングにあわせて剥離が可能である。剥離器具としては特に限定されず、例えば、鏝、ヘラ、スクレーパー等を用いて剥離すればよい。本発明は、塗付後の非引火性の持続性に優れるため、安全に剥離することができる。
【実施例0033】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0034】
表1に示す重量割合にて下記原料を均一に混合した剥離剤組成物1~16を用意した。なお剥離剤組成物1~16のpHは、いずれも4~6の範囲内であった。
A:水
B:ベンジルアルコール
C:固形パラフィン(融点60℃)
D1:トリメチルベンゼン
D2:メチルフェニルエーテル
E:ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
F:グリセリン
溶剤:ノナン
流動パラフィン
増粘剤:セルロース系増粘剤
【0035】
(試験1)非引火性
得られた剥離剤組成物1kgを、金属容器(5リットル)に投入し、上から蓋をして密封し、1時間静置させた。
静置後、蓋を開けて、点火棒を用いて、剥離剤組成物表面付近にて点火させ、剥離剤組成物の状態を観察した。評価は次に示すとおりである。評価結果は、表1に示す。
4:点火しても、引火しなかった。
3:点火後、引火はみられたが、1秒以内に消火した。
2:点火後、引火はみられたが、5秒以内に消火した。
1:点火後、引火がみられ、5秒以上発火していた。
【0036】
(試験2)剥離性
下記に示す塗膜面が垂直となるように設置し、表1に示す剥離用組成物を下記に示す所要量でローラー塗りし、下記の試験を実施した。
塗膜面:スレート板(300×150×6mm)の片面に、アクリルシリコン樹脂、酸化チタンを主成分とするアクリルシリコン樹脂塗料を吹付け、塗膜厚0.3mmの塗膜を形成させ、これを促進耐候性試験機「アイスーパーUVテスター」(岩崎電気株式会社製)にて400時間曝露させたものを塗膜面とした。剥離用組成物所要量0.5kg/m2。
塗付後24時間後、ヘラを用いて塗膜剥離を行い、その度合いを、「5」(問題無くスムーズに剥離でき、優れた塗膜軟化性を示した。)から「1」(剥離が困難であり、塗膜軟化性に劣っていた。)の5段階で評価した。結果は表1に示す。
【0037】
(試験3)非引火性の持続性
試験2で剥離した塗膜1kgを、金属容器(5リットル)に投入し、点火棒を用いて、塗膜表面付近にて点火させ、塗膜の状態を観察した。評価は次に示すとおりである。評価結果は、表1に示す。
4:点火しても、引火しなかった。
3:点火後、引火はみられたが、1秒以内に消火した。
2:点火後、引火はみられたが、5秒以内に消火した。
1:点火後、引火がみられ、5秒以上発火していた。
【0038】