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特開2022-60199既定の液流経路を有する密着形状デファレンシャルギアワッシャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060199
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】既定の液流経路を有する密着形状デファレンシャルギアワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/08 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
F16H48/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205133
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2019563870の分割
【原出願日】2017-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ケヴィン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴール,デイヴィッド・イー
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA22
3J027FB01
3J027GA02
3J027GB10
3J027GC11
3J027GC22
3J027HA01
3J027HA03
3J027HB07
3J027HC02
3J027HC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両デファレンシャルのギアとともに用いることができるワッシャの提供。
【解決手段】デファレンシャルハウジング内のギア用のワッシャ30は、軸から最大径方向距離にある外縁44と、開口を形成する内縁48であって、内縁は軸から最小径方向距離にある最内部分62によって部分的に形成され、内縁は、最内部分から径方向外方に離間する外向部分66とを含む。ワッシャは、外縁と最内部分との間の少なくとも一部で延びる軸方向かつ径方向に傾斜する側壁42も含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁を有するハウジングと、
前記ハウジング内に取り付けられるピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトに取り付けられるピニオンギアと、
前記ハウジング内にあり、前記ピニオンギアと係合する第1のサイドギアと、
前記ハウジング内にあり、前記ピニオンギアと係合する第2のサイドギアと、
前記内壁と前記ピニオンギアとの間に入れられるピニオンギアワッシャであって、前記ワッシャは、前記ワッシャの軸から最大径方向距離にある外縁と、前記ピニオンシャフトを通して入れる開口を形成する内縁であって、前記内縁は前記軸から最小径方向距離にある最内部分によって部分的に形成され、前記内縁は、前記最内部分から径方向外方に離間する外向部分を有する、内縁と、前記外縁と前記最内部分との間の少なくとも一部で延びる軸方向かつ径方向に傾斜する側壁とを有する、ピニオンギアワッシャと
を備え、
前記ピニオンギアは、前記ピニオンシャフトを通して入れる中央開口につながる斜面部分を含み、前記ワッシャは、前記斜面部分に近接して受けられるリムをさらに備え、前記側壁は、前記外縁にある第1の端から、前記外縁から軸方向に離間する第2の側壁端まで延び、前記リムは前記第2の側壁端から前記内縁まで延び、前記リムは、前記内縁が軸方向について前記側壁の前記第1の端と第2の端との間にあるように軸方向に傾斜する、車両デファレンシャル。
【請求項2】
前記最内部分は1つ以上のセグメントを含み、各セグメントは、前記最内部分の一部を形成する内面を有する、請求項1に記載のデファレンシャル。
【請求項3】
前記外向部分は1つ以上の空所によって形成され、各空所は2つのセグメントの間に形成され、かつ少なくとも1つが前記ハウジングの内壁と相補的な形状をもつ前記ピニオンギアの外面の一部を覆う領域まで延在する、請求項2に記載のデファレンシャル。
【請求項4】
前記第1の端の周囲長さは前記第2の端の周囲長さよりも長い、請求項1~3のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項5】
前記側壁の一部と前記ピニオンギアの外面との間に隙間が存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項6】
前記1つ以上の空所は、前記最内部分によって囲まれる円の周の10%~90%を備えるか、または、前記最内部分は、前記最内部分によって囲まれる円の周の10%~90%を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項7】
前記リムは、周方向に離間して径方向内方に延びるタブの少なくとも一つによって形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項8】
前記タブの少なくとも1つは軸方向に曲げられ、前記少なくとも1つのタブの自由端は軸方向について前記側壁の前記第1の端と第2の端との間にある、請求項7に記載のデファレンシャル。
【請求項9】
前記ピニオンギアは第1のピニオンギアであり、前記ピニオンギアワッシャは第1のピニオンギアワッシャであり、前記デファレンシャルは、前記ピニオンシャフトに取り付けられて前記第1のサイドギアと前記第2のサイドギアとの両方と係合する第2のピニオンギアと、前記ハウジングと前記第2のピニオンギアとの間に設けられ、前記第1のピニオンギアワッシャと同様に構成される第2のピニオンギアワッシャとをさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項10】
前記側壁は第1の端および第2の端を有し、前記第1の端は前記ワッシャの軸に対する第1の周囲長さを持ち、前記第2の端は前記第1の端から軸方向にオフセットし、前記第1の周囲長さよりも短い、前記軸に対する第2の周囲長さを持ち、前記開口は円形ではなく、前記ワッシャは、前記側壁の少なくとも一部が前記ピニオンギアの外面の少なくとも一部に重なる状態で前記ハウジングと前記ピニオンギアとの間に入れられ、前記側壁と前記外面との間の液流を可能にするように前記側壁と前記外面との間に隙間が設けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【請求項11】
前記リムを形成するタブ以外の前記タブの少なくとも1つは、前記側壁42から連続するように径方向内方に延びたタブである、請求項7、8および請求項7を引用する請求項9および10のいずれか一項に記載のデファレンシャル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、車両デファレンシャルのギアとともに用いることができるようなワッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両はエンジンから1つ以上の車輪までトルクを伝動するドライブラインを含む。通常、自動車ドライブラインには、前車軸のサイドシャフト間、後車軸のサイドシャフト間、または両方の車軸の間でデファレンシャルが設けられている。一般的に各車軸は左サイドシャフトおよび右サイドシャフトを含む。オープンデファレンシャルは、特に、一方のサイドシャフトの車輪を他方のサイドシャフトの車輪よりも速く回転させたり遅く回転させたりすることができる。これは、たとえば、自動車が角を曲がっているときに行われる。デファレンシャルはサイドシャフト間で駆動トルクの分配も行う。全輪駆動(AWD)自動車ドライブラインにその前後車軸間でデファレンシャルを設けて、前後車軸間で同様の機能を発揮させることもできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
少なくともいくつかの実現例では、デファレンシャルハウジング内のギア用のワッシャは、軸から最大径方向距離にある外縁と、開口を形成する内縁であって、内縁は軸から最小径方向距離にある最内部分によって部分的に形成され、内縁は、最内部分から径方向外方に離間する外向部分を有する、内縁とを含む。ワッシャは、外縁と最内部分との間の少なくとも一部で延びる軸方向かつ径方向に傾斜する側壁も含む。
【0004】
少なくともいくつかの実現例では、最内部分は複数のセグメントを含んでもよく、各セグメントは、最内部分の一部を形成する内面を含んでもよい。セグメントの内面は軸から共通の径方向距離にあってもよい。最内部分は、最内部分によって囲まれる円の周の10%~90%を備えてもよい。外向部分は複数の空所によって形成されてもよく、各空所は2つのセグメントの間に形成されてもよい。外向部分は、最内部分から径方向外方に少なくとも0.5mm離間する面を含んでもよい。空所は、最内部分によって囲まれる円の周の10%~90%を備えてもよい。また、各空所は、最内部分によって囲まれる仮想円の周方向寸法で少なくとも1mmであってもよい。
【0005】
少なくともいくつかの実現例では、ワッシャはリムをさらに含んでもよく、側壁は、外縁にある第1の端から、外縁から軸方向に離間する第2の端まで延びてもよく、リムは第2の側壁端から内縁まで延びてもよい。また、リムは、内縁が軸方向について側壁の第1の端と第2の端との間にあるように軸方向に傾斜してもよい。側壁は、第1の端の周囲長さが第2の端の周囲長さよりも長いような密着形状を持ってもよい。
【0006】
デファレンシャルハウジング内のギア用のワッシャの少なくともいくつかの実現例は、第1の端および第2の端を有する密着形状を持つ側壁を含んでもよい。第1の端はワッシャの軸に対する第1の周囲長さを持ち、第2の端は第1の端から軸方向にオフセットし、第1の周方向長さよりも短い、軸に対する第2の周方向長さを持つ。内縁は、円形でない開口を形成し、内縁は軸から最小径方向距離にある最内部分によって部分的に形成され、内縁は、最内部分から径方向外方に離間する外向部分を有する。最内部分は側壁の径方向内方に位置しかつ軸方向について側壁の第1の端と第2の端との間に位置してもよい。
【0007】
好ましい実現例およびベストモードの以下の詳細な説明が添付の図面に関して示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動車デファレンシャルの実施形態の断面図である。
図2図1のデファレンシャルのピン、ピニオンギアおよびワッシャの断面図である。
図3】ワッシャの斜視図である。
図4】ワッシャの平面図である。
図5図4の線5-5に沿って切断した部分断面図である。
図6図4の線6-6に沿って切断した部分断面図である。
図7】ワッシャの底面図である。
図8】ワッシャの底面図である。
図9】ワッシャの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面をさらに詳細に参照して、前車軸のサイドシャフト間、後車軸のサイドシャフト間、または前後車軸間でデファレンシャル機能を発揮させるために自動車ドライブラインに自動車デファレンシャル10を設けることができる。スペーサを設けて、デファレンシャルギアの歯間でギア噛合ポイントを最適化するために、デファレンシャル内でピニオンギア軸およびサイドギア軸に沿ってギアを移動させて目標ギア位置にギアをシフトさせてもよい。したがって、製造許容誤差およびその他の欠陥に対する対処がなされ、また、自動車デファレンシャル10の高速回転時(たとえば、関与する車軸が有効に作動するようには駆動されない切断モード時)で別途生じる騒音、振動およびハーシュネス(NVH)問題が最小以下にされる。
【0010】
一般的に、自動車デファレンシャル10は、影響する可能性があるもののうち、特に、大型AWD自動車ドライブラインの構成、上流および下流ドライブライン構成要素、パッケージング要求およびトルク出力要求に応じて様々な設計および構成を持つことができ、たとえば、自動車デファレンシャルデバイスは2つ以上のピニオンギアを有することができ、3つまたは4つ以上のピニオンギアを有することができる。図に示されている実施形態では、自動車デファレンシャル10はオープンデファレンシャルであり、ハウジング12、第1のピニオンギア14、第2のピニオンギア16、第1のサイドギア18および第2のサイドギア20を含む。ただし、より多数の構成要素、より少数の構成要素および/または異なる構成要素を異なる実施形態に含ませることができる。ハウジング12はその外部にリングギアなどの入力ギアを有することができ、この入力ギアには前車軸レイアウトのトランスミッションの出力ギア、または自動車ドライブラインのプロペラシャフトの出力ギアなどの上流出力ギアが係合する。駆動時、ハウジング12は軸Aまわりに回転する。ハウジング12はその壁に窓を有することができ、これにより、ギア14,16,18,20の部分が露出し、ハウジング12の内部22にギアを組みつけて設置するための入口が設けられる。ハウジング12の内部22には、内部22にピニオンギア14,16を収容し、サイドギア18,20を収容するのに適する内部空間が形成されている。
【0011】
第1および第2のピニオンギア14,16と第1および第2のサイドギア18,20とは互いに作用しあって自動車デファレンシャルの機能を発揮する。ギア14,16,18,20の各々は、その外部の周囲に形成された歯を有する。本実施形態では、自動車デファレンシャル10の組み立ておよび使用時に、第1のピニオンギア14の歯が第1および第2のサイドギア18,20の歯と噛合し、同様に、第2のピニオンギア16の歯が第1および第2のサイドギア18,20の歯と噛合する。第1および第2のピニオンギア14,16は、中心軸21を有し、デファレンシャルハウジングの両側にある開口23に取り付けられるピニオンシャフト24に取り付けられる。第1のサイドギア18は第1のサイドシャフトに接続するための1組の内側スプライン25を有し、第1のサイドシャフトの端がハウジング12の開口27に入れられる。第2のサイドギア20は第2のサイドシャフトに接続するための1組の内側スプライン29を有し、第2のサイドシャフトの端がハウジングのほぼ対向する開口31に入れられる。
【0012】
図1に示されているように、ハウジング12の第1の内壁33と第1のピニオンギア14との間に第1のピニオンギアワッシャ30が配置されており、ハウジング12の第2の内壁35と第2のピニオンギア16との間に第2のピニオンギアワッシャ32が配置されている。第1および第2のピニオンギアワッシャ30,32は球面ディスクワッシャなどの密着形状を持つ平面でないワッシャであることが可能である。他方で、ハウジング12の第3の内壁37と第1のサイドギア18との間に第1のサイドギアワッシャ26が配置されており、ハウジング12の第4の内壁39と第2のサイドギア20との間に第2のサイドギアワッシャ28が配置されている。第1および第2のサイドギアワッシャ26,28は、スラストワッシャのように平坦かつ平板状であることが可能であったり、ベルビルワッシャや球面ディスクワッシャなどの別のタイプのワッシャであることが可能であったりする。
【0013】
ワッシャ26,28,30,32の少なくとも1つは密着形状を持ってもよい。言い換えれば、平坦でも平板状でもない部分を有する。以下の説明ではワッシャ30および対応するギア14に言及するが、他のワッシャ26,28,32およびそれらに対応するギアに適用することができる。図2図6に示されているように、ワッシャ30は、中心軸40を持つ本体と、中心軸に対して対称であることが可能な本体の部分(すなわち側壁)42とを含んでもよい。この本体の部分は、略円錐台形状を持つように軸方向および径方向に傾斜してもよい。以下、用語「軸方向(axial)」は中心軸40に平行な方向を示すのに用いられ、用語「径方向(radial)」は中心軸40に直交する方向を示すのに用いられ、用語「周方向(circumferential)」は軸まわりに延びる方向または周囲線を示すのに用いられる。側壁42は、ワッシャ30の外縁すなわち周囲を形成するといえる第1の端44から、ワッシャの内縁48につながる第2の端46まで延びてもよい。側壁42の直径は、第1の端44から第2の端46に向かって側壁の軸方向長さに沿って減少する。側壁42は線形的なテーパー形状を持ってもよいし、非線形であってもよい。非線形の側壁42の一例が図2図6に示されており、同図では、側壁はその軸方向長さに沿って垂れ下がっている。言い換えれば、若干カーブしたり、球の一部を形成したりする。少なくともいくつかの実現例では、側壁42は均一な径方向厚さを持つものであってもよく、また、側壁は連続的、すなわち、一切の空所や断絶部を有さなくてもよく、また、略平滑であってもよい(すなわち、所定の軸方向高さで一定の直径を持つもの)が、逆に波状であってもよい(側壁の周方向範囲に沿って径方向に変化する)。波状、すなわち、所定の軸方向高さで一定の直径を持たないものであったとしても、側壁42については、所定の軸方向高さで側壁の平均径方向距離に直径が定められると考えることができる。これに加えてまたはこの代わりに、側壁42は、第1の端44から側壁の第2の端46に向かって側壁の軸方向高さに沿って減少するようにほぼなっている周囲長さを持ってもよい。
【0014】
少なくともいくつかの実現例では、側壁42は、ワッシャの外縁44から、外縁よりもワッシャ30の内縁48の近くに位置する(径方向かつ軸方向に近い)側壁の第2の端46まで延びる。側壁42の第1および第2の端44,46は、ワッシャ30の軸方向に最も離れた対向する縁を形成するといえ、この場合のワッシャの最大軸方向長さは側壁の第1の端と第2の端との間に存在する。第2の側壁端46から延ばして、ワッシャ30は、外縁44に向かって軸方向に傾斜して、第2の側壁端46からワッシャの内縁48まで径方向内方に延びるリム50を含んでもよい。したがって、少なくともこのような実現例では、内縁48から外縁44までの軸方向長さは、外縁44から第2の側壁端46までの軸方向長さよりも短い。第2の側壁端46と内方に曲げられたリム50との間の移行部は、鋭角の曲がり部や、任意の所望の寸法を持ち、滑らかさを実現する径を持つ部分であってもよい。
【0015】
図2に示されているように、ピニオンシャフト24を入れるギア14の中央開口54につながる、ギア(たとえばピニオンギア14)の内方に面取りされた部分すなわち傾斜部分52内で受けたり傾斜部分52に近接して受けたりするようにリム50を設計してもよい。同様に、傾斜部分52の外側に位置するギアの傾斜外面56に近接してこれを受けるように側壁42を設計してもよい。外面56と傾斜部分52との間にあるギア14の移行縁すなわち領域58を覆うようにワッシャ側壁42とリム50との間の移行部を配置してもよい。ワッシャ側壁42とギアの外面56とが互いに補い合って機能してもよいし、側壁42の少なくとも一部とギア外面56との間に隙間を設けるように別の形状に成形してもよい。ワッシャ側壁42とギア外面56との間の隙間によりギア14および/またはハウジング12に対するワッシャ30の若干の撓みを許容したり撓み易くしたりしてもよく、これにより、ハウジングに対するギアの若干の動きを許容してもよい。これにより、ギア14をハウジング12から離し、ギア14と噛合する他のギアに向かって付勢する可撓付勢力をギア14に与えてもよい。さらに、隙間を用いてワッシャ30とギア外面56との間に潤滑流が流れ易いようにすることで、システムの総合耐久性を向上させてもよい。
【0016】
ピニオンシャフト24がワッシャ30を通って延びることができるようにするために、内縁48によって開口60が形成されている。内縁48によってワッシャの径方向の最内部分62が形成されるといえる。最内部分62を内縁の、1つ以上のセグメントによって形成してもよい。当該セグメントは周方向に離間してもよい。軸40に径方向に最も近い内縁48の、1つ以上の部分によってワッシャ30の最内部分62を形成してもよく、シャフトおよびギアに対してワッシャの位置を保つように最内部分62がシャフト24の外面と当接してもよい。少なくともいくつかの実現例では、ワッシャ30の最内部分62は周方向に連続しない。さらに言えば、周方向かつ径方向に延びる1つ以上の隙間すなわち空所64が存在し、これが、開口60の一部と、最内部分62から径方向外方に離間する内縁48とを形成する。各空所64は最内部分から径方向外方に離間する面を有し、内縁48の外向部分66を形成する。内縁48の外向部分66は接続面によって内縁の最内部分62につながっている。したがって、空所64により、内縁48は一定の半径上にはなく、さらに言えば、径方向に変化し、円形ではない。これに加えて、最内部分62を、径方向に向くセグメントではなく直線セグメントによって形成してもよい。
【0017】
1つ以上の空所64により、ワッシャ30とシャフト24の外面との間に既定の液流経路が設けられる。この液流経路により、たとえば、内部空間22内の潤滑液がシャフト24とワッシャ30との間を流れることが可能になり、この潤滑液はワッシャ30とハウジング12との間と、ワッシャ30とギア14との間とを流れることができる。この潤滑液流によってギア14の良好な潤滑状態を保つことができ、ハウジング12、ワッシャ30およびギア14の密接する滑り面間の潤滑を向上させることができる。これにより、全体としてデファレンシャルアセンブリ10の有効寿命を延ばし、上記の構成要素の各々の有効寿命を延ばすことができる。連続して一切の空所を有さない内縁を有するワッシャを用いる場合、ワッシャとシャフト24の外面との間に(あるとしても)微小なクリアランスがあってもこのように潤滑液が流れることはできず、デファレンシャル内の潤滑は劣悪であり、特に、使用中にともに密接してはさまれるワッシャ、ハウジングおよびギアなどの密接する構成要素が含まれる領域で劣悪である。
【0018】
図4図6に示されている実施形態では、ワッシャ30は、側壁42から径方向内方に延びるセグメントすなわちタブによって部分的に形成されたり全体的に形成されたりするリム50を含む。この例では、周方向に離間した6つのタブ68,70があり、図5に示されているように、一つおき(周方向回り)にタブがピニオンギア14に向かって軸方向に曲げられていることで、これらのタブ68の自由端70が側壁42と軸方向に重なる(ただし径方向内方に離間する)。各タブ68はギア14の傾斜部分52を覆うように配置される。この例では、他のタブ70は図6に示されているように軸方向に曲がっておらず、さらに言えば、側壁と同じ全体で共通の角度または形状で側壁42から続いている。各タブ70は、曲がったタブ68よりも径方向内方に遠くまで延びるといえ、これらのタブ70の内面72(図6)がワッシャ30の最内部分62を形成し、これらのタブの内面72間でシャフト24を受けるのに十分な寸法の直径を持つ仮想円を囲むといえる。当然、他の構成を用いてもよい。たとえば、限定せずに言えば、タブ68のいずれも曲がっている必要はなく、タブ68,70のすべてを曲げてもよく、より少数であったりより多数であったりするタブを曲げてもよく、曲がったタブと曲がっていないタブとを交互に配置したり均等に離間させる必要はなく、曲がったタブ68の内面74(図5)が曲がっていないタブ70の内面72と同じ径方向距離にあることが可能であり、タブ68,70が同じ径方向および/または周方向寸法のタブであったり異なる径方向および/または周方向寸法のタブであったりしてもよい。
【0019】
ワッシャ30の最内部分62とワッシャの内縁48の1つ以上の他の部分66との間に空所64が存在する。すなわち、当該他の部分66の内縁部分は、ワッシャ30の最内部分62を形成するワッシャの部分の内縁(この例では、曲がっていないタブ70の内縁72)から径方向外方に離間する。タブ68,70がリム50の全体または一部を形成してもよい。少なくともいくつかの実現例では、外向部分66の領域内にある内縁48は、側壁42の第2の端46によって形成されるといえ、そこから延びるタブ68,70はリム50を形成するといえ、その少なくとも一部は側壁42に対して傾斜する。
【0020】
図7に示されているワッシャ80では、3つのタブ82が径方向内方に延びていることで、各タブ82の内縁84によってワッシャ80の最内部分が形成され、タブ82は組み立て時にシャフト24のごく近傍に収められたり当接状態で収められたりする。これらのタブ82はすべて、その自由端すなわち内縁84が軸方向に側壁42に重なる(ただし、側壁42から径方向内方に離間する)ように内方に曲がっているように示されている。説明の通り、タブ82は、軸方向に軸にほぼ平行に向き、側壁42の外縁44に向かって延びるように曲がっている端部86を有する。当然、示されているもの以外の構成が可能である。タブ82間に空所88が存在し、空所88によってワッシャ80の内縁の、1つ以上の外向部分が形成される。すなわち、当該他の部分88の内縁89は、ワッシャの最内部分を形成するワッシャ80の部分の内縁(この例では、タブ82の内縁84)から径方向外方に離間する。
【0021】
図4図6に示されている特定の実施形態は、複数の内面を有するタブ68,70を含み、各内面は内面によって囲まれる仮想円の周の10%未満である。空所64は、仮想円上で周方向寸法に関して同様である(たとえば20%以下)ように示されている。しかし、上記に説明されているように、タブ68,70および空所64は他の寸法および形状を持つことができる。図7では、タブ内縁84は図4に示されているものと類似するが、図4に示されているワッシャの6つのタブ68,70と比較して、図7の例では3つのタブ82しかないので、空所88は周方向についてはるかに大きい。この例では、空所88は円の周の約25%をそれぞれ形成し、周全体の約75%を形成する。
【0022】
たとえば、図8に示されているワッシャ90は、軸方向に曲がっていて内方に延びる4つのタブ92と、タブの間に位置する4つの空所94(1つの空所がタブの隣り合う端の各々の間にある)とを含む。これらの空所94およびタブ92は異なる寸法および形状を持つ。この例では、各タブ92の内面96については仮想円の周方向長さの約15%~20%であり、各空所94については仮想円の周方向長さの約5%~10%である。ワッシャは、必要に応じて同じ形状であったり異なる形状であったりするタブおよび空所を含むことができ、寸法および形状の異なり度合いが、図8に示されているものよりも大きくてもよいし小さくてもよい。
【0023】
若干似ているが、図9に示されているワッシャ100は2つのタブ102および2つの空所104のみを有する。本実施形態のタブ102は空所104よりも(周方向内面長さすなわち周囲内面長さに関して)はるかに大きい。各タブ102の内面106は仮想円の周方向長さの約45%であるようにそれぞれ示されており、空所については仮想円の周方向長さの約5%である。
【0024】
上記の例は限定を課すものではない。ワッシャは、少なくとも1つのタブの内面によって形成される最内部分を有してもよく、最内部分は内面によって定まる仮想円の周の10%~90%にわたる。したがって、当該仮想円の10%~90%は開放部であり、1つ以上の空所によって形成される。少なくともいくつかの実現例では、各空所の仮想円上での周方向寸法は少なくとも1mmであり、各空所の径方向寸法は少なくとも0.5mmであってもよい。さらに、空所(またはその縁/面)が厳密に径方向に向いておらず、様々な形状を持ってもよく(そのいくつかが図4図9に示されている)、また、空所の周方向範囲が仮想円から径方向外方に離間している箇所でより大きかったりより小さかったりしてもよい点に留意する。特に、与えられたデファレンシャルに望ましい液流能力を実現するように空所の形状、面積および/または径方向範囲を選択してもよい。
【0025】
上記の説明が一例であり、制限を課すものではないことを意図していると解するべきである。上記の説明を理解すれば、設けられた例以外の多数の実施形態および用途は当業者には明らかである。本発明の範囲は、上記の説明を参照するのではなく、添付の請求項を参照し、あわせて、当該請求項の権利が及ぶ均等物の全範囲を参照して当然決められる。本明細書で説明されている技術で今後開発が行われ、開示されているアセンブリおよび方法がこのような今後登場する実施形態に組み込まれることを期待し意図している。まとめると、本発明は以下の請求項によってしか限定されない修正および変更が可能であると当然解する。
【0026】
請求項で用いられているすべての用語には、本明細書で逆の記載が明記されていない限り、当業者によって理解される用語の最も広い合理的な解釈および用語の通常の意味が与えられることを意図している。特に、「a」、「the」、「said」などの単数冠詞の使用は、明確な逆の限定が請求項に示されていない限り、説明されている要素の1つ以上を示すように当然解釈される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
【外国語明細書】