IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナイキ イノベイト シーブイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060216
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ニット構成要素を組み込んだ履物製品
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20220407BHJP
   A43B 1/025 20220101ALI20220407BHJP
   A43B 1/028 20220101ALI20220407BHJP
   A43B 1/04 20220101ALI20220407BHJP
【FI】
A43B23/02 101A
A43B1/025
A43B1/028
A43B1/04
A43B23/02 104
A43B23/02 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000878
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2020127836の分割
【原出願日】2013-11-22
(31)【優先権主張番号】13/691,316
(32)【優先日】2012-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ポッドハイニー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェイファー,ベンジャミン,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】トラヤ,エリン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス,ロバート,シー.ジュニア
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050HA18
4F050HA20
4F050HA30
4F050HA59
(57)【要約】
【課題】履物のアッパーのニット構成要素に特定の特性を付与する。
【解決手段】履物製品のアッパーは、単独で、または組み合わせて、異なる程度の伸張抵抗性を有する領域を含むニット構成要素130を備えている。ニット構成要素130は、ハーフゲージニットによってカラーを形成する。アッパーは、ニット構成要素130内に埋め込まれている部分を備えたストランド140を含む。互いに近接して配置されたストランド140は複数のループ141を形成し、締めひもを収容するように構成される。ニット構成要素130は、熱可塑性高分子材料を含み、前記ストランド140は、熱可塑性高分子材料に結合されていない。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物製品を形成するようソール構造に固定するアッパーであって、
当該アッパーは、一体的なニット構造で形成される平らなニット構成要素を含み、該平らなニット構成要素は、
第1の領域と、
第2の領域と、
第3の領域とを含み、
前記第1の領域は、当該アッパーのカラーを形成し、前記第1の領域の少なくとも前記カラーは、第1の伸張抵抗性を有し、前記カラーは、足を受け入れる当該アッパー内の空洞への開口を画定し、
前記第2の領域は、前記第1の領域から外向きに延び、当該アッパーのスロート領域内に少なくとも部分的に配置され、前記第2の領域は、第2の伸張抵抗性を有し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の周囲に少なくとも部分的に延在する当該アッパーの周辺領域を確定し、第3の伸張抵抗性を有し、前記第2の領域の周囲に少なくとも部分的に延在することは、前記スロート領域の周囲に少なくとも部分的に延在することを含み、
前記第1の伸張抵抗性は、前記第2の伸張抵抗性よりも少なく、前記第2の伸張抵抗性は、前記第3の伸張抵抗性よりも少なく、
前記平らなニット構成要素は、前記平らなニット構成要素の縁部を接合する単一の縫い目で構成され、該縫い目は、当該アッパーのかかと領域内に少なくとも部分的に延在する、
アッパー。
【請求項2】
前記第1の領域は、ハーフゲージニットとして形成される、請求項1に記載のアッパー。
【請求項3】
前記第2の領域及び前記第3の領域は、フルゲージニットとして形成される、請求項2に記載のアッパー。
【請求項4】
インレイストランドが、前記第3の領域を通じて延在する、請求項1に記載のアッパー。
【請求項5】
前記インレイストランドは、締めひもを受け入れるように構成されるレースループを形成し、任意的に、前記レースループのペアが互いに重なり合う、請求項4に記載のアッパー。
【請求項6】
前記単一の縫い目は、当該アッパーの内側側部及び外側側部の少なくとも一方に向かって前記かかと領域の中心線からオフセットされる、請求項1に記載のアッパー。
【請求項7】
履物製品を形成するようソール構造に固定するアッパーであって、
当該アッパーは、足を受け入れる当該アッパー内の空洞への開口を画定するカラーを形成する平らなニット構成要素を含み、前記カラーは、ハーフゲージニットとして形成され、前記平らなニット構成要素の他の領域は、フルゲージニットとして形成され、前記平らなニット構成要素は、前記平らなニット構成要素の縁部を接合する単一の縫い目で構成され、該縫い目は、当該アッパーのかかと領域内に少なくとも部分的に延在する、
アッパー。
【請求項8】
前記カラーは、リブ編み構造を有する、請求項7に記載のアッパー。
【請求項9】
前記カラーは、前記平らなニット構成要素の他の領域よりも少ない伸張抵抗性を有する、請求項7に記載のアッパー。
【請求項10】
前記平らなニット構成要素は、(a)前記カラーから外向きに延びる中央領域と、(b)該中央領域の周囲に少なくとも部分的に延在する周辺領域とを有し、前記カラー、前記中央領域、及び前記周辺領域は、一体的なニット構造で形成され、前記カラーは、前記中央領域及び前記周辺領域よりも少ない伸張抵抗性を有する、請求項7に記載のアッパー。
【請求項11】
前記中央領域は、前記周辺領域よりも少ない伸張抵抗性を有する、請求項10に記載のアッパー。
【請求項12】
前記中央領域及び前記周辺領域は、フルゲージニットとして形成される、請求項10に記載のアッパー。
【請求項13】
前記周辺領域内のヤーンが、熱可塑性高分子材料を含む、請求項10に記載のアッパー。
【請求項14】
前記熱可塑性高分子材料は、前記カラー及び前記中央領域に実質的に存在しない、請求項13に記載のアッパー。
【請求項15】
前記単一の縫い目は、当該アッパーの内側側部及び外側側部の少なくとも一方に向かって前記かかと領域の中心線からオフセットされる、請求項7に記載のアッパー。
【請求項16】
履物製品を形成するようソール構造に固定するアッパーであって、
当該アッパーは、一体的なニット構成要素で形成される平らなニット構成要素を含み、該平らなニット構成要素は、
第1の領域と、
第2の領域と、
第3の領域とを含み、
前記第1の領域は、当該アッパーのカラーを形成し、前記第1の領域の少なくとも前記カラーは、第1の伸張抵抗性を有し、前記カラーは、足を受け入れる当該アッパー内の空洞への開口を画定し、
前記第2の領域は、前記第1の領域から外向きに延び、第2の伸張抵抗性を有し、
前記第3の領域は、前記第2の領域の周囲に少なくとも部分的に延在し、第3の伸張抵抗性を有し、
前記第1の伸張抵抗性は、前記第2の伸張抵抗性よりも少なく、前記第2の伸張抵抗性は、前記第3の伸張抵抗性よりも少なく、
前記第3の領域は、熱可塑性高分子材料を含み、前記平らなニット構成要素は、前記平らなニット構成要素の縁部を接合する単一の縫い目で構成され、該縫い目は、当該アッパーのかかと領域内に少なくとも部分的に延在する、
アッパー。
【請求項17】
前記熱可塑性高分子材料は、前記第1の領域及び前記第2の領域に実質的に存在しない、請求項16に記載のアッパー。
【請求項18】
前記熱可塑性高分子材料は、少なくとも1つの融合領域を画定するよう、前記平らなニット構成要素内のヤーンを結合する、請求項16に記載のアッパー。
【請求項19】
ストランドが、前記平らなニット構成要素の単一の層を画定する前記平らなニット構成要素の対抗する実質的に平行な表面の間で前記平らなニット構成要素内に配置され、前記ストランドは、前記融合領域を通じて少なくとも部分的に延び、前記熱可塑性高分子材料に結合されていない、請求項18に記載のアッパー。
【請求項20】
前記ストランドは、前記平らなニット構成要素内に配置される第1の区画と、前記平らなニット構成要素の外部に配置され、ループを形成する、第2の区画と、前記平らなニット構成要素内に配置される第3の区画とを含み、前記第1の区画及び前記第3の区画は、前記平らなニット構成要素の前記単一の層を画定する前記平らなニット構成要素の前記対抗する実質的に平行な表面の間で互いに近接近して位置付けられる、請求項19に記載のアッパー。
【請求項21】
前記ストランドの部分が、前記平らなニット構成要素の外部に配置され、複数のループを形成し、該ループのペアが、互いに近接近して位置付けられ、レースが、前記ループのペアを通じて延びる、請求項19に記載のアッパー。
【請求項22】
当該アッパーは、トンネルを更に含み、各ループから下向きに延びる前記ストランドの前記区画は、前記トンネル内に配置される、請求項20に記載のアッパー。
【請求項23】
前記レースループのペアが互いに重なり合う、請求項5に記載のアッパー。
【請求項24】
前記単一の縫い目は、当該アッパーの内側側部及び外側側部の少なくとも一方に向かって前記かかと領域の中心線からオフセットされる、請求項16に記載のアッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の履物製品は一般に、アッパーおよびソール構造という2つの主要な要素を含んでいる。アッパーは、ソール構造に固定されて、足を快適かつ安定して受け入れるために、履物の内部に空洞を形成する。ソール構造は、アッパーと地面との間に配置されるように、アッパーの下面に固定されている。例えば、いくつかの運動用の履物では、ソール構造は、ミッドソールとアウトソールとを含んでもよい。ミッドソールは、地面の反力を弱めて、歩くとき、走るとき、および他の歩行活動中に足および脚にかかる応力を低減するポリマー発泡材料によって形成してもよい。アウトソールは、ミッドソールの下面に固定されて、耐久性のある耐摩耗性材料で形成されるソール構造の地面係止部を構成している。また、ソール構造は、履物の快適性を高めるために、空洞内に配置され、足の下面に近接する中敷きも含んでもよい。
【0002】
アッパーは大略的に、足の甲およびつま先区域にわたり、足の内側側部および外側側部に沿って、足のかかと区域の周りに延びている。バスケットボール用履物およびブーツなどいくつかの履物製品では、アッパーは上方に、足首の周りに延びて、足首に支持または保護を与えてもよい。アッパーの内部の空洞へのアクセスは、一般に、履物のかかと区域にある足首開口部によって提供される。アッパーの履き心地を調整するために、しばしば締めひもシステムがアッパーに組み込まれ、それによりアッパー内の空洞に足を入れ、足を抜くことが可能になる。締めひもシステムにより、着用者がアッパーの特定の寸法、特に周長を調節して、さまざまな寸法の足を収容することもできる。くわえて、アッパーは、締めひもシステムの下に延びて、履物の調節可能性を高めるベロを含んでもよく、アッパーは、かかとの動きを制限するために、ヒールカウンタを組み込んでもよい。
【0003】
さまざまな材料が、従来、アッパーを製造する際に利用されている。例えば、運動用の履物のアッパーは、複数の材料要素によって形成してもよい。それらの材料要素は、例えば、伸張抵抗性、耐摩耗性、柔軟性、通気性、圧縮性および速乾性を含むさまざまな特性に基づいて選択することができる。アッパーの外側に関しては、つま先区域およびかかと区域は、比較的高い耐摩耗性を付与するために、革、合成皮革またはゴム材料によって形成してもよい。革、合成皮革およびゴム材料は、外側の他のさまざまな区域に対しては、所望の程度の柔軟性および通気性を呈していなくてもよい。したがって、外側の他の区域は、例えば、合成繊維によって形成してもよい。そのため、アッパーの外側は、それぞれ異なる特性をアッパーに付与する複数の材料要素によって形成してもよい。アッパーの中間または中心層は、クッション性をもたらし、および快適性を高める軽量ポリマー発泡材料によって形成してもよい。同様に、アッパーの内部は、足を直接囲んでいる区域から汗を取り除く快適で速乾性の繊維で形成してもよい。さまざまな材料要素および他の構成要素は、接着剤または縫製で接合してもよい。したがって、従来のアッパーは、それぞれ異なる特性を、履物のさまざまな区域に付与するさまざまな材料要素によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,990,755号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0246973号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0233882号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の、履物製品は、ニット構成要素を備えたアッパーを有している。いくつかの構成では、ニット構成要素は、異なる程度の伸張抵抗性を有する領域を含んでいる。ニット構成要素は、ハーフゲージニットによってカラーを形成している。アッパーは、ニット構成要素内に埋め込まれている部分を備えたストランドを含み、それらの埋め込まれた部分は、互いに近接して配置されている。ストランドは複数のループを形成し、ループから成るペアは、互いに近接して配置され、締めひもは、ループから成るペアを通って延びている。くわえて、ニット構成要素は、熱可塑性高分子材料を含み、ストランドは、熱可塑性高分子材料に結合されていない。
【0006】
本発明のさまざまな側面を特徴付ける新規性の利点および特徴は、添付の請求項で具体的に指摘されている。しかし、新規性の利点および特徴をより一層理解するために、本発明に関するさまざまな構成および概念を説明および図示した以下の説明事項および添付図面を参照することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】履物製品の第1の構成を示す側面立面図である。
図2】履物製品の第1の構成を示す内側立面図である。
図3】履物製品の第1の構成を示す平面図である。
図4A図3の切断線4Aによって画定される、履物製品の第1の構成の断面図である。
図4B図3の切断線4Bによって画定される、履物製品の第1の構成の断面図である。
図4C図3の切断線4Cによって画定される、履物製品の第1の構成の断面図である。
図5】履物製品の第1の構成のアッパーから見たニット構成要素の平面図である。
図6A】ニット構成要素のニット構造を示すループの図である。
図6B】ニット構成要素のニット構造を示すループの図である。
図6C】ニット構成要素のニット構造を示すループの図である。
図7】履物製品の第2の構造を示す外側立面図である。
図8】履物製品の第2の構造を示す内側立面図である。
図9】履物製品の第2の構造を示す平面図である。
図10A図9の切断線10Aから見た履物製品の第2の構成を示す断面図である。
図10B図9の切断線10Bから見た履物製品の第2の構成を示す断面図である。
図10C図9の切断線10Cから見た履物製品の第2の構成を示す断面図である。
図11】履物製品の第2の構成のアッパーにおけるニット構成要素を示す平面図である。
図12図11の切断線12から見た、図11に示すニット構成要素を示す断面図である。
図13図11に示すニット構成要素におけるニット構造を示すループの図である。
図14】履物製品の第2の構成のアッパーの一部を示す斜視図である。
図15】履物製品とともに用いることができる別のニット構成要素の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明および添付図面は、ニット構成要素を含むアッパーを有する履物製品を開示する。履物製品は、ウォーキングやランニングに適した全体的構造を有するものとして開示されている。アッパーを含む履物に関連する概念は、例えば、バスケットボールシューズ、野球靴、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、サッカーシューズ、短距離走用シューズ、テニスシューズおよびハイキングブーツを含むさまざまな種類の他の運動靴に適用してもよい。また、その概念を、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含む、一般的に非運動用と考えられている履物の種類に当てはめてもよい。したがって、本願明細書に開示した概念は、幅広い種類の履物に適用される。
【0009】
〈履物の全体構造〉
第一の実施例として、図1図4Cには、ソール構造110およびアッパー120を含む履物製品100が図示されている。ソール構造110は、履物製品の下部に配置されて、その履物を支持し、アッパー120は、足に対して快適性としっかりした覆いをもたらしている。このように、足を履物100内に効果的に固定するか、または足と履物100を一体化するように、アッパー120の空洞にその足を配置することができる。さらに、ソール構造110は、アッパー120の下側区域に固定されて、例えば、地面の反力を弱めて(すなわち、足の衝撃を和らげて)静止摩擦力を生成し、安定性を高め、および足の動きに影響を与えるように、足と地面の間に延びている。
【0010】
参照のために、履物100は、3つの大略的領域、すなわち、足先領域101と、中足領域102と、かかと領域103とに分けてもよい。足先領域101は、大略的に、つま先を含む足の前方部分に対応する履物100の部分と、中足骨と指骨を接続する関節とを含んでいる。中足領域102は、大略的に、アーチ区域を含む足の中間部分に対応する履物100の部分を含んでいる。かかと領域103は、大略的に、かかとと踵骨を含む足の後方部分に対応する履物100の部分を含んでいる。また、履物100は、外側側部104および内側側部105を含み、それらは、領域101~領域103の各々を通って延びており、履物100の両側に相当する。より具体的には、外側側部104は、足の外側区域(すなわち、他方の足から離れて対向する面)に相当し、内側側部105は、足の内側区域(すなわち、他方の足に向かって対向する面)に相当する。領域101~領域103と側部104,105は、履物100の厳密な区域を区別することを意図するものではない。むしろ、領域101~領域103と側部104,105は、以下の説明に役立つように、履物100の大略的区域を表すことが意図されている。履物100に加えて、領域101~領域103および側部104,105もまた、ソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素に適用してもよい。
【0011】
ソール構造110の主要要素は、ミッドソール111、アウトソール112および中敷き113である。ミッドソール111は、アッパー120の下面に固定されており、ウォーキング、ランニングまたは他の歩行活動中に、足と地面の間で圧縮されると、地面の反力を弱める(すなわち、クッション性をもたらす)圧縮性ポリマー発泡体要素(例えば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)によって形成してもよい。さらなる構成では、ミッドソール111は、さらに力を弱め、安定性を高め、足の動きに影響を与えるプレート、モデレータ、液体充填チャンバ、ラスティング要素またはモーションコントロール部材を組み込んでもよく、または、ミッドソール21は、主に液体充填チャンバによって形成してもよい。アウトソール112は、ミッドソール111の下面に固定され、静止摩擦力を付与するように織られた耐摩耗性のゴム材料によって形成してもよい。中敷き113は、履物100の快適性を高めるために、アッパー120の空洞に設けられて、足の下面の下に広がるように配置されている。
【0012】
別の実施例として、ソール構造110は、2006年1月31日に発行された、Hatfield等に対する特許文献1に開示されている構成を有してもよく、その明細書は、参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。ソール構造110の場合のこれらの構造は、アッパー120とともに用いることができるソール構造の実施例を提供しているが、ソール構造110のためのさまざまな他の従来の構造または従来にない構造を用いてもよい。したがって、ソール構造110、または、アッパー120とともに用いられる何らかのソール構造の形状構成は、大幅に変わってもよい。
【0013】
アッパー120は、領域101~領域103の各々を通り、外側側部104および内側側部105の両方に沿って、前足領域101を覆って、かかと領域103の周りに、およびソール構造110の上面を覆って延びている。足を収容するように形成されている空洞内に足が配置される場合、アッパー120は、足の外側側部に沿っておよび足の内側側部に沿って延び、足を覆って、かかとの周りに、および足の下に及んでいる。
【0014】
アッパー120は、外側面121と、反対側の内側面122とを含んでいる。外側面121は、履物100から離れる外側に面しているのに対して、内側面122は、内側に面して、アッパー120内の空洞の大部分または多くの部分を画成している。さらに、内側面121は、足または足を覆っているソックスに接触してもよい。また、アッパー120は、主にかかと領域103に設けられ、およびアッパー120の空洞への開口部を画成しているカラー123も含み、それによって、足が空洞にアクセスできるようにしている。すなわち、足をアッパー120内に挿入することができ、また、カラー123によって形成された開口部を介してアッパー120から引き抜くことができる。
【0015】
アッパー120の大部分はニット構成要素130から形成されており、以下、そのことをより詳細に説明する。ニット構成要素130は、外側面121、内側面122およびカラー123を含むアッパー120の実質的にすべてを形成しているように図示されているが、さまざまな追加的要素をアッパー120に組み込んでもよい。
【0016】
例えば、ストローベル式中敷き124が、ニット構成要素130に固定されて、図4A図4Cに図示されているように、足の下に広がっているアッパー120の部分の大部分を形成している。この構成では、中敷き113が、ストローベル式中敷き124を覆って広がり、足がその上に載る面を形成している。あるいは、ニット構成要素130は、足の下に広がって、それにより、ストローベル式中敷き124の一部またはすべてを置き換えてもよい。くわえて、縫い目125が、内側側部105のかかと領域103を通って延びて、ニット構成要素130の縁部を接合していてもよい。
【0017】
ニット構成要素130は、面121および面122の両方の部分を形成しているが、参照によって全体が本願明細書に組み込まれる、Duaに対する特許文献2に開示されているように、ポリマー層または表面層を、ニット構成要素130から成る区域に固着してもよい。
【0018】
さらなる構成では、アッパー120は、(a)足の周りでアッパー120を締め付けるのを補助する締めひも、(b)安定性を高めるためのかかと領域103内のヒールカウンタ、(c)耐摩耗性材料で形成されている足先領域101内のつま先ガード、および(d)ロゴ、商標、および注意書きや材料情報が記載された札のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0019】
したがって、アッパー120は、本願明細書で説明した、および図面に図示されている形状構成および要素に加えて、さまざまな他の形状構成および要素を組み込んでもよい。
【0020】
〈ニット構成要素の構造〉
ニット構成要素130は、横編み等の編みプロセスによって形成され、アッパー120全体に及んでいる。ニット構成要素130から成る区域には縫い目が存在していてもよいが、ニット構成要素130の大部分は、実質的に縫い目のない構造を有している。さらに、ニット構成要素130は、一体ニット構造で形成してもよい。ニット構成要素(例えば、ニット構成要素130)は、本願明細書において用いる場合、編みプロセスによってワンピース要素として形成された場合の「一体ニット構造」で形成されるものと定義される。すなわち、その編みプロセスは、かなりの追加的な製造工程または製造プロセスを要することなく、ニット構成要素130のさまざまな形状構成および構造を実質的に形成する。
【0021】
ニット構成要素130の部分は、編みプロセスに続いて、互いに接合してもよいが(例えば、ニット構成要素130の縁部が、縫い目125として一緒に接合される)、ニット構成要素130は、ワンピースニット要素として形成されているため、依然として一体ニット構造で形成されたままである。さらに、ニット構成要素130は、編みプロセスに続いて、他の要素(例えば、ストローベル式中敷き124、締めひも、ロゴ、商標、札)が付加された場合も、依然として一体ニット構造で形成されたままである。
【0022】
ニット構成要素130は、ニット要素として形成されており、縫製およびヤーンのさまざまな種類および組合せを組み込んでもよい。縫製に関しては、ニット構成要素130を形成するヤーンは、ニット構成要素130の1つの区域に一種類の縫製と、ニット構成要素130の別の区域に別の種類の縫製を有していてもよい。用いる縫製の種類および組合せにより、ニット構成要素130から成る区域は、例えば、無地のニット構造、メッシュニット構造またはあぜ編み構造を有してもよい。異なる種類の縫製は、美観、伸縮性、厚さ、通気性および耐摩耗性を含むニット構成要素130の物理特性に影響を及ぼすことがある。すなわち、異なる種類の縫製は、ニット構成要素130の異なる区域に異なる特性を付与することができる。ヤーンに関しては、ニット構成要素130は、ニット構成要素130の1つの区域に一種類のヤーンと、ニット構成要素130の別の区域に別の種類のヤーンを有していてもよい。さまざまなデザイン基準により、ニット構成要素130は、例えば、異なるデニール、材料(例えば、綿、エラステイン、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびナイロン)および撚りの程度を有するヤーンを組み込んでもよい。異なる種類のヤーンは、美観、伸縮性、厚さ、通気性および耐摩耗性を含むニット構成要素130の物理特性に影響を及ぼすことがある。すなわち、異なる種類のヤーンは、ニット構成要素130の異なる区域に異なる特性を付与することができる。さまざまな種類および組合せの縫製およびヤーンを組合せることにより、ニット構成要素130から成る各区域は、履物100の快適性、耐久性および性能を高める固有の特性を有することができる。
【0023】
ニット構成要素130は、図5においては、履物100と区別して、および平面または平坦な構造で図示されている。上述したように、ニット構成要素130の各区域は、編みプロセス中に用いられる縫製およびヤーンの種類および組合せによって、特定の特性を有することができる。ニット構成要素130から成る区域の特性は、大幅に変えてもよいが、ニット構成要素は、第1の、またはカラー領域131と、第2の、または中央領域132と、第3の、または周辺領域133とを含むように図示されており、それらの領域の各々は、異なる特性を有し、および一体ニット構造で形成されている。
【0024】
一般的に、例えば、カラー領域131は、中央領域132よりも大きな伸縮能力を有し、また、中央領域132は、周辺領域133よりも大きな伸縮能力を有している。すなわち、カラー領域131に作用する張力は、中央領域132に作用する同じ張力よりも大きな伸長または伸縮をニット構成要素130に引き起こすことになる。同様に、中央領域132に作用する張力は、周辺領域133に作用する同じ張力よりも大きな伸長または伸縮をニット構成要素130に引き起こすことになる。
【0025】
換言すると、カラー領域131は、中央領域132よりも小さい伸張抵抗性を有し、また、中央領域132は、周辺領域133よりも小さい伸張抵抗性を有している。領域131~領域133を区別して定義するために点線が用いられているが、点線は、ニット構成要素130から成るいくつかの構造では見られない、参照のためであってもよい。
【0026】
カラー領域131は、アッパー120におけるカラー123の部分に一致し、円形または管状の構造を形成している。履物100が着用された場合、カラー領域131は、着用者の足首の周りに及ぶか、または足首を取り囲んで、足首に接触することができる。上述したように、カラー領域131は、領域132および133の両方よりも大きな伸縮能力を呈している。比較的小さな伸張抵抗性(stretch-resistance)を付与することの利点は、足がアッパー120内に挿入され、また、カラー123によって形成された開口部を介してアッパー120から引き抜かれる際に、ニット構成要素130から成るこの区域が伸長または別の方法で伸縮するであろうということである。くわえて、カラー領域131は、履物100が着用された場合、依然として部分的に伸縮した状態のままであり、および足首に接触することができ、それにより、土や小石およびその他のごみがカラー123を介して履物100に入るのを防いでいる。
【0027】
さまざまな種類の縫製およびヤーンをカラー領域131に用いてもよい。実施例として、図6Aは、第1のヤーン134および第2のヤーン135から形成されているカラー領域131のためのニット構造を示すループの図を描いたものである。伸縮性をカラー領域131に付与するために、ループの図は、カラー領域131がハーフゲージニットとして形成されていることを示している。すなわち、ヤーン134および135によって形成されたループおよび引き上げ編みは、そのニット構造に隙間または畝を形成するために、他のすべての編み針で編まれ、それによって、拡張または伸縮を容易にしている。
【0028】
いくつかの構成では、カラー領域131をハーフゲージニットとして形成することが、ニット構成要素130にリブ編み構造を形成する。カラー領域131にさらなる伸縮性を付与するために、第1のヤーン134は、弾性糸、例えば、150デニールのポリエステル糸から成る両端で覆われた210デニールのエラステインであってもよい。くわえて、第2のヤーン135は、150デニールの生地用ポリエステル糸の両端であってもよい。
【0029】
中央領域132は、カラー領域131から外側へ、前足領域101に設けられているニット構成要素130の部分に向かって延びており、それにより、アッパー120のスロート区域に対応している。履物100が着用された場合、中央領域132は、足の上面を覆って広がり、足の上面に接触することができる。
【0030】
上述したように、中央領域132は、カラー領域131よりも大きな伸張抵抗性を呈しているが、周辺領域133よりは小さな伸張抵抗性を有している。中程度の伸張抵抗性を中央領域132に付与することの利点は、足がアッパー120内に挿入されたときに、ニット構成要素130から成るこの区域が膨張したり、または別の方法で伸縮して、周囲の長さや幅等のさまざまなプロポーションを有する足に適応するであろうということである。くわえて、中央領域132は、履物100が着用された場合、依然として部分的に伸縮した状態のままであり、および足の上面に接触することができ、それにより、ランニングまたはウォーキング中のしっかり固定したフィット感を確実にしている。
【0031】
さまざまな種類の縫製およびヤーンを中央領域132に用いることができる。実施例として、図6Bは、第1のヤーン134から形成されている中央領域132のためのニット構造を示すループの図を描いたものである。ループの図は、中央領域132がフルゲージニットとして形成されていることを示しているが、第1のヤーン134は、中程度の伸張抵抗性を中央領域132に付与する弾性糸であってもよい。上述したように、第1のヤーン134は、150デニールのポリエステルから成る両端で覆われた210デニールのエラステインであってもよい。
【0032】
周辺領域133は、ニット構成要素130の残りの部分を形成し、および中央領域132の周りに少なくとも部分的に及んでおり、それによって、ニット構成要素130の周辺に設けられている。周辺領域133は、履物100に組み込んだ場合、領域101~領域103の各々を通って、外側側部104および内側側部105の両方に沿って、前足領域101を覆って、かかと領域103の周りに及んでいる。さらに、履物100が着用された場合、周辺領域133は、足の外側側部に沿って、足の内側側部に沿って、足を覆って、およびかかとの周りに及んでいる。
【0033】
上述したように、周辺領域133は、領域131および132の両方よりも大きな伸張抵抗性を呈している。さらに、周辺領域133は、張力が加えられた場合に、比較的小さな伸縮性を呈してもよく、または、伸縮性を呈していなくてもよい。比較的小さな程度の伸縮性を周辺領域133に付与することの利点は、ニット構成要素130から成るこの区域が、アッパー120の伸縮に耐えて、ランニングまたはウォーキング中のしっかり固定したフィット感を確実にするということである。
【0034】
さまざまな種類の縫製およびヤーンを周辺領域133のために用いてもよい。実施例として、図6Cは、第1のヤーン134および第3のヤーン136から形成されている周辺領域133のためのニット構造を示すループの図を描いたものである。第1のヤーン134は、弾性糸であってもよいが、周辺領域133におけるより大きな伸張抵抗性は、(a)ループの図に描かれているフルゲージニットと、(b)第3のヤーン136から成る熱可塑性の形状構成とから成る製品であってもよい。
【0035】
すなわち、第3のヤーン136は、加熱した場合に軟らかくなりまたは溶融し、冷却されると、固体状態に戻る、可溶性または熱可塑性の高分子材料を組み込んでもよい。より具体的には、熱可塑性の高分子材料は、十分な熱にさらされると、固体状態から、軟化状態または液体状態に移行し、その後、熱可塑性高分子材料は、十分に冷却されると、軟化状態または液体状態から固体状態に移行する。したがって、熱可塑性高分子材料は、多くの場合、2つの物体または要素を一緒に接合するのに用いられている。この場合、第3のヤーン136の熱可塑性高分子材料は、(a)第3のヤーン136から成る部分を、第1のヤーン134から成る部分に、および(b)第3のヤーン136から成る部分を、第3のヤーン136から成る他の部分に接合するのに用いることができる。したがって、熱可塑性ポリウレタンであってもよい熱可塑性高分子材料は、ニット構造と融合または結合して、周辺領域133を安定化し、それによって、周辺領域133における伸縮性を最小限にする。実施例として、第3のヤーン136は、150デニールの生地用ポリエステルと可溶性または熱可塑性の高分子材料で覆われた20デニールのエラステインの両端であってもよい。履物100の多くの構成では、熱可塑性高分子材料は、カラー領域131および中央領域132には実質的にないことに留意すべきである。
【0036】
ニット構成要素130は、さまざまな異なる編みプロセスによって、およびさまざまな異なる編み機を用いて形成することができるが、横編み(すなわち、横編機の利用)が、上述したさまざまな形状構成を有するようにニット構成要素130を形成する能力を有している。横編みは、周期的に回転されるニット材料(すなわち、材料が交互面から編まれる)を製造するための方法である。材料の2つの面(表面とも呼ばれる)は、従来は、表面(観察者に向かって外側に面している側)と、裏面(観察者から離れて内側に面している側)として指定されている。ニット構成要素130を形成するのに用いてもよい横編みおよびプロセスは、Huffa等に対する特許文献3に見出すことができ、その明細書は、参照によってその全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
【0037】
横編みは、ニット構成要素130を形成するための適切な方法を提供するが、ニット構成要素130に組み込まれる形状構成により、他のさまざまな編みプロセスを用いてもよい。用いることのできる他の編みプロセスの実例は、ワイドチューブ丸編み、ナローチューブ丸編みジャカード織り、シングルニット丸編みジャカード織り、ダブルニット丸編みジャカード織り、ワープニットトリコット、ワープニットラッセル編みおよびダブルニードルバーラッセル編みを含む。
【0038】
〈インレイレースループの構造〉
上述した形状構成の多くまたはすべてを有するような履物100の別の構成を図7図10Cに示す。そのため、ニット構成要素130は、(a)横編み等の編みプロセスによって形成され、およびアッパー120の全面に及び、(b)一体ニット構造で形成してもよく、(c)ニット要素として形成され、およびさまざまな種類および組合せの縫製およびヤーンを組み込んでもよい。くわえて、ニット構成要素130は、カラー領域131、中央領域132、周辺領域133および上述した相対的程度の伸縮性の各々を含んでもよい。
【0039】
追加的な形状構成として、履物100のこの構造は、いくつかのレースループ141を通っているように図示されている、締めひも126を収容するように構成されているいくつかのレースループ141を形成するインレイストランド140を含んでいる。いくつかの従来の履物と同様に、締めひも126は、アッパー120を横切って通り、およびアッパー120の両側に沿って設けられているレースループ141の間を通っている。
【0040】
履物100を使用する場合、締めひも126は、着用者が、足のプロポーションに適応するようにアッパー120の寸法を修正することを可能にしている。より具体的には、締めひも126は、着用者が、(a)足の周りでアッパー120を締め付けることと、(b)(カラー123によって形成された開口部を介した)アッパー120の空洞への足の挿入および空洞からの足の引き抜きを容易にするためにアッパー120を緩めることを可能にする従来の方法で操作することができる。
【0041】
インレイストランド140から成る部分は、ニット構成要素130内に設けられ、および編みプロセス中にニット構成要素130から成る構造内に埋め込むことができる。上記で参照され、本願明細書に組み込まれる、Huffa等に対する特許文献3は、ニット構成要素130にインレイストランド140を埋め込み、または別なふうに配置するプロセスを含む、ニット構成要素130を形成することができる方法の考察を記載している。
【0042】
インレイストランド140が編みプロセス中にニット構成要素130に組み込まれる場合、ニット構成要素130とインレイストランド140は、一体ニット構造で形成してもよい。すなわち、ニット構成要素130とインレイストランド140は、編みプロセスによってワンピース要素として形成される。
【0043】
インレイストランド140は、(a)締めひも126の位置と足の上面とに一致する、アッパー120のスロート区域と、(b)ソール構造110がアッパー120に固定されている箇所に隣接している、アッパー120の下方区域との間を繰り返し通っている。インレイストランド140の部分は、スロート区域と下方区域との間で、ニット構成要素130内に設けられているが、インレイストランド140の他の部分は、レースループ141を形成するために、スロート区域内で露出されているか、またはニット構成要素130の外側に設けられている。この構造では、インレイストランド140は、締めひも126が締め付けられた場合に張力がかかり、およびインレイストランド140は、アッパー120の伸びに抵抗する。さらに、インレイストランド140は、足の周りにアッパー120を固定するのを補助し、および履物100のフィット感を高めるように、締めひも126とともに機能する。
【0044】
ニット構成要素130とインレイストランド140は、履物100とは別に、および平面または平らな構造で図11に図示されている。インレイストランド140の具体的な位置は、大幅に変えてもよいが、インレイストランド140は、主に周辺領域133に設けられているように図示されている。上述したように、周辺領域133は、領域132および133の両方よりも大きな伸張抵抗性を呈する。張力をかけて配置された場合には、比較的小さな伸縮性を呈してもよく、または、伸縮性を呈していなくてもよい。周辺領域133と比較して、インレイストランド140は、さらに大きな伸張抵抗性を呈していてもよい。すなわち、インレイストランド140は、同じ張力を受けた場合、周辺領域133よりも少なく伸びてもよい。
【0045】
インレイストランド140の多くの部分が、アッパー120のスロート区域から下方区域まで延びている場合、インレイストランド140は、スロート区域と下方区域との間のアッパー120から成る部分に伸張抵抗性を付与する。さらに、締めひも126に張力をかけると、インレイストランド140に張力を与えて、それにより、スロート区域と下方区域との間のアッパー120の部分を足に押し付けるようにすることができる。したがって、インレイストランド140は、履物100のフィット感を高めるように、締めひも126とともに機能する。
【0046】
図12を参照すると、インレイストランド140は、ニット構成要素130内に設けられ、およびニット構成要素130の両面の間に設けられているように図示されている。履物100に組み込んだ場合、ニット構成要素130のそれらの面が、面121および122の各々も形成することができると仮定すると、インレイストランド140は、面121と面122との間に設けられることになる。ニット構成要素130内に設けられるインレイストランド140の部分の各々は、互いに離間していてもよいが、単一のレースループ141を形成するインレイストランド140の部分は、互いに近接して配置されているように図示されている。
【0047】
インレイストランド140の部分は、本願明細書において定義する場合、互いに2ミリメートル以内に配置される場合、互いに「近接している」。この構造では、各レースループ141から下方へ、およびソール構造100の方へ延びているインレイストランドの部分は互いに近接している。いくつかの構造では、互いに近接しているインレイストランド140の部分は、接触していてもよく、または、例えば、1つまたは2つのヤーンだけ互いに離間していてもよい。さらに、ニット構成要素130の構造は、アッパー120内にトンネルまたはチャネルを画成してもよく、また、各レースループ141から下方へ延びているインレイストランドの部分は、同じトンネル内に配置してもよい。
【0048】
上述したように、インレイストランド140の部分は、ニット構成要素130内に設けられ、また、インレイストランド140の他の部分は、レースループ141を形成するために、露出されているか、または、ニット構成要素の外側に設けられている。各レースループ141の場合、インレイストランド140の第1の部分は、ニット構成要素130内に設けられているか、またはニット構成要素内に埋め込まれ、インレイストランド140の第2の部分は、レースループ141のうちの1つを形成し、インレイストランド140の第3の部分もまた、ニット構成要素130内に設けられているか、またはニット構成要素内に埋め込まれている。さらに、第1の部分および第3の部分は、互いに近接して配置され、およびアッパー120のスロート区域と下方区域との間に延びている。いくつかの構造では、第1の部分および第3の部分は、ニット構成要素130内の同じトンネルまたはチャネル内に設けてもよい。
【0049】
図13は、インレイストランド140を含む区域の場合のニット構造を示すループの図を示す。インレイストランド140に加えて、第4のヤーン137を、この区域に設けてもよく、また、このヤーンは、150デニールの生地用ポリエステルで覆われた20デニールのエラステインから成る両端を有する。第4のヤーン137は、第3のヤーン136と同様の構造を有しているが、可溶性または熱可塑性の高分子材料がない。この構造の利点は、インレイストランド140が、周辺領域133において、ニット構成要素130に結合されないままであり、または、ニット構成要素130から離れているということである。さらに、インレイストランド140は、ニット構成要素130内で摺動または移動して、それによって、(a)各レースループ141のサイズ、および(b)インレイストランド140の部分の張力を、履物100の製造プロセス中に調整できるようにしてもよい。
【0050】
インレイストランド140が、ニット構成要素130に結合されないままであるか、または、ニット構成要素130から離れていることを確実にするという別の方法は、インレイストランド140のための材料から成る部分に関連する。
【0051】
実施例として、インレイストランド140は、熱可塑性ポリウレタン等のいくつかの熱可塑性高分子材料に結合または接合しないナイロン材料から形成してもよい。そのため、インレイストランド140がナイロンから形成される場合、第4のヤーン137は、可溶性または熱可塑性の高分子材料を含む第3のヤーン136と置き換えてもよく、また、インレイストランド140は、第3のヤーン136と結合しない。この方法の利点は、ニット構成要素130に用いられる異なる種類のヤーンの数を最小限にすることができ、それによって、製造効率を高めることができるということである。また、インレイストランド140と、可溶性または熱可塑性の高分子材料との結合を抑えるために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のさまざまなコーティングを利用してもよい。したがって、熱可塑性高分子材料と混和しない材料を有するようにインレイストランド140を選択することは、インレイストランド140がニット構成要素130に結合しないままであることを確実にすることができる。
【0052】
一般的には、ニット構成要素130から成る部分は、熱可塑性高分子材料によって少なくとも部分的に形成されているヤーンを含んでもよい。ニット構成要素130は、熱可塑性高分子材料が、周辺領域133内等のニット構成要素130から成る区域に結合するか、またはその区域を溶融するように加熱してもよい。より具体的には、熱可塑性高分子材料は、ヤーンから成る部分を一緒に結合して、結合または融着区域を形成してもよい。いくつかの構造では、熱可塑性高分子材料を有するヤーンは、融着区域でそれ自体に結合させてもよい。他の構造では、熱可塑性高分子材料を有するヤーンは、熱可塑性高分子材料を含んでいても、含んでいなくてもよい融着区域で他のヤーンに結合させてもよい。
【0053】
しかし、どちらの場合でも、インレイストランド140が熱可塑性高分子材料に結合しないままであることを確実にするのに、さまざまな方法を用いることができる。一実施例において、ニット構成要素130のニット構造は、熱可塑性高分子材料を用いることなく、ヤーンをインレイストランド140に近接して配置し、それによって、インレイストランド140と熱可塑性高分子材料との間にバッファを形成している。別の実施例では、インレイストランド140は、熱可塑性高分子材料と結合部を形成しない材料を含んでもよい。したがって、インレイストランド140が、熱可塑性高分子材料と分離したままであるか、または、熱可塑性高分子材料に結合しないことを確実にするのに、さまざまな構造および方法を用いることができる。
【0054】
ニット構成要素130を形成するヤーンと同様に、インレイストランド140の構造は、大幅に変えてもよい。インレイストランド140は、ヤーンに加えて、例えば、フィラメント(例えば、単繊維)、スレッド、ロープ、帯、ケーブルまたは鎖から成る構造を有してもよい。
【0055】
ニット構成要素130を形成するヤーンと比較して、インレイストランド140の厚さ(thickness)は、より大きくてもよい。いくつかの構造では、インレイストランド140は、ニット構成要素130のヤーンよりも著しく大きな厚さを有してもよい。インレイストランド140の断面形状は円形でもよいが、その断面形状は、三角形、四角形、長方形、楕円形または不規則であってもよい。さらに、インレイストランド140を形成する材料は、綿、エラステイン、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびナイロン等のニット構成要素130内のヤーンのための材料のうちのいずれかを含んでもよい。上述したように、インレイストランド140は、ニット構成要素130よりも大きな伸張抵抗性を呈していてもよい。したがって、インレイストランド140のための適当な材料は、ガラス、アラミド(例えば、パラアラミドおよびメタアラミド)、超高分子量ポリエチレンおよび液晶ポリマーを含む、高引張強度用途に利用されるさまざまなエンジニアリングフィラメントを含んでもよい。また、別の実施例として、0.8ミリメートルの直径を有するポリエステル製組糸またはケーブルをインレイストランド140として用いてもよい。
【0056】
締めひも126は、上述したように、アッパー120を横切って、およびアッパー120の両側に沿って設けられているレースループ141の間を通っている。実際には、締めひも126は、アッパー120の両側の間で、アッパー120を横断するジグザグの経路を辿っている。
【0057】
アッパー120の両側のいくつかの位置では、図14に図示されているように、2つのレースループ141が、互いに重なっているか、または、互いに近接して配置されており、締めひも126は、両方のレースループ141を同時に通っている。すなわち、締めひも126が、アッパー120を横切って繰り返し通る方向を変えるそれぞれの位置において、レースループ141のペアが、締めひも収容要素として用いられている。重なり構造になっているレースループ141のペアによって、レースループ141の各ペアは、開口を形成するように位置合わせされて、締めひも126は、その開口を通って延びている。締めひも126は、各位置において、単一のレースループ141を通ってもよいが、レースループ141のペアを用いることの利点は、インレイストランド140の切断の影響を最小限にすることができるということである。すなわち、一方のレースループ141に関連するインレイストランド140から成る部分が切断されたか、または、別なふうに破損した場合、他方のレースループ141が、各位置に締めひも収容要素を形成することができる。
【0058】
ニット構成要素130の別の構造が、(a)周辺領域133内に複数の小区域138を含み、および(b)中央領域132および周辺領域133の区域内でニット構成要素130を貫通して延びている複数の開口139を含むように図15に示されている。小区域138は、ニット構成要素130が、異なる種類および組合せの縫製およびヤーンを有している領域とすることができる。そのため、小区域138の各々は、伸張抵抗性、厚さ、通気性および耐摩耗性等の異なる特性を有していてもよい。あるいは、小区域138は、用いられるヤーンの色が異なっていて、それによって、アッパー120の美観を変えてもよい。開口139は、アッパー120の通気性を向上させることに加えて、伸縮性をニット構成要素130に付与してもよい。すなわち、開口139は、特定の区域におけるニット構成要素130の伸張抵抗性を低下させることができる。したがって、ニット構成要素130の区域に特定の特性を与えるように、ニット構成要素130内のさまざまな形状構成および構造を大幅に変えることができる。
【0059】
本発明は、さまざまな構造に関して、上記および添付図面に開示されている。しかし、その開示が果たす目的は、本発明に関連するさまざまな特徴および概念の実施例を示すことであり、本発明の範囲を限定することではない。当業者は、添付クレームによって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した構造に対してさまざまな変形および変更を行ってもよいことを正しく認識するであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15