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特開2022-60265核酸を単離及び/又は精製するための溶解、結合及び/又は洗浄試薬
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  • 特開-核酸を単離及び/又は精製するための溶解、結合及び/又は洗浄試薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060265
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】核酸を単離及び/又は精製するための溶解、結合及び/又は洗浄試薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014191
(22)【出願日】2022-02-01
(62)【分割の表示】P 2019011480の分割
【原出願日】2009-05-25
(31)【優先権主張番号】102008026058.4
(32)【優先日】2008-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】599072611
【氏名又は名称】キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファービス ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ホーマン ヴィッシンスキー アンケ
(72)【発明者】
【氏名】フォッス トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ハンゼレ トーマス
(57)【要約】
【課題】プロセスにおいて、良好な又はより良い、溶解、結合及び/又は洗浄特性を有する手段を提供する。
【解決手段】本発明は、溶解、結合及び/又は洗浄試薬であって、
-少なくとも一つのカオトロピック化合物、
-トリス(TRIS)、トリシン(Tricine)、ビシン(BICINE)、ヘペス(HEPES)、PIPES、チェス(CHES)、メス(MES)、モップス(MOPS)、及び/又は、リン酸バッファーを含む群から好ましくは選択される、少なくとも一つのバッファー化合物、及び、
-該試薬の全体積に対して≧8%重量/体積から≦50%重量/体積の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、
を含む試薬を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を単離及び/又は精製するための溶解、結合及び/又は洗浄試薬など。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を単離及び/又は精製するための、溶解、結合及び/又は洗浄試薬、及び方法に関する。前記溶解、結合及び/又は洗浄試薬及び方法は、分子診断における使用目的のために特に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来技術はこれまで、細胞、細胞培養物、又はウィルス培養物から、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)のような核酸を単離及び/又は精製するための、非常に多数の方法を開示している。
【0003】
この背景において、その多くが手動で実行される、核酸を単離するための「古典的」な方法は、水性バッファー及び有機抽出剤の添加後に抽出を実行することを含む、一工程法に基づく。核酸は、水相に残留するので、不要な付随する物質を含む有機層が除去された後、単離されてもよい。
【0004】
第一に、これらの方法は、通常、クロロフォルム又はフェノールなどの有害な有機抽出剤を使用し、第二に、水溶性汚染物質が、核酸を含む水相に残留するので、さらなる精製工程において除去される必要がある。
【0005】
そのため、従来技術では、代替え法が重要性を獲得し、その方法は、固体、多くは、二酸化ケイ素などの無機物支持体に核酸を選択的に吸着させることに基づく。この結合原理は、「カオトロピック」塩及び/又はアルコールの影響下における、二酸化シリコン表面に対する核酸の可逆的結合に基づく。マルチ工程法では、核酸含有サンプルに対し、様々な溶液又は混合物が、通常、溶解、結合、洗浄、及び/又は溶出液が加えられ、最終の方法工程では、遅くとも結合工程において加えられる支持体から、精製核酸が溶出される。
【0006】
両方法の基本原理は、最初の工程において溶解される、細胞、特に、植物、動物、ヒト、細菌、又はウィルス細胞に基づく。このために、細胞は、先ず、これらの細胞を破壊する溶解バッファーと共にインキュベートされる。
【0007】
従来技術は、生物サンプルの細胞材料を溶解するためのバッファー及び方法を開示している。公知の溶解バッファーは、多くの場合、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイーン(R)20(Tween(R) 20))を含む。この界面活性剤は、細胞の溶解の間、汚染物質を可溶性又は安定化状態に変換し、それらを核酸から除去するために使用される。
【0008】
不都合なことに、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイーン(R)20(Tween(R) 20))を含む溶解バッファーは、保存の間、安定ではない。例えば、pHが減少する。特に不利なのは、これらの溶解バッファーを使用した場合、保存後、単離される核酸の収率が減少することである。もう一つの不利な点は、核酸を含む溶出液が不透明となることで、これは、その単離核酸のその後の使用を妨げる可能性のある汚染物質の存在を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来技術における上述の欠点の少なくとも一つを克服し、かつ可能であれば、プロセスにおいて、良好な又はより良い、溶解、結合及び/又は洗浄特性を有する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明の請求項1に記載の溶解、結合及び/又は洗浄試薬によって達成される。したがって、溶解、結合及び/又は洗浄試薬であって、
-少なくとも一つのカオトロピック化合物、
-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、N-(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(トリシン;Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン;BICINE)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(チェス;CHES)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(メス;MES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(モップス;MOPS)、及び/又は、リン酸バッファーを含む群から好ましくは選択される、少なくとも一つのバッファー化合物、及び、
-該試薬の全体積に対して≧8%重量/体積から≦50%重量/体積の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、
を含む試薬が提供される。
【0011】
「溶解、結合及び/又は洗浄試薬」という用語は、本発明の目的のためには、溶解試薬、結合試薬、又は洗浄試薬である試薬、さらに、溶解試薬として作用し、さらに結合試薬として、さらに洗浄試薬として作用してもよい試薬を意味する。より具体的には、「溶解、結合及び/又は洗浄試薬」という用語はさらに、本発明の目的のためには、本発明の溶解試薬、結合試薬、及び/又は洗浄試薬の混合物を意味する。
【0012】
「試薬」という用語は、本発明の目的のためには、溶解、結合及び/又は洗浄試薬を意味する。
【0013】
「カオトロピック化合物」という用語は、本発明の目的のためには、タンパク質に対して変性的に作用し、かつ特に水素結合の形成に基づく液体の水の規則的構造を破壊する化合物を意味する。
【0014】
「バッファー化合物」という用語は、本発明の目的のためには、水溶液の緩衝又はpH安定化を提供してもよい化合物を意味する。
【0015】
「リン酸バッファー」という用語は、本発明の目的のためには、リン酸塩、例えば、リン酸二水素塩、例えば、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、又はリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、及び、リン酸水素塩、例えば、リン酸水素二ナトリウム・二水和物(Na2HPO4・2H2O)、又はリン酸水素二カリウムを意味する。これらのリン酸塩の混合物も同様に使用してよい。別の一般的なリン酸バッファーとしては、塩化ナトリウム、Na2HPO4、塩化カリウム、及びKH2PO4を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水;phosphate buffered saline)がある。
【0016】
「核酸」という用語は、本発明の目的のためには-ただしこれらに限定されないが-天然の、好ましくは単離された、直鎖の、分枝の又は環状の核酸、例えば、RNA、特に、mRNA、siRNA、miRNA、snRNA、tRNA、hnRNA、又はリボザイム、DNA、プラスミドDNAなど、合成又は修飾核酸、インビトロ転写物、例えば、オリゴヌクレオチド、より具体的には、プライマー、PCRに使用が可能なプローブ又は標準、ジゴキシゲニン、ビオチン、又は蛍光色素によって標識される核酸、又は、メチル化核酸、又は"PNA"(「ペプチド核酸」)を意味する。
【0017】
「界面活性剤」という用語は、本発明の目的のためには、界面活性及び/又は表面活性物質を意味する。
【0018】
「脂肪アルコール」という用語は、本発明の目的のためには、6から22の炭素原子、好ましくは8から20の炭素原子、優先的には10から18の炭素原子、特に好ましくは12から18の炭素原子の鎖長を有するアルコール類を意味する。特に、12、14、16、又は18の炭素原子を有するアルコール類が好まれる。脂肪アルコールは、モノ又はポリ不飽和アルコールであってもよいが、好ましくは、飽和脂肪アルコールである。
【0019】
「ポリオキシエチレン」とは、本発明の目的のためには、HO-(CH2CH2O)n単位を意味し、ここで、nは、好ましくは2から150、さらに好ましくは4から120、よりさらに好ましくは8から80の整数であり、もっとも好ましくは、nは、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101, 102, 103, 104, 105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120, 121, 122, 123, 124, 125, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138, 139, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 146, 147, 148, 149 及び150から選択される整数である。
【0020】
「ポリオキシプロピレン」とは、本発明の目的のためには、HO-(CH2CH2CH2O)n単位を意味し、ここで、nは、好ましくは10から90、さらに好ましくは20から80、よりさらに好ましくは30から70の整数であり、もっとも好ましくは、nは、10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89 及び90から選択される整数である。
【0021】
「%重量/体積」、「%(重量/体積)」、又は「%(w/v)」という情報は、本発明の目的のためには、例えば、100 mlの試薬又は組成物当たりの、界面活性剤のグラム数に関する情報を意味する。
【0022】
驚くべきことに、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、保存の間、向上した安定性を有することが見出された。したがって、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、例えば、室温で、3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは少なくとも8ヶ月保存中も、安定なpHを有する場合がある。より具体的には、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、高温で、例えば、50℃で、数週間、好ましくは数ヶ月間保存された場合でも、安定なpHを有する場合がある。
【0023】
このことは従来から溶解、結合、及び/又は洗浄試薬にとって有利となる。なぜならば、pH不安定性は、単離後に得られる、核酸を含む溶出液における汚染物質の発生と結びつくことが疑われるからである。
【0024】
本発明においては好まれるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類である。
【0025】
好適なポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルの例としては、ポリエトキシル化ラウリル、セチル、オレイル、又はステアリルアルコールがあり、これらは単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施態様によれば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、6から22の炭素原子を有する脂肪アルコール成分、及び、2から150の(CH2CH2O)単位を有するポリオキシエチレン成分を含む。
【0027】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される。
【0028】
ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、特に、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、本発明の範囲内の広範な応用において有利となる。保存の間の向上した安定生は、特に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、N-(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(トリシン;Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン;BICINE)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(ピペス;PIPES)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(チェス;CHES)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(メス;MES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(モップス;MOPS)、及び/又は、リン酸バッファーを含む群から好ましくは選択されるバッファー化合物を含む、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬において観察することが可能である。
【0029】
本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、該溶解、結合、及び/又は洗浄試薬の全体積に対して≧8%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーから選択されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含む場合、特に有利な作用を有することが見出された。
【0030】
界面活性剤の混合物が使用される場合、濃度情報は、好ましくは、例えば、試薬の全体積に対して≧8%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲の、界面活性剤合計含量である。
【0031】
これは特に、本発明の範囲内の溶解試薬にとって有利となる。
【0032】
好ましいポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又はポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される、エトキシル化ラウリル、セチル、オレイル、又はステアリルアルコールである。
【0033】
好ましいポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルを含む群から選択される。ここで、数字は、エチレンオキサイド単位の平均数を示す。
【0034】
本発明において特に好適なのは、例えば、ICI界面活性剤(ICI Surfactants)によって、ブリッジ(Brij(R))の商品名の下に販売されるポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルである。
【0035】
好適なポリオキシエチレンラウリル、ポリオキシエチレンセチル、ポリオキシエチレンオレイル又はポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテルの例は、好ましくは、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(ブリッジ30;Brij(R) 30)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(ブリッジ35;Brij(R) 35)、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(ブリッジ52;Brij(R) 52)、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ72;Brij(R) 72)、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(ブリッジ76;Brij(R) 76)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(ブリッジ78;Brij(R) 78)、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(ブリッジ92;Brij(R) 92)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(ブリッジ97;Brij(R) 97)、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)、及び/又は、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(ブリッジ700;Brij(R) 700)を含む群から選択される。
【0036】
適切なポリオキシエチレンラウリル、ポリオキシエチレンセチル、ポリオキシエチレンオレイル、又はポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテルはさらに、粉末として使用してもよく、例えば、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル粉末(ブリッジ721P;Brij(R) 721P)を用いてもよい。
【0037】
従来技術のバッファー、特に、ツイーン20(Tween(R) 20)を含むバッファーは、保存後、核酸のより低い収率を示すのに対し、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬のもう一つの利点は、核酸の単離及び/又は精製に使用される場合、たとえ室温で、又は高温で、例えば、最大50℃で、数週間、又は数ヶ月保存された場合でも、一貫して良好な単離核酸の収率を示す溶解、結合、及び/又は洗浄試薬によって実現される場合がある。
【0038】
本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬の特別な利点は、核酸を含む溶出液が、数週又は数ヶ月の保存後も、不透明ではないか、又はほんの僅かに不透明であるという事実である。したがって、利点は、溶出液が、汚染物質をまったく含まないか、又は少なくともはっきりとより少ない汚染物質しか含まないことであり、これは、核酸を含む該溶出液のその後の使用をより有利にする。なぜなら、核酸の収率を下げる、時間のかかるさらなる精製工程を省略してもよいからである。
【0039】
ポリオキシエチレンのラウリルアルコールエーテル、例えば、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(ブリッジ30;Brij(R) 30)、又はポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(ブリッジ35;Brij(R) 35)を含む溶解、結合、及び/又は洗浄試薬はそれほど好まれない。したがって、好ましい実施態様では、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、これらの物質のいずれも含まない。特に好ましい実施態様では、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテルではない。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又はポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される。
【0041】
ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(ブリッジ78;Brij(R) 78)、及び/又は、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)を含む群から選択される、ポリオキシエチレンセチル、ポリオキシエチレンオレイル、又はポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテルが好ましい。
【0042】
ポリオキシエチレンセチル又はポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテルが特に好ましく、好ましくは、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、及び/又はポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)を含む群から選択される。
【0043】
より詳細には、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、特にポリオキシエチレンセチル又はポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテルを含む、本発明による溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、比較して、単離核酸の、特にウィルスDNAの、特に良好な収率によって際立つ。より具体的には、B型肝炎ウィルス(HBV)のDNAの単離のために、調製したばかりの、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテルを含む溶解及び/又は結合試薬の使用も、50℃で数週間、特に、数ヶ月保存後の使用も、いずれも、驚くべきことに、ツイーン20(Tween(R)20)を含む溶解バッファーに比較して、ウィルスDNA収率の著明な増加をもたらすことが見出された。これは、特に、本発明の溶解及び/又は結合試薬の特異的利点を提供する可能性がある。なぜなら、B型肝炎ウィルス(HBV)は、溶解するのが困難であることが知られるからである。本発明の溶解試薬は、ウィルスDNAの単離に特に好適である。
【0044】
さらに適切なものとして、ポリエトキシル化ラウリル、セチル、ステアリル、又はオレイルアルコールがあり、これらは、ラウレス(laureth)、セテス(ceteth)、ステアレス(steareth)、又はオレス(oleth)というINCI名称の下に利用可能である。
【0045】
さらに適切なエトキシル化ドデシル、ラウリル、セチル、ステアリル、又はオレイルアルコールの例が、ラウレス-9(laureth-9)、ラウレス-4(laureth-4)、ラウレス-23(laureth-23)、セテス-2(ceteth-2)、セテス-20(ceteth-20)、ステアレス-2(steareth-2)、ステアレス-10(steareth-10)、ステアレス-20(steareth-20)、オレス-2(oleth-2)、オレス-10(oleth-10)、及び/又はオレス-20(oleth-20)を含む群から選択される名称の下に利用可能である。
【0046】
さらに好ましいポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。5から15の炭素原子、好ましくは6から10の炭素原子を含むアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。さらに、分枝又は非分枝のC7-からC10-アルキル基、より詳細には分枝又は非分枝のC8-及びC9-アルキル基が好ましく、特に好ましくはイソオクチル基及びノニル基である。
【0047】
本発明の好ましい実施態様では、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及び/又はポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルを含む群から選択される。適切なポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルは、例えば、商品名イゲパル(Igepal(R))下に、例えば、BASFから入手することが可能である。
【0048】
適切なポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルの例は、好ましくは、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル(イゲパルCO-210;Igepal(R) CO-210)、ポリオキシエチレン(2)イソオクチルフェニルエーテル(イゲパルCA-210;Igepal(R) CA-210)、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル(イゲパルCO-520;Igepal(R) CO-520)、ポリオキシエチレン(5)イソオクチルフェニルエーテル(イゲパルCA-520;Igepal(R) CA-520)、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル(イゲパルCO-630;Igepal(R) CO-630)、ポリオキシエチレン(9)イソオクチルフェニルエーテル(イゲパルCA-630;Igepal(R) CA-630)、ポリオキシエチレン(12)ノニルフェニルエーテル(イゲパルCO-720;Igepal(R) CO-720)、ポリオキシエチレン(12)イソオクチルフェニルエーテル(イゲパルCA-720;Igepal(R) CA-720)、及び/又はポリオキシエチレン(100)ノニルフェニルエーテル(イゲパルCO-990;Igepal(R) CO-990)を含む群から選択される。
【0049】
さらに好ましいポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーはまた、「ポロキサマー」("poloxamers")とも呼ばれる。経験式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aHのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましい。ここで、"a"はポリオキシエチレン単位の数を指し、"b"はポリオキシプロピレン単位の数を指し、a/b重量比は、好ましくは、0.1から3の範囲である。
【0050】
"a"は、より詳細には2から150の範囲、好ましくは4から120の範囲、さらに好ましくは8から80の範囲であり、よりさらに好ましくは、"a"は、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101, 102, 103, 104, 105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120, 121, 122, 123, 124, 125, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138, 139, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 146, 147, 148, 149 及び150から選択される整数であり、もっとも好ましくは"a"は、2, 4, 10, 20, 23, 40, 55, 70及び100から選択される整数である。
【0051】
"b"は、より詳細には10から90の範囲、好ましくは20から80の範囲、さらに好ましくは30から70の範囲であり、よりさらに好ましくは、"b"は、10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89及び90から選択される整数であり、もっとも好ましくは "b"は、15, 18, 23, 40, 55, 67及び75から選択される整数である。
【0052】
さらに、異なる長さのポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックを有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであって、15から67のポリプロピレン単位を有するポリオキシプロピレンブロックが、各場合においてそれぞれ独立に2から130ポリエチレン単位を有する二つのポリオキシエチレンブロックによって囲まれたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましい。
【0053】
適切なポリオキシエチレン-ポリプロピレンブロックコポリマーは、例えば、商品名プルロニック(Pluronic(R))又はシンペロニック(Synperonic(R))の下に、例えば、BASFから入手することが可能である。
【0054】
適切なポリオキシエチレン-ポリプロピレンブロックコポリマーの例は、好ましくは、プルロニックPE 6200(Pluronic(R) PE 6200)、プルロニックPE 6400(Pluronic(R) PE 6400)、プルロニックPE 6800(Pluronic(R) PE 6800)、プルロニックPE 10300(Pluronic(R) PE 10300)、プルロニックPE 10500(Pluronic(R) PE 10500)、プルロニックF127(Pluronic(R) F127)、プルロニックF108(Pluronic(R) F108)、シンペロニックF108(Synperonic(R) F108)、シンペロニックF127(Synperonic(R) F127)、及び/又はシンペロニックF68(Synperonic(R) F68)を含む群から選択される。
【0055】
本発明の好ましい実施態様によれば、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、試薬の全体積に対し、≧9%(重量/体積)から≦40%(重量/体積)の範囲、好ましくは≧10%(重量/体積)から≦30%(重量/体積)の範囲、優先的には≧15%(重量/体積)から≦20%(重量/体積)の範囲において、非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によれば、カオトロピック化合物は、好ましくは、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアネート、グアニジンイソチオシアネート、及び/又はその二つ以上の塩の混合物を含む群から選択される、ナトリウム塩又はグアニジン塩である。カオトロピック化合物は、好ましくは、グアニジン塩であり、優先的には、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアネート、及び/又はグアニジンイソチオシアネートを含む群から選択される。
【0057】
特に、上述のカオトロピック化合物とポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤との組合せは、ウィルス細胞を溶解し、ウィルス細胞から核酸を単離するために有利となる。
【0058】
カオトロピック化合物の適切な濃度及び量は、サンプルの種類、又は溶解のパラメータに応じて変動してよく、カオトロピック化合物の濃度は、試薬の全体積に対し、≧0.1Mから≦10Mの範囲にあると一般に有利である。溶解、結合、及び/又は洗浄試薬のカオトロピック化合物の濃度は、≧0.5Mから≦8Mの範囲、好ましくは、≧0.9Mから≦6Mの範囲であることが好ましい。
【0059】
溶解試薬のカオトロピック化合物の濃度は、好ましくは≧3Mから≦7Mの範囲、特に好ましくは≧4Mから≦6Mの範囲である。結合試薬のカオトロピック化合物の濃度は、好ましくは≧0.5Mから≦7Mの範囲、特に好ましくは≧1Mから≦6Mの範囲である。洗浄試薬のカオトロピック化合物の濃度は、好ましくは≧0.5Mから≦3.5M、特に好ましくは≧0.9Mから≦3Mの範囲である。
【0060】
別の好ましい実施態様によれば、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(モップス;MOPS)、及び/又は、リン酸バッファーを含む群から選択される少なくとも一つのバッファー化合物を含む。
【0061】
特に好ましい実施態様によれば、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、及び/又は、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)を含む群から選択される少なくとも一つのバッファー化合物を含む。
【0062】
溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、好ましくは水溶液である。
【0063】
さらに別の好ましい実施態様によれば、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、≧4から≦12の範囲、より詳細には≧6から≦11の範囲、好ましくは≧7から≦10の範囲、特に好ましくは≧8から≦9の範囲のpHを有する。
【0064】
好ましい実施態様では、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、特に、溶解試薬は、さらに酵素を、例えば、溶解酵素、特に、例えば、プロテイナーゼK、プロテアーゼ(例えば、キアゲン(QIAGEN)プロテアーゼ)、ザイモラーゼ(zymolase)、リティカーゼ(lyticase)、アクロモペプチダーゼ、リゾスタフィン、リゾチーム、及び、使用に応じて、ヌクレアーゼ、例えばDNA分解酵素及び/又はRNA分解酵素を有してもよい。
【0065】
本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬は、溶解試薬、結合試薬、又は洗浄試薬であってもよく、あるいは、本発明の溶解試薬、結合試薬、及び/又は洗浄試薬の混合物であってもよい。
【0066】
核酸は、好ましくは、分枝又は非分枝アルカノールの存在下に、カオトロピック化合物の存在下、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質の上に固定される。したがって、少なくとも一つの分枝又は非分枝アルカノールを含む結合試薬が好ましい。
【0067】
好ましくは、1から5の炭素原子を有する、短鎖の分枝又は非分枝アルカノールが使用可能である。本発明の好ましい実施態様によれば、分枝又は非分枝アルカノールは、1から5の炭素原子を有するアルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、分枝又は非分枝ブタノール又はペンタノール、及び/又は、それらの混合物を含む群から選択される。
【0068】
別様に記述されない限り、「分枝又は非分枝アルカノール」という定義は、特に、プロパノール、ブタノール、及びペンタノールは、いずれの消費可能な特定ラジカルの異性体も含む。したがって、例えば、分枝又は非分枝プロパノールは、n-プロパノール及びイソプロパノールを含み、分枝又は非分枝ブタノールは、イソブタノール、セク(sec)-ブタノール、及びタート(tert)-ブタノールを含み、分枝又は非分枝ペンタノールは、例えば、n-ペンタノール及びイソペンタノールを含む。メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はそれらの混合物を含む群から選択されるアルコールを使用することが好ましいが、特に、エタノール、イソプロパノール、及び/又はそれらの混合物を含む群から選択されるアルコールを使用することが好ましい。
【0069】
本発明の好ましい実施態様によれば、結合試薬は、該結合試薬の全体積に対し、≧20体積%から≦80体積%の範囲、優先的には≧40体積%から≦70体積%の範囲、好ましくは≧50体積%から≦60体積%の範囲において、分枝又は非分枝アルカノールを含む。
【0070】
体積及び/又は重量含量が特定されている場合、個々の成分の該体積及び/又は重量含量は、該成分の全体積又は全重量が、100体積%又は100重量%を超えないように選ばれることは、当業者にとって自明である。
【0071】
本発明は、さらに、核酸を単離及び/又は精製するための、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬の使用に関する。
【0072】
本発明は、さらに、核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための方法であって、以下の方法工程を含む方法に関する:
a)生物サンプルを溶解すること、
b)カオトロピック化合物及び/又は分枝又は非分枝アルカノールの存在下で、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質上に放出された核酸(released nucleic acid(s))を固定すること、
c)基質上に固定された核酸を任意に洗浄すること、
d)結合核酸を任意に取り出すこと、
但し、溶解及び/又は固定は、溶解及び/又は結合組成物の存在下で実施され、該組成物は:
-少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、
-該組成物の全体積に対し、≧0.1%重量/体積から≦50%重量/体積の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、
を含む。
【0073】
「組成物」という用語は、本発明の目的のためには、溶解及び/又は結合組成物を意味する。
【0074】
本方法の好ましい実施態様では、本発明の溶解試薬は、サンプルを溶解するために使用される。この溶解試薬は、溶解される生物サンプルと接触させる。一つ以上の酵素が、使用に応じて、種々の時点で互いに独立に添加される。サンプルは、例えば臨床液体サンプルの場合は、液状であってもよい。大便サンプル又は綿棒サンプルなどの固体成分を含む臨床サンプルは、通常、さらなる分析の前に、適切な水溶液中に縣濁される。細胞培養物は、通常、溶解前に培地から取り出されるが、多くの場合サンプルを完全に乾燥させることは回避される。完全乾燥サンプル、例えば、凍結乾燥物の場合、サンプルは、例えば、ウィルス標準の凍結乾燥物はさらに処理される前に、水溶液において再構成される。したがって、溶解されるサンプルは、通常、ある程度の液体を含む。サンプル中に存在するこの液体を溶解試薬に接触させる。この点で、サンプルから核酸を単離及び/又は精製する方法は、通常、溶解試薬及び、サンプル又は前記サンプルに既に加えられている溶液の他の液体を含む溶解組成物を伴う。
【0075】
「溶解及び/又は結合組成物」という用語は、本発明の目的のためには、サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための方法で使用され、かつ、溶解、結合、及び/又は洗浄試薬の外にさらに液体を含んでもよい、溶解及び/又は結合試薬を指す。溶解及び/又は結合組成物は、好ましくは本発明の溶解及び/又は結合試薬を含んでもよい。
【0076】
本方法のさらなる好ましい実施態様によれば、放出された核酸は、本発明の結合組成物の存在下で、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質上に固定される。
【0077】
溶解サンプルに本発明の溶解及び/又は結合試薬を接触させることが好ましい。溶解組成物又は溶解が実施された別の溶液は、サンプルを結合試薬に接触させる前に、除去されてもよい。溶解組成物は除去しないことが好ましい。好ましくは、結合試薬は、溶解組成物を含むサンプルと接触させる。
【0078】
本方法の特に好ましい実施態様によれば、溶解は、溶解組成物の存在下で実施され、固定は、結合組成物の存在下で実施される。したがって、固定は、溶解組成物と結合組成物の混合物の存在下で実施することが好ましい。
【0079】
任意に、溶解試薬はさらに同時に結合試薬として用いてもよい。さらに、任意に、結合試薬は、溶解試薬として用いてもよい。さらに任意に、結合試薬は、洗浄試薬として用いてもよい。
【0080】
溶解及び/又は結合組成物は、少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、該組成物の全体積に対し、≧0.1%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含む。界面活性剤の混合物が使用される場合は、好ましくは、全界面活性剤量は、組成物の全体積に対し、例えば、合計で、≧0.1%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲である。
【0081】
例えば、核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための、この方法の利点は、少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、組成物の全体積に対し、≧0.1%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含む、溶解及び/又は結合組成物が使用されるとき、たとえ室温で、又は高温で、例えば50℃で、数週間、又は数ヶ月の保存後でも、核酸含有溶出液は、まったく不透明ではないか、又はごく僅かに不透明である点である。したがって、好都合なことに、溶出液は、汚染物質をまったく含まないか、又は少なくともはっきりとより少ない汚染物質しか含まない。これは、実質的に核酸を含む溶出液のその後の使用をさらに有利にする。なぜなら、核酸の収率を下げる、時間のかかるさらなる精製工程を省略してもよいからである。
【0082】
核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための、この方法のもう一つの利点は、例えば、単離核酸の、特にウィルスDNAの、例えば、B型肝炎ウィルス(HBV)DNAの、特に良好な収率を可能にするという点である。
【0083】
「生物サンプル」とは、粒状又は分子基盤における物質、特に、ウィルス、ファージ、及び細胞、例えば、細菌細胞、酵母又はカビ細胞、又は、ヒト、動物、又は植物細胞を意味すると理解してよい。本方法は、特に、ヒト又は動物起源のサンプル材料から、例えば、臨床サンプル、例えば、血液、血漿、血清、口、喉、及び鼻の濯ぎ液、気管支肺胞洗浄液、尿、脳脊髄液、痰、唾液、大便、吸引物、塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、例えば、鼻孔塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、頬内皮膚塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、子宮頸部塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、膣塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、尿道塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、咽頭塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、会陰塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、及び直腸塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、大便、吸引物、上皮塗抹物/綿棒付着物(スワブ)、バイオプシー、及びその他の組織又は骨髄サンプル、及びさらに、適切な栄養培地におけるこれらのサンプル物質の培養物から、DNA又はRNAなどの核酸を単離するのに特に好適である。
【0084】
サンプルはさらに、環境分析、食品分析、又は、分子生物学研究の分野から得ることも可能であり、例えば、細菌培養物、酵母又は真菌培養物、ウィルス培養物、ファージ溶解物、又は、増幅プロセス、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物から得ることも可能である。
【0085】
本発明の方法は、好ましくは、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、ウィルスDNA及びウィルスRNAを単離及び/又は精製するために、全血から細胞内RNAを単離及び精製するため、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のため、さらに、細胞非含有サンプル試料中に存在する遊離循環核酸を単離及び/又は精製するために適切である。本発明の方法は、ウィルスDNAを単離及び/又は精製するために特に適切である。
【0086】
生物サンプルは、本方法の工程a)において溶解される。原理的には、イオン性及び非イオン性界面活性剤、例えば、適切な試薬又はバッファーにおけるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、又は、ラウロイルサルコシンナトリウム(サルコシル)を用いた溶解、カオトロピック塩の使用、機械的破砕、例えば、超音波、「フレンチプレス」、ガラス球、セラミック球又は金属球などの粒子による磨砕、又は液体窒素におけるもの、凍結及び解凍の反復サイクルによるもの、又は煮沸によるもの、酵素的溶解、凍結乾燥による溶解、浸透圧ショックによる溶解、マイクロ波及び/又は熱処理、及び/又は、それらの組合せから選択される方法が、生物サンプルを溶解するために適切である。溶解は、カオトロピック塩の存在下に好ましくは実施される。
【0087】
少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、溶解組成物の全体積に対し、≧0.1%(重量/体積)から≦50%(重量/体積)の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含む溶解組成物の存在下で生物サンプルを溶解することが好ましい。
【0088】
より具体的には、カオトロピック剤と、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤との組み合わせは、ウィルス細胞の溶解に特に有効である。
【0089】
溶解及び/又は結合組成物は、少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を含む。
【0090】
ここで、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤に関して上に挙げた記述の全体内容に対して参照がなされる。
【0091】
適切なエトキシル化脂肪アルコールの例としては、エトキシル化ドデシル、ラウリル、セチル、オレイル、又はステアリルアルコールがあり、これらは単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。好ましいポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される、エトキシル化ラウリル、セチル、オレイル、又はステアリルアルコールである。
【0092】
好ましいポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルを含む群から選択される。ここで数字は、エチレンオキサイド単位の平均数を示す。
【0093】
好適なポリオキシエチレンラウリル、ポリオキシエチレンセチル、ポリオキシエチレンオレイル、又は、ポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテルの例は、好ましくは、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(ブリッジ30;Brij(R) 30)又はポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(ブリッジ35;Brij(R) 35)、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(ブリッジ52;Brij(R) 52)、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ72;Brij(R) 72)、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(ブリッジ76;Brij(R) 76)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(ブリッジ78;Brij(R) 78)、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(ブリッジ92;Brij(R) 92)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(ブリッジ97;Brij(R) 97)、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)、及び/又は、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(ブリッジ700;Brij(R) 700)を含む群から選択される。
【0094】
本発明の好ましい実施態様によれば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、6から22の炭素原子を有する脂肪アルコール成分、及び、2から150の(CH2CH2O)単位を含有するポリオキシエチレン成分を含む。
【0095】
本方法の特に好ましい実施態様では、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される。
【0096】
本方法の好ましい実施態様では、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される。この実施態様では、ポリオキシエチレンのラウリルアルコールエーテル、例えば、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(ブリッジ30;Brij(R) 30)又はポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(ブリッジ35;Brij(R) 35)を含む溶解及び/又は結合組成物はそれほど好まれない。したがって、これらの物質のいずれも含まない溶解及び/又は結合組成物が好ましい。特に好ましい実施態様では、溶解及び/又は結合組成物のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルは、ポリオキシエチレンラウリルエーテルではない。
【0097】
好ましくは、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(ブリッジ78;Brij(R) 78)、及び/又は、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)を含む群から選択される、ポリオキシエチレンセチル、ポリオキシエチレンオレイル、又はポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテルが好ましい。特に、ポリオキシエチレンセチル、又はポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、好ましくは、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(ブリッジ56;Brij(R) 56)、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(ブリッジ58;Brij(R) 58)、及び/又は、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(ブリッジ98;Brij(R) 98)を含む群から選択されるものが好ましい。
【0098】
さらに適切なものとして、ポリエトキシル化ラウリル、セチル、ステアリル、又はオレイルアルコールがあり、これらは、ラウレス(laureth)、セテス(ceteth)、ステアレス(steareth)、又はオレス(oleth)というINCI名称の下に入手可能である。
【0099】
さらに好ましいポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。5から15の炭素原子、好ましくは6から10の炭素原子を含むアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。さらに、分枝又は非分枝のC7-からC10-アルキル基、より詳細には分枝又は非分枝のC8-及びC9-アルキル基が好ましく、特に好ましくはイソオクチル基及びノニル基である。本方法の好ましい実施態様では、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及び/又はポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルを含む群から選択される。適切なポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテルは、例えば、商品名イゲパル(Igepal(R))の下に、例えば、BASFから入手することが可能である。
【0100】
さらに好ましいポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーはまた、「ポロキサマー」("poloxamers")とも呼ばれる。経験式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aHのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましく、ここで、"a"はポリオキシエチレン単位の数を指し、"b"はポリオキシプロピレン単位の数を指し、a/b重量比は、好ましくは0.1から3の範囲である。
【0101】
"a"は、より詳細には2から150の範囲、好ましくは4から120の範囲、さらに好ましくは8から80の範囲であり、よりさらに好ましくは、"a"は、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101, 102, 103, 104, 105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120, 121, 122, 123, 124, 125, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138, 139, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 146, 147, 148, 149及び150から選択される整数であり、もっとも好ましくは"a"は、2, 4, 10, 20, 23, 40, 55, 70及び100から選択される整数である。
【0102】
"b"は、より詳細には10から90の範囲、好ましくは20から80の範囲、さらに好ましくは30から70の範囲であり、よりさらに好ましくは、"b"は、10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89及び90から選択される整数であり、もっとも好ましくは "b"は、15, 18, 23, 40, 55, 67及び75から選択される整数である。
【0103】
さらに、異なる長さのポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックを有するポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであって、15から67のポリプロピレン単位を有するポリオキシプロピレンブロックが、各場合においてそれぞれ独立に2から130ポリエチレン単位を有する二つのポリオキシエチレンブロックによって囲まれたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましい。
【0104】
適切なポリオキシエチレン-ポリプロピレンブロックコポリマーは、例えば、商品名プルロニック(Pluronic(R))又はシンペロニック(Synperonic(R))の下に、例えば、BASFから入手することが可能である。
【0105】
本方法の好ましい実施態様によれば、溶解及び/又は結合組成物は、該組成物の全体積に対し、≧0.2%(重量/体積)から≦30%(重量/体積)の範囲、好ましくは≧3%(重量/体積)から≦10%(重量/体積)の範囲、優先的には≧3.2%(重量/体積)から≦8%(重量/体積)の範囲において、非イオン性界面活性剤を含む。これは、溶解組成物用として、及び、溶解及び結合組成物の混合物用として特に有利となる。
【0106】
本方法の好ましい実施態様によれば、溶解及び/又は結合組成物のカオトロピック化合物は、好ましくは、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、グアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアネート、グアニジンイソチオシアネート、及び/又は、その二つ以上の塩の混合物を含む群から選択される、ナトリウム塩又はグアニジン塩である。カオトロピック化合物は、好ましくはグアニジン塩であり、優先的にはグアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアネート、及び/又はグアニジンイソチオシアネートを含む群から選択されるグアニジン塩である。
【0107】
特に、上述のカオトロピック化合物とポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤との組合せは、ウィルス細胞を溶解し、ウィルス細胞から核酸を単離するために有利となる。
【0108】
≧0.1Mから≦10Mの範囲の、溶解及び/又は結合組成物におけるカオトロピック化合物の濃度が有利となる。≧1Mから≦8Mの範囲、好ましくは≧3Mから≦7Mの範囲、特に好ましくは≧4Mから≦6Mの範囲のカオトロピック化合物の濃度が好ましい。
【0109】
本方法の好ましい実施態様によれば、溶解及び/又は結合組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、N-(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(トリシン;Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン;BICINE)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(ピペス;PIPES)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(チェス;CHES)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(メス;MES)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(モップス;MOPS)、及び/又は、リン酸バッファーを含む群から選択される、少なくとも一つのバッファー化合物を含む。
【0110】
本方法のさらなる好ましい実施態様によれば、溶解及び/又は結合組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)、及び/又はリン酸バッファーを含む群から選択される、少なくとも一つのバッファー化合物を含む。本方法のさらなる好ましい実施態様によれば、溶解及び/又は結合組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)、及び/又はN-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(ヘペス;HEPES)を含む群から選択される少なくとも一つのバッファー化合物を含む。
【0111】
生物サンプルは、室温で、例えば、15℃から25℃、又は、高温で、例えば、≧37℃から≦75℃の温度で溶解させてもよい。
【0112】
好ましい実施態様では、溶解組成物はさらに、酵素を、例えば、プロテイナーゼK、プロテアーゼ(例えば、キアゲン(QIAGEN)プロテアーゼ)、ザイモラーゼ(zymolase)、リティカーゼ(lyticase)、アクロモペプチダーゼ、リゾスタフィン、リゾチーム、及び、使用に応じて、ヌクレアーゼ、例えばDNA分解酵素及び/又はRNA分解酵素を有してもよい。
【0113】
放出された核酸(単数又は複数)は、カオトロピック化合物、及び/又は、分枝又は非分枝アルカノールの存在下で、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質の上に固定される。
【0114】
分枝又は非分枝アルカノールを含む結合組成物が好ましい。好ましい実施態様によれば、分枝又は非分枝アルカノールとは、1から5の炭素原子を有するアルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、セク(sec)-ブタノール、タート(tert)-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、及び/又は、それらの混合物を含む群から選択される。
【0115】
好ましい実施態様によれば、結合組成物は、該結合組成物の全体積に対し、≧1体積%から≦80体積%の範囲、優先的には≧5体積%から≦70体積%の範囲、好ましくは≧10体積%から≦60体積%の範囲、さらに好ましくは≧15体積%から≦50体積%の範囲において、分枝又は非分枝アルカノールを含む。
【0116】
本発明の好ましい実施態様によれば、結合組成物の混合物は、溶解試薬、及び任意に一つ以上のさらなる添加物、好ましくは、該混合物の全体積に対し、≧1体積%から≦80体積%の範囲、優先的には≧5体積%から≦70体積%の範囲、好ましくは≧15体積%から≦50体積%の範囲において、分枝又は非分枝アルカノールを含む。
【0117】
サンプルを、一つ以上の酸化ケイ素化合物、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸塩、ガラス、及び/又はシリカゲルなどの酸化ケイ素化合物に基づく基質に接触させ、それを結合に十分なほどの長時間インキュベートすることによって核酸は単離される。基質は、従来技術で公知の通常設計のもの、例えば、粒子、膜、又はフィルター形状のものであってもよい。その取り出しをやり易くするために、磁性を有する粒子が好ましい。核酸には、10秒から30分のインキュベーション時間が好都合と思われる。1分から20分、特に、約10分の範囲のインキュベーション時間が有利となる。
【0118】
核酸は、好ましくは、ゲル状のシリカコーティングを有する磁気粒子を用いることによって単離される。核酸は、好ましくは、ゲル状のシリカコーティングを有する磁気粒子であって、≧1μmから≦25μmの範囲、優先的には≧5μmから≦15μmの範囲、特に好ましくは≧6μmから≦10μmの範囲の平均粒径で、優先的には狭いサイズ分布を有する磁気粒子を用いることによって単離される。さらに好ましくは、核酸は、ゲル状のシリカコーティングを有する磁気粒子であって、≧1μmから≦5μmの範囲の平均粒径で、好ましくは狭いサイズ分布を有する磁気粒子を用いることによって単離される。
【0119】
さらなる好ましい実施態様では、磁気粒子、又は磁気的に牽引可能な粒子は、好ましくは、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2-O3)、及び/又はフェライトを含む群から選択される酸化鉄に基づく磁気コアを有する粒子である。
【0120】
有利なやり方で使用され得る磁気シリカ粒子は、例えば、国際出願WO01/71732に記載されている。この文献の全体を引用により本明細書に含める。
【0121】
好ましい実施態様では、シリカ表面を有する磁気粒子又は磁気的に牽引可能な粒子の形状を取る一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質を使用してよい。
【0122】
結合は、≧15℃から≦75℃の範囲、好ましくは≧20℃から≦70℃の範囲、特に好ましくは≧46℃から≦65℃の範囲、もっとも好ましくは≧50℃から≦60℃の範囲の温度で実施することが好ましい。結合はさらに、室温で、例えば、≧15℃から≦28℃において実施されてもよい。
【0123】
インキュベーション後、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質に結合した核酸は、溶解及び/又は結合組成物から取り出される。磁気シリカ粒子を使用する場合、これは、磁場を利用して達成してもよい。例えば、磁気粒子は、インキュベーションが実施された容器の壁に引きつけてもよいし、磁場を印加することによって適切なピペットの中に収集してもよいし、或いは、プラスチックコーティングによって保護される磁気ロッドの上に固定してもよい。溶解及び/又は結合組成物を除去するための適切な方法工程の例は、液体をピペット採取するか、又は吸引するか、又は、ピペット先端又は磁気ロッドにおいて磁気粒子を持ち上げるか、又は、溶解及び/又は結合混合物を降下させることによって除去することであり、分離される磁気粒子は同じレベルで残留する。
【0124】
任意に、基質に固定される核酸(単数又は複数)は、抽出前に洗浄されてもよい。洗浄工程は、好ましくは、ロードした粒子と洗浄液とをインキュベートすることによって実施され、例えば振とうするか、又は磁場を印加することによって好ましくは前記粒子の再懸濁を含む。汚染された洗浄液は、好ましくは、結合後に残留する溶解及び/又は結合組成物の場合同様、特に、溶解組成物及び/又は結合組成物の混合物の場合同様に除去される。
【0125】
使用される洗浄試薬は、従来の洗浄バッファー、又は、他の適切な媒体であってもよい。一般に、低度から中等度のイオン強度を有する洗浄試薬、例えば、10 mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)の溶液が好ましい。さらに、比較的高い塩濃度を有する洗浄バッファー、例えば4~6Mのグアニジン塩酸塩の溶液が使用可能である。上述の本発明の洗浄試薬も同様に適切な洗浄試薬である。
【0126】
さらに、アルコール含有洗浄試薬、例えば、1から5の炭素原子を有するアルコールの水溶液、好ましくは、エタノール水溶液、特に、50~100パーセント強度のエタノール水溶液も使用してよい。
【0127】
基質の上に固定される核酸(単数又は複数)は、数回、例えば、2から4回、好ましくは異なる洗浄試薬によって洗浄することが好ましい。好ましい実施態様では、洗浄は、先ず、低から中等のイオン強度を有する洗浄試薬、次いで、エタノールの70~100パーセント強度の水溶液によって実施される。
【0128】
より具体的には、磁気粒子を用いることによって、粒子の磁気的凝集により、分離及び/又は洗浄工程を簡単に実施することが可能となる。
【0129】
最後の洗浄工程又は水による洗浄に続いて、好ましくは磁気粒子の乾燥工程、例えば、減圧乾燥、又は、液体の蒸発、又は、液体の放置蒸発を行ってもよい。
【0130】
本方法の工程d)によれば、結合核酸は、基質から取り出されてもよい。核酸の取り出しはまた、溶出とも呼ばれる。
【0131】
基質、特に磁気粒子に結合される核酸は、例えば、PCR又はその他の増幅法のため、DNA検出法、又はDNA特定法のためには、取り出し工程なしに使用することが好ましい場合がある。
【0132】
結合核酸は、低い塩含量を有する溶出試薬によって粒子から取り外されてもよい。より具体的には、0.1モル/L未満の塩含量を有する試薬を、低い塩含量を有する溶出試薬として使用してよい。バッファー化合物トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)を含む溶出試薬が特に好ましい。さらに、溶出のために特に適切なのは、任意に一つ以上の添加物、例えば、錯化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アジド、及び/又は、バッファー化合物、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス;TRIS)を含む、脱塩水である。
【0133】
特に、溶解及び/又は結合組成物の使用によって、生物サンプルから核酸を単離するための、特にウィルスDNAを単離するための特に有利な方法が得られる。
【0134】
特に、溶解及び/又は結合試薬の保存後でも、良好な収率の実現が可能であることから利点が得られる。
【0135】
本発明はさらに、核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するためのキットであって、本発明の溶解、結合、及び/又は洗浄試薬を含むキットに関する。
【0136】
好ましい実施態様では、キットはさらに、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質、特に、シリカ表面を有する、磁気又は磁気的に牽引可能な粒子の形状の一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質を含んでもよい。前記キットに好ましくは含まれる磁気シリカ粒子の例は、国際出願WO01/71732に記載されている。この文献の全体を引用により本明細書に含める。
【0137】
さらなる好ましい実施態様では、キットはさらに、適切な洗浄及び/又は溶出試薬、特に、本発明による洗浄試薬を含んでもよい。
【0138】
別の好ましい実施態様では、キットは、磁気シリカ粒子以外のシラン化支持材料、好ましくは、シリカ膜を持つ遠心カラムを含んでいてもよい。
【0139】
本発明は、さらに、生物サンプルの脂質を可溶化するための、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又はポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択されるポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルの使用に関する。
【0140】
「脂質」という用語は、本発明の目的のためには、水に不溶の、又は、少なくともほとんど水に不溶の天然物質を意味する。「脂質」という用語は、本発明の目的のためには、脂肪酸、脂肪及び油分を含むトリグリセリド群、ワックス、リン脂質、スフィンゴ脂質、リポサッカライド、及び、ステロイド及びカロテノイドを含むイソプレノイド群を含む。より具体的には、「脂質」という用語は、生物の細胞膜の脂質成分又は構造成分、例えば、リン脂質及びスフィンゴ脂質を意味する。
【0141】
核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための方法において、生物サンプルの脂質を可溶化するために、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0142】
ここで、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤に関する上の全記述に対して参照がなされる。
【0143】
核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための方法において、生物サンプルの脂質を可溶化するに、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又は、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択される、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルを使用することが特に好ましい。
【0144】
好ましくはシリカ表面を有する磁気粒子又は磁気牽引可能な粒子の形状である一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質を用いる核酸を単離及び/又は精製する方法において、生物サンプルの脂質を可溶化するために、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルを使用することが特に好ましい。
【0145】
好ましくはシリカ表面を有する磁気粒子又は磁気牽引可能な粒子の形状である一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質を用いる核酸を単離及び/又は精製する方法において、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルを用いる場合、有利なことに、溶出液は、汚染物質を全く含まないか、あるいは、少なくとも著明に僅かな汚染物質しか含まないことが見出された。
【0146】
さらに、本発明は、保存安定的な結合、溶解、及び/又は洗浄試薬を調製するための、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及び/又はポリオキシエチレンオレイルエーテルを含む群から選択されるポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルの使用に関する。
【0147】
ここで、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤に関する上の全記述に対して参照がなされる。
【0148】
本明細書における「保存安定的」とは、本発明の目的のためには、特定の使用に関連する溶解、結合、又は洗浄試薬の特性が、3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは8ヶ月の期間にわたる保存中に、それが実質的に前記使用を損なうほどには変化しないことを意味する。好ましい実施態様では、保存安定性は、室温で、さらに好ましくは、例えば、50℃という高い保存温度において呈示される。
【0149】
pHは、本使用に関連する試薬の特性の一つとなる。したがって、優先的に、pHは、試薬の保存中実質的に変化しない、すなわち、好ましくは、試薬の保存中、pHの低下は1未満である。
【0150】
本願は例えば以下を提供する:
[請求項1]
溶解、結合及び/又は洗浄試薬であって、
-少なくとも一つのカオトロピック化合物、
-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸、及び/又はリン酸バッファーを含む群から好ましくは選択される、少なくとも一つのバッファー化合物、及び、
-該試薬の全体積に対して、≧8%重量/体積から≦50%重量/体積の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、
を含む試薬。
[請求項2]
核酸含有生物サンプルから核酸を単離及び/又は精製するための方法であって、以下の方法工程を含む方法:
a)生物サンプルを溶解すること、
b)カオトロピック化合物及び/又は分枝又は非分枝アルカノールの存在下で、一つ以上の酸化ケイ素化合物に基づく基質上に放出された核酸を固定すること、
c)基質上に固定された核酸を任意に洗浄すること、
d)結合核酸を任意に取り出すこと、
但し、溶解及び/又は固定は、溶解及び/又は結合組成物の存在下で実施され、該組成物は:
-少なくとも一つのカオトロピック化合物、及び、
-該組成物の全体積に対し、≧0.1%重量/体積から≦50%重量/体積の範囲で、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び/又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む群から選択される、少なくとも一つのポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、
を含む。
本発明の主題のさらなる詳細、特徴、及び利点は、従属項、及び、下記の、添付図面及び実施例の説明の中に見出すことが可能である。ただし、これらの図面及び実施例は、本発明の例示実施態様を、例として、提示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1】25℃(図1a)及び50℃(図1b)で33週保存した時の、白抜きバーとして示される本発明の溶解試薬B、及び黒塗りバーとして示されるツイーン20(Tween 20(R))含有溶解試薬AのpH変化を示す。
図2】本発明の溶解試薬B及びツイーン20(Tween 20(R))含有溶解試薬Aを用いてウィルスDNA調製を実施した後のHBV-DNAに関するHBV特異的リアルタイムPCR後のCT値の平均を示す。
図3】50℃で10週保存後、本発明の溶解試薬B及びツイーン20(Tween 20(R))含有溶解試薬Aを用いてウィルスDNA調製を実施した後のHBV-DNAに関するHBV特異的リアルタイムPCR後のCT値の平均を示す。この図では、室温で約4週間保存した溶解試薬Aを参照として用いた。各場合において、リアルタイムPCRのために、6 μL及び24 μLの溶出液を用い、6 μL溶出液の結果を白抜きバーとして示し、24 μL溶出液の結果を黒塗りバーとして示す。
【実施例0152】
以下、本発明を実施例に基づいて同様に具体的に説明する。これらの実施例は、単に説明として考慮されるものであって、決して本発明を限定するものではないことが了解されるだろう。
【0153】
実施例1:安定度試験
20%(w/v)ツイーン20(Tween 20(R))(フルカ;Fluka)、グアニジンイソチオシアネート、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む溶解試薬A、及び、ツイーン20(Tween 20(R))を20%(w/v)ブリッジ58(Brij(R) 58)(シグマ;Sigma)で置換した溶解試薬Bを、再蒸留水において新たに調製し、密封容器において、25℃及び50℃で33週間保存した。
【0154】
この試験では、保存の開始時及び週間隔で、20℃から28℃の範囲の温度においてpHメータ(メトローム;Metrohm)を用いて各溶液のpHを決定した。
【0155】
図1aに示されるバーチャートは、溶解試薬AのpHが、25℃における33週の保存時、約pH7.8からpH7.2にやや低下することを示し、一方、図1bに示すように、50℃における33週の保存時には、pHは、約pH7.8から約pH5.9に低下した。対照的に、溶解試薬BのpHは、25℃及び50℃における33週の保存中、ほぼpH8で安定していた。
【0156】
実施例2:ウィルスDNAの抽出
陰性、すなわち、HBVウィルス非含有のヒト血漿を、104sgU/mLのB型肝炎ウィルス(HBV)と混ぜ合わせた。市販の自動プラットフォーム・キアシンホニー(QIAsymphony(R))(キアゲン;Qiagen)を用い、血漿サンプルからウィルス核酸を精製するための自動化プロトコールにより、各場合において1、000 μLの血漿サンプルからウィルスDNAを抽出した。
【0157】
使用プロトコールにしたがって、プロトコール指定容量の、グアニジンイソチオシアネート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、20%(w/v)ブリッジ58(Brij(R) 58)(シグマ;Sigma)及びプロテイナーゼKを含む溶解試薬B、及び、キャリヤRNAを含むAVE溶液に、サンプルを暴露した。次いで、65℃でインキュベートしてサンプルを溶解した。次に、このサンプルミックスに、プロトコール指定容量のグアニジンイソチオシアネート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び9%(w/v)ブリッジ58(Brij(R) 58)(シグマ;Sigma)を含有する結合試薬C、及びイソプロパノールを加えた。さらに3分間のインキュベーション後、磁性二酸化ケイ素粒子を含むマグアトラクト(MagAttract)懸濁液を、プロトコールの指定にしたがって、加え、混ぜ合わせた。この時、核酸は、酸化ケイ素粒子に結合する。次に、磁性酸化ケイ素粒子を分離し、液相は除去した。次に、酸化ケイ素粒子に、グアニジンチオシアネート及びエタノールを含むプロトコール指定容量の洗浄液を加え、粒子を、この洗浄液中に懸濁させた。再び上清を除去し、トリス、NaCl、及びエタノールを含むプロトコール指定容量の洗浄液を加え、2度目の洗浄ステップを実施した。液相を分離及び除去した後、粒子を、プロトコール指定容量の80%強度のエタノール水溶液で洗浄した。粒子の分離後、上清を除去し、粒子を空気中で8分間乾燥した。DNAを溶出するために、プロトコール指定容量の溶出液Eを加え、粒子をその中に3分間懸濁させた。次に、粒子を除去し、溶出液を取得した。
【0158】
前記プロトコールにしたがって、ウィルスDNAを、別の1000 μlの血漿サンプルから抽出した。ただし、20%(w/v)ツイーン20(Tween(R) 20)(フルカ;Fluka)を含む溶解試薬A、及び9%(w/v)ツイーン20(Tween(R) 20)(フルカ;Fluka)を含む結合試薬Dを用いるという改変を加えた。
【0159】
各場合において、得られた溶出液に対し、HBV特異的リアルタイム(RT-)PCRを実施した。
各場合において24 μLの溶出液を使用した。図2に示すCT値(閾値サイクル)蛍光が指数関数的に増加し始めるときのサイクルを表す--の平均は、本発明の溶解試薬B及び結合試薬Cによる抽出の方がより高い収率を達成することを明らかにした。
【0160】
実施例3:溶解試薬保存後のウィルスDNAの抽出
グアニジンイソチオシアネート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び20%(w/v)ブリッジ58(Brij(R) 58)(シグマ;Sigma)を含む溶解試薬B、及びブリッジ58(Brij(R) 58)を、20%(w/v)ツイーン20(Tween(R) 20)で置換した溶解試薬Aを、それぞれ、密封容器において50℃で10週間保存した。
【0161】
次に、市販の自動プラットフォームであるキアシンホニー(QIAsymphony(R))(キアゲン;Qiagen)を用い、血漿サンプルからウィルス核酸を精製するための自動化プロトコールによって、ウィルス核酸を抽出した。
【0162】
実施例2に記載されるプロトコールにしたがって、各場合において、1000 μlの血漿サンプルから、ウィルス核酸を、市販の自動プラットフォームであるキアシンホニー(QIAsymphony(R))(キアゲン;Qiagen)を用いて抽出した。その際、異なる混合物について、各場合において50℃で10週間保存した、グアニジンイソチオシアネート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び20%(w/v)ブリッジ58(Brij(R) 58(シグマ;Sigma)を含む溶解試薬B、及び、ブリッジ58(Brij(R) 58)を20%(w/v)ツイーン20(Tween(R) 20)で置換した溶解試薬Aを用いた。使用された参照は、室温で約4週間保存した溶解試薬Aであった。
【0163】
我々は、50℃で保存された溶解試薬Aを用いて得られた溶出液はひどく不透明であるのに対し、溶解試薬Bを用いて得られた溶出液は透明であることを見出した。
【0164】
各場合において、得られた溶出液の6 μL及び24 μLに対し、HBV特異的リアルタイム(RT-)PCRを実施した。図3に示すCT値の平均は、本発明の溶解試薬B及び結合試薬Cを用いた抽出はより高い収率を実現することを明らかにした。
図1
図2
図3