(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060286
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】樹脂成形品製造方法及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20220407BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20220407BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/36
B29C43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016966
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2020063872の分割
【原出願日】2020-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)株式会社テクノラボが、令和1年11月20日に株式会社テクノラボのウェブサイトhttp://www.techno-labo.com/rebirth/news/pr-191120/及びhttp://www.techno-labo.com/rebirth/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。 (2)株式会社テクノラボが、令和1年11月20日に株式会社PR TIMESのウェブサイトhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000048134.htmlにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。 (3)株式会社テクノラボが、令和1年11月20日、横浜商工会議所に、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品に関するプレスリリース記事を公開した。 (4)株式会社テクノラボが、令和1年11月22日に株式会社CAMPFIREのウェブサイトhttps://camp-fire.jp/projects/view/209060及びhttps://camp-fire.jp/projects/209060/preview?token=2s0ayouyにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。 (5)株式会社角川アスキー総合研究所が、令和1年12月5日に株式会社角川アスキー総合研究所のウェブサイトhttps://ascii.jp/elem/000/001/988/1988766/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。 (6)株式会社テクノラボが、令和1年11月25日に独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供するサービス『ジェグテック』のウェブサイトhttps://jgoodtech3.smrj.go.jp/all/jgt190017/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (7)横浜エフエム放送株式会社が、令和1年12月5日にラジオ番組「LovelyDay」に関連するウェブサイト(Twitter、Instagram含む)https://blog.fmyokohama.jp/machikado/2019/12/post-6f8e.html、https://twitter.com/machikadofujita/status/1202421909796712448、https://www.instagram.com/p/B5rl4aClGmz/?igshid=1ngtfd0n7yzrb及びhttps://twitter.com/LovelyDay847/status/1202414966193737728にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(8)株式会社エコイストが、令和2年1月7日に株式会社エコイストのウェブサイトhttps://www.ecoist.life/pickupsinjapan/2290にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(9)株式会社テクノラボが、令和1年10月15日にウェブサイト(株式会社テクノラボが運営するfacebook)https://www.facebook.com/plastech.project/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(10)株式会社テクノラボが、令和1年10月3日にウェブサイト(株式会社テクノラボが運営するinstagram)https://www.instagram.com/plas_tech/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(11)日本テレビ放送網株式会社が、令和2年1月9日に配信した日テレNEWS24という番組https://www.news24.jp/articles/2020/01/09/07575298.htmlにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (12)株式会社テクノラボが、令和1年11月20日にBOOSTERSTUDIObyCAMPFIREにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(13)株式会社テクノラボが、令和1年12月11日に第38回共創フォーラムにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(14)株式会社テクノラボが、令和2年1月17日に堺市立堺高等学校の建築インテリア創造科に、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品のサンプルを貸出した。(15)株式会社ブレインが、令和2年3月10日に株式会社ブレインが運営する英文の日本政府公式SNS(Twitter・Facebook・Linkdein)https://www.facebook.com/JapanGov/posts/2850162058374241?_tn_=-R、https://twitter.com/JapanGov/status/1237303605675184128及びhttps://www.linkedin.com/posts/japangov_meetthechangemakers-artsy-beatplasticpollution-activity-6643078422656622592-7KMcにて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。(16)株式会社ハーチが、令和2年3月23日に株式会社ハーチのウェブサイトhttps://circular.yokohama/及びhttps://circular.yokohama/projects/rebirth/にて、林光邦が発明した海洋プラスチックごみを利用した樹脂製品について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】508116171
【氏名又は名称】株式会社テクノラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】林 光邦
(57)【要約】
【課題】 海洋プラスチックごみ問題の解決の一助となる樹脂成形品製造方法及び樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂成形品製造方法は樹脂成形品1の製造方法であって、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材をプレス機で熱プレスすることによって樹脂成形品1を製造する方法である。本発明の樹脂成形品1は熱可塑性樹脂を含むプラスチック材がコンプレッション成形によって一体化されたものである。熱可塑性樹脂を含むプラスチック材として、海洋プラスチックごみを用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の製造方法において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材を金型に入れ、
前記金型を熱プレスすることによって樹脂成形品を製造する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形品の製造方法において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材として海洋プラスチックごみを用いる、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の樹脂成形品製造方法において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材を粉砕し、
前記粉砕によって得られた粉砕片を金型に入れる、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形品製造方法において、
融点の異なるプラスチック材を利用する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形品製造方法において、
被覆材を一体に成形して表面が被覆材で覆われた樹脂成形品を製造する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂成形品製造方法において、
無機物を混ぜて樹脂成形品を製造する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂成形品製造方法において、
プラスチック材を金型に入れる前に、プラスチック材又はその粉砕片を洗浄又は/及び分別する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の樹脂成形品製造方法において、
プラスチック材を色ごと又は材質ごとに分別する、
ことを特徴とする樹脂成形品製造方法。
【請求項9】
樹脂成形品において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材がコンプレッション成形によって一体化された、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項10】
請求項9記載の樹脂成形品において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材が海洋プラスチックごみである、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載の樹脂成形品において、
熱可塑性樹脂を含むプラスチック材としてプラスチック材の粉砕片が用いられた、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の樹脂成形品において、
融点の異なるプラスチック材が用いられた、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の樹脂成形品において、
表面に被覆層が設けられた、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の樹脂成形品において、
無機物が混在した、
ことを特徴とする樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海岸に多量のプラスチックごみが漂着する、いわゆる海洋プラスチックごみ問題が世界規模で広がっており、プラスチック製品の使用抑制や排出抑制等の取り組みについて、様々な議論がなされている。
【0003】
従来、海洋プラスチックごみ問題の改善の一助ともなりうる樹脂成形品の製造方法として、プラスチックの廃棄PET樹脂を用いた樹脂成形品の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この製造方法では、廃棄PET成形品を粉砕して廃棄PET粉砕物を得る粉砕工程と、廃棄PET粉砕物中の揮発性成分を除去して原料粉砕物を得る揮発性成分除去工程と、原料粉砕物と添加成分を混練して成形材料を得る混練工程と、成形材料をトレーや食器等の成形品に成形する成形工程を経て樹脂成形品が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記製造方法では、射出成形によって樹脂成形品が製造される。射出成形では、シリンダーノズルから材料を射出するため、すべての材料を溶融する必要がある。ところが、海洋プラスチックごみの中には、溶融しない熱硬化性樹脂や金属、貝、砂など、熱可塑性樹脂以外の素材も混在しているため、成形機に詰まったり、あるいはすべてを溶融することができず、射出成形による樹脂成形品の製造が困難である。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、一般の廃棄プラスチックのみならず、海洋プラスチックごみのような種々の異物が混在するものであっても処理することのできる樹脂成形品製造方法及び樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[樹脂成形品製造方法]
本発明の樹脂成形品製造方法は、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材を金型に入れ、当該金型を熱プレスすることによって樹脂成形品を製造する方法である。熱可塑性樹脂を含むプラスチック材として、たとえば、海洋プラスチックごみを用いることができる。本発明の樹脂成形品製造方法では、プラスチック材を粉砕し、粉砕によって得られた粉砕片を用いることもできる。
【0009】
本発明の樹脂成形品製造方法では、溶融点(融点)の異なるプラスチック材を利用することができる。また、本発明の樹脂成形品製造方法では、被覆材を一体に成形して、表面が被覆材で覆われた樹脂成形品を製造することもできる。
【0010】
本発明の樹脂成形品製造方法では、無機物を混ぜて樹脂成形品を製造することもできる。また、本発明の樹脂成形品製造方法では、プラスチック材を金型に入れる前にプラスチック材又はその粉砕片を洗浄又は/及び分別することもできる。この場合、プラスチック材は色ごと又は材質ごとに分別することができる。
【0011】
[樹脂成形品]
本発明の樹脂成形品は、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材がコンプレッション成形によって一体化されたものである。本発明の樹脂成形品は、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材として、たとえば、海洋プラスチックごみが用いられたものとすることができる。本発明の樹脂成形品は、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材として、プラスチック材の粉砕片が用いられたものとすることもできる。
【0012】
本発明の樹脂成形品は、融点の異なるプラスチック材が用いられたものとすることもできる。また、本発明の樹脂成形品の表面に被覆層が一体に設けられたものとすることもできる。本発明の樹脂成形品は、無機物が混在したものとすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂成形品製造方法及び樹脂成形品は、コンプレッション成形によって樹脂成形品を製造するため、射出成形によって樹脂成形品を製造する場合のような難点がなく、海洋プラスチックごみのような種々の異物が混在するものであっても処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の樹脂成形品製造方法の一例を示すフローチャート。
【
図2】(a)~(c)は被覆層を備えた樹脂成形品の製造工程の一例を示す説明図。
【
図3】(a)(b)は本発明の樹脂成形品の一例を示す説明図。
【
図4】(a)(b)は樹脂成形品の製造に用いる金型の一例を示す説明図。
【
図5】(a)(b)は樹脂成形品の製造に用いる金型の他例を示す説明図。
【
図6】型枠を用いて樹脂成形品を製造する場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(樹脂成形品製造方法の実施形態)
本発明の樹脂成形品製造方法の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。本発明の樹脂成形品製造方法は、熱可塑性樹脂を含む各種プラスチック材から樹脂成形品1を製造する方法として使用できるが、ここでは、熱可塑性樹脂を含むプラスチック材が海洋プラスチックごみの場合を一例とする。
【0016】
一例として
図1に示す樹脂成形品製造方法は、粉砕工程S1と、洗浄工程S2と、成形工程S3と、二次加工工程S4を経て樹脂成形品1を製造する方法である。なお、粉砕工程S1と洗浄工程S2の順番は逆であってもよい。また、粉砕工程S1の前や洗浄工程S2の前後の適宜の段階で、海洋プラスチックごみを色別や種類別に分別する分別工程S5を入れることもできる。
【0017】
前記粉砕工程S1は、原料である海洋プラスチックごみを所望サイズに粉砕する工程である。この工程では、海洋プラスチックごみを粉砕機にかけ、所望サイズ(たとえば、10~50mm程度)に粉砕する。この工程で得られた粉砕片2は樹脂成形品1の主原料となる。粉砕片2のサイズはこれよりも大きくても小さくてもよい。粉砕片2のサイズは一定である必要はなく、加工に適したサイズであればよい。なお、海洋プラスチックごみのサイズによっては、粉砕工程S1は省略してもよい。
【0018】
前記洗浄工程S2は、原料である海洋プラスチックごみを洗浄する工程である。この工程では、回収した海洋プラスチックごみの付着物や汚れを水道水で洗い流したのち、当該海洋プラスチックごみを塩素系漂白剤で洗浄する。洗浄した海洋プラスチックごみは、乾燥炉などで乾燥させる。洗浄はこれ以外の手順で行うこともできる。
【0019】
前記成形工程S3は、樹脂成形品1を成形する工程である。この工程では、プレス機(熱プレス機)の金型に粉砕片2を入れて熱プレスを行う。なお、金型の上プレート4と下プレート5には、粉砕片2を入れる前に離型剤を塗布しておくのが好ましい。
【0020】
成形工程S3では、所定時間プレスを行ったのち、プレス機から金型を取り出し、その金型を冷却する。冷却後、金型の上下のプレートを開き、平板状の樹脂成形品1を取り出す。プレスによって樹脂成形品1にはバリが生じるため、取り出した樹脂成形品1からバリを取り除く。また、樹脂成形品1の表面から付着物や汚れを除去する。
【0021】
なお、表面に被覆層3を備えた樹脂成形品1を製造する場合は、粉砕片2を下プレート5に載せる前に被覆材を下プレート上5に配置し、その上に粉砕片2を載せ、その粉砕片2の上に被覆材を載せる。この状態で上プレート4を被せて熱プレスすることで、両面が被覆材で被覆された(両面に被覆層3を備えた)樹脂成形品1を得ることができる。
図2(a)~(c)に示すように、被覆材はプレスの熱によって金型の壁面形状に追従変形し上下で接合するため、成形物を隙間なく被覆することができる。
【0022】
被覆材としては、たとえば、ポリカーボネート(PC)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニール(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性の透明フィルムを用いることができる。この実施形態の樹脂成形品製造方法で製造された樹脂成形品1は、色や大きさ、材質等が異なる異種材料が混在しており、意匠性に優れるため、被覆材にはその意匠性を損なわないような(内部の粉砕片2の色が見える)無着色の透明フィルムを用いるのが好ましい。
【0023】
樹脂成形品1の成形にあたっては、粉砕片2のほかに無機物を混ぜることもできる。無機物としては、ガラス織布などの布、釣り糸や漁網、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどの各種繊維(糸状物)、砂、貝などを用いることができる。これらの無機物を混在させることによって、無機物がバインダーの役割を果たし、樹脂成形品1の強度が向上する。
【0024】
従来、釣り糸や漁網は大量に発生するものの、リサイクルされることはほとんどなく、焼却や埋立てによって廃棄処分されることが多かった。本発明のように樹脂成形品1に混ぜることで廃棄処分されていた釣り糸や漁網のリサイクルにつながり、環境問題の解決の一助となりうる。
【0025】
なお、前記無機物に代えて又は無機物と共に、EVAやSEBCなどの接着性のある素材をバインダーとして混ぜることもできる。これにより、無機物を混ぜる場合と同様、樹脂成形品1の強度が向上するという効果を得ることができる。
【0026】
前記成形工程S3において、上プレート4と下プレート5が所望の立体形状になっている場合、熱プレスによって製品の形状が形成される。しかし成形工程S3で単なる平板状の成形物を作り、前記二次加工工程S4で二次成形する方が有利なこともある。具体的には、平板状に材料を配置する方が、複数種類の材料を混ぜてきれいな配合で模様を作るのが容易である。また、深さがある立体形状の場合、型が大きく高額になってしまう。この場合、二次加工によって所望する立体製品形状を付与することができる。
【0027】
前記二次加工工程S4は、平板状の成形物を所望形状に加工する工程である。二次加工は、真空成形や手曲げなどで行うことができる。ここでは、平板状の成形物をボウル状に加工する場合を一例として説明する。
【0028】
この工程では、二つのボウルを用意し、一方のボウル内に平板状の成形物を入れて180℃程度に加温する。加温した平板状の成形物の上から他方のボウルを載せ、その上から加圧する。その状態で成形物を冷却し、形が安定したところでボウルから取り出す。
【0029】
二次加工は前述の方法以外で行うこともできる。なお、前記二次加工工程S4は、必要に応じて行えばよく、不要な場合には省略することもできる。たとえば、平板状の樹脂成形品1を得たい場合には、成形工程S3までの工程を実施するだけでよいため、二次加工工程S4を省略することができる。平板状の樹脂成形品1を成形する場合、大型の金型ブロックは必要なく、薄い金型で済むため、金型の製作費を大幅に抑えることができるだけでなく、体積を小さく抑えることができ、金型の昇温時間や冷却時間を短縮することができる。
【0030】
本発明の樹脂成形品製造方法は、熱硬化性樹脂や無機物が混在する材料を成形できる点に一つの特徴がある。射出成形では、シリンダーノズルから材料を射出するため、すべての材料を溶融する必要があり、溶融しない熱硬化性樹脂や無機物が混在した材料を用いた場合には、成形機自体を破壊するおそれがある。これに対し、コンプレッション成形では、射出成形を行う場合に必要な射出の工程が存在しないため、このような問題は生じない。
【0031】
また、本発明の樹脂成形品製造方法は、熱可塑性樹脂を含む海洋プラスチックごみをコンプレッション成形によって成形する点に他の特徴がある。一般的に、コンプレッション成形は熱硬化性樹脂の成形に用いられる方法であり、熱硬化性樹脂の成形には通常用いられない。その理由は、冷却工程が必要であることに起因する生産性の低さにある。
【0032】
熱可塑性樹脂は十分に冷却しなければ固まらず、型から取り出すことができないため、冷却工程が必要である。このため、熱可塑性樹脂をコンプレッション成形によって成形する場合、通常のコンプレッション成形の工程に、金型の冷却-成形品の取出しー次の材料の投入-金型の昇温という工程を追加する必要がある。このような工程が加わると、冷却待ちの時間が発生し、生産性の低下につながる。
【0033】
また、射出成形では、融点が異なる異種材料を用いると、融点の低い熱可塑性樹脂がシリンダーバレル内に滞留している間に分解するという問題が生じうる。また、相溶性の低い異種材料は接合しにくく、射出時に分離して流動するため成形物の表面が剥離するという問題も生じうる。
【0034】
これに対し、コンプレッション成形では素材を半溶融の状態で成形することができるため射出成形に比べて加工温度が低い。さらに一時的に融点の低い材料が高温下にさらされることがあっても、成形の度に昇温して材料を溶融し、その後に冷却をするため、射出成形のように溶融材料が長時間滞留することがないので、融点が異なる異種材料を一緒に加工しても、材料が分解するリスクが小さい。
【0035】
このように、本発明の樹脂成形品製造方法は、熱可塑性樹脂の加工に、当業者であれば通常は採用しないコンプレッション成形を敢えて採用することで、射出成形によっては得られない新しい樹脂成形品1を製造できる点に価値がある。
【0036】
(樹脂成形品の実施形態)
本発明の樹脂成形品1の実施形態の一例を、
図3(a)(b)~
図5(a)(b)を参照して説明する。一例として
図3(a)に示すものは平板状のプレート、
図3(b)に示すものは当該平板状のプレートを加工(二次加工)して製造したボウルである。
【0037】
この実施形態の樹脂成形品1は、海洋プラスチックごみを主原料とするものであって、熱可塑性樹脂を含む海洋プラスチックごみの粉砕片2がコンプレッション成形によって一体化されたものである。主原料として使用する海洋プラスチックごみは様々な種類が混在しているため、多くの場合、粉砕片2は融点が異なる。
【0038】
この実施形態では、粉砕片2として10~50mm程度のものを用いている。粉砕片2はこれより大きくても小さくてもよい。また、この実施形態では異なる色の粉砕片2を複数種類用いており、それら複数の色が外観上視認することができるように構成されている。本発明の樹脂成形品1は、同一色の粉砕片2だけを用いて構成することもできる。なお、この実施形態では、海洋プラスチックごみの粉砕片2を用いる場合を一例としているが、粉砕しなくても型に入るときは粉砕する必要はなく、粉砕していないものをそのまま用いることができる。
【0039】
この実施形態では、樹脂成形品1が平板状のプレートとボウルの場合を一例としているが、本発明の樹脂成形品1は、ゴミ箱や植木鉢、植木鉢カバー、花瓶、ランプシェードなど、プレートやボウル以外であってもよい。
【0040】
この実施形態の樹脂成形品1は、表面に被覆材で構成された被覆層3を備えている。被覆材には成形品に追従することができ、且つ一体成形しても破れない程度のものを用いるのが好ましい。
【0041】
被覆材には、前述したポリカーボネートやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性の透明フィルム、特に、被覆材は内部の粉砕片2の色が見える無着色の透明フィルムを用いるのが好ましい。
【0042】
被覆材は、接合しにくい異種材料によって剥離しやすい成形物の表面を保護すると共に、粉砕片2由来の不純物が外部に出ないようにするプロテクト機能や、樹脂成形品1の表面にさらなる機能、たとえば、抗菌特性や耐擦傷性、防汚性、耐候性、衛生性、加飾性などを付与する働きをする。異種材料を一体に成形する場合、材料同士の相溶性が低いと素材が剥離することがあるが、被覆材を設けることでこのような素材の剥離を防止することができる。
【0043】
また、被覆材は熱プレスによって上下で圧縮成形されることから、被覆材の端面は上下面と比較して弱いものになりやすい。この場合、事前に端面形状のみ成形した部材を入れて熱プレスすることにより、プロテクト機能が高く外観意匠に優れた樹脂成形品1を製造することができる。端面形状のみ成形した部材を入れて熱プレスする方法は、被覆層3を設けない場合にも採用することができる。なお、被覆層3は必要に応じて設ければよく、不要な場合には省略することもできる。
【0044】
本発明の樹脂成形品1には、粉砕片2に無機物やバインダーを混ぜることもできる。無機物には、前述したガラス織布などの布、釣り糸などの繊維、砂、貝などを、バインダーには、EVAやSEBCなどの接着性のある素材を用いることができる。無機物やバインダーを混在させることによる効果は前述のとおりである。バインダーは無機物に代えて又は無機物と共に混ぜることができる。本発明の樹脂成形品1には、市販のプラスチック原料を混ぜることもできる。
【0045】
本発明の樹脂成形品1には、これまでの樹脂成形品1にはない意匠性を備えるという特徴がある。本発明の樹脂成形品1は、材料(粉砕片2等)同士が混ざらないため、様々な色の粉砕片2等を散りばめることで美観に優れた一品物となる。また、貝殻や金属等の従来一緒に成形できない素材も一緒に入れることができるため、これまでにないデザインの樹脂成形品1となる。
【0046】
さらに、表面に被覆層3を設けた場合、被覆材に任意の図柄等を印刷できるため、たとえば、会社のロゴマークなどを入れた樹脂成形品1を製造することもできる。また、ABSなどのメッキのできる素材とメッキのできない素材を混在させることによって、一つの製品にメッキされた部分とされない部分を含む模様を作ることができる。
【0047】
メッキ模様は電気配線のような機能部分として利用することもできる。また、本発明の樹脂成形品1では、射出成形と異なり、樹脂が大きく流動しないため、素材自体の模様や文字などをそのまま生かすこともできる。
【0048】
本発明の樹脂成形品1は、たとえば、
図4(a)(b)に示すような上プレート4と下プレート5を備えた金型や、
図5(a)(b)に示すような上プレート4と下プレート5に加えて中板6を備えた金型を用いて成形することができる。
【0049】
図4(a)(b)に示す金型は上プレート4と下プレート5を備えている。上プレート4と下プレート5には、製品形状の凹部(以下、上プレート4の凹部を「上凹部」4aと、下プレート5の凹部を「下凹部」5aという)が設けられている。この金型を用いる場合、下凹部5aに粉砕片2等の材料を入れ、その上から上プレート4を被せる。この状態で金型を熱プレス機に入れ、所定条件で熱プレスを行う。熱プレス後、金型を取り出して当該金型を冷却する。金型が十分に冷却されたところで金型を開き、樹脂成形品1を取り出すことで平板状の樹脂成形品1を得ることができる。
【0050】
図5(a)(b)に示す金型は上プレート4と下プレート5と中板6を備えている。上プレート4と下プレート5は平坦板であり、上凹部4aや下凹部5aは設けられていない。一方、上プレート4と下プレート5の間に配置される中板6には、所望形状(図示する例ではクローバーの形状)の貫通孔6aが形成されている。
【0051】
この金型を用いる場合、下プレート5に載置した中板6の貫通孔6aに粉砕片2等の材料を入れ、その上から上プレート4を被せる。この状態で金型を熱プレス機に入れ、所定条件で熱プレスを行う。熱プレス後、金型を取り出して当該金型を冷却する。金型が十分に冷却されたところで金型を開き、取り出すことで平板状の樹脂成形品1を得ることができる。
【0052】
図5(a)の金型は薄い三枚のプレート(上プレート4、下プレート5及び中板6)で構成されるため、
図5(b)に示すように、そのまま水没させることができ、冷却の工程を簡略化することができる。
【0053】
図5(a)の金型を用いる場合、中板6に代えて、
図6に示すような型枠7を用いることもできる。型枠7には、たとえば、樹脂製のものを用いることができる。この場合、熱プレスによって型枠7と粉砕片2等の材料は一体化され、かつ製品の端面が型枠7で保護される。型枠7を用いる場合も、これまでの樹脂成形品1にはない意匠性を備えた製品を作ることが可能である。なお、型枠7には樹脂製以外のものを用いることもできる。
【0054】
図5(a)(b)に示す中板6の貫通孔6aや
図6に示す型枠7の形状は一例であり、貫通孔6aや型枠7の形状はこれ以外であってもよい。たとえば、文字や数字、記号、図形、キャラクター、動物など、様々な形状とすることができる。中板6の貫通孔6aはレーザー加工によって形成することができる。型枠7はレーザー加工や樹脂成形により形成することができる。このような金型を用いて得られた樹脂成形品1は、キーホルダーなどとして利用することができる。
【0055】
なお、本発明は、前記各実施形態の構造、形状のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の樹脂成形品製造方法及び樹脂成形品1は、海洋プラスチックごみをメカニカルリサイクルによって再利用するものであり、海洋プラスチックごみ問題解決の一助となる点で産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0057】
1 樹脂成形品
2 粉砕片
3 被覆層
4 上プレート
4a 上凹部
5 下プレート
5a 下凹部
6 中板
6a 貫通孔
7 型枠