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特開2022-60301フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法
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  • 特開-フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法 図1
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  • 特開-フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060301
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017806
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2020071718の分割
【原出願日】2015-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2014219784
(32)【優先日】2014-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村本 穣
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正尚
(57)【要約】
【課題】フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、フィルム本体と、
フィルム本体の表面に形成された複数の凹部と、凹部の各々に充填されたフィラーと、を
備え、凹部の開口面の直径は少なくとも可視光波長よりも大きく、凹部の配列パターンは
フィルム本体の長さ方向に沿った周期性を有し、フィルム本体の一方の端部におけるフィ
ラーの充填率と、フィルム本体の他の部分におけるフィラーの充填率との差は0.5%未
満である、フィラー充填フィルムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム本体と、
前記フィルム本体の表面に形成された複数の凹部と、
前記凹部の各々に充填されたフィラーと、を備え、
前記凹部の開口面の直径は少なくとも可視光波長よりも大きく、
前記凹部の配列パターンは前記フィルム本体の長さ方向に沿った周期性を有し、
前記フィルム本体の一方の端部における前記フィラーの充填率と、前記フィルム本体の他の部分における前記フィラーの充填率との差は0.5%未満である、フィラー充填フィルム。
【請求項2】
前記フィルム本体は、長尺フィルムである、請求項1記載のフィラー充填フィルム。
【請求項3】
前記フィラーの充填率は、前記フィルム本体の長さ方向に沿った周期性を有する、請求項1または2に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項4】
全ての前記凹部は、略同一形状となっている、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項5】
前記フィルム本体の単位面積当りに充填されるフィラーの数は、50,000,000個/cm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項6】
前記フィラーは、前記凹部内で前記フィルム本体と一体化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項7】
前記フィルム本体の表面のうち、少なくとも一部に形成された被覆層を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項8】
前記被覆層は、前記凹部の表面、前記凹部間の凸部の表面、及び前記フィラーの露出面のうち、少なくとも一部に形成される、請求項7記載のフィラー充填フィルム。
【請求項9】
前記被覆層は、無機材料を含む、請求項7または8記載のフィラー充填フィルム。
【請求項10】
前記フィルム本体は、硬化性樹脂または可塑性樹脂で形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のフィラー充填フィルムを複数枚にカットすることで作製される、枚葉フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルムが積層された、積層フィルム。
【請求項13】
前記フィルム本体の裏面に形成された粘着層を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載のフィルムと、
前記フィルムが貼り合わされた基材と、を備える、貼合体。
【請求項15】
周面に複数の凸部が形成された円筒または円柱形状の原盤を準備するステップと、
長尺な被転写フィルムをロールツーロールで搬送する一方で、前記原盤の周面形状を前記被転写フィルムに転写することで、フィルム本体を作製するステップと、
前記フィルム本体の表面に形成された複数の凹部にフィラーを充填するステップと、を含み、
前記凹部の開口面の直径は少なくとも可視光波長よりも大きく、
前記フィルム本体の一方の端部における前記フィラーの充填率と、前記フィルム本体の他の部分における前記フィラーの充填率との差は0.5%未満である、フィラー充填フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なエンボスフィルムが開発され、使用されている。このようなエンボスフィルムとして、凹部の直径が1μm以上であり、かつ、凹部の配列パターンがエンボスフィルムの長さ方向に沿った周期性を有するものが知られている。すなわち、このようなエンボスフィルムでは、同じ配列パターンがエンボスフィルムの長さ方向に繰り返し形成される。
【0003】
このようなエンボスフィルムは、例えばフィラー充填フィルムとして使用される。フィラー充填フィルムは、エンボスフィルムの凹部にフィラーを充填したものである。
【0004】
また、このようなエンボスフィルムは、スタンパ原盤を用いて作製される。スタンパ原盤は、平板状の基板の表面(転写面)に上記配列パターンの反転形状(すなわち、複数の凸部)が形成されたものである。そして、スタンパ原盤の転写面形状を被転写フィルムに順次転写していくことで、エンボスフィルムを作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-258751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スタンパ原盤を用いてエンボスフィルムを作製する方法では、被転写フィルムに対するスタンパ原盤の位置決め等を正確に行うことが非常に難しいという問題があった。このため、この方法で作製されたエンボスフィルムでは、凹部の不良(位置ずれ、欠損、歪み等)が発生しやすいという問題があった。不良となった凹部には、フィラーが充填されない場合がありうる。また、凹部の不良は、フィラー充填フィルムが長くなるほど大きくなりやすい。このため、フィラーの充填率がフィラー充填フィルムの長さ方向でばらつくという問題が生じうる。
【0007】
なお、特許文献1には、モスアイフィルムをロールツーロールで作製する方法を開示する。この方法では、まず、周面にモスアイフィルムの反転形状が形成された円柱形状の原盤を用意する。そして、原盤の周面形状をフィルムに転写することで、モスアイフィルムを作製する。しかし、このモスアイフィルムでは、凹凸の直径が非常に小さい(1μm未満)ため、上記の問題を何ら解決することができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フィラーの充填率がより安定した、新規かつ改良されたフィラー充填フィルム、枚葉フィルム、積層フィルム、貼合体、及びフィラー充填フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、フィルム本体と、フィルム本体の表面に形成された複数の凹部と、凹部の各々に充填されたフィラーと、を備え、凹部の開口面の直径は少なくとも可視光波長よりも大きく、凹部の配列パターンはフィルム本体の長さ方向に沿った周期性を有し、フィルム本体の一方の端部におけるフィラーの充填率と、フィルム本体の他の部分におけるフィラーの充填率との差は0.5%未満である、フィラー充填フィルムが提供される。
【0010】
ここで、フィルム本体は、長尺フィルムであってもよい。
【0011】
また、フィラーの充填率は、フィルム本体の長さ方向に沿った周期性を有していてもよい。
【0012】
また、全ての凹部は、略同一形状となっていてもよい。
【0013】
また、フィルム本体の単位面積当りに充填されるフィラーの数は、50,000,000個/cm以下であってもよい。
【0014】
また、フィラーは、凹部内でフィルム本体と一体化されていてもよい。
【0015】
また、フィルム本体の表面のうち、少なくとも一部に形成された被覆層を備えていていてもよい。
【0016】
また、被覆層は、凹部の表面、凹部間の凸部の表面、及びフィラーの露出面のうち、少なくとも一部に形成されていていてもよい。
【0017】
また、被覆層は、無機材料を含んでいてもよい。
【0018】
また、フィルム本体は、硬化性樹脂または可塑性樹脂で形成されていてもよい。
【0019】
本発明の他の観点によれば、上記フィラー充填フィルムを複数枚にカットすることで作製される、枚葉フィルムが提供される。
【0020】
本発明の他の観点によれば、上記のフィルムが積層された、積層フィルムが提供される。
【0021】
ここで、フィルム本体の裏面に形成された粘着層を備えていてもよい。
【0022】
本発明の他の観点によれば、上記フィルムと、上記フィルムが貼り合わされた基材と、を備える、貼合体が提供される。
【0023】
本発明の他の観点によれば、周面に複数の凸部が形成された円筒または円柱形状の原盤を準備するステップと、長尺な被転写フィルムをロールツーロールで搬送する一方で、原盤の周面形状を被転写フィルムに転写することで、フィルム本体を作製するステップと、フィルム本体の表面に形成された複数の凹部にフィラーを充填するステップと、を含み、凹部の開口面の直径は少なくとも可視光波長よりも大きく、フィルム本体の一方の端部におけるフィラーの充填率と、フィルム本体の他の部分におけるフィラーの充填率との差は0.5%未満である、フィラー充填フィルムの製造方法が提供される。
【0024】
本発明の上記各観点によるフィラー充填フィルムでは、フィルム本体の一方の端部におけるフィラーの充填率と、フィルム本体の他の部分におけるフィラーの充填率との差は0.5%未満である。したがって、フィラーの充填率がより安定する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、フィラーの充填率がより安定する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るフィラー充填フィルムの構成を模式的に示す平面図である。
図2】同実施形態に係るフィラー充填フィルムの構成を模式的に示す側断面図である。
図3】フィラー充填フィルムの各部分からフィルム開始点までの距離と各部分のフィラー充填率との対応関係を模式的に示すグラフである。
図4】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図5】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図6】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図7】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図8】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図9】フィラー充填フィルムの変形例を模式的に示す側断面図である。
図10】フィルム本体を作製するための転写装置の構成を模式的に示す説明図である。
図11】露光装置の構成例を示すブロック図である。
図12】原盤の構成例を模式的に示す斜視図である。
図13】フィルム本体の一例を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
図14】フィルム本体の一例を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
<1.フィラー充填フィルムの構成>
まず、図1図3に基づいて、本実施形態に係るフィラー充填フィルム1の構成について説明する。図1に示すように、フィラー充填フィルム1は、フィルム本体2と、フィルム本体2の表面に形成された複数の凹部3と、凹部3の各々に充填されたフィラー4とを備える。
【0029】
フィルム本体2は、複数の凹部3が形成されるフィルムである。フィルム本体2を構成する材料は特に問われない。例えば、フィルム本体2は、任意の硬化性樹脂または可塑性樹脂で形成されていてもよい。ここで、硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂(より詳細には、熱により溶融する結晶性樹脂)等が挙げられる。したがって、フィルム本体2は、例えば光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1種以上で形成されていてもよい。フィルム本体2が光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂で形成される場合、フィルム本体2は、シート状の被転写基材フィルム161と被転写基材フィルム161上に形成された硬化樹脂層162aとで構成されてもよい(図10参照)。硬化樹脂層162aは、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂が硬化した層である。硬化樹脂層162aの表面に凹部3が形成される。硬化性樹脂と被転写基材フィルムを構成する樹脂とが混合された状態でフィルム本体2が成膜されてもよい。
【0030】
また、フィルム本体2の厚さも特に問われない。フィルム本体2の厚さは、上述した被転写基材フィルム161の有無によって調整されてもよい。例えば、フィルム本体2の厚さは、フィルム本体2が被転写基材フィルム161を有する場合、10~300μmであってもよい。この場合、硬化樹脂層162aの厚さは1~50μmであってもよく、被転写基材フィルム161の厚さは9~250μmであってもよい。一方、フィルム本体2が被転写基材フィルム161を有しない場合、フィルム本体2の厚さは8~200μmであってもよい。
【0031】
また、フィルム本体2の幅も特に問われない。例えば、フィルム本体2の幅は0.05~300cmであってもよい。フィルム本体2の長さも特に問われない。ただし、フィルム本体2が長尺フィルムとなる場合、後述するフィラー充填率のばらつきが大きくなりやすい。したがって、フィルム本体2が長尺フィルムとなる場合、本実施形態の効果がより顕著に現れる。例えば、フィルム本体2の長さの下限値は、5m、10m、30m、50m、100m、200m、300m、及び500mのいずれかであってもよい。
【0032】
凹部3は、フィルム本体2の表面に複数形成されている。凹部3の開口面の直径は、少なくとも可視光波長よりも大きい。ここで、凹部3の開口面の直径は、例えば凹部3の開口面を包含する最小の円(例えば凹部3の開口面の外接円)の直径である。凹部3の開口面の直径は、具体的には、0.8~500μmであることが好ましく、1.0~300μmであることがより好ましく、1.6μmより大きく300μm未満であることが更により好ましい。即ち、下限値は0.8μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.6μmより大きいことが更により好ましい。上限値は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、300μm未満が更により好ましい。
【0033】
凹部3の開口面の形状は特に問われず、任意の形状であってもよい。例えば、凹部3の開口面の形状は、円形、楕円形、および多角形などであってもよい。凹部3の開口面の形状が多角形となる場合、開口面の直径は多角形を構成する1辺の長さのうち、最長のものであってもよい。凹部3の開口面は、曲線を一部に有した形状でもよい。また開口面の面積は上述の開口面の条件を満たせば一定でなくともよい。また、開口面の形状は、最小面積の開口面を点とみなし、それ以上の面積を有する開口面をその形状により線、面として分類してもよい。線状の開口面は、最小面積の開口面を有する凹部3が線状に(すなわち1次元方向に)連結することで形成される。面状の開口面は、最小面積の開口面を有する凹部3が面状に(すなわち2次元方向に)連結することで形成される。したがって、線状、面状の凹部3は、最小面積の開口面を有する凹部3の集合体とみなせる。線や面の形状は特に限定されない。凹部3の集合体は、面と線とが結合したものであってもよい。凹部3の集合体は、1個の凹部3として計測される。また、図1に示す凹凸形状が逆転していてもよい。すなわち、凹部3が凸部となり、凹部3間の凸部3b(図2参照)が凹部となっていてもよい。
【0034】
凹部3の深さd(図2参照)は特に問われない。例えば、深さdは、0.08~30μmであってもよい。深さdは、0.08~15μmであることが好ましい。また、凹部3の開口面が矩形(正方形、または長方形)または略円形(真円、楕円、またはこれらに近似できる円)となる場合、凹部3のアスペクト比は0.1~10程度であってもよい。ここで、アスペクト比は、開口面の直径を深さdで除算した値である。
【0035】
凹部3の深さが30μmを超える、または凹部3のアスペクト比が10を超える場合、凹部3の形成が困難になるため好ましくない。また、凹部3の深さが0.08μm未満、または凹部3のアスペクト比が0.1未満の場合、フィラー4の充填が困難になる場合があるため好ましくない。
【0036】
また、フィルム本体2が被転写基材フィルム161を有する場合、凹部3は硬化樹脂層162aを貫通してもよい。ただし、フィルム本体2が被転写基材フィルム161を有しているか否かに関わらず、凹部3はフィルム本体2を貫通していないことが好ましい。
【0037】
また、各凹部3の形状(開口面形状、断面形状(図2に示す断面形状))は、フィルム本体2全体にわたって、略同一であることが好ましい。凹部3の断面形状または開口面の形状が略同一である場合、フィラー充填フィルム1における凹部3の形成状態の把握がより容易になるため好ましい。
【0038】
また、凹部3の配列パターンは、フィルム本体2の長さ方向Pに沿った周期性を有する。具体的には、凹部3の配列パターンは、単位配列パターンMがフィルム本体2の長さ方向に繰り返される配列パターンとなっている。図1の例では、単位配列パターンMは、長さ方向Pに垂直な方向に並んだ2列の凹部3で構成される。各列の凹部3は、等間隔で並んでいる。また、各列の凹部3は、他方の列の凹部3同士の間に配置される。そして、単位配列パターンMが長さ方向Pに沿って繰り返されることで、六方格子配列パターンが形成される。六方格子配列パターンは、凹部3を最密に配列するパターンの一例である。もちろん、配列パターンはこの例に限られない。例えば配列パターンは正方格子配列パターンであってもよい。この場合、単位配列パターンは、長さ方向Pに垂直な方向に並んだ1列の凹部3で構成される。列内の凹部3は、等間隔で配置される。また、他の配列パターンとしては、斜方格子、平行体格子などの格子形状が挙げられる。また、任意に描画(点描)されたものでもよい。
【0039】
また、単位配列パターンMの幅MWはフィルム本体2の幅に一致する。一方、単位配列パターンMの長さMLは特に制限されない。例えば、後述する原盤110(図10参照)の周面に形成される凸部113の配列パターンに周期性がない場合、長さMLは、原盤110の円周の長さに一致する。一方、凸部113の配列パターンが原盤110の周方向に沿った周期性を有する場合、即ち凸部113の単位配列パターンが原盤110の周方向に繰り返される場合、長さMLは、凸部113の単位配列パターンの長さ(原盤110の周方向の長さ)に一致する。単位配列パターンMの長さMLは、単位配列パターンMが1列の凹部3で構成される場合に最小となる。すなわち、この場合、長さMLは凹部3の直径程度となる。一方、凸部113の配列パターンに周期性がない場合に最大となる。この場合、長さMLは原盤110の円周長さに一致する。したがって、単位配列パターンMの長さMLの範囲は非常に広範となる。なお、原盤110の直径は特に制限されないが、例えば50~300mmとなる。
【0040】
ここで、凹部3の配列パターンは、フィルム本体2の長さ方向と直行する方向(フィルム本体2の幅方向)に対しても周期性を有していてもよい。即ち、フィルム本体2の幅方向に沿って同一の配列パターンが繰り返されてもよい。フィルム本体2の長さ方向Pに沿った周期性と、これと直行する方向の周期性とは同じであっても異なっていてもよい。フィラー充填フィルム1を枚葉化した場合に、略同一の枚葉フィルムを得ることができるためである。
【0041】
また、凹部3の面密度、すなわちフィルム本体2の単位面積当りに形成される凹部3の個数は特に制限されない。例えば、当該個数は、50,000,000個/cm以下であってもよい。凹部3の面密度が50,000,000個/cmを超える場合、凹部3を形成する際に、原盤110とフィルム本体2との接触面積が増加し、原盤110とフィルム本体2との離型性が低下して凹部3が形成されにくくなるため好ましくない。なお、凹部3の面密度の下限値は、特に限定されないが、例えば、100個/cm以上であってもよい。
【0042】
なお、1つの凹部3に1つのフィラー4が充填される場合、凹部3の面密度は、フィラー4の面密度、すなわちフィルム本体2の単位面積当りに充填されるフィラー4の個数に一致する。また、凹部3間の距離も特に制限されない。例えば、凹部3間の距離の下限値は0.5μmであってもよい。より詳細には、凹部3間の距離の下限値は、フィラー4の
最小直径の5/8以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。凹部3間の距離の上限値は特に制限はないが、1000μm程度であってもよい。ここで、凹部3間の距離は、開
口面の中心点間距離であってもよい。
【0043】
また、凹部3の欠損は、長さ方向Pに連続して生じる場合もありえるが、そのような場合であっても、連続した欠損は非常に少ない。ここで、凹部3の欠損とは、凹部3が形成されなかったこと(言い換えれば、凸部113(図10参照)の形状がフィルム本体2に転写されなかったこと)を意味する。また、長さ方向Pに連続した欠損とは、長さ方向Pに平行な直線上で連続して発生する欠損を意味する。本実施形態では、長さ方向Pに連続した欠損は、10個以下、好ましくは5個以下となる。
【0044】
図13及び図14にフィルム本体2の一例を示す。図13及び図14は、いずれもフィルム本体2のSEM写真である。図13Aおよび図14Aは、フィルム本体2の表面を観察したSEM画像であり、図13Bおよび図14Bは、図13Aおよび図14Aに示す転写物をX-XX線にて切断した断面を観察したSEM画像である。図13Aおよび図14Aの上下方向は、図1の長さ方向Pであり、左右方向はフィルム本体2の幅方向である。図13Aでは、開口面の形状が円形となっており、凹部3の配列パターンは六方格子状配列パターンとなっている。また、図14Aでは、開口面の形状が正方形となっており、凹部3の配列パターンは正方格子状配列パターンとなっている。
【0045】
フィラー4は、凹部3に充填されるものである。充填とは、フィラーの過半が凹部3に埋入されている状態を指す。なお、1つの凹部3に1つのフィラー4が充填されることが好ましい。ただし、凹部3の集合体には、複数のフィラー4が充填される場合がありうる。フィラー4を構成する材料(組成)は特に問われず、フィラー充填フィルム1の用途に応じて適宜選択されればよい。例えば、フィラー4は、無機物、有機物、無機物が多層構造をとっているもの、無機物(無機材料)と有機物(有機材料)の混在物(例えば、有機物からなる微小固形物を無機物で被覆したもの)などを用いることができる。具体的には、フィラー4は、顔料、染料、結晶性無機物などであってもよい。また、フィラー4は、結晶性の有機材料または無機材料を解砕したものであってもよい。また、全ての凹部3に同じフィラー4を充填してもよく、異なる種類のフィラー4を充填してもよい。例えば、凹部3の開口面の直径が異なる場合、それらに応じた直径のフィラー4を充填してもよい。フィラー4の形状は特に問われない。フィラー4の形状は、等方性を有するもの、例えば球形であってもよい。また、フィラーの比重は特に制限されないが、例えば0.8~23であってもよい。フィラーの大きさは、フィラーの最大長が、凹部3の開口面の最小長以下であることが好ましい。フィラーは種々の物性や機能性が付与されたものであってもよい。
【0046】
また、フィラー4は凹部3内でフィルム本体2と一体化されていても良い。フィルム本体2との一体化は、例えば、凹部3の一部だけを硬化させた状態でフィラー4を凹部3に充填し、その後、凹部3を完全に硬化させればよい。また、フィラー4を凹部3に充填させた後、未硬化の硬化性樹脂をフィラー充填フィルム1の表面に塗布または散布し、硬化性樹脂を硬化させてもよい。
【0047】
本実施形態では、フィラー4の充填率(以下、「フィラー充填率」とも称する)は非常に安定している。すなわち、フィルム本体2の一方の端部Fにおけるフィラー充填率と、フィルム本体2の他の部分におけるフィラー充填率との差は0.5%未満、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下である。
【0048】
ここで、一方の端部Fは、後述する原盤110によって最初に凹部3が形成される側の端部、すなわち転写の開始点である。一方、他方の端部Rは、原盤110によって最後に凹部3が形成される側の端部、すなわち転写の終了点である。本実施形態では、一方の端部Fから他方の端部Fに向かう方向を長さ方向Pの正方向とする。そして、フィルム本体2の各部分(地点)におけるフィラー充填率は、例えば以下のように算出される。
【0049】
すなわち、着目した部分を含む単位配列パターンMを抽出し、この単位配列パターンMに対して長さ方向Pの正方向側に配置される所定個数m(mは0以上の任意の整数)の単位配列パターンMを抽出する。そして、抽出された単位配列パターンMを計測対象領域とする。
【0050】
そして、計測対象領域内に複数の代表領域を設定し、各代表領域内のフィラー4の個数を光学顕微鏡観察等によって計測する。そして、各代表領域の測定値の総和を各代表領域内に存在するフィラー4の理想個数の総和で除算することで、フィラー充填率を計測する。ここで、代表領域内に存在するフィラー4の理想個数は、代表領域内に存在すべきフィラー4の個数である。すなわち、代表領域内で凹部3の欠損が一切存在せず、かつ、代表領域内の全ての凹部3にフィラー4が過不足無く充填されたと仮定した場合に計測されるフィラー4の個数である。
【0051】
フィラー充填率は、何らかの原因により100(%)を下回る場合がある。この原因としては、凹部3の位置ずれ(本来形成されるべき位置とは異なる位置に凹部3が形成されること)、凹部3の欠損、歪み(本来の形状とは異なる形状となること)等が挙げられる。凹部3の位置ずれ、歪みが生じた場合、フィラー4は凹部3に充填されない可能性がある。凹部3の欠損が発生した場合、フィラー4が充填されるべき凹部3が存在しない。したがって、いずれの場合にもフィラー充填率は減少する。図1では、地点Xにおける単位配列パターンM内で2つの凹部3aが欠損している。また、他の端部Rにおける単位配列パターンM内で1つの凹部3aが欠損している。
【0052】
フィラー充填率の分布は様々な態様がありうる。例えば、フィラー充填率は、長さ方向Pに沿った周期性を有する場合がある。具体的には、図3のグラフL1が示すように、各部分におけるフィラー充填率は、長さ方向Pに沿って波打った分布になる場合がある。
【0053】
ここで、図3の横軸はフィルム本体2の開始点からフィルム本体2上の各部分までの距離(すなわち、長さ方向距離)を示し、縦軸はフィラー充填率を示す。グラフL1は、本実施形態に係るフィラー充填フィルム1の長さ方向距離とフィラー充填率との対応関係を示す。一方、グラフL2は、従来の(すなわちスタンパ原盤を用いて作製された)フィラー充填フィルムの長さ方向距離とフィラー充填率との対応関係を示す。
【0054】
グラフL1、L2が示すように、本実施形態に係るフィラー充填フィルム1及び従来のフィラー充填フィルムのいずれにおいても、フィラー充填率は、長さ方向に沿って波打った分布となっている。ただし、本実施形態に係るフィラー充填フィルム1ではフィラー充填率のばらつきが小さいのに対し、従来のフィラー充填フィルムでは、フィラー充填率のばらつきが非常に大きい。そして、従来のフィラー充填フィルムでは、フィルム本体が長くなるほど、フィラー充填率のばらつきが大きくなる。これに対し、本実施形態では、後述する実施例に示す通り、フィルム本体2が長くなってもフィラー充填率のばらつきを抑えることができる。すなわち、本実施形態では、各部分におけるフィラー充填率と一方の端部Fにおけるフィラー充填率との差は0.5%未満に抑えられる。
【0055】
<2.各種変形例>
次に、図4図9に基づいて、フィラー充填フィルム1の各種変形例について説明する。図4に示すフィラー充填フィルム1aは、上述したフィラー充填フィルム1に被覆層5を追加したものである。被覆層5は、フィルム本体2の表面、すなわち、凹部3の表面(壁面及び底面)と、凹部3間の凸部3bの表面(先端面)とを覆う。なお、被覆層5は、凹部3の表面及び凸部3bの表面のうち、いずれか一方のみを覆っても良い。フィラー4は、被覆層5で覆われた凹部3内に充填される。
【0056】
ここで、被覆層5を構成する材料(組成)は特に制限されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。被覆層5を構成する材料は、フィラー充填フィルム1aの用途に応じて適宜選択されればよいが、フィルム本体2と異なる材料で構成されることが好ましい。例えば、被覆層5は、無機層であってもよい。被覆層5は、例えば被覆層5を構成する材料をフィルム本体2に蒸着することにより形成される。被覆層5の層厚は特に問われないが、凹部3の形状に関わらず、フィルム本体2の表面上で略均一であることが好ましい。また、凹部3の表面に形成される部分は、凹部3の中空部分の30体積%以下の割合で凹部3の表面に形成されることが好ましい。また、蒸着の方法は特に問われない。例えば斜方蒸着を行うことで、凹部3の一部にのみ(即ち、傾斜して)被覆層5を形成してもよい。この場合、凹部3の壁面を傾斜させることができるので、フィラー4を凹部3に充填しやすくなる。被覆層5を有機材料で構成する場合は、有機材料を塗布もしくは散布することで被覆層5を形成してもよい。このときも、開口面と散布される方向が傾斜してもよい。
【0057】
図5に示すフィラー充填フィルム1bは、図4に示すフィラー充填フィルム1aの表面にさらに被覆層6を形成したものである。被覆層6は、被覆層5のうち、凸部3bを覆う部分と、フィラー4の露出面とを覆う。ここで、フィラー4の露出面は、凹部3の開口面を介して外部に露出される面を意味する。被覆層6を構成する材料も特に制限されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。被覆層6を構成する材料は、フィラー充填フィルム1bの用途に応じて適宜選択されればよい。例えば、被覆層6は、被覆層5と同じ無機材料で構成されていてもよく、異なる無機材料で構成されていてもよい。被覆層6は被覆層5と同様の方法で形成される。
【0058】
図6に示すフィラー充填フィルム1cは、フィラー充填フィルム1の表面に被覆層7を形成したものである。被覆層7は、凸部3bの表面と、フィラー4の露出面とを覆う。被覆層7を構成する材料(組成)は特に制限されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。被覆層7を構成する材料は、フィラー充填フィルム1cの用途に応じて適宜選択されればよい。例えば、被覆層7は、無機層であってもよい。被覆層7は被覆層5と同様の方法で形成される。
【0059】
図7に示すフィラー充填フィルム1dは、フィルム本体2の裏面(凹部3が形成された面と反対側の面)に粘着層8を形成したものである。このフィラー充填フィルム1dは、粘着層8を介して他の物体(例えば本実施形態に係る他のフィラー充填フィルム、任意の基材等)に張り合わされてもよい。なお、粘着層8は、図4~6に示すフィラー充填フィルム1a~1cに形成されていても良いことはもちろんである。
【0060】
図8に示す積層フィルム20は、2枚のフィラー充填フィルム1が粘着層8を介して貼り合わされたものである。図8に示す積層フィルム20では、積層枚数は2枚であるが、積層枚数がこれに限られないことはもちろんである。また、各フィラー充填フィルム1の凹部3の配列パターンは同じであっても、異なっていてもよい。例えば、各フィラー充填フィルム1の凹部3の配列パターンは、互いに相似形であってもよい。また、各フィラー充填フィルム1に同じフィラー4を充填してもよいし、フィラー充填フィルム1毎に異なるフィラー4を充填してもよい。
【0061】
積層フィルム20は、図7に示すフィラー充填フィルム1dを積層することで作製されてもよい。また、積層フィルム20は、フィラー充填フィルム1の表面に粘着層8を塗工し、その上に他のフィラー充填フィルム1を貼り付けるという工程を繰り返すことで作製してもよい。なお、図4~6に示すフィラー充填フィルム1a~1cを積層しても良いことはもちろんである。
【0062】
図9に示す貼合体30は、基材31の表面に粘着層8を介してフィラー充填フィルム1を貼りあわせたものである。基材31の種類は特に制限されない。基材31は、平面状の部材(例えばフィルム、板)であっても良いし、立体状の部材(例えば各種筐体等)であっても良い。また、フィラー充填フィルム1a~1d、積層フィルム20、及び後述する枚葉フィルムが基材31に貼り合わされてもよい。
【0063】
<3.枚葉フィルム>
上述したフィラー充填フィルム1は、複数枚にカットされることで枚葉フィルムとされてもよい。本実施形態に係るフィラー充填フィルム1では、全域でフィラー充填率を安定化させることができるので、同質の枚葉フィルムを複数作製することができる。なお、上述した各変形例に係るフィルムも同様に枚葉フィルムとされてもよい。
【0064】
上記各フィルムの用途は特に制限されないが、例えばプリンテッド・エレクトロニクスやその応用分野(関連分野)等に使用されてもよい。また、上述の分野に限らず、機能性フィルム(デバイス)として使用されてもよい。例えば、バイオセンサや診断デバイスのような医療やバイオ、ヘルスケア、ライフサイエンス等に使用されてもよく、光学素子であってもよい。また、バッテリーやエネルギー関連、車載(自動車)関連に使用してもよい。
【0065】
<4.転写装置の構成>
フィルム本体2は、ロールツーロール方式の転写装置によって製造可能である。以下では、図10を参照して、転写装置の一例である転写装置100の構成について説明する。図10に示す転写装置100では、光硬化性樹脂を用いてフィルム本体2を作製する。
【0066】
転写装置100は、原盤110と、基材供給ロール151と、巻取ロール152と、ガイドロール153、154と、ニップロール155と、剥離ロール156と、塗布装置157と、光源158とを備える。
【0067】
原盤110は円筒または円柱形状の部材であり、原盤110の周面には、複数の凸部113が形成される。これらの凸部113は、上述した凹部3の反転形状となっている。すなわち、転写装置100では、原盤110の周面に形成された凸部113の配列パターンを被転写フィルム2aに転写することで、フィルム本体2を作製する。
【0068】
原盤110を構成する材料、原盤110のサイズ(直径等)は特に問われない。例えば、原盤110は、溶融石英ガラスまたは合成石英ガラスなどの石英ガラス(SiO)、ステンレス鋼等で構成されていてもよい。原盤110の直径(外径)は、50~300mmであってもよい。原盤110が円筒形状となる場合、厚みは2~50mmであってもよい。
【0069】
原盤110の周面に凸部113を形成する方法は特に問われない。例えば、凸部113は、原盤110の周面を機械的に切削することで作製されてもよく、エッチングにより作製されてもよい。原盤110をエッチングにより作製する工程の概要は以下のとおりである。すなわち、円筒または円柱形状の基材の周面をレジスト層で覆う。ついで、レジスト層のうち、凸部113が形成されない部分(凹部となる部分)にレーザ光を照射することで、レジスト層に潜像を形成する。なお、レーザ光を基材に照射する露光装置の構成例については後述する。ついで、レジスト層を現像することで、潜像部分を除去する。ついで、レジスト層をマスクとして基材をエッチングする。これにより、凸部113間の部分がエッチングされるので、凸部113が形成される。また、原盤110の周面には、原盤110の周面上の位置を示すマーキングが施されていてもよい。このようなマーキングを被転写フィルム2aに転写することで、転写の進捗を確認することができる。なお、原盤110にマーキングを施す代わりに、原盤110に形成される凸部113の一部を意図的にずらして形成してもよい。この場合、当該凸部113に対応する凹部3の位置もずれるので、その凹部3がマーキングの代わりになる。なお、凸部113の位置ずれはフィルム本体2の品質に影響が出ない範囲内で設定されることが好ましい。
【0070】
図12に、原盤110の一例を示す。原盤110の周面には、複数の凸部113が形成されている。凸部113の配列パターンは、図1に示す凹部3の配列パターンの反転形状となっている。すなわち、凸部113の配列パターンは六方格子状配列パターンとなっており、原盤110の軸方向A、周方向Bのいずれの方向に対しても周期性を有している。
【0071】
基材供給ロール151は、長尺な被転写基材フィルム161がロール状に巻かれたロールであり、巻取ロール152は、フィルム本体2を巻き取るロールである。また、ガイドロール153、154は、被転写基材フィルム161を搬送するロールである。ニップロール155は、未硬化樹脂層162が積層された被転写基材フィルム161、すなわち被転写フィルム2aを原盤110に密着させるロールである。剥離ロール156は、硬化樹脂層162aが積層された被転写基材フィルム161、すなわちフィルム本体2を原盤110から剥離するロールである。
【0072】
塗布装置157は、コーターなどの塗布手段を備え、未硬化の光硬化樹脂組成物を被転写基材フィルム161に塗布し、未硬化樹脂層162を形成する。塗布装置157は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、またはダイコーターなどであってもよい。また、光源158は、光硬化樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源であり、例えば、紫外線ランプなどであってもよい。
【0073】
なお、光硬化性樹脂組成物は、所定の波長の光が照射されることにより流動性が低下し、硬化する樹脂である。具体的には、光硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂などの紫外線硬化樹脂であってもよい。また、光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、開始剤、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電防止剤、または増感色素などを含んでもよい。
【0074】
転写装置100では、まず、基材供給ロール151からガイドロール153を介して、被転写基材フィルム161が連続的に送出される。なお、送出の途中で基材供給ロール151を別ロットの基材供給ロール151に変更してもよい。送出された被転写基材フィルム161に対して、塗布装置157により未硬化の光硬化樹脂組成物が塗布され、被転写基材フィルム161に未硬化樹脂層162が積層される。これにより、被転写フィルム2aが作製される。被転写フィルム2aは、ニップロール155により、原盤110と密着させられる。光源158は、原盤110に密着した未硬化樹脂層162に光を照射することで、未硬化樹脂層162を硬化する。これにより、原盤110の外周面に形成された凸部113の配列パターンが未硬化樹脂層162に転写される。すなわち、凹部3が形成された硬化樹脂層162aが形成される。ここで、光源158は、凹部3に対して斜めに光を照射してもよい。この場合、凹部3の一部だけが硬化される。続いて、硬化樹脂層162aが積層された被転写基材フィルム161、すなわちフィルム本体2は、剥離ロール156により原盤110から剥離される。ついで、フィルム本体2は、ガイドロール154を介して、巻取ロール152によって巻き取られる。
【0075】
このように、転写装置100では、被転写フィルム2aをロールツーロールで搬送する一方で、原盤110の周面形状を被転写フィルム2aに転写する。これにより、フィルム本体2が作製される。
【0076】
なお、フィルム本体2を熱可塑性樹脂で作製する場合、塗布装置157及び光源158は不要となる。また、被転写基材フィルム161を熱可塑性樹脂フィルムとし、原盤110よりも上流側に加熱装置を配置する。この加熱装置によって被転写基材フィルム161を加熱して柔らかくし、その後、被転写基材フィルム161を原盤110に押し付ける。これにより、原盤110の周面に形成された凸部113の配列パターンが被転写基材フィルム161に転写される。なお、被転写基材フィルム161を熱可塑性樹脂以外の樹脂で構成されたフィルムとし、被転写基材フィルム161と熱可塑性樹脂フィルムとを積層してもよい。この場合、積層フィルムは、加熱装置で加熱された後、原盤110に押し付けられる。
【0077】
したがって、転写装置100は、原盤110に形成された凸部113の配列パターンが転写された転写物、すなわちフィルム本体2を連続的に製造することができる。また、転写装置100を用いて作製されたフィルム本体2は、凹部3の不良の発生を抑えることができ、ひいては、フィラー充填率のばらつきを抑えることができる。
【0078】
<5.露光装置の構成>
次に、図11に基づいて、露光装置200の構成について説明する。露光装置200は、原盤110を形成する装置である。露光装置200は、レーザ光源221と、第1ミラー223と、フォトダイオード(Photodiode:PD)224と、偏向光学系225と、制御機構237と、第2ミラー231と、移動光学テーブル232と、スピンドルモータ235と、ターンテーブル236とを備える。また、基材110aは、ターンテーブル236上に載置され、回転することができるようになっている。
【0079】
レーザ光源221は、レーザ光220を発する光源であり、例えば、固体レーザまたは半導体レーザなどである。レーザ光源221が発するレーザ光220の波長は、特に限定されないが、例えば、400nm~500nmの青色光帯域の波長であってもよい。また、レーザ光220のスポット径(レジスト層に照射されるスポットの直径)は、凹部3の開口面の直径より小さければよく、例えば200nm程度であればよい。レーザ光源221から発せられるレーザ光220は制御機構237によって制御される。
【0080】
レーザ光源221から出射されたレーザ光220は、平行ビームのまま直進し、第1ミラー223で反射され、偏向光学系225に導かれる。
【0081】
第1ミラー223は、偏光ビームスプリッタで構成されており、偏光成分の一方を反射させ、偏光成分の他方を透過させる機能を有する。第1ミラー223を透過した偏光成分は、フォトダイオード224によって受光され、光電変換される。また、フォトダイオード224によって光電変換された受光信号は、レーザ光源221に入力され、レーザ光源221は、入力された受光信号に基づいてレーザ光220の位相変調を行う。
【0082】
また、偏向光学系225は、集光レンズ226と、電気光学偏向素子(Electro Optic Deflector:EOD)227と、コリメータレンズ228とを備える。
【0083】
偏向光学系225において、レーザ光220は、集光レンズ226によって、電気光学偏向素子227に集光される。電気光学偏向素子227は、レーザ光220の照射位置を制御することが可能な素子である。露光装置200は、電気光学偏向素子227により、移動光学テーブル232上に導かれるレーザ光220の照射位置を変化させることも可能である。レーザ光220は、電気光学偏向素子227によって照射位置を調整された後、コリメータレンズ228によって、再度、平行ビーム化される。偏向光学系225から出射されたレーザ光220は、第2ミラー231によって反射され、移動光学テーブル232上に水平かつ平行に導かれる。
【0084】
移動光学テーブル232は、ビームエキスパンダ(Beam expader:BEX)233と、対物レンズ234とを備える。移動光学テーブル232に導かれたレーザ光220は、ビームエキスパンダ233により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ234を介して、基材110aのレジスト層に照射される。また、移動光学テーブル232は、基材110aが1回転する毎に矢印R方向(送りピッチ方向)に1送りピッチだけ移動する。ターンテーブル236上には、基材110aが設置される。スピンドルモータ235はターンテーブル236を回転させることで、基材110aを回転させる。
【0085】
また、制御機構237は、フォーマッタ240と、ドライバ230とを備え、レーザ光220の照射を制御する。フォーマッタ240は、レーザ光220の照射を制御する変調信号を生成し、ドライバ230は、フォーマッタ240が生成した変調信号に基づいて、レーザ光源221を制御する。これにより、基材110aへのレーザ光220の照射が制御される。
【0086】
フォーマッタ240は、原盤110に描画する任意のパターンが描かれた入力画像に基づいて、原盤110にレーザ光220を照射するための制御信号を生成する。具体的には、まず、フォーマッタ240は、原盤110に描画する任意のパターンが描かれた入力画像を取得する。入力画像は、軸方向に原盤110の外周面を切り開いて一平面に伸ばした、原盤110の外周面の展開図に相当する画像である。次に、フォーマッタ240は、入力画像を所定の大きさの小領域に分割し(例えば、格子状に分割し)、小領域の各々に描画パターンが含まれるか否かを判断する。続いて、フォーマッタ240は、描画パターンが含まれると判断した各小領域にレーザ光220を照射するよう制御する制御信号に生成する。さらに、ドライバ230は、フォーマッタ240が生成した制御信号に基づいてレーザ光源221の出力を制御する。これにより、原盤110へのレーザ光220の照射が制御される。
【0087】
<6.フィラー充填フィルムの製造方法>
次に、フィラー充填フィルム1の製造方法について説明する。まず、上述した原盤110を準備する。ついで、転写装置100を用いて、被転写フィルム2aに原盤110の周面形状を転写する。これにより、フィルム本体2を作製する。ついで、フィルム本体2の表面に形成された複数の凹部3にフィラー4を充填する。ここで、凹部3にフィラー4を充填する方法は特に問われない。例えば、フィルム本体2の表面にフィラー4を分散させる。ついで、フィルム本体2の表面を布などでワイプする。これにより、フィラー4をフィルム本体2の表面に形成された凹部3に充填することができる。なお、凹部3の一部だけが硬化されている場合、フィラー4を凹部3に充填させた後に凹部3を完全に硬化させても良い。これにより、フィラー4が凹部3内でフィルム本体2と一体化される。なお、フィラー充填フィルム1に充填されたフィラー4を他のフィルム等に転写してもよい。さらに、このような転写フィルムを順次積層してもよい。また、更に他のフィルムで積層してもよい。すなわち、転写及び積層を繰り返すことで、フィラーの一部または全部が他のフィルムの定められた位置に設けられることになる。
【実施例0088】
(実施例)
次に、本発明の実施例を説明する。実施例では、転写装置100を用いてフィルム本体2を作製した。原盤110は、以下の工程により作製した。具体的には、4.5mm厚の円筒形状の石英ガラスからなる基材110aの外周面に、炭化水素系ガスを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)によりDLC(Diamond Like Carbon)を膜厚800nmにて成膜し、中間層とした。次に、中間層上にタングステン酸化物をスパッタ法により膜厚55nmにて成膜し、レジスト層とした。
【0089】
続いて、露光装置100によってレーザ光による熱リソグラフィを行い、レジスト層に潜像を形成した。なお、露光装置100のレーザ光源には、波長405nmのレーザ光を発する青色半導体レーザを用いた。露光パターンは、直径7μmの円を10μmピッチ(円の中心間距離)にて六方格子に配列した配列パターンを使用した。また、直径7μmの円が原盤上で凸部になるように(すなわち、直径7μmの円が転写後のフィルム本体2では凹部3になるように)、直径7μmの円以外の部分を露光装置100にて露光した。
【0090】
続いて、レジスト層が露光された基材110aをTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)の2.38質量%水溶液を用いて現像し、露光した部分のレジストを溶解させた。
【0091】
さらに、現像後のレジスト層をマスクに用いて、Oガスによる反応性イオンエッチングにて中間層をエッチングした。続いて、レジスト層および中間層をマスクに用いて、CF系ガスによる反応性イオンエッチングにて基材110aをエッチングした。なお、基材110aのエッチングは、フィルム本体2における凹部3のアスペクト比が1となるように凸部113の高さが7μmになるまで行った。以上の工程により、外周面に凹凸構造が形成された円筒形状の原盤110を作製した。
【0092】
続いて、50cm幅のPETからなる基材フィルム(厚さ50μm)に、アクリレート樹脂(M208、東亞合成)100質量部、光重合開始剤(IRGCUR184、BASF)2質量部を含有する光硬化樹脂組成物を膜厚30μmにて塗布した。さらに、転写装置100を用いて、原盤を基材フィルムに押圧し、1000m強分の基材フィルムに凹凸構造を転写した。光照射は高圧水銀灯で1000mJで行った。これにより、直径7μm、深さ7μm(アスペクト比1)の円形の凹部が、該凹部の中心間距離10μmにて六方格子状に配列されたフィルム本体2が作製された。
【0093】
また、1mmの代表領域を任意で100箇所抽出し、各代表領域内の凹部の数を光学顕微鏡で計測した。そして、各代表領域で計測された個数の総数を代表領域の総面積で除算することで、凹部3の面密度(フィルム本体2の単位面積当りに形成される凹部3の数)を算出した。この結果、凹部3の面密度は11,500個/mm=1,150,000個/cmとなった。ここで、カウント対象となる凹部3は、互いに連結していない(凹部3間に凸部3bが存在する)凹部3とした。すなわち、本実施例では、互いに連結された凹部3を不良と判定した。このような不良は、凹部3の位置ずれ等によって生じうる。
【0094】
また、日本触媒社製エポスターMA1006を準備し、この樹脂フィラーを平均直径が5μmとなるように分級した。樹脂フィラーの直径は、樹脂フィラーの各粒子を球とみなしたときの直径、即ち球相当径である。また、平均直径は、樹脂フィラーの直径の算術平均値である。分級は、画像型粒度分布計FPIA3000(シスメックス社、マルバーン社製)を用いて行った。分級後の樹脂フィラーをフィラー4として使用した。フィラー4の充填は、上述した方法で行った。すなわち、フィルム本体2の表面にフィラー4を分散した。ついで、フィラー4を布でワイプすることで、凹部3にフィラー4を充填した。これにより、フィラー充填フィルム1を作製した。
【0095】
また、1mmの代表領域を任意で100箇所抽出し、各代表領域内のフィラー4の数を光学顕微鏡で計測した。そして、各代表領域で計測された個数の総数を代表領域の総面積で除算することで、フィラー4の面密度(フィルム本体2の単位面積当りに形成される凹部3の数)を算出した。この結果、フィラー4の面密度は11,500個/mm=1,150,000個/cmとなった。なお、カウント対象となるフィラー4は、凹部3に完全に充填されているフィラー4とした。なお、凹部3同士が連結された場合であっても、その凹部3にフィラー4が完全に充填されている場合には、そのフィラー4もカウント対象とした。後述するフィラー充填率の計測でもカウント対象を同様とした。なお、2つの凹部3が連結されている場合、その凹部3には最大2個のフィラー4が充填されうる。
【0096】
そして、フィラー充填フィルム1の長さ方向Pの先端縁(原盤110に最初に投入される縁)から1mの地点を一方の端部F(開始点)、先端縁から1000mの地点を他方の端部R(終了点)とし、先端縁から1m、250m、500m、750m、1000mの各地点におけるフィラー充填率を算出した。
【0097】
具体的には、各地点を含む単位配列パターンMを抽出し、この単位配列パターンMに対して長さ方向Pの正方向側に10cm(フィルム幅の20%)の範囲内に存在する単位配列パターンMを抽出した。そして、これらの単位配列パターンMを計測対象領域とした。
【0098】
そして、計測対象領域内に200μm*200μmの代表領域を約25cm分設定し、各代表領域内のフィラー4の個数を光学顕微鏡観察によって計測した。そして、各代表領域の測定値の総和を各代表領域内に存在するフィラー4の理想個数の総和で除算することで、フィラー充填率を計測した。各地点でのフィラー充填率を以下の表1に示す。表1に示すように、フィラー充填フィルム1の長さが1000mとなる場合、先端縁から1mのフィラー充填率と、250m、500m、750m、1000mの各地点でのフィラー充填率とはほとんど変わらなかった。したがって、フィラー充填フィルム1の全長に対して、0.1%、25%、50%、75%、100%の地点で安定した(すなわち、再現性の高い)フィラー充填率が得られたことになる。
【0099】
【表1】
【0100】
また、先端縁から100m置きの地点で同様にフィラー充填率を計測したところ、表1とほぼ同様の値が得られた。このように、本実施例では、フィルム本体2の一方の端部Fにおけるフィラー充填率と、フィルム本体2の他の部分におけるフィラー充填率との差は0.1%以下であることが明らかとなった。また、フィラー充填フィルム1には、凹部3が六方格子状、すなわち最も密な配列パターンで配置されている。すなわち、フィラー充填フィルム1には、フィラー4が最も密な配列パターンで充填されている。そして、このような配列パターンであっても、フィラー充填フィルム1の長さ方向において非常に安定した(すなわち、非常に再現性の高い)フィラー充填率が得られている。したがって、フィラー4は凹部3を設けられる範囲であれば、いかなる配列パターンで充填したとしても、同様の効果が期待できる。
【0101】
また、上記代表領域で長さ方向Pに連続した凹部3の欠損を観察したところ、連続した欠損の数が10個以上となる箇所は確認できなかった。
【0102】
(比較例)
10cm*10cmの大きさのSUS板を機械的に切削することで、実施例と同様の配列パターンの凸部が形成されたスタンパ原盤を得た。また、スタンパ原盤の凸部が形成された面(凹凸面)には、フッ素系離型剤(ダイキン工業社製ダイフリーGA70500)をスプレーした。そして、転写装置100の原盤110をスタンパ原盤に置き換えた他は同様の処理を行うことで、フィルム本体を作製した。
【0103】
フィルム本体の凹部の形状を光学顕微鏡で観察したところ、スタンパを200回繰り返した地点(先端縁から20mの地点)で、凹部の不良(凹部同士の連結)が確認できた。そこで、スタンパを200回強繰り返した時点でスタンパを停止し、フィラーを凹部に充填した。フィラーは実施例と同様とした。そして、先端縁から200mの地点でのフィラー充填率を測定したところ、フィラー充填率は99.5%となった。その後、スタンパの回数が増える毎に凹部の不良の数が増大していった。したがって、スタンパ回数が増える毎にフィラー充填率のばらつきが大きくなり、フィラー充填率が99.5%よりも低い値になると推定される。
【0104】
以上の結果により、実施例では、比較例よりもフィラー充填率を高い範囲に維持できることが明らかとなった。
【0105】
以上により、本実施形態によるフィラー充填フィルム1では、フィラー充填率がより安定する。ここで、フィルム本体2は、長尺フィルムであってもよい。従来のフィラー充填フィルムでは、フィルム本体2が長尺になるほどフィラー充填率が安定しなくなるので、本実施形態の効果がより顕著に現れやすい。
【0106】
また、フィラー充填率は、フィルム本体2の長さ方向に沿った周期性を有していてもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。
【0107】
また、全ての凹部3は、略同一形状となっていてもよい。この場合、フィラー充填率がさらに安定しうる。
【0108】
また、フィルム本体2の単位面積当りに充填されるフィラーの数は、50,000,000個/cm以下であってもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。
【0109】
また、フィラー4は、凹部3内でフィルム本体2と一体化されていてもよい。この場合、フィラー4の無駄な抜けが抑えられるので、フィラー充填率がより安定する。
【0110】
また、フィルム本体2の表面のうち、少なくとも一部に形成された被覆層5、6、7を備えていていてもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。さらに、フィラー充填フィルム1の用途に応じて被覆層5、6、7を形成することで、フィラー充填フィルム1の用途が拡大される。
【0111】
また、被覆層は、凹部の表面、凹部間の凸部の表面、及びフィラーの露出面のうち、少なくとも一部に形成されていていてもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。
【0112】
また、被覆層は、無機材料を含んでいてもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。
【0113】
また、フィルム本体は、硬化性樹脂または可塑性樹脂で形成されていてもよい。この場合であっても、フィラー充填率が安定する。
【0114】
また、本実施形態では、フィラー充填フィルム1は枚葉フィルムとされてもよい。この場合、枚葉フィルムの品質が安定する。
【0115】
また、複数のフィルムが積層された積層フィルムが形成されていてもよい。この場合、積層フィルムの品質が安定する。
【0116】
また、フィルム本体の裏面に形成された粘着層を備えていていてもよい。これにより、フィラー充填フィルム1を容易に他の基材31等に貼り合わせることができる。
【0117】
また、本実施形態では、上記の各フィルムを基材31に貼り合わせることで、貼合体30を作製してもよい。この場合、貼合体30の機能が安定しうる。フィラー充填フィルム1等のフィラー充填率が安定しているからである。
【0118】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0119】
1、1a~1d フィラー充填フィルム
2 フィルム本体
3 凹部
4 フィラー
5、6、7 被覆層
8 粘着層

図1
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