(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060324
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】L-アラニル-L-グルタミンの結晶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/30 20060101AFI20220407BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C07K1/30
C07K5/062
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018925
(22)【出願日】2022-02-09
(62)【分割の表示】P 2018558025の分割
【原出願日】2017-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2016246116
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 一成
(57)【要約】
【課題】本発明は、粗比容の小さいL-アラニル-L-グルタミンの結晶、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミンの結晶及びその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶。
【請求項2】
安息角が50°以下である、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、13.7±0.2°、20.7±0.2°、及び34.9±0.2°にピークを有する、請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、さらに、21.5±0.2°、及び22.3±0.2°にピークを有する、請求項3に記載の結晶。
【請求項5】
下記の工程(1a)~(1c)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶の製造方法(ただし、nは0より大きい任意の数を表わす)。
(1a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液にエタノールを添加又は滴下することによりL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を析出させる工程、又は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をエタノール水溶液に懸濁することによりL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させる工程
(1b)該析出した、又は該転移したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を、前記L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液又はエタノール水溶液から採取する工程
(1c)該採取したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を通風乾燥することにより、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を取得する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料もしくは中間体等として有用であるL-アラニル-L-グルタミンの結晶、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-アラニル-L-グルタミンは、L-アラニンとL-グルタミンから構成されるジペプチドであり、L-グルタミンと同様に、細胞分裂のエネルギー源として利用されること、創傷治癒促進効果を有すること等が知られている。一方、安定性及び水に対する溶解度は、L-グルタミンと比べて大きく向上しているため、輸液の成分などの医薬品原料、化粧品、又は無血清培地の成分として幅広く用いられている。
【0003】
L-アラニル-L-グルタミンの結晶としては、無水和物(特許文献1)及び1水和物(特許文献2、並びに非特許文献1及び2)の結晶が知られている。これらの結晶は、例えば、発酵法、酵素法、又は化学合成法等により得られるL-アラニル-L-グルタミンの水溶液に溶媒を添加して晶析を行うことにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許第4931801号
【特許文献2】日本国特開昭36-11475号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bulletin of the Chemical Society of Japan (1961)、34、p739
【非特許文献2】Bulletin of the Chemical Society of Japan (1962)、35、p1966-1970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2並びに非特許文献1及び2に記載の製造方法では、L-アラニル-L-グルタミンの結晶成長速度が非常に遅いため、結晶が大型化しにくく、また、得られる結晶はいずれも針状結晶である。そのため、当該製造方法によって得られる結晶は、比容積と安息角がともに大きく、容器への充填率が低い、また、打錠性が悪い、という問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、粗比容の小さいL-アラニル-L-グルタミンの結晶、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の(1)~(17)に関する。
(1)粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミンの結晶。
(2)安息角が50°以下である、上記(1)に記載の結晶。
(3)結晶が、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶である、上記(1)又は(2)に記載の結晶。
(4)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、13.7±0.2°好ましくは±0.1°、20.7±0.2°好ましくは±0.1°、及び34.9±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(3)に記載の結晶。
(5)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、さらに、21.5±0.2°好ましくは±0.1°、及び22.3±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(4)に記載の結晶。
(6)結晶が、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶である、上記(1)又は(2)に記載の結晶(ただし、nは0より大きい任意の数、好ましくは0より大きく5以下の任意の数、より好ましくは0より大きく3以下の任意の数、さらに好ましくは0より大きく1以下の任意の数、特に好ましくは0より大きく1以下である任意の小数第1位までの数、最も好ましくは0より大きく1以下である任意の少数第2位までの数を表わす)。
(7)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、10.7±0.2°好ましくは±0.1°、20.7±0.2°好ましくは±0.1°、21.4±0.2°好ましくは±0.1°、23.3±0.2°好ましくは±0.1°、及び34.8±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(6)に記載の結晶。
(8)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、さらに、18.4±0.2°好ましくは±0.1°、24.7±0.2°好ましくは±0.1°、27.9±0.2°好ましくは±0.1°、及び32.3±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(7)に記載の結晶。
(9)結晶が、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶である、上記(1)又は(2)に記載の結晶。
(10)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、11.6±0.2°好ましくは±0.1°、23.3±0.2°好ましくは±0.1°、23.9±0.2°好ましくは±0.1°、27.9±0.2°好ましくは±0.1°、及び35.3°±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(9)に記載の結晶。
(11)粉末X線回折において、回折角(2θ°)が、さらに、7.9±0.2°好ましくは±0.1°、12.8±0.2°好ましくは±0.1°、18.3±0.2°好ましくは±0.1°、21.6±0.2°好ましくは±0.1°、及び24.7±0.2°好ましくは±0.1°にピークを有する、上記(10)に記載の結晶。
(12)下記の工程(1a)~(1c)を含む、上記(3)~(5)のいずれか1つに記載の結晶の製造方法[ただし、nは上記(6)と同義]。
(1a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液にエタノールを添加又は滴下することによりL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を析出させる工程、又は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をエタノール水溶液に懸濁することによりL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させる工程
(1b)該析出した、又は該転移したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を、前記L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液又はエタノール水溶液から採取する工程
(1c)該採取したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を通風乾燥することにより、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を取得する工程
(13)下記の工程(2a)~(2c)を含む、上記(3)~(5)のいずれか1つの結晶の製造方法。
(2a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に冷却することにより、又はL-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に保ちながら該水溶液にアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる少なくとも1の溶媒を添加又は滴下することにより、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させる工程
(2b)該析出したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を採取する工程
(2c)該採取したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を40℃以上で乾燥させることにより、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を取得する工程、
(14)下記の工程(1a)及び(1b)を含む、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の製造方法[ただし、nは上記(6)と同義]。
(1a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液にエタノールを添加又は滴下することによりL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を析出させる工程、又は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をエタノール水溶液に懸濁することによりL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させる工程
(1b)該析出した、又は該転移したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を、前記のL-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液又はエタノール水溶液から採取する工程
(15)下記の工程(2a)及び(2b)を含む、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法。
(2a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に冷却することにより、又はL-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に保ちながら該水溶液にアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる少なくとも1の溶媒を添加又は滴下することにより、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させる工程
(2b)該析出したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を該水溶液から採取する工程
(16)アルコール類が、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール及びイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1のアルコール類である、上記(13)又は(15)に記載の製造方法。
(17)ケトン類がアセトンである、上記(13)又は(15)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、粉体物性が改善されたL-アラニル-L-グルタミンの結晶、及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図2】
図2は、実施例2で得られた、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶(95℃にて6時間減圧乾燥)の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図3】
図3は、実施例3で得られた、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図4】
図4は、実施例5で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図5】
図5は、実施例6で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図6】
図6は、実施例8で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図7】
図7は、実施例9で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図8】
図8は、実施例10で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図9】
図9は、実施例11で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【
図10】
図10は、実施例12で得られた、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。縦軸は強度(cps)を、横軸は回折角2θ(°)を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.本発明の結晶
本発明の結晶は、粗比容が5.0mL/g以下、好ましくは4.5mL/g以下、より好ましくは4.0mL/g以下、最も好ましくは3.7mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミンの結晶である。
【0012】
L-アラニル-L-グルタミンとは、L-アラニンのカルボキシル基とL-グルタミンのアミノ基がペプチド結合して形成されたジペプチドをいう。
【0013】
粗比容とは、容器に粉体を充填してその質量を測定した際、粉体の占める容積を該質量で割った値をいう。粗比容が小さい結晶は、充填性に優れ、各種加工工程におけるハンドリングが容易であり、また輸送面でのコストも低い。そのため、粗比容は小さいことが好ましい。
【0014】
粗比容は、50mLのガラスメスシリンダーに2段のガラス製漏斗を経由して45mL程度の体積となるように結晶を投下し、該結晶の重量を測定する方法で測定することができる。測定した結晶の体積を重量で割った値を粗比容とする。
【0015】
また、本発明の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下であり、かつ安息角が好ましくは50°以下、より好ましくは49°以下、さらに好ましくは48°以下、最も好ましくは47°以下であるL-アラニル-L-グルタミンの結晶を挙げることができる。
【0016】
安息角とは、粉体を漏斗のようなもので水平な面に静かに落下させた時に粉体で形成される円錐体の母線と水平面のなす角のことをいう。
【0017】
安息角が大きい結晶は、ホッパーから排出する際、ホッパー底部の傾斜角が安息角の角度よりも大きくなければホッパー底部から完全に排出することができないので、装置が限定され、ハンドリングが煩雑となる。また、安息角が大きい結晶は、流動性が悪い。そのため、安息角は小さいことが好ましい。
【0018】
安息角は、マルチテスターMT-1001T型(セイシン企業社製)を用い、付属のマニュアルに従って、下記に記載の条件で測定することができる。
【0019】
[安息角の測定条件]
使用機器:マルチテスターMT-1001T型(セイシン企業社製)
ふるい:1.18mm
振動幅:0.7~0.8mm
安息角の測定方法の具体例:0.7~0.8mmの幅で振動させた1.18mmのふるいを経由して結晶を落下させながら、安息角テーブル(部品番号:MT-1028)の上に堆積させる。安息角テーブルに振動を与えないように回転させて、3ヶ所で角度を読み、それらの相加平均値を安息角とする。
【0020】
本発明の結晶の態様として、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶が挙げられる。以下、各態様について説明する。
【0021】
2.本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶
本発明の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を挙げることができる(以下、「本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶」ともいう。)。
【0022】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下であり、かつ安息角が好ましくは50°以下であるL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を挙げることができる。
【0023】
L-アラニル-L-グルタミンの結晶が、無水和物の結晶であることは、下記の測定例に記載の方法に従って熱分析を用いて測定した水分含量が、通常3.0重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下であることにより確認することができる。
【0024】
[熱分析による結晶中の水分含量の測定例]
使用機器:EXSTAR 6000 TG/DTA 6200(セイコーインスツル社製)
測定条件:20℃から30℃まで20℃/minで昇温→30℃にて15min保持→30℃から250℃まで5℃/minで昇温
窒素流速:300mL/min
サンプリング間隔:0.5秒
【0025】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様としては、密比容が、好ましくは3.0mL/g以下、より好ましくは2.9mL/g以下の結晶を挙げることができる。
【0026】
密比容とは、容器に粉体を充填してその質量を測定したのちに容器に一定の衝撃を加えた際、粉体の占める容積を該質量で割った値をいう。
【0027】
密比容が小さい結晶は、充填性に優れ、輸送面でのコストも低い。そのため、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶としては、密比容が小さいことが好ましい。
【0028】
密比容は、50mLのガラスメスシリンダーに2段のガラス製漏斗を経由して45mL程度の容積となるように結晶を投下し、該結晶の重量を測定しのちに該メスシリンダーを100回上下させてタッピングし、該結晶の占める容積を測定する方法で測定することができる。測定した結晶の体積を重量で割った値を密比容とする。
【0029】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様としては、粗比容と密比容の差が、好ましくは2.5mL/g以下、より好ましくは2.0mL/g以下の結晶を挙げることができる。粗比容と密比容の差とは、粗比容から密比容を引いた際の正の値のことをいう。
【0030】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様としては、崩壊角が、好ましくは45°以下、より好ましくは42°以下の結晶を挙げることができる。
【0031】
崩壊角とは、粉体を漏斗のようなもので水平な面に静かに落下させた時に粉体で形成される円錐体に、間接的に一定の衝撃を加えた際形成される、円錐体の母線と水平面のなす角のことをいう。
【0032】
崩壊角と安息角の差が大きい結晶は噴流性が高く制御が困難であるため、崩壊角と安息角の差は小さいことが好ましい。
【0033】
崩壊角は、マルチテスターMT-1001T型(セイシン企業社製)を用いて、付属のマニュアルに従って、下記の具体例に記載の方法で測定することができる。
【0034】
[崩壊角の測定方法の具体例]
安息角を測定後、安息角テーブルユニット(部品番号:MT-1028)の下についている鍾をゆっくりタッピングテーブルの下まで持ち上げて落下させる。この操作を3回繰り返す。安息角の測定方法と同様の方法で3ヶ所の角度を読み、それらの相加平均値を崩壊角とする。
【0035】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様としては、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折において、下記(x1)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶が好ましく、下記(x1)に加えてさらに(x2)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶がより好ましい。
(x1)13.7±0.2°好ましくは±0.1°、20.7±0.2°好ましくは±0.1°、及び34.9±0.2°好ましくは±0.1°
(x2)21.5±0.2°好ましくは±0.1°、及び22.3±0.2°好ましくは±0.1°
【0036】
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の一態様として、より具体的には、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図4、
図8、
図9、及び
図10に示すパターン、並びに表7、表14、表15、及び表16に示される回折角の値で規定される結晶を挙げることができる。粉末X線回折は、下記の測定例に記載の方法に従って行うことができる。
【0037】
[粉末X線回折の測定例]
使用機器:粉末X線回折装置(XRD)Ultima IV(リガク社製)
陽極:Cu
波長:1.5418Å
【0038】
3.本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶
本発明の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を挙げることができる(以下、「本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶」ともいう。)。
【0039】
L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物とは、L-アラニル-L-グルタミン1分子に対して、n個のエタノール分子が配位して形成された化合物の結晶をいう。本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶において、nは0より大きい任意の数、好ましくは0より大きく5以下の任意の数、より好ましくは0より大きく3以下の任意の数、さらに好ましくは0より大きく1以下の任意の数、特に好ましくは0より大きく1以下である任意の小数第1位までの数、最も好ましくは0より大きく1以下である任意の少数代2位までの数を表わす。
【0040】
L-アラニル-L-グルタミンの結晶がnエタノール和物結晶であることは、下記の分析例に記載の方法に従ってガスクロマトグラフを用いて測定したエタノール含量が、通常0.5~16重量%、好ましくは3.0~16重量%、より好ましくは5.0~16重量%であることにより確認することができる。
【0041】
[ガスクロマトグラフを用いた分析例]使用機器:GC-2014(島津製作所製)
カラム充填剤:Adsorb P-1 60/80mesh(西尾工業社製)
カラム温度:120℃
気化室温度:150℃
ヘリウム流速:30mL/min
検出器温度:220℃
試料調製方法:L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を約1.0g秤量し、蒸留水に溶解させて10mLに調整したものを試料とする。
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶中のエタノール含量及びnの値としては、具体的には、表6に示すエタノール含量及びnの値を挙げることができる。
【0042】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下であり、かつ安息角が好ましくは50°以下である結晶を挙げることができる。
【0043】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様としては、密比容が、好ましくは3.0mL/g以下、より好ましくは2.5mL/g以下の結晶を挙げることができる。
【0044】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様としては、粗比容と密比容の差が、好ましくは2.0mL/g以下、より好ましくは1.5mL/g以下の結晶を挙げることができる。
【0045】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様としては、崩壊角が、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下の結晶を挙げることができる。
【0046】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様としては、X線源としてCuKαを陽極として用いた粉末X線回折において、下記(y1)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶が好ましく、下記(y1)に加えてさらに(y2)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶がより好ましい。
(y1)10.7±0.2°好ましくは±0.1°、20.7±0.2°好ましくは±0.1°、21.4±0.2°好ましくは±0.1°、23.3±0.2°好ましくは±0.1°、及び34.8±0.2°好ましくは±0.1°
(y2)18.4±0.2好ましくは±0.1°、24.7±0.2°好ましくは±0.1°、27.9±0.2°好ましくは±0.1°、及び32.3±0.2°好ましくは±0.1°
【0047】
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の一態様として、より具体的には、X線源としてCuKαを陽極として用いた粉末X線回折パターンが、
図1、
図2、及び
図3に示すパターン、並びに表2、表3、及び表4に示される回折角の値で規定される結晶を挙げることができる。
【0048】
結晶の粉末X線回折パターンは、シミュレーションを行うことにより、単結晶構造から算出することもできる。単結晶構造を決定する方法としては、単結晶X線解析による構造解析を挙げることができる。例えば、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物の単結晶を回折計に取り付け、室温の大気中あるいは所定の温度の不活性ガス気流中で、所定の波長のX線を用いて、回折画像を測定し、回折画像から算出された画指数と回折強度の組から、直接法による構造決定と最小二乗法による構造精密化を行い、単結晶構造を得ることができる。具体的には、例えば、R-AXIS RAPID-F(リガク社製)を用い、使用説明書に従い、単結晶構造を得ることができる。
【0049】
単結晶構造から粉末X線回折パターンのシミュレーションを行う方法としては、例えば、結晶構造表示プログラムMercury(ケンブリッジ結晶学データセンター)やPowderCell(ドイツ連邦材料研究試験所)を用いることができる。結晶の格子定数と原子座標、そして計算に用いるX線の波長を入力することにより、粉末X線回折パターンを算出することができる。
【0050】
4.本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶
本発明の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下である、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を挙げることができる(以下、「本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶」ともいう。)。
【0051】
L-アラニル-L-グルタミン・2水和物とは、L-アラニル-L-グルタミン1分子に対して、2個の水分子が配位して形成された化合物をいう。
【0052】
L-アラニル-L-グルタミンの結晶が2水和物の結晶であることは、下記の測定例に記載のカールフィッシャー法を用いて測定した水分含量が、8~20重量%、好ましくは10~18重量%、より好ましくは12~16重量%であることにより確認することができる。
【0053】
[カールフィッシャー法による結晶中の水分含量の測定例]
使用機器:MKA-510N/MKS-510N(京都電子工業社製)
測定方法の具体例:MKA-510N/MKS-510N(京都電子工業社製)の使用説明書に従って結晶中の水分含量を測定する。
【0054】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様としては、粗比容が5.0mL/g以下であり、かつ安息角が好ましくは50°以下のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を挙げることができる。
【0055】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様としては、密比容が、好ましくは3.0mL/g以下、より好ましくは2.8mL/g以下の結晶を挙げることができる。
【0056】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様としては、粗比容と密比容の差が、好ましくは2.0mL/g以下、より好ましくは1.0mL/g以下の結晶を挙げることができる。
【0057】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様としては、崩壊角が、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下の結晶を挙げることができる。
【0058】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様としては、X線源としてCuKαを陽極として用いた粉末X線回折において、下記(z1)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶が好ましく、下記(z1)に加えてさらに(z2)に記載の回折角(2θ°)にピークを有する結晶がより好ましい。
(z1)11.6±0.2°好ましくは±0.1°、23.3±0.2°好ましくは±0.1°、23.9±0.2°好ましくは±0.1°、27.9±0.2°好ましくは±0.1°、及び35.3°±0.2°好ましくは±0.1°
(z2)7.9±0.2°好ましくは±0.1°、12.8±0.2°好ましくは±0.1°、18.3±0.2°好ましくは±0.1°、21.6±0.2°好ましくは±0.1°、及び24.7±0.2°好ましくは±0.1°
【0059】
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の一態様として、より具体的には、X線源としてCuKαを陽極として用いた粉末X線回折パターンが、
図5、
図6、及び
図7に示すパターン、並びに表10、表12、及び表13に示される回折角の値で規定されるL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を挙げることができる。
【0060】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の粉末X線回折パターンは、上記3と同様の方法により、シミュレーションを行うことにより、単結晶構造から算出することができる。
【0061】
5.本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶、及び本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の製造方法としては以下の5.1に記載の製造方法を、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法としては以下の5.2に記載の製造方法を、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の製造方法としては以下の5.3又は5.4に記載の製造方法を挙げることができる。
【0062】
5.1 本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の製造方法
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の製造方法は、下記の工程(1a)及び(1b)を含む。
(1a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液にエタノールを添加又は滴下することによりL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を析出させる工程、又は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をエタノール水溶液に懸濁することによりL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させる工程
(1b)該析出、又は該転移させて得られたL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を、前記のL-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液又はエタノール水溶液から採取する工程
【0063】
5.1.1 工程(1a)
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に含有されるL-アラニル-L-グルタミンは、発酵法、酵素法、天然物からの抽出法、化学合成法等のいずれの製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0064】
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に、結晶化に障害となる固形物が含まれている場合には、遠心分離、濾過又はセラミックフィルタ等を用いて固形物を除去することができる。
【0065】
また、L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に、結晶化の障害となる水溶性の不純物や塩が含まれる場合には、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通塔すること等により、当該水溶液中の不純物や塩を除去することができる。
【0066】
また、L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に、結晶化に障害となる疎水性の不純物が含まれる場合には、合成吸着樹脂や活性炭等を充填したカラムに通塔する等により、疎水性の不純物を除去することができる。
【0067】
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液のL-アラニル-L-グルタミンの濃度としては、通常300g/L以上、好ましくは400g/L以上、最も好ましくは450g/L以上を挙げることができる。
【0068】
エタノールの添加又は滴下時の条件としては、L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を、通常10~50℃、好ましくは15~50℃、最も好ましくは20~50℃に保ったまま、該水溶液に対して通常1~5倍体積等量、好ましくは1~3倍体積等量、最も好ましくは1~2倍体積等量のエタノールを、通常1~24時間、好ましくは1~20時間、最も好ましくは1~16時間かけて添加又は滴下する条件を挙げることができる。
【0069】
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の製造方法においては、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶が析出する前に、該水溶液中の濃度が通常0.2~25g/L、好ましくは0.5~10g/L、最も好ましくは2~5g/Lとなるように、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を種晶として添加してもよい。
【0070】
種晶を添加する時間としては、エタノールの滴下又は添加を開始してから、通常1~5時間後、好ましくは1~4時間後、最も好ましくは1~3時間後を挙げることができる。
【0071】
上記のようにしてL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を析出させた後は、さらに、析出した結晶を通常5~25℃、好ましくは5~20℃、最も好ましくは5~15℃まで冷却し、1~48時間、好ましくは1~24時間、最も好ましくは1~12時間熟成させることができる。
【0072】
結晶を熟成させるとは、エタノールを添加又は滴下する工程を停止して、結晶を成長させることをいう。
結晶を成長させるとは、析出した結晶を元にして、結晶を増大させることをいう。
結晶の熟成は、結晶を成長させることを主な目的として行うが、結晶の成長と同時に、新たな結晶の析出が起こっていてもよい。
【0073】
結晶を熟成させた後は、エタノールを添加又は滴下する工程を再開してもよい。
【0074】
また、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をエタノール水溶液に懸濁することにより、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させることによっても取得することができる。
【0075】
L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶は、日本国特許第4931801号公報に記載の方法に準じて取得することができる。
【0076】
L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を、通常10~90重量%、好ましくは20~80重量%、最も好ましくは30~70重量%のエタノール水溶液に、通常300~800g/L、好ましくは400~750g/L、最も好ましくは500~700g/Lの濃度になるよう懸濁し、通常10~40℃、好ましくは15~40℃、最も好ましくは20~40℃にて、通常4~32時間、好ましくは8~28時間、最も好ましくは12~24時間、静置又は懸濁することにより、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶をL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶に転移させることができる。
【0077】
5.1.2 工程(1b)
本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を水溶液から採取する工程においては、特に限定されないが、加圧濾過、吸引濾過、遠心分離等を行うことができる。さらに母液の付着を低減し、結晶の品質を向上させるために、適宜、結晶を洗浄することができる。
【0078】
結晶洗浄に用いる溶液に特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、n-プロパノール、イソプロピルアルコール及びそれらから選ばれる1種類又は複数種類を任意の割合で混合したものを用いることができる。
【0079】
このようにして得られた湿晶を乾燥させることにより、本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を取得することができる。
【0080】
湿晶の乾燥条件としては、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を保持できる方法ならばいずれでもよく、例えば、減圧乾燥等を適用することができるが、通風乾燥は、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を保持することができないことから、本工程では用いることはできない。乾燥温度としては、付着水分を除去できる範囲ならばいずれでもよいが、通常10~95℃、より好ましくは20~60℃を挙げることができる。
【0081】
乾燥時間としては、通常4~36時間、好ましくは5~24時間、最も好ましくは6~16時間を挙げることができる。
【0082】
5.2 本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法は、下記の工程(2a)および(2b)を含む。
(2a)L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に冷却することにより、又はL-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下に保ちながら該水溶液にアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる溶媒を添加又は滴下することにより、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させる工程
(2b)該析出したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を該水溶液から採取する工程
【0083】
5.2.1 工程(2a)
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に含有されるL-アラニル-L-グルタミンは、上記5.1.1と同様の方法で製造することができる。
【0084】
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液に、結晶化に障害となる固形物が含まれている場合、結晶化の障害となる水溶性の不純物や塩が含まれる場合、及び結晶化に障害となる疎水性の不純物が含まれる場合は、上記5.1.1と同様の方法をとることができる。
【0085】
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液を35℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下に冷却することにより、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させることができる。
【0086】
L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液のL-アラニル-L-グルタミンの濃度としては、通常300g/L以上、好ましくは400g/L以上、最も好ましくは450g/L以上を挙げることができる。
【0087】
上記の方法に代えて、又は上記の方法によりL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させた後さらに、該水溶液を35℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下に保ちながら、該水溶液にアルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる溶媒を添加又は滴下することにより、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させることができる。
【0088】
アルコール類としては、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選ばれるアルコール類を、より好ましくはメタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールなる群より選ばれるアルコール類を、最も好ましくはイソプロピルアルコールを挙げることができる。
【0089】
ケトン類としては、好ましくはアセトンを挙げることができる。
【0090】
アルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる溶媒を添加又は滴下する量としては、L-アラニル-L-グルタミンが溶解した水溶液の通常1~5倍量、好ましくは1~3倍量、最も好ましくは1~2倍量を挙げることができる。
【0091】
アルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる溶媒の添加又は滴下に要する時間としては、通常1~12時間、好ましくは2~11時間、最も好ましくは3~10時間を挙げることができる。
【0092】
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の製造方法においては、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶が析出する前に、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液中の濃度が通常0.2~25g/L、好ましくは0.5~10g/L、最も好ましくは2~5g/Lとなるように、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を種晶として添加してもよい。
【0093】
上記のようにしてL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を析出させた後は、さらに、析出した結晶を、通常0~40℃、好ましくは5~35℃、最も好ましくは10~30℃にて、通常1~48時間、好ましくは1~24時間、最も好ましくは1~12時間熟成させることができる。
【0094】
結晶を熟成させた後は、アルコール類及びケトン類からなる群より選ばれる溶媒を添加又は滴下する工程を再開してもよい。
【0095】
5.2.2 工程(2b)
工程(2a)において析出したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を該水溶液から採取する工程においては、特に限定されないが、例えば、加圧濾過、吸引濾過、遠心分離等を行うことができる。さらに母液の付着を低減し、結晶の品質を向上させるために、適宜、結晶を洗浄することができる。結晶洗浄に用いる溶液に特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、n-プロパノール、イソプロピルアルコール及びそれらから選ばれる1種類または複数種類を任意の割合で混合したものを用いることができる。
【0096】
このようにして得られた湿晶を乾燥させることにより、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を取得することができる。
【0097】
湿晶の乾燥条件としては、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を保持できる方法ならばいずれでもよいが、例えば、減圧乾燥、通風乾燥、流動層乾燥等を適用することができる。
【0098】
湿晶を乾燥させる温度としては、40℃以上で乾燥させた場合、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶がL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶に転移するため、本工程では、通常0~35℃、より好ましくは10~30℃にて乾燥させる。
【0099】
5.3 本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の製造方法-1
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶は、5.1.2において上述した工程(1b)により採取したL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を乾燥させることにより、取得することができる。
【0100】
具体的には、例えば、上記5.1.2で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を、通常10~40℃、好ましくは15~35℃の常温常圧の空気を用いて、通常12~36時間、好ましくは16~32時間、最も好ましくは20~28時間、通風乾燥することにより、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を取得することができる。
【0101】
通風乾燥とは、例えば、湿晶をヌッチェ上に置いて吸引するか、フローコーターのような装置に入れるなどし、常温常圧の流動空気に曝して乾燥させる方法を挙げることができる。この際使用する流動空気は、予め湿度と温度を調整することができる。流動空気の湿度としては、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上を挙げることができる。
【0102】
また、上記の方法により取得された結晶に含有される残留エタノールは、上記3のガスクロマトグラフを用いた方法により測定することができる。本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶に含有される残留エタノールとしては、通常1.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、最も好ましくは0.01重量%以下を挙げることができる。
【0103】
5.4 本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の製造方法-2
本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶は、5.2.2において上述した工程(2b)により採取したL-アラニル-L-グルタミン・2水和物結晶を乾燥させることにより、取得することができる。
【0104】
具体的には、例えば、上記5.2.2で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を、減圧乾燥、通風乾燥等により、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、最も好ましくは95℃以上で乾燥させることにより、本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶を取得することができる。乾燥温度の上限値としては、通常200℃以下、好ましくは100℃以下を挙げることができる。
【0105】
乾燥時間としては、通常1~36時間、好ましくは2~24時間、最も好ましくは3~12時間を挙げることができる。
【実施例0106】
以下に実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の取得-1
日本国特許第4931801号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶200gを300mLの50%エタノール水溶液に懸濁し、25℃にて一晩静置した。その後、結晶を濾取して60%エタノール水溶液で洗浄することにより、湿晶を得た。当該湿晶を25℃にて6時間、減圧乾燥することにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶(179.0g)を得た。
【0108】
当該結晶のエタノール含量をガスクロマトグラフを用いて測定した結果、13.6重量%であった。また、熱分析による水分含量測定の結果、当該結晶は水分子を有しないことが分かった。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶(0.74エタノール和物結晶)であることが分かった。
【0109】
続いて、得られたL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶を単結晶構造解析に供した。単結晶構造解析は、湾曲イメージングプレート単結晶自動X線構造解析装置 R-AXIS RAPID-F(リガク社製)を用い、使用説明書に従って行った。CuKα線を用いて回折測定を行い、直接法によって初期構造を決定した後、最小二乗法によって構造精密化を行い、最終構造を得た。その結果、当該結晶が確かに分子内に水分子を有しないエタノール和物結晶であることが確認された。
【0110】
さらに、得られた解析結果に基づき、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の粉末X線結晶回折パターンのシミュレーションを行った。シミュレーションは、単結晶X線解析によって決定された結晶構造を、Mercuryに読み込ませて計算を行った。計算条件は以下の通りである。
【0111】
X線の波長:1.54056A(Cu Kα1線相当)
2θ角の範囲:5-60o
ピークの形状:擬フォークト関数
ピークの半値全幅(FWHM):0.1o
シミュレーションの結果を表1に示す。
【0112】
【0113】
また、当該結晶の粉末X線回折の結果を表2に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【表2】
【0114】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、上記シミュレーション結果から予想される回折角にピークを有したことから(表1及び表2)、シミュレーション結果が妥当であることが確認された。このことから、単結晶X線解析によって決定された結晶構造からシミュレーションした粉末X線結晶回折パターンは、実際の粉末X線回折の結果と一致することがわかった。
【0115】
[実施例2]本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の取得-2
実施例1で得られたL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物の湿晶について、40℃、60℃、95℃の各温度で減圧乾燥してL-アラニル-L-グルタミンの結晶を得た。95℃にて6時間減圧乾燥して得られたL-アラニル-L-グルタミンの結晶の粉末X線回折の結果を表3に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0116】
【0117】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、実施例1のシミュレーション結果から予想される回折角にピークを有した(表1及び表3)。また、当該結晶のエタノール含量をガスクロマトグラフを用いて測定した結果、7.33重量%であり、熱分析による水分含量測定の結果、当該結晶は、水分子を有しないことが分かった。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶(0.37エタノール和物結晶)であることが分かった。
【0118】
また、後述の表6のとおり、40℃、60℃にて減圧乾燥した結晶のエタノール含量及び水分含量についても測定した結果、いずれの結晶も水分子を有しておらず、かつエタノールを含有していた。これより、これらの結晶もL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶であることが分かった。
【0119】
[実施例3]本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の取得-3
日本国特許第4931801号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶300gを水に溶解し、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液(600mL、L-アラニル-L-グルタミン含有濃度:487.5g/L)を調製した。
【0120】
当該水溶液を40℃に保って1200mLのエタノールを12時間かけて添加し、結晶を析出させた。起晶には、種晶の接種は不要であった。得られた結晶スラリーを10℃まで冷却して2時間熟成させ、結晶を濾取して60%エタノール水溶液で洗浄することにより、湿晶を得た。当該湿晶を40℃にて減圧乾燥することにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶(308.3g)を得た。
【0121】
当該結晶の粉末X線回折の結果を表4に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0122】
【0123】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、実施例1のシミュレーション結果から予想される回折角にピークを有した(表1及び表4)。また、当該結晶のエタノール含量をガスクロマトグラフを用いて測定した結果、12.2重量%であり、熱分析による水分含量測定の結果、当該結晶は、水分子を有しないことが分かった。これより、当該結晶はL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶(0.66エタノール和物結晶)であることが分かった。
【0124】
[実施例4]本発明のL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶の取得-4
実施例3で得られたL-アラニル-L-グルタミンのエタノール和物の湿晶について、25℃、60℃、95℃の各温度で減圧乾燥してL-アラニル-L-グルタミンの結晶を得た。
【0125】
後述の表6のとおり、得られた結晶のエタノール含量及び水分含量を測定した結果、いずれの結晶も水分子を有しておらず、かついずれもエタノールを含有していたため、これらの結晶も、L-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶であることが分かった。
【0126】
既知の無水和物の結晶並びに実施例1、2及び4で得られたエタノール和物結晶について、その粗比容、密比容、安息角及び崩壊角を測定した結果を表5に示す。
【0127】
【0128】
表5に示す通り、実施例1、2及び4で得られたエタノール和物結晶は、粗比容、密比容、安息角及び崩壊角について、既知の無水和物の結晶と比較して、いずれも小さい値を示し、優れた粉体物性を示すことが分かった。
【0129】
また、実施例1~4で得られた結晶のエタノール含量をガスクロマトグラフを用いて測定した結果のまとめを表6に示す。
【0130】
【0131】
表6に示す通り、実施例1~4で得られたL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物結晶のエタノール含量の実測値は7.13~15.3重量%の値であり、L-アラニル-L-グルタミン1分子あたり、0より大きく1以下の分子数のエタノールが配位している結晶であることが確認された。
【0132】
[実施例5]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の取得-1
実施例1で得られたL-アラニル-L-グルタミンのnエタノール和物の湿晶をヌッチェに置き、吸引濾過機を用いて常温常圧の空気を通すことで、24時間、通風乾燥を実施した。
当該方法によって得られた結晶の粉末X線回折の分析結果を表7に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0133】
【0134】
ガスクロマトグラフを用いて測定した当該結晶に含まれるエタノールの量は0.008%であり、また、熱分析により当該結晶の水分含量を測定した結果、当該結晶は水分子を有していないことが分かった。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶であることが分かった。
【0135】
日本国特許第4931801号公報に記載の方法で取得した既知の結晶、及び、上記で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶について、粗比容、密比容、安息角及び崩壊角を測定した結果を表8に示す。
【0136】
【0137】
表8に示す通り、上記で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶は、粗比容、安息角及び崩壊角について、既知の無水和物の結晶と比較していずれも小さい値を示し、優れた粉体物性を示すことが分かった。
【0138】
[実施例6]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の取得-1
日本国特許第4931801号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶55gを水に溶解し、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液(100mL、L-アラニル-L-グルタミン含有濃度:550g/L)を調製した。
【0139】
当該水溶液を10℃まで冷却して、結晶を析出させた。その際の起晶には、種晶の接種は不要であった。当該結晶を濾取し、室温下で減圧乾燥させることにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶を得た。
【0140】
得られた結晶の水分含量を、カールフィッシャー法により測定した結果、14.9重量%であり、2水和物の理論値(14.2重量%)とほぼ一致したことから、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶であることが分かった。
【0141】
続いて、得られたL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶を単結晶構造解析に供した。実施例1と同様の手順で単結晶構造解析を行い、単結晶構造を得た。その結果、当該結晶が確かにL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶であることが確認された。
次に、単結晶構造解析及び解析結果に基づくL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の粉末X線結晶回折パターンのシミュレーションを、実施例1と同じ方法で行った。
結果を表9に示す。
【0142】
【0143】
[実施例7]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の取得-2
日本国特許第493180号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶810gを水に溶解し、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液(1.5L、L-アラニル-L-グルタミン含有濃度:540g/L)を調製した。
【0144】
当該水溶液を10℃まで冷却して、結晶を析出させた。その際の起晶には、種晶の接種は不要であった。当該結晶を濾取し、25℃にて減圧乾燥させることにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶(268.7g)を得た。
【0145】
当該結晶の粉末X線回折の結果を表10に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0146】
【0147】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、実施例6のシミュレーション結果から予想される回折角にピークを有した(表9及び表10)。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶であることが分かった。
【0148】
日本国特許第4931801号公報に記載の方法で取得した既知の結晶及び上記で得られた2水和物の結晶について、粗比容、密比容、安息角及び崩壊角を測定した結果を表11に示す。
【0149】
【0150】
表11に示す通り、上記で得られた2水和物の結晶は、粗比容、安息角及び崩壊角について、既知の無水和物の結晶と比較していずれも小さい値を示し、優れた粉体物性を示すことが分かった。
【0151】
[実施例8]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の取得-2
日本国特許第493180号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶32gを水に溶解し、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液(64mL、L-アラニル-L-グルタミン含有濃度:500g/L)を調製した。
【0152】
該水溶液を10℃に冷却したのちにL-アラニル-L-グルタミン・2水和物を種晶として加え、結晶を析出させた。結晶を含む溶液を30℃に保って、アセトン104mLを9時間かけて添加したのち、10℃まで冷却して熟成を行った。結晶を濾取し、25℃にて減圧乾燥させることにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶(31.5g)を得た。
【0153】
当該結晶の粉末X線回折の結果を表12に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0154】
【0155】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、実施例6のシミュレーション結果から予想される回折角にピークを有した(表9及び表12)。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶であることが分かった。
【0156】
[実施例9]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶の取得-3
日本国特許第493180号公報に記載の方法に準じて取得したL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶25gを水に溶解し、L-アラニル-L-グルタミン含有水溶液(50mL、L-アラニル-L-グルタミン含有濃度:500g/L)を調製した。
【0157】
当該水溶液を10℃に冷却したのちにL-アラニル-L-グルタミン・2水和物を種晶として加え、結晶を析出させた。結晶を含む溶液を30℃に保って、イソプロピルアルコール75mLを3時間かけて添加したのち、30℃を保って熟成を行った。結晶を濾取し、25℃にて減圧乾燥させることにより、L-アラニル-L-グルタミンの結晶(13.2g)を得た。
【0158】
当該結晶の粉末X線回折の結果を表13に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0159】
【0160】
粉末X線回折の結果、得られた結晶は、実施例6のシミュレーション結果から予想される回折角にピークを有した(表9及び表13)。これより、当該結晶は、L-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶であることが分かった。
【0161】
[実施例10]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の取得-2
実施例7で得られたL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶をセパラブルフラスコに入れ、減圧乾燥を行った。減圧乾燥は、40℃に調整した水浴に接触させながら回転させ、6時間実施した。
【0162】
当該結晶中の水分量を熱分析により測定した結果、当該結晶の水分含量の実測値は1.9重量%であったことから、当該結晶はL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶であることを確認した。
【0163】
上記の方法によって得られた結晶の粉末X線回折の分析結果を表14に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0164】
【0165】
[実施例11]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の取得-3
実施例7で得られたL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶をセパラブルフラスコに入れ、減圧乾燥を行った。減圧乾燥は、60℃に調整した水浴に接触させながら、回転させ、4時間実施した。
【0166】
当該結晶中の水分量を、熱分析により測定した結果、当該結晶の水分含量の実測値は1.9重量%であったことから、当該結晶はL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶であることを確認した。
【0167】
上記の方法によって得られた結晶の粉末X線回折の分析結果を表15に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0168】
【0169】
[実施例12]本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶の取得-4
実施例7で得られたL-アラニル-L-グルタミン・2水和物の結晶をセパラブルフラスコに入れ、減圧乾燥を行った。減圧乾燥は90~95℃に調整した水浴に接触させながら、回転させ3時間実施した。
【0170】
当該結晶中の水分量を、熱分析により測定した結果、当該結晶の水分含量の実測値は0.3重量%であったことから、当該結晶はL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶であることを確認した。
【0171】
上記の方法によって得られた結晶の粉末X線回折の分析結果を表16に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比を表わす。
【0172】
【0173】
日本国特許第4931801号公報に記載の方法で取得した既知の結晶及び、実施例10~12で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶について、粗比容、密比容、安息角、崩壊角、及び結晶中に含まれる水分を熱分析の乾燥減量として求めた結果を表17に示す。
【0174】
【0175】
表17に示す通り、実施例10~12で得られた本発明のL-アラニル-L-グルタミン・無水和物の結晶は、粗比容、安息角、及び崩壊角について、既知の無水和物の結晶と比較していずれも小さい値を示し、優れた粉体物性を示すことが分かった。
【0176】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年12月20日付けで出願された日本特許出願(特願2016-246116)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
本発明により、例えば、健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料もしくは中間体等として有用であるL-アラニル-L-グルタミンの結晶、及びその製造方法が提供される。