(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060402
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 74/04 20090101AFI20220407BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20220407BHJP
H04W 48/08 20090101ALI20220407BHJP
【FI】
H04W74/04
H04W16/28 130
H04W48/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025167
(22)【出願日】2022-02-21
(62)【分割の表示】P 2018547144の分割
【原出願日】2017-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2016212506
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 岳林
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 茂
(57)【要約】
【課題】マルチユーザ環境下におけるチャネル・アクセス動作を制御する通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】APからのトリガー・フレームを通してMUモード終了後の各STAのチャネル・アクセス動作を制御して、MUモード終了直後の衝突を防ぐ。また、APがトリガー・フレームを送信する際のCWをSTAのCWよりも小さく設定して優先的にトリガー・フレームを送信して、SUモードよりもMUモードでの通信を優先的に行なわせる。また、モード切り替え時の各STAのCWをリセットしないことで、MUモード終了後からの送信待ち時間を短縮する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチユーザ送信におけるアクセスカテゴリ及び前記アクセスカテゴリに応じて指定した前記マルチユーザ送信の終了後における他の通信装置の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを送信する通信部を備え、
前記アクセスカテゴリは、AC_VO、AC_VI、AC_BE、AC_BKのうち少なくとも1つを含み、
前記送信待ち時間に関する情報は、Contention Windowに関する情報を含む、
通信装置。
【請求項2】
前記通信部は、前記マルチユーザ送信の終了後に自身が次のマルチユーザ送信を行なう際の送信待ち時間より長い送信待ち時間を前記他の通信装置に指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記他の通信装置毎に異なる送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項1又は2のいずれかに記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記他の通信装置の送信回数に応じた送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項1乃至3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信部は、送信回数の少ない通信装置に対して送信回数の多い通信装置よりも短い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信部は、データ再送する通信装置に対して他の通信装置よりも短い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信部は、マルチユーザ送信を許可する前記他の通信装置に対してデータ再送する通信装置の残りの送信待ち時間よりも長い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信する、請求項1乃至6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
優先度の高いカテゴリを指定する前記フレームにおいて、優先度の低いカテゴリを指定したときに設定された送信待ち時間の残り時間より短い送信待ち時間を指定する前記情報を記載する処理部を備える、請求項1乃至7のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
通信装置として動作する通信方法であって、
マルチユーザ送信におけるアクセスカテゴリ及び前記アクセスカテゴリに応じて指定した前記マルチユーザ送信の終了後における前記他の通信装置の送信待ち時間に関する情報を記載して送信するステップを有し、
前記アクセスカテゴリは、AC_VO、AC_VI、AC_BE、AC_BKのうち少なくとも1つを含み、
前記送信待ち時間に関する情報は、Contention Windowに関する情報を含む、
通信方法。
【請求項10】
マルチユーザ送信におけるアクセスカテゴリ及び前記アクセスカテゴリに応じて指定した前記マルチユーザ送信の終了後における自装置の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを他の通信装置から受信する通信部と、
前記マルチユーザ送信の終了後の送信待ち時間を設定する処理部と、
を備え、
前記アクセスカテゴリは、AC_VO、AC_VI、AC_BE、AC_BKのうち少なくとも1つを含み、
前記送信待ち時間に関する情報は、Contention Windowに関する情報を含む、
通信装置。
【請求項11】
通信装置として動作する通信方法であって、
マルチユーザ送信におけるアクセスカテゴリ及び前記アクセスカテゴリに応じて指定した前記マルチユーザ送信の終了後における自装置の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを他の通信装置から受信するステップと、
前記マルチユーザ送信の終了後の送信待ち時間を設定するステップと、
を有し、
前記アクセスカテゴリは、AC_VO、AC_VI、AC_BE、AC_BKのうち少なくとも1つを含み、
前記送信待ち時間に関する情報は、Contention Windowに関する情報を含む、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、マルチユーザ環境下におけるチャネル・アクセス動作を制御する通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11などに代表される無線LANにおいて、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)とMU-MIMO(Multi User Multi-Input Multi-Output)を導入することで、通信速度の増大を実現することができる(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0003】
ここで、OFDMは、複数のデータを「直交」すなわち互いに干渉し合わない周波数サブキャリアに割り当てるマルチキャリア方式であり、各サブキャリアについて逆FFT(Fast Fourier Transform)を行なうことで周波数軸での各サブキャリアを時間軸の信号に変換して伝送することができる。OFDMAは、1つの通信局がOFDM信号の全サブキャリアを占有するのではなく、周波数軸上のサブキャリアのセットを複数の通信局に割り当てて、複数の通信局でサブキャリアをシェアする多元接続方式である。
【0004】
また、MIMOは、送信機側と受信機側の双方において複数のアンテナ素子を備え、空間多重したストリームを実現する通信方式である。MU-MIMOは、空間軸上の無線リソースを複数のユーザで共有する空間分割多元接続方式ということができる。
【0005】
OFDMAあるいはMU-MIMOで通信を行なうことは、MU(Multi User)モードと呼ばれる。これに対し、多元接続せず1対1で通信を行なうことは、SU(Single User)モードと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書で開示する技術の目的は、マルチユーザ環境下におけるチャネル・アクセス動作を好適に制御することができる、優れた通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する技術は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、他の端末の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを送信する、通信装置である。
【0009】
本明細書で開示する技術の第2の側面によれば、第1の側面に係る通信装置は、アクセスポイントとして動作し、配下の端末に対してマルチユーザ送信の許可を通知する前記フレームに、前記マルチユーザ送信の終了後における前記端末の送信待ち時間を指定する前記情報を記載するように構成されている。
【0010】
本明細書で開示する技術の第3の側面によれば、第2の側面に係る通信装置は、前記マルチユーザ送信の終了後に自身が次のマルチユーザ送信を行なう際の送信待ち時間より長い送信待ち時間を各端末に指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0011】
本明細書で開示する技術の第4の側面によれば、第2の側面に係る通信装置は、前記端末毎に異なる送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0012】
本明細書で開示する技術の第5の側面によれば、第2の側面に係る通信装置は、前記端末の送信回数に応じた送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0013】
本明細書で開示する技術の第6の側面によれば、第5の側面に係る通信装置は、送信回数の少ない端末に対して送信回数の多い端末よりも短い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0014】
本明細書で開示する技術の第7の側面によれば、第5の側面に係る通信装置は、データ再送する端末に対して他の端末よりも短い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0015】
本明細書で開示する技術の第8の側面によれば、第2の側面に係る通信装置は、マルチユーザ送信を許可する前記端末に対してデータ再送する端末の残りの送信待ち時間よりも長い送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0016】
本明細書で開示する技術の第9の側面によれば、第2の側面に係る通信装置は、前記マルチユーザ送信に好ましいカテゴリと、前記端末に対して前記マルチユーザ送信の終了後の送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0017】
本明細書で開示する技術の第10の側面によれば、第9の側面に係る通信装置は、前記端末に対して前記カテゴリに応じた送信待ち時間を指定する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0018】
本明細書で開示する技術の第11の側面によれば、第9の側面に係る通信装置は、優先度の高いカテゴリを指定する前記フレームにおいて、優先度の低いカテゴリを指定したときに設定された送信待ち時間の残り時間より短い送信待ち時間指定する前記情報を記載するように構成されている。
【0019】
また、本明細書で開示する技術の第12の側面は、他の端末の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを送信するステップを有する、通信方法である。
【0020】
また、本明細書で開示する技術の第13の側面は、受信したフレームに記載されている自分の送信待ち時間に関する情報に基づいて、前記受信したフレームに関連する通信処理が実施された後の送信待ち時間を設定する、通信装置である。
【0021】
また、本明細書で開示する技術の第14の側面は、次のフレーム送信時における自分の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを送信する、通信装置である。
【0022】
本明細書で開示する技術の第15の側面によれば、第14の側面に係る通信装置は、アクセスポイントとして動作し、配下の端末に対してマルチユーザ送信の許可を通知する前記フレームに、次のフレーム送信時における自分の送信待ち時間に関する前記情報を記載するように構成されている。
【0023】
本明細書で開示する技術の第16の側面によれば、第15の側面に係る通信装置は、前記フレームを送信した後、しばらく次のフレームを送信しないときには、前記情報として所定値を記載するように構成されている。
【0024】
本明細書で開示する技術の第17の側面によれば、第15の側面に係る通信装置は、前記端末が前記マルチユーザ送信したフレームの再送時の送信待ち時間に関する情報をさらに前記フレームに記載するように構成されている。
【0025】
本明細書で開示する技術の第18の側面によれば、第16の側面に係る通信装置は、マルチユーザ送信に好ましいカテゴリと、前記カテゴリに応じた再送時の送信待ち時間に関する前記情報を記載した前記フレームを送信するように構成されている。
【0026】
また、本明細書で開示する技術の第19の側面は、次のフレーム送信時における自分の送信待ち時間に関する情報を記載したフレームを送信するステップを有する、通信方法である。
【0027】
また、本明細書で開示する技術の第20の側面は、受信したフレームに記載されている前記フレームの送信元の次のフレーム送信時における送信待ち時間に関する情報に基づいて、前記受信したフレームに関連する通信処理が実施された後の自分の送信待ち時間を設定する、通信装置である。
【発明の効果】
【0028】
本明細書で開示する技術によれば、複数の端末が存在するマルチユーザ環境下において、アクセスポイントとして配下の端末のチャネル・アクセス動作を好適に制御することができる、優れた通信装置及び通信方法を提供することができる。
【0029】
本明細書で開示する技術によれば、複数の端末が存在するマルチユーザ環境下において、自身のチャネル・アクセス動作を好適に制御することができる、優れた通信装置及び通信方法を提供することができる。
【0030】
なお、本明細書に記載された効果は、あくまでも例示であり、本発明の効果はこれに限定されるものではない。また、本発明が、上記の効果以外に、さらに付加的な効果を奏する場合もある。
【0031】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、無線LANネットワークにおいてモード切り替えが行なわれる際の通信シーケンス例を示した図である。
【
図2】
図2は、無線LANネットワークにおいてモード切り替えが行なわれる際の通信シーケンス例を示した図である。
【
図3】
図3は、無線LANネットワークにおいてモード切り替えが行なわれる際の通信シーケンス例を示した図である。
【
図4】
図4は、無線LANシステムの構成例を示した図である。
【
図5】
図5は、通信装置500の構成例を示した図である。
【
図6】
図6は、無線LANシステム内の動作手順を示したフローチャートである。
【
図7】
図7は、トリガー・フレームの構成例を示した図である。
【
図8】
図8は、APの裁量により各STAのCWのパラメータ値を設定する通信シーケンス例(送信回数によるCW設定)を示した図である。
【
図9】
図9は、APの裁量により各STAのCWのパラメータ値を設定する通信シーケンス例(再送によるCW設定)を示した図である。
【
図11】
図11は、APの裁量により各STAのCWのパラメータ値を設定する通信シーケンス例(ACレベルに応じたCW設定)を示した図である。
【
図12】
図12は、APがトリガー・フレームを送信する際の処理手順を示したフローチャートである。
【
図13】
図13は、トリガー・フレームの構成例を示した図である。
【
図14】
図14は、STAの裁量により各STAのCWのパラメータ値を設定する通信シーケンス例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0034】
無線LANの代表規格の1つであるIEEE802.11では、各端末が自律的に送信機会を獲得する仕組みとして、CSMA/CA(Carrier Sense Multipe Access/Collision Avoidance)を規定している。具体的には、端末はランダムな時間分だけ送信待機(バックオフ)を行なう。また、バックオフ中に周囲の電波環境を観測(キャリア・センス)し、ある検出閾値以上の電力を持つ電波を検出したときにはバックオフを停止してパケットの送信を抑制する。このバックオフとキャリア・センスの仕組みによって、端末は自律分散的に送信機会を獲得しながらも、パケット衝突を回避している。
【0035】
通常、無線LANにおいてMUモードからSUモードに切り替えるときに、CW(Contention Window)やBO(Back Off)などの送信待ち時間を決めるための設定値をリセットする。このような場合、端末局(STA)は、モードを切り替えた後すぐに送信を再開できなくなるため、伝送路の利用効率が悪化することが懸念される。さらに、設定値のリセットにより、各STAがアクセスポイント(AP)に向けて送信を同時に開始してしまい衝突が発生する可能性もある。
【0036】
図1~
図3には、無線LANネットワークにおいてモード切り替えが行なわれる際の通信シーケンス例を示している。但し、図中の各横軸は時間軸であり、各々の四角は横軸上の位置に対応する時刻に該当する通信装置から送信されるフレームを示し、平行四辺形は送信待ち時間を示している。また、フレームから縦方向に伸びる矢印はフレームの送信の方向(上向きがアップリンク、下向きがダウンリンク)を示している。
【0037】
各図に示す例では、アクセスポイント(AP)の配下で2台の端末局STA1、STA2が通信動作を行なうネットワーク構成を想定し、各STAはアップリンクのMU機能を備え、APからのトリガー・フレーム(Trigger)に応答してMUモードに切り替わるものとする。
【0038】
また、各図において、APとSTA1、STA2はそれぞれ、フレーム送信に先立ちバックオフを設定し、バックオフ時間すなわちCWの間に干渉信号を検出しないときに送信機会を獲得することができる。一般には、ランダム値に、数マイクロ秒程度のスロット時間を掛けてCWを算出する。また、パケット送信に成功したときや通信モードが切り替わったときにCWはリセットされるが、バックオフを設定中に他のパケット送信が開始されるとバックオフは中断され、送信終了後に残り時間からバックオフが再開される。
図1~
図3に示す例でも、APと各STAはランダムにCWを設定し、モード切り替え時にCWをリセットするものとする。
【0039】
図1に示す例では、STA1がバックオフを設定中に、APは、配下のSTA1とSTA2に対して、複数のSTAが受信できるようなフォーマットでトリガー・フレームを送信する。ここでのトリガー・フレームは、STA1とSTA2に対してアップリンクのデータ・フレームの送信許可を通知するフレームであり、送信開始の正確なタイミングとフレームの正確な持続時間を指示する。
【0040】
STA1は、APからの信号を検出してバックオフを中断する。そして、STA1とSTA2は、トリガー・フレームでアップリンクの送信が許可されたことに応じてMUモードに入り、そのフレームの指示に従って、APへのアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU(PLCP Protocol Data Unit))の送信を同時に開始し且つ同時に完了させる。そして、APは、STA1とSTA2がともに受信できるようなフォーマットで、M-BA(Multi STA Block Ack)フレームを送信して、STA1とSTA2の各々から送信されたデータ・フレームの受信結果を通知する。
【0041】
STA1とSTA2は、APからM-BAを受信した後に、SUモードに復帰する。そして、APでデータ・フレームの受信が成功したSTAは次の新たなデータの送信準備を行なうがことができるが、データ・フレームの受信が失敗したSTAはそのデータの再送準備を行なう。
図1に示す例では、STA1から送信したデータ・フレームをAPが受信に失敗しており、APはSTA2宛てにのみM-BAを送信する。
【0042】
STA1は、MUモードが終了した後に再送データ・フレームの送信準備を行なうが、上記の中断したバックオフを残り時間から再開するのではなく、SUモードに復帰時にCWをリセットして最初からバックオフをやり直す。このため、STA1は、途中でMUモードに切り替わることで、データ・フレーム(UL SU PPDU)の再送機会を得るまでに、より長く待ち時間が設定されることになる。
【0043】
また、
図2に示す例では、APがアップリンク用のトリガー・フレームを送信したことにより、トリガー・フレームでアップリンクの送信が許可されたSTA1とSTA2はMUモードに切り替わる(同上)。
【0044】
そして、STA1とSTA2は、トリガー・フレームの指示に従って、アップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し且つ同時に完了させ、これに対しAPは、M-BAフレームを送信して、STA1とSTA2の各々から送信されたデータ・フレームの受信結果を通知する。ここでは、STA1とSTA2から送信したデータ・フレームはともにAPで受信に失敗しており、STA1とSTA2はそれぞれ再送データ・フレームの送信準備を行なう。
【0045】
その後、MUモードからSUモードに復帰すると、STA1とSTA2はそれぞれCWをリセットして、APへのデータ再送(UL SU PPDU)を試みる。
図2に示す例では、STA1とSTA2は同時にCWをCWmin(CWの最小値)に設定している。このため、衝突が発生する可能性が増えるという問題がある。
【0046】
また、
図3に示す例では、APとSTA2がともにバックオフ設定中に、APが先にCWが終了して送信機会を得て、STA1とSTA2に対してアップリンクのデータ・フレームの送信許可を通知するトリガー・フレームを送信する。
【0047】
STA1とSTA2は、このトリガー・フレームに応答してMUモードに入り、アップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し且つ同時に完了させ、これに対しAPは、M-BAフレームを送信して、STA1とSTA2の各々から送信されたデータ・フレームの受信結果を通知する。ここでは、STA1とSTA2から送信したデータ・フレームはともにAPで受信にしたものとする。
【0048】
その後、APは、2度目のトリガー・フレームを送信するためにバックオフを設定する。また、STA2は、SUモードで、APへデータ・フレーム(UL SU PPDU)を送信するために、バックオフを設定する。ここでは、APよりも先にSTA2のバックオフ・カウンターが切れるため、STA2によるアップリンクのシングル・ユーザ送信(UL SU PPDU)が開始されてしまい、APは1回目のアップリンク多重通信の直後に2度目のトリガー・フレームを送信することができない。
【0049】
要するに、
図3に示す例では、APは2回連続してアップリンク多重通信を行なおうとするが、配下のSTA2によるシングル・ユーザ送信に割り込まれてしまうため、2回目のアップリンク多重通信を続けて開始することができない。この結果、アップリンク多重通信を続ける場合よりもシステムのスループットが低くなるという問題がある。
【0050】
そこで、本明細書では、アップリンクのマルチユーザ通信が終了した後の各STAのチャネル・アクセス動作を制御することにより、
図1~
図3に例示したような問題を解決するための技術について開示する。本明細書で開示する技術は、以下に示す2つの方法(1)並びに(2)によって実現される。
【0051】
(1)AP側から送信するトリガー・フレームに、送信先の各STAがMUモードを終了した後のアクセス制御のパラメータ(CWやBOなど)を記載する。これに対し、各STAは、MUモードの終了後には、トリガー・フレームの記載に従ってパラメータを設定する。
【0052】
(2)AP側から送信するトリガー・フレームに、AP自身と再送時のSTAのアクセス制御のパラメータを記載する。
【0053】
上記のうち、(1)の方法では、APが状況に応じて各STA宛てのMU終了後のアクセス制御のパラメータを適切に設定する。例えば、STA間の優先度に応じてアクセス制御パラメータを指定することにより、優先度が高いSTAがMUモード終了後の待ち時間を短縮して、システム全体のスループットを向上させることができる。また、MUモード終了後の各STAのアクセス制御パラメータを異なる値に設定することにより、衝突を回避することができる。また、各STAは、モード切り替えの際(SUモードに復帰したとき)に、CWやBOなどのアクセス制御のパラメータ値をリセットせずにバックオフを再開することにより、待ち時間が長くなることはなく、すぐにチャネルのアクセス権を取得できる。
【0054】
APは、配下の各STAのデータ送信状況に応じたSTA毎のアクセス制御パラメータを設定することができる。例えば、APは、各STAの送信機会が均等になるようにSTA毎のアクセス制御パラメータを設定するようにしてもよい。
【0055】
あるいは、APは、隣接するBSSと協調して、配下のSTAのアクセス制御パラメータを設定するようにしてもよい。例えば、隣接するBSSへの干渉波の影響が少ないSTAが優先的に送信機会を獲得できるように、各STAのアクセス制御パラメータを設定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記の(2)の方法では、各STAは、APのアクセス制御情報を受けて、自分の裁量で自身のパラメータを設定する。また、MUモード終了後に再送を行なうSTAは、APがトリガー・フレームに記載した再送時のSTAのアクセス制御パラメータに従って自身のパラメータを設定する。
【0057】
図4には、本明細書で開示する技術を適用可能な無線LANシステムの構成例を模式的に示している。図示の無線LANシステムは、接続が確立した1台のAPと複数台のSTAで構成され、STA1、STA2、STA3、…はいずれもAPの配下にある(若しくは、APの基本サービス・セット(BSS)に所属している)ものとする。APと各STAは、OFDMAあるいはMU-MIMOの機能を装備し、いわゆるMUモードで通信することができる通信装置である。
【0058】
図5には、
図4に示したような無線LANシステムにおいてAP又はSTAとして通信動作を行なう通信装置500の機能的構成例を示している。基本的な構成は、APでもSTAでも同様であると理解されたい。
【0059】
通信装置500は、データ処理部501、制御部502、通信部503、電源部504から構成される。また、通信部501は、さらに変復調部511、空間信号処理部512、チャネル推定部513、無線インターフェース(IF)部514、アンプ部515、アンテナ516を備えている。但し、無線インターフェース部514、アンプ部515及びアンテナ516はこれらを1組として1つの送受信ブランチを構成し、2以上の送受信ブランチで通信部501が構成されてもよい。また、アンプ部515は無線インターフェース部514にその機能が内包される場合もある。
【0060】
データ処理部501は、プロトコル上位層(図示しない)よりデータが入力される送信時において、そのデータから無線送信のためのパケットを生成し、メディア・アクセス制御(Media Access Control:MAC)のためのヘッダの付加や誤り検出符号の付加などの処理を実施し、処理後のデータを変復調部511へ提供する。また、データ処理部501は、変復調部511からの入力がある受信時において、MACヘッダの解析、パケット誤りの検出、リオーダー処理などを実施して、処理後のデータを自身のプロトコル上位層へ提供する。
【0061】
制御部502は、通信装置500内の各部間の情報の受け渡しを行なう。また、制御部502は、変復調部511及び空間信号処理部512におけるパラメータ設定、データ処理部501におけるパケットのスケジューリングを行なう。また、制御部502は、無線インターフェース部514及びアンプ部515のパラメータ設定及び送信電力制御を行なう。
【0062】
通信装置500がAPとして動作する場合、制御部502は、自己のBSS内での通信モードの切り替え(MUモードへの移行)を制御する。また、本実施形態では、制御部502は、MUモードへの切り替わり時に配下のSTAに対して適切なパラメータを記載したトリガー・フレームを送信するよう、各部を制御する。特に本実施形態では、制御部502は、送信先の各STAのMUモード終了後のアクセス制御のパラメータ(CWやBOなど送信待ち時間を決定するためのパラメータや、送信優先度などに関するパラメータなど)を記載させ、又は、AP自身と再送時のSTAのアクセス制御のパラメータを記載させる。
【0063】
また、通信装置500がSTAとして動作する場合、制御部502は、APから受信したトリガー・フレームに記載された内容に従って、このAPの配下の他のSTAとともにアップリンク多重通信を行なうよう、各部を制御する。特に本実施形態では、制御部502は、トリガー・フレームに記載されたアクセス制御のパラメータに従ってMUモード終了後の送信待ち時間(CWやBO)を設定したり配下の他のSTAとは異なる値を設定したりし、又は、トリガー・フレームに記載された内容に基づいてデータ再送時におけるCWやBOなどのパラメータを自分の裁量で設定したりする。
【0064】
変復調部511は、送信時はデータ処理部501からの入力データに対し、制御部501によって設定されたコーディング及び変調方式に基づいて、エンコード、インターリーブ及び変調の処理を行ない、データ・シンボル・ストリームを生成して空間信号処理部512へ提供する。また、変復調部511は、受信時には、制御部501によって設定されたコーディング及び変調方式に基づいて、空間信号処理部512からの入力に対して復調及びデインターリーブ、デコードという送信時とは反対の処理を行ない、データ処理部501若しくは制御部502へデータを提供する。
【0065】
空間信号処理部512は、送信時には、必要に応じて変復調部511からの入力に対して空間分離に供される信号処理を行ない、得られた1つ以上の送信シンボル・ストリームをそれぞれの無線インターフェース部514へ提供する。一方、受信時には、空間信号処理部512は、それぞれの無線インターフェース514部から入力された受信シンボル・ストリームに対して信号処理を行ない、必要に応じてストリームの空間分解を行なって変復調部511へ提供する。
【0066】
チャネル推定部513は、それぞれの無線インターフェース部514からの入力信号のうち、プリアンブル部分及びトレーニング信号部分から伝搬路の複素チャネル利得情報を算出する。そして、算出された複素チャネル利得情報は制御部502を介して変復調部511での復調処理及び空間信号処理部512での空間処理に利用されることで、MUモードを可能にする。
【0067】
無線インターフェース部514は、送信時には空間信号処理部512からの入力をアナログ信号へ変換し、フィルタリング、及び搬送波周波数へのアップコンバートを実施し、アンテナ516又はアンプ部515へ送出する。一方、受信時には、無線インターフェース部514は、アンテナ516又はアンプ部515からの入力(搬送波周波数の受信信号)に対してダウンコンバートやディジタル信号への変換といった、送信時とは反対の処理を実施し、空間信号処理部512及びチャネル推定部513へデータを提供する。
【0068】
アンプ部515は、送信時には無線インターフェース部514から入力されたアナログ信号を所定の電力まで増幅してからアンテナ516へと送出する。また、アンプ部515は、受信時にはアンテナ516から入力された受信信号を所定の電力まで低雑音増幅してから無線インターフェース部514に出力する。このアンプ部515の送信時の機能と受信時の機能の少なくともどちらか一方が無線インターフェース部514に内包される場合がある。
【0069】
電源部504は、バッテリー電源又は商用電源などの固定電源で構成され、通信装置500内の各部に対し駆動用の電力を供給する。
【0070】
なお、通信装置500は、図示した以外の機能モジュールをさらに備えることもできるが、本明細書で開示する技術に直接関連しないので、ここでは図示並びに説明を省略する。
【0071】
無線LANシステムにおいて、各STAのCWを設定する方法は、APからの通知に従って設定する方法と、STAの裁量により設定する方法の2つに大別することができる。BOを設定する方法についても同様である。以下では、APの裁量により設定する方法を実施例1とし、STAの裁量により設定する方法を実施例2として説明する。
【実施例0072】
図6には、APからの通知に従ってSTA毎のCWを設定する場合における、無線LANシステム内の動作手順をフローチャートの形式で示している。
【0073】
無線LANにおいては、ランダムにチャネルにアクセスする仕様が採用されている。このため、APとその配下の各STAはネットワーク内で送信するためにお互いに競争する(ステップS601)。
【0074】
ここで、APは、各STAと接続する初期の段階で、MU機能を持つSTAの情報を既に入手している。そこで、APは、MU機能を持つ複数のSTAに対するチャネル・アクセス用のパラメータ(CWやBOなど)を設定して、これらの設定したチャネル・アクセス用のパラメータを記載したトリガー・フレームを作成する(ステップS602)。そして、APは、チャネルのアクセス権を獲得してから、チャネル・アクセス用のパラメータを記載した上記トリガー・フレームを、MUモードでAPへのアップリンクのデータ送信を許可する各STAに送信する(ステップS603)。
【0075】
トリガー・フレームを受信した各STAは、MUモードに切り替わり、トリガー・フレームの指示に従って、アップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し且つ同時に完了させる(ステップS604)。
【0076】
これに対し、APは、各STAから送信されたデータ・フレームの受信結果を通知する(ステップS605)。APは、M-BAフレーム(前述)を送信するか、ダウンリンク多重送信又は複数回のシングル・ユーザ送信で各STAにBAフレーム(図示しない)を送信することで、この受信結果を各STAに伝える。
【0077】
各STAは、APとの通信が完了後、すなわちMUモード終了後は、ステップS603で受信したトリガー・フレームに記載されたCW値に設定する(ステップS606)。例えば、MUモード下で送信したデータ・フレームをAPが受信に失敗した旨の通知を受けたSTAは、SUモードに復帰したときに、トリガー・フレームの記載に従って設定したCW値を用いてチャネルへのアクセス制御を実施することで、待ち時間を短縮し又は他のSTAとの衝突を回避することができる。
【0078】
上述した方法(1)は、APが自身の裁量でMUモード終了後の各STAのCW又はBOの少なくとも一方のパラメータ値を設定する方法である。APは、各STAに指定するCW又はBOのパラメータ値といった、STA側で送信待ち時間の設定に使用する情報をトリガー・フレームに記載して、アップリンク多重通信の開始合図として、各STA宛てに送信する。
【0079】
図7には、各STAに指定するCW又はBOのパラメータ値の記載を含むトリガー・フレームの構成例を示している。トリガー・フレームは、宛先となるSTA間で共通の情報以外、STA(ユーザ)毎の情報のためのユーザ情報(User Info)フィールドを持つ。
図7に示すフレーム構成例では、各STAに対してAPの裁量で設定したCW並びにBOのパラメータ値がそれぞれに対応しているUser Infoフィールドに記載されるように構成されている。また、図示の例では、各User InfoフィールドにはCW及びBOの両方のパラメータ値が含まれるが、いずれか一方のパラメータ値のみが含まれる構成でもよい。
【0080】
APが各STAのCW又はBOのパラメータ値を決める方法はいくつか考えられる。例えば、各STAの送信回数でCWを設定する方法、各STAの優先度に応じてCWを設定する方法、AC(Access Category)に応じてCWを設定する方法などを挙げることができる。
【0081】
APが各STAの送信回数に基づいてCWを設定する方法について、
図8に示す通信シーケンス例を参照しながら説明する。但し、同図中、各々の四角はフレームを示し、矢印は送信の方向(上向きがアップリンク、下向きがダウンリンク)を示している。また、APの配下で3台の端末局STA1、STA2、STA3が通信動作を行なうネットワーク構成を想定し、各STAはアップリンクのMU機能を備えているものとする。また、n回目のマルチユーザ送信直後にi番目の端末STAiに設定するCWの値を、CW_i_nと表記する。端末STAiは、CW_i_nにスロット時間を掛けて、n回目のマルチユーザ送信直後の送信待ち時間を算出することができる(以下、同様)。
【0082】
APは、チャネルのアクセス権を取得すると、STA1とSTA2からUL MUで受信する場合、UL MUを続く見込み時間に基づいてSTA1とSTA2の各々に設定したCWの値CW_1_1とCW_2_1を、1番目のトリガー・フレームに記載して送信する。なお、各STAに対応するBOの値Backoff_1_1とBackoff_2_1を設定することもあるが、説明の簡単化するために、これ以降は省略する。APは、自身の裁量により、STA1とSTA2の各々にCW_1_1とCW_2_1として異なる値を設定する。このため、STA1とSTA2は、UL MU終了後に同時にフレーム送信して衝突が発生することはない。
【0083】
STA1とSTA2は、トリガー・フレームの指示に従って、アップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。そして、APは、M-BAフレームを送信して、STA1とSTA2の各々から送信されたデータ・フレームの受信結果を通知する。図示の例では、STA1及びSTA2から送信されたデータ・フレームはいずれもAPで受信に成功したものとし、APはSTA1とSTA2宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。
【0084】
また、
図8に示す例では、APはさらに2回目のUL MUでSTAから受信する見込みである。そこで、1番目のトリガー・フレームに記載するSTA1とSTA2の各々に対するCWの設定値CW_1_1とCW_2_1の双方を、AP自身のCWの設定値CW_AP_1よりも大きく設定する。AP、STA1、STA2の各々に設定するCWの条件を以下に示しておく。
【0085】
CW_1_1≠CW_2_1
CW_1_1,CW_2_1>CW_AP_1
【0086】
1回目のUL MU送信が終了した後、APとSTA2は、ネットワーク内に送信予定があり、ともにバックオフを開始する。上記の通り、APがSTA2に設定し1番目のトリガー・フレームで指示したCWの値CW_2_1は、AP自身に設定したCWの値CW_AP_1より大きくなる。このため、1回目のUL MU送信が終了した後に、APが優先してチャンネルのアクセス権を取得する確率が高い。したがって、APは引き続き2番目のトリガー・フレームを送信することができ、2回目のUL MUでSTAから受信し易くなる。このとき、STA2は、バックオフを中断する。
【0087】
また、APは、2回目のUL MUでは、STA1とSTA3に対してアップリンクのデータ送信を許可するが、STA2にはデータ送信を許可しないので、2回目のUL MUを続く見込み時間に基づいてSTA1とSTA3の各々に設定したCWの値CW_1_2とCW_3_2を2番目のトリガー・フレームに記載して送信する。
【0088】
STA1とSTA3は、2番目のトリガー・フレームの指示に従って、2回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1とSTA3からのデータ・フレームの受信にともに成功し、STA1とSTA3宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。
【0089】
2回目のUL MU送信が終了した後、STA2は、まだ送信する予定があるため、APからの2度目のトリガー・フレーム送信により中断されたバックオフを再開する。ここで、SUモードに復帰する際に、STA2のCWはリセットされてない。このため、STA2は、2回目のUL MU送信が終了した後、CW_2_1の残りの値(すなわち、CW_2_1-CW_AP_1)でバックオフを再開するので、すぐチャネルのアクセス権を取得することができ、SUモードで送信を行ない易くなる。そして、APは、STA2からのデータ・フレーム(UL SU PPDU)の受信に成功すると、STA2宛てに受信結果を通知するS-BAを送信する。
【0090】
一方、1回目のUL MUモードが終了した時点でSTA1がSTA2とSTA3より多いUL MU送信権を取得した場合には、STA1の送信優先度を下げることにより、システムの公平性が向上する。例えば、以下の条件に従い、2度目のトリガー・フレームでSTA1のCW_1_2をSTA3のCW_3_2よりも大きくすることで、2回目のUL MUモードが終了した時点でのSTA3の送信待ち時間を短くして、STA1の送信優先度を下げる(若しくは、STA3の送信優先度を上げる)ことができる。また、STA1のCW_1_2を、STA2の残りの送信待ち時間に相当するCW値(CW_2_1-CW_AP_1)よりも大きく設定することで、2回目のUL MUモードが終了した時点でバックオフを再開するSTA2の送信待ち時間はSTA1の送信待ち時間よりも短くして、STA1の送信優先度を下げる(若しくは、STA2の送信優先度を上げる)ことができる。
【0091】
CW_1_2>CW_3_2
CW_1_2>CW_2_1-CW_AP_1
【0092】
上記の各STAのCW値の設定条件により、2回目のMUモード終了後のSTA1の送信開始時間を後回しにして、送信回数のより少ないSTA2とSTA3の送信優先度を確保することができるという効果がある。
【0093】
続いて、APが再送によるCWを設定する方法について、
図9に示す通信シーケンス例を参照しながら説明する。但し、同図中、各々の四角はフレームを示し、矢印は送信の方向(上向きがアップリンク、下向きがダウンリンク)を示している。また、APの配下で3台の端末局STA1、STA2、STA3が通信動作を行なうネットワーク構成を想定し、各STAはアップリンクのMU機能を備えているものとする。
【0094】
APは、チャネルのアクセス権を取得すると、STA1とSTA2からUL MUで受信する場合、STA1とSTA2の各々に設定したCWの値CW_1_1とCW_2_1を、1番目のトリガー・フレームに記載して送信する。
【0095】
ここで、APがさらに2回目のUL MUでSTAから受信する見込みである場合には、
図8に示した通信シーケンス例と同様に、1番目のトリガー・フレームに記載するSTA1とSTA2の各々に対するCWの設定値CW_1_1とCW_2_1の双方を、AP自身のCWの設定値CW_AP_1よりも大きく設定するようにしてもよい。
【0096】
STA1とSTA2は、トリガー・フレームの指示に従って、1回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1からのデータ・フレームの受信には成功するが、STA2からのデータ・フレームの受信に失敗する。そこで、APは、受信結果を通知するM-BAにおいて、STA2宛てのBAをなしにすることにより、STA2に対してデータの再送を促す。
【0097】
1回目のUL MU送信が終了した後、APはさらに2回目のUL MUでSTAから受信するためにバックオフを開始する。また、STA2は、APが受信に失敗したデータ・フレームを再送するためのバックオフを開始する。APがSTA2に設定し1番目のトリガー・フレームで指示したCWの値CW_2_1が、AP自身に設定したCWの値CW_AP_1より大きい場合には、APが優先してチャンネルのアクセス権を取得し、引き続き2番目のトリガー・フレームを送信する。このとき、STA2は、バックオフを中断する。
【0098】
また、APは、2回目のUL MUでは、STA1とSTA3に対してアップリンクのデータ送信を許可するが、STA2にはデータ送信を許可しないので、2回目のUL MUを続く見込み時間に基づいてSTA1とSTA3の各々に設定したCWの値CW_1_2とCW_3_2を2番目のトリガー・フレームに記載して送信する。
【0099】
STA1とSTA3は、2番目のトリガー・フレームの指示に従って、2回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1とSTA3からのデータ・フレームの受信にともに成功し、STA1とSTA3宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。一方、STA2は、2度目のトリガー・フレームでは送信が許可されないので2回目のUL MUでは、APが受信に失敗したデータを再送することはできない。
【0100】
2回目のUL MU送信が終了した後、STA2は、APにデータを再送する予定がまだあるため、APからの2度目のトリガー・フレーム送信によりデータ再送のためのバックオフを再開する。ここで、2回目のUL MUモードが終了した後にSTA2の再送を優先的に行なわせる。
【0101】
例えば、以下の条件に従い、2度目のトリガー・フレームでSTA1のCW_1_2を、STA2の残りの送信待ち時間に相当するCW値(CW_2_1-CW_AP_1)よりも大きく設定するとともに、STA3のCW_3_2を、STA2の残りの送信待ち時間に相当するCW値(CW_2_1-CW_AP_1)よりも大きく設定することで、2回目のUL MUモードが終了した時点でバックオフを再開するSTA2の送信待ち時間はSTA1及びSTA3の送信待ち時間よりも短くして、STA2の再送の優先度を上げることができる。
【0102】
CW_1_2>CW_2_1-CW_AP_1
CW_3_2>CW_2_1-CW_AP_1
【0103】
上記の各STAのCW値の設定条件によれば、STA1とSTA3の送信待ち時間を長く設定することにより、2回目のMUモード終了後に、仮にSTA1又はSTA3のうち少なくとも一方がバックオフを開始したとしても、STA2が優先して再送を行なうことができるという効果がある。
【0104】
すなわち、SUモードに復帰する際に、STA2は、CWの値をリセットせず、CW_2_1の残りの値(CW_2_1-CW_AP_1)でバックオフを再開するので、すぐチャネルのアクセス権を取得することができ、データ再送を行ない易くなる。そして、APは、STA2からのデータ・フレーム(UL SU PPDU)の受信に成功すると、STA2宛てに受信結果を通知するS-BAを送信する。
【0105】
続いて、APがACレベルに応じてCWを設定する方法について説明する。
【0106】
例えば、QoS(Quality of Service)機能の提供を目的とするIEEE802.11e規格で規定されているEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)では、パケットを4つのACに分類して各キューに格納し、AC毎の優先度に応じて送信する仕組みが採用されている。ここで言う4つのACは、AC_VO(Voice)、AC_VI(Video)、AC_BE(Best Effort)、AC_BK(Background)であり、各ACの優先度は
図10に示す通りである。
【0107】
MUの効果を最大限にするために、APは同じACを持つSTA同士を同時にUL MUモードでデータ送信を許可することが好ましいと思料される。そのために、APから送信されるトリガー・フレームのCommon Infoフィールド(
図7を参照のこと)には好ましいACレベルが記載され、これに対し、送信が許可されたSTA側ではそのACレベルに最も適合する信号を送信する。STAは、トリガー・フレームで送信が許可されたときには、そのトリガー・フレームで指定されたACレベルと同じ又はそれ以上の優先度を持つパケットをUL MUモードで送信するようにする。
【0108】
この方法では、APは複数のSTAに対して、それぞれのACレベルに応じてCWを設定する。ACレベルに応じたCWを設定する方法について、
図11に示す通信シーケンス例を参照しながら説明する。但し、同図中、各々の四角はフレームを示し、矢印は送信の方向(上向きがアップリンク、下向きがダウンリンク)を示している。また、APの配下で3台の端末局STA1、STA2、STA3が通信動作を行なうネットワーク構成を想定し、各STAはアップリンクのMU機能を備えているものとする。
【0109】
APは、チャネルのアクセス権を取得すると、1番目のトリガー・フレームのCommon Infoフィールドに好ましいACレベルを記載するとともに、送信を許可するSTA1とSTA2に対してACの優先度(
図10を参照のこと)に基づいて設定したCWの値を各々のUser Infoフィールドに記載して送信する。基本的には、優先度が高いACに対してより小さいCWの値を設定する。ここでは、STA1とSTA2のACレベルがより低いため、より大きいCWの値CW_1_1とCW_2_1を設定して、1番目のトリガー・フレームに記載して送信する。
【0110】
STA1とSTA2は、トリガー・フレームで指定されたACレベルと同じ又はそれ以上の優先度を持つパケットをUL MUモードでの送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1とSTA2からのデータ・フレームの受信にともに成功し、STA1とSTA2宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。
【0111】
1回目のUL MU送信が終了した後、APはさらに2回目のUL MUでSTAから受信するためにバックオフを開始し、チャンネルのアクセス権を取得すると、引き続き2番目のトリガー・フレームを送信する。ここで、APは、前回のMUモードより高いACレベルを設定するとともに、送信を許可するSTA1とSTA3に対してACレベルに応じてより小さいCWの値CW_1_2とCW_3_2を設定し、これらの情報を2番目のトリガー・フレームに記載して送信する。APは、例えば、以下の条件に従い、優先度の高いACレベルを指定する2度目のトリガー・フレームでは、STA1のCW_1_2を、優先度の低い1度目のトリガー・フレームに従ってSTA1及びSTA2がそれぞれ設定した送信待ち時間の残り時間に相当するCW値(CW_1_1-CW_AP_1及びCW_2_1-CW_AP_1)よりも小さく設定し、同様にSTA3のCW_3_2もこれらの残りの送信待ち時間に相当するCW値(CW_1_1-CW_AP_1及びCW_2_1-CW_AP_1)よりも小さく設定する。
【0112】
CW_1_2>CW_1_1-CW_AP_1,CW_2_1-CW_AP_1
CW_3_2>CW_1_1-CW_AP_1,CW_2_1-CW_AP_1
【0113】
さらに、STA1は既に2回のデータ送信を行なうことができるので、システムの公平性の観点から(前述)、送信回数に応じてSTA1の優先度を下げるため、CW_3_2をCW_1_2より小さい値に設定する。
【0114】
CW_3_2<CW_1_2
【0115】
STA1とSTA3は、2番目のトリガー・フレームの指示に従って、2回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1とSTA3からのデータ・フレームの受信にともに成功し、STA1とSTA3宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。
【0116】
2回目のUL MU送信が終了した後、STA3は、まだ送信する予定があるため、2番目のトリガー・フレームに記載されたCW設定値(CW_3_2)を用いて、バックオフを開始する。上述したように、CW_3_2は、STA1及びSTA2が1回目のUL MU送信後に設定したバックオフ時間の残り時間に相当するCW値(CW_1_1-CW_AP_1及びCW_2_1-CW_AP_1)のいずれよりも小さく、且つSTA1に2度目のトリガー・フレームで指定されるCW_1_2よりも小さい。したがって、ACレベルの高いUL MU送信を行なった後のSTA3が送信機会を獲得し易くなる。
【0117】
そして、STA3は、チャネルのアクセス権を取得することができたときには、SUモードにてAPへデータ・フレーム(UL SU PPDU)を送信する。そして、APは、STA3からのデータ・フレームの受信に成功すると、STA3宛てに受信結果を通知するS-BAを送信する。
【0118】
以上、APの裁量によりCWを設定する3つの方法について説明してきたが、実際の運用では、これら3つの方法を同時に用いて、APが総合的に判断して各STAのCW又はBOの値を制御するようにすればよい。
【0119】
図12には、本実施例において、APがトリガー・フレームを送信する際の処理手順をフローチャートの形式で示している。図示の処理手順は、基本的には、
図5に示した通信装置500がAPとして動作する際に、制御部502が中心となって実施する。
【0120】
APは、まず、トリガー・フレームの送信先、すなわち次のMUモードでAP自身にアップリンクのデータ送信を許可するSTAを決定する(ステップS1201)。
【0121】
次いで、APは、UL MUモードでの送信回数を設定する。その際、APが連続してUL MU通信を実施する見込みがある場合には、APは自身のCW値よりも大きいCW値を各STAに設定する(ステップS1202)。
【0122】
次いで、APは、送信を許可した各STAのUL MUモードでの送信回数をそれぞれ1ずつインクリメントする(ステップS1203)。
【0123】
そして、ステップS1201で送信を許可した各STAに対して、送信回数に応じたCW値を設定する(ステップS1204)。具体的には、送信回数の少ないSTAに対してより小さいCW値を設定する(前述)。
【0124】
さらにAPは、トリガー・フレームに記載するACレベルに応じて、各STAに対して設定したCW値の調整を行なう(ステップS1205)。
【0125】
次いで、APは、トリガー・フレームの送信先となる各STAが再送リストにあるかどうかをチェックする(ステップS1206)。そして、送信先のSTAが再送リストにある場合には(ステップS1206のYes)、そのSTAのCW値を短縮する(ステップS1207)。あるいは、ステップS1207では、再送リストに存在しない(すなわち、再送しない)STAのCW値を大きくする処理に置き換えてもよい。
【0126】
そして、APは、上記のようにして設定した各STAのCW値を、トリガー・フレーム中のそれぞれに該当するUser Infoフィールドに記載して(ステップS1208)、本処理ルーチンを終了する。
STAの裁量によりCW又はBOを設定する方法では、再送時以外に、各STAのCW又はBOの設定値をAPから指定するのではなく、STAがAPから受信したトリガー・フレームに記載された情報に基づいて、自己の裁量を加えてCW又はBOなどのパラメータ値を設定する。
このうち、Trigger CW ParameterとBackoff Parameterは、APが次のトリガー・フレームを送信するときのCWとBOの値をそれぞれ記載している。トリガー・フレームを受信した配下のSTAは、例えば、APのCW値よりも大きくなるCW値を自分の裁量で設定して、APが次に送信しようとするトリガー・フレームに割り込まないようにする。
また、Retry Paremeterは、再送を行なうSTAだけのためのCWの設定値であり、トリガー・フレームを受信したSTAが再送を行なうときのCW値を制御する。APは、優先度によりRetry Parameterを設定する。例えば、APは、ACレベルに応じてSTAの再送時のCW値を決定する。優先度が高いACレベルが記載されるトリガー・フレームに、より小さなRetry Parameterを記載することにより、複数のSTAが再送を行なうときには、ACの優先度が高いSTAが先に送信することができる。
なお、APが今回のUL MU通信終了後、しばらくUL MUを行なわないときには、例えばTrigger CW ParameterとBackoff Parameterにある値(例えば0)を記載することによって、配下のSTAに通知するようにしてもよい。このようなトリガー・フレームを受信したSTAは、既定の方法でバックオフを行なえばよい。
APは、さらに2回目のUL MUでSTAから受信する見込みである場合には、トリガー・フレーム内のTrigger CW Parameter又はBackoff Parameterの記載を通じて、自己が次のトリガー・フレームを送信するまでの待ち時間を通知することができる。これに対し、STA側では、自己の待ち時間を、トリガー・フレームで通知されたAPの待ち時間より大きく設定する。これにより、STAは、UL MU通信終了後にすぐにAPに割り込むことができなくなり、APは引き続きUL MU通信を開始し易くなる。
APは、チャネルのアクセス権を取得すると、STA1とSTA2に送信を許可する1番目のトリガー・フレームを送信する。このとき、APは、さらに2回目のUL MUでSTAから受信する見込みである場合には、トリガー・フレーム内のControl Parameterフィールド内にTrigger CW parameter又はBackoff Parameterを記載して、1回目のUL MU通信後にAP自身が次のトリガー・フレームを送信するまでの待ち時間(CW_AP_1)を、配下の各STAに通知する。
また、APは、トリガー・フレーム内のControl Parameterフィールド内にRetry Parameterに再送を行なうSTAだけのためのCWの設定値を記載して、トリガー・フレームを受信したSTAが再送を行なうときのCW値を制御することができる。
STA1とSTA2は、1番目のトリガー・フレームの指示に従って、1回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1からのデータ・フレームの受信には成功するが、STA2からのデータ・フレームの受信に失敗する。そこで、APは、受信結果を通知するM-BAにおいて、STA2宛てのBAをなしにすることにより、STA2に対してデータの再送を促す。
1回目のUL MU送信が終了した後、APはさらに2回目のUL MUでSTAから受信するためにバックオフを開始する。また、STA2は、APが受信に失敗したデータ・フレームを再送するためのバックオフを開始する。
このとき、STA2は、STA2自身の裁量により、自己のCW値を、1番目のトリガー・フレーム内のTrigger CW Parameter又はBackoff Parameterを通じて通知されたAPのCW値(CW_AP_1)よりも大きい値に設定する。このため、APが優先してチャンネルのアクセス権を取得することができ、引き続き2番目のトリガー・フレームを送信する。
あるいは、1番目のトリガー・フレームのRetry Parameterフィールドに、再送を行なうときだけのためのCW値が記載されているときには、STA2は、このCW値に基づく送信待ち時間を設定して、1回目のUL MU送信でAPが受信に失敗したデータ・フレームを再送するためのバックオフを開始する。APは、引き続きUL MU送信を行なわせる見込みがある場合には、自分に設定するCW値(CW_AP_1)よりも大きいCW値をRetry Parameterフィールドに記載する。したがって、STA2がRetry Parameterフィールドの記載に従ってデータ再送のための送信待ち時間を設定すると、APが優先してチャンネルのアクセス権を取得することができ、引き続き2番目のトリガー・フレームを送信する。
なお、APは、ACレベルに応じて再送時だけのためのCW設定値を決めることができる。例えば、1番目のトリガー・フレームでは、優先度が高いACレベルが記載されるとともに、高い優先度に応じてより小さなCW値がRetry Paremeterに記載され、2番目のトリガー・フレームでは、優先度が低いACレベルが記載されるとともに、低い優先度に応じてより大きなCW値がRetry Paremeterに記載されるとする。これにより、1回目のUL MU送信でAPが受信に失敗したデータの再送を行なうSTA2は、2回目のUL MU送信を失敗したSTAよりも、短い送信待ち時間を設定して、ACレベルが高いデータを先に再送することができるようになる。
STA1とSTA3は、2番目のトリガー・フレームの指示に従って、2回目のアップリンクのデータ・フレーム(UL MU PPDU)の送信を同時に開始し、且つ同時に完了させる。このとき、APは、STA1とSTA3からのデータ・フレームの受信にともに成功し、STA1とSTA3宛てに受信結果を通知するM-BAを送信する。一方、STA2は、2回目のUL MUでは、APが受信に失敗したデータを再送することはできない。
2回目のUL MU送信が終了した後、STA2は、APにデータを再送する予定がまだあるため、バックオフを再開する。ここで、SUモードに復帰する際に、STA2は、CWをリセットせず、CW設定値の残りの値でバックオフを再開するので、すぐチャネルのアクセス権を取得することができ、データ再送を行ない易くなる。そして、APは、STA2からのデータ・フレーム(UL SU PPDU)の受信に成功すると、STA2宛てに受信結果を通知するS-BAを送信する。
なお、APは、次のトリガー・フレームを送信するときのCWとBOの値を、トリガー・フレームではなくビーコン・フレームに記載してBSS内に報知することによっても、この方法を実現することができる。
(1)APから送信するトリガー・フレームを通して、MUモード終了後の各STAのチャネル・アクセス動作を制御することにより、MUモード終了直後の衝突を防ぐことができる。
(2)APがトリガー・フレームを送信する際のCWをSTAのCWよりも小さく設定し、又は、MUモード終了後のSTAのCWを大きくすることで、APから優先的にトリガー・フレームを送信できるようにして、SUモードよりもMUモードでの通信を優先的に行なわせることができる。
(3)MUモードからSUモードに切り替わる際に各STAのCWをリセットしないので、STAはMUモード終了後から送信までの待ち時間を短縮することができ、通信効率が向上する。
(4)STAの優先度に応じてCWを設定することにより、システム全体の効率を向上することができる。