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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060499
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】喫煙材料を加熱する器具
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20220407BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20220407BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20220407BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/46
A24F40/40
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026802
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2020109902の分割
【原出願日】2013-04-11
(31)【優先権主張番号】1207039.7
(32)【優先日】2012-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】サリーム、フォジア
(72)【発明者】
【氏名】ウッドマン、トーマス
(57)【要約】
【課題】喫煙材料を加熱してその成分の少なくとも1種を吸入するために揮発させるように構成されたフィルム加熱器を備える器具を提供する。
【解決手段】喫煙材料を加熱する器具1はエネルギー源2、加熱器3、および加熱室4を備える。エネルギー源2は、リチウムイオン電池、ニッケル電池、アルカリ電池および/または同様の電池を備えてもよく、加熱器3に電気的に接続されていて必要時に電気エネルギーを加熱器3に供給する。加熱室4は喫煙材料5を収容するように構成されており、加熱室4内で喫煙材料5を加熱できるようになっている。喫煙材料5を加熱して喫煙材料の少なくとも1種の成分を、吸引するために揮発させるように構成されたフィルム加熱器3を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具であって、
喫煙材料を収容するように構成された加熱室と、
喫煙材料を加熱して前記喫煙材料の少なくとも1種の成分を吸引用に揮発させるように構成されたフィルム加熱器と、
前記加熱器の表面に取り付けられた1つ以上の感知器と、
制御器と、
を備え、
前記加熱室は、使用時に前記加熱器からの熱エネルギーが前記加熱室において前記喫煙材料を加熱するように前記加熱器に隣接して配置されており、
前記1つ以上の感知器が、抵抗の測定値を得るとともに、前記抵抗の測定値を前記制御器に送るように構成されており、前記制御器は、前記抵抗の測定値に基づき前記加熱器の温度を維持又は調整するように構成されている、器具。
【請求項2】
前記加熱室は、喫煙材料を有するカートリッジ又は実質的に中実の喫煙材料の塊を収容するように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記1つ以上の感知器が、抵抗温度検出器(RTD)を備える、請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記フィルム加熱器はポリイミドフィルム加熱器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記加熱器は1mm未満の厚みを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記加熱器は0.5mm未満の厚みを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記加熱器は約0.2mm~0.0002mmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の器具。
【請求項8】
断熱部を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記断熱部が、前記加熱器と一体であることを特徴とする、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記断熱部が、前記加熱器で覆われていることを特徴とする、請求項8に記載の器具。
【請求項11】
前記断熱部が、障壁で前記加熱器と分離されていることを特徴とする、請求項8に記載の器具。
【請求項12】
前記喫煙材料の揮発した成分を吸引するための吸い口を備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の器具。
【請求項13】
前記喫煙材料を燃焼させず加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の器具。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の器具を用いる喫煙材料の加熱方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の器具と共に用いるための喫煙材料。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の器具と、
前記器具と共に用いるための喫煙材料と、
を備えるシステム。
【請求項17】
吸引のために喫煙材料の少なくとも1種の成分を揮発させるために喫煙材料を加熱することを含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の器具を用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱喫煙材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコや葉巻のような喫煙品は、使用中にタバコを燃焼してタバコ煙を発生させる。これらの喫煙品の代替品を、タバコ煙を発生しない合成物を放出する生成物を作製することにより提供しようとする複数の試みが行われてきた。そのような生成物の具体例がいわゆる加熱非燃焼製品であり、タバコを加熱するが燃焼させずに合成物を放出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によれば、喫煙材料を加熱してその成分の少なくとも1種を吸入するために揮発させるように構成されたフィルム加熱器を備える器具が提供される。
【0004】
フィルム加熱器はポリイミドフィルム加熱器でもよい。
【0005】
加熱器は1mm未満の厚みを有してもよい。
【0006】
加熱器は0.5mm未満の厚みを有してもよい。
【0007】
加熱器は、約0.2mm~0.0002mmの厚みを有してもよい。
【0008】
器具は加熱器と一体の断熱部を備えてもよい。
【0009】
器具は加熱器と並べられた断熱部を備えてもよい。
【0010】
器具は、加熱器と障壁で隔離された断熱部を備えてもよい。
【0011】
障壁はステンレス鋼の層を備えてもよい。
【0012】
断熱部は、その外側よりも低い圧力に減圧された中心領域を備えてもよい。
【0013】
中心領域の両側の断熱部の壁部は封止された気体出口に収束してもよい。
【0014】
断熱部の厚みは約1mm未満でもよい。
【0015】
断熱部の厚みは約0.1mm未満でもよい。
【0016】
断熱部の厚みは約1~0.001mmでもよい。
【0017】
器具は喫煙材料の揮発した成分を吸入するための吸い口を備えてもよい。
【0018】
器具は喫煙材料を加熱するが燃焼させないように構成されてもよい。
【0019】
本発明によれば、この器具を製造する方法およびこの器具を用いて喫煙材料を加熱する方法が提供される。
【0020】
断熱部を喫煙材料加熱室と器具の外側との間に配置して、加熱された喫煙材料からの熱損失を低減してもよい。
【0021】
断熱部を加熱室の周りに同軸に配置してもよい。
【0022】
喫煙材料加熱室は実質的に管状の加熱室を構成してもよく、断熱部を管状の加熱室の長手方向表面周りに配置してもよい。
【0023】
断熱部は加熱室周りに配置された実質的に管状体を備えてもよい。
【0024】
喫煙材料加熱室を断熱部と加熱器の間に配置してもよい。
【0025】
加熱器を喫煙材料加熱室と断熱部の間に配置してもよい。
【0026】
断熱部を加熱器の外側に配置してもよい。
【0027】
加熱器を加熱室の周りに同軸に配置してもよく、断熱部を加熱器の周りに同軸に配置してもよい。
【0028】
断熱部は赤外放射反射材料を備えて赤外放射が断熱部を通過して伝搬するのを低減してもよい。
【0029】
断熱部は中心領域を取り囲む外壁を備えてもよい。
【0030】
壁の内面は赤外放射煩反射被膜を備えて赤外放射を中心領域内に反射してもよい。
【0031】
壁は少なくとも約100ミクロンの厚みを有するステンレス鋼の層を備えてもよい。
【0032】
中心領域の両側の複数の壁部を、その間にある遠回りの経路を通る連結壁部で接続してもよい。
【0033】
中心領域内の圧力は約0.1~約0.001ミリバールでもよい。
【0034】
断熱部の熱通過率は、断熱部の温度範囲が150~250℃の場合、約1.10~約1.40W/(mK)でもよい。
【0035】
中心領域は多孔質材料を備えてもよい。
【0036】
収束壁部は断熱部の端部領域に収束してもよい。
【0037】
加熱器は電動式でもよい。
【0038】
添付図面を参照し、本発明の実施形態を以下に単に例示目的で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】喫煙材料を加熱して喫煙材料から芳香成分および/またはニコチンを放出するように構成された器具の概略の断面図である。
図2】喫煙材料を加熱して喫煙材料から芳香成分および/またはニコチンを放出するように構成された器具の一部を切り取った透視図である。
図3】喫煙材料を加熱するように構成された器具の一部を切り取った透視図である。図中、喫煙材料は放射状の複数の加熱部に分割された細長いセラミックヒーターの周りに供給されている。
図4】喫煙材料を加熱するように構成された器具の一部を切り取った展開図である。図中、喫煙材料は放射状の複数の加熱部に分割された細長いセラミックヒーターの周りに供給されている。
図5】吸引中に加熱領域を活性化し、加熱室弁を開閉する方法を示す流れ図である。
図6】喫煙材料を加熱するように構成された器具を通過する気流の概略説明図である。
図7】加熱器を用いて喫煙材料を加熱するのに用いることができる加熱様式を説明する線図である。
図8】加熱中に喫煙材料を圧縮するように構成された喫煙材料圧縮器の概略図である。
図9】加熱中に喫煙材料を膨張させるように構成された喫煙材料膨張器の概略図である。
図10】加熱中に喫煙材料を圧縮し、吸引用に喫煙材料を膨張させる方法を示す流れ図である。
図11】加熱された喫煙材料の熱損失を防ぐように構成された真空断熱部の概略断面図である。
図12】加熱された喫煙材料の熱損失を防ぐように構成された真空断熱部の別の概略断面説明図である。
図13】熱抵抗性の熱橋(熱の逃げ道)の概略断面説明図である。熱橋は高温の断熱部壁から低温の断熱部壁へ遠回りの経路を通っている。
図14】遮熱部および熱透過窓の概略断面説明図である。遮熱部および熱透過窓は喫煙材料塊に対し相対移動することができ、それによって熱エネルギーが選択的にこの窓を通って喫煙材料の複数の異なる部分に伝わることができるようにしている。
図15】喫煙材料を加熱するように構成された器具の一部の概略断面説明図である。図中、加熱室は逆止弁によって密閉自在である。
図16】喫煙材料を加熱するように構成された器具を断熱するように構成された高真空断熱部の一部の概略断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に使用されているように「喫煙材料」には、加熱すると揮発成分を出す任意の材料および任意のタバコ含有材料が含まれ、例えばタバコ、タバコ派生物、拡張タバコ、再生タバコ、またはタバコ代替品の1種以上を含んでもよい。
【0041】
喫煙材料を加熱する器具1はエネルギー源2、加熱器3、および加熱室4を備える。エネルギー源2は、リチウムイオン電池、ニッケル電池、アルカリ電池および/または同様の電池を備えてもよく、加熱器3に電気的に接続されていて必要時に電気エネルギーを加熱器3に供給する。加熱室4は喫煙材料5を収容するように構成されており、加熱室4内で喫煙材料5を加熱できるようになっている。例えば、加熱器3に隣接して加熱室4を配置し、その中の喫煙材料5を加熱器3の熱エネルギーで燃焼させずに加熱して喫煙材料5の芳香成分およびニコチンを揮発させるようにしてもよい。吸い口6が設けられており、使用者が器具1を使用中に蒸発した成分をこの吸い口6を介して吸入することができる。喫煙材料5はタバコ配合物を含んでいてもよい。
【0042】
器具1のエネルギー源2および加熱器3のような要素を、ハウジング7に収容してもよい。図1に示す様に、ハウジング7はほぼ円筒状の管を構成し、その第1の端部8の方にエネルギー源2を、その反対側である第2の端部9の方に加熱器3および加熱室4を配置している。エネルギー源2および加熱器3はハウジング7の長手方向軸に沿って延びている。例えば図1に示す様に、エネルギー源2および加熱器3をハウジング7の中心長手方向軸に沿って実質的に端と端が接した配置に整列させ、エネルギー源2の端面と加熱器3の端面とが向かい合うようにすることができる。ハウジング7の長さは約130mmでもよく、エネルギー源の長さは約59mmでもよく、加熱器3および加熱領域4の長さは約50mmでもよい。ハウジング7の直径は約15~約18mmでもよい。例えば、ハウジングの第1の端部8の直径は18mmでもよく、ハウジングの第2の端部9の吸い口6の直径は15mmでもよい。加熱器3の直径は約2.0~約6.0mmでもよい。加熱器3の直径は例えば約4.0~約4.5mmでもよく、または約2.0~約3.0mmでもよい。これらの範囲以外の加熱器の直径および厚みを代わりに用いてもよい。例えば、ハウジング7の直径および器具1全体の大きさを、後述するフィルム状の加熱器3および真空断熱部18を用いて大幅に小さくすることができる。加熱室4の奥行きは約5mmでもよく、加熱室4はその外表面で約10mmの外径を有してもよい。エネルギー源2の直径は約14.0~約15.0mm、例えば14.6mmでもよい。しかし、さらに小さい直径のエネルギー源2を代わりに用いることもできる。
【0043】
エネルギー源2と加熱器3の間に断熱部を設けて、一方から他方へ熱が直接伝わらないようにしてもよい。吸い口6をハウジング7の第2の端部9に加熱室4および喫煙材料5に隣接して配置することができる。ハウジング7は、使用者が使用中に器具1を握るのに適しているため、使用者が喫煙材料の揮発成分を器具1の吸い口6から吸入することができる。
【0044】
加熱器3はフィルム状のポリイミド加熱器3のようなフィルム加熱器3を備えてもよい。一具体例はカプトン(Kapton(登録商標))ポリイミド加熱器3である。代わりに他の材料を用いることもできる。フィルム加熱器3は引張強度および対裂断抵抗が大きい。加熱器3の絶縁強度は約1000VACでもよい。フィルム加熱器3は厚みが薄く、例えば1mm未満であり、他の種類の加熱器を使用するよりも器具1の小型化に大きな貢献をすることができる。フィルム3の一例示的な厚みは約0.2mmであるが、厚み寸法がさらに薄いおよび厚い加熱器3を代わりに用いることができる。例えば、フィルム加熱器3の厚みは約0.0002mmまで薄くてもよい。加熱器3の出力は約5~約8W/cmでもよいが、この出力はさらに小さくてもよく、必要ならこの出力を経時的に制御してもよい。フィルム加熱器3は必要なら透明でもよく、そのようにすると内部構造を容易に検査することができる。そのように検査が簡単であると、品質管理および保守作業に便利な場合がある。加熱室4内の喫煙材料を加熱するために、フィルム加熱器3に、エッチングされたフィルム状の加熱要素を1個以上組み込んでもよい。加熱器3の作動温度は例えば最大約260℃でもよい。器具1は加熱器3の温度制御に用いる抵抗温度検出器(RTD)または熱電対を備えてもよい。加熱器3の表面に感知器を取り付けてもよい。感知器は抵抗の測定値を制御器12に送るように構成されており、制御器12によって加熱器3の温度を維持または必要に応じて調整することができるようになっている。例えば制御器12は加熱器3の電源を入り切りして所定時間ある温度に維持してもよく、またはその温度をある加熱方法に従って変化させてもよい。制御器12および具体的な加熱方法の例を以下にさらに詳細に述べる。フィルム加熱器3の質量は小さいため、このフィルム加熱器3を使用して器具1の全質量を容易に低減することができる。
【0045】
図1に示す様に、加熱器3は別々の加熱領域10を複数備えてもよい。複数の加熱領域10は互いに独立して作動可能で、異なる領域10を異なる時間に活性化して喫煙材料5を加熱することができるようになっていてもよい。加熱領域10は加熱器3の中にどのような幾何学的な配置で配置されてもよい。しかし図1に示す具体例では、加熱領域10は、その1つ1つが主に喫煙材料5の異なる領域を個別に加熱できるように、加熱器3内に幾何学的に配置されている。
【0046】
例えば図1および2を参照すると、加熱器3は軸方向に実質的に細長い配置に整列された複数の加熱領域10を備えてもよい。複数の領域10はそれぞれが加熱器3の個々の要素を構成してもよい。例えば複数の加熱領域10は全てが加熱器3の長手方向軸に沿って互いに整列していて、加熱器3の長さに沿って複数の独立した加熱区域を提供していてもよい。
【0047】
図1を参照すると、各加熱領域10は中空の加熱筒10を構成してもよい。この加熱筒10は加熱器3の全体の長さより大幅に短い有限長の環10でもよい。複数の加熱領域10を軸方向に整列させて配置することによって加熱室4の外側が規定され、加熱領域10が加熱室4内に置かれた喫煙材料5を加熱するように構成される。熱は主に内向きに加熱室4の中心長手方向軸に向かって加えられる。複数の加熱領域10は互いにその半径方向の面すなわち横断面を向き合わせて、加熱器3の長さに沿って配置されている。各加熱領域10の横断面とそれらの隣り合う加熱領域10の横断面とは、図1に示し以下に述べるように断熱部18によって分離されていてもよい。
【0048】
または図2に示す様に、加熱器3をハウジング7の中心領域に配置してもよく、加熱器3の長手方向表面の周りに加熱室4および喫煙材料5を配置してもよい。この配列では、加熱器3が放射する熱エネルギーは加熱器3の長手方向表面から外向きに移動し、加熱室4および喫煙材料5に入る。
【0049】
加熱領域10はそれぞれが加熱器3の独立した要素を構成してもよい。図1および2に示す様に、各加熱領域10は、加熱器3全体の長さよりも大幅に短い有限長を有する加熱筒10を構成してもよい。しかし、加熱器3の他の構成を代わりに用いることも可能であり、つまり円筒断面をしたフィルム加熱器3を用いる必要もなくなる。複数の加熱領域10を、それらの横断面が互いに加熱器3の長さに沿って向き合うように整列させてもよい。各領域10の横断面がその隣の領域10の横断面に接触していてもよい。あるいは領域10の横断面の間に断熱部または熱反射層を存在させて、領域10の1つ1つから放射される熱エネルギーが隣り合う領域10を実質的に加熱せず、主に加熱室4および喫煙材料5に移動するようにしてもよい。各加熱領域10は他の領域10と実質的に同じ寸法を有してもよい。
【0050】
この方法では、加熱領域10の特定の1つを活性化すると、その加熱領域10は例えば半径方向の隣に配置された喫煙材料5に熱エネルギーを供給し、残りの喫煙材料5を実質的に加熱しない。図2を参照すると、喫煙材料5の加熱領域は、活性化されている加熱領域10の周りに配置された環状の喫煙材料5を構成してもよい。したがって喫煙材料5の例えば環状または実質的に中実円筒状の複数部分を別々に加熱することができる。このとき、それぞれの部分は複数の加熱領域10の特定の1つに直接隣接して配置された喫煙材料5に相当し、喫煙材料5全体の塊よりも大幅に少ない質量および体積を有する。
【0051】
さらにまたは代わりに、加熱器3は、加熱器3の中心長手方向軸周りの異なる複数の場所に配置され細長く長手方向に延びる加熱領域10を備えてもよい。複数の加熱領域10は長さが異なってもまたは実質的に同じ長さでもよく、それぞれが加熱器3の実質的に全長に沿って延びるようになっている。
【0052】
喫煙材料5の加熱部分は、長手方向の加熱領域10に平行かつそれに直接隣接して横たわる喫煙材料5の長手方向の部分を構成しもよい。したがって先に説明したように、喫煙材料5の複数の部分を別々に加熱することができる。
【0053】
さらに後述のように、複数の加熱領域10をそれぞれ別々にかつ選択的に活性化することができる。
【0054】
喫煙材料5を、加熱室4に挿入可能なカートリッジ11上に構成してもよい。例えば図1に示す様に、カートリッジ11は加熱器3の凹みに収まる円筒のような実質的に中実の喫煙材料5の塊を構成することができる。この構成では、喫煙材料塊の外面が加熱器3と向かい合う。あるいは図2に示す様に、カートリッジ11は加熱器3の周りに挿入可能な喫煙材料の管11を構成することができ、喫煙材料の管11の内面が加熱器3の長手方向表面と向き合うようになる。喫煙材料の管11は中空でもよい。管11の中空中心部の直径は、管11が加熱器3の周りにぴったり収まるように加熱器3の直径すなわち横断寸法と実質的に同じでもまたはそれよりも僅かに大きくてもよい。カートリッジ11の長さは加熱器3の長さとほぼ同じでもよく、加熱器3がカートリッジ11をその全長に沿って加熱できるようになっている。
【0055】
器具1のハウジング7は開口を備え、その開口を通ってカートリッジ11を加熱室4に挿入することができてもよい。開口は例えば、ハウジングの第2の端部9に配置された開口を構成し、その開口にカートリッジ11を挿入し加熱室4内に直接押し込むことができるようになっていてもよい。好ましくは、器具1の使用中はこの開口は喫煙材料5を加熱するために閉じられる。あるいはハウジング7の一部は第2の端部9において器具1から取り外し自在であり、喫煙材料5を加熱室4に挿入することができるようになっている。必要なら使用者が操作可能な内部機構のような喫煙材料取り外し装置を器具1に設けてもよい。この取り外し装置は使用済みの喫煙材料5を加熱器3から滑らせて外す、ならびに/あるいは分離するように構成されている。例えば使用済みの喫煙材料5をハウジング7の開口から押し戻してもよい。必要ならその後新しいカートリッジ11を挿入することができる。
【0056】
先に述べたように、器具1は器具1の作動を制御するように構成された制御器12例えば超小型制御器12を備えてもよい。制御器12は器具1のエネルギー源2および加熱器3のような他の要素に電気的に接続されており、信号の送受信によって他の要素を制御できるようになっている。具体的には、制御器12は加熱器3の活性化を制御して喫煙材料5を加熱するように構成されている。例えば、制御器12は加熱器3を活性化するように構成され、これには使用者が器具1の吸い口6を吸引すると1つ以上の加熱領域10を選択的に活性化することを含んでもよい。その際、制御器12は吸入感知器13と適切な連通結合を介して繋がっていてもよい。吸入感知器13は吸い口6で吸引が発生したときを検出するように構成されており、検出すると吸引を示す信号を制御器12に送るように構成されている。電子信号を用いてもよい。制御器12は吸入感知器13からの信号に対し加熱器3を活性化して応答し、そうやって喫煙材料5を加熱してもよい。しかし、加熱器3の活性化に吸入感知器13を用いることは必須ではなく、加熱器3を活性化する刺激を供給する他の代替手段を用いることができる。例えば制御器12は別の種類の活性化刺激、例えば使用者が操作できる作動装置の作動に応じて加熱器3を活性化してもよい。その結果、加熱中に放出された揮発成分を使用者が吸い口6から吸入することができる。制御器12は、ハウジング7内の適切であればどの位置に配置してもよい。一例示的位置は図4に示すようにエネルギー源2と加熱器3/加熱室4の間である。
【0057】
加熱器3が上記のように2つ以上の加熱領域10を備える場合、加熱領域10を所定の順序または様式で活性化するように制御器12を構成してもよい。例えば、複数の加熱領域10を加熱室4に沿って、または加熱室4の周りで連続的に活性化するように制御器12を構成してもよい。各加熱領域10を、吸入感知器13が吸引を検出するのに応答して活性化してもよく、または後述のような別の方法で活性化してもよい。
【0058】
図5を参照すると、一例示的加熱方法は、第1の吸引のような活性化刺激が検知される第1の工程S1を備え、その後第2の工程S2が続いてもよい。第2の工程S2では、第1の吸引または他の活性化刺激に応じて喫煙材料5の第1の部分が加熱される。第3の工程S3では、封止可能な吸排気弁24を開けて空気を加熱室4から吸引し、吸い口6から器具1の外に出せるようにしてもよい。第4の工程で弁24は閉じられる。これらの弁24についてはこの後、図20で詳細に述べる。第5のS5工程、第6のS6工程、第7のS7工程、および第8のS8工程では、第2の活性化刺激例えば第2の吸引に応じて、加熱室吸排気弁24をそれに合わせて開放ならびに閉鎖することによって喫煙材料5の第2の部分を加熱してもよい。第9のS9工程、第10のS10工程、第11のS11工程、および第12のS12工程では、第3の活性化刺激例えば第3の吸引に応じて、加熱室吸排気弁24をそれに合わせて開放ならびに閉鎖することによって喫煙材料5の第3の部分を加熱してもよく、同様に続く。上記のように、吸入感知器13以外の代替手段を使用することができる。例えば器具1の使用者が制御スイッチを作動させて新規に吸引していることを示してもよい。この方法の場合、新規の吸引ごとに喫煙材料5の新規の部分を加熱してニコチンおよび芳香成分を揮発させてもよい。喫煙材料5の加熱領域10の数および/または別々に加熱可能な部分の数はカートリッジ11の予定の吸引数と一致していてもよい。あるいは別々に加熱することが可能な各喫煙材料部分5を対応した加熱領域10によって、複数回の吸引、例えば2回、3回、または4回の吸引ごとに加熱し、前の喫煙材料部分の加熱中に複数回の吸引が終了した場合のみ、喫煙材料5の新規部分を加熱するようにしてもよい。
【0059】
各加熱領域10を個々の吸引に応じて活性化する代わりに、吸い口6の最初の1回の吸引に応じて複数の加熱領域10を連続的に代わる代わる活性化してもよい。例えば、特定の喫煙材料カートリッジ11の予定吸引時間の間中、複数の加熱領域10を定期的な所定の間隔で活性化させてもよい。吸引時間は例えば約1~約4分でもよい。したがって図5に示す少なくとも第5の工程S5および第9の工程S9は任意である。各加熱領域10を1回または複数回の吸引時間に相当する所定の時間作動させて、別々に加熱可能な対応する喫煙材料部分5をこの時間だけ加熱するようにしてもよい。あるカートリッジ11の全ての加熱領域10が活性化したら使用者にそのカートリッジ11の交換の必要性を示すように制御器12を構成してもよい。制御器12は例えばハウジング7の外面の表示灯を点灯させてもよい。
【0060】
当然だが、加熱器3全体を活性化するのではなく個々の加熱領域10を順次活性化することで、喫煙材料5の加熱に要するエネルギーが、カートリッジ11の全吸引時間中ずっと加熱器3が全て活性化される場合に必要なエネルギーよりも低減される。したがってエネルギー源2の必要最大出力も低減される。すなわち、より小型軽量のエネルギー源2を器具1に搭載することができることになる。
【0061】
吸引と吸引の間は加熱器3を停止するように、または加熱器3に供給される電力を減らすように制御器12を構成してもよい。こうすることによってエネルギーが節約され、エネルギー源2の持続時間が延びる。例えば使用者が器具1のスイッチを入れると、または使用者が唇を吸い口6に接触させるのを検出するというような何らかの他の刺激に応じて、加熱器3または次の加熱領域10を用いて喫煙材料5を加熱し、不完全に活性化させるように制御器12を構成し、喫煙材料5が成分の揮発のために予備加熱されるようにしてもよい。この不完全な活性化では、喫煙材料5はニコチンを揮発させるのに十分な温度までは熱くならない。適切な温度は約100℃にすることができる。吸入感知器13による吸引の検出に応じて、制御器12は当該加熱器3または当該加熱領域10で喫煙材料5をさらに加熱して、使用者が吸引するニコチンおよび他の芳香成分を瞬時に揮発させることができる。喫煙材料5がタバコを含む場合、ニコチンおよび他の芳香成分の揮発に適切な温度は150~250℃でもよい。したがって、一例示的完全作動温度は250℃である。必要なら、喫煙材料5を揮発温度まで加熱するのに用いられる最大電流の供給に電気二重層コンデンサー(super-capacitor)を用いることができる。適切な加熱様式の一具体例を図7に示す。ここでは、複数の最大値はそれぞれ別の加熱領域10の完全活性化を表してもよい。図からわかるように、喫煙材料5はほぼ吸引時間(この具体例では2秒)だけ揮発温度に維持されている。
【0062】
加熱器3の3つの例示的作動形態について以下に述べる。
【0063】
第1の作動形態では、ある加熱領域10が完全に活性化している間、加熱器の他の加熱領域10は全て停止している。したがって、新たな加熱領域10が活性化すると、前の加熱領域は停止する。電力は活性化した領域10にのみ供給される。
【0064】
代わって第2の作動形態では、ある加熱領域10が完全に活性化している間、他の加熱領域10の1つ以上が不完全に活性化していてもよい。上記の1つ以上の他の加熱領域10の不完全な活性化は、それらの加熱領域10をある温度までしか加熱しないことを含んでもよく、その温度では、加熱室4内の喫煙材料5から揮発した成分、例えばニコチンを実質的に濃縮させない。不完全に活性化した加熱領域10の温度は完全に活性化している加熱領域10の温度未満である。不完全に活性化した領域10に隣接して配置されている喫煙材料5は、その成分を揮発させるほどの温度までは加熱されない。
【0065】
代わって第3の作動形態では、ある加熱領域10が活性化すると、その加熱領域10は加熱器3のスイッチが切られるまで完全に活性化したままになる。したがってカートリッジ11からの吸引中はより多数の加熱領域10が活性化されるため、加熱器3に供給される電力は徐々に増える。上述の第2の形態と同様に加熱領域10を連続的に活性化することによって、加熱室4内の喫煙材料5から揮発したニコチンのような成分の濃縮が実質的に抑制される。
【0066】
器具1は、加熱器3と加熱室4/喫煙材料5の間に配置された遮熱部3aを備えてもよい。遮熱部3aは、熱エネルギーが遮熱部3aを通過して実質的に流れないように構成されており、したがってこの遮熱部3aを用いると、加熱器3が活性化され熱エネルギーを放射しているときであっても、喫煙材料5を選択的に加熱されないようにすることができる。図14を参照すると遮熱部3aは、例えば加熱器3の周りに同軸に配置された熱反射材料の円筒状の層を備えてもよい。あるいは図1を参照して述べたように加熱器3が加熱室4および喫煙材料5の周りに配置されている場合は、遮熱部3aは加熱室4の周りに同軸にかつ加熱器3の内部に同軸に配置された熱反射材料の円筒状の層を備えてもよい。遮熱部3aは、加熱器3を喫煙材料5から隔離するように構成された断熱層を追加的にまたは代わりに備えてもよい。
【0067】
遮熱部3aは実質的に熱透過性の窓3bを備える。窓3bによって熱エネルギーが窓3bを通って加熱室4および喫煙材料5に伝わるようになる。したがって、喫煙材料5の窓3bと整列している部分は加熱され、残りの部分は加熱されない。遮熱部3aおよび窓3bは喫煙材料5に対して回転自在または可動式でもよいため、遮熱部3aおよび窓3bを回転または移動させることによって喫煙材料5の異なる部分を選択的にかつ別々に加熱することができる。その効果は上記の加熱領域10を選択的かつ別々に活性化させることにより得られる効果と同様である。例えば、遮熱部3aおよび窓3bを吸引検出器13の信号に応じて徐々に回転または移動させてもよい。加えてまたは代わりに遮熱部3aおよび窓3bを所定の加熱経過時間で徐々に回転または移動させてもよい。遮熱部3aおよび窓3bの移動または回転を制御器12の電子信号で制御してもよい。遮熱部3a/窓3bと喫煙材料5の相対的な回転またはその他の移動を、制御器12に制御されたステッピングモーター3cで駆動してもよい。これを図14に説明している。あるいは遮熱部3aおよび窓3bをハウジング7の作動装置のような使用者の制御を用いて回転させてもよい。遮熱部3aは円筒状である必要はなく、必要なら適切に位置決めされた長手方向に延びる1つ以上の要素および/または板を構成してもよい。
【0068】
当然だが、加熱器3、遮熱部3a、および窓3bに対して喫煙材料5を相対回転または相対移動させても同様の結果を得ることができる。例えば、加熱室4が加熱器3周りに回転自在でもよい。この場合、遮熱部3aの移動に関する上記の記述を、加熱室4の遮熱部3aに対する相対移動の代わりに適用することができる。
【0069】
遮熱部3aは加熱器3の長手方向表面の被覆を含んでもよい。この場合、加熱器表面の一部領域は被覆されず、熱透過窓3bを形成している。加熱器3を例えば制御器12による制御または使用者による制御によって回転または移動させて、喫煙材料5の異なる部分を加熱することができる。代わりに遮熱部3aおよび窓3bは独立した遮蔽部3aを構成してもよい。この遮蔽部3aは、制御器12による制御またはその他の使用者による制御によって、加熱器3および喫煙材料5の両方に対し相対回転または相対移動することができる。
【0070】
器具1は吸気口14を備えてもよい。吸気口14によって、吸引中に外気をハウジング7内に吸引し、加熱された喫煙材料5内を通過させることができる。吸気口14はハウジング7の開口14を構成してもよく、喫煙材料5および加熱室4からハウジング7の第1の端部8に向かって上流に配置されてもよい。これを図1に示す。別の具体例を図6に示す。吸気口14を通って吸引された空気は加熱された喫煙材料5内を移動し、その中で芳香蒸気のような喫煙材料の蒸気が混入され、その後吸い口6から使用者によって吸入される。必要なら図6に示す様に器具1は、喫煙材料5に入る前の空気を暖めるように、および/または吸い口6から吸引される前の空気を冷やすように構成された熱交換器15を備えてもよい。例えば熱交換器15は、吸い口6に入る空気から抽出された熱を用いて喫煙材料5に入る前の新しい空気を暖めるように構成されてもよい。
【0071】
器具1は喫煙材料の圧縮器16を備えてもよい。圧縮器16は起動されると喫煙材料5を圧縮するように構成されている。また器具1は喫煙材料の膨張器17も備えることができる。膨張器17は起動されると喫煙材料5を膨張させるように構成されている。圧縮器16および膨張器17は実際には以下の説明のように同一の装置として実装されてもよい。喫煙材料の圧縮器16および膨張器17は制御器12による制御によって必要に応じて作動してもよい。この場合、制御器12は電気信号のような信号を圧縮器16または膨張器17に送るように構成されており、それによって圧縮器16または膨張器17がそれぞれ喫煙材料5を圧縮あるいは膨張させる。代わりに圧縮器16および膨張器17を器具1の使用者がハウジング7の手動式の制御によって起動して、喫煙材料5を必要に応じて圧縮または膨張させてもよい。
【0072】
基本的に圧縮器16は、喫煙材料5を圧縮しそれによって加熱中の喫煙材料5の密度を上げるように構成されている。喫煙材料の圧縮により喫煙材料5の塊の熱伝導率が大きくなり、したがってニコチンおよび他の芳香成分のより急速な加熱、およびその結果生じる急速な揮発をもたらす。これは、使用者がニコチンおよび芳香剤を吸引の検出に応じて実質的な遅れなく吸入することができるようになることから好ましい。したがって、制御器12は吸引の検出に応じて圧縮器16を起動して、喫煙材料5を所定の加熱時間だけ、例えば1秒間圧縮してもよい。例えば制御器12の制御の下で、所定の時間加熱したら喫煙材料5の圧縮を緩めるように圧縮器16を構成してもよい。あるいは、喫煙材料5が所定の閾温度に達するのに応じて圧縮を緩めるか、あるいは圧縮を自動的に終了してもよい。適切な閾温度は約150~250℃の範囲でもよく、使用者が選択できてもよい。温度感知器を用いて喫煙材料5の温度を検出してもよい。
【0073】
基本的に膨張器17は、喫煙材料5を膨張させそれによって吸引中の喫煙材料5の密度を下げるように構成されている。喫煙材料5が膨張すると、加熱室4内の喫煙材料5の配列はより疎らなる。すると、気体の流れ、例えば入り口14から喫煙材料5を通過する空気の流れが容易になる。したがってこの空気は、揮発したニコチンおよび芳香剤を吸い口6にさらに運び、吸引に供することができる。制御器12は、上記の圧縮時間の直後に膨張器17を起動して喫煙材料5を膨張させ、空気がより自由に喫煙材料5を経由して吸引されるようにしてもよい。膨張器17の起動と同時に可聴音を出し、あるいは他の表示をして、喫煙材料5が加熱されたことおよび吸引を開始できることを使用者に示してもよい。
【0074】
図8および9を参照すると、圧縮器16および膨張器17はばね駆動の棒を備えてもよい。ばね力駆動の棒は、ばねが圧縮状態から開放されると加熱室4内の喫煙材料5を圧縮するように構成されている。これが図8および9に概略説明されている。ただし、当然だが他の実装法を用いることができる。例えば圧縮器16は、上記の管状の加熱室4とほぼ等しい厚みを有する環を備え、この環がばねまたは他の手段によって加熱室4に押し込まれて喫煙材料5を圧縮してもよい。あるいは圧縮器16を加熱器3の一部として構成し、加熱器3自身が制御器12の制御の下で喫煙材料5を圧縮および膨張させるように構成されてもよい。喫煙材料5を圧縮および膨張させる一方法を図10に示す。
【0075】
加熱器3は上述の断熱部18と一体でもよい。例えば図1を参照すると、断熱部18は実質的に細長い中空の本体を備え、例えば実質的に円筒状の管のような断熱部18でもよい。この中空の本体は加熱室4の周りに同軸に配置されており、これに加熱領域10が一体化されている。断熱部18はある層を備え、この層に複数の凹みが設けられ、内向きの表面形状21を成していてもよい。加熱領域10はこれらの凹みに配置されているため、加熱領域10は加熱室4内の喫煙材料5と面する。加熱室4に面する加熱領域10の表面は、凹みがない断熱部18の複数領域の内側表面21と面一でもよい。
【0076】
加熱器3と断熱部18を一体化すると、喫煙材料加熱室4の方を向いている加熱領域10の内向きの側部を除き、加熱領域10の全ての側部が断熱部18で実質的に取り囲まれることになる。そのようにして、加熱器3により放射される熱は喫煙材料5に集中し、器具1の他の部分またはハウジング7の外気中に消散しない。
【0077】
また加熱器3を断熱部18と一体にすると、加熱器3と断熱部18の組み合わせの厚みを減らすこともできる。このようにすると器具1の直径、具体的にはハウジング7の外径をさらに減らすことができる。あるいは、加熱器3と断熱部18の一体化して厚みを低減するとさらに広い喫煙材料加熱室4を器具1に収容することができ、あるいはハウジング7の全幅を少しも広げることなく追加的な要素を取り入れることができる。
【0078】
あるいは、加熱器3を断熱部18と一体にするのではなく、断熱部18に隣接させてもよい。例えば、加熱器3を加熱室4の外側に配置する場合、フィルム加熱器3で断熱部18の内向き表面21を覆ってもよい。加熱器3を加熱室4の内部に配置する場合は、フィルム加熱器3で断熱部18の外向き表面22を覆ってもよい。
【0079】
必要なら、加熱器3と断熱部18の間に障壁が在ってもよい。例えばステンレス鋼の層が加熱器3と断熱部18の間に在ってもよい。この障壁は、加熱器3と断熱部18の間に収まるステンレス鋼管を備えてもよい。障壁の厚みは器具の寸法を実質的に大きくしないように薄くてもよい。一例示的厚みは約0.1~1.0mmである。
【0080】
また、複数の加熱領域10の横断面の間に熱反射層が在していてもよい。各加熱領域10の1つから放射される熱エネルギーが隣の加熱領域10を実質的に加熱しないが加熱領域10の周囲表面から主に内向きに加熱室4と喫煙材料5に移動するように、複数の加熱領域10を相対的に配置してもよい。各加熱領域10は他の領域10と実質的に同じ寸法を有してもよい。
【0081】
加熱器3を器具1内に感圧接着剤を用いて接着または固定してもよい。例えば加熱器3を上記の断熱部18または障壁に感圧接着剤を用いて接着してもよい。あるいは加熱器3をカートリッジ11または喫煙材料加熱室4の外面に接着してもよい。
【0082】
感圧接着剤を使用する代わりに、自己溶融テープを用いて加熱器3を器具1内の所定位置に固定してもよく、または所定位置に固定する締め具で固定してもよい。これらの方法の全てによって加熱器3を確実に固定することができ、加熱器3から喫煙材料5に熱を効率的に伝達することが可能になる。他の種類の固定も可能である。
【0083】
上記のように喫煙材料5とハウジング7の外面19との間に設けられている断熱部18によって器具1からの熱損失が減り、したがって喫煙材料5が加熱される効率が改善する。例えば図1を参照すると、ハウジング7の壁が、加熱室4の外周周りに延びている断熱部18の層を備えてもよい。断熱層18の長さは、実質的に加熱室4および喫煙材料5の周りに同軸に配置された断熱部18の管長でもよい。これを図1に示す。なお、断熱部18を喫煙材料カートリッジ11の一部として構成することができ、この場合断熱部18は喫煙材料5の外側に同軸に配置されることになる。
【0084】
図11を参照すると、断熱部18は真空断熱部18を構成してもよい。例えば断熱部18は金属材料のような壁材料19で囲まれた層を構成してもよい。断熱部18の内部領域すなわち中心部20は、例えば重合体、エアロゲル、または他の適切な材料を含む連続気泡性の多孔質材料を備え、低圧に減圧されていてもよい。内部領域20内の圧力は0.1~0.001ミリバールの範囲でもよい。断熱部18の壁19は、中心部20と壁19の外面の間の圧力差によって壁19に働く力に耐えるだけ十分に強く、それによって断熱部18がつぶれないようにしている。例えば壁19は約100μmの厚みを有するステンレス鋼の壁19を備えてもよい。断熱部18の熱伝導率は0.004~0.005W/mKの範囲でもよい。断熱部18の熱通過率は約150~約250℃の温度範囲で約1.10~約1.40W/(mK)でもよい。断熱部18の気体の伝導率は無視できる。壁材料19の内面に反射被覆を施して、断熱部18を介した放射伝搬による熱損失を最小にしてもよい。この被覆には例えば約0.3~1.0μmの厚みを有するアルミニウムIR反射被覆を含んでもよい。中心領域20内が減圧状態であれば、中心領域20の厚みが非常に薄い場合でも断熱部18が機能することになる。この断熱特性は実質的にその厚みに影響されない。このことにより器具1全体を小さくすることが容易になる。
【0085】
図11に示す様に、壁19は内向き部分21および外向き部分22を備えてもよい。内向き部分21は実質的に喫煙材料5および加熱室4と向き合う。外向き部分22は実質的にハウジング7の外側と向き合う。器具1の作動中、内向き部分21は加熱器3の熱エネルギーによってより温かくてもよく、外向き部分22は断熱部18の影響によって冷たい。内向き部分21および外向き部分22は、例えば実質的に平行で長手方向に延び加熱器3と少なくとも同じ長さの複数の壁19を構成してもよい。外向き壁部22の内面すなわち減圧された中心領域20に面している表面は中心部20内の気体を吸収する被覆を備えてもよい。適切な被覆は酸化チタン膜である。
【0086】
断熱部18は、米国特許第7,374,063号に記載のインスロン(登録商標)成形真空熱障壁(Insulon Shaped-Vacuum Thermal Barrier)のような超高真空断熱部を備えてもよい。そのような断熱部18の総厚みは極めて薄くてもよい。一例示的厚みは約1mm~約1μm、例えば約0.1mmである。但し、他のもっと厚いまたは薄い厚みも可能である。断熱部18の断熱特性は実質的にその厚みの影響を受けず、したがって器具1からの熱損失を実質的に少しも増やすことなく薄い断熱部18を用いることができる。非常に薄い断熱部18によって、ハウジング7および器具1全体を先に述べた大きさより小さくできるようにしてもよく、器具1の厚み例えば直径を、紙巻きタバコ、葉巻、および細巻き葉巻のような喫煙品とほぼ等しくすることができるようにしてもよい。また、器具1を軽量化して上記の小型化と同様の利点を提供してもよい。
【0087】
上記の断熱部18は気体吸収材料を備えて中心領域20内の真空の維持または真空化を容易にしてもよいが、気体吸収材料は高真空断熱部18には用いられない。気体吸収材料がないことは断熱部18の厚みを非常に薄く保つことの助けとなり、すなわち器具1全体を小さくすることが容易になる。
【0088】
超高断熱部18の形状によって、断熱部の真空度を製造中に断熱部18の中心領域20から分子を抽出するのに用いられる真空よりも上げることができる。例えば断熱部18の内部の高真空を、それを作る真空炉室の真空度より高くすることもできる。断熱部18の内部の真空は例えば10-7トール程度でもよい。図16を参照すると、高真空断熱部18の中心領域20の一端は先細りし、外向き部分22および内向き部分21が出口25に収束するようになっており、断熱部18の製造中に出口25を通って中心領域20内の気体が除去されて高真空が作られるようになっていてもよい。図16には外向き部分22が内向き部分21の方に収束するように説明されているが、内向き部分21が外向き部分22に収束する逆の配置を代わりに用いることができる。断熱壁19の収束端は中心領域20内の気体分子を出口25の外に出し、それによって中心部20の高真空を作るように構成されている。出口25は封止式で、領域20の減圧後に中心領域20の高真空を維持する。出口25の封止は、例えば中心部20から気体を除去した後に出口25のろう付け材料を加熱して出口25にろう付け封止を作ることで封止することができる。別の密封技術を用いることもできる。
【0089】
中心領域20を減圧するために、断熱部18を実質的に減圧された低圧の環境内、例えば真空炉室中に置いて、中心領域20内の気体分子が断熱部18の外の低圧環境に流れ込むようにしてもよい。中心領域20内の圧力が低下すると、中心領域20の先細りした形状および具体的には上記の収束部21、22が、残留気体分子を出口25経由で中心部20から出すのに影響するようになる。特に、中心領域20内の気体の圧力が低いときは、中心部20内の残留気体分子を出口25へ導き、中心部20から気体が出ていく可能性を低圧環境の外部から気体が中心部20に入る可能性よりも高くするのに、収束している内向き部分21および外向き部分22の案内効果は有効である。この方法では、中心部20の形状によって中心部20内の圧力を断熱部18の外の環境の圧力よりも低圧にすることができる。
【0090】
必要なら上記の様に、1種以上の低放射率被覆が壁19の内向き部分21および外向き部分22の内面に存在して、放射による熱損失を実質的に防止してもよい。
【0091】
断熱部18の形状を本明細書では全体に実質的に円筒状または類似の形状であると述べたが、断熱部18を別の形状にして、例えば種々の形状および大きさの加熱室4、加熱器3、ハウジング7、またはエネルギー源2のような種々の構成の器具1を収容し断熱することも可能である。例えば、上記のインスロン(登録商標)成形真空熱障壁のような高真空断熱部18の大きさおよび形状には、実質的にその製造過程による制限はない。上記の集束構造の形成に適切な材料にはセラミック、金属、半金属、およびこれらの組合せがある。
【0092】
図12の概略説明を参照すると、断熱部18の1つ以上の端部において熱橋23によって内向き壁部21と外向き壁部22を接続して、低圧の中心部20を完全に取り囲み収容してもよい。熱橋23は内向き部分21および外向き部分22と同じ材料で形成された壁19を備えてもよい。適切な材料は上述のようにステンレス鋼である。熱橋23は断熱中心部20よりも大きな熱伝導率を有し、したがって不都合なことに熱を器具1から外に伝えてしまうことがあり、その際に喫煙材料5を加熱する効率が低下する。
【0093】
熱橋23による熱損失を減らすため、熱橋23を延長して内向き部分21から外向き部分22への熱の流れに対する抵抗を大きくしてもよい。これを図13に概略説明する。例えば熱橋23は壁19の内向き部分21と壁19の外向き部分22の間の遠回りの経路を進んでもよい。これを、長手方向のある距離にわたって断熱部18を設けることによって容易にしてもよい。この距離は、熱橋23が内向き部分21から外向き部分22まで遠回りの経路に沿って徐々に延びることができるように加熱器3、加熱室4、および喫煙材料5の長さよりも長い。そうすることによって、加熱器3、加熱室4、および喫煙材料5がないハウジング7の長手方向のある場所では、中心部20の厚みがゼロになる。
【0094】
図15を参照すると上記のように、断熱部18で断熱された加熱室4は閉じると加熱室4を封止する吸排気弁24を備えてもよい。弁24はそのようにして室4への空気の不必要な出入りを防ぎ、喫煙材料の香りが室4から出ないようにすることができる。吸排気弁24を例えば断熱部18に設けてもよい。例えば吸引と吸引の間は弁24を制御器12で閉じ、その間は揮発した物質が室4内に留まるようにしてもよい。吸引と吸引の間の揮発物質の分圧は飽和蒸気圧に達し、したがって蒸発物質の量は加熱室4内の温度だけで決まる。これにより吸引から吸引まで、揮発したニコチンおよび芳香成分の確実な一定供給が促進される。吸引中、制御器12は弁24を開けるように構成されており、空気が室4を通って流れて揮発した喫煙材料成分を吸い口6に運ぶことができるようになっている。室4に酸素が絶対入らないようにする膜を弁24内に配置することができる。弁24を呼気起動式にして、吸い口6の吸引の検出に応じて弁24が開くようにしてもよい。弁24は吸引終了の検出に応じて閉じてもよい。あるいは弁24はその開放後に所定時間が経過したら閉じてもよい。この所定時間を制御器12で計時してもよい。必要なら機械式または他の適切な開放/閉鎖手段を設けて、弁24が自動的に開いたり閉じたりするようにしてもよい。例えば使用者による吸い口6の吸引で生じる気体の移動を用いて弁24を開けたり閉めたりしてもよい。したがって弁24の起動に制御器12の使用は必ずしも必要ではない。
【0095】
加熱器3、例えば各加熱領域10で加熱される喫煙材料5の質量は0.2~1.0gの範囲でもよい。喫煙材料5が加熱される温度は使用者が制御可能でもよく、その温度は例えば上記のような150~250℃の温度範囲内の任意の温度でもよい。器具1全体の質量は70~125gの範囲でもよいが、フィルム加熱器3および/または高真空断熱部18を採用する場合は軽くすることができる。容量が1000~3000mAhで電圧が3.7Vの電池2を用いることができる。加熱領域10は、1つのカートリッジ11の喫煙材料5の約10~40の部分を別々にかつ選択的に加熱するように構成されていてもよい。
【0096】
当然だが、上記の選択肢の何れかを単独で用いることも、または組み合わせて用いることもできる。
【0097】
種々の問題に対処し本技術を発展させるため、本開示全体は種々の実施形態を例示的に示し、その中で特許請求の範囲の発明を実践し、優れた器具を提供する。本開示の利点と特徴は、実施形態の単なる代表的な具体例であって包括的でも排他的でもない。これら具体例は、特許請求の範囲の特徴の理解を助け、教示するためだけに提示されている。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は、本開示を特許請求の範囲で規定されたとおりに制限するものでも、あるいは特許請求の範囲の均等物を制限するものでもなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用し、改良を施してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された要素、成分、特徴、部品、工程、手段などの種々の組合せを適切に備えてもよく、あるいはそれらのみで構成されてもよく、あるいは実質的にそれらのみで構成されてもよい。また、本開示には現在特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明も含まれる。
[発明の項目]
[項目1]
喫煙材料を加熱して前記喫煙材料の少なくとも1種の成分を吸引用に揮発させるように構成されたフィルム加熱器を備える器具。
[項目2]
前記フィルム加熱器はポリイミドフィルム加熱器であることを特徴とする項目1に記載の器具。
[項目3]
前記加熱器は1mm未満の厚みを有することを特徴とする項目1または2に記載の器具。
[項目4]
前記加熱器は0.5mm未満の厚みを有することを特徴とする項目1乃至3のいずれか1項に記載の器具。
[項目5]
前記加熱器は約0.2mm~0.0002mmの厚みを有することを特徴とする項目1乃至4のいずれか1項に記載の器具。
[項目6]
前記加熱器と一体の断熱部を備えることを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項に記載の器具。
[項目7]
前記加熱器で覆われた断熱部を備えることを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項に記載の器具。
[項目8]
障壁で前記加熱器と分離された断熱部を備えることを特徴とする項目1乃至5のいずれか1項に記載の器具。
[項目9]
前記障壁はステンレス鋼の層を備えることを特徴とする項目8に記載の器具。
[項目10]
前記断熱部はその外側よりも低い圧力に減圧された中心領域を備えることを特徴とする項目6乃至9のいずれか1項に記載の器具。
[項目11]
前記中心領域の両側の前記断熱部の壁部は封止された気体出口に集束していることを特徴とする項目10に記載の器具。
[項目12]
前記断熱部の厚みは約1mm未満であることを特徴とする項目10または11に記載の器具。
[項目13]
前記断熱部の前記厚みは約0.1mm未満であることを特徴とする項目10または11に記載の器具。
[項目14]
前記喫煙材料の揮発した成分を吸引するための吸い口を備えることを特徴とする項目1乃至13のいずれか1項に記載の器具。
[項目15]
前記喫煙材料を燃焼させず加熱するように構成されていることを特徴とする項目1乃至14のいずれか1項に記載の器具。
[項目16]
項目1乃至15のいずれか1項に記載の器具を製造する方法。
[項目17]
項目1乃至15のいずれか1項に記載の器具を用いる喫煙材料の加熱方法。
【符号の説明】
【0098】
1…器具、2…エネルギー源、3…加熱器、4…加熱室、5…喫煙材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】