(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060545
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】パーソナル空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20220407BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 C
F24F13/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028058
(22)【出願日】2022-02-25
(62)【分割の表示】P 2018082029の分割
【原出願日】2018-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒佑
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
(72)【発明者】
【氏名】大西 由哲
(72)【発明者】
【氏名】白石 理人
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 沙耶
(57)【要約】
【課題】システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、居室内の温度分布にむらが発生することを抑制するとともに、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる、対流空調と放射空調とを併用したパーソナル空調システムを提供する。
【解決手段】パーソナル空調システム10は、パーティション10が床20の上に設置される居室2を、床20の下から供給される空調空気により空調を行うシステムであって、パーティション10は、床20の下から空調空気を取り込む取込口11と、取込口11により取り込まれた空調空気を内部に流通させることにより、空調空気による放射空調を行う本体部13と、本体部13により流通させた空調空気を居室2に吹き出す吹出口12と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器が床の上に設置される居室を、前記床の下から供給される空調空気により空調を行うパーソナル空調システムであって、
前記什器は、
前記床の下から前記空調空気を取り込む取込口と、
前記取込口により取り込まれた前記空調空気を内部に流通させることにより、前記空調空気による放射空調を行う本体部と、
前記本体部により流通させた前記空調空気を前記居室に吹き出す吹出口と、
を備えることを特徴とするパーソナル空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、什器が床の上に設置される居室を、床の下から供給される空調空気により空調を行うパーソナル空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等の居室においては、執務者にとって作業に集中できる快適な空間を提供することが重要となっており、そのための一つの方法として、各執務者の温冷感に応じて空調を行うパーソナル空調システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各執務者の周囲に設置されるデスクやパーティションなどの什器に空調の吹出口を備え、床下のダクトから供給される空調空気を吹出口から吹き出すことにより、対流空調を行う空調システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、各執務者の周囲に設置されるパーティションに輻射パネルを備え、室外ユニットからの冷媒を、配管を介して輻射パネルに供給することにより、輻射(放射)空調を行う空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-350444号公報
【特許文献2】特開平6-066446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された空調システムでは、空調空気を吹出口から吹き出すため、吹出口に近い位置と、吹出口から離れた位置との間の温度差が大きくなり、居室内の温度分布にむらが発生する、という問題がある。
【0007】
また、居室内の温度分布にむらが発生することを抑制するために、対流空調と、放射空調とを併用することが考えられるが、特許文献1に記載された空調システムと、特許文献2に記載された空調システムとを併用した場合には、対流空調を行うシステムと、放射空調を行うシステムとを別個に設置することになるため、システム全体の複雑化、高コスト化を招く、という問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載された空調システムでは、空調空気が床下のダクトから供給され、特許文献2に記載された空調システムでは、冷媒が配管を介して供給されるため、居室内のレイアウト変更を行う場合には、ダクトや配管を設置し直したり、ダクトや配管を通す孔を床に開けたりする工事が必要になり、居室内のレイアウト変更に手間を要する、という問題がある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するために、システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、居室内の温度分布にむらが発生することを抑制するとともに、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる、対流空調と放射空調とを併用したパーソナル空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係るパーソナル空調システムは、什器が床の上に設置される居室を、前記床の下から供給される空調空気により空調を行うパーソナル空調システムであって、前記什器は、前記床の下から前記空調空気を取り込む取込口と、前記取込口により取り込まれた前記空調空気を内部に流通させることにより、前記空調空気による放射空調を行う本体部と、前記本体部により流通させた前記空調空気を前記居室に吹き出す吹出口と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記什器は、前記本体部の内部に設けられた整流装置を備え、前記整流装置は、前記取込口により取り込まれた前記空調空気を前記吹出口から前記居室に吹き出す前に、前記空調空気が前記本体部の内部に行き渡るように、前記空調空気の流通状態を調整することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記整流装置は、複数の板状の流路調整部材で構成されており、前記複数の流路調整部材は、前記取込口及び前記吹出口を結ぶ本流路と、前記本流路を迂回する迂回流路とを形成するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記整流装置は、複数の孔が形成された板状の有孔部材で構成されており、前記有孔部材は、前記有孔部材の長手方向と、前記取込口及び前記吹出口を結ぶ線とが交差するように配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記什器は、前記本体部の側面を覆う放射促進部材及び断熱部材の少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記取込口は、前記本体部の下面に設けられ、前記吹出口は、前記本体部の側面の上側又は上面に設けられ、前記什器は、前記吹出口に設けられ、前記空調空気の風向又は風量を調整する吹出口調整機構と、前記吹出口又は前記前記本体部の内部若しくは下方に設けられ、前記空調空気を送風する送風機構との少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記吹出口は、前記本体部の側面の上側又は上面に設けられた第1の吹出口と、前記本体部の側面の下側に設けられた第2の吹出口と、を備え、前記什器は、前記本体部の内部に設けられた流路切替機構を備え、前記流路切替機構は、前記取込口により取り込まれた空調空気を前記本体部の上側に上昇させて、前記第1の吹出口から吹き出すように形成された第1の流路と、前記取込口により取り込まれた空調空気を前記本体部の上側に上昇させてから前記本体部の下側に下降させて、前記第2の吹出口から吹き出すように形成された第2の流路と、前記取込口により取り込まれた空調空気を流通させる流路として、前記第1の流路と、前記第2の流路とを切り替える切替部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記取込口は、前記本体部の下面に設けられ、前記床は、ケーブル接続ボックスを設置可能な開口であって、前記床の下から前記空調空気を供給する給気口を備え、前記什器は、前記取込口と前記給気口とが対向するように、前記床の上に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパーソナル空調システムによれば、取込口により取り込まれた空調空気を吹出口から居室に吹き出すことにより対流空調を行うとともに、空調空気を本体部の内部に流通させることにより空調空気による冷熱又は温熱を用いて放射空調を行うことができる。そのため、1つのシステムで対流空調と放射空調とを併用することができ、放射空調を行うための配管等の専用の設備が不要になるので、システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、対流空調だけを行う場合に比べて居室内の温度分布にむらが発生することを抑制するとともに、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るパーソナル空調システム1の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るパーティション10の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るパーティション10の整流装置14の一例を示し、(a)は第1の実施例におけるA-A線断面図、(b)は第2の実施例におけるA-A線断面図、(c)は第2の実施例における有孔部材の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るパーティション10の設置例を示し、(a)は上面図、(b)はB-B線の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るパーティション10の吹出口調整機構17及び送風機構18の一例を示し、(a)は第1の実施例、(b)は第2の実施例、(c)は第3の実施例、(d)は第4の実施例、(e)は第5の実施例、(f)は第6の実施例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るパーティションの流路切替機構の一例を示し、(a)は冷房運転時の空調空気の流路、(b)は暖房運転時の空調空気の流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るパーソナル空調システム1について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るパーソナル空調システム1の全体構成の一例を示す図である。パーソナル空調システム1は、什器としてのパーティション10が床20の上に設置される居室2を、空調機器3により床20の下から供給される空調空気により空調を行うシステムである。ここでは、パーソナル空調システム1が、冷房運転を行う空調システムとして説明する。
【0021】
パーソナル空調システム1が適用される建物は、上下のスラブ4A、4B等の躯体で構成され、床20と天井23との間に居室2が形成されている。床20は、給気口21を備えるとともに、床20と下側のスラブ4Aとの間に給気チャンバ22が形成されて、二重床の構造を有する。また、天井23は、還気口24を備えるとともに、天井23と上側のスラブ4Bとの間に還気チャンバ25が形成されている。
【0022】
パーティション10は、執務者Mの周囲の床20の上に鉛直に立ち上げられた状態で設置されて、居室2を仕切ることにより、執務者Mの執務スペースを形成する。パーティション10は、吹出口12を備え、吹出口12は、空調機器3により温度調整された給気SAを空調空気として吹き出すように構成されている。なお、パーティション10は、什器の一例であるが、什器としては、例えば、デスク、キャビネット等が挙げられる。
【0023】
空調機器3は、空調機能を有する空調部30と、給気チャンバ22に連通する給気配管31と、還気チャンバ25に連通する還気配管32と、を備える。空調部30は、外気OAを導入し、導入した外気OAを温度調整し、給気配管31により給気SAとして給気チャンバ22を介して給気口21に供給する。また、空調部30は、居室2内の空気を還気口24及び還気チャンバ25を介して還気RAとして還気配管32により吸入し、排気EAとして外部に排出する。なお、空調部31は、温度だけでなく、湿度についても調整するようにしてもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係るパーティション10の概略構成の一例を示す図である。パーティション10は、床20の給気口21から供給される給気SAを空調空気として取り込む取込口11と、取込口11により取り込まれた空調空気を内部に流通させることにより、空調空気による放射空調を行う本体部13と、本体部13により流通させた空調空気を居室2に吹き出す吹出口12と、を備える。
【0025】
本体部13は、衝立状の外形を構成する部材であって、形状やサイズは任意のものでよい。また、本体部13は、その内部が空洞となっており、空調空気を内部に流通させることができる。取込口11は、本体部13の下面に設けられており、取込口11と床20の給気口21とが対向するように、本体部13が床20の上に設置されている。吹出口12は、本体部13の上側であって、執務者Mの執務スペース側の側面に設けられている。
【0026】
また、パーティション10は、執務者Mの執務スペース側の側面を覆う放射促進部材15と、執務者Mの執務スペース側と反対側の側面を覆う断熱部材16と、を備える。放射促進部材15は、熱伝導性の高い部材で構成されており、例えば、アルミニウムやスチール等の金属で構成されている。断熱部材16は、グラスウール等の断熱性を有する部材で構成されている。
【0027】
なお、パーティション10は、放射促進部材15及び断熱部材16のいずれか一方を備えていてもよく、断熱部材16を備えていない場合には、放射促進部材15が、本体部13の両方の側面を覆うようにしてもよい。放射促進部材15及び断熱部材16は、本体部13の側面の一部を覆うようにしてもよいし、側面の全体を覆うようにしてもよい。放射促進部材15及び断熱部材16は、本体部13の側面の外側に取り付けてもよいし、側面の内側に取り付けてもよい。
【0028】
パーティション10が、上記の放射促進部材15を備えることにより、空調空気による冷熱で本体部13の表面温度が下がりやすくなるため、放射空調を効率的に行うことができる。また、パーティション10が、上記の断熱部材16を備えることにより、執務者Mの執務スペースとは反対側のスペース(
図2におけるパーティション10の紙面左側)からの温熱の流入や、当該スペースへの冷熱の流出を抑制することができる。さらに、上記の断熱部材16は、吸音材としても機能するため、騒音や送風機構(詳細は後述する)の振動が外部に漏れることを抑制することができる。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態に係るパーティション10の整流装置14の一例を示し、(a)は第1の実施例におけるA-A線断面図、(b)は第2の実施例におけるA-A線断面図、(c)は第2の実施例における有孔部材の一例を示す図である。パーティション10は、本体部13の内部に設けられた整流装置14を備える。整流装置14は、取込口11により取り込まれた空調空気を吹出口12から居室2に吹き出す前に、空調空気が本体部13の内部全体に行き渡るように、取込口11から吹出口12までの間を空調空気が流通する流通状態(例えば、流通方向や流通量)を調整する。
【0030】
図3(a)に示す第1の実施例では、整流装置14は、取込口11により取り込まれた空調空気が、本体部13の長手水平方向(
図3における紙面の左右方向)に広がるように、空調空気の流通状態を調整する複数の板状の流路調整部材140A、140Bを備え、複数の流路調整部材140A、140Bは、取込口11及び吹出口12を結ぶ本流路141と、本流路141を迂回する複数の迂回流路142とを形成するように配置されている。
【0031】
本体部13の長手水平方向の中央部付近に配置された流路調整部材140Aは、本体部13の内部に鉛直方向に直線状に配置された板状の部材である。本体部13の長手水平方向の左右端部付近に配置された複数の流路調整部材140Bは、取込口11から離れるに従って中央部付近から左右端部付近に広がるように斜めに配置されるとともに、所定の高さよりも上側では鉛直方向に直線状に配置された板状の部材である。なお、流路調整部材140A、140Bは、取込口11及び吹出口12の間を複数の流路に分割するものであれば、上記の数や形状に限られない。
【0032】
図3(b)、(c)に示す第2の実施例では、整流装置14は、取込口11により取り込まれた空調空気が、本体部13の長手水平方向(
図3における紙面の左右方向)に広がるように、空調空気の流通状態を調整する有孔部材143を備える。有孔部材143は、複数の孔143a、143bが形成された板状の部材であって、有孔部材143の長手方向を示す線L1と、取込口11及び吹出口12を結ぶ線L2とが交差するように配置されている。
【0033】
図3(b)に示す有孔部材143は、線L1と線L2とが交差するように配置されている例として、有孔部材143の長手方向が水平方向を向くように配置されているが、有孔部材143を傾けて配置するようにしてもよい。また、有孔部材143が本体部13の内部に配置された際の高さとしては、
図3(b)に示すように、吹出口12よりも取込口11までの距離が短くなるような高さに配置されている。なお、
図3(b)に示すパーティション10は、1つの有孔部材143を備えたものであるが、複数の有孔部材143を備え、水平方向に並べて配置してもよい。
【0034】
有孔部材143に形成された孔143a、143bは、空調空気が吹出口12側から取込口11側に流通する際の空調空気の流れやすさ(通風率)を調整するものであり、例えば、孔143a、143bの密度やサイズを変更することにより通風率を調整する。
【0035】
図3(c)に示す有孔部材143は、有孔部材143の長手方向の中央部付近に形成された孔143aの通風率が、有孔部材143の長手方向の左右端部付近に形成された孔143bの通風率よりも小さくなるように、孔143a、143bの密度やサイズが調整されている。例えば、孔143aの密度が、孔143bの密度よりも小さくなるようにしてもよいし、孔143aのサイズが、孔143bのサイズよりも小さくなるようにしてもよいし、これらを組み合わせてもよい。また、孔143a、143bの密度やサイズを段階的に調整してもよい。
【0036】
パーティション10が、上記の整流装置14を備えることにより、空調空気が本体部13の内部全体に行き渡り、空調空気による冷熱で本体部13の全体を冷却することができるため、放射空調を効率的に行うことができる。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態に係るパーティション10の設置例を示し、(a)はパーティション10が設置された床20の上面図、(b)はB-B線の断面図である。床20には、四角形の板状の床パネル26が、床20全体に敷き詰められている。床パネル26A~26Dは、床パネル26A~26D6の四隅を支持部(図示省略)で支持することにより、床パネル26A~26Dの下側には、給気チャンバ22が形成されている。給気チャンバ22には、給気SAが流通されるとともに、電力ケーブルやLAN等の通信ケーブルが敷設されている。
【0038】
床パネル26A~26Dは、切欠き状の開口26aや矩形状の開口26bを備え、開口26a、26bは、例えば、電源用のコンセントボックスや有線LAN用の通信ボックス等のケーブル接続ボックスを設置可能に構成されている。開口26a、26bにケーブル接続ボックスとしてコンセントボックスや通信ボックスが設置されている場合には、給気チャンバ22に敷設された電力ケーブルや通信ケーブルが、コンセントボックスや通信ボックスを介して、床20の上に設置されたコンピュータ等の装置に接続することが可能である。
【0039】
また、開口26a、26bにケーブル接続ボックスが設置されていない場合や、開口26a、26bに設置されていたケーブル接続ボックスが取り外された場合には、開口26a、26bが、給気口21として機能する。
図4では、床パネル26A、26Bが備える2つの開口26bが、給気口21として機能する。そして、給気口21として機能する2つの開口26bと、本体部13の下面に設けられた2つの取込口11とが対向するように、パーティション10が床パネル26A、26Bの上に設置されている場合には、給気チャンバ22を流通する給気SAが、給気口21及び取込口11を介して、本体部13の内部に供給される。このように、ケーブル接続ボックスを設置可能な開口26a、26bを、給気口21として利用することができるため、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡略化することができる。
【0040】
図4に示すパーティション10は、2つの取込口11と、2つの吹出口12とを備えたものであるが、取込口11及び吹出口12の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、
図4に示すパーティション10は、一方の側面に吹出口12を備えたものであるが、両方の側面に吹出口12を備えたものでもよいし、両方の側面に吹出口12を備えた場合には、両方の側面の間で吹出口12の数が異なるようにしてもよい。
【0041】
なお、床パネル26に複数の孔を設け、給気チャンバ22を流通する給気SAが、床パネル26の表面から滲み出すように構成してもよいし、給気SAが、開口26a、26bから居室2に直接吹き出すようにしてもよい。また、開口26a、26bに、ケーブル接続ボックスが設置されていないだけでなく、パーティション10についても設置されていない場合には、開口26a、26bに蓋をしてもよいし、開口26a、26bを備えていない床パネル26に交換してもよい。開口26a、26bは、床パネル26を加工することで、任意の形状の開口26a、26bを任意の位置に追加することが可能である。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態に係るパーティション10の吹出口調整機構17及び送風機構18の一例を示し、(a)は、吹出口調整機構17及び送風機構18が吹出口12(本体部13の側面の上側)に設けられた第1の実施例、(b)は、吹出口調整機構17が吹出口12(本体部13の側面の上側)に設けられ、送風機構18が本体部13の下方に設けられた第2の実施例、(c)は、吹出口調整機構17が吹出口12(本体部13の側面の上側)に設けられた第3の実施例、(d)は、吹出口調整機構17が吹出口12(本体部13の上面)に設けられ、送風機構18が本体部13の内部の上側に設けられた第4の実施例、(e)は、吹出口調整機構17が吹出口12(本体部13の上面)に設けられ、送風機構18が本体部13の内部の下側に設けられた第5の実施例、(f)は、吹出口調整機構17が吹出口12(本体部13の上面)に設けられた第6の実施例を示す図である。
【0043】
パーティション10は、吹出口12に設けられた吹出口調整機構17と、吹出口12又は本体部13の内部若しくは下方に設けられた送風機構18と、を備える。吹出口調整機構17は、空調空気の風向や風量を調整する機構であって、例えば、ルーバーで構成されている。送風機構18は、空調空気を送風する機構であって、例えば、ファンで構成されている。
図5(c)、(f)に示す実施例では、送風機構18が設けられておらず、給気チャンバ22の陽圧によって空調空気を吹出口12から吹き出すように構成されている。
【0044】
パーティション10が、上記の吹出口調整機構17及び送風機構18を備えることにより、吹出口12からの気流を調整することができるため、各執務者の温冷感に応じて、より快適な環境を得ることができる。
【0045】
次に、パーソナル空調システム1が、冷房運転と暖房運転とを切替可能な空調システムである場合について説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係るパーティションの流路切替機構の一例を示し、(a)は冷房運転時の空調空気の流路、(b)は暖房運転時の空調空気の流路を示す図である。
【0046】
パーティション10は、本体部13の内部に設けられた流路切替機構19と、本体部13の上面に設けられた第1の吹出口12Aと、本体部13の側面の下側に設けられた第2の吹出口12Bと、第1の吹出口12Aに設けられた第1の吹出口調整機構17Aと、第2の吹出口12Bに設けられた第2の吹出口調整機構17Bと、本体部13の内部に設けられた送風機構18と、を備える。
【0047】
流路切替機構19は、取込口11により取り込まれた空調空気を本体部13の上側に上昇させて、第1の吹出口12Aから吹き出すように形成された第1の流路190と、取込口11により取り込まれた空調空気を本体部13の上側に上昇させてから本体部13の下側に下降させて、第2の吹出口12Bから吹き出すように形成された第2の流路191と、取込口11により取り込まれた空調空気を流通させる流路として、第1の流路190と、第2の流路191とを切り替える切替部192と、を備える。
【0048】
冷房運転時には、
図6(a)に示すように、切替部192は、第1の流路190に切り替えるとともに、第1の吹出口調整機構17Aを開放し、第2の吹出口調整機構17Bを閉塞する。また、暖房運転時には、
図6(b)に示すように、切替部192は、第2の流路191に切り替えるとともに、第1の吹出口調整機構17Aを閉塞し、第2の吹出口調整機構17Bを開放する。なお、切替部192は、冷房運転か暖房運転かに応じて、第1の流路190と、第2の流路191とを自動で切り替えるものでもよいし、手動で切り替えるものでもよい。
【0049】
パーティション10が、上記の流路切替機構19を備えることにより、冷房運転時は、本体部13の上部から冷気を吹き出すとともに、冷気による放射空調を行い、暖房運転時は、本体部13の下部から暖気を吹き出すとともに、暖気による放射空調を行うことができるため、冷房運転であっても暖房運転であっても、対流空調と放射空調とを併用することができるとともに、頭寒足熱の原則に則した空調を行うことができる。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態に係るパーソナル空調システム1によれば、取込口11により取り込まれた空調空気を吹出口12から居室2に吹き出すことにより対流空調を行うとともに、空調空気を本体部13の内部に流通させることにより空調空気による冷熱又は温熱を用いて放射空調を行うことができる。そのため、1つのシステムで対流空調と放射空調とを併用することができ、放射空調を行うための配管等の専用の設備が不要になるので、システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、対流空調だけを行う場合に比べて居室内の温度分布にむらが発生することを抑制するとともに、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・パーソナル空調システム
2・・・居室
3・・・空調機器
4A、4B・・・スラブ
10・・・パーティション
11・・・取込口
12・・・吹出口
12A・・・第1の吹出口
12B・・・第2の吹出口
13・・・本体部
14・・・整流装置
15・・・放射促進部材
16・・・断熱部材
17・・・吹出口調整機構
17A・・・第1の吹出口調整機構
17B・・・第2の吹出口調整機構
18・・・送風機構
19・・・流路切替機構
20・・・床
21・・・給気口
22・・・給気チャンバ
23・・・天井
24・・・還気口
25・・・還気チャンバ
26A~26D・・・床パネル
26a、26b・・・開口
30・・・空調部
31・・・給気配管
32・・・還気配管
140A、140B・・・流路調整部材
141・・・本流路
142・・・迂回流路
143・・・有孔部材
143a、143b、・・・孔
190・・・第1の流路
191・・・第2の流路
192・・・切替部
M・・・執務者
【手続補正書】
【提出日】2022-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器が床の上に設置される居室を、前記床の下から供給される空調空気により空調を行うパーソナル空調システムであって、
前記什器は、
前記空調空気の流路となる本体部と、
前記床の下から前記本体部に前記空調空気を取り込む取込口と、
前記取込口により取り込まれた前記空調空気を前記本体部から前記居室に吹き出す吹出口と、
を備え、
前記取込口に設けられ、前記空調空気を送風する送風機構を有する
ことを特徴とするパーソナル空調システム。
【請求項2】
前記什器は、前記本体部の側面を覆う放射促進部材及び断熱部材の少なくとも一方を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のパーソナル空調システム。
【請求項3】
前記取込口は、前記本体部の下面に設けられ、
前記吹出口は、前記本体部の側面又は上面に設けられ、
前記什器は、前記吹出口に設けられた、前記空調空気の風向又は風量を調整する吹出口調整機構をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパーソナル空調システム。
【請求項4】
前記送風機構は、ファンである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のパーソナル空調システム。
【請求項5】
前記取込口は、前記本体部の下面に設けられ、
前記床は、前記床の下から前記空調空気を供給する給気口を備え、
前記什器は、前記取込口と前記給気口とが対向するように、前記床の上に設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパーソナル空調システム。
【請求項6】
前記什器は、一部が前記給気口に入り込み、前記送風機構が前記床の下部に位置する
ことを特徴とする請求項5に記載のパーソナル空調システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するために、システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる、パーソナル空調システムを提供することを目的とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係るパーソナル空調システムは、什器が床の上に設置される居室を、前記床の下から供給される空調空気により空調を行うパーソナル空調システムであって、前記什器は、前記空調空気の流路となる本体部と、前記床の下から前記本体部に前記空調空気を取り込む取込口と、前記取込口により取り込まれた前記空調空気を前記本体部から前記居室に吹き出す吹出口と、を備え、前記取込口に設けられ、前記空調空気を送風する送風機構を有することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明に係るパーソナル空調システムによれば、取込口により取り込まれた空調空気を吹出口から居室に吹き出すことにより空調を行うことができる。そのため、空調を行うための配管等の専用の設備が不要になるので、システム全体の複雑化、高コスト化を招くことなく、居室内のレイアウト変更に要する手間を簡素化することができる。