(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060603
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04D 3/30 20060101AFI20220408BHJP
E04B 7/08 20060101ALI20220408BHJP
E04B 1/32 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
E04D3/30 H
E04B7/08
E04B1/32 102G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167114
(22)【出願日】2020-10-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】520383474
【氏名又は名称】近未来建築社会実装機構株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 あおい
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA05
2E108AS02
2E108BB04
2E108BN05
2E108CC01
2E108CV06
2E108DD05
2E108EE02
2E108GG05
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】本発明は、補強材や継ぎ手が不要で、構築がしやすく、かつ、十分な強度を備える湾曲状波形の建築材料及び当該建築材料からなる建築物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る建築物は、厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板からなる建築材料10、20を、その長さ方向及び幅方向に連結して一体構造の壁面と屋根面とを形成し、高さが6m以上で間口の広さが17m以上の屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)を設けないアーチ状に構築したことを特徴とする。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板であって、
当該金属板を長さ方向及び幅方向に連結することにより、屋根面及び壁面を有する一体構造であって屋根面を支持する支柱及び横架材を設けずにアーチ状の建築物を構築する建築材料。
【請求項2】
前記金属板には、長さ方向に直線状のもの又は長さ方向に湾曲状のものが含まれる請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板からなる建築材料を、その長さ方向及び幅方向に連結して一体構造の壁面と屋根面とを形成し、高さが6m以上で間口の広さが17m以上の屋根面を支持する支柱及び横架材を設けずにアーチ状に構築した
ことを特徴とする建築物。
【請求項4】
長さ方向に直線状のものと長さ方向に湾曲状のものとの組合せからなる前記建築材料、又は、長さ方向に湾曲状のもののみからなる前記建築材料で構築した
ことを特徴とする請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
屋根面における曲率が建築物の間口が広くなるほど大きくなる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形の金属製建築材料及び当該建築材料を使用して構築したアーチ状の建築物に関し、特に当該建築物を支持する支柱(建築用語では「柱」のこと。)及び横架材(建築用語では「梁」のこと。)が不要で、倉庫、工場、文化ホールや体育館などの大型の建物に適したアーチ状の建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製の波板状の建築材として、下記特許文献1又は2に示されるように、建物の躯体に取り付けて使用されたり、建築物用外囲体として使用されるのが一般的である。
【0003】
また、アーチ形の建築物としては、下記特許文献3~5に示されるものが知られている。すなわち、特許文献3には、所定曲率で曲げ加工された大型デッキプレートを対向せしめて下端を基礎上に固定し、それらの上端同士の上方に大型デッキプレートに適合する凹凸状角波形を有する曲板状継ぎ手を載置し、それぞれをボルトにより締結し、所要幅となるように連結したアーチ形デッキプレート構造体が示されている。
【0004】
特許文献4には、長手方向に沿う複数の台形状波形が付与された、大きな断面係数を有する波状プレートであって、波付け方向と直交する方向に湾曲形状に曲げ加工された波状プレートからなる複数の壁部材の下端部を、所定間隔離隔して固定されるフランジ上に相互の頂部同士が対向する向きに立設し、該対向する頂部同士を連結することによって構成されるアーチ部を単位とし、同様のアーチ部を前記波付け方向と直交する方向の両縁部同士を所定単位数連結することによって構成されるアーチ状建築構造体において、前記アーチ状建築構造体の内面に対して同様の曲率で曲げ加工された、少なくとも一つの台形状波形を有する補強用波状プレートの谷部と、前記壁部材用波状プレートの山部とを、互いに対向する向きに組み合わせて両波状プレートの接触部同士を相互に連結し、該両波状プレート間に形成される湾曲した箱形補強部を設けたアーチ状建築構造体が示されている。
【0005】
特許文献5には、大きな断面係数を有する台形状波形に曲げ加工され、波付け方向と直交する方向に所望曲率で湾曲形成され、前記波付け方向及びこの波付け方向に直交する方向に相互連結することによりアーチ状構造体の一部を形成する左右一対の台形状波形鋼板主部材と、 前記アーチ状構造体のアーチ部と同形状に曲げ加工された台形状波形鋼板主部材の頂部間を伸張連結する部材であって該アーチ部に適合する曲率で曲げ加工された少なくとも一つの台形状波形鋼板製中間連結部材と、前記左右一対の台形状波形鋼板主部材ならびに前記少なくとも一つの台形状波形鋼板製中間連結部材の対向する端部同士を相互連結するための継ぎ手部材と、からなり、前記台形状波形鋼板主部材および前記台形状波形鋼板製中間連結部材の各開放端部の間に前記継ぎ手部材を介在せしめて順次締結したアーチ状建築構造体において、前記継ぎ手部材が、前記台形状波形鋼板主部材および前記台形状波形鋼板製中間連結部材の波形曲げ形状ならびに各部材の肉厚を考慮して相互接合部間に隙間が生じないように嵌合する台形状波形に曲げ加工された一端側と、同様に相互接合部間に隙間が生じないように嵌合する波形に曲げ加工された他端側とが、前記各部材の肉厚を受容する寸法だけ変移させた段差を有するように形成された段違い継ぎ手部材として構成された間口寸法拡張可能なアーチ状建築構造体が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-172898号公報
【特許文献2】特開2001-271455号公報
【特許文献3】実公平7-16803号公報
【特許文献4】特公平8-19645号公報
【特許文献5】特開2007-32211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1又は2に示される金属製の波板状の建築材は薄く、波の高低差も短く、波の周期も多いものであるため、それのみでは屋根面と壁面とが一体構造の建築物を屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)無しで構築するには強度に欠ける。
【0008】
特許文献3に示されるアーチ形デッキプレート構造体は、大型デッキプレートに適合する凹凸状波型を有する曲板状継ぎ手により大型デッキプレートを連結するものであり、部品点数が多く、作業効率が悪い問題がある。
【0009】
特許文献4に示されるアーチ型デッキプレート構造体は、補強用台形状波形プレートを使用して箱形補強部を設けたものであり、部品点数が多い上に構築作業が複雑になって作業効率が悪い欠点がある。
【0010】
特許文献5に示される間口寸法拡張可能なアーチ状建築構造体は、波形鋼板製中間連結部材や継ぎ手部材を要するものであり、部品点数が多い上に構築作業が複雑になって作業効率が悪い欠点がある。
【0011】
上記のように従来のアーチ形建築物においては、部品点数が多く、また構築が複雑になっている理由は、プレートが角形の波板状であって屈曲部が存在し、当該屈曲部に応力が集中して破損するおそれがあるため、補強材や継ぎ手等の部品を組み込まなければ、建築物を建てて維持できるだけの強度がないと考えられる。
【0012】
そこで、本発明は、補強材や継ぎ手が不要で、構築がしやすく、かつ、十分な強度を備える湾曲状波形の建築材料及び当該建築材料からなる建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る建築材料は、厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板であって、当該金属板を長さ方向及び幅方向に連結することにより、屋根面及び壁面を有する一体構造の屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)を設けずにアーチ状の建築物を構築する建築材料である。
【0014】
このように構成された前記建築材料は、厚みがあって大判サイズであり、湾曲状波形の周期が少なくなだらかにカーブするので、応力の集中を防げて折れ曲がるようなことはなく十分な強度を有するものである。
【0015】
本発明に係る建築材料は、上記の構成に加えて、前記金属板には、長さ方向に直線状のもの又は長さ方向に湾曲状のものが含まれる。
【0016】
本発明に係る建築物は、厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板からなる建築材料を、その長さ方向及び幅方向に連結して一体構造の壁面と屋根面とを形成し、高さが6m以上で間口の広さが17m以上の屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)を設けずにアーチ状に構築したことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る建築物は、上記の構成に加えて、長さ方向に直線状のものと長さ方向に湾曲状のものとの組合せからなる前記建築材料、又は、長さ方向に湾曲状のもののみからなる前記建築材料で構築したことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る建築物は、上記の構成に加えて、屋根面における曲率が建築物の間口が広くなるほど大きくなることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、屋根面の重量が分散されて壁面に屋根面の荷重が掛かるので、屋根面を維持するための支柱(柱)が不要となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る建築材料は、上記の構成よりなるため、高さが6m以上で間口の広さが17m以上の屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)を設けないアーチ状の建築物を構築するのに十分な強度がある。
【0021】
本発明に係る建築物は、上記の構成よりなるため、幅方向及び長さ方向に直線状又は湾曲状の建築材料を使用し、建築物全体が直線状の部分又は曲線状の部分のみから構成され、屈曲する箇所や折曲する箇所が存在しないので、屋根面を支持する支柱(柱)及び横架材(梁)が不要となるだけの十分な強度があり、したがって補強材や継ぎ手が不要となり、部品点数が少なく、複雑な組立が不要で構築の作業効率化が図れる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図は全て本発明に係る実施例の図である。
【
図1】長さ方向に直線状の建築材料の形態を示す斜視図である。
【
図2】長さ方向に湾曲状の建築材料の形態を示す斜視図である。
【
図3】建築材料の幅方向の形状を示す斜視図であって、図中の(a)は幅が大きく、図中(b)は幅の小さいものである。
【
図4】
図3に対応するものであり、建築材料の幅方向の形状を示す断面図であって、図中の(a)は幅が大きく、図中(b)は幅の小さいものである。
【
図5】長さ方向に直線状の建築材料を幅方向に連結しようとする状態を示す斜視図である。
【
図6】長さ方向に直線状の建築材料を幅方向に連結した状態を示す斜視図である。
【
図7】長さ方向に直線状の建築材料を長さ方向に連結しようとする状態を示す斜視図である。
【
図8】長さ方向に直線状の建築材料を長さ方向に連結した状態を示す斜視図である。
【
図9】長さ方向に直線状の建築材料を幅方向及び長さ方向に連結した状態を示す斜視図である。
【
図9(a)】幅方向に連結した状態を、
図4に対応して表した断面図である。
【
図10】建築物において、長さ方向に直線状の建築材料を幅方向及び長さ方向に連結して構築した状態を部分的に示す建築物の部分斜視図である。
【
図11】長さ方向に湾曲状の建築材料を幅方向に連結しようとする状態を示す斜視図である。
【
図12】長さ方向に湾曲状の建築材料を幅方向に連結した状態を示す斜視図である。
【
図13】長さ方向に湾曲状の建築材料を長さ方向に連結しようとする状態を示す斜視図である。
【
図14】本発明に係る実施例であって、長さ方向に湾曲状の建築材料を長さ方向に連結した状態を示す斜視図である。
【
図15】建築物において、長さ方向に湾曲状の建築材料を幅方向及び長さ方向に連結して構築した状態を部分的に示す建築物の部分斜視図である。
【
図16】建築物において、長さ方向に直線状の建築材料を幅方向及び長さ方向に連結して構築した状態と長さ方向に湾曲状の建築材料を幅方向及び長さ方向に連結して構築した状態とをそれぞれ部分的に示す建築物の全体斜視図である。
【
図17】スパン(間口)17mのTYPE-Aの建築物の幅方向の概略断面図である。
【
図18】4種類の大きさの建築物の概略断面図であって、図中(a)は
図17と同一の建築物であり、図中(b)はスパン(間口)30mのTYPE-Bの建築物であり、図中(c)はスパン(間口)40mのTYPE-Bの建築物であり、図中(d)はスパン(間口)50mのTYPE-Cの建築物である。
【
図19】スパン17m(間口)のTYPE-Aの建築物の概略斜視図である。
【
図20】スパン30m(間口)のTYPE-Bの建築物の概略斜視図である。
【
図21】スパン40m(間口)のTYPE-Bの建築物の概略斜視図である。
【
図22】スパン50m(間口)のTYPE-Cの建築物の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の好適な実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0024】
図1に示す10は、建築材料としての長さ方向に直線状の1本の直線状プレートを示し、
図2に示す20は、建築材料としての長さ方向に湾曲状の1本の湾曲状プレートを示す。これらの直線状プレート10及び湾曲状プレート20は、厚さが3mm以上であって、
図3及び
図4に示すように、幅方向に2周期の湾曲状波形をなしている。
【0025】
図3及び
図4における図中の(a)は、本実施例においてはTYPE-Cと呼び、サイズが大きい方の建築材料であって、それぞれ湾曲状波形における山から谷の高低差が237mmであり、山から山の距離は500mmであって、
図3に示すように連結代を含めると材料幅は1mを超える。また、
図3及び
図4における図中の(b)は、本実施例においてはTYPE-A又はTYPE-Bと呼び、サイズが小さい方の建築材料であって、それぞれ湾曲状波形における山から谷の高低差が140mmであり、山から山の距離は380mmであって、
図3に示すように連結代を含めると材料幅は80cmを超える。なお、TYPE-BはTYPE-Aよりも厚さが厚い。直線状プレート10及び湾曲状プレート20のそれぞれの長さは、規格としては5m以上であるが、設計において適宜の長さに切断されて使用される。これらの直線状プレート10及び湾曲状プレート20のそれぞれには、山の箇所及び谷の箇所に長さ方向に数箇所のボルトによる連結用孔が形成されている。
【0026】
図5及び
図6は、直線状プレート10の連結方法の具体例として、直線状プレート10Aとこれに幅方向に連結する直線状プレート10Bを示す。直線状プレート10Aにおいては、図において下端部に3個一組で二組の近接した連結用孔a1、a2、a3、a4、a5、a6が形成されており、それ以外の箇所には一定の距離を置いて等間隔に配された連結用孔aが複数形成されている。なお、図においては上端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、上端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0027】
一方、直線状プレート10Bには、前記直線状プレート10Aの連結用孔a4、a5、a6に対応するように、図において下端部に3個一組の近接した連結用孔b1、b2、b3が形成されており、それ以外の箇所には、前記直線状プレート10Aの連結用孔aに対応するように、一定の距離を置いて等間隔で連結用孔bが複数形成されている。なお、図においては上端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、上端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0028】
そして、直線状プレート10Aにおける連結用孔a4、a5、a6及びそれ以外の連結用孔aと、直線状プレート10Bにおける連結用孔b1、b2、b3及びそれ以外の連結用孔bとを、図示するようにボルトにより締結して、直線状プレート10Aと直線状プレート10Bとを、直線状プレート10Aの連結用孔a1、a2、a3の分だけずらして幅方向に連結する。
【0029】
図7及び
図8は、直線状プレート10の連結方法の具体例として、直線状プレート10Aとこれに長さ方向に連結する直線状プレート10Cを示す。直線状プレート10Aにおいては、図において右上端部に3個一組で二組の近接した連結用孔a1、a2、a3、a4、a5、a6が形成されており、当該連結用孔a1、a2、a3と平行する3個一組の連結用孔が直線状プレート10Aの図において右下端部にかけて谷側と山側とに形成されている。なお、右下端部には3個一組で二組の近接した連結用孔が形成されている。また、図においては左端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、左端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0030】
一方、直線状プレート10Cには、図において左上端部に、直線状プレート10Aの連結用孔a1、a2、a3に対応する3個一組の近接した連結用孔c1、c2、c3が形成されている。また、直線状プレート10Aにおける連結用孔a1、a2、a3と平行する3個一組の連結用孔に対応して、直線状プレート10Cにも左下端部にかけて谷側と山側とに、前記連結用孔c1、c2、c3と平行する3個一組の連結用孔が形成されている。なお、図においては右端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、左端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0031】
そして、直線状プレート10Aにおける連結用孔a1、a2、a3及びそれ以外の3個一組の連結用孔と、直線状プレート10Cにおける連結用孔c1、c2、c3及びそれ以外の3個一組の連結用孔とを、図示するようにボルトにより締結して、直線状プレート10Aと直線状プレート10Cとを長さ方向に連結する。
【0032】
図9は、前記直線状プレート10Aに対して、幅方向に前記直線状プレート10Bを連結し、長さ方向に前記直線状プレート10Cを連結し、それに加えて、前記直線状プレート10Bに長さ方向に連結し、前記直線状プレート10Cに幅方向に連結した直線状プレート10Dを状態を示す。
【0033】
図9における連結箇所Aでは直線状プレート10Bの上に直線状プレート10Aが重なってボルト止めされ、連結箇所Bでは直線状プレート10Cの上に直線状プレート10Aが重なってボルト止めされている。また、連結箇所Cでは直線状プレート10Dの上に直線状プレート10Cが重なってボルト止めされ、連結箇所Dでは直線状プレート10Dの上に直線状プレート10Bが重なってボルト止めされている。
【0034】
そして、連結箇所Eでは直線状プレート10Dの上に直線状プレート10Bが重なり、さらにその上に直線状プレート10Aが重なってボルト止めされている。連結箇所Fでは直線状プレート10Dの上に直線状プレート10Cが重なり、さらにその上に直線状プレート10Aが重なってボルト止めされている。連結箇所Gでは直線状プレート10Dの上に直線状プレート10Aが重なり、その重なり部に挟まる状態で直線状プレート10Bと直線状プレート10Cとが突き合わされている。
【0035】
このように幅方向及び長さ方向の双方に関与する連結箇所E、Fにおいては3枚の直線状プレート10が重なってボルト止めされることになり、それ以外の箇所においては2枚の直線状プレート10が重なってボルト止めされているので、これらの連結により直線状プレート10は強固に固定されることになる。
【0036】
図9(a)は、1枚の直線状プレートに対して、その両側に他の直線状プレートを連結した状態を示す断面図であって、1枚だけの断面図である
図4に対応する図である。
図9(a)の左側に示すように、直線状プレートにおける幅方向両端の湾曲状波形の山側の裏面が、隣接する直線状プレートの山側の表面を乗り越えるようにして重なり合って連結される。
【0037】
図10は、このように連結固定した直線状プレート10が建築物の壁面部に配置された例を示す。この例のように、直線状プレート10は建築物における平坦な面に使用される。
【0038】
図11及び
図12は、湾曲状プレート20の連結方法の具体例として、湾曲状プレート20Aとこれに幅方向に連結する湾曲状プレート20Bを示す。湾曲状プレート20Aにおいては、図において右側下端部に3個一組の近接した連結用孔d1、d2、d3が形成されており、それ以外の左側下端部には一定の距離を置いて等間隔に配された連結用孔dが複数形成されている。なお、図においては左端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、左端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0039】
一方、湾曲状プレート20Bには、右側上端部に3個一組で二組の近接した連結用孔e1、e2、e3、e4、e5、e6が形成されており、当該連結用孔e4、e5、e6が前記湾曲状プレート20Aの連結用孔d1、d2、d3に対応する。それ以外の箇所には一定の距離を置いて等間隔で連結用孔eが複数形成されている。なお、右下端部には3個一組で二組の近接した連結用孔が形成されている。また、図においては左端側にも近接した3個一組で一組又は二組の連結用孔が形成されているが、図を簡単にするために省略している。また、左端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0040】
そして、湾曲状プレート20Aにおける連結用孔d1、d2、d3及びそれ以外の連結用孔dと、湾曲状プレート20Bにおける連結用孔e4、e5、e6及びそれ以外の連結用孔eとを、図示するようにボルトにより締結して、湾曲状プレート20Aと湾曲状プレート20Bとを、湾曲状プレート20Bの連結用孔e1、e2、e3の分だけずらして幅方向に連結する。
【0041】
図13及び
図14は、湾曲状プレート20の連結方法の具体例として、湾曲状プレート20Bとこれに長さ方向に連結する湾曲状プレート20Cを示す。湾曲状プレート20Bにおいては、図において右上端部に3個一組で二組の近接した連結用孔e1、e2、e3、e4、e5、e6が形成されており、当該連結用孔e1、e2、e3と平行する3個一組の連結用孔が湾曲状プレート20Bの図において右下端部にかけて谷側と山側とに形成されている。なお、左下端部にも3個一組又は二組の近接した連結用孔が形成されているが、図示は省略する。また、左下端側を長さ方向に切断したことによりその部分に形成されている連結用孔の箇所が欠落する場合もある。
【0042】
一方、湾曲状プレート20Cには、図において左上端部に、湾曲状プレート20Bの連結用孔e1、e2、e3に対応する3個一組の近接した連結用孔f1、f2、f3が形成されている。また、湾曲状プレート20Bにおける連結用孔e1、e2、e3と平行する3個一組の連結用孔に対応して、湾曲状プレート20Cにも左下端部にかけて谷側と山側とに、前記連結用孔f1、f2、f3に平行する3個一組の近接した連結用孔が形成されている。
【0043】
そして、湾曲状プレート20Bにおける連結用孔e1、e2、e3及びそれ以外の3個一組の連結用孔と、湾曲状プレート20Cにおける連結用孔f1、f2、f3及びそれ以外の3個一組の連結用孔とを、図示するようにボルトにより締結して、湾曲状プレート20Bと湾曲状プレート20Cとを長さ方向に連結する。
【0044】
なお、図示及び説明は省略するが、湾曲状プレート20の幅方向及び長さ方向の連結構造については、
図9により説明した直線状プレート10と同様の連結構造を採用して強固に連結固定できる。
【0045】
図15は、このように連結固定した湾曲状プレート20が建築物における壁面から屋根面にかけての湾曲部に配置された例を示す。この湾曲状プレート20は建築物における湾曲した面に使用される。
【0046】
図16は、連結固定した直線状プレート10が平坦な壁面に配置され、湾曲状プレート20が屋根面にかけての湾曲した面に配置された建築物の全体図である。
【0047】
図17~
図22には、前述した直線状プレートと湾曲状プレートとを使用してアーチ状の建築物を構築した例を示す。
【0048】
図17は、前述の
図4において説明したTYPE-Aの建築材料を使用して構築した断面図である。
図17に示す建築物は間口が17m、高さが6mの比較的小規模の建築物である。そのため、屋根面の重量が屋根面自体に掛かる荷重が比較的小さいので、
図19に示す全体斜視図のように、屋根面が平坦に近い構造にすることができる。この場合には、壁面と屋根面に直線状プレートを使用し、壁面と屋根面との境界部分となる湾曲した箇所に湾曲状プレートを使用することができる。もちろん天井を高くする場合には、前記境界部分に連続して屋根面に湾曲状プレートを使用すればよい。
【0049】
図18は、間口を広げていった場合を説明する断面図である。図中の(a)は
図17と同一のものである。図中の(b)は間口が30m、高さが10mの建築物であって、その全体構成は、
図20の全体斜視図に示される。図中の(c)は間口が40m、高さが145mの建築物であり、その全体構成は、
図21の全体斜視図に示される。図中の(b)で示す建築物及び図中の(c)で示す程度の大きさの建築物の場合は、TYPE-Aよりも厚さが厚く耐荷重性が高いTYPE-Bの建築材料を使用することが好ましい。
【0050】
図中の(d)は、間口が50m、高さが25mのかなり大型の建築物であり、その全体構成は、
図22の全体斜視図に示される。この図中の(c)の建築物については、TYPE-A及びTYPE-Bよりも厚さが厚く耐荷重性が高いTYPE-Cの建築材料を使用する。
【0051】
前述した
図18に示したように、間口が広くなるにしたがって屋根面における曲率を大きくすることより、屋根面の全重量が分散されて屋根面に掛かる荷重が小さくなり、壁面において分散された屋根面の荷重を受け止めることができるので、屋根面を支持する支柱(柱)が不要となり、建築物の内部空間を有効利用することが可能となる。
【0052】
なお、直線状プレート10同士や湾曲状プレート20同士の重なり部、又は、直線状プレート10と湾曲状プレート20との重なり部に、クッション性がある合成樹脂製のパッキンライナーを挟み込んでボルトで締結することにより、隙間の解消、漏水防止、振動防止及びボルト抜けの防止を向上させるようにしてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本発明の請求項1に係る建築物は、厚さが3mm以上、幅が80cm以上であり、幅方向に高低差が14cm以上で2周期以内の湾曲状波形の形状をなす金属板からなる建築材料を使用し、補強材を設けずに前記建築材料が長さ方向及び幅方向に連結されて屋根面及び壁面が構築された建築物であって、前記建築材料は、複数の建築材料が長さ方向に重ねて連結され、前記長さ方向に連結された建築材料と、これに隣接する長さ方向に連結された建築材料とが、それぞれ長さ方向の連結箇所が重ならないように長さ方向にずらして幅方向に重ねて連結され、屋根面を支持する支柱及び横架材を設けずに、高さが6m以上で間口の広さが17m以上のアーチ状に構築したことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る建築物は、前記請求項1の構成に加えて、前記建築材料の連結箇所における建築材料間に合成樹脂製のパッキンライナーを介在させたことを特徴する。