(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060613
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】インクリボンカセット
(51)【国際特許分類】
B41J 32/00 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
B41J32/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168161
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小崎 博史
【テーマコード(参考)】
2C068
【Fターム(参考)】
2C068AA01
2C068AA15
2C068EE03
2C068EE21
(57)【要約】
【課題】使用前は解体できるが、使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットの提供。
【解決手段】ケースとカバーからなる中空の筐体内部に回転可能に巻出コアと巻取コアを保持し、巻出コアにインクリボンを巻き回した巻出パンケーキからインクリボンを巻出し、巻取コアにてインクリボンを巻き取るインクリボンカセットにおいて、巻取コアにインクリボンを巻き取った巻取パンケーキの外周部分と接触し、巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動する移動部材、及び/又は巻出パンケーキの外周部分と接触し、巻出パンケーキの外径の減少に伴って移動する回動部材を有し、巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動部材が移動し、及び/又は巻出パンケーキの外径の減少に伴って回動部材が回動して移動部材、及び/又は回動部材がケースとカバーに係合して、ケースとカバーが分離不能となるインクリボンカセット。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースとカバーからなる中空の筐体内部に回転可能に巻出コアと巻取コアを保持し、前記巻出コアにインクリボンを巻き回した巻出パンケーキから前記インクリボンを巻出し、前記巻取コアにて前記インクリボンを巻き取ることによって前記インクリボンが印字に使用されるインクリボンカセットにおいて、
前記筐体内の巻取コアに前記インクリボンを巻き取った巻取パンケーキの外周部分と接触する位置に設けられ、前記巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動する移動部材、及び/又は前記巻出パンケーキの外周部分と接触する位置に設けられ、前記巻出パンケーキの外径の減少に伴って移動する回動部材を有し、前記巻取パンケーキの外径の増加に伴って前記移動部材が移動し、及び/又は前記巻出パンケーキの外径の減少に伴って前記回動部材が回動して前記移動部材、及び/又は前記回動部材が前記ケースと前記カバーに係合することで、前記ケースと前記カバーが分離不能となることを特徴とするインクリボンカセット。
【請求項2】
前記巻取コアの前記インクリボンを巻き取る方向の反対方向への回転を防止する第1逆転防止機構をさらに有し、請求項1に記載の前記ケースと前記カバーが分離不能な状態において前記巻取パンケーキは前記筐体から取り出し不能であり、前記第1逆転防止機構は前記筐体の外部から逆転防止機能の解除が不能であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【請求項3】
前記巻出コアの前記インクリボンを巻き出す方向の反対方向への回転を防止する第2逆転防止機構をさらに有し、前記第2逆転防止機構は前記筐体の外部から逆転防止機能の解除が不能であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【請求項4】
前記移動部材の前記巻取パンケーキ方向への移動を防止する逆移動防止機構を有し、前記逆移動防止機構は前記筐体の外部から逆移動防止機能の解除が不能であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【請求項5】
複数の前記移動部材が設けられたことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項4のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【請求項6】
前記移動部材を前記巻取パンケーキ方向へ押圧する弾性部材を有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4、又は請求項5のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【請求項7】
前記移動部材は支点を中心に回転可能に保持されることを特徴する請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、又は請求項6のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【請求項8】
前記移動部材は、前記筐体内を平行移動可能であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、又は請求項6のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【請求項9】
前記回動部材を前記巻出パンケーキへ押圧する弾性部材を有することを特徴とする請求項1、又は請求項3のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【請求項10】
複数の前記回動部材が設けられたことを特徴とする請求項1、請求項3、又は請求項9のいずれかに記載のインクリボンカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターに取付けられて使用される、パンケーキ状のインクリボンを収納したインクリボンカセットの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のインクリボンカセットは、特許文献1などで従来から開示されており、インクリボンカセットの具体例としてインクリボンカセットCを、
図11~
図13に示す。
図11は、従来のインクリボンカセットCのカバーC1側から見た平面図である。
図12は、従来のインクリボンカセットCの内部構造を示すために、カバーC1を取り除いた状態のカバーC1を装着する側から見た平面図(インクリボンカセットCの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図である。)
図13は、
図12のZ-Z断面図であり、カバーC1が装着された状態のピン嵌合の状態を示す図、及びピン嵌合部の拡大図である。インクリボンカセットCのケース、カバーの接合方法のみをフック止めに変更したインクリボンカセットDを
図14~
図15に示す。
図14は、従来のインクリボンカセットCのケース、カバーの接合方法のみをフック止めに変更したインクリボンカセットDのカバーD1側から見た平面図である。
図15は、
図14のZ-Z断面、及びフック部の拡大図である。リボンカセットCのカバーC1とケ-スC2で構成された中空の筐体の内部には、インクリボンC5をパンケーキ状に巻き取ってある巻出コアC3と巻出コアC3から繰り出されたインクリボンC5を巻き取る巻取コアC4が回転自在に設けられている。また、インクリボンカセットCには、プリンターに装着されたときにプリンターの印字ヘッド(図示せず)が入り込む空間C10が形成されている。プリンターでの印字時には、インクリボンC5は、巻出コアC3から巻出されて空間C10に引き出され、印字ヘッドによってインクリボンC5上のインクが被転写体に転写された後、巻取コアC4に巻き取られる。
【0003】
この種のインクリボンカセットにおいて、カバーC1とケースC2の接合は、ピン嵌合と呼ばれる方式や、フック止めと呼ばれる方法が一般的に用いられている。ピン嵌合は、
図13に示すように、カバーC1とケースC2の一方に設けた嵌合ピンC15を他方に設けた嵌合穴C25に圧入することによって、カバーC1とケースC2を接合する方法である。カバーC1とケースC2に複数の嵌合ピンC15と嵌合穴C25を設けることによって、カバーC1とケースC2を接合することができる。ピン嵌合であれば嵌合穴C25から嵌合ピンC15を引き抜くだけで、接合した部品を分離することができるので、比較的容易にカバーC1をケースC2から分離することができる。フック止めは
図15に示すように、カバーD1またはケースD2の一方に弾性変形が可能なフックD15を設け、このフックD15に設けた凹部D7が、他方に設けた凸部D9と係合することによって、カバーD1とケースD2を接合する方式である。
図15では、フックD15に凹部D7を設けたが、フックD15に設けた凸部が、他方に設けた凹部と係合することによって、カバーD1とケースD2を接合することも可能である。フック止めでは、フックD15を弾性変形させることによって、前記凹部と凸部の係合を解除することができるので、ピン嵌合と同様に、比較的容易にカバーD1をケースD2から分離することができる。
【0004】
この種のインクリボンカセットにおいて、カバーとケースの接合に、ピン嵌合や、フック止めを用いれば、特別な装置を使用する必要もなく簡単にカバーとケースが接合でき、また、出荷前に内部部品の変更が必要になった場合や、内部部品の欠品などが発覚し手直しなどが必要となった場合に、容易にケースからカバーを取り外すことによってインクリボンカセットを解体して、内部部品の交換などの手直し作業をすることができる。
【0005】
しかしながら、このようなインクリボンカセットでは、カバーがケースから容易に取り外せることから、使用し終えたインクリボンカセットを解体して、品質の悪い所謂海賊版インクリボンと呼ばれる純正品ではないインクリボンをインクリボンカセットに詰替えて販売されることがある。このような海賊版インクリボンは純正品に比べて著しく品質が悪い場合があり、プリンターの故障原因の一つとなっている。このような、海賊版インクリボンの詰替え防止対策として、ケースとカバーを溶着や接着により接合する方法があるが、溶着するには専用設備が必要となり、接着するには接着剤を塗布する手間が必要であるほか、いずれの場合でも、出荷前に部品の欠品などの不具合が発覚した場合などに、内部部品の交換等の手直し作業ができなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、使用前の状態では解体できるが、インクリボンカセットを使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、ケースとカバーからなる中空の筐体内部に回転可能に巻出コアと巻取コアを保持し、前記巻出コアにインクリボンを巻き回した巻出パンケーキから前記インクリボンを巻出し、前記巻取コアにて前記インクリボンを巻き取ることによって前記インクリボンが印字に使用されるインクリボンカセットにおいて、
前記筐体内の巻取コアに前記インクリボンを巻き取った巻取パンケーキの外周部分と接触する位置に設けられ、前記巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動する移動部材、及び/又は前記巻出パンケーキの外周部分と接触する位置に設けられ、前記巻出パンケーキの外径の減少に伴って移動する回動部材を有し、前記巻取パンケーキの外径の増加に伴って前記移動部材が移動し、及び/又は前記巻出パンケーキの外径の減少に伴って前記回動部材が回動して前記移動部材、及び/又は前記回動部材がケースとカバーに係合することで、前記ケースと前記カバーが分離不能となることを特徴とするインクリボンカセットである。
【0009】
第2発明は、前記巻取コアの前記インクリボンを巻き取る方向の反対方向への回転を防止する第1逆転防止機構をさらに有し、第1発明に記載の前記ケースと前記カバーが分離不能な状態において前記巻取パンケーキは前記筐体から取り出し不能であり、前記第1逆転防止機構は前記筐体の外部から逆転防止機能の解除が不能であることを特徴とする第1発明に記載のインクリボンカセットである。
【0010】
第3発明は、前記巻出コアの前記インクリボンを巻き出す方向の反対方向への回転を防止する第2逆転防止機構をさらに有し、前記第2逆転防止機構は前記筐体の外部から逆転防止機能の解除が不能であることを特徴とする第1発明に記載のインクリボンカセットである。
【0011】
第4発明は、前記移動部材の前記巻取パンケーキ方向への移動を防止する逆移動防止機構を有し、前記逆移動防止機構は前記筐体の外部から逆移動防止機能の解除が不能であることを特徴とする第1発明に記載のインクリボンカセットである。
【0012】
第5発明は、複数の前記移動部材が設けられたことを特徴とする第1発明、第2発明、又は第4発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【0013】
第6発明は、前記移動部材を前記巻取パンケーキ方向へ押圧する弾性部材を有することを特徴とする第1発明、第2発明、第4発明、又は第5発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【0014】
第7発明は、前記移動部材は支点を中心に回転可能に保持されることを特徴する第1発明、第2発明、第4発明、第5発明、又は第6発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【0015】
第8発明は、前記移動部材は、前記筐体内を平行移動可能であることを特徴とする第1発明、第2発明、第4発明、第5発明、又は第6発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【0016】
第9発明は、前記回動部材を前記巻出パンケーキへ押圧する弾性部材を有することを特徴とする第1発明、又は第3発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【0017】
第10発明は、複数の前記回動部材が設けられたことを特徴とする第1発明、第3発明、又は第9発明のいずれかに記載のインクリボンカセットである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インクリボンカセット筐体内の巻取パンケーキの外周部分と接触する位置に巻取パンケーキ外径の増加に伴って移動する移動部材、及び/又は巻出パンケーキの外周部分と接触する位置に巻出パンケーキ外径の減少に伴って移動する回動部材を有し、巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動部材が移動して移動部材がケースとカバーに係合し、及び/又は前記巻出パンケーキの外径の減少に伴って前記回動部材が回動して前記回動部材がケースとカバーに係合し、ケースとカバーが分離不能となる。このため、当初のインクリボンが未使用の状態では移動部材はケースとカバーに係合しておらず解体は可能であるのに対して、インクリボンを使用後には移動部材がケースとカバーに係合して、ケースとカバーが分離不能となる。このように、本発明によれば、使用前の状態では解体できるが、インクリボンカセットを使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAのカバーA1側から見た平面図
【
図2】本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAの内部構造を示すために、カバーA1を取り除いた状態のインクリボンカセットAをカバーA1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットAの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図である。)
【
図3】
図2のX-X断面図、但し、カバーA1が装着された状態を示す。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAの内部構造を示すために、カバーA1を取り除いた状態のインクリボンカセットAをカバーA1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットAの使用後の状態であり、巻取パンケーキの外径が大きくなった状態を示す図である。)
【
図5】
図4のY-Y断面図、但し、カバーA1が装着された状態を示す。
【
図6】本発明の第二実施形態に係るインクリボンカセットBのカバーB1側から見た平面図
【
図7】本発明の第二実施形態に係るインクリボンカセットBの内部構造を示すために、カバーB1を取り除いた状態インクリボンカセットBをカバーB1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットBの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図である。)
【
図8】
図7のX-X断面図、但し、カバーB1が装着された状態を示す。
【
図9】本発明の第二実施形態に係るインクリボンカセットBの内部構造を示すために、カバーB1を取り除いた状態のインクリボンカセットBをカバーB1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットBの使用後の状態であり、巻取パンケーキの外径が大きくなった状態を示す図である。)
【
図10】
図9のY-Y断面図、但し、カバーB1が装着された状態を示す。
【
図11】従来のインクリボンカセットCのカバーC1側から見た平面図
【
図12】従来のインクリボンカセットCの内部構造を示すために、カバーC1を取り除いた状態をカバーC1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットCの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図である。)
【
図13】
図12のZ-Z断面図(ただし、カバーC1が装着された状態)、及びピン嵌合部の拡大図である。
【
図14】従来のインクリボンカセットCのケース、カバーの接合方法のみをフック止めに変更したインクリボンカセットDのカバーD1側から見た平面図
【
図16】本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEのカバーE1側から見た平面図
【
図17】本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEの内部構造を示すために、カバーE1を取り除いた状態のインクリボンカセットEをカバーE1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットEの使用前の状態であり、巻出パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。)
【
図18】
図7のX-X断面図、但し、カバーE1が装着された状態を示す。
【
図19】本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEの内部構造を示すために、カバーE1を取り除いた状態のインクリボンカセットEをカバーE1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットEの使用後の状態であり、巻出パンケーキの外径が小さくなった状態を示す図である。)
【
図20】
図19のY-Y断面図、但し、カバーE1が装着された状態を示す。
【
図21】本発明の第四実施形態に係るインクリボンカセットFの内部構造を示すために、カバーF1(図示せず)を取り除いた状態のインクリボンカセットFをカバーF1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットFの使用前の状態であり、巻出パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。)
【
図22】本発明の第四実施形態に係るインクリボンカセットFの内部構造を示すために、カバーF1を取り除いた状態のインクリボンカセットFをカバーF1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットFの使用後の状態であり、巻出パンケーキの外径が小さくなった状態を示す図である。)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAのカバーA1から見た平面図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAの内部構造を示すために、カバーA1を取り除いた状態のインクリボンカセットAをカバーA1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットAの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図)である。
図3は、
図2のX-X断面図である。但し、カバーA1が装着された状態を示している。
【0022】
図1のインクリボンカセットAは、
図2及び
図3に示すように、ケースA2と、カバーA1で構成された中空の筐体の内部に、インクリボンA5を巻出コアA3にパンケーキ状に巻き取ってある巻出パンケーキと巻出パンケーキから巻き出されたインクリボンA5を巻き取る巻取コアA4が回転自在に設けられている。また、インクリボンカセットAには、プリンターに装着されたときにプリンターの印字ヘッド(図示せず)が入り込む空間A10が形成されている。
【0023】
カバーA1のケースA2と係合固定される面には、複数の嵌合ピンA15(図示せず)が設けられている。ケースA2には、カバーA1の嵌合ピンA15と対応する位置に複数の嵌合穴A25が設けられている。嵌合ピンA15の外径寸法と嵌合穴A25の内径寸法は、嵌合ピンA15の嵌合穴A25への挿入が圧入となるように設定される。よって、嵌合ピンA15を対応する嵌合穴A25へ圧入することによって、ケースA2と、カバーA1は係合固定される。嵌合穴A25と嵌合ピンA15の嵌合力は、大きければ大きいほど、ケースA2とカバーA1が強固に接合される点では好ましい。しかしながら、嵌合力が大きすぎると、嵌合ピンA15の嵌合穴A25に対する圧入が不十分となって、ケースA2とカバーA1の接合部に隙間が発生する圧入不良が発生することがある。また、ケースA2とカバーA1は一般的にプラスチック成形品で作製されることが多く、このようなプラスチック成型品を使用した場合に嵌合力が大きくなり過ぎると、圧入時にケースA2とカバーA1の外観が白く変色する白化不良が発生し易くなる。このような不具合を防止するため、嵌合穴A25と嵌合ピンA15の嵌合力は、通常、薄いヘラ状の道具をケースA2とカバーA1間に差し込めば、ケースA2とカバーA1を分離可能な程度(20N~50N程度)に設定される。
【0024】
図2及び
図4に示すように、インクリボンカセットAはさらに移動部材A6を有する。移動部材A6はケースA2及び/又はカバーA1で構成された筐体内の支点A13を中心として回転可能に前記筐体に保持され、印字に使用した後のインクリボンA5を巻取コアA4に巻き取った巻取パンケーキの外周部と接触する位置に設けられる。また、移動部材A6は、前記巻取パンケーキと接触した状態で、前記巻取パンケーキの外径変化に伴って、前記支点A13を回転中心として移動可能となっている。
図4及び
図5は、インクリボンカセットAの使用後の状態であり、巻取パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。
【0025】
図5に示すように、インクリボンカセットAの使用後の状態では、移動部材A6がカバーA1とケースA2で構成される凸部A11を挟み込んだ状態(移動部材A6が凸部A11と係合した状態)となっている。移動部材A6は、凸部A11のカバーA1で構成された形状であるカバー側形状A111が、カバーA1側へ移動することを防止する部分である移動防止形状A61と、凸部A11のケースA2で構成された形状であるケース側形状A112が、ケースA2側へ移動することを防止する部分である移動防止形状A62を、少なくとも有している。巻取パンケーキの外径が大きくなることにより、巻取パンケーキの外周部分に押されて、移動部材A6が移動すると、移動防止形状A61がカバー側形状A111のカバーA1側を覆い、移動防止形状A62がケース側形状A112のケースA2側を覆うことによって、移動部材A6と凸部A11が係合する。カバー側形状A111はカバーA1と一体となった形状であり、ケース側形状A112はケースA2と一体となった形状である。このため、移動部材A6が凸部A11を挟み込んだ状態となり、ケースA2からカバーA1を分離しようとしても、カバーA1と一体となったカバー側形状A111は移動防止形状A61で覆われているのでカバーA1側に移動できず、同様にケースA2と一体となったケース側形状A112は移動防止形状A62で覆われているのでケースA2側に移動できず、ケースA2からカバーA1を分離することができなくなる。
【0026】
移動防止形状A61と移動防止形状A62を含む移動部材A6の凸部A11と係合する部分の形状は、一体となった筒状の形状であることが好ましい。移動部材A6と凸部A11が係合すると、凸部A11がこの一体となった筒状形状内に挿入されることが好ましい。凸部A11と係合する部分が一体となった筒状となっていることにより、移動防止形状A61、A62の機械的強度が増し、移動防止形状A61、A62には外力による変形や破損が生じ難くなる。このため、ケースA2からカバーA1を分離しようとして、凸部A11のカバー側形状A111が移動部材A6の移動防止形状A61を強く押しても、移動防止形状A61は変形したり破損したりすることはない。また、同様に、凸部A11のケース側形状A112が移動部材A6の移動防止形状A62を強く押しても、移動防止形状A62は変形したり破損したりすることはない。このため、移動部材A6の凸部A11と係合する部分の形状を一体となった筒状の形状とすることによって、より確実にケースA2からカバーA1を分離することができなくなる。
【0027】
巻取パンケーキ外径が大きくなることによって移動部材A6が移動する時に、移動部材A6と凸部A11が干渉して、移動部材A6が移動できなくなって、移動部材A6と凸部A11が係合できなくならなければ、移動部材A6と凸部A11が係合した状態におけるカバー側形状A111と移動防止形状A61間、及びケース側形状A112と移動防止形状A62間の隙間は、小さいことが好ましい。この隙間は2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。また、移動部材A6と凸部A11が干渉することを防止するために、移動部材A6が移動して凸部A11と係合し始める部分である移動部材A6の内壁に、前記隙間が傾斜状に広くなる形状(所謂、呼び込み形状又はC面)を設けても良い。
【0028】
巻取パンケーキの外径が大きくなった状態では、巻取パンケーキが障害となって、移動部材A6を巻取パンケーキ方向へ移動させることができない。このため、移動部材A6が凸部A11を挟み込んだ状態を解除することができなくなる。したがって、インクリボンカセットAは
図4及び
図5の状態では、ケースA2からカバーA1を容易に分離することができなくなる。このため、インクリボンカセットAは、インクリボンを使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットとなる。
【0029】
これに対して、
図2は、
図4と同じ本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAの内部構造を示すために、カバーA1を取り除いた状態をカバーA1の装着側から見た平面図であるが、インクリボンカセットAの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さい状態を示す図である。
図3は、
図2のX-X断面図である。
図2及び
図3の状態では、インクリボンカセットAの巻取パンケーキ外径が小さい。このため、移動部材A6は、凸部A11を挟み込んだ状態から巻取パンケーキ方向へ移動して、凸部A11を挟まない位置まで移動可能となっている。したがって、例えば、凸部11に対して巻取パンケーキが重力方向で下側となるように、インクリボンカセットAを置くと、移動部材A6は自重により支点A13を中心に回転して、巻取パンケーキに接触する位置まで移動する。この状態では、
図2に示すように、移動部材A6が凸部A11を挟み込まない状態となる。したがって、インクリボンカセットAは
図2の状態では、ケースA2からカバーA1を容易に分離することができるようになる。このため、インクリボンカセットAは、インクリボンを使う前状態では容易に解体できるインクリボンカセットである。
【0030】
本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAは、インクリボンA5を巻き取る方向とは逆方向への巻取コアA4の回転を防止する第1逆転防止機構をさらに有することが好ましい。また、インクリボンカセットAの外部から当該第1逆転防止機構の逆転防止機能が解除できないことが好ましい。インクリボンカセットAでは、逆転防止機能を外部から解除できない巻取コアA4の第1逆転防止機構を有することにより、空間A10にあるインクリボンA5を引っ張って、巻取コアA4に巻き付けられた巻取パンケーキの外径を小さくすることができない。この結果、
図5のように移動部材A6がカバーA1とケースA2で構成される凸部A11を挟み込んだ状態となっている場合にも、巻取りパンケーキ外径を小さくすることができないので、移動部材A6が凸部A11を挟み込んだ状態を解除することが困難となり、ケースA2からカバーA1を取り外すことによって、インクリボンカセットAを解体することがより困難になる。
【0031】
また、本発明の第一実施形態に係るインクリボンカセットAは、この種の同種のインクリボンカセットと同様に、ケースA2からカバーA1を取り外さなければ、巻取コアA4がインクリボンカセットAから取り外せない構造である。巻取コアA4がインクリボンカセットAから取り外せないので、インクリボンカセットAから巻取パンケーキを取り外すことにより、移動部材A6が凸部A11を挟み込んだ状態を解除することができず、ケースA2からカバーA1を取り外すことによって、インクリボンカセットAを解体することができない。
【0032】
巻取コアA4の逆転を防止する第1逆転防止機構は、巻取コアA4の回転に大きな負荷となり、インクリボンカセットAによる印字に不具合を生じるようなことが無ければ、任意の第1逆転防止機構が使用可能である。例えば、
図2に示すような、巻取コアA4の外周に設けられた逆転防止歯車A41とケースA2に設けられたラチェットツメA21で構成される逆転防止機構を使用することができる。
図2の逆転防止機構では、巻取コアA4をケースA2に装着すると、
図3に示すように、ケースA2に設けられた装着軸A22に巻取コアA4が回転可能に保持される。巻取コアA4が装着軸A22に装着されると、ラチェットツメA21が接触する部分の巻取コアA4の全周に亘って、逆転防止歯車A41が連続して設けられている。また、ラチェットツメA21は弾性可能な弾性片A211の先端に設けられている。巻取コアA4をケースA2に装着すると、ラチェットツメA21が逆転防止歯車A41と噛み合う。ラチェットツメA21と逆転防止歯車A41の形状は、
図2の拡大部分に示すように、巻取コアA4がインクリボンA5を巻き取る方向の反対方向へ回転する場合には、ラチェットツメA21と逆転防止歯車A41が強く噛み合い、巻取コアA4の回転を防止する。一方、巻取コアA4がインクリボンA5を巻き取る方向へ回転する場合には、ラチェットツメA21の斜面が逆転防止歯車A41の斜面に沿ってすべりながら、弾性片A211が変形することによって、ラチェットツメA21が逆転防止歯車A41を乗り越えることができるものとなっている。したがって、巻取コアA4はインクリボンA5を巻取る方向へは回転可能であるが、インクリボンA5を巻き取る方向の反対方向へ回転することができない。
【0033】
インクリボンカセットAのラチェットツメA21付近のケースA2には、
図2の拡大部分に示すように開口部はなく、ラチェットツメA21はケースA2の外壁で覆われた位置にあるため、ケースA2を破壊しなければ、ラチェットツメA21と逆転防止歯車A41の噛み合いを解除することはできない。また、巻取コアA4は、ケースA2の装着軸A22に装着されているのと同様に、もう一方の端部をカバーA1の装着軸A12に装着される。巻取コアA4は、両端部付近の内周を、装着軸A12と装着軸A22によって回転可能に保持されている。このため、巻取コアA4は、ケースA2からカバーA1を取り外さなければ、インクリボンカセットAから取り外すことが出来なくなっている。
【0034】
このように、インクリボンカセットAでは、巻取コアA4は、ケースA2からカバーA1を取り外さなければ、インクリボンカセットAから取り外すことが出来なくなっている。また、巻取コアA4は、ラチェットツメA21と逆転防止歯車A41で構成された第1逆転防止機構によって、インクリボンA5を巻き取る方向の反対方向へ回転することができなくなっており、巻取コアA4に巻き取られたインクリボンA5を引き出して、巻取パンケーキの外径を小さくすることが出来なくなっている。さらには、ラチェットツメA21は、ケースA2の外壁で覆われているため、ケースA2を破壊しなければ、巻取コアA4の逆転防止を解除することはできない。この結果、インクリボンカセットAの巻取コアA4は、
図5のように移動部材A6がカバーA1とケースA2で構成される凸部A11を挟み込んだ状態では、インクリボンカセットAから巻取コアA4を取り外すことも、巻取コアA4に巻き付けられた巻取パンケーキの外径を小さくすることもできない。このため、移動部材A6がカバーA1とケースA2で構成される凸部A11を挟み込んだ状態では、ケースA2又はカバーA1の少なくともどちらか一方を破壊しなければ、ケースA2からカバーA1を取り外すことができなくなっており、ケースA2及びカバーA1の両方を再利用可能な状態で、ケースA2からカバーA1を取り外すことができない。
【0035】
図6は、本発明の第二実施形態に係るインクリボンカセットBのカバーB1から見た平面図である。
図7は、本発明の第二実施形態に係るインクリボンカセットBの内部構造を示すために、カバーB1を取り除いた状態のインクリボンカセットBをカバーB1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットBの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図)である。
図8は、
図7のX-X断面図である。但し、カバーB1が装着された状態を示している。
図9は、
図7と同様にカバーB1を取り除いた状態のインクリボンカセットBをカバーB1装着側から見た平面図及び逆移動防止機構の拡大図であり、インクリボンカセットBの使用後の状態で、巻取パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。
図10は、
図9のY-Y断面図である。但し、カバーB1が装着された状態を示している。
【0036】
インクリボンカセットBがインクリボンカセットAと異なる点は、
図7及び
図9に示すように、移動部材B6と移動部材B6が挟み込む凸部B11が2箇所に設けられていること、移動部材A6が支点A13を中心として回転移動するようになっていたのに対して、移動部材B6はインクリボンカセットB内を平行移動すること、巻取コアの第1逆転防止機構ではなく移動部材B6が巻取パンケーキに近づく方向へ移動することを防止する逆移動防止機構が設けられていること、移動部材B6を巻取パンケーキ方向へ押圧する弾性部材B14が設けられていること、及び巻取コアB4の直前でインクリボンB5の走行方向を変える方向変更ピンB24が設けられていることである。
【0037】
インクリボンカセットBでは、移動部材B6が
図7に示すように、対向して2箇所に設けられるため、巻取パンケーキの外径が大きくなることによって、移動部材B6が移動すると、対向する2箇所で移動部材B6が凸部B11を挟み込んだ(係合した)状態となる。このため、リボンカセットAよりも、さらにケースB2からのカバーB1の分離が困難になる。このように、複数の移動部材B6を設けることによって、巻取パンケーキ外径が大きくなったインクリボンカセットBの使用後の状態におけるケースB2からのカバーB1の分離がより困難になるので、移動部材B6及び移動部材B6と係合する凸B11は複数設けられることが好ましい。
【0038】
図8、
図10に示すように、インクリボンカセットBでは、移動部材B6が巻取パンケーキの外周と接触することで、巻取パンケーキから遠ざかる方向へ移動可能となるように、移動部材B6の両端部をスライド移動可能に保持するレール部B15が設けられている。また、移動部材B6は一体形成された構造であるラチェットツメB61を有している。ラチェットツメB61と噛み合う逆移動防止ギアB23は、ラチェットツメB61と噛み合う位置にケースB2に連続して設けられる。すなわち、ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23は、移動部材B6が巻取パンケーキに近づく方向へは移動できなくする逆移動防止機構を構成している。
【0039】
インクリボンカセットBでは、移動部材B6をケースB2に装着すると、移動部材B6はケースB2に設けられたレール部B15の2本のレール間にセットされ、ケースB2にカバーB1を装着することにより、移動部材B6の両端部がケースB2に設けられたレール部B15と、カバーB1に設けられたレール部B15に挟み込まれて、インクリボンカセットB内に移動可能に保持される。移動部材B6をケースB2に装着した状態で、巻取パンケーキから遠ざかる方向へ移動させると、ラチェットツメB61が先端に設けられている弾性片B611が弾性変形することによって、ラチェットツメB61が逆移動防止ギアB23の斜面をすべりつつ、この斜面を乗り越えて、ラチェットツメB61が次の逆移動防止ギアB23と噛み合う。ラチェットツメB61は弾性片B611の弾性力により、逆移動防止ギアB23に押圧されているので、ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23はしっかりと噛み合わせることができる。インクリボンカセットBでは、移動部材B6が凸部B11を挟み込む位置に移動した場合だけではなく、凸部B11を挟み込まない位置でも、ラチェットツメB61と噛み合う逆移動防止ギアB23を設けたが、移動部材B6が凸部B11を挟み込む位置のみに、連続してラチェットツメB61と噛み合う逆移動防止ギアB23を設けてもよい。
【0040】
ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23の形状は、
図9の拡大部分に示すように、移動部材B6が巻取パンケーキに近づく方向へ移動する場合には、ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23が強く噛み合い、移動部材B6の移動を防止する。一方、移動部材B6が巻取パンケーキから遠ざかる方向へ移動する場合には、ラチェットツメB61の斜面が逆移動防止ギアB23の斜面に沿ってすべりながら、弾性片B611が変形することによって、ラチェットツメB61が逆移動防止ギアB23を乗り越えることができるものとなっている。したがって、移動部材B6は巻取パンケーキから遠ざかる方向へは移動可能であるが、巻取パンケーキへ近づく方向へ移動することができなくなる。
【0041】
図7と
図9に示すように、インクリボンカセットBのラチェットツメB61付近のケースB2には開口部がなく、ラチェットツメB61はケースB2の外壁で覆われているため、ケースB2を破壊しなければ、ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23の噛み合いを解除することはできない。また、移動部材B6に逆移動防止機構が設けられているので、巻取パンケーキの外径を小さくしても、移動部材B6を巻取パンケーキの方向へ移動させることができず、凸部B11と移動部材B6の係合を解除することはできない。
【0042】
インクリボンカセットBでは、移動部材B6を巻取パンケーキ方向へ押圧する弾性部材B14を設けることが好ましい。弾性部材B14が移動部材B6を押圧する範囲は、移動部材B6が凸部B11を挟み込む位置よりも、1~5mm巻取パンケーキ側の位置までであることが好ましい。インクリボンカセットBでは、ラチェットツメB61と逆移動防止ギアB23が噛み合って移動部材B6の巻取パンケーキ側への移動が防止される。しかしながら、移動部材B6は、巻取パンケーキから遠ざかる方向へは比較的容易に移動可能となっている。
【0043】
このように、移動部材B6が比較的容易に移動可能な状態になっていると、例えば、インクリボンカセットBの輸送中に振動などが加えられると、その振動によって、移動部材B6が移動し、凸部B11と移動部材B6が係合する位置まで、移動部材B6が移動するおそれがある。このように、移動部材B6が比較的容易に移動可能な状態であれば、振動などにより、インクリボンB5を使用していない使用前の状況であっても、移動部材B6が凸部B11を挟み込んで、インクリボンカセットBが解体できなくなるおそれがある。前記の逆移動防止機構が設けられていると、インクリボンカセットBを解体しなければ、移動部材B6が凸部B11を挟み込んだ状態を解除することはできなくなる。これでは、本発明の課題である、使用前の状態では解体できるが、インクリボンカセットを使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットを提供することができなくなる。
【0044】
これに対して、移動部材B6を巻取パンケーキ方向へ押圧する弾性部材B14を設け、弾性部材B14が移動部材B6を押圧する範囲を、移動部材B6が凸部B11を挟み込む位置よりも、1~5mm巻取パンケーキ側までの位置とすれば、移動部材B6が振動などにより、巻取パンケーキから遠ざかる方向に移動したとしても、移動部材B6が凸部B11を挟み込む位置まで移動することはない。このため、弾性部材B14を設けることにより、巻取パンケーキの外周部に押圧されること以外の理由によって、移動部材B6が凸部B11を挟み込むことがなくなり、インクリボンB5を使用していない使用前の状態では、移動部材B6が凸部B11を挟み込んで、インクリボンカセットBが解体できなくなることはない。
【0045】
図16は、本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEのカバーE1から見た平面図である。
図17は、本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEの内部構造を示すために、カバーE1を取り除いた状態のインクリボンカセットEをカバーE1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットEの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図)である。
図18は、
図17のX-X断面図である。但し、カバーE1が装着された状態を示している。
図19は、
図17と同様にカバーE1を取り除いた状態のインクリボンカセットEをカバーE1の装着側から見た平面図であり、インクリボンカセットEの使用後の状態で、巻取パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。
図20は、
図19のY-Y断面図である。但し、カバーE1が装着された状態を示している。
【0046】
インクリボンカセットEがインクリボンカセットA及びインクリボンカセットBと異なる点は、
図17及び
図19に示すように、巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動する移動部材ではなく、巻出パンケーキの外周部分と接触する位置に設けられ、巻出パンケーキの外径の減少に伴って移動する回動部材E7が設けられていることである。回動部材E7は、回動部材E7に設けられた回動穴E71を、ケースE2に設けられた支軸E14に装着することによって、ケースE2に回動可能に軸支されている。回動部材E7は回動穴E71を挟んだ両端部の位置に、押圧部E72と係合部E73を有している。押圧部E72は、弾性部材E8に押圧されることによって巻出パンケーキの外周を押圧する部分であり、係合部E73はカバーE1とケースE2で構成される凸部E11を挟み込んで、カバーE1とケースE2を分離不能とする部分である。
【0047】
インクリボンカセットEでは、押圧部E72は弾性部材E8であるコイルスプリングによって、巻出パンケーキの外周部に押圧されている。押圧部E72が巻出パンケーキの外周部に押圧されているため、巻出パンケーキからインクリボンE5が巻き出されて巻出パンケーキの外径が減少するのに伴って、回動部材E7は支軸E14を中心に回転する。巻出パンケーキの外径が減少するのに伴って回動部材E7が回転するので、
図17に示すインクリボンE5の使用前の状態から、
図19に示すインクリボンE5の使用後の状態を通じて、押圧部E72が巻出パンケーキの外周部に接触した状態が維持される。
インクリボンカセットEでは、弾性部材E8として金属製のコイルスプリングを使用しているが、弾性部材E8はコイルスプリングに限定されることはなく、金属製、樹脂製などの板バネでも良い。また、インクリボンカセットEでは、弾性部材E8を回動部材E7及びケースE2とは別部材としたが、弾性部材E8は必ずしも回動部材E7及びケースE2とは別部材にする必要はなく、例えば、回動部材E7又はケースE2と一体成形した樹脂バネとしても良い。
【0048】
押圧部E72の巻出パンケーキと接触する部分は、摩擦係数が小さく、かつ柔らかいことが好ましい。例えば、シート状のウレタンフォームやフェルトにフッ素系やシリコーン系などの摩擦係数が小さなコーティング表面を有するシートを貼り付けたものを使用することが好ましい。インクリボンカセットEでは、押圧部E72に両面接着テープで厚み2mmのフェルトを貼り付け、フェルト上にシリコーン粘着剤でポリテトラフルオロエチレンシートを貼り付けた。押圧部E72の巻出パンケーキとの接触面を、摩擦係数が小さなポリテトラフルオロエチレンシートとしたので、押圧部E72の押圧によって巻出パンケーキの回転時に作用するブレーキ力を最小限に抑えることができる。また、押圧部E72の巻出パンケーキとの接触面の摩擦係数を小さくするとともに、押圧部E72の巻出パンケーキとの接触面に作用する押圧力をフェルトが変形することによって緩和するので、押圧部E72と接触する巻出パンケーキ表面の傷付などのダメージの発生を防ぐことができる。
【0049】
巻出パンケーキの外径が減少するのに伴って、回動部材E7が支軸E14を中心に回転すると、係合部E73は、
図17に示す位置から
図19に示す位置に移動し、凸部E11と係合する。係合部E73と凸部E11の関係は、本発明の第一実施形態であるインクリボンカセットAの移動部材A6と凸部A11の関係と同様である。
【0050】
図19に示すように、インクリボンカセットEの使用後の状態では、係合部E73がカバーE1とケースE2で構成される凸部E11を挟み込んだ状態(回動部材E7が凸部E11と係合した状態)となっている。
図20の部分拡大図に示すように、係合部E73は、凸部E11のカバーE1で構成された形状であるカバー側形状E111が、カバーE1側へ移動することを防止する部分である移動防止形状E731と、凸部E11のケースE2で構成された形状であるケース側形状E112が、ケースE2側へ移動することを防止する部分である移動防止形状E732を、少なくとも有している。巻出パンケーキの外径が減少することにより、巻出パンケーキの外周部分を押圧する押圧部E72が移動すると、係合部E73も
図17から
図19の位置まで移動し、凸部E11と係合する。係合部E73が凸部E11と係合すると、移動防止形状E731がカバー側形状E111のカバーE1側を覆い、移動防止形状E732がケース側形状E112のケースE2側を覆うことによって、係合部E73と凸部E11が係合する。カバー側形状E111はカバーE1と一体となった形状であり、ケース側形状E112はケースE2と一体となった形状である。このため、回動部材E7の係合部E73が凸部E11を挟み込んだ状態で、ケースE2からカバーE1を分離しようとしても、カバーE1と一体となったカバー側形状E111は移動防止形状E731で覆われているのでカバーE1側に移動できず、同様にケースE2と一体となったケース側形状E112は移動防止形状E732で覆われているのでケースE2側に移動できず、ケースE2からのカバーE1の分離を防止することができる。
【0051】
移動防止形状E731と移動防止形状E732を含む回動部材E7の係合部E73の凸部E11と係合する部分の形状は、一体となった筒状の形状であることが好ましいのは、インクリボンカセットAの移動部材A6、インクリボンカセットBの移動部材B6と同様である。回動部材E7の係合部E73の凸部E11と係合する部分の形状を一体となった筒状の形状とすることによって、より確実にケースE2からのカバーE1の分離を防止することができる。
【0052】
巻出パンケーキ外径が小さくなることによって回動部材E7の係合部E73が移動する時に、係合部E73と凸部E11が干渉して、回動部材E7が移動できなくなって、回動部材E7の係合部E73と凸部E11が係合できなくならなければ、係合部E73と凸部E11が係合した状態におけるカバー側形状E111と移動防止形状E731間、及びケース側形状E112と移動防止形状E732間の隙間は、小さいことが好ましいのもインクリボンカセットA及びインクリボンカセットBと同様である。この隙間は2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下である。また、係合部E73と凸部E11が干渉することを防止するために、係合部E73が移動して凸部E11と係合し始める部分である係合部E73の内壁に、前記隙間が傾斜状に広くなる形状(所謂、呼び込み形状又はC面)を設けても良いのも、インクリボンカセットA、Bと同様である。
【0053】
巻出パンケーキの外径が小さくなった状態でも、巻出パンケーキに対して回動部材E7の押圧部E72が弾性部材E8で押圧されており、また、インクリボンカセットEの回動部材E7付近のカバーE1とケースE2には、外部から回動部材E7を操作可能な穴が設けられていないため、回動部材E7を移動させることができない。このため、回動部材E7の係合部E73が凸部E11を挟み込んだ状態を解除することができなくなる。したがって、インクリボンカセットEは
図19の状態では、ケースE2からカバーE1を容易に分離することができなくなる。このため、インクリボンカセットEは、インクリボンを使い終えた状態では容易に解体できないインクリボンカセットとなる。
【0054】
これに対して、
図17は、
図19と同じ本発明の第三実施形態に係るインクリボンカセットEの内部構造を示すために、カバーE1を取り除いた状態をカバーE1の装着側から見た平面図であるが、インクリボンカセットEの使用前の状態であり、巻出パンケーキの外径が大きい状態を示す図である。
図18は、
図17のX-X断面図である。
図17及び
図18の状態では、インクリボンカセットEの巻出パンケーキ外径が大きい。このため、回動部材E7は凸部E11を挟んでいない。したがって、インクリボンカセットEは
図17の状態では、ケースE2からカバーE1を容易に分離することができる。このため、インクリボンカセットEは、インクリボンE5を使う前の状態では容易に解体できるインクリボンカセットである。
【0055】
また、インクリボンカセットEでは、インクリボンE5を巻き出す方向とは逆方向へ巻出コアE3を回転させて、巻出コアE3から巻き出されたインクリボンE5を、再び巻出コアE3へ巻き戻させないようにすることが好ましい。このような方法としては、巻出コアE3に対して外部から接触できないようにするか、巻出コアE3のインクリボンE5を巻き出す方向とは逆方向への回転を防止する逆転防止機構を設ける方法がある。逆転防止機構は巻出コアE3の回転に大きな負荷となり、インクリボンカセットEによる印字に不具合を生じるようなことが無ければ、任意の逆転防止機構が使用可能である。インクリボンカセットEでは、
図19の部分拡大図に示すように巻出コアE3の逆転を防止する逆転防止機構として、巻出コアE3の外周に設けられた逆転防止歯車E41とケースE2に設けられたラチェットツメE21で構成される第2逆転防止機構を使用することができる。
図19の第2逆転防止機構では、巻出コアE3をケースE2に装着すると、
図20に示すように、ケースE2に設けられた装着軸E22に巻出コアE3が回転可能に保持される。巻出コアE3が装着軸E22に装着されると、ラチェットツメE21が接触する部分の巻出コアE3の全周に亘って、逆転防止歯車E41が連続して設けられている。また、ラチェットツメE21は弾性可能な弾性片E211の先端に設けられている。巻出コアE3をケースE2に装着すると、ラチェットツメE21が逆転防止歯車E41と噛み合う。ラチェットツメE21と逆転防止歯車E41の形状は、
図19の拡大部分に示すように、巻出コアE3がインクリボンE5を巻き出す方向の反対方向へ回転する場合には、ラチェットツメE21と逆転防止歯車E41が強く噛み合い、巻出コアE3の回転を防止する。一方、巻出コアE3がインクリボンE5を巻き出す方向へ回転する場合には、ラチェットツメE21の斜面が逆転防止歯車E41の斜面に沿ってすべりながら、弾性片E211が変形することによって、ラチェットツメE21が逆転防止歯車E41を乗り越えることができるものとなっている。したがって、巻出コアE3はインクリボンE5を巻き出す方向へは回転可能であるが、インクリボンE5を巻き出す方向の反対方向へ回転することができない。
【0056】
インクリボンカセットEのラチェットツメE21付近のケースE2には、
図19に示すように開口部はなく、ラチェットツメE21はケースE2の外壁で覆われた位置にあるため、ケースE2を破壊しなければ、ラチェットツメE21と逆転防止歯車E41の噛み合いを解除することはできない。また、巻出コアE3は、ケースE2の装着軸E22に装着されているのと同様に、もう一方の端部をカバーE1の装着軸E12に装着される。巻出コアE3は、両端部付近の内周を、装着軸E12と装着軸E22によって、回転可能に保持されている。このため、巻取コアE4は、ケースE2からカバーE1を取り外さなければ、インクリボンカセットEから取り外すことが出来なくなっている。
【0057】
このように、インクリボンカセットEでは、巻出コアE3は、ケースE2からカバーE1を取り外さなければ、インクリボンカセットEから取り外すことが出来なくなっている。また、巻出コアE3は、ラチェットツメE21と逆転防止歯車E41で構成された第2逆転防止機構によって、インクリボンE5を巻き出す方向の反対方向へ回転することができなくなっており、巻出コアE3から巻き出されたインクリボンE5を巻き戻して、再度巻出パンケーキの外径を大きくすることが出来なくなっている。さらには、ラチェットツメE21は、ケースE2の外壁で覆われているため、ケースE2を破壊しなければ、巻出コアE3の逆転防止を解除することはできない。この結果、インクリボンカセットEの巻出コアE3は、
図20のように回動部材E7の係合部E73がカバーE1とケースE2で構成される凸部E11を挟み込んだ状態では、インクリボンカセットEから巻出コアE3を取り外すことも、巻出コアE3に巻き付けられた巻出パンケーキの外径を大きくすることもできない。
【0058】
このように、インクリボンカセットEでは、インクリボンE5を使い終えた状態において、外部から回動部材E7の係合部E73と凸部E11の係合を解除することが出来ないので、ケースE2又はカバーE1の少なくともどちらか一方を破壊しなければ、ケースE2からカバーE1を取り外すことができなくなっており、ケースE2及びカバーE1の両方を再利用可能な状態で、ケースE2からカバーE1を取り外すことができない。
【0059】
また、前記のように、インクリボンカセットEにおいて、インクリボンE5を再び巻出コアE3へ巻き戻させないようにする方法としては、巻出コアE3に外部から接触できないようにする方法もある。巻出コアE3に外部から接触できないようにする方法としては、
図18に示すカバーE1の装着軸E12とケースE2の装着軸E22を延長して、巻出コアE3の内周全部を覆う方法などがある。巻出コアE3の内周全部が覆われると、巻出コアE3の内周に外部から接触できないようになるため、外部から巻出コアE3を回転させて、巻出コアE3から巻き出されたインクリボンE5を、再び巻出コアE3へ巻き戻すことができなくなり、前記第2逆転防止機構を設けたのと同様に、インクリボンE5を再び巻出コアE3へ巻き戻して、巻出パンケーキ外径を大きくすることができなくなる。
【0060】
インクリボンカセットEでは、回動部材E7を1箇所に設けたが、インクリボンカセットBの移動部材B6と同様に、回動部材E7を2箇所以上に設けることが好ましい。回動部材E7を2箇所以上に設けることにより、巻出パンケーキからリボンが巻き出されて巻出パンケーキが小さくなると、2箇所の回動部材E7の係合部E73が移動して、2箇所で係合部E73が凸部E11を挟み込んだ状態となる。このため、リボンカセットEよりも、さらにケースE2からのカバーE1の分離が困難になる。このように、複数の回動部材E7を設けることによって、巻出パンケーキ外径が小さくなったインクリボンカセットEの使用後の状態におけるケースE2からのカバーE1の分離がより困難になるので、回動部材E7及び回動部材E7と係合する凸E11は複数設けられることが好ましい。
【0061】
図21は、本発明の第四実施形態に係るインクリボンカセットFの内部構造を示すために、カバーF1を取り除いた状態のインクリボンカセットFをカバーF1の装着側から見た平面図(インクリボンカセットFの使用前の状態であり、巻取パンケーキの外径が小さな状態を示す図)である。
図22は、
図21と同様にカバーF1を取り除いた状態のインクリボンカセットFをカバーF1の装着側から見た平面図であり、インクリボンカセットFの使用後の状態で、巻取パンケーキの外径が大きな状態を示す図である。
【0062】
インクリボンカセットFがインクリボンカセットEと異なる点は、
図21及び
図22に示すように、巻取パンケーキの外径の増加に伴って移動する移動部材F6をさらに設けたこと、及びインクリボンカセットAと同様の巻取コアの逆転防止機構を有することである。
インクリボンカセットFの巻取コアF4の外周には、インクリボンカセットAに設けられた逆転防止歯車A41と同形状の逆転防止歯車F41が設けられ、インクリボンカセットFのケースF2にはインクリボンカセットAのケースA2に設けられたラチェットツメA21と同形状のラチェットツメF21が設けられている。インクリボンカセットFでは、インクリボンカセットAと同様に、ラチェットツメF21が逆転防止歯車F41と係合することにより、巻取コアF4がインクリボンF5を巻き取る方向と反対方向へ回転することを防止している。
【0063】
図22に示すように、インクリボンカセットFの使用後の状態では、移動部材F6と回動部材F7の両方が、凸部F11を挟み込む(係合する)ので、インクリボンカセットEよりも、さらにケースF2からのカバーF1の分離が困難になる。
【0064】
以上の本発明の実施形態では、インクリボンカセットは、インクリボン、ケース、カバー、巻出コア、巻取コア、移動部材及び/又は回動部材、弾性部材の8種類の部品で構成したが、必要に応じて、これら以外の部品を適宜設けても良い。
【0065】
例えば、インクリボンの走行抵抗を低減するために、インクリボンと接してインクリボンの走行に伴って回転するローラーや、インクリボンに接してインクリボンの張力を付与する弾性部材等を、インクリボンカセット内に設けても良い。
【実施例0066】
本発明の第一実施形態のインクリボンカセットAを
図1~
図5に示す。本発明の第二実施形態のインクリボンカセットBを
図6~
図10に示す。本発明の第三実施形態のインクリボンカセットEを
図16~
図20に示す。本発明の第四実施形態のインクリボンカセットFを
図21~
図22に示す。