(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060657
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】資金決済装置及び資金決済方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/10 20120101AFI20220408BHJP
【FI】
G06Q20/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168244
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】598049322
【氏名又は名称】株式会社三菱UFJ銀行
(71)【出願人】
【識別番号】596088141
【氏名又は名称】株式会社日本カ-ドネットワ-ク
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 文寛
(72)【発明者】
【氏名】水野 賢一
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA23
(57)【要約】
【課題】フレキシブルな口座振替を可能にするための技術を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様は、第1の口座から第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求を受け付ける振替要求受付部と、前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認する残高照会部と、前記残高と前記閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替える決済部と、を有する資金決済装置に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の口座から第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求を受け付ける振替要求受付部と、
前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認する残高照会部と、
前記残高と前記閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替える決済部と、
を有する資金決済装置。
【請求項2】
前記決済部は、振替予定情報に更に基づき前記口座振替を実行するか判定する、請求項1記載の資金決済装置。
【請求項3】
前記決済部は、前記残高に更に基づき前記振替金額を変更する、請求項1又は2記載の資金決済装置。
【請求項4】
プロセッサが、第1の口座から第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求を受け付けるステップと、
前記プロセッサが、前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認するステップと、
前記プロセッサが、前記残高と前記閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替えるステップと、
を有する資金決済方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融技術(フィンテック)に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行の主要な業務の1つとして決済業務がある。フィンテックと呼ばれる金融技術の進展に伴って、コンピュータネットワークを利用した各種決済サービスの提供が促進されている。例えば、顧客は、ネットバンキングを利用して預金残高を確認したり、他の預金口座との間の振込や振替を実行することができる。また、電子マネーの普及によって、電子マネーのチャージなどが頻繁に行われるようになり、発行元企業と利用者との間の口座振替の頻度が高まりつつある。
【0003】
電子マネーの利用者と電子マネー事業者との口座間の振替について口座振替契約が事前に締結されている場合、振替先口座(収納口座)の口座名義人によって決定された振替金額が、当該口座振替契約に従って利用者の振替元口座(支払口座)から収納企業の振替先口座に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状の口座振替サービスでは、収納企業等が指定した振替金額を振替元口座から振替先口座に口座振替できる程度であり、フレキシブルな口座振替を実行するためのスキームは提供されていない。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、フレキシブルな口座振替を可能にするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、第1の口座から第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求を受け付ける振替要求受付部と、前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認する残高照会部と、前記残高と前記閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替える決済部と、を有する資金決済装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、フレキシブルな口座振替を可能にするための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例による資金決済装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施例による資金決済装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施例による資金決済装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施例による口座振替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
以下の実施例では、振替実行条件付きの口座振替を実行する資金決済装置が開示される。
【0012】
後述される実施例を概略すると、
図1に示されるように、振替対象の預金口座Aから収納企業等の預金口座Bへの口座振替に関する口座振替要求をユーザ端末50(例えば、収納企業などの端末)から受信すると、資金決済装置100は、受信した口座振替要求に従って振替対象の預金口座Aの残高を確認する。ここで、口座振替要求は、預金口座Aから預金口座Bへの振替金額と、口座振替を実行するか否かに関する振替実行条件に関する閾値金額とを含む。そして、資金決済装置100は、預金口座Aの残高と閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、預金口座Aから預金口座Bに指定された振替金額を移動する。
【0013】
このような口座振替サービスによると、例えば、電子マネーのオートチャージサービスについて、電子マネーの残高がX円(例えば、1,000円)未満になった場合であって、かつ、電子マネー利用者の口座残高がオートチャージ実行の閾値金額Y円(例えば、30,000円)以上である場合に限って、振替金額として予め設定されているオートチャージ補充金額Z円(例えば、5,000円)をオートチャージするという設定が実現可能になる。
【0014】
すなわち、電子マネー事業者は、電子マネー利用者の電子マネー残高がX円未満になると、振替金額Z円と振替実行条件の閾値金額Y円とを含む口座振替要求を資金決済装置100に送信する。当該口座振替要求を受信すると、資金決済装置100は、電子マネー利用者の振替対象口座の残高を確認し、残高がY円以上であるか判断する。残高がY円以上である場合、資金決済装置100は、振替金額Z円を振替対象口座から電子マネー事業者の収納口座に振り替え、口座振替完了通知を電子マネー事業者に送信する。口座振替完了通知を受信すると、電子マネー事業者は、電子マネー利用者の電子マネーにZ円をチャージする。他方、残高がY円未満である場合、資金決済装置100は、口座振替を実行せず、口座振替不可通知を電子マネー事業者に送信する。口座振替不可通知を受信すると、電子マネー事業者は、オートチャージを実行しない。
【0015】
これにより、振替対象口座に振替金額を一定金額以上上回る残高がある場合に限って、オートチャージを実行するという制御が可能になり、オートチャージの補充金額が引き落とし可能である場合に引き落とし後の残高の多寡に関係なく、オートチャージを実行してしまい、電子マネー利用者が予期せぬ残高不足に陥るという事態を回避することが可能になる。
【0016】
ここで、資金決済装置100は、例えば、
図2に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、資金決済装置100は、バスBを介し相互接続されるドライブ装置101、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU(Central Processing Unit)104、インタフェース装置105及び通信装置106を有する。
【0017】
資金決済装置100における後述される各種機能及び処理を実現するプログラムを含む各種コンピュータプログラムは、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)などの記録媒体107によって提供されてもよい。プログラムを記憶した記録媒体107がドライブ装置101にセットされると、プログラムが記録媒体107からドライブ装置101を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体107により行う必要はなく、ネットワークなどを介し何れかの外部装置からダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータなどを格納する。メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムやデータを読み出して格納する。プロセッサとして機能するCPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムやプログラムを実行するのに必要なパラメータなどの各種データに従って、後述されるような資金決済装置100の各種機能及び処理を実行する。インタフェース装置105は、ネットワーク又は外部装置に接続するための通信インタフェースとして用いられる。通信装置106は、外部装置と通信するための各種通信処理を実行する。
【0018】
しかしながら、資金決済装置100は、上述したハードウェア構成に限定されるものでなく、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0019】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施例による資金決済装置100を説明する。例えば、サービス利用者は、サービス提供者又は収納事業者とサービスに対する対価の支払に関して口座振替契約を事前に締結し、資金決済装置100は、サービス提供者又は収納事業者のユーザ端末50から受信した口座振替要求において指定された口座振替金額をサービス利用者の振替対象口座から収納口座に振り替える。ここで、本実施例による口座振替要求による口座振替は、限定することなく、口座振替要求の受付後に即時に実行されてもよい。
【0020】
図3は、本発明の一実施例による資金決済装置100の機能構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、資金決済装置100は、振替要求受付部110、残高照会部120及び決済部130を有する。
【0021】
振替要求受付部110は、振替対象口座から収納口座への振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求を受け付ける。具体的には、振替要求受付部110は、サービス利用者とサービス提供者又は収納事業者との間で事前に締結された口座振替契約に基づき、サービス提供者又は収納事業者のユーザ端末50から送信された口座振替要求を通信ネットワークを介し受信する。
【0022】
本実施例による口座振替要求は、サービス利用者名義の振替対象口座から収納口座に振り替えられる振替金額と、振替対象口座の残高との比較に基づき当該振替を実行するか否かを規定する振替実行条件に関する閾値金額とを含む。典型的には、サービス利用者が振替金額及び閾値金額を設定し、ここで、閾値金額は振替金額より大きい金額に設定されうる。例えば、サービス利用者は、振替金額の振替後の口座残高が所望の金額以上になるよう閾値金額を設定してもよい。
【0023】
当該口座振替要求を受信すると、振替要求受付部110は、振替対象口座の残高を決済部130に通知するよう残高照会部120に指示すると共に、振替金額及び閾値金額を含む口座振替要求を決済部130に送信する。
【0024】
残高照会部120は、口座振替要求に従って振替対象口座の残高を確認する。具体的には、振替要求受付部110から振替対象口座の残高を決済部130に通知するよう指示されると、残高照会部120は、サービス利用者名義の振替対象口座の残高を確認し、決済部130に通知する。
【0025】
決済部130は、残高と閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、振替対象口座から収納口座に振替金額を振り替える。具体的には、振替要求受付部110から口座振替要求を受信すると、決済部130は、残高照会部120から通知された振替対象口座の残高と閾値金額とを比較し、振替対象口座の残高が閾値金額以上であるか判定する。振替対象口座の残高が閾値金額以上である場合、決済部130は、当該振替が実行可能であると判定し、口座振替要求に指定された振替金額を振替対象口座から収納口座に振り替える。口座振替を完了すると、決済部130は、振替金額の振替が完了した旨を示す口座振替完了通知をサービス提供者又は収納事業者に送信する。
【0026】
他方、振替対象口座の残高が閾値金額未満である場合、決済部130は、当該振替が実行不可であると判定し、振替を実行することなく、振替金額の振替が不可である旨を示す口座振替不可通知をサービス提供者又は収納事業者に送信する。
【0027】
一実施例では、決済部130は、振替予定情報に更に基づき口座振替を実行するか判定してもよい。一般に、金融機関は、口座からの公共料金等の以降の引き落としに関する口座振替の振替予定情報を保持している。上述した実施例によると、口座振替要求の受付時の振替対象口座の残高が閾値金額以上である場合、口座振替が実行される。しかしながら、月末など多くの引き落としが予定されている時期には、口座振替後の残高では予定されている引き落としが残高不足により実行できなくなる可能性がある。このため、決済部130は、現在の残高だけでなく、取得している以降の口座振替予定も考慮して、口座振替の実行可否を判断してもよい。
【0028】
例えば、決済部130は、残高照会部120から通知された残高が閾値金額以上であるか判定すると共に、振替後の残高が口座振替要求の受付時に振替予定情報に既に登録されている口座振替指示の振替予定金額の合計金額以上であるか判定してもよい。通知された残高が閾値金額以上であって、かつ、振替後の残高が振替予定金額の合計金額以上である場合には、決済部130は、当該口座振替を実行し、そうでない場合には口座振替を実行しないようにしてもよい。
【0029】
本実施例によると、サービス利用者は、設定した振替実行条件に基づく口座振替が実行された場合であっても、その後に予定されている引き落としが残高不足により実行されない事態を回避することができる。
【0030】
また、一実施例では、決済部130は、残高に更に基づき振替金額を変更してもよい。上述した実施例では、決済部130は、残高が閾値金額以上である場合、指定された振替金額を振り替えたが、これに限定されることなく、残高に応じて振替金額を変更してもよい。例えば、残高が設定された閾値金額の所定数倍以上ある場合、残高が追加的に設定された他の閾値金額以上である場合など、残高が十分ある場合、当初の振替金額に追加して更なる金額を振り替えてもよい。この追加的な振替に関する振替実行条件は、サービス利用者などによって設定されてもよく、サービス提供者又は収納事業者は、当初の振替実行条件に加えて、当該追加的な振替に関する振替実行条件を付加してもよい。すなわち、複数の振替実行条件が口座振替要求に設定されてもよい。
【0031】
次に、
図4を参照して、本発明の一実施例による口座振替処理を説明する。当該口座振替処理は、上述した資金決済装置100によって実行され、特に、資金決済装置100のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することによって実現される。
図4は、本発明の一実施例による口座振替処理を示すフローチャートである。
【0032】
図4に示されるように、ステップS101において、資金決済装置100は、振替実行条件付きの口座振替要求を受け付ける。具体的には、資金決済装置100は、振替対象口座からの振替金額と、振替実行条件に関する閾値金額とを含む口座振替要求をサービス提供者又は収納事業者のユーザ端末50から受信する。
【0033】
ステップS102において、資金決済装置100は、振替対象口座の残高を確認する。受け付けた口座振替要求が即時振替要求である場合、資金決済装置100は、現在の残高を確認する。また、受け付けた口座振替要求が指定した日時における振替要求である場合、資金決済装置100は、指定された日時において残高を確認する。
【0034】
ステップS103において、資金決済装置100は、確認した残高が閾値金額以上であるか判定することによって、当該口座振替が実行可能であるか判断する。残高が閾値金額以上であり、当該口座振替が実行可能である場合(S103:YES)、資金決済装置100は、ステップS104において、指定された振替金額を振替対象口座から収納口座に振り替え、ステップS105において、口座振替完了通知をサービス提供者又は収納事業者のユーザ端末50に送信する。他方、残高が閾値金額未満であり、当該口座振替が実行不可である場合(S103:NO)、資金決済装置100は、振替を実行することなく、口座振替不可通知をユーザ端末50に送信する。
【0035】
このようにして、本発明によると、振替金額が残高を上回っているか否かに基づく従来の口座振替処理と比較して、振替実行条件を導入したフレキシブルな口座振替処理を実現することが可能になる。
【0036】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
50 ユーザ端末
100 資金決済装置
110 振替要求受付部
120 残高照会部
130 決済部
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の口座に紐づけられたユーザの残高が第1の閾値金額未満になると、前記ユーザの第1の口座から前記第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する第2の閾値金額とを含む口座振替要求を受け付ける振替要求受付部と、
前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認する残高照会部と、
前記第1の口座の残高と前記第2の閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替える決済部と、
を有する資金決済装置。
【請求項2】
前記第2の閾値金額は、複数の閾値金額であり、
前記決済部は、前記複数の閾値金額が満たされると、前記口座振替を実行すると判定する、請求項1に記載の資金決済装置。
【請求項3】
前記決済部は、振替予定情報に更に基づき前記口座振替を実行するか判定する、請求項1又は2に記載の資金決済装置。
【請求項4】
前記決済部は、前記第1の口座の残高に更に基づき前記振替金額を変更する、請求項1から3のいずれか一項に記載の資金決済装置。
【請求項5】
プロセッサが、第2の口座に紐づけられたユーザの残高が第1の閾値金額未満になると、前記ユーザの第1の口座から前記第2の口座への振替金額と、振替実行条件に関する第2の閾値金額とを含む口座振替要求を受け付けるステップと、
前記プロセッサが、前記口座振替要求に従って前記第1の口座の残高を確認するステップと、
前記プロセッサが、前記第1の口座の残高と前記第2の閾値金額とに基づき口座振替を実行すると判定すると、前記第1の口座から前記第2の口座に前記振替金額を振り替えるステップと、
を有する資金決済方法。