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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060672
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】タービンディスク溝加工用ブローチ
(51)【国際特許分類】
   B23D 43/02 20060101AFI20220408BHJP
   F01D 5/30 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
B23D43/02
F01D5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168267
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】井沢 晃
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紀子
【テーマコード(参考)】
3C050
3G202
【Fターム(参考)】
3C050BA00
3C050BB03
3C050BB04
3C050BD01
3G202FB01
(57)【要約】
【課題】複数の切れ刃体をつなぐ接続部への応力集中を解消するタービンディスク溝加工用ブローチを提供する。
【解決手段】左右両側に切れ刃11A,11B,12A,12Bを備える複数の切れ刃体11,12とこれらの切れ刃体11,12に連続して形成する接続部21を有するタービンディスク溝加工用ブローチ10において、接続部21および当該接続部21に隣接する切れ刃体12の頂上に平坦面を連続して形成する。同時に、切れ刃12A,12Bと平坦面は互いに不連続とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側に切れ刃を備えた複数の切れ刃体と、前記切れ刃体同士をつなぐ接続部と、を有しており、前記複数の切れ刃体が長手方向に配列しているタービンディスク溝加工用ブローチにおいて、前記接続部の頂上および前記接続部と長手方向の後方側に隣接している前記切れ刃体の頂上には平坦面が連続して形成されており、かつ前記切れ刃と前記平坦面は互いに不連続であることを特徴とするタービンディスク溝加工用ブローチ。
【請求項2】
前記切れ刃体における平坦面の長手方向の寸法は、前記切れ刃体の長手方向の寸法の半分以上であることを特徴とする請求項1に記載のタービンディスク溝加工用ブローチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機や火力発電所等で使用されるタービンディスクの外周面に溝加工を行うためのブローチに関する。
【背景技術】
【0002】
主に航空機や火力発電所等で使用されるタービンディスクの外周面には、多数の羽根を嵌め込むために、樹枝形状の溝加工を特殊な工具(タービンディスク溝加工用ブローチ)で切削加工により行われる(特許文献1ないし3参照)。
【0003】
タービンディスクは一般的に耐熱鋼などの高硬度材であり、かつ溝形状が複雑であるため、溝加工の際には複数の工程に分割して、工程ごとに異なる形状や材質の工具が使用される。特に、溝加工の後半の工程では、樹枝形状の左右両側を同時に切削加工することで仕上げ加工とされる場合が多い。
【0004】
ここで、本溝加工に使用されるタービンディスク溝加工用ブローチの一般的な形状を図7および図8に示す。従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100は、図7および図8に示すように溝形状の左右両側を切削するための切れ刃101A,101Bが左右両側に設けられており(以下、切れ刃体101という)、この切れ刃体101,102,103が長手方向に多数配列されている。ここで、「長手方向」とは溝加工時のタービンディスク溝加工用ブローチの移動方向と同一である。
【0005】
また、図9に示すようにタービンディスク溝加工用ブローチ200において互いに隣接する2つの切れ刃体201,202の間(以下、接続部210という)は、切削加工時に被削材との干渉を防止するため断面視で山型の形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62-61419号公報
【特許文献2】特開平1-188219号公報
【特許文献3】特開2001-234704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この接続部210の頂上部分は、図8および図9に示すように先端が尖っているため、溝加工時には当該頂上部分に応力が集中することで亀裂が発生して、タービンディスク溝加工用ブローチの破損につながるという問題があった。
【0008】
この問題に対して、従来はタービンディスク溝加工用ブローチ200の製作過程において、図10に示すように予めエアーグラインダTなどの工具を用いて、当該先端部を削り落としていた。しかし、このようなエアーグラインダTを用いた作業は、作業者の技量によって先端部の仕上がり具合が大きく左右されるので、作業者による手作業での対応は万全の対策とは言えない状況であった。
【0009】
また、タービンディスク溝加工用ブローチ200は溝加工が進むにつれて、各切れ刃体201,202の切れ刃201A,201B,202A,202Bの切削性能が低下する。そのため、切れ刃体201,202の左右両側にある各切れ刃201A,201B,202A,202Bを再研削することになる。
【0010】
その際に接続部210の頂上付近も研削される。その結果、タービンディスク溝加工用ブローチ200の接続部210における端部C(接続部210と切れ刃体202の境界)は、図11に示すように頂上付近に尖った形状が再度形成されることになる。
【0011】
そこで、本発明は、タービンディスクの溝加工(特に仕上げ加工)において、専用のタービンディスク溝加工用ブローチを構成している、左右両側に切れ刃を有した切れ刃体を長手方向で連続して接続している接続部への応力集中を解消するタービンディスク溝加工用ブローチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、左右両側に切れ刃を備えた複数の切れ刃体とこれら切れ刃体同士をつなぐ接続部を有して、これらの複数の切れ刃体が長手方向に配列しているタービンディスク溝加工用ブローチにおいて、接続部の頂上およびその接続部と長手方向の後方側に隣接している切れ刃体の頂上に平坦面(平滑面)を連続して形成する。また、接続部の頂上と切れ刃体の頂上(頂面)に設ける平坦面は、切れ刃体の左右両側にある切れ刃とは互いに不連続とする(相互が空間的に接続されていない)。なお、切れ刃体における平坦面の長手方向の寸法Sは、切れ刃体の長手方向の寸法Lの半分以上とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、長手方向に連続して形成される切れ刃体をつなぐ接続体およびその長手方向の後方側に接続する切れ刃体の頂上に平坦面を設けたので、タービンディスク溝加工中においてタービンディスク溝加工用ブローチの中で厚み寸法が最も薄い接続部への応力集中を避けることができる。そのため、タービンディスク溝加工用ブローチの突発的な亀裂や折損を防止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ10の正面図である。
図2図1に示すタービンディスク溝加工用ブローチ10の部分平面図である。
図3】第2実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ50の部分平面図である。
図4図3に示すA-A線断面図である。
図5】第3実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ70の部分平面図である。
図6図5に示すB-B線断面図である。
図7】従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100の正面図である。
図8】従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100の側面図である。
図9】従来のタービンディスク溝加工用ブローチ200の接続部分210の斜視図である。
図10】タービンディスク溝加工用ブローチ200の接続部分210における加工例である。
図11】加工後の接続部分210の端部Cの状態である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチの実施形態について、図面を用いて説明する。本発明の一実施形態であるタービンディスク溝加工用ブローチ10の正面図を図1、部分平面図を図2図2の第2実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ50の部分平面図を図3図2に示すA-A線断面図を図4にそれぞれ示す。
【0016】
本発明の第1実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ10は、図7に示す従来のタービンディスク溝加工用ブローチ100の構成と同様に、左右両側に複数の切れ刃を備えている切れ刃体11~14が長手方向(図1の左右方向)に配列されており(図1参照)、各切れ刃体11~14の左右両側には、切れ刃11A,11B,12A,12B,13A,13B,14A,14Bが設けられている。
【0017】
また、タービンディスク溝加工用ブローチ10の長手方向に隣接している各切れ刃体11~14同士は、接続部21~23を介して連続的に形成されている。なお、ここで「長手方向」とは、前述したようにタービンディスク溝加工用ブローチの溝加工時における移動方向に沿った方向とする。
【0018】
さらに、当該接続部21と後方側(タービンディスク溝加工用ブローチ10の移動方向の後方側)でつながる切れ刃体12の頂上には、図2に示すように平坦面F1が接続部21および切れ刃体12に連続して形成されている。また、この平坦面F1は、切れ刃体12の頂上の面(頂面)とは異なる面であり、切れ刃体12の左右両側に設けられた切れ刃12A,12Bとは空間的につながっていない(互いに不連続な関係にある)。なお、切れ刃体12における平坦面F1の長手方向の寸法S1は、図2に示すように切れ刃体12の長手方向の寸法L1の2分の1以上とすることが望ましい。
【0019】
次に、本発明のタービンディスク溝加工用ブローチの第2実施形態について、図3および図4を用いて説明する。第2実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ50も図3および図4に示すように、図1および図2に示すタービンディスク溝加工用ブローチ10の場合と同様に左右両側に切れ刃51A,51B,52A,52Bを有した切れ刃体51,52が長手方向に沿って複数配列されている(溝加工時の移動方向:図面左方向)。
【0020】
隣接する各切れ刃体51,52は、図3および図4に示すように接続部61を介して連続して形成されていて、接続部61とそれに連続する切れ刃体52の頂上には平坦面F2が形成されている。また、この平坦面F2も前述した第1実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチの平坦面と同様に、切れ刃体52の頂上の面(頂面)とは異なる面である。なおかつ、平坦面F2は切れ刃体52の左右両側に設けられた切れ刃52A,52Bとは空間的につながっていない(互いに不連続な関係にある)。なお、切れ刃体51における平坦面F2の長手方向の寸法S2は、図3に示すように切れ刃体51の長手方向の寸法L2の2分の1以上とすることが望ましい。
【0021】
次に、本発明のタービンディスク溝加工用ブローチの第3実施形態について、図5および図6を用いて説明する。第3実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ70も図5および図6に示すように、図1および図2に示すタービンディスク溝加工用ブローチ10の場合と同様に左右両側に切れ刃71A,71B,72A,72Bを有した切れ刃体71,72が長手方向に沿って複数配列されている(溝加工時の移動方向:図面左方向)。
【0022】
隣接する各切れ刃体71,72は、図5および図6に示すように接続部81を介して連続して形成されていて、接続部81とそれに連続する切れ刃体72の頂上には平坦面F3が形成されている。前述した第1および第2実施形態のタービンディスク溝加工用ブローチ10,50と異なる点は、平坦面F3が図5および図6に示すように切れ刃体71、接続部81,切れ刃体72,接続部82を通して連続して形成されており、1つの平面として形成されている点である。なお、実施形態の場合も第1および第2実施形態の場合と同様に、この平坦面F3は各切れ刃体71,72の左右両側に設けられた各切れ刃71A,71B,72A,72Bのいずれとも空間的につながっていない(互いに不連続な関係にある)。
【0023】
本発明のタービンディスク溝加工用ブローチは、左右両側に切れ刃を有した切れ刃体が長手方向に連続して形成されている場合に、長手方向に隣接する各切れ刃体同士をつなぐ接続部に平坦面を設ける。その平坦面は接続部とそれに続く切れ刃体に連続して形成することで、溝加工時における接続部の応力集中を緩和する作用がある。
【0024】
したがって、溝加工時の接続部における亀裂や折損を防止すると共に、作業者の技量差に起因した接続部の平滑処理の個体差を解消し、均一なタービンディスク溝加工用ブローチを提供する効果がある。同時に、本発明のタービンディスク溝加工用ブローチを構成する接続部と切れ刃体に設ける平坦面は、前述した特許文献1等に開示されているように当該ブローチの頂上部全体に平坦面を設けるのではなく、切れ刃体の左右両側に形成された切れ刃とは不連続となるように平滑面を設けている。そのため、当該ブローチの高さ方向(加工溝の深さ方向)を変える必要がないので、現行のタービンディスク溝加工用ブローチの寸法のまま当該ブローチの亀裂や折損を防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
10,50,70,100,200 タービンディスク溝加工用ブローチ
11,12,51,52,71,72 切れ刃体
101,102,103,201,202 切れ刃体
11A,11B,12A,12B 切れ刃
51A,51B,52A,52B 切れ刃
71A,71B,72A,72B 切れ刃
101A,101B 切れ刃
201A,201B,202A,202B 切れ刃
21,61,81,210 接続部
F1,F2,F3 平坦面
L 切れ刃体の長手方向の寸法
S 切れ刃体における平坦面の長手方向の寸法

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11