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  • 特開-反応液連続供給型水素発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060707
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】反応液連続供給型水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/08 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168332
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】514169714
【氏名又は名称】アルハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】水木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】松 良幸
(72)【発明者】
【氏名】麻生 善之
(72)【発明者】
【氏名】角谷 哲哉
(57)【要約】
【課題】水素の発生速度を向上させるのに有効で稼働に伴うエネルギー消費が少ない反応液連続供給型水素発生装置の提供を目的とする。
【解決手段】反応液をその自重にて流下させるための反応液供給筒と、前記反応液供給筒内にアルミを投入するため原料ケースを備え、前記原料ケースはアルミを投入した状態で前記反応液が通過可能になっていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液をその自重にて流下させるための反応液供給筒と、前記反応液供給筒内にアルミを投入するため原料ケースを備え、
前記原料ケースはアルミを投入した状態で前記反応液が通過可能になっていることを特徴とする反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項2】
前記反応液供給筒は上部側に反応液供給部を有し、下部側に反応液回収部を有し、
前記反応液回収部から前記反応液供給部に反応液をリターンさせることで、反応液供給筒に反応液を連続的に通水可能であることを特徴とする請求項1記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項3】
前記反応液供給筒は上部側から下部側に向けて、複数段に折り返したパイプライン形状になっていて、前記折り返した折り返し部はR曲げ形状になっていることを特徴とする請求項1又は2記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項4】
前記アルミを投入するための原料ケースは複数個有し、前記反応液供給筒内に沿って、複数に分けて配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項5】
前記反応液を上部側の反応液供給部にリターンする際に反応液の濃度調整を可能にした反応液調整部を有していることを特徴とする請求項2記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項6】
前記下部側の反応液回収部は、水素の発生反応により発生した固形物を回収するための固形物回収部を有していることを特徴とする請求項2記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【請求項7】
前記反応液供給筒は、アルカリ水溶液による洗浄手段を有していることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の反応液連続供給型水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム及びその合金を原材料とし、アルカリ水溶液と反応させることで水素を製造する水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ水溶液にアルミニウムやその合金を接触させると、化学反応により水素が発生することは公知である。
例えば特許文献1には水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液が入った反応容器にアルミを投入し、水素を発生させる際に複数の反応容器を備え、交互に使用することで連続的に水素を発生させるシステムが提案されている。
このようにすると、一の反応容器での水素発生量の低下(変化)を予測し、次の反応容器での水素発生の準備を可能にし、連続的な水素発生を可能にしている点では優れている。
しかし、アルカリ水溶液が反応容器に貯留された状態でのアルミとの接触であるために、反応速度を上げるのには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-52972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水素の発生速度を向上させるのに有効で稼働に伴うエネルギー消費が少ない反応液連続供給型水素発生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る反応液連続供給型水素発生装置は、反応液をその自重にて流下させるための反応液供給筒と、前記反応液供給筒内にアルミを投入するため原料ケースを備え、前記原料ケースはアルミを投入した状態で前記反応液が通過可能になっていることを特徴とする。
【0006】
ここで反応液供給筒は断面が筒状であることをいい、丸パイプ形状、角パイプ形状等であってもよい。
このようなパイプ形状の筒体を傾斜させながら上下方向に配置すると、上部側から反応液を供給すると、その自重にて自然に下部側に向けて流れ落ちるので反応液供給筒の途中に投入されている原料ケース中のアルミを通過するように流下することになり、アルミとの反応性が向上する。
【0007】
本発明に用いる反応液は、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等を用いたアルカリ性の水溶液が例として挙げられる。
また、アルミはアルミニウム及びその合金が用いられ、反応性が高い点ではチップ状、切粉状のアルミが好ましい。
【0008】
本発明において原料ケースはアルミを反応液供給筒内に投入でき、反応液が通水できるものである。
例えば、メッシュ体からなるケース体が挙げられる。
また、ケース体は内部にアルミを投入しやすいように開閉部を有していてもよく、反応液がパイプ内を通過しやすく、回収時には残留する反応液の量を少なくできる点では、幅寸法や長さ寸法に対して厚みが薄く細長いものがよい。
例えば、厚みが幅の1/2以下で長さの1/4以下がよい。
【0009】
本発明において、前記反応液供給筒は上部側に反応液供給部を有し、下部側に反応液回収部を有し、前記反応液回収部から前記反応液供給部に反応液をリターンさせることで、反応液供給筒に反応液を連続的に通水可能であるのが好ましい。
このようにすると従来のバッチ型の反応容器とは異なり、パイプ状の筒体に反応液をその自重にて連続通水できる。
従って従来のバッチ型の反応容器では反応液の投入や排水にポンプ等の付帯設備が多く必要となるのに比較して、稼働エネルギーが少なくてよい。
【0010】
本発明において、前記反応液供給筒は上部側から下部側に向けて、複数段に折り返したパイプライン形状になっていて、前記折り返した折り返し部はR曲げ形状になっていてもよい。
このようにすると、反応液供給筒の長さを長くすることができるとともに、折り返し部が所定のアール寸法を有したR曲げ形状になっていると反応液の流れもスムーズになる。
【0011】
本発明は、パイプ状の反応液供給筒にしたので、前記アルミを投入するための原料ケースは複数個有し、前記反応液供給筒内に沿って、複数に分けて配置されているのが好ましく、前記反応液を上部側の反応液供給部にリターンする際に反応液の濃度調整を可能にした反応液調整部を有しているのが好ましい。
さらには、前記下部側の反応液回収部は、水素の発生反応により発生した固形物を回収するための固形物回収部を有しているのが好ましい。
【0012】
アルミをアルカリ水溶液と反応させると、水酸化アルミニウム等の固形物が副産物として発生する。
この固形物は、水酸化アルミニウムとして再資源化できる。
また、これにより生じた固形物は反応液に数%投入することで、水素発生触媒としても作用させることができる。
【0013】
本発明においては、反応液供給筒内でアルミが反応し、水素が発生する際に水酸化アルミニウム等の副産物が沈殿物として筒内面に付着する場合もあることから、前記反応液供給筒は、アルカリ水溶液による洗浄手段を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、反応液をその自重にてパイプ状の反応筒となる反応液供給筒に沿って流下させながらアルミと接触するので、水素発生反応速度が従来のパッチ処理よりも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る反応液連続供給型水素発生装置の構成例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る水素発生装置の構成例を図1に示す。
パイプ状の反応液供給筒11が、複数段に交互に折り返しながら上部から下部側に向けて形成されている。
本実施例では6段に形成されているが、この段数に制限はない。
なお、折り返し部はR曲げ形状になっている。
この反応液供給筒11の内側には、アルミが入った原料ケース15が複数個、投入される。
【0017】
反応液供給筒11に沿って反応液が、その自重にて流下するようになっていて、折り返したパイプの上部側には気液分離手段を有することで、水素ガスが外部に取り出され、配管材等にて集められ回収される。
【0018】
反応液供給筒11の下部側に反応液回収部13を有し、上部側の反応液供給部12に反応液がリターン部14を介して循環通水される。
反応液供給部12には、一部消耗した反応液成分を補給するための反応液調整部12aを有する。
【0019】
反応液回収部13側には、水酸化アルミニウム等の固形物(副産物)を回収するための固形物回収部13aを有し、回収された水酸化アルミニウムは資源として再利用できる。
また、ゾル状の固形分は反応液に戻すことで反応触媒としても活用できる。
例えば、反応液に1~2%の割合で投入する。
【符号の説明】
【0020】
11 反応液供給筒
12 反応液供給部
12a 反応液調整部
13 反応液回収部
13a 固形物回収部
14 リターン部
15 原料ケース
図1