(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060726
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】認証用印刷物と真贋判定方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20220408BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20220408BHJP
B42D 25/382 20140101ALI20220408BHJP
B42D 25/387 20140101ALI20220408BHJP
【FI】
B41M3/14
C09K11/00 Z
B42D25/382
B42D25/387
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168371
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅林 真理
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
4H001
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB03
2C005HB07
2C005HB09
2C005HB10
2C005JB12
2C005JB14
2C005KA02
2C005LB16
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA32
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA42
2H113CA46
2H113EA07
2H113EA10
2H113FA42
2H113FA43
4H001CA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、蛍光体発光インキの中に使用されている蛍光体の同定が困難な認証媒体を提供する事を課題とする。
【解決手段】基材1上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層2-1を備えた認証用印刷物であって、前記認証用印刷層が、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を含んでいる事を特徴とする認証用印刷物10-1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を含んでいる事を特徴とする認証用印刷物。
【請求項2】
基材上の少なくとも一部に非認証用印刷層が形成され、該非認証用印刷層の一部に真贋判定用の認証用印刷層が毛抜き合わせに形成された認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を備えている事を特徴とする認証用印刷物。
【請求項3】
基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層とが、前記基板上にこの順に備えられている事を特徴とする認証用印刷物。
【請求項4】
基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層と、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ前記可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層とが、前記基板上にこの順に備えられている事を特徴とする認証用印刷物。
【請求項5】
前記特定のピーク波長が450nmである事を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の認証用印刷物。
【請求項6】
前記赤外領域の光が、700nm~1000nmの範囲にピーク波長を持つ事を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の認証用印刷物。
【請求項7】
前記認証用印刷層が、絵柄と文字と一次元コードと二次元コードの中から選ばれたいずれか1以上を備えている事を特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の認証用印刷物。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の認証用印刷物を使用した真贋判定方法であって、
前記認証用印刷物に紫外線を照射する事により前記印刷層から発せられる赤外領域の光を検知する工程と、
赤外領域の光が、検知された場合は真と判定し、検知されなかった場合は贋と判定する真贋判定工程と、を備えている事を特徴とする真贋判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証用印刷物とそれを用いた真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、カード、通行券などの貴重印刷物や、運転免許証、パスポート、保険証など、本人である事を証明または認証する証明証書や、物品の真正性を証明するステッカー等の識別媒体に付与されるマークなどには、第三者に偽造および改竄されないようにする為、常に新しい偽造防止技術を盛り込む事が要求される。更に、識別媒体が真正品であるかどうかの判断を可能とする真贋判定方法の進化も求められる。
【0003】
マークの偽造防止技術としては、マイクロ文字、コピー牽制パターン、赤外線吸収インキや蛍光発光インキなどを使用した印刷物が普及している。
【0004】
このうち、蛍光発光インキを用いる方法では、通常の可視光下においては視認が困難である為、紫外線や赤外線を照射する事により、目視あるいは検出器を使用した方法によってマークが検出可能となるインキが用いられている。
【0005】
この様な蛍光発光インキを用いる方法としては、紫外光領域または可視光領域の光を照射し、可視発光(赤色や緑色、黄色発光など)させる事で、目視で真贋判定する技術は広く知られている。
【0006】
また、可視光領域および赤外光領域の光を照射し、赤外発光させる事で、マークやコードを認証する技術も知られている(特許文献1)。
【0007】
これらの技術は、1種類の特定波長を用いて真贋判定している為、容易に解読されてしまう可能性が高く、偽造されやすい問題がある。
【0008】
また、2つの異なる蛍光体を含む2つの領域を形成しておき、それらの領域に2つの異なる紫外光領域の光で励起させ可視発光させた時の可視発光色の違いによる色パターンの差を利用した認証技術が知られている(特許文献2)。しかしながらこの技術においても、紫外線の波長を変えて被検体からの可視発光を目視により観察する事により、使用している蛍光体が同定される可能性がある。
【0009】
また、複数の異なる波長の光を用いて読取りを行う認証印刷物も提案されている。例えば、印刷物を移動させながら可視光、紫外光、赤外光を順にそれぞれ個別の照射装置で印刷物を照射し、印刷物から発せられる光を検出する事で取得した3つの信号に対して、それぞれ真正品の場合の信号の波形の形状と比較する事により、真贋判定を行うものがある。しかしながら、この技術においても、特定波長を用いて真贋判定を行う方法と同じ原理であり、容易に解読されてしまう可能性が高い。
【0010】
しかしながら、照射する光の波長と検出される光の波長の組み合わせは、赤外光照射-赤外光検出、可視光照射-可視光検出、紫外光照射-紫外光検出の3通りが主だったものである為、偽造する側にとっては、インキまたは印刷方法の特定が容易であり、十分高いセキュリティ性を備えているとは言えなかった。
【0011】
また、赤外線と紫外線の両方を使用して真贋判定を行う画像表示体が提案されている(特許文献3)。従来、紫外線発光蛍光体だけを使用した場合に、紫外線発光蛍光体の劣化により視認不能になる場合があったが、この技術は、赤外線発光蛍光体による絵柄や文字を含む為、紫外線を照射しても、赤外線を照射しても、それらによる絵柄や文字が浮かび上がる事により、真贋判定が可能となるものである。
【0012】
しかしながらこの技術においても、認証媒体である印刷物に励起光を照射し、その励起光によって印刷物から出てくる光を検知または視認する方法である為、偽造しようとする者が、偽造する対象の印刷物に、紫外線や赤外線の励起光を照射し、印刷物からの蛍光を検知または視認する事で、どの様な蛍光体が使用されているか、を同定し、解読されてしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-136838号公報
【特許文献2】特許第5699313号公報
【特許文献3】特開平10-129107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の事情に鑑み、本発明は、蛍光体発光インキの中に使用されている蛍光体の同定が困難な認証媒体を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を含んでいる事を特徴とする認証用印刷物である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に非認証用印刷層が形成され、該非認証用印刷層の一部に真贋判定用の認証用印刷層が毛抜き合わせに形成された認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を備えている事を特徴とする認証用印刷物である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層と、
前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層とが、前記基板上にこの順に備えられている事を特徴とする認証用印刷物である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、基材上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層を備えた認証用印刷物であって、
前記認証用印刷層が、
可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層と、
紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ前記可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層とが、前記基板上にこの順に備えられている事を特徴とする認証用印刷物である。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記特定のピーク波長が450nmである事を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の認証用印刷物である。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、前記赤外領域の光が、700nm~1000nmの範囲にピーク波長を持つ事を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の認証用印刷物である。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、前記可視光励起層が、絵柄と文字と一次元コードと二次元コードの中から選ばれたいずれか1以上を備えている事を特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の認証用印刷物である。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1~7の何れかに記載の認証用印刷物を使用した真贋判定方法であって、
前記認証用印刷物に紫外線を照射する事により前記印刷層から発せられる赤外領域の光を検知する工程と、
赤外領域の光が、検知された場合は真と判定し、検知されなかった場合は贋と判定する真贋判定工程と、を備えている事を特徴とする真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の認証用印刷物によれば、基材上に形成された印刷層が、紫外線の照射により可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層と、可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層と、を備えている。その為、紫外線を照射した場合は、可視光領域の蛍光を発するが、単に蛍光を発するだけで真贋判定に使用する情報は含まれていない。真贋判定は、可視光を照射した時に発せられる赤外領域の蛍光によって行うが、可視光を照射しても、目視では真贋判定に使用する赤外領域の光が発せられている事に気がつく事が無い。その為、蛍光体発光インキの中に使用されている蛍光体の同定が困難な認証媒体を提供する事ができる。
【0024】
また、本発明の真贋判定方法は、使用されている蛍光体の同定が困難な、本発明の認証用印刷物を使用した真贋判定方法である。その為、蛍光体発光インキの中に使用されている蛍光体の同定が困難であると同時に、確実に真贋判定が可能な真贋判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の認証用印刷物の層構成を例示する断面説明図。
【
図2】本発明の認証用印刷物の層構成を例示する断面説明図。
【
図3】本発明の認証用印刷物の層構成を例示する断面説明図。
【
図4】本発明の認証用印刷物の層構成を例示する断面説明図。
【
図5】本発明の認証用印刷物を使用した真贋判定方法の一例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<認証用印刷物>
本発明の認証用印刷物の第1実施例~第4実施例を
図1~4を用いて説明する。
(第一実施形態)
図1に示す様に、本発明の認証用印刷物10-1は、基材1上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層2-1を備えた認証用印刷物である。
認証用印刷層2-1は、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体と、前記可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、を含んでいる。
前記した特定のピーク波長が450nmであっても良い。また、450nmにピーク波長を持つ可視光により励起され、発光する赤外領域の光が、700nm~1000nmの範囲にピーク波長を持つ赤外光であっても良い。
【0027】
(基材)
基材1としては、印刷層を形成可能な材料からなる基材であれば良く、その範囲内において、形態や材質は特に限定されない。例えば、各種の紙や各種の樹脂からなるフィルムやシートを好適に使用する事ができる。金属シートであっても構わない。
基材1の素材としては、コンデンサーペーパー、パラフィン紙、等の紙類や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニノレ、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、等のフィルムを挙げることができる。基材1の厚みは10~300μm、好ましくは50~200μmである。
【0028】
ただし、基材1には、蛍光増白剤を含んでいない事が望ましい。認証用印刷層に含まれる、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体からの発光が視認し難くなることを避ける為である。
【0029】
(認証用印刷層)
認証用印刷層2-1は、印刷可能なインキからなる層である。インキの組成としては、メジウムに、後述する紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体aと可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体bが添加されている。なお、メジウムとは、印刷インキに使用するワニス単体か、体質顔料のみを分散した無彩色の希釈用インキである。また、蛍光体aと蛍光体bとは、重量比で、50:50で均一に混合されている事が望ましい。
【0030】
具体的には、後述する2種類の蛍光体a、bを、重量比で50:50とし、メジウムに混練した後、印刷用UVインキ(例えば、FDカルトンXシリーズ、東洋インキSCホールディングス製)などの印刷インキに、蛍光体が2重量%~30重量%となる様にインキ化する。更に好ましくは、5重量%~20重量%である。
【0031】
認証用印刷層2-1の厚さは、0.5μm~10μm、好ましくは1μm~5μmである。
【0032】
(蛍光体)
紫外線の照射により特定のピーク波長450nmをもつ可視光を発光する蛍光体aとしては、ジアミノスチルベン系、イミダゾール系、チアゾーノレ系、オキサゾール系、2、5-チオフェンジイル(5-tert-ブチル・1、3ベンゾキサゾール)[Tinopal OB(BASF製品)]など)、トリアゾール系、オキサジアゾール系、チアジアゾール系、クマリン系、ナフタノレイミド系、ピラゾリン系、ピレン系、イミダゾロン系、ベンジジン系、ジアミノカルバゾール系、オキサシアニン系、メチン系、ピリジン系、アントラビリダジン系、ジスチリル系、カノレボスチリル系、インドール系、キノリノン系などの材料が挙げられる。好ましくはオキサゾール系が使用される。
【0033】
また、特定のピーク波長450nmをもつ可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体bとしては、構成元素に、Cr、Y、Lu、Gd、Ga、Al、Sc等が含有されている化合物を挙げる事ができる。具体的には、ScBO3:Crを含むと
共に、Y3Al5O12:Ce蛍光体、CaAlSiN3蛍光体、ScCaAlSiN3蛍光体、ScBO3:Cr蛍光体、(Ba、Sr)2SiO4:Eu蛍光体、(Lu、Y、Gd)3Al15O12:Ce蛍光体、La3Si6N11:Ce蛍光体、α-サイアロン蛍光体から成る群から選択される。少なくともY3Al5O12:Ce蛍光体を含むものである。上記(Lu、Y、Gd)という表記は、Lu、YおよびGdのうち少なくとも1つの元素を含有することを示す。
【0034】
認証用印刷層2-1を形成する方法は、基材1上に認証用印刷層2-1を形成できる手段を使用した方法であれば特に限定されない。例えば、平版印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法およびそれらのオフセット印刷法を使用することができる。また、スクリーン印刷や転写法を用いても構わない。インクジェット印刷法であっても良い。
【0035】
また、図示を省略したが、認証用印刷層2-1の上に、保護層を備えていても良い。保護層の材料としては、可視光領域および赤外領域で80%以上の高い透過率を備え、且つ認証用印刷層2-1より高い機械的強度と表面の硬度を備えているものが好ましい。
【0036】
本発明における特徴は、蛍光体aから発せられた可視光によって蛍光体bが励起され、蛍光体bから赤外領域の光を発する事である。
【0037】
この様な特徴により、偽造しようとする者が、本発明の認証用印刷物10-1の認証用印刷層2-1に使用されている蛍光体を同定しようとして、紫外線を照射すると、可視光領域の蛍光が発せられるが、この蛍光は認証に使用しない。また、可視光を照射しても、目視では観察できない赤外領域の光が発せられる為、目視できず、気が付くことが無い。また、特定のピーク波長を持つ可視光を照射しないと赤外領域の光を発することが無い為、特定のピーク波長を持たない可視光を照射しても、発せられる赤外領域の光は極めて微弱なものとなる。その為、偽造しようとする者が検知可能となるのは、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する蛍光体aのみとなる。その為、可視光領域の光によって励起され赤外領域の蛍光を発する蛍光体bを同定するのは困難である。
【0038】
本発明の認証用印刷物10-1は、この様な機構により、蛍光体発光インキの中に使用されている蛍光体の同定が困難な認証媒体を提供することができる。
【0039】
なお、認証用印刷層2-1は、少なくとも基材1の片面の全てに亘ってベタ形成されていても良いし、基材1の片面の一部にベタ形成されていても良い。ここでベタ形成とは、パターンなどが無く、認証用印刷層が均一に形成された状態を指す。また、何らかのパターンが形成されていても良い。例えば、絵柄、文字、バーコードや二次元コードなどが印刷により形成されていても良い。それらの何れか1つか、或いは2つ以上を組み合わせたものであっても良い。
【0040】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の認証用印刷物10-2を例示する断面説明図である。
本発明の第2実施形態の認証用印刷物10-2は、基材1上の少なくとも一部に非認証用印刷層6が形成され、該非認証用印刷層6の一部に真贋判定用の認証用印刷層2-2が毛抜き合わせに形成された認証用印刷物である。認証用印刷層2-2の材料および形成方法は、認証用印刷層2-1と同等または同じものであって良い。
【0041】
認証用印刷層2-2は、第1実施形態の認証用印刷層2-1と同じインキから形成されたもので良い。
【0042】
非認証用印刷層6は、認証用の印刷層では無いという事であり、蛍光体などが添加され
ていない印刷層である。例えば、絵柄や文字などを通常の印刷インキで印刷した層である。例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックと言ったプロセスインキや、特色インキを使用して印刷した層である。
【0043】
該非認証用印刷層6の一部に認証用印刷層2-2を毛抜き合わせに形成する方法としては、紫外線励起赤外発光インキ(UVオフセットインキ)を用いて、オフセット印刷法により、まず、バーコードなどの情報部である認証用印刷層2-2を印刷する。続いて、色相が紫外線励起赤外発光インキと可視光照射下で同色に感じられる迷彩用インキ(UV硬化型オフセットインキ)を用い、認証用印刷層2-2を印刷した印刷版とは白黒反転した印刷版を用いて、認証用印刷層2-2と毛抜き合わせに、情報迷彩部である非認証用印刷層6を印刷する事ができる。
【0044】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態の認証用印刷物10-3を例示する断面説明図である。
本発明の第3実施形態の認証用印刷物10-3は、基材1上の少なくとも一部に真贋判定用の認証用印刷層2-3を備えた認証用印刷物である。認証用印刷層2-3の材料および形成方法は、認証用印刷層2-1と同等または同じものであって良い。
【0045】
認証用印刷層2-3は、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層7と、可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層8とが、この順に基板1上に備えられている。
【0046】
紫外光励起層7が可視光励起層8の下に形成されている為、自然光下においても、紫外線照射においても、紫外光励起層7の劣化を抑制する事ができる。
【0047】
認証用印刷物10-3を製造する方法は、まず基材1上に紫外線励起層7を印刷し、続いて可視光励起層8を印刷すれば良い。
その他の点については、実施例1と同様にして、認証用印刷物10-3を得る事ができる。
【0048】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の認証用印刷物10-4を例示する断面説明図である。
本発明の第4実施形態の認証用印刷物10-4は、第3実施例の認証用印刷物10-3の認証用印刷層2-3において、紫外線の照射により特定のピーク波長をもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層7と、可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層8とが、入れ替わった構成を備えている。
その他の点については、実施例1と同様にして、認証用印刷物10-4を得る事ができる。
【0049】
<真贋判定方法>
次に、本発明の認証用印刷物を使用した真贋判定方法について、
図5を用いて説明する。
【0050】
本発明の真贋判定方法は、第1実施形態から第4実施形態に記載した何れかの認証用印刷物10-1、10-2、10-3、10-4を使用した真贋判定方法である。
【0051】
本発明の真贋判定方法は、紫外光照射用光源4から発せられた紫外線を、認証用印刷物10に照射する事により、認証用印刷層2から発せられる蛍光(特定のピーク波長を持つ赤外領域の光)を検知する工程と、赤外領域の光が、検知された場合は真と判定し、検知されなかった場合は贋と判定する真贋判定工程と、を備えている。
【0052】
(紫外光照射用光源)
紫外光照射用光源4は、所定の波長領域の紫外線を照射可能な光源であれば特に限定する必要はない。
【0053】
(赤外領域の光を検知する手段)
赤外領域の光を検知する工程において使用する赤外領域の光を検知する手段としては、赤外領域に感度を有する赤外線センサや、赤外線センサを使用した赤外線カメラであれば特に限定する必要は無い。また、
図5に例示した様に、赤外線受光素子3の前段にフィルタ5を備えていても良い。フィルタ5は、周囲環境や紫外光照射用光源4から赤外線受光素子3に入射する光の中の赤外線に含まれる雑音を低減する目的で使用される。フィルタ5として、例えば、認証用印刷層2から発せられる赤外線のピーク波長を透過し、それ以外を透過しないバンドパスフィルタを好適に使用する事ができる。
【0054】
赤外線センサとしては、量子型(冷却型)と熱型(非冷却型)が知られている。量子型(冷却型)は、赤外線のエネルギーに対応した狭いバンドギャップを持つ半導体を用いて作製したフォトダイオード、フォトトランジスタ、およびフォトIC(Integrated Cirquit、集積回路)などが利用可能である。熱型(非冷却型)と比べ、高い感度(100~1000倍)と高速応答性を備えている。センサ部分を真空装置の中に設置し、-213℃~―173℃に冷却する為の冷却装置が必要となる。一方、熱型(非冷却型)は、赤外線を受光して熱によってセンサが温められる事により、素子温度が上昇する事を利用して、電気的性質の変化を検知するものである。量子型より感度と応答速度が低いが、原理的に波長帯域が広い事および冷却する必要が無いというメリットがある。以上の様な事情から、通常は熱型(非冷却型)の赤外線センサを使用する。
【0055】
(真贋判定する手段)
赤外領域の光が検知された場合は真と判定し、赤外領域の光が検知されなかった場合は贋と判定する真贋判定工程において、真贋判定する手段としては、特に限定されないが、例えば、パーソナルコンピュータを使用すれば良い。
【0056】
具体的には、赤外線センサからの信号を、インターフェースを介してパーソナルコンピュータに取り込み、赤外線センサからの信号が、ある閾値以上であれば赤外線を検知したと判定し、ある閾値未満であれば赤外線を検知しないと判定するアプリケーションプログラムにより真贋判定が可能である。
【0057】
汎用のパーソナルコンピュータではなく、上記の様な信号処理プログラムを備えたマイクロプロセッサユニットを使用する事もできる。
【実施例0058】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0059】
<実施例1>
図1に例示した認証用印刷物10-1と同じ構成の認証用印刷物を作成した。即ち、基材上に、認証用印刷層を備えた認証用印刷物を作成した。
【0060】
使用した基材としては、白老(日本製紙製)を使用した。
【0061】
また、認証用印刷層に含まれる紫外線の照射により特定のピーク波長450nmをもつ可視光を発光する蛍光体(紫外線励起材料)と、その可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体と、して下記の材料を使用した。
【0062】
紫外線の照射により特定のピーク波長450nmをもつ可視光を発光する蛍光体(可視光励起材料)として、A;Tinopal OB(BASF社製)を使用した。
【0063】
また、特定のピーク波長450nmをもつ可視光により励起される事により、700nm~1000nmに亘る赤外領域の範囲にピーク波長を持つ光を発光する蛍光体として、B; NIR-2(大電株式会社製)を使用した。
【0064】
これらの蛍光体A、Bを重量比で50:50とし、20重量%となる様にメジウムに混練する事により、蛍光インキを調整した。
【0065】
なお、蛍光体Aと蛍光体Bの比率は、予め行った添加量比率の検討結果(表1)に基づき決定した。検討1~3として、紫外線励起材料:可視光励起材料を、それぞれ、30重量%:70重量%、50重量%:50重量%、70重量%:30重量%、とした時の真贋判定結果を〇と△で示した。検討1と検討3では、真贋判定結果は△であった。検討2、即ち、紫外線励起材料:可視光励起材料が50重量%:50重量%である時に、良好な真贋判定結果となった。その為、上記の印刷インキの蛍光体Aと蛍光体Bの比率も50重量%:50重量%とした。
【0066】
【0067】
上記で調整した印刷インキを、基材上に枚葉式のグラビアオフセット印刷装置を用いてほぼ全面に印刷した後、紫外線を照射する事により印刷インキを硬化させ、実施例1の認証用印刷物を得た。
【0068】
<実施例2>
基材上に、まず非認証用印刷層を印刷した。非認証用印刷層の印刷に用いたインキとして、下記のプロセスインキを用いて、認証用印刷層と同色のインキとなる様に調色した。
FD OL 黄 TC ロ(東洋インキ製造(株)製)
FD OL 紅 TC ロ(東洋インキ製造(株)製)
FD OL 藍 TC ロ(東洋インキ製造(株)製)
【0069】
印刷装置はグラビアオフセット印刷を用いた。版は、基材の一部を除き認証用印刷層と白黒反転したパターンを印刷する逆版を使用した。その一部に、10mm角ほどの白黒反転した二次元コードを印刷した。
【0070】
まず、基材上に、調色したインキを用いて非認証用印刷層を印刷した。非認証用印刷層の一部には10mm角ほどの二次元コードが反転したパターンが印刷された印刷物を得た。
【0071】
その印刷物を乾燥後、二次元コードが反転したパターンが印刷された部分に、実施例1で使用した蛍光インキを用いて、毛抜き合わせに二次元コードを印刷した。以上に説明した事以外は、実施例1と同様に行う事により、実施例2の認証用印刷物を得た。
【0072】
<実施例3>
基材上に、まず、紫外線の照射により特定のピーク波長450nmをもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層を印刷した。次に、紫外線励起層から発せられた可視光によって励起される事により700nm~1000nmに亘る赤外領域の光を発光する材料を含有する可視光励起層を紫外線励起層の上に印刷する事以外は、実施例1と同様に行う事により、実施例3の認証用印刷物を得た。
【0073】
<実施例4>
基材上に、まず、可視光によって励起される事により700nm~1000nmに亘る赤外領域の範囲にピーク波長を持つ光を発光する材料を含有する可視光励起層を印刷した。次に、紫外線の照射により特定のピーク波長450nmをもつ可視光を発光する材料を含有する紫外線励起層を可視光励起層の上に印刷する事以外は、実施例1と同様に行う事により、実施例4の認証用印刷物を得た。
【0074】
<比較例1>
蛍光体A(紫外線励起材料)と蛍光体B(可視光励起材料)を重量比で30:70とした事以外、実施例1と同様として、比較例1の認証用印刷物を得た。
【0075】
<比較例2>
蛍光体A(紫外線励起材料)と蛍光体B(可視光励起材料)を重量比で70:30とした事以外、実施例1と同様として、比較例1の認証用印刷物を得た。
【0076】
<真贋判定試験>
実施例1~4にて得られた認証用印刷物を用いて、
図5に例示した真贋判定装置20を用いて真贋判定を行った。
【0077】
真贋判定装置20は、認証用印刷物10の認証用印刷層2に紫外線を照射する紫外線照射用光源4を備えている。真贋判定試験では、認証用印刷物10の認証用印刷層2に、紫外線を照射する。すると、認証用印刷層2の中の紫外線の照射により可視光を発光する蛍光体から特定のピーク波長450nmを持つ可視光が発せられる。その可視光により励起される事により赤外領域の光を発光する蛍光体から700nm~1000nmの範囲にピーク波長を持つ赤外線が発せられる。
【0078】
実施例1~4にて得られた認証用印刷物では、表1の検討2に示した様に、予め真贋判定試験の結果が良好となるインキ組成を用いて認証用印刷層2を形成している為、全てが良好な真贋判定結果となった。
【0079】
比較例1と2にて得られた認証用印刷物では、表1の検討1と3に示した様に、予め真贋判定試験の結果が良好ではないインキ組成を用いて認証用印刷層2を形成している為、全てが良好とは言えない真贋判定結果となった。