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特開2022-60735二次電池の制御装置、車両制御装置、及び二次電池の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060735
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】二次電池の制御装置、車両制御装置、及び二次電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220408BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20220408BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20220408BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20220408BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20220408BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
B60L58/10
B60K6/445 ZHV
B60W10/26 900
B60W20/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168388
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】室田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】木庭 大輔
【テーマコード(参考)】
3D202
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB21
3D202DD44
3D202DD47
3D202DD48
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC01
5H125EE22
(57)【要約】
【課題】二次電池の充放電特性を改善する。
【解決手段】二次電池の制御装置は、二次電池の充放電時、充放電の本通電αを開始する前に、この本通電αよりも低い通電レートRxで本通電αと同じ通電方向の慣らし通電βを実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充放電時、前記充放電の本通電を開始する前に、該本通電よりも低い通電レートで前記本通電と同じ通電方向の慣らし通電を実行する二次電池の制御装置。
【請求項2】
前記本通電の前記通電レートが予め定められたハイレート閾値以上となる場合に前記慣らし通電を実行する請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項3】
前記慣らし通電は、予め定められたローレート閾値以下の前記通電レートで実行されるものであって、
前記慣らし通電を実行することなく、前記ローレート閾値より高く前記ハイレート閾値より低い前記通電レートで前記本放電が開始された場合において、該本放電の開始後、前記通電レートを前記ハイレート閾値以上に変更する場合には、該通電レートを前記ハイレート閾値以上に変更する前に、前記ローレート閾値以下の前記通電レートで前記慣らし通電を実行する請求項2に記載の二次電池の制御装置。
【請求項4】
前記ローレート閾値より高く前記ハイレート閾値より低い前記通電レートで前記本放電が開始された場合における該開始後の経過時間を慣らし時間として、
前記通電レートと該通電レートに応じた前記慣らし時間の閾値との関係を保持する慣らし時間閾値保持部を備え、
前記通電レートに応じた前記慣らし時間の前記閾値を経過した後は、前記慣らし通電を実行しない請求項3に記載の二次電池の制御装置。
【請求項5】
予め定められた所定時間以上、非通電状態が継続した後、前記充放電を行う場合に、前記本通電前の前記慣らし通電を実行する
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項6】
充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時に、前記本通電前の前記慣らし通電を実行する請求項1~請求項5の何れか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の二次電池の制御装置を備えた車両制御装置。
【請求項8】
二次電池の充放電時、前記充放電の本通電を開始する前に、該本通電よりも低い通電レートで前記本通電と同じ通電方向の慣らし通電を実行する二次電池の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の制御装置、車両制御装置、及び二次電池の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池の充放電を開始する前に、その充放電の通電方向とは逆向きの通電を行う制御装置がある。例えば、特許文献1には、二次電池の放電後、その二次電池に対し、予め定められた基準値以上の電気量を充電する制御方法が開示されている。また、特許文献2には、所定値以上の通電レートで放電を行う場合には、所定値未満の通電レートで充電を行った直後に、その所定値以上の通電レートで放電を開始する構成が開示されている。そして、特許文献2には、更に、所定値以上の通電レートで充電を行う場合には、所定値未満の通電レートで放電を行った直後に、その所定値以上の通電レートで充電を開始する構成が開示されている。
【0003】
即ち、放電後に予め充電しておくことで、次回放電時に大きな放電容量を確保することができる。また、出力開始前に瞬間的に充電を行うことで、出力開始時のOCV(Open Circuit Voltage)を引き上げることができる。そして、このような制御方法を採用することで、その二次電池の充放電特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-73498号公報
【特許文献2】特開2017-73343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の制御方法では、本来の通電方向とは逆向きの通電を行うことにより、二次電池内の反応場、つまりは、そのイオンの移動方向が逆向きとなる。そして、これが二次電池の充放電性能を引き出す上での妨げとなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、二次電池の充放電時、前記充放電の本通電を開始する前に、該本通電よりも低い通電レートで前記本通電と同じ通電方向の慣らし通電を実行する。
【0007】
上記構成によれば、慣らし通電の実行により、二次電池内におけるイオンの移動方向を、その本通電を行う放電方向又は充電方向に揃えることができる。つまりは、二次電池内の反応場を「慣らす」ことができる。そして、これにより、二次電池の充放電特性を改善することができる。
【0008】
具体的には、二次電池を実際に利用した場合、例えば、放電時、その出力時間を延長することができる。また、出力時間が同じである場合には、その二次電池に許容される出力電力の上限値を引き上げることができる。そして、充電時についてもまた、同様に、その充電性能の向上を図ることができる。
【0009】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、前記本通電の前記通電レートが予め定められたハイレート閾値以上となる場合に前記慣らし通電を実行することが好ましい。
即ち、慣らし通電の実行による反応場の「慣らし作用」の効果は、その二次電池の充放電がハイレート通電に相当する高い通電レートで本通電が行われる場合に顕著となる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池の充放電特性を改善することができる。
【0010】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、前記慣らし通電は、予め定められたローレート閾値以下の前記通電レートで実行されるものであって、前記慣らし通電を実行することなく、前記ローレート閾値より高く前記ハイレート閾値より低い前記通電レートで前記本放電が開始された場合において、該本放電の開始後、前記通電レートを前記ハイレート閾値以上に変更する場合には、該通電レートを前記ハイレート閾値以上に変更する前に、前記ローレート閾値以下の前記通電レートで前記慣らし通電を実行することが好ましい。
【0011】
即ち、二次電池内の反応場は、低い通電レートで通電を行うことにより、その全体がムラなく均一化される。従って、上記構成によれば、ハイレート通電に相当する高い通電レートに変更された場合について、効果的に、二次電池の充放電特性を改善することができる。
【0012】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、前記ローレート閾値より高く前記ハイレート閾値より低い前記通電レートで前記本放電が開始された場合における該開始後の経過時間を慣らし時間として、前記通電レートと該通電レートに応じた前記慣らし時間の閾値との関係を保持する慣らし時間閾値保持部を備え、前記通電レートに応じた前記慣らし時間の前記閾値を経過した後は、前記慣らし通電を実行しないことが好ましい。
【0013】
即ち、ローレート閾値より高い通電レートでも、一方向の通電状態が継続することによる反応場の「慣らし作用」が期待できる。そして、この慣らし作用を得るために必要となる通電開始からの経過時間、つまり慣らし時間の閾値は、その通電レートに応じた値となる。従って、上記構成によれば、通電レートの変更前に実行する慣らし通電について、適切に、その要否判定を行うことができる。その結果、既に反応場の「慣らし作用」が得られていると推定される場合には、慣らし通電を挟むことなく、速やかに、そのハイレート閾値より低い通電レートでの本通電からハイレート通電に相当する高い通電レートでの本通電に移行することができる。そして、これにより、その慣らし通電の実行による遅延の発生を抑えて、高い応答性を確保することができる。
【0014】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、予め定められた所定時間以上、非通電状態が継続した後、前記充放電を行う場合に、前記本通電前の前記慣らし通電を実行することが好ましい。
【0015】
即ち、非通電状態が継続することで、その反応場が元に戻る、つまりはイオンの移動方向が一方向でなくなる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池の充放電特性を改善することができる。
【0016】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時に、前記本通電前の前記慣らし通電を実行することが好ましい。
即ち、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時には、その反応場の状態が反転する、つまりはイオンの移動方向が逆向きになる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池の充放電特性を改善することができる。
【0017】
上記課題を解決する二次電池の制御装置は、上記何れか一項に記載の二次電池の制御装置を備える車両制御装置であることが好ましい。
上記構成によれば、例えば、アクセルの踏み込みに応じた優れた車両の加速性能を担保することができる。そして、回生制動時等、二次電池の充電時においては、その充電容量を増大させることができる。
【0018】
上記課題を解決する二次電池の制御方法は、二次電池の充放電時、前記充放電の本通電を開始する前に、該本通電よりも低い通電レートで前記本通電と同じ通電方向の慣らし通電を実行する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二次電池の充放電特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】二次電池の概略構成図。
図2】二次電池の制御装置について、その概略構成を示すブロック図。
図3】二次電池の制御装置が適用されるハイブリッド車両の概略構成図。
図4】ハイレート放電時、本放電の開始前に実行する慣らし放電の態様を示すタイムチャート。
図5】ハイレート充電時、本充電の開始前に実行する慣らし充電の態様を示すタイムチャート。
図6】ハイレート通電に相当する充放電時、本通電開始前の慣らし通電を実行する際の処理手順を示すフローチャート。
図7】慣らし通電の効果を確認する試験データのグラフ。
図8】確認試験の試験条件を示す説明図。
図9】慣らし放電の実行から本放電の開始までの間隔と二次電池の出力時間との関係を示す試験データのグラフ。
図10】通電レートの変更前に実行する慣らし通電の態様を示すタイムチャート。
図11】第2の実施形態における二次電池の制御装置について、その概略構成を示すブロック図。
図12】通電レート変更前の慣らし通電を実行する際の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下、二次電池に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、二次電池1は、その正極3、負極4、及びセパレータ5が、図示しない電解質とともに、ケース10内に封入された構成を有している。尚、図1は、所謂一次元の電池モデルである。そして、このような構成を有する二次電池1としては、例えば、その正極3側の活物質に水酸化ニッケル化等のニッケル酸化物を用いたニッケル水素二次電池や、その正極3側の活物質にリチウム遷移金属酸化物を用いたリチウムイオン二次電池等を挙げることができる。
【0022】
即ち、ニッケル水素二次電池の場合、その負極4側の活物質に水素吸蔵合金が用いられるとともに、その電解質には、水酸化カリウムを主体としたアルカリ水溶液が用いられる。そして、リチウムイオン二次電池の場合、その負極4側の活物質に炭素系材料を用いるとともに、その電解質に非水電解液を用いた構成となっている。
【0023】
尚、本実施形態の二次電池1は、扁平略四角箱型の外形を有したケース10を備えている。また、正極3、負極4、及びセパレータ5は、電極体20として一体化された状態で、ケース10内に収容されている。そして、本実施形態の二次電池1においては、この電極体20に含浸された状態で、その電解質がケース10内に封入される構成となっている。
【0024】
更に、ケース10には、その外部に突出する正極端子21及び負極端子22が設けられている。そして、二次電池1は、これらの正極端子21及び負極端子22に対して、それぞれ、その対応する正極3側の集電体23及び負極4側の集電体24が電気的に接続された構成を有している。
【0025】
次に、二次電池1の制御装置について説明する。
図2に示すように、二次電池1は、制御装置40によって、その充放電が制御される。
詳述すると、本実施形態の制御装置40は、制御のための演算処理を実行する演算処理回路、及び制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリを備えたマイクロコンピュータとしての構成を有している。また、この制御装置40には、電圧センサ41、電流センサ42、及び、温度センサ43の各出力信号が入力される。更に、制御装置40は、これら各センサの出力信号に基づいて、二次電池1の電圧VBを監視する電圧監視部45、その電流IBを監視する電流監視部46、及び、その温度TBを監視する温度監視部47を備えている。そして、本実施形態の制御装置40は、その二次電池1のSOC(State of Charge)を監視するSOC監視部48を備えている。
【0026】
また、制御装置40は、図示しない電力線を介して二次電池1に接続された外部装置50の制御指令Scが入力される。尚、本実施形態の制御装置40は、図示しない外部装置50の制御装置、或いは、その上位の制御装置から、この制御指令Scを取得する。そして、本実施形態の制御装置40は、この外部装置50の制御指令Scに基づいた二次電池1の通電状態を制御する通電制御部としての充放電制御部51を備えている。
【0027】
即ち、本実施形態の充放電制御部51は、外部装置50の制御指令Scに基づいた通電状態が、その二次電池1の放電であるか充電であるかを特定する。そして、本実施形態の充放電制御部51は、これにより、その負荷52としての構成を有した外部装置50に対する二次電池1の放電状態を制御し、及び、その電源53としての構成を有した外部装置50から二次電池1に対する充電状態を制御する。
【0028】
例えば、本実施形態の制御装置40は、図3に示すようなハイブリッド車両60において、その車両制御装置を構成するPCU(Power Control Unit)61に適用される。具体的には、このハイブリッド車両60は、内燃機関としての構成を有するエンジン62と、駆動モータ及び発電機として機能するモータジェネレータ63,64と、を備えている。更に、そのエンジン出力を駆動輪65に伝達する駆動伝達系66の途中には、動力分割装置67が設けられている。そして、ハイブリッド車両60は、この動力分割装置67の作動に基づいて、そのモータジェネレータ63,64の出力を駆動輪65に伝達し、及び回生動作させることのできる構成になっている。
【0029】
即ち、このハイブリッド車両60において、PCU61は、電源部68を構成する二次電池1の放電に基づいて、その負荷52となるモータジェネレータ63,64に駆動電力を供給する。また、PCU61は、その回生電力を還流させることにより、これらのモータジェネレータ63,64を電源53として二次電池1を充電する。そして、本実施形態の制御装置40は、このようなハイブリッド車両60に適用されることにより、そのPCU61の作動に基づいた二次電池1の充放電を制御する。
【0030】
(充放電開始時の慣らし通電制御)
次に、本実施形態の制御装置40が実行する充放電開始時の慣らし通電制御について説明する。
【0031】
図4及び図5に示すように、本実施形態の制御装置40において、充放電制御部51は、制御装置40に入力される外部装置50の制御指令Scに基づいて(図2参照)、この制御指令Scに基づく充放電により発生する二次電池1の電流IB、つまりは、その充放電の通電レートRxを特定する。そして、本実施形態の充放電制御部51は、二次電池1の充放電時、その二次電池1の通電状態が、大きな電流IBが流れる所謂ハイレート通電に相当するものとなる場合、この通電レートRxの高い充放電の本通電αを開始する前に、その本通電αよりも低い通電レートRxで、瞬間的に、この本通電αと同じ通電方向の慣らし通電βを実行する。
【0032】
即ち、このような慣らし通電βを行うことで、二次電池1内におけるイオンの移動方向を、そのハイレート通電が行われる放電方向又は充電方向に揃えることができる。つまりは、その二次電池1内の反応場を「慣らす」ことができる。そして、本実施形態の制御装置40は、これにより、二次電池1の充放電特性を改善する構成となっている。
【0033】
詳述すると、図4に示すように、本実施形態の充放電制御部51は、二次電池1の放電時、この二次電池1に流れる電流IB、つまりは通電レートRxが予め定められたハイレート閾値TH1以上となる場合に、その放電がハイレート通電に相当するものであると判定する。尚、例えば、上記のようなハイブリッド車両60に適用された場合、急加速時等、大きな駆動電力の供給が必要となった場合に、その制御装置40に対し、上記のようなハイレート通電に相当する二次電池1の放電が行われる旨の制御指令Scが入力される。そして、本実施形態の充放電制御部51は、このような場合、ハイレート閾値TH1以上の通電レートRxで本放電αDCを開始する前に、瞬間的に、その本放電αDCの通電レートRxよりも低い通電レートR2で慣らし放電βDCを実行する。
【0034】
具体的には、本実施形態の制御装置40において、慣らし放電βDCの通電レートR2は、予め定められたローレート閾値TH2以下に設定されている。そして、「瞬間的」に実行される慣らし放電βDCの継続時間は、本放電αDCよりも十分に短い短時間、例えば一秒以下、好ましくは0.3秒以下に設定されている。
【0035】
また、図5に示すように、本実施形態の充放電制御部51は、二次電池1の充電時、この二次電池1の通電レートRxが予め定められたハイレート閾値TH3以上となる場合に、その充電がハイレート通電に相当するものであると判定する。尚、例えば、上記のようなハイブリッド車両60に適用された場合、急減速時等、大きな回生電力の還流が必要となった場合に、その制御装置40に対し、上記のようなハイレート通電に相当する二次電池1の充電が行われる旨の制御指令Scが入力される。そして、本実施形態の充放電制御部51は、このような場合、ハイレート閾値TH3以上の通電レートRxで本充電αCGを開始する前に、瞬間的に、その本充電αCGの通電レートRxよりも低い通電レートR4で慣らし充電βCGを実行する。
【0036】
具体的には、本実施形態の制御装置40において、慣らし充電βCGの通電レートR4は、予め定められたローレート閾値TH4以下に設定されている。そして、「瞬間的」に実行される慣らし充電βCGの継続時間についてもまた、例えば、本充電αCGよりも十分に短い短時間、例えば一秒以下、好ましくは0.3秒以下に設定されている。
【0037】
尚、本実施形態の制御装置40において、放電時及び充電時におけるハイレート閾値THHの各値「TH1」「TH3」は、実験やシミュレーション等の実行により、予め、その二次電池1の型式に応じた最適な値に設定されている。そして、放電時及び充電時におけるローレート閾値THLの各値「TH2」「TH4」、及び慣らし通電βの通電レートRLに関する各値「R2」「R4」についても同様に、実験やシミュレーション等の実行により、予め、その二次電池1の型式に応じた最適な値に設定されている。
【0038】
さらに詳述すると、図6のフローチャートに示すように、本実施形態の充放電制御部51は、二次電池1の放電又は充電を実行する際(ステップ101:YES)、先ず、その二次電池1が非通電状態であるかを判定する(ステップ102)。また、充放電制御部51は、二次電池1が非通電状態である場合(ステップ102:YES)には、続いて、その非通電状態が所定時間t0以上継続しているか否かを判定する(ステップ103)。更に、充放電制御部51は、その非通電状態が所定時間t0以上継続している場合(t≧t0、ステップ103:YES)には、その充放電の通電レートRxがハイレート閾値THH以上であるかを判定する(ステップ104)。そして、本実施形態の充放電制御部51は、これにより、通電レートRxがハイレート閾値THH以上である、つまりはハイレート通電に相当する場合(Rx≧THH、ステップ104:YES)に、このハイレート通電に相当する本通電αの開始前に、そのハイレート閾値THHよりも低い通電レートRLで慣らし通電βを実行する(ステップ105)。
【0039】
また、本実施形態の充放電制御部51は、上記ステップ102において、二次電池1が非通電状態ではないと判定した場合(ステップ102:NO)、続いて、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時であるかを判定する(ステップ106)。更に、充放電制御部51は、上記ステップ103において、その非通電状態の継続時間tが所定時間t0未満であると判定した場合(ステップ103:NO)にも、このステップ106の充放電切替時判定を実行する。そして、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時である場合(ステップ106:YES)には、上記ステップ104のハイレート通電判定を実行し、ハイレート通電に相当する場合(ステップ104:YES)には、上記ステップ105において、その慣らし通電βの実行を決定する。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7は、慣らし通電の効果を確認する確認試験の試験データであり、図8は、その試験条件である。
【0041】
図7及び図8に示すように、負荷に対する本放電時の出力電力P、つまりは本放電αDC時における負荷の消費電力の値を「P1」に設定して、二次電池1の定電流放電を実行することにより、その慣らし通電の効果を確認する「試験1」~「試験4」までの確認試験を順次行った。
【0042】
詳述すると、「試験1」~「試験4」のうち、「試験2」においてのみ、その本放電αDC前の慣らし放電βDCを行った。尚、説明の便宜上、慣らし放電βDCを行わない「試験1」「試験3」「試験4」は、その全てを本放電αDCとする。また、これら「試験1」~「試験4」までの確認試験に用いる試験装置(図示略)においては、本放電αDC時の出力電圧を「P1」に設定することで、二次電池1の電流IB、つまりは本放電αDC時の通電レートRxがハイレート通電状態に相当する値「I1」となる。更に、これらの確認試験においては、試験装置によって、その定電流放電による二次電池1の電圧降下が監視される。そして、これらの「試験1」~「試験4」は、その本放電αDC時の要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間を測定することにより(P1=V0×I1)、二次電池1の充放電特性を評価するものとなっている。
【0043】
詳述すると、先ず、図7中の波形L1に示す「試験1」を実行した。この「試験1」においては、二次電池1のSOCを「40%」、電圧VBを「V1」に設定した状態から、その二次電池1の放電を開始した。そして、この「試験1」では、その本放電αDCの要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間として「Te1」が得られた。
【0044】
次に、図7中の波形L2に示す「試験2」を実行した。この「試験2」においては、二次電池1のSOCを「41%」、電圧VBを「試験1」における放電開始電圧の値「V1」よりも高い「V2」に設定した状態から、その二次電池1の放電を開始した。そして、この「試験2」では、二次電池1の電流IBをハイレート通電状態に相当する値「I1」に設定して行う本放電αDCの開始前に、その二次電池1の電流IBを、より低い値「I2」に設定した状態での放電、つまりは、より低い通電レートで二次電池1を放電する慣らし放電βDCを実行した。
【0045】
具体的には、この「試験2」において、慣らし放電βDCは、二次電池1の放電開始から時間Tsまで、0.1~0.3秒程度の短時間、瞬間的に実行された。また、慣らし放電βDCにおける電流IBの値「I2」、即ち慣らし放電βDCの通電レートR2は、予め定められたローレート閾値TH2以下に設定した(図4参照)。そして、「試験2」においては、この慣らし放電βDCの実行により、その二次電池1の電圧VBが「V1」に低下した状態から、その二次電池1の本放電αDCを開始した。その結果、この「試験2」では、その本放電αDCの要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間として、上記「試験1」の値「Te1」よりも長い「Te2」が得られた(Te2>Te1)。
【0046】
即ち、この「試験2」においては、放電開始時のSOC及び電圧VBを予め高く設定することにより、本放電αDCの開始時における二次電池1の電圧VBが「試験1」と等しくなるようにした。尚、図7中、時間Tsaから時間Tsまでは、試験装置の設定切替に要した時間である。また、時間Tsから時間Tsbまでは、二次電池1の電流IBを「I1」から「I2」まで上昇させるために要した立ち上げ時間である。そして、本実施形態における確認試験においては、これにより、その「試験1」の試験データと「試験2」の試験データとを比較することが可能になっている。
【0047】
次に、図7中の波形L3に示す「試験3」を実行した。この「試験3」においては、二次電池1のSOCを「41%」、電圧VBを「V2」に設定した状態から、その二次電池1の放電を開始した。即ち、この「試験3」は、SOC及び電圧VBが上記「試験2」と等しい状態から、その二次電池1の放電を開始した。そして、この「試験3」では、慣らし放電βDCを実行しなかった。その結果、この「試験3」では、その本放電αDCの要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間として、上記「試験2」の値「Te2」よりも短い「Te3」が得られた(Te3<Te2)。
【0048】
更に、再び、上記「試験1」と同じ条件で、図7中の波形L4に示す「試験4」を実行した。即ち、この「試験4」においても、二次電池1のSOCを「40%」、電圧VBを「V1」に設定した状態から、その二次電池1の放電を開始した。そして、この「試験4」では、その本放電αDCの要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間として、上記「試験1」の値「Te1」と略等しい値「Te4」が得られた。
【0049】
以上、「試験1」の試験データと「試験2」の試験データとの比較により、その慣らしβ放電DCの実行により、本放電αDCの要求出力電力「P1」を満たすために必要な「V0」以上の電圧VBを維持する持続時間が長くなることが確認された。また、「試験2」の試験データと「試験3」の試験データとの比較によって、その持続時間の延長効果が、放電開始時のSOC及び電圧VBを予め高く設定したことによるものではないことが確認された。更に、「試験1」の試験データと「試験4」の試験データとが略等しいことで、これら「試験1」~「試験4」の試験の再現性が確認された。そして、これにより、本通電α前の慣らし放電βDCを実行することで、その二次電池1の放電特性が改善されることが確認された。
【0050】
即ち、定電流放電試験において、その二次電池1の電圧VBを一定値以上に維持する持続時間の延長は、この二次電池1を実際に利用した場合に、その出力時間を延長することができることを示唆する。また、この結果は、出力時間が同じである場合、その二次電池1に許容される出力電力Pの上限値を引き上げることができることを示唆する。更に、上記の確認試験では、特に、その慣らし放電βDCの実行による充放電特性の改善効果が、ハイレート通電時において有効であることが確認された。そして、このような慣らし通電βの実行は、その効果の発生メカニズム、つまりは二次電池1内に形成される反応場の「慣らし作用」に基づいて、二次電池1の充電時にも、その充電特性の改善効果が期待できる。
【0051】
また、図9は、慣らし放電βDCの実行から本放電αDCの開始までの間隔Twと、その二次電池1の出力時間Tpとの関係を示す試験データである。尚、この場合における二次電池1の出力時間Tpは、図7に示すような定電流放電試験において、その電圧VBを一定値以上に維持する持続時間に相当する。
【0052】
即ち、この試験データから、慣らし通電βの実行から本放電αDCの開始までの間隔Twが短いほど、二次電池1の出力時間Tpが長くなることが確認できる。従って、慣らし通電βの実行後、極力、速やかに、その本通電αを開始することで、より効果的に、二次電池1の充放電特性を改善することができる。換言すると、非通電状態が継続することで、その反応場が元に戻る、つまりはイオンの移動方向が一方向ではなくなることが推察される。
【0053】
この点を踏まえ、本実施形態の制御装置40は、上記のように、非通電状態が所定時間以上継続した状態から二次電池1の放電又は充電を実行する場合(図6参照、ステップ103:YES)に、そのハイレート通電状態での本通電α前の慣らし通電βを実行する。そして、これにより、効果的に、その充放電特性の改善効果を得ることが可能になっている。
【0054】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)二次電池1の制御装置40は、二次電池の充放電時、充放電の本通電αを開始する前に、この本通電αよりも低い通電レートRxで本通電αと同じ通電方向の慣らし通電βを実行する。
【0055】
上記構成によれば、その慣らし通電βの実行により、二次電池1内におけるイオンの移動方向を、その本通電αを行う放電方向又は充電方向に揃えることができる。つまりは、その二次電池1内の反応場を「慣らす」ことができる。そして、これにより、二次電池1の充放電特性を改善することができる。
【0056】
具体的には、二次電池1を実際に利用した場合、例えば、放電時、その出力時間を延長することができる。また、出力時間が同じである場合には、二次電池1に許容される出力電力Pの上限値を引き上げることができる。そして、充電時についてもまた、同様に、その充電性能の向上を図ることができる。
【0057】
その結果、例えば、車両制御装置に適用した場合には、アクセルの踏み込みに応じた優れた車両の加速性能を担保することができる。そして、回生制動時等、二次電池1の充電時においては、その充電容量を増大させることができる。
【0058】
(2)制御装置40は、本通電αの通電レートRxが予め定められたハイレート閾値THH以上となる場合(Rx≧THH)に、その慣らし通電βを実行する。
即ち、慣らし通電βの実行による反応場の「慣らし作用」の効果は、その二次電池1の充放電がハイレート通電に相当する高い通電レートRxで本通電αが行われる場合に顕著となる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池1の充放電特性を改善することができる。
【0059】
(3)制御装置40は、予め定められた所定時間t0以上、非通電状態が継続した後、二次電池1の充放電を行う場合に、その本通電α前の慣らし通電βを実行する。
即ち、非通電状態が継続することで、その反応場が元に戻る、つまりはイオンの移動方向が一方向でなくなる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池1の充放電特性を改善することができる。
【0060】
(4)制御装置40は、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時に、その本通電α前の慣らし通電βを実行する。
即ち、充電から放電への切替時又は放電から充電への切替時には、その反応場の状態が反転する、つまりはイオンの移動方向が逆向きになる。従って、上記構成によれば、より効果的に、その二次電池1の充放電特性を改善することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
以下、二次電池の制御装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0062】
図10及び図11に示すように、本実施形態の制御装置40Bにおいて、充放電制御部51Bは、ハイレート閾値THHより低い通電レートRx1で本通電α1を開始した場合において、所定の条件を満たす場合に、その通電レートRxの変更前に、ローレート閾値THL以下の通電レートRLで慣らし通電βを実行する。
【0063】
詳述すると、本実施形態の充放電制御部51Bもまた、第1の実施形態における充放電制御部51と同様、充放電の通電レートRxがハイレート閾値THHより低い場合には、その本通電α前の慣らし通電βを実行しない(図6参照、ステップ104)。しかしながら、本実施形態の充放電制御部51Bは、その後、通電レートRxの変更によって、ハイレート通電に相当する通電状態となる場合、つまり、ハイレート閾値THH以上の通電レートRx2に変更した本通電α2を行う場合、その本通電α2の開始前に慣らし通電βを実行する。
【0064】
即ち、二次電池1内の反応場、つまり二次電池1内におけるイオンの移動方向は、ローレート閾値THL以下の低い通電レートRxでの通電を行うことにより、その全体がムラなく均一化される。そして、本実施形態の充放電制御部51Bは、これにより、二次電池1の充放電特性を改善する構成となっている。
【0065】
具体的には、図12のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置40において、充放電制御部51Bは、二次電池1の充放電を実行中、通電レートRxの変更があった場合(ステップ201:YES)、慣らし通電βが未実行であるか否かを判定する(ステップ202)。更に、充放電制御部51Bは、その慣らし通電βが未実行、つまりは、実行中の充放電について、その本通電α1の開始前に慣らし通電βを実行していない場合(ステップ202:YES)、続いて、その通電レートRxを変更して実行する本通電α2の通電レートRx2が、ハイレート通電に相当するか否かを判定する(ステップ203)。そして、本実施形態の充放電制御部51Bは、このステップ203において、その変更後の通電レートRx2がハイレート通電に相当する、つまりは、ハイレート閾値THH以上であると判定することを(ステップ203:YES)、その通電レートRxを変更する前の慣らし通電βの実行条件とする。
【0066】
即ち、本実施形態の充放電制御部51Bは、慣らし通電βを実行することなく、ローレート閾値THLより高くハイレート閾値THHより低い通電レートRx1で本通電α1が開始された場合において、この本通電α1の開始後、その通電レートRxがハイレート閾値THH以上のRx2に変更されることを、その慣らし通電βの実行条件とする。
【0067】
尚、ローレート閾値THL以下の通電レートRxで本通電α1が実行されていた場合、この本通電α1は、実質的に、その通電レートRxを変更して実行する本通電α2の慣らし通電βに相当するものとなる。このため、本実施形態の充放電制御部51Bは、このような場合、上記ステップ202において、既に慣らし通電βが実行済みであると判定する(ステップ202:NO)。
【0068】
また、図10及び図11に示すように、本実施形態の制御装置40Bにおいて、充放電制御部51Bは、ローレート閾値THLより高くハイレート閾値THHより低い通電レートRx1で本通電α1が開始された場合に、その開始後の経過時間を慣らし時間Tbiとして計測する。また、制御装置40Bは、その変更前の通電レートRx1と、この通電レートRx1に応じた慣らし時間Tbiの閾値TXとの関係を保持する慣らし時間閾値保持部70を備えている。そして、本実施形態の充放電制御部51Bは、この変更前の通電レートRx1に応じた慣らし時間Tbiの閾値TXを経過した後は、その通電レートRxをハイレート閾値THH以上の通電レートRx2に変更する前の慣らし通電βを実行しない。
【0069】
具体的には、図12に示すように、本実施形態の充放電制御部51Bは、上記ステップ203の判定条件を満たす場合(ステップ203:YES)、続いて、上記慣らし時間閾値保持部70から、変更前の通電レートRx1に応じた慣らし時間Tbiの閾値TXを取得する(ステップ204)。更に、充放電制御部51Bは、そのハイレート閾値THHより低い通電レートRx1で実行した本通電α1による慣らし時間Tbiが、この慣らし時間Tbiの閾値TXを経過する前であるかを判定する(ステップ205)。そして、本実施形態の充放電制御部51Bは、その慣らし時間Tbiが閾値TXを経過する前である場合(Tbi<TX、ステップ205:YES)に、その通電レートRxをハイレート閾値THH以上の値「Rx2」に変更する前の慣らし通電βを実行する(ステップ206)。
【0070】
即ち、ローレート閾値THLより高い通電レートRxでも、一方向の通電状態が継続することによる反応場の「慣らし作用」が期待できる。そして、この慣らし作用を得るために必要となる通電開始からの経過時間、つまり慣らし時間Tbiの閾値TXは、その通電レートRxに応じた値となる。
【0071】
この点を踏まえ、本実施形態の制御装置40Bは、上記のように変更前の通電レートRx1及び慣らし時間Tbiに基づいて、その通電レートRxを変更する前の慣らし通電βについての要否判定を実行する。即ち、本実施形態の慣らし時間閾値保持部70には、反応場の「慣らし作用」の効果が得られると推定される、その変更前の通電レートRx1に応じた慣らし時間Tbiの閾値が保持されている。尚、本実施形態において、この慣らし時間閾値保持部70には、上記第1の実施形態において例示した確認試験(図7及び図8参照)を、その試験条件を変えて繰り返し実行する、或いはシミュレーションにより得られた、変更前の通電レートRx1と、この通電レートRx1に応じた慣らし時間Tbiの閾値TXとの関係がマップ形式で保持されている。そして、本実施形態の制御装置40Bは、既に反応場の「慣らし作用」の効果が得られていると推定される場合には、慣らし通電βを挟むことなく、速やかに、そのハイレート閾値THHより低い通電レートRx1での本通電α1からハイレート通電に相当する通電レートRx2での本通電α2に移行することで、遅延の発生を抑える構成になっている。
【0072】
以上、本実施形態の構成を採用することで、より効果的に、二次電池1の充放電特性を改善することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0073】
・上記各実施形態では、本通電αの通電レートRxが予め定められたハイレート閾値THH以上となる場合(Rx≧THH)に、その慣らし通電βを実行することとした。しかし、これに限らず、通電レートRxがハイレート閾値THHより低い場合、つまりは、通電レートRxの値に依らず、本通電α前の慣らし通電βを実行する構成としてもよい。
【0074】
・また、上記各実施形態では、予め定められたローレート閾値THL以下の通電レートRLで慣らし通電βを実行することとしたが、この慣らし通電βについてもまた、必ずしもローレート閾値THL以下でなくともよい。即ち、本通電αよりも低い通電レートRxで慣らし通電βを実行することにより、その値及び継続時間に応じた反応場の「慣らし作用」が期待できる。
【0075】
・上記各実施形態では、二次電池1の制御装置40を、ハイブリッド車両60の車両制御装置に適用した事例を例示したが、エンジン62を有しない電気自動車や、これら双方の特徴を有した所謂プラグインハイブリッド車両に適用してもよい。そして、車両制御装置以外に適用してもよく、その負荷52についてもまた、必ずしもモータでなくともよい。
【0076】
・上記各実施形態では、慣らし通電βは、例えば、一秒以下の短時間、瞬間的に行われることとしたが、慣らし通電βの実行時間については、任意に変更してもよい。
・また、慣らし通電βの有無により、二次電池1の充放電制御を変更してもよい。例えば、許容する二次電池1の通電レートRxに上限値があるとして、慣らし通電βの実行後は、慣らし通電βの実行前よりも、その許容する通電レートRxの上限値を引き上げる等とする。これにより、より効果的に、二次電池1の充放電特性を改善することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…二次電池
40…制御装置
α…本通電
β…慣らし通電
Rx…通電レート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12