(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060792
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】画像投影装置および車両用情報表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168476
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 崇
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA17
2H199DA26
2H199DA29
2H199DA32
(57)【要約】
【課題】外界からの光による画像表示部の劣化を抑制することが可能な画像投影装置および車両用情報表示装置を提供する。
【解決手段】焦点位置(F)からの光を投影する投影光学部(20)と、投影光学部(20)に対して画像情報を含んだ光を照射する画像表示部(10)を備え、画像表示部(10)は、焦点位置(F)よりも投影光学部(20)から遠くに配置されており、焦点位置(F)と投影光学部(20)の間の結像位置に、画像情報を空中立体像(TI)として結像する画像投影装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点位置からの光を投影する投影光学部と、
前記投影光学部に対して画像情報を含んだ光を照射する画像表示部を備え、
前記画像表示部は、前記焦点位置よりも前記投影光学部から遠くに配置されており、前記焦点位置と前記投影光学部の間の結像位置に、前記画像情報を空中立体像として結像することを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記結像位置と前記焦点位置との距離を変更する結像位置変更部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像投影装置であって、
前記結像位置変更部は、前記画像表示部を光軸方向に移動させる駆動部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像投影装置であって、
前記結像位置変更部は、前記画像表示部から前記結像位置までの距離を変更する光学変更部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像投影装置であって、
前記光学変更部は、電圧の印加により屈折率を変化させる液晶レンズを備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像投影装置であって、
前記光学変更部は、デジタルミラーデバイスを用いたホログラム投影部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記投影光学部は、透過型レンズで構成されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記投影光学部は、凹面反射鏡で構成されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記画像表示部と前記焦点位置の間に、光を遮る遮光部が設けられていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像投影装置であって、
前記画像表示部は、前記遮光部を避けて前記結像位置に前記空中立体像を結像することを特徴とする画像投影装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一つに記載の画像投影装置を備えることを特徴とする車両用情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に車両内の運転者等に対して画像を表示する画像投影装置および車両用情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の操舵や加減速などの運転操作の一部または全部をコンピュータが担う運転支援技術や自動運転技術の開発が進んでいる。また、車両の運転操作を人間が行う手動運転においても、車両に各種センサや通信装置を複数搭載して車両の状態や周辺状況の情報を入手して、走行時の安全性や快適性を高める走行支援技術も開発されている。
【0003】
このような運転支援技術、自動運転技術または走行支援技術においては、車両の状態や周辺状況、コンピュータの運転操作状況など、得られた各種情報を搭乗者に画像等を用いて提示している。従来から、各種情報を提示するためには車両内に画像表示装置を搭載して、画像表示装置上に文字や画像を表示することが一般的であった。
【0004】
しかし、車両に備えられた画像表示装置で情報を提示すると、搭乗者や運転者が視線を走行方向前方から逸して画像表示装置を見る必要があるため好ましくない。そこで、車両の前方からの視線移動を小さくしながらも画像情報を提示するために、車両のウインドシールドに画像を投影して、反射した光を視認させるHUD(Head Up Display)装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
図7は従来のHUD装置において表示される虚像の結像位置を模式的に示した図である。
図7では、HUD装置の構成を簡略して示しており、車両のウインドシールドや平板状ミラー等の部材は省略している。図に示したように従来のHUD装置では、画像表示部1で画像を表示して投影光学部2に対して画像情報を含んだ光を照射し、投影光学部2を経た光が所定位置に虚像IMを結像する。画像表示部1は、液晶表示装置や有機EL素子等の公知の装置を用いている。投影光学部2は、焦点距離D
Fに焦点Fが設定された凹面鏡を用いている。ここでは投影光学部2として光を反射する反射光学系を示しているが、光学レンズ等の透過光学系を用いる場合も同様である。
【0006】
図7(a)に示したようにHUD装置では、画像表示部1から投影光学部2までの距離D
Dを焦点距離D
Fよりも小さくして、焦点Fと投影光学部2の間に画像表示部1を配置すると、投影光学部2から投影距離D
IMの位置に虚像IMが結像される。投影光学部2は、焦点F位置からの光を平行光として照射するので、焦点Fの位置に画像表示部1を配置した場合には虚像IMの結像位置は無限遠となる。したがって、
図7(b)に示したように、画像表示部1を焦点Fに近づけるほど、投影光学部2からの投影距離D
IMを大きくして、遠方に虚像IMを結像することができる。
【0007】
HUD装置では、ウインドシールド等の透明な部材を介して投影された虚像IMを視認する際に、実空間の背景と虚像IMが重ね合わされる。このとき、背景と虚像IMの奥行き位置が近いほうが、視線の移動や目の焦点距離変更を少なくできるため、重ね合わされる背景と同じ奥行き位置に虚像IMの結像位置を変更することが好ましい。特に、車両に搭載されるHUD装置においては、走行速度によって好ましい結像位置が変化し、時速18kmでは5m程度の結像位置が好ましく、時速144kmでは80m程度の結像位置が好ましいとされている。また、車両の走行状況によって、先行車両や道路上の物体に虚像IMを重ね合わせる場合もあり、虚像IMの結像位置を広い範囲で可変とすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7(a)(b)に示したように、HUD装置において虚像IMの結像位置を可変とするためには、画像表示部1と投影光学部2との距離を可変とする駆動部を設けることが有効であるが、以下に述べるような問題が生じる。
【0010】
投影光学部2は、焦点Fからの光を平行光として照射するように光学的な設計がされているが、逆に外界から照射された遠方からの光は焦点Fに集光されてしまう。具体的には、太陽光は無限遠から照射される平行光とみなせるため、太陽光が投影光学部2に照射されるような環境では、焦点Fに非常に強い光が照射されることになる。特に、車両に搭載されるHUD装置では、ウインドシールドで投影光を反射させて搭乗者に虚像IMを視認させるため、太陽光が投影光学部2に直接入射する可能性が高い。
【0011】
このように太陽光が投影光学部2に直接入射した際に、虚像IMを遠方に結像させるために画像表示部1を焦点Fに近づけると、集光された太陽光が画像表示部1の表示面に入射して温度上昇を招き、画像表示部1の劣化や表示される画像の劣化を引き起こしてしまう。
【0012】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、外界からの光による画像表示部の劣化を抑制することが可能な画像投影装置および車両用情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、焦点位置からの光を投影する投影光学部と、前記投影光学部に対して画像情報を含んだ光を照射する画像表示部を備え、前記画像表示部は、前記焦点位置よりも前記投影光学部から遠くに配置されており、前記焦点位置と前記投影光学部の間の結像位置に、前記画像情報を空中立体像として結像することを特徴とする。
【0014】
このような本発明の画像投影装置では、投影光学部の焦点位置よりも遠くに画像表示部が配置されており、画像表示部が焦点位置と投影光学部の間に空中立体像を結像させるため、外界からの光が画像表示部の近傍に集光されることを防止し、外界からの光による画像表示部の劣化を抑制することが可能となる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記結像位置と前記焦点位置との距離を変更する結像位置変更部を備える。
【0016】
また本発明の一態様では、前記結像位置変更部は、前記画像表示部を光軸方向に移動させる駆動部を備える。
【0017】
また本発明の一態様では、前記結像位置変更部は、前記画像表示部から前記結像位置までの距離を変更する光学変更部を備える。
【0018】
また本発明の一態様では、前記光学変更部は、電圧の印加により屈折率を変化させる液晶レンズを備える。
【0019】
また本発明の一態様では、前記光学変更部は、デジタルミラーデバイスを用いたホログラム投影部を備える。
【0020】
また本発明の一態様では、前記投影光学部は、透過型レンズで構成されている。
【0021】
また本発明の一態様では、前記投影光学部は、凹面反射鏡で構成されている。
【0022】
また本発明の一態様では、前記画像表示部と前記焦点位置の間に、光を遮る遮光部が設けられている。
【0023】
また本発明の一態様では、前記画像表示部は、前記遮光部を避けて前記結像位置に前記空中立体像を結像する。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の車両用情報表示装置は、上記の何れか一つに記載の画像投影装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、外界からの光による画像表示部の劣化を抑制することが可能な画像投影装置および車両用情報表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【
図2】結像位置変更部として、画像表示部10を機械的に移動させる駆動部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
【
図3】第2実施形態に係る画像投影装置100において、透過型液晶レンズと光学変更部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態の変形例に係る画像投影装置100において、液晶マイクロレンズアレイと光学変更部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る画像投影装置100において、デジタルミラーデバイスを用いたホログラム投影部により、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
【
図6】デジタルミラーデバイス18での反射光LRと透過光LTの反射を示す模式図である。
【
図7】従来のHUD装置において表示される虚像の結像位置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
図1に示すように画像投影装置100は、画像表示部10と、投影光学部20と、透過スクリーン部30と、遮光部40とを備えている。
【0028】
画像表示部10は、外部から電力と信号が供給されることで画像情報を含んだ光を照射して、所定位置に空中立体像TIを結像する装置である。画像表示部10から照射された光は、空中立体像TIを結像した後に投影光学部20に入射する。画像表示部10としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、レーザ光源を用いたプロジェクター装置等と光学部材の組み合わせが挙げられる。
【0029】
投影光学部20は、所定の焦点距離D
Fだけ離れた位置に焦点Fを有する光学部材である。画像表示部10から照射された光は、投影光学部20を経て透過スクリーン部30に到達する。
図1では、投影光学部20として凹面ミラーを用い、画像表示部10からの光を透過スクリーン部30に反射する例を示しているが、投影光学部20として透過型レンズを用いるとしてもよい。また
図1では、画像表示部10から照射された光が投影光学部20に直接到達する例を示しているが、平面反射鏡等を用いた反射光を投影光学部20に到達させるとしてもよい。
【0030】
透過スクリーン部30は、外部からの光を透過するとともに、視聴者Eの方向に投影光学部20から到達した光を反射する部材である。画像投影装置100を車両用情報表示装置に用いる場合には、車両のウインドシールドを透過スクリーン部30として用いることができる。ウインドシールドとは別にコンバイナーを用意して、コンバイナーを透過スクリーン部30として用いてもよい。また、ヘルメットのシールドや、ゴーグルや眼鏡を透過スクリーン部30として用いてもよい。
【0031】
遮光部40は、投影光学部20と画像表示部10の間に配置された、光を遮る材料で構成された部材である。遮光部40は、外部からの光が投影光学部20に入射して反射され、画像表示部10にまで到達することを防止するために設けられており、外光の少なくとも一部を遮る位置に配置されている。
図1に示した例では、遮光部40は焦点Fよりもわずかに画像表示部10に寄った位置に配置されており、焦点Fに集光された後に画像表示部10方向に拡大して進行する外光を遮るように、画像表示部10から焦点Fを隠蔽するように配置されている。遮光部40を構成する材料は限定されず、金属や樹脂、セラミック等の公知の材料を用いることができる。
図1では、遮光部40として平板形状を示しているが、光を遮ることができれば曲面形状や凹凸形状であってもよい。
【0032】
図1に示したように、画像投影装置100では、画像表示部10が遮光部40を避けて投影光学部20に向けて画像情報を含んだ光を照射する。画像表示部10から出射した光は、空中立体像TIを結像した後に投影光学部20および透過スクリーン部30で反射され、視聴者Eの目に入射する。このとき、立体空中像TIの結像位置は、焦点Fよりも投影光学部20に近い位置であり、焦点Fからの距離に応じて視聴者Eは透過スクリーン部30越しに虚像IMを視認する。また、画像表示部10を制御して立体空中像TI’の結像位置を変化させ、焦点Fからの距離を大きくすると、虚像IM’の結像位置は視聴者Eに近づくように変化する。
【0033】
このとき、外界から太陽光などの強い光が投影光学部20に入射すると、
図1中に破線で示したように投影光学部20から焦点Fに向かって外光が集光される。しかし、投影光学部20と焦点Fの間には画像表示部10が配置されておらず、画像表示部10は焦点Fよりも投影光学部20から遠くに配置されている。これにより、画像表示部10を焦点Fから離れた位置に配置することができ、外光の集光による温度上昇と劣化を防止することができる。
【0034】
本実施形態の画像投影装置100では、空中立体像TIの結像位置と焦点Fの距離によって、視聴者Eが視認する虚像IMの結像位置を変更できるため、空中立体像TIを焦点Fに近づけるだけで、虚像IMを遠方に結像させて背景との重ね合わせを良好に視認可能となる。このとき、焦点Fに外光が集光されていても空中立体像TIは熱の影響を受けないため、強い太陽光が投影光学部20に到達するような環境においても、虚像IMを遠方に結像して視認性を高めることができる。
【0035】
また、画像表示部10と焦点Fの間に、光を遮る遮光部40が設けられていることで、外光が投影光学部20に入射して焦点Fに集光されたとしても、焦点Fから画像表示部10の方向に拡がって進行する外光を効果的に遮り、画像表示部10に外光が到達して温度が上昇することを抑制できる。遮光部40を焦点Fよりもわずかに画像表示部10側に寄せて配置し、焦点Fを画像表示部10側から隠蔽すると、焦点Fに集光された光の大部分を遮光部40で遮ることができるため好ましい。
【0036】
しかし、焦点Fに集光された外光の全部を遮光部40で遮ることができず、一部が画像表示部10方向に進行したとしても、画像表示部10に到達する光のエネルギーを少なくとも一部は減少させることができるため、画像表示部10の温度上昇は抑制できる。また画像表示部10は、焦点Fよりも投影光学部20から遠い位置に配置されているため、焦点Fに集光された光は光径が拡大されて画像表示部10に到達する。したがって、画像表示部10の一部に強い外光が到達しても、局所的に温度が上昇することを抑制できる。
【0037】
図1で示したように、本実施形態の画像投影装置100および車両用情報表示装置では、空中立体像TIの結像位置を変更することで、虚像IMの結像位置を変化させることができる。そこで画像投影装置100は、画像表示部10による空中立体像TIの結像位置と焦点Fとの距離を変更する結像位置変更部を備え、空中立体像TIおよび虚像IMの結像位置を可変とする。
【0038】
図2は、結像位置変更部として、画像表示部10を機械的に移動させる駆動部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
【0039】
画像表示部10は、表示面11と、立体像投影部12を備えており、駆動部13によって光軸方向に移動可能とされている。駆動部13は、空中立体像TIの結像位置と焦点Fとの距離を機械的に変更する装置であり、本発明における結像位置変更部に相当している。ここで、画像表示部10の光軸方向とは、画像表示部10から照射された光が空中立体像TIを結像して、投影光学部20に進行している方向である。一例として、画像表示部10の光軸方向は、
図1において画像表示部10から投影光学部20に向けて描かれた矢印に沿った方向であり、
図2において立体像投影部12から空中立体像TIまで描かれた両矢印の方向である。
【0040】
表示面11は、外部から供給された画像情報に基づいて画像を表示するとともに光を照射する部分であり、例えば公知の液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置等を用いることができる。立体像投影部12は、表示面11から照射された画像情報を含んだ光を所定距離の位置に空中立体像TIとして結像するための光学部材であり、マイクロレンズアレイ等を用いることができる。
【0041】
図2に示したように、表示面11で表示された画像は、立体像投影部12を介して結像距離Zの位置に空中立体像TIを結像する。
図1と同様に空中立体像TIは、投影光学部20と焦点Fの間に位置しており、空中立体像TIの結像位置と焦点Fの位置は、距離ΔDだけ離れている。また、焦点Fと立体像投影部12の間には、遮光部40が配置されており、焦点Fに集光された外光の表示面11方向への進行を遮っている。
【0042】
駆動部13が表示面11および立体像投影部12を一括して光軸方向にΔZ移動させると、表示面11と立体像投影部12の距離および結像距離Zは一定であり、空中立体像TIの結像位置も光軸方向にΔZ変化する。したがって、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDもΔZ変化し、虚像IMの結像位置も変化する。
【0043】
駆動部13が表示面11または立体像投影部12のどちらか一方を光軸方向にΔZ移動させると、表示面11と立体像投影部12の距離が変化するため、結像距離Zも変化して空中立体像TIの結像位置も光軸方向にΔZ’変化する。したがって、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDもΔZ’変化し、虚像IMの結像位置も変化する。
【0044】
上述したように本実施形態では、投影光学部20の焦点Fよりも遠くに画像表示部10が配置されており、画像表示部10が焦点Fと投影光学部20の間に空中立体像TIを結像させるため、外界からの光が画像表示部10の近傍に集光されることを防止し、外界からの光による画像表示部10の劣化を抑制することが可能となる。
【0045】
また、結像位置変更部として、画像表示部10を機械的に移動させる駆動部13を用いることで、簡便な構成により虚像IMの結像位置を変化させることができる。また、画像表示部10を焦点Fの近傍に配置する必要がないため、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDを小さくして虚像IMを遠方に結像させた場合にも、外光の集光による画像表示部10の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図3を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図3は、本実施形態に係る画像投影装置100において、透過型液晶レンズと光学変更部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
図3に示すように本実施形態の画像投影装置100では、画像表示部10は表示面11と、液晶レンズ14を備えており、光学変更部15によって液晶レンズ14の屈折率が変更可能とされている。
【0047】
液晶レンズ14は、内部に液晶分子が充填されたレンズ形状の光学部材であり、液晶分子の屈折率が異方性を有しているため、電圧を印加することで液晶分子の配列が変更され、透過する光に対する屈折率が変化するという特性を有している。したがって、液晶レンズ14は、電圧の印加によって焦点距離が変化する。
【0048】
光学変更部15は、液晶レンズ14に印加する電圧を制御して、液晶レンズ14の屈折率を変更する部材である。したがって、光学変更部15は、液晶レンズ14の光学特性を制御し、空中立体像TIの結像位置と焦点Fとの距離を制御する装置であり、本発明における結像位置変更部に相当している。
【0049】
図3に示したように、表示面11で表示された画像は、液晶レンズ14を介して結像距離Zの位置に空中立体像TIを結像する。
図1と同様に空中立体像TIは、投影光学部20と焦点Fの間に位置しており、空中立体像TIの結像位置と焦点Fの位置は、距離ΔDだけ離れている。また、焦点Fと立体像投影部12の間には、遮光部40が配置されており、焦点Fに集光された外光の表示面11方向への進行を遮っている。
【0050】
光学変更部15が液晶レンズ14に印加する電圧を制御して、結像距離Zを変化させると、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDも変化し、虚像IMの結像位置も変化する。
【0051】
本実施形態でも、投影光学部20の焦点Fよりも遠くに画像表示部10が配置されており、画像表示部10が焦点Fと投影光学部20の間に空中立体像TIを結像させるため、外界からの光が画像表示部10の近傍に集光されることを防止し、外界からの光による画像表示部10の劣化を抑制することが可能となる。
【0052】
また、結像位置変更部として光学変更部15と液晶レンズ14を用いることで、画像表示部10を機械的に移動させずに空中立体像TIの結像位置と焦点Fの距離ΔDを変化させ、虚像IMの結像位置を変化させることができ、部品点数の削減と省スペース化を図ることができる。また、光学変更部15が液晶レンズ14に印加する電圧を制御するだけで、液晶レンズ14の光学特性を変更して、虚像IMの結像位置を変化させることができるため、省電力化と高速動作を実現することができる。
【0053】
(第2実施形態の変形例)
次に、本発明の第2実施形態の変形例について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本変形例に係る画像投影装置100において、液晶マイクロレンズアレイと光学変更部を用いて、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
図4に示すように本実施形態の画像投影装置100では、画像表示部10は表示面11と、液晶マイクロレンズアレイ16を備えており、光学変更部15によって液晶マイクロレンズアレイ16の屈折率が変更可能とされている。
【0054】
液晶マイクロレンズアレイ16は、内部に液晶分子が充填された微小なレンズ形状がアレイ上に配列された光学部材であり、液晶分子の屈折率が異方性を有しているため、電圧を印加することで液晶分子の配列が変更され、透過する光に対する屈折率が変化するという特性を有している。したがって、液晶マイクロレンズアレイ16は、電圧の印加によって焦点距離が変化する光学部材であり、本発明における液晶レンズに相当している。光学変更部15は、液晶マイクロレンズアレイ16に印加する電圧を制御して、液晶マイクロレンズアレイ16の屈折率を変更する。
【0055】
図4に示したように、表示面11で表示された画像は、液晶マイクロレンズアレイ16を介して結像距離Zの位置に空中立体像TIを結像する。
図1と同様に空中立体像TIは、投影光学部20と焦点Fの間に位置しており、空中立体像TIの結像位置と焦点Fの位置は、距離ΔDだけ離れている。また、焦点Fと立体像投影部12の間には、遮光部40が配置されており、焦点Fに集光された外光の表示面11方向への進行を遮っている。
【0056】
光学変更部15が液晶マイクロレンズアレイ16に印加する電圧を制御して、結像距離Zを変化させると、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDも変化し、虚像IMの結像位置も変化する。
【0057】
本変形例でも、投影光学部20の焦点Fよりも遠くに画像表示部10が配置されており、画像表示部10が焦点Fと投影光学部20の間に空中立体像TIを結像させるため、外界からの光が画像表示部10の近傍に集光されることを防止し、外界からの光による画像表示部10の劣化を抑制することが可能となる。
【0058】
また、結像位置変更部として光学変更部15と液晶マイクロレンズアレイ16を用いることで、画像表示部10を機械的に移動させずに空中立体像TIの結像位置と焦点Fの距離ΔDを変化させ、虚像IMの結像位置を変化させることができ、部品点数の削減と省スペース化を図ることができる。また、光学変更部15が液晶マイクロレンズアレイ16に印加する電圧を制御するだけで、液晶マイクロレンズアレイ16の光学特性を変更して、虚像IMの結像位置を変化させることができるため、省電力化と高速動作を実現することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5および
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影装置100において、デジタルミラーデバイスを用いたホログラム投影部により、空中立体像TIの結像位置を変更する例を示す模式図である。
図5に示すように本実施形態の画像投影装置100では、画像表示部10はレーザ光源17と、デジタルミラーデバイス18(DMD:Digital Mirror Device)と、ミラーM1~M4と、ビームスプリッタBSを備えてホログラム投影部を構成している。
【0060】
レーザ光源17は、所定波長のコヒーレント光を照射する光源である。レーザ光源17の波長や構成は限定されないが、例えばHe-Neレーザや、半導体レーザ等を用いることができる。またレーザ光源17は、レーザ光を平行光に変換するコリメートレンズや、レーザ光の光径を限定するアパチャ等の光学部材を備えているとしてもよい。
【0061】
デジタルミラーデバイス18は、微小なミラーがマトリクス状に配置されて、オン状態とオフ状態とで傾斜角度を変更可能な電子部品である。本実施形態では、デジタルミラーデバイス18はホログラム投影部の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)として機能し、ホログラム投影のための干渉縞をミラーのオンオフ制御で再現する。また、デジタルミラーデバイス18は図示しないDMD制御部によって駆動されており、DMD制御部ではGS(Gerchberg-Saxton)アルゴリズム等の計算処理によって計算機合成ホログラム(CGH:Computer-Generated Hologram)で干渉縞を計算して表示する。
図5に示した例では、ホログラム投影部の空間光変調器としてデジタルミラーデバイス18を用いた例を示したが、液晶表示装置等の公知の構成を用いるとしてもよい。
【0062】
ミラーM1~M4は、レーザ光源17から照射されたレーザ光を反射する部材である。ビームスプリッタBSは、レーザ光の50%を透過して50%を反射する光学部材であり、入射したレーザ光を2つに分岐する。
【0063】
図5に示したように、レーザ光源17から照射されたレーザ光は、ミラーM1、M2で反射されてビームスプリッタBSに入射し、反射光LRはミラーM3に入射し透過光LTはミラーM4に入射する。ミラーM3,M4に入射した光は、ミラーM3,M4で反射されて、それぞれ異なる角度でデジタルミラーデバイス18に入射する。デジタルミラーデバイス18に入射した光は、計算機合成ホログラムによってデジタルミラーデバイス18上に表示された干渉縞によって反射され、結像距離Zの位置に空中立体像TIを再生して結像する。したがってミラーM3,M4で反射されてデジタルミラーデバイス18に入射した光は、ホログラムにおける再生光の照射となっている。
【0064】
ここで、計算機合成ホログラムでは、空中立体像TIの位置を含めてホログラムを計算して再生することができるため、デジタルミラーデバイス18の微小ミラーについてオンオフを制御するだけで、空中立体像TIの形状と結像距離Zを変更することができる。これにより、空中立体像TIと焦点Fの距離ΔDも変化し、虚像IMの結像位置も変化する。したがって、デジタルミラーデバイス18を用いたホログラム投影部は、本発明における光学変更部に相当している。また、ホログラム投影部による再生像である空中立体像TIを結像すると、デジタルミラーデバイス18の後方に共役像が結像されるが、焦点Fからの距離が大きいため視聴者Eの視認に影響は少ない。
【0065】
図6は、デジタルミラーデバイス18での反射光LRと透過光LTの反射を示す模式図である。デジタルミラーデバイス18に含まれる微小なミラーのうち、隣接する一組のミラーにおいて、一方がオン状態とし他方がオフ状態とする。このとき、オン状態の微小ミラーに入射した反射光LRと、オフ状態の微小ミラーに入射した透過光LTが、同じ方向に反射されるように設定しておく。透過光LTと反射光LRとは、位相が反転しているため、0次回折光を相殺するとともに再生像である空中立体像TIの光強度を2倍にすることができる。
【0066】
本実施形態においても、投影光学部20の焦点Fよりも遠くに画像表示部10が配置されており、画像表示部10が焦点Fと投影光学部20の間に空中立体像TIを結像させるため、外界からの光が画像表示部10の近傍に集光されることを防止し、外界からの光による画像表示部10の劣化を抑制することが可能となる。
【0067】
また、デジタルミラーデバイス18を用いたホログラム投影部で、空中立体像TIの結像位置を変化させているため、画像表示部10を機械的に移動させずに空中立体像TIの結像位置と焦点Fの距離ΔDを変化させ、虚像IMの結像位置を変化させることができ、部品点数の削減と省スペース化を図ることができる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態から第3実施形態に示した
図1から
図6では、投影光学部20に入射した外光が一箇所の焦点Fに集光された例を示している。しかし、焦点Fの位置は外光の入射角度によって変わるため、外光が集光され得る焦点位置は
図1中に破線で示したように面状に分布することとなる。
【0069】
したがって遮光部40としては、可能な限り大きな領域において外光を遮り、画像表示部10が空中立体像TIを結像して投影光学部20に対して照射する光を遮らない構造とすることが好ましい。具体的には、画像表示部10と投影光学部20の間に平板状の遮光部40を大面積で配置し、画像表示部10から光が照射される領域にのみ開口部を形成したもの等が挙げられる。
【0070】
また、画像表示部10に悪影響を与える外光としては、高度が高い日中の太陽光であり、水平方向から入射する光は影響が比較的小さい。つまり、遮光部40が外光を遮るべき領域は、高度の高い角度から入射する光の焦点F近傍であり、水平方向もしくは水平よりも下方から入射する光は遮る必要性が小さい。したがって、
図1に示したように遮光部40を高高度からの外光が集光される領域にのみ設けることが好ましい。また、虚像IMを表示する方向は、視聴者Eから水平方向もしくは水平よりも下方の路面近傍であり、高高度からの外光を遮る遮光部40を避けて画像表示部10が光を照射することで、良好に水平方向に虚像IMを結像することができる。
【0071】
また
図1から
図6では、遮光部40を焦点Fと画像表示部10の間に配置した例を示しているが、外光を遮ることができれば焦点Fと空中立体像TIの間であってもよく、焦点Fと投影光学部20の間であってもよい。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の
変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて
得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
100…画像投影装置
10…画像表示部
20…投影光学部
30…透過スクリーン部
40…遮光部
11…表示面
12…立体像投影部
13…駆動部
14…液晶レンズ
15…光学変更部
16…液晶マイクロレンズアレイ
17…レーザ光源
18…デジタルミラーデバイス