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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060806
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】純水製造システムおよび純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220408BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220408BHJP
   C02F 1/469 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/04
B01D61/12
B01D61/44 500
B01D61/46
B01D61/58
C02F1/469
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168503
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA18
4D006JA53Z
4D006KA02
4D006KA03
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB17
4D006KD17
4D006KE07Q
4D006KE13Q
4D006KE15Q
4D006KE16Q
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE30Q
4D006KE30R
4D006MA13
4D006MA14
4D006PB70
4D006PC02
4D061DA01
4D061DC13
4D061DC18
4D061EA09
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA03
4D061FA09
4D061FA11
4D061GA06
4D061GA07
4D061GC12
4D061GC18
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】処理水の水質の高純度化を実現するとともに、製造コストの上昇を抑えることができる純水製造システムおよび純水製造方法を提供する。
【解決手段】純水製造システム1が、逆浸透膜装置4と、逆浸透膜装置4の後段に配置された電気式脱イオン水製造装置5と、逆浸透膜装置4の処理条件を制御する制御装置8と、を含む。制御装置8は、電気式脱イオン水製造装置5の特定の物質の除去率が閾値以下になり、かつ、電気式脱イオン水製造装置5の処理水の特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように逆浸透膜装置4の処理条件を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置の後段に配置された電気式脱イオン水製造装置と、前記逆浸透膜装置の処理条件を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、前記電気式脱イオン水製造装置の特定の物質の除去率が閾値以下になり、かつ、前記電気式脱イオン水製造装置の処理水の前記特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように、前記逆浸透膜装置の処理条件を制御することを特徴とする、純水製造システム。
【請求項2】
前記特定の物質の除去率はホウ素除去率である、請求項1に記載の純水製造システム。
【請求項3】
前記閾値は99.7%である、請求項2に記載の純水製造システム。
【請求項4】
前記逆浸透膜装置のホウ素除去率が40%以上80%以下である、請求項2または3に記載の純水製造システム。
【請求項5】
逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置の後段に配置された電気式脱イオン水製造装置と、前記逆浸透膜装置の処理条件を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、前記電気式脱イオン水製造装置の消費電力が閾値以下になり、かつ、前記電気式脱イオン水製造装置の処理水の特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように、前記逆浸透膜装置の処理条件を制御することを特徴とする、純水製造システム。
【請求項6】
前記閾値は350W・h/m3である、請求項5に記載の純水製造システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記逆浸透膜装置の被処理水のpH、回収率、圧力、水温のいずれか一つ以上を制御する、請求項1から6のいずれか1項に記載の純水製造システム。
【請求項8】
複数段の前記逆浸透膜装置を有し、前記制御装置は、最後段の前記逆浸透膜装置の処理条件を制御する、請求項1から7のいずれか1項に記載の純水製造システム。
【請求項9】
最後段の前記逆浸透膜装置の前段に脱気装置を有する、請求項8に記載の純水製造システム。
【請求項10】
逆浸透膜装置と、前記逆浸透膜装置の後段に配置された電気式脱イオン水製造装置と、を含む純水製造システムを用い、
前記電気式脱イオン水製造装置の特定の物質の除去率が閾値以下になり、かつ、前記電気式脱イオン水製造装置の処理水の前記特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように設定した処理条件で、前記逆浸透膜装置を作動させ、
前記逆浸透膜装置を透過した液体を前記電気式脱イオン水製造装置に供給し、前記特定の物質の除去率が閾値以下になり、かつ、前記電気式脱イオン水製造装置の処理水の前記特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように前記電気式脱イオン水製造装置を作動させることを特徴とする、純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造システムおよび純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の洗浄等のために超純水が用いられており、半導体の高性能化に伴い、より高純度の純水、超純水が求められている。純水製造システムは、特許文献1に記載されているように、逆浸透膜装置(RO装置)および電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)等により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-244853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理水の水質の高純度化が求められる一方で、超純水製造におけるコストダウンが求められている。EDI装置において水質の高純度化を達成するためには、EDI装置に印加する電流を大きくする必要がある。しかし、EDI装置に印加する電流を大きくすると製造コストが高くなる。
【0005】
本発明は、処理水の水質の高純度化を実現するとともに、製造コストの上昇を抑えることができる純水製造システムおよび純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の純水製造システムは、逆浸透膜装置と、逆浸透膜装置の後段に配置された電気式脱イオン水製造装置と、逆浸透膜装置の処理条件を制御する制御装置と、を含み、制御装置は、電気式脱イオン水製造装置の特定の物質の除去率が閾値以下になり、かつ、電気式脱イオン水製造装置の処理水の特定の物質の濃度が規定値以下で比抵抗が規定値以上になるように逆浸透膜装置の処理条件を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、処理水の水質の高純度化を実現するとともに、製造コストの上昇を抑えることができる純水製造システムおよび純水製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。
図2図1に示す純水製造システムの変形例の概略構成図である。
図3図1に示す純水製造システムの他の変形例の概略構成図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る純水製造システムの概略構成図である。本実施形態の純水製造システム1は、ポンプ3と、逆浸透膜装置(RO装置)4と、電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)5とが、被処理水の流れ方向に沿って、この順番に接続されている。被処理水供給配管21を流れる被処理水は、ポンプ3で昇圧されて、RO装置4に供給される。RO装置4に供給された被処理水は逆浸透膜に通水されて濃縮水と透過水とが得られる。RO装置4の濃縮室には濃縮水配管22が接続され、透過室には透過水配管23が接続されている。濃縮水配管22には濃縮水が流れ、透過水配管23には透過水が流れる。濃縮水配管22には、背圧弁7が設けられている。RO装置4の透過水は、透過水配管23を介してEDI装置5に被処理水として供給され、被処理水中のイオン成分、ホウ素等が除去される。ポンプ3の前段には薬液注入設備2が設けられている。薬液注入設備2は、薬液タンク及び薬液注入ポンプ2Aと、薬液注入配管2Bとを備えている。薬液注入配管2Bはポンプ3の前段で被処理水供給配管21に接続されており、薬液タンクから薬液注入配管2Bを経由して、被処理水供給配管21を流れる被処理水に薬液が注入される。また、本実施形態の純水製造システム1には、RO装置4の処理条件を制御する制御装置8と、EDI装置5の上流側と下流側の配管から分岐するサンプリングライン24,25に接続し、サンプリングライン24,25を経由して供給された水の不純物濃度を測定する測定装置6とが設けられている。各図面において、液体や気体等が流動可能に接続された部分を実線で示し、液体や気体等の流動を伴わず電力や電気信号の伝達が可能な部分を破線で示している。
【0010】
本発明の純水製造システム1の主な特徴は、制御装置8の制御動作にある。図1に示す実施形態では、測定装置6が、EDI装置5に供給されるEDI処理前の被処理水のホウ素濃度と、EDI装置5から排出されるEDI処理後の処理水のホウ素濃度とを測定する。そして、測定装置6は、測定したホウ素濃度に基づいて、EDI装置5のホウ素除去率を算出する。制御装置8は、測定装置6が算出したEDI装置5のホウ素除去率を入力し、入力したホウ素除去率に基づいて、RO装置4の処理条件、すなわち、図1に示す実施形態では、薬液注入設備2の運転を制御して、RO装置4に供給される被処理水のpHを調節する。なお、本明細書では、ある装置に供給され当該装置による処理が行われる前の液体を被処理水と称し、当該装置において処理が行われて当該装置から排出される処理済みの液体を処理水と称する。ホウ素除去率は、以下の式で求められる。
ホウ素除去率[%]=(1-処理水中のホウ素濃度/被処理水中のホウ素濃度)×100
【0011】
本実施形態の技術的意義について説明する。純水製造システム1の本来の目的としては、EDI装置5から排出されるEDI処理後の処理水のホウ素濃度を低くしなければならない。一般に、EDI装置5に印加する電流を大きくすると、EDI装置5のホウ素除去率が高くなり、EDI処理後の処理水のホウ素濃度が低くなる。しかし、ホウ素除去率がある程度上昇すると、それ以上に印加電流を大きくしても、処理能力があまり向上せず、ホウ素除去率があまり上昇しない段階に到達することを、発明者は見出した。すなわち、EDI装置5のホウ素除去率がある閾値に達すると、印加電流をそれ以上大きくしてもホウ素除去率があまり上昇しないため、エネルギー効率が悪くなる。また、供給する電流を大きくするために消費電力が上昇し、コストが高くなるにもかかわらず、ホウ素除去の効果はさほど向上しないため、費用対効果に乏しくなる。すなわち、エネルギー効率および費用対効果が良好な状態でEDI装置5を作動させてホウ素を除去するためには、ホウ素除去率が閾値以下の範囲でEDI装置5を作動させることが好ましいことを見出した。そして、この閾値は、99.7%であることを実験的に見出した。
【0012】
このように、EDI装置5のホウ素除去率が閾値(99.7%)以下の場合に、EDI処理のエネルギー効率や費用対効果が優れていることが判明した。ただし、EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下になるようにEDI装置5の処理条件を調整すると、EDI装置5のホウ素除去の能力が低下する分、EDI処理後の処理水のホウ素濃度が高くなる可能性があり、純水製造システム1の本来の目的から逸脱するため好ましくない。そこで、EDI装置5を、ホウ素除去率が99.7%以下の範囲で作動させて高いエネルギー効率および高い費用対効果を実現させつつ、EDI処理後の処理水のホウ素濃度を低くすることが望ましい。EDI装置5で処理された処理水のホウ素濃度は50ng/L(ppt)以下であることが好ましく、比抵抗は17MΩ・cm以上であることが好ましい。従って、50ng/L(ppt)をホウ素濃度の規定値とし、17MΩ・cmを比抵抗の規定値とする。このような観点から、本発明では、EDI装置5自体の処理条件ではなく、EDI装置5の前段に位置するRO装置4の処理条件、例えばRO装置4の被処理水のpH、回収率、圧力、水温のいずれか1つ以上を制御することによって、EDI装置5のホウ素除去率を閾値(99.7%)以下とし、かつ、EDI装置5の処理水のホウ素濃度が規定値(50ng/L(ppt))以下で比抵抗が規定値(17MΩ・cm)以上になるように作動させる。なお、EDI装置5のホウ素除去の能力を維持するために、EDI装置5のホウ素除去率は90%以上であることが好ましい。仮にEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)より大きくなった場合には、EDI装置5に印加する電流を上げて運転する。ただし、その場合、EDI装置5の消費電力が閾値(350W・h/m3)を超えない範囲で、EDI装置5に印加する電流を上げる。
【0013】
図1に示す実施形態では、制御装置8が、測定装置6で算出されたEDI装置5のホウ素除去率が99.7%を超えたことを検知した場合に、RO装置4の被処理水のpHを調整して、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにする。具体的には、制御装置8がRO装置4の前段の薬液注入設備2からの薬液の注入量を制御して、RO装置4に供給される被処理水にpH調整剤(本実施例ではアルカリ剤)を注入してpHを上昇させる。これにより、RO装置4でのホウ素除去性能(ホウ素除去率)が向上するため、EDI装置5の印加電流が一定であるとEDI装置5の処理水のホウ素濃度が低下する。そこで、印加電流が一定である場合のEDI装置5の処理水のホウ素濃度の低下度合いに応じて、EDI装置5に印加する電流を下げて、EDI装置5のホウ素除去率を下げて運転することが可能になる。EDI装置5に印加する電流の調整は、制御装置8が行ってもよい。その場合は、例えば、制御装置8が、低下したEDI装置5の処理水のホウ素濃度と、ホウ素濃度の規定値との差分をとって、電流値を算出する。
【0014】
EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下になるように、薬液注入設備2からの薬液の注入量を制御することで、エネルギー効率および費用対効果が良好な状態でEDI装置5を作動させることができる。しかも、EDI装置5のホウ素除去率が、例えば99.5%以上、99.7%以下になるように、薬液注入設備2からの薬液の注入量を制御することで、RO装置4とEDI装置5とを含む純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持することができる。過剰なpH調整剤の注入は、EDI処理水の比抵抗低下や造水コスト増加につながるため、pHは9.2~10.0の範囲で調整されることが好ましい。なお、RO装置4に供給される被処理水にpH調整剤を注入してpHを上昇させても、RO装置4の他の処理条件(回収率、温度、圧力)が変化することはない。
【0015】
本発明の純水製造システムに含まれるRO装置4は、詳細には図示していないが、1本以上のRO膜エレメントが充てんされた圧力容器(ベッセル)を、単数、または複数組み合わせて使用するものである。圧力容器を複数組み合わせる場合の構成に制限はなく、複数の圧力容器を直列または並列に複数段組み合わせて構成されたものを用いてもよい。使用するRO膜エレメントの種類は、使用用途や被処理水質、求められる処理水質や回収率等に応じて、制限なく選択することができる。具体的には極超低圧型、超低圧型、低圧型、中圧型、高圧型のいずれのRO膜エレメントを用いてもよい。
【0016】
なお、EDI装置5は、イオン交換樹脂の再生を別途に行うことなく脱イオン水を製造できる装置である。具体的には、EDI装置5は、カチオン(陽イオン)のみを透過させるカチオン交換膜とアニオン(陰イオン)のみを透過させるアニオン交換膜との間にイオン交換樹脂などからなるイオン交換体(アニオン交換体及び/またはカチオン交換体)を充填して脱塩室を構成し、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に濃縮室を配置し、脱塩室とその両側の濃縮室とからなるものを基本構成としてこれを陽極と陰極との間に配置したものである。このEDI装置5は、陽極と陰極との間に電流を印加しつつ、脱塩室に被処理水を通水することによって運転されるものである。ただし、本発明においては、EDI装置5の具体的な構造については特に制限せず、どのようなものを用いてもよい。
【0017】
図2に示す本実施形態の変形例では、制御装置8が、測定装置6で算出されたEDI装置5のホウ素除去率が99.7%を超えたことを検知した場合に、RO装置4の回収率を調整して、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにする。具体的には、RO装置4の前段に接続されたポンプ3のインバータ値と、RO装置4に接続された背圧弁7とを調節して、RO装置4の回収率を高くする。例えば、ポンプ3のインバータ値を上げて背圧弁7を絞る、または、ポンプ3のインバータ値を変更させずに背圧弁7を絞る、またはポンプ3のインバータ値を上げて背圧弁7の開度は変更しないという方法で、RO装置4の回収率を高くする。RO装置4の回収率とは、RO装置4に供給される被処理水(原水)の量に対する、RO装置4を透過する処理水(透過水)の量の比である。この回収率を任意の幅で段階的に高くすることにより、RO装置4の処理水(透過水)中のイオン濃度が上昇し、それによってEDI装置5のホウ素除去率が下がる。また、EDI装置5のホウ素除去率が低くなった結果、EDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)より大きくなってしまったり、比抵抗が17MΩ・cmより小さくなってしまう場合には、逆にRO装置4の回収率を低くして、RO装置4の処理水中のイオン濃度を下げることで、EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下の状態で、処理水のホウ素濃度50ng/L(ppt)以下、比抵抗17MΩ・cm以上を維持することが可能になる。
【0018】
EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下になるように、ポンプ3のインバータ値と背圧弁7とを調節することで、エネルギー効率および費用対効果が良好な状態でEDI装置5を作動させることができる。しかも、EDI装置5のホウ素除去率が、例えば99.5%以上、99.7%以下になるように、ポンプ3のインバータ値と背圧弁7を制御することで、RO装置4とEDI装置5とを含む純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持することができる。なお、図2に示す純水製造システム1では、図1に示されているような薬液注入設備2は備えていなくてもよい。
【0019】
図2に示す本実施形態の変形例と同様な構成において、制御装置8が、測定装置6で算出されたEDI装置5のホウ素除去率が99.7%を超えたことを検知した場合に、RO装置4にかかる圧力を調整して、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにすることもできる。この実施例では、RO装置4の前段に接続されたポンプ3のインバータ値と、RO装置4に接続された背圧弁7とを調節して、RO装置4にかかる圧力を低くする。RO装置4にかかる圧力が低くなることにより、RO装置4の処理水中のイオン濃度が上昇し、それによってEDI装置5のホウ素除去率が低くなる。また、EDI装置5のホウ素除去率が低くなった結果、処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)より大きくなってしまったり、比抵抗が17MΩ・cmより小さくなってしまう場合には、逆にRO装置4にかかる圧力を高くして、RO装置4の処理水中のイオン濃度を下げることで、EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下の状態で、処理水のホウ素濃度50ng/L(ppt)以下、比抵抗17MΩ・cm以上を維持することが可能になる。
【0020】
EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下になるように、ポンプ3のインバータ値と背圧弁7とを調節することで、エネルギー効率および費用対効果が良好な状態でEDI装置5を作動させることができる。しかも、EDI装置5のホウ素除去率が、例えば99.5%以上、99.7%以下になるように、ポンプ3のインバータ値と背圧弁7を制御することで、RO装置4とEDI装置5とを含む純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持することができる。
【0021】
図3に示す本実施形態の変形例では、制御装置8が、測定装置6で算出されたEDI装置5のホウ素除去率が99.7%を超えたことを検知した場合に、RO装置4に供給される被処理水の水温を調整して、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにする。具体的には、純水製造システム1のポンプ3の前段に熱交換器9が接続され、熱交換器9に、熱源または冷却源の流入量を調節する弁10が接続されている。この純水製造システム1において、制御装置8が、測定装置6で算出されたEDI装置5のホウ素除去率が99.7%を超えたことを検知した場合に、制御装置8が、RO装置4の前段の熱交換器9に接続された弁10を調節して、熱交換器9に流入する熱源または冷却源の流入量を制御し、被処理水の水温を上昇させる。被処理水の水温が高くなることにより、RO装置4の処理水中のイオン濃度が上昇し、それによってEDI装置5のホウ素除去率が低くなる。また、EDI装置5のホウ素除去率が低くなった結果、処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)より大きくなってしまったり、比抵抗が17MΩ・cmより小さくなってしまう場合には、逆に被処理水の水温を低下させ、RO装置4の処理水中のイオン濃度を下げることで、EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下の状態で、処理水のホウ素濃度50ng/L(ppt)以下、比抵抗17MΩ・cm以上を維持することが可能になる。
【0022】
EDI装置5のホウ素除去率が99.7%以下になるように、熱交換器9に接続された弁10を調節することで、エネルギー効率および費用対効果が良好な状態でEDI装置5を作動させることができる。しかも、RO装置4とEDI装置5とを含む純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持することができる。図3に示す純水製造システム1では、図1に示されているような薬液注入設備2は備えていなくてもよい。
【0023】
本実施形態のうち、図1に示す実施形態の具体的な実施例と比較例の実験結果を表1に示している。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示す実施例1~4の実験結果によると、RO装置4に供給する被処理水のpHを高くして(pH=9.2~10.0)、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にすることで、EDI装置5の消費電力を低く抑えつつ(消費電力=155W・h/m3~193W・h/m3)、純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持できる(ホウ素除去率=99.8%~99.9%)。それにより、EDI装置5の処理水のホウ素濃度を低くすることができる(ホウ素濃度=20ppt~45ppt)。なお、表中に記載されているRO装置4の被処理水および処理水のNa濃度およびホウ素濃度の単位はμg/L(ppb)である。EDI装置5の処理水のホウ素濃度の単位はng/L(ppt)である。EDI装置5の消費電力は処理流量あたりの消費電力であって、以下の式に基づいて算出した数値(単位はW・h/m3)で示している。
EDI装置の処理流量あたりの消費電力=(電圧×電流)÷処理流量
【0026】
表1に示されている比較例1~2の実験結果によると、RO装置4に供給する被処理水のpHをEDI装置5のホウ素除去率と無関係に設定し、EDI装置5の電流設定値を高くして、ホウ素除去率が99.7%より大きくなった場合(ホウ素除去率=99.76%)に、EDI装置5の消費電力が高くなる(消費電力=353W・h/m3~394W・h/m3)。純水製造システム1全体のホウ素除去率は高いものの(ホウ素除去率=99.8%~99.9%)、EDI装置5の消費電力が高いため、エネルギー効率が低く、コスト高になる。また、比較例3は、ナトリウムリークのために比抵抗が低下しており、好ましくない。
【0027】
なお、表1に示す実施例1~4および比較例1~3におけるRO装置4の回収率は90%であって、実施例1~4のRO装置4のホウ素除去率は45%~77%である。比較例1~3のRO装置4のホウ素除去率は28%~81%である。
【0028】
本実施形態のうち、図2に示す実施形態の具体的な実施例と比較例の実験結果を、表2に示している。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示す実施例5~8の実験結果によると、RO装置4に供給する被処理水の回収率を高くして(回収率=60%~90%)、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にすることで、EDI装置5の消費電力を低く抑えつつ(消費電力=162W・h/m3~183W・h/m3)、純水製造システム1全体のホウ素除去率を高く維持することができる(ホウ素除去率=99.8%~99.9%)。
【0031】
表2に示されている比較例4ではRO装置4の回収率がEDI装置5のホウ素除去率と無関係に設定され、EDI装置5の処理水中のホウ素濃度が高く(ホウ素濃度=70ppt)、十分な処理水質を満たしていない。すなわち、比較例4の純水製造システムでは、高純度の純水を製造することができない。
【0032】
なお、表2に示す実施例5~8および比較例4におけるRO装置4に供給する被処理水のpHは9.2であって、実施例5~8のRO装置4のホウ素除去率は45%~60%である。比較例4のRO装置4のホウ素除去率は38%である。
【0033】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る純水製造システム1の概略構成図である。本実施形態の純水製造システム1は、複数のRO装置4A,4Bを有している。複数のRO装置4A,4Bは直列に接続され、前段のRO装置4Aの処理水が、後段のRO装置4Bで再度処理される構成である。RO装置の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。本実施形態の制御装置8は、第1の実施形態と同様にEDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにするための制御を、最後段のRO装置(図4に示す構成ではRO装置4B)を対象として行う。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態において、最後段のRO装置4Bの回収率または圧力または水温を制御することによって、EDI装置5を、ホウ素除去率が99.7%以下の範囲で作動させるようにしてもよい。
【0034】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る純水製造システム1の概略構成図である。本実施形態の純水製造システム1は、RO装置の前段に脱気装置(脱炭酸装置)11が設けられている。この構成では、図1に示す実施例と同様に、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にし、かつEDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるようにするためにRO装置の被処理水のpHを調整する前に、脱気装置11によって、被処理水中の溶存ガス、主に二酸化炭素を除去する。それにより、RO装置の被処理水のpHの調整(例えばpHを9.2~10.0にすること)をより精度良く行え、RO装置のホウ素除去率を正確に制御することができる。なお、図5に示すように、第2の実施形態と同様に複数のRO装置が設けられている場合には、最後段のRO装置(図5に示す構成ではRO装置4B)の前段に脱気装置11を配置し、最後段のRO装置(図5に示す構成ではRO装置4B)の被処理水のpHを調整することで、EDI装置5のホウ素除去率を99.7%以下にすればよい。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態において、最後段のRO装置4Bの回収率または圧力または水温を制御することによって、EDI装置5を、ホウ素除去率が99.7%以下の範囲で作動させるようにしてもよい。
【0035】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態に係る純水製造システム1の概略構成図である。本実施形態の純水製造システム1は、複数段(図示されている例では2段)のEDI装置5A,5Bを有している。複数のEDI装置5A,5Bは直列に配置され、前段のEDI装置5Aの処理水が、後段のEDI装置5Bで再度処理される構成である。EDI装置の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。本実施形態の制御装置8は、複数のEDI装置5A,5Bのそれぞれのホウ素除去率がいずれも閾値(99.7%)以下になり、かつ最後段のEDI装置5Bの処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるように、このEDI装置5Bの前段に位置するRO装置4の処理条件(例えば被処理水のpH)の制御を行う。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態において、RO装置4の回収率または圧力または水温を制御することによって、EDI装置5A,5Bを、ホウ素除去率が99.7%以下の範囲で作動させるようにしてもよい。また、複数のRO装置4を有し、各EDI装置5A,5Bの前段にそれぞれRO装置4が配置されている場合には、個々のEDI装置5A,5Bのそれぞれのホウ素除去率が99.7%以下になり、かつEDI装置5A,5Bのそれぞれの処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるように、各RO装置4の処理条件をそれぞれ個別に制御すればよい。また、EDI装置5A,5Bの後段にホウ素除去用の樹脂装置(図示せず)を設置して、処理水のホウ素濃度を一層低減することもできる。
【0036】
以上説明した第1~4の実施形態では、測定装置6が、EDI装置5に供給される被処理水のホウ素濃度と、EDI装置5から排出される処理水のホウ素濃度とを測定して、ホウ素除去率を求めている。しかし、EDI装置5の被処理水と処理水のホウ素濃度を別途測定して制御装置8に入力し、制御装置8がホウ素除去率を求める構成であってもよい。
【0037】
前述した第1~4の実施形態ではホウ素除去率が99.7%以下の範囲でEDI装置5を作動させるとともに、良好な処理水質が得られるようにRO装置4の処理条件を制御する。ホウ素濃度が20μg/L(ppb)~200μg/L(ppb)の原水をRO装置4に供給して処理した後にEDI装置5を透過させて得られた処理水が、ホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるように制御して、高純度な水質のEDI処理水を低コストで供給できる。EDI装置5のホウ素除去率と処理水質の両方を満足するように、RO装置4の処理水のpHと回収率と圧力と水温のうちの1つまたは複数を調整することができる。こうして、EDI処理による効率の良いホウ素除去が可能になり、低コストで高品質の純水を製造できる。特に、EDI装置5の前段に位置するRO装置4のホウ素除去率が40%~80%であると、EDI装置5の処理水中のホウ素が十分低減される。
【0038】
EDI装置5に供給する電流の大きさは、ホウ素除去率が99.7%以下になる範囲であれば、特に限定されない。ただし、電流値を低下させ過ぎるとEDI装置5の処理水の水質低下を招くので、EDI装置5の処理水の水質低下を生じないように電流値の下限値を決定することが好ましい。
【0039】
なお、本発明の純水製造システムによると、ホウ素濃度以外の水質、比抵抗、硬度、炭酸濃度、シリカ濃度等に関しても十分に低減することができる。例えばRO装置4の処理水中のシリカ濃度を0.5μg/L(ppb)~20μg/L(ppb)、EDI装置5の処理水中のシリカ濃度を50ng/L(ppt)以下にすることができる。このように、EDI装置5の被処理水に含まれている特定の物質の除去率を基準として、RO装置4の処理条件を制御すればよい。この特定の物質が、前述したようにホウ素であってもよく、シリカであってもよく、その他の物質であってもよい。
【0040】
[第5の実施形態]
図7は、本発明の第5の実施形態に係る純水製造システム1の概略構成図である。本実施形態の純水製造システム1は、図1に示す構成において、測定装置6の代わりに、電力測定装置12がEDI装置5に接続されている。そして、電力測定装置12が、EDI装置5の消費電力が350W・h/m3を超えたことを検知した場合に、制御装置8が、EDI装置5の前段に位置するRO装置4の処理条件(例えば被処理水のpH)の制御を行い、前述した図1に示す実施形態と同様にEDI装置5の消費電力を閾値(例えば350W・h/m3)以下にして、EDI装置5の処理水のホウ素濃度が50ng/L(ppt)以下で比抵抗が17MΩ・cm以上になるように調節する。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態において、制御装置8が、RO装置4の回収率または圧力または水温を制御することによって、EDI装置5の消費電力が350W・h/m3以下になるように調節することもできる。本実施形態でも、EDI装置5を透過した処理水のホウ素濃度を50ng/L(ppt)以下、比抵抗を17MΩ・cm以上にして、高純度な水質のEDI処理水を低コストで供給できる。電力測定装置12を用いる代わりに、EDI装置5に接続されている直流電源の表示値を読み込むことで、EDI装置5の消費電力が350W・h/m3以下になるように、EDI装置5の前段に位置するRO装置4の処理条件(例えば被処理水のpH)の制御を行うようにすることも可能である。
【0041】
なお、図2~6に示す構成においても、第5の実施形態と同様に、図示しないが測定装置6の代わりに電力測定装置12をEDI装置5に接続するか、あるいはEDI装置5に接続されている直流電源の表示値を読み込むことで、EDI装置5の消費電力が350W・h/m3以下になるように、EDI装置5の前段に位置するRO装置4の処理条件(例えば被処理水のpH)の制御を行うようにすることも可能である。
【0042】
本発明においてEDI装置5を消費電力350W・h/m3以下で運転する方法には、RO装置4の処理条件の制御を行った上で、EDI装置5に印加する電流を適切な大きさに調整することも含まれる。
【0043】
第3の実施形態と同様に本発明の純水製造システムに脱気装置11を設ける場合、脱気装置11の位置や数は任意に設定可能である。脱気装置11をRO装置4の前段に設置してもよく、さらにRO装置4の後段にも追加の脱気装置11を設置してもよい。RO装置4とEDI装置5との間に単段または複数段の脱気装置11を設置してもよい。また、EDI装置5の前段と後段とにそれぞれ単段または複数段の脱気装置11を設置してもよい。その他、本発明の純水製造システム1は、図示しないが、紫外線酸化装置や、カートリッジポリッシャー(CP)や、Pd触媒担持樹脂(パラジウムや白金などの白金族金属触媒が担持されたイオン交換樹脂)等を含んでいてもよい。また、制御装置8が制御するRO装置4の処理条件(被処理水のpH、回収率、圧力、被処理水の水温のうちの少なくとも1つ)に応じて、図1~7に示す構成のうち必要な部材を追加したり不要な部材を省略したりすることも可能である。
【0044】
以上説明した純水製造システム1は、独立したシステムとして用いられてもよいが、超純水製造システムの一部として用いられてもよい。例えば、超純水製造システムの前処理システムと二次純水製造システムとの間に位置する一次純水製造システムとして、本発明の純水製造システムを用いることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 純水製造システム
2 薬液注入設備
3 ポンプ
4,4A,4B 逆浸透膜装置(RO装置)
5,5A,5B 電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)
6 測定装置
7 背圧弁
8 制御装置
9 熱交換器
10 弁
11 脱気装置(脱炭酸装置)
12 電力測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7