(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060895
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】連続気泡シリコーンゴム部材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20220408BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28 CFH
F16J15/10 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168651
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 暢昭
【テーマコード(参考)】
3J040
4F074
【Fターム(参考)】
3J040EA16
3J040FA06
3J040HA30
4F074AA91M
4F074AA95M
4F074AC11
4F074AG14
4F074BB23
4F074BC05
4F074CB37
4F074CB47
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CC22X
4F074CC28Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA10
4F074DA13
4F074DA17
4F074DA23
4F074DA39
4F074DA43
4F074DA47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体透過性に優れ、防水性にも優れたシリコーンゴム組成物からなる連続気泡シリコーンゴム部材を提供する。
【解決手段】連続気泡シリコーンゴム部材であって、空隙率をα(単位:%)、連続気泡率をc(単位:%)、内部断面のセル1の総面積をS
1(単位:μm
2)、該内部断面に存在するセルの平均セル径をD
1(単位:μm)、該連続気泡シリコーンゴム部材を貫通する直線を想定し、貫通面のセルの総面積をS
2(単位:μm
2)、該貫通面に存在するセルの平均セル径をD
2(単位:μm)としたとき、下記(式1)を満たす、連続気泡シリコーンゴム部材。1.0×10
7≦α
2c
2D
2
2S
2/D
1S
1≦2.5×10
9・・(式1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続気泡シリコーンゴム部材であって、
空隙率をα(単位:%)、
連続気泡率をc(単位:%)、
内部断面のセルの総面積をS1(単位:μm2)、
該内部断面に存在するセルの平均セル径をD1(単位:μm)、
該連続気泡シリコーンゴム部材を貫通する直線を想定し、該直線の貫通面のセルの総面積をS2(単位:μm2)、
該貫通面に存在するセルの平均セル径をD2(単位:μm)
としたとき、下記(式1)を満たす、連続気泡シリコーンゴム部材。
1.0×107≦α2c2D2
2S2/D1S1≦2.5×109 ・・(式1)
【請求項2】
前記S1に対する前記S2の比の値(S2/S1)が0.8以上であり、かつ前記D1に対する前記D2の比の値(D2/D1)が0.8以上である、請求項1に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
【請求項3】
前記連続気泡シリコーンゴム部材がゴム栓状又はリング状であり、該ゴム栓状連続気泡シリコーン部材の場合は、前記直線が該ゴム栓の上下方向に貫通し、該リング状連続気泡シリコーン部材の場合は、前記貫通面が、該リングの外周面と内周面である、請求項1又は2に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
【請求項4】
前記連続気泡シリコーンゴム部材が、下記の条件にて決定される気体透過量が0.5mL/min・cm3以上、防水圧が1kPa以上である、請求項3に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
(条件)
(1)気体透過量:前記連続気泡シリコーンゴム部材の前記貫通面のうち一方を吸気面、他方を排気面とし、前記連続気泡シリコーンゴム部材を厚さ方向に30%の圧縮率で圧縮(70%の厚さとなるように圧縮)し、該吸気面に対して5kPaのエアー圧を加えた際、該排気面から出る気体の25℃における体積。
(2)防水圧:上記(1)の圧縮状態において、該吸気面に対して温度25℃、昇圧速度100±5kPa/minで水圧をかけた時、該排気面から漏水が生じる時点の水圧値。
【請求項5】
筐体用ガスケット、パッキン、又はゴムフィルターに用いる、請求項1~4のいずれかに記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気泡シリコーンゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に連続した気泡構造を有する発泡シリコーンゴムは、優れた耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性を有し、また電気絶縁特性や難燃性等の特殊な機能を付与でき、さらに連通気泡によって気泡抜け性も有することから、例えば電気、電子、機械、自動車産業などで広く使用されている。
例えば特許文献1には、厚み10~3000μm、連続気泡率90%以上、平均セル径1~50μm、全セルの90%以上のセル径が80μm以下であるシリコーン発泡シートが記載され、このシリコーン発泡シートが優れた気泡抜け性を発現し、被着体との密着性やシール性等も良好であることが記載されている。
また特許文献2には、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物、熱により膨張可能な未膨張有機樹脂製の微小フィラー又は膨張有機樹脂製の微小中空フィラー、及び多価アルコールとその誘導体の一種又は二種以上を各特定量含有するシリコーンゴム材料を用いて成形した、絶縁性の連泡シリコーン発泡体からなる弾性シールガスケットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2017/110681号
【特許文献2】特開2003-194229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載のシリコーン発泡シートは、内部に比べて表層のセルの数が少なく、さらに表面に開口しているセルの数も少なく、それゆえ表面で気体の出入りが阻害されて、気体透過性が十分とはいえないことがわかってきた。
また特許文献2の弾性シールガスケットに用いられているゴムは、微小バルーン(φ10~200μm)によりセルが形成されているが、このセル径の範囲では霧などの微小な水滴(平均100μm)よりもセル径が大きく、十分な防水性が得られない。また、注型法により成型される同ゴム部材は、特許文献1に記載のシリコーン発泡シートと同様に、表層のセルの数が少なく、さらに表面に開口しているセルの数も少ないため、やはり十分な気体透過性が得られない。
【0005】
本発明は、気体透過性に優れ、防水性にも優れた連続気泡シリコーンゴム部材(連通気泡を有するシリコーンゴム部材)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
[1]
連続気泡シリコーンゴム部材であって、
空隙率をα(単位:%)、
連続気泡率をc(単位:%)、
内部断面のセルの総面積をS1(単位:μm2)、
該内部断面に存在するセルの平均セル径をD1(単位:μm)、
該連続気泡シリコーンゴム部材を貫通する直線を想定し、該直線の貫通面のセルの総面積をS2(単位:μm2)、
該貫通面に存在するセルの平均セル径をD2(単位:μm)
としたとき、下記(式1)を満たす、連続気泡シリコーンゴム部材。
1.0×107≦α2c2D2
2S2/D1S1≦2.5×109 ・・(式1)
[2]
前記S1に対する前記S2の比の値(S2/S1)が0.8以上であり、かつ前記D1に対する前記D2の比の値(D2/D1)が0.8以上である、前記[1]に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
[3]
前記連続気泡シリコーンゴム部材がゴム栓状又はリング状であり、該ゴム栓状連続気泡シリコーン部材の場合は、前記直線が該ゴム栓の上下方向に貫通し、該リング状連続気泡シリコーン部材の場合は、前記貫通面が、該リングの外周面と内周面である、前記[1]又は[2]に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
[4]
前記連続気泡シリコーンゴム部材が、下記の条件にて決定される気体透過量が0.5mL/min・cm3以上、防水圧が1kPa以上である、前記[3]に記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
(条件)
(1)気体透過量:前記連続気泡シリコーンゴム部材の前記貫通面のうち一方を吸気面、他方を排気面とし、前記連続気泡シリコーンゴム部材を厚さ方向に30%の圧縮率で圧縮(70%の厚さとなるように圧縮)し、該吸気面に対して5kPaのエアー圧を加えた際、該排気面から出る気体の25℃における体積。
(2)防水圧:上記(1)の圧縮状態において、該吸気面に対して温度25℃、昇圧速度100±5kPa/minで水圧をかけた時、該排気面から漏水が生じる時点の水圧値。
[5]
筐体用ガスケット、パッキン、又はゴムフィルターに用いる、前記[1]~[4]のいずれかに記載の連続気泡シリコーンゴム部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の連続気泡シリコーンゴム部材は、部材内部に連続気泡構造を有し、気体透過性に優れ、かつ防水性にも優れたシリコーンゴム部材である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の連続気泡シリコーンゴム部材の内部断面を3D測定レーザー顕微鏡で撮影した図面代用写真である。
【
図2】
図2は、本発明の連続気泡シリコーンゴム部材の吸排気面(貫通面)を3D測定レーザー顕微鏡で撮影した図面代用写真である。
【
図3】
図3は、内部断面の平均セル径D
1と気体透過量との関係を示したグラフである。
【
図4】
図4は、内部断面の平均セル径D
1の逆数と防水圧との関係を示したグラフである。
【
図5】
図5は、内部断面の平均セル径D
1に対する吸排気面の平均セル径D
2の比の値と、気体透過量との関係を示したグラフである。
【
図6】
図6は、吸排気面の平均セル径D
2の二乗に対する内部断面の平均セル径D
1の二乗の値の比の値と、防水圧との関係を示したグラフである。
【
図7】
図7は、空隙率αと気体透過量との関係を示したグラフである。
【
図8】
図8は、空隙率αの二乗の逆数と防水圧との関係を示したグラフである。
【
図9】
図9は、連続気泡率cと気体透過量との関係を示したグラフである。
【
図10】
図10は、連続気泡率cの二乗の逆数と防水圧との関係を示したグラフである。
【
図11】
図11は、内部断面の単位面積あたりに占めるセルの総面積S
1に対する吸排気面の単位面積あたりに占めるセルの総面積S
2の比の値と、気体透過量との関係を示したグラフである。
【
図12】
図12は、吸排気面の単位面積あたりに占めるセルの総面積S
2に対する内部断面の単位面積あたりに占めるセルの総面積S
1の比の値と、防水圧との関係を示したグラフである。
【
図13】
図13は、気体透過性試験の測定方法を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、防水性試験の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の連続気泡シリコーンゴム部材の好ましい実施形態について説明する。
本発明の連続気泡シリコーンゴム部材(以下、「本発明のシリコーンゴム部材」とも称す。)は、連続気泡構造を有するシリコーンゴム部材である。すなわち、本発明のシリコーンゴム部材は、隣接する気泡(以下、気泡をセルとも称す。)間に貫通孔を有する連続気泡構造を有する。
【0010】
本発明のシリコーンゴム部材は、空隙率をα(単位:%)、連続気泡率をc(単位:%)、内部断面のセルの総面積をS1(単位:μm2)、該内部断面に存在するセルの平均セル径をD1(単位:μm)、該連続気泡シリコーンゴム部材を貫通する直線を想定し、この直線の貫通面のセルの総面積をS2(単位:μm2)、該貫通面に存在するセルの平均セル径をD2(単位:μm)としたとき、下記(式1)を満たす、連続気泡シリコーンゴム部材である。
1.0×107≦α2c2D2
2S2/D1S1≦2.5×109 ・・(式1)
なお、部材を貫通する直線を想定したとき、無数の直線を想定することができるが、少なくとも1つの直線において上記(式1)を満たせば、(式1)を満たす部材である。
【0011】
本発明においてセルの形状は特に制限されず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に設計される。例えば、本発明のシリコーンゴム部材の断面の平面視において、円形、楕円形、細長い楕円形のような略楕円形、略円弧を相向い合せてなるような鋭角を両端に有するような長い楕円状の形状であってもよい。
【0012】
本発明において、シリコーンゴム部材の内部に存在するセルが大きくなると、シリコーンゴム部材内部の気体の流通経路の幅が広くなり、気体透過性が向上する。本発明のシリコーンゴム部材の内部断面に存在するセルの平均セル径をD
1(μm)としたとき、D
1と気体透過量との関係は、
図3に示す通り正比例の関係にある。
図3の同一直線上の各プロットにおいて、α、c、D
2、S
1、S
2は同じである。
また、本発明において、シリコーンゴム部材の内部に存在するセルが大きくなると、シリコーンゴム部材内部の水の流通経路の幅が広くなり、水透過性も高まるために防水性は低下する。そのため、内部断面の平均セル径D
1の逆数と防水圧との関係は、
図4に示す通り正比例の関係にある。
図4の同一直線上の各プロットにおいて、α、c、D
2、S
1、S
2は同じである。
内部断面の平均セル径D
1は実施例に記載の方法により決定できる。このことは、後述するα、c、S
1、S
2、D
2についても同様である。また、気体透過量及び防水圧は、例えば、実施例に記載の方法により検証することができる。
【0013】
本発明において内部断面の平均セル径D1(μm)は、本発明のシリコーンゴム部材における気泡透過率の向上と防水性の向上とを両立させる観点から、1μm以上60μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましく、10μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明のシリコーンゴム部材において、この部材を貫通する直線を想定し、直線の貫通面に存在するセルの平均セル径をD
2(μm)としたとき、D
1に対するD
2の比の値(D
2/D
1)と気体透過量との関係は、
図5に示す通り、指数関数的な正の相関を示す。
図5の同一線上の各プロットにおいて、α、c、S
1、S
2は同じである。ここで、部材を貫通する1つの直線に対して貫通面は2つ存在する。したがって、「貫通面のセルの平均セル径」は、2つの貫通面のセルの平均セル径である。なお、一方の貫通面のセルの平均セル径D
2aと、他方の貫通面の平均セル径D
2bとは実質的に同じであることが好ましい。すなわち、D
2aは、0.8×D
2b(μm)以上、1.2×D
2b(μm)以下の範囲内にあることが好ましく、0.9×D
2b(μm)以上、1.1×D
2b(μm)以下の範囲内にあることがより好ましい。D
2a、D
2bは、貫通面を、当該貫通面を導く上記直線方向に平面視した状態において決定される。
また、貫通面に存在するセルが小さくなると、シリコーンゴム部材内部へと水が流入しにくくなるため、防水性が向上する。D
1
2/D
2
2と防水圧との関係は、
図6に示す通り正比例の関係にある。
図6の同一直線上の各プロットにおいて、α、c、S
1、S
2は同じである。
本発明においてD
1やD
2を決定するための観察面積は、平均セル径が十分に正確に算出できる面積であればよく、例えば、後述する実施例に示す通り観察面積を650μm×650μmとすれば、断面ないし貫通面におけるセル全体の平均径を正確に反映したものとみなすことができる。
【0015】
本発明においてD2/D1は、本発明のシリコーンゴム部材における気泡透過性をより向上させる観点から、0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。防水性を考慮すると、D2/D1は1以下が好ましく、0.98以下がより好ましく、0.95以下がさらに好ましい。
【0016】
また、本発明のシリコーンゴム部材中の空隙の割合(空隙率α(%))と気体透過量との関係は、
図7に示す通り指数関数的な正の相関を示す。
図7の同一線上の各プロットにおいて、c、D
1、D
2、S
1、S
2は同じである。
本発明のシリコーンゴム部材が有する空隙率αが大きくなると、シリコーンゴム部材内部の水の流通経路が増大するため、防水性は低下する。空隙率αの二乗の逆数(1/α
2)と防水圧との関係は、
図8に示す通り正比例の関係にある。
図8の同一直線上の各プロットにおいて、c、D
1、D
2、S
1、S
2は同じである。
【0017】
本発明のシリコーンゴム部材の空隙率α(%)は、本発明のシリコーンゴム部材における気泡透過性の向上と防水性の向上とを両立させる観点から、40%以上70%以下であることが好ましく、45%以上66%以下であることがより好ましく、50%以上66%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明のシリコーンゴム部材の連続気泡率c(%)は、本発明のシリコーンゴム中に存在するセルの連通度合を示すパラメータである。
連続気泡率cが低下すると、気体の透過経路が部分的に閉塞して気体の出入りが阻害され、気体透過性が低下する。そのため連続気泡率cと気体透過量との関係は、
図9に示す通り指数関数的な正の相関を示す。
図9の同一線上の各プロットにおいて、α、D
1、D
2、S
1、S
2は同じである。
また、連続気泡率cが低下するとシリコーンゴム部材内部の通過経路は部分的な閉塞により複雑化し、水の侵入と通過が妨げられて防水性が向上する。連続気泡率cの二乗の逆数(1/c
2)と防水圧との関係は、
図10に示す通り正比例の関係にある。
図10の同一直線上の各プロットにおいて、α、D
1、D
2、S
1、S
2は同じである。
【0019】
本発明のシリコーンゴム部材の連続気泡率c(%)は、本発明のシリコーンゴム部材における気泡透過性の向上と防水性の向上とを両立させる観点から、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、94%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のシリコーンゴム部材において、その内部断面のセルの総面積をS
1(μm
2)とし、上記D
2を決定した貫通面のセルの総面積をS
2(μm
2)とする。ここで、部材を貫通する1つの直線に対して貫通面は2つ存在する。したがって、「貫通面のセルの総面積」は、2つの貫通面の各々におけるセルの総面積の平均(平均総面積)である。なお、一方の貫通面のセルの総面積S
2aと、他方の貫通面の総面積S
2bとは実質的に同じであることが好ましい。すなわち、S
2aは、0.8×S
2b(μm
2)以上、1.2×S
2b(μm
2)以下の範囲内にあることが好ましく、0.9×S
2b(μm
2)以上、1.1×S
2b(μm
2)以下の範囲内にあることがより好ましい。S
2a、S
2bは、貫通面を、当該貫通面を導く上記直線方向に平面視した状態において決定される。
本発明においてS
1やS
2を決定するための観察面積は、セル総面積が十分に正確に算出できる面積であり、例えば、後述する実施例に示す通り観察面積を250μm×250μm(62500μm
2)とすれば、観察面におけるセル総面積を正確に反映したものとみなすことができる。なお、S
1を決定するための観察面積とS
2を決定するための観察面積とは、同じである。
S
1とS
2の値が同等であるか、S
1に比べてS
2が大きい場合は、気体透過性が向上する。そのためS
2/S
1の値と気体透過量との関係は、
図11に示す通り正比例の関係にある。
図11の同一直線上の各プロットにおいて、α、c、D
1、D
2は同じである。
また、S
2に比べてS
1が大きい場合(内部に比べて吸排気面に開口したセルの割合が少ない場合)は、水の侵入が抑制されるため防水性が向上する。そのためS
1/S
2の値と防水圧との関係は、
図12に示す通り正比例の関係にある。
図12の同一直線上の各プロットにおいて、α、c、D
1、D
2は同じである。
【0021】
本発明においてS2/S1の値は、本発明のシリコーンゴム部材における気体透過性を向上させる観点から、0.8以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることがよりさらに好ましい。
【0022】
本発明の上記(式1)は、上記各パラメータと気体透過性や防水性との関係に基づき構築したものである。
すなわち、気体透過性に関して、上記各グラフに示されたパラメータの関係を掛け合わせると次の(式I)で表すことができる。
(式I)
D1×(D2/D1)2×α2×c2×(S2/S1)=α2c2D2
2S2/D1S1
また、防水圧に関して、上記各グラフに示されたパラメータの関係を掛け合わせると次の(式II)で表すことができる。
(式II)
(1/D1)×(D1
2/D2
2)×(1/α2)×(1/c2)×(S1/S2)=D1S1/α2c2D2
2S2
そして、後述する実施例で示す通り、(式I)の値を1.0×107以上へと制御することにより、十分に高い気体透過性を実現することができる。また、後述する実施例で示す通り、(式II)の値を4.0×10-10以上とすることにより、十分に高い防水性を実現することができる。これらを式に表すと次の通りである。
(式Ia)
1.0×107≦α2c2D2
2S2/D1S1
(式IIa)
4.0×10-10≦D1S1/α2c2D2
2S2
(式IIa)の両辺の逆数をとると、
(式IIb)
α2c2D2
2S2/D1S1≦2.5×109
(式Ia)と(式IIb)から下記の(式1)が導かれる。
1.0×107≦α2c2D2
2S2/D1S1≦2.5×109 ・・(式1)
【0023】
本発明においてα2c2D2
2S2/D1S1の値は、気体透過性を向上させる観点から、5.0×107以上であることが好ましく、1.0×108以上であることがより好ましく、2.3×108以上であることがさらに好ましく、2.5×108以上であることがさらにより好ましい。
また本発明において、α2c2D2
2S2/D1S1の値は、防水性を向上させる観点から、2.0×109以下であることが好ましく、1.0×109以下であることがより好ましく、8.0×108以下であることがさらに好ましく、7.0×108以下であることがさらにより好ましい。
【0024】
本発明の連続気泡シリコーンゴム部材を構成する成分は、上記(式1)の範囲を満たすシリコーンゴム部材が得られれば、本発明の効果を妨げない範囲で適宜決定することができる。
【0025】
本発明のシリコーンゴム部材は、例えば
(A)シリコーンポリマー、
(B)水と有機系増粘剤からなる増粘水、
(C)HLB値が3以上のノニオン系界面活性剤、及び
(D)硬化剤および硬化触媒
を混合し、硬化反応させ、次いで発泡させることにより得ることができる。例えば、(A)~(C)を電動ドリル式ブレードミキサーなどで数分間撹拌して(A)のシリコーンポリマー中に水を乳化分散する。次いで、(D)硬化剤および硬化触媒を配合して短時間撹拌してから減圧下で所望のレベルまで脱泡する。この液状コンパウンドを金型に投入し、70℃程度で熱硬化した後、熱風オーブン等を用いて高温下に長時間晒して内部の水を揮発させることにより、所望の形状の連続気泡シリコーンゴム部材を得ることができる。上記の調製において、発泡条件を制御したり、得られた連続気泡シリコーンゴム部材の表面を研磨したりカットしたりして表面に露出する気泡径を大きくする処理をすることにより、上記(式1)を満たす形態を実現することができる。
【0026】
また、例えば、上記の(A)シリコーンポリマー、及び(D)硬化剤および硬化触媒とともに、
(E)熱により膨張可能な未膨張樹脂バルーン、または既膨張樹脂バルーン、及び
(F)多価アルコール化合物
を混合し、硬化反応させ、次いで発泡させることにより得ることができる。例えば、(E)のバルーンをチャック付きのポリ袋に入れ、これに(F)を入れて、チャックを閉じて袋の外側から手もみして両成分を均一化する。次いで、この混合物と(A)シリコーンポリマーとを混合し、さらに(D)硬化剤および硬化触媒を混合した後、減圧下で所望のレベルまで脱泡する。この液状コンパウンドを金型に投入し、70℃程度で熱硬化した後、熱風オーブン等を用いて高温下に長時間晒して樹脂バルーンを熱収縮させるとともに多価アルコール化合物を揮発させることにより、所望の形状の連続気泡シリコーンゴム部材を得ることができる。得られた連続気泡シリコーンゴム部材の表面を研磨したりカットしたりして表面に露出する気泡径を大きくする処理をするなどして、上記(式1)を満たす形態を実現することができる。
上記(A)~(F)や後述する任意成分は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下に、本発明のシリコーンゴム部材の調製に用いる上記各原料について説明する。
【0027】
<(A)シリコーンポリマー>
本発明のシリコーンゴム部材は、ベースポリマーを構成する成分として、液状シリコーン樹脂を含むことが好ましい。このような液状シリコーン樹脂は、炭素-炭素不飽和結合(エチレン性不飽和結合)を有するものが好ましい。液状シリコーン樹脂の具体例として、例えばLSR7005、LSR7030、LSR7060、LSR7070、LSR7080、LSR7090、XE15-C4881(Base)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、DY35-9320(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0028】
<(B)水と有機系増粘剤からなる増粘水>
本発明のシリコーンゴム部材の調製に当たり、(B)水と有機系増粘剤からなる増粘水を配合することにより、水の粘度を増加させて乳化を促進ないし乳化物の安定性を向上させることができる。有機系増粘剤としては、天然系、合成系、半合成系の有機系増粘剤が知られている。
本発明に好適に用い得る天然系の有機系増粘剤としては、例えば多糖類のグァーガムやローカストビーンガムが挙げられ、具体的にはグァーガムRG100、ソアローカストA200(いずれも、三菱ケミカルフーズ株式会社製)、PROCOLU-SC(ソマール株式会社製)等が挙げられる。
また本発明に好適に用い得る合成系の有機系増粘剤としては、例えばアクリル系ポリマーやポリエチレンオキサイドなどが挙げられ、具体的にはAQUPEC HU C2002、PEO-1、PEO-2、PEO-3、PEO-4、PEO-8(全て、住友精化株式会社製)等が挙げられる。
また本発明に好適に用い得る半合成系の有機系増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、具体的には例えばHEC CF-V、HEC CF-Y(全て、住友精化株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
上記増粘水は、上記有機系増粘剤を、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.1~1.0質量%となるように水に溶解することで得ることができる。
溶媒となる水としては、例えばイオン交換水など、この技術分野において一般的な水を用いることができる。
【0030】
<(C)HLB値が3以上のノニオン系界面活性剤>
(C)HLB値が3以上のノニオン系界面活性剤は、シリコーンポリマーと水とを乳化分散させる働きを担う。このノニオン系界面活性剤のHLB値は3以上であることが好ましく、より好ましくは3以上8以下であり、さらに好ましくは3以上6以下である。
このようなノニオン系界面活性剤としては、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルや脂肪酸ソルビタンエステルなどが挙げられる。具体例として、例えば、KF-945、KF-6015、KF-6017、KF-6020(いずれも信越化学工業株式会社製)、レオドールSP-S10V、SP-O30V、AS-10V、AO-10V、AO-15V(いずれも花王株式会社)等が挙げられる。
【0031】
<(D)硬化剤および硬化触媒>
(D)硬化剤および硬化触媒は、シリコーンポリマーに架橋構造を導入して、得られる連続気泡シリコーンゴムに所望の弾性を付与するために用いられる。
硬化剤としては、例えば、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)を有するシリコーンオイルなどが挙げられる。このヒドロシリル基は、(A)のシリコーンポリマーが有する炭素-炭素不飽和結合との間でヒドロシリル化反応を生じる。1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するシリコーンオイルとしては、例えばXE15-C4881(B2)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
硬化触媒は、上記のヒドロシリル化反応の触媒として作用する。例えば、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属化合物が挙げられる。このような硬化触媒は、例えばXE15-C4881(A2)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等として市販されている。
【0032】
<(E)熱により膨張可能な未膨張樹脂バルーン、または既膨張樹脂バルーン>
熱により膨張可能な未膨張樹脂バルーン又は既膨張樹脂バルーンは、シリコーンゴム部材内部にセルを形成するために配合する。このようなバルーンとしては、例えばアクリロニトリル系コポリマーでできたシェルの内部に炭化水素を内包したものなどが挙げられ、具体的には未膨張型であればマツモトマイクロスフェアーFN-100SSD、F-65D、FN-80GSD(以上、松本油脂製薬株式会社製)、既膨張型であればマツモトマイクロスフェアーFN-80SDE、F-65DE、F-80DE(以上、松本油脂製薬株式会社製)を用いることができる。
未膨張樹脂バルーンはゴムの硬化工程において熱がかかることで膨張し、その後、より高温の処理に付すことで熱収縮してゴム内部にセルを形成する。一方、既膨張樹脂バルーンはゴムの硬化工程前に既に膨張しており、その後、高温での熱処理が加えられると熱収縮して、ゴム内部にセルを形成する。
【0033】
<(F)多価アルコール化合物>
(F)多価アルコール化合物は、多価アルコール又はその誘導体であってもよい。本発明において、多価アルコール化合物は未膨張バルーンや既膨張バルーンにより形成されるセルを連続化(連通)させるために用いられる。このような多価アルコール化合物としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセリン‐α‐モノクロロヒドリン等や、これらのオリゴマーまたはポリマー(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等)を使用することができる。これらの多価アルコール化合物は一般的に親水性を有する化合物であるが、ゴム成型後の熱処理工程において揮発するため、発泡ゴムのセル内部および内周面に残留して撥水性を損なうことがなく、良好な防水性が得られる。
【0034】
また本発明のシリコーンゴム部材は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を配合することができる。このような成分としては、例えば着色剤、カーボンブラックやシリカ等の充填材、硬化遅延剤、耐熱添加剤、可塑剤などが挙げられる。
【0035】
本発明のシリコーンゴム部材の形状は特に制限されず、使用目的に応じて適宜に設計される。例えば、ゴム栓形状として、ゴム栓の上部から下部へと貫通する直線を想定したときに、当該直線の貫通面(すなわちゴム栓の上面と下面)からS2とD2を決定して、また内部断面からゴム栓内部のS1とD1を決定して、(式1)を満たす形態とすることができる。なお、ゴム栓の上下方向とは、例えばワインのコルク栓のような略円柱状のゴム栓を想定したとき、略円柱状の柱の上下方向である。
ここで、本発明において、上記の内部断面におけるS1とD1の決定に当たり、内部断面の観察面積は、内部断面の中心部分とし、表層部分はS1とD1の決定に入り込まないようにする。具体的には、内部断面の周囲から内側に向けて100μmの範囲は、S1とD1の決定に入り込まないようにする。また、内部断面は、上記の想定した直線の、2つの貫通面の中間(中央)地点における、当該直線に対して垂直な断面とする。
【0036】
本発明のシリコーンゴム部材の形状は、シート状とすることも好ましい。シートの面方向(シートの厚み方向に対して垂直方向)に向けてシート内部を貫通する直線を想定したとき、当該直線の貫通面(すなわち2つの壁面)からS2とD2を決定して、また内部断面からシート内部のS1とD1を決定して、(式1)を満たす形態とすることができる。
ガスケットやパッキンなどを想定した場合、本発明のシリコーンゴム部材は、リング状であることも好ましい。この場合、上記の貫通面は、リングの外周面と内周面となる。
【0037】
一般的に、注型法により成形される発泡シリコーンゴム部材の表面には、内部に比べて発泡割合が低くなる層(スキン層)が形成される。本発明のシリコーンゴム部材は、スキン層を形成しないこと又はスキン層を除去することが好ましい。例えば、注型法により成形されたシリコーンゴム部材の表面を研磨することや、成形されたシリコーンゴムシートを打ち抜くことによって、スキン層を有しないシリコーンゴム部材に調製することが好ましい。
【0038】
本発明のシリコーンゴム部材がゴム栓形状である場合、その大きさは本発明の効果を妨げない範囲で適宜決定することができる。例えば、該ゴム栓形状が略円柱状の形状である場合、縦0.5~5.0cm、半径0.3~2.0cmのゴム栓形状であることが好ましく、縦1.0~2.5cm、半径0.5~1.5cmのゴム栓形状であることがより好ましい。
また、本発明のシリコーンゴム部材がシート形状である場合、その大きさは本発明の効果を妨げない範囲で適宜決定することができる。本発明のシリコーンゴム部材における気泡透過性の向上と防水性の向上とを両立させる観点から、該シート形状の厚みは0.3~10.0mmであることが好ましく、1.0~5.0mmであることがより好ましい。また、該シート形状がさらにリング状である場合、その外径は15~300mmであることが好ましく、50~150mmであることがより好ましい。またその内径は10~295mmであることが好ましく、45~145mmであることがより好ましい。また、リング状は角リング状であることも好ましく、この場合の内周の径と外周の径も、使用目的、適用対象に応じ、適宜に設計することができる。
【0039】
本発明のシリコーンゴム部材は、以下の物性を有することが好ましい。
【0040】
本発明のシリコーンゴム部材の硬さは、使用目的に応じて適宜調整することができる。例えば、筐体シール用途のように圧縮状態で使用する場合には、ゴム内部の連続化したセルを通って漏れる時の防水圧よりも、連続気泡シリコーンゴムとシール相手部材との界面から水が漏れる時の防水圧が高くなるよう、十分な圧縮反力が得られる硬さであることが好ましい。本発明のシリコーンゴム部材の硬さは、Asker C硬度において20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることがさらに好ましい。本発明のシリコーンゴム部材の硬さは、例えば実施例に記載の方法によって計測することができる。
【0041】
本発明のシリコーンゴムの伸び、及び引張破断強度は使用目的に応じて適宜調整することができるが、好ましくは伸びが50%以上(1.5倍以上)、引張破断強度が0.5MPa以上である。本発明のシリコーンゴム部材の伸び、及び引張破断強度は、例えば実施例に記載の方法によって計測することができる。
【0042】
本発明の連続気泡シリコーンゴムの圧縮永久歪は使用目的に応じて適宜調整することができるが、例えばシール用途で用いる場合、25%圧縮を加えて80℃で72時間の熱負荷を与えた時の永久歪率が好ましくは35%以下、より好ましくは20%以下である。本発明の圧縮永久歪は、例えば実施例に記載の方法によって計測することができる。
【0043】
本発明のシリコーンゴム部材は、上記(式1)を満たすことにより、優れた気体透過性を示す。例えば、本発明のシリコーンゴム部材がシート状である場合、該シリコーンゴム部材の厚みを30%の圧縮率で圧縮(70%の厚さとなるように圧縮)し、該吸気面に対して5kPaのエアー圧を加えたときに、気体透過量が0.5mL/min・cm
3以上であることが好ましく、より5mL/min・cm
3以上であることがより好ましく、50mL/min・cm
3以上であることがさらに好ましい。
本発明のシリコーンゴム部材に対する気体透過量は、シリコーンゴム部材がシート状かつリング状の場合を例にとると、例えば
図13に示す実験の概略図を参考に、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0044】
また本発明のシリコーンゴム部材は、上記(式1)を満たすことにより、優れた防水性を示す。例えば、本発明のシリコーンゴム部材がシート状である場合、該シリコーンゴム部材の厚みを30%の圧縮率で圧縮(70%の厚さとなるように圧縮)し、該吸気面に対して昇圧速度100±5kPa/minで水圧をかけた時、該排気面から漏水が起こる時点の水圧値が1kPa以上であることが好ましく、10kPa以上であることがより好ましく、50kPa以上であることがさらに好ましい。
本発明のシリコーンゴム部材に対する気体透過量は、例えば
図14に示す実験の概略図を参考に、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0045】
本発明のシリコーンゴム部材の用途は特に限定されない。好ましい適用例として、例えば自動車用電子部品を囲う防水筐体のパッキン、ガスケットおよびゴムフィルター(ゴム栓)として使用するのに好適である。これらの防水筐体内部では電子部品の発熱によるこもり熱や内圧上昇が生じやすいため、内部の電子部品に動作異常や寿命の低下などの不具合が引き起こされる。この問題に対して、筐体に本発明の連続気泡シリコーンゴムからなるパッキン、ガスケットあるいはゴムフィルターを取り付けると、筐体内外で空気が出入りできるため、上記問題の発生を回避することができる。一方で、同部材は高い防水圧を有するため、被水しても内部へ水が侵入するのを防ぐことができる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
[実施例1~11及び比較例1~3]
本実施例で用いる実施例1~11及び比較例1~3のシリコーンゴム部材は、それぞれ下記の方法によって作製した。
【0048】
[実施例1]
液状シリコーンベースポリマー(品名:Silopren液状シリコーンゴム、型番:LSR7060、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100重量部に対して、増粘剤(型番:CF-Y、住友精化株式会社製)を0.3重量%含有するよう調製したイオン交換水(増粘水)を80重量部、界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル、品名:KF-6017、信越化学工業株式会社製)を8.0重量部加え、電動ドリル式ブレードミキサーにて10分間撹拌して乳化した。得られた乳化物に、硬化触媒(型番:XE15-C4881(A2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製製)を6.0重量部、及び硬化剤(型番:XE15-C4881(B2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を1.5重量部となるように加えてさらに3分間撹拌し、その後減圧下(0.001MPa)で3分間脱泡した。このようにして得られた液状コンパウンドを、得られる成型物が内径φ16mm、外径φ21mm、厚み3mmの角リング型となるように金型を用いて70℃で30分間熱硬化させ、次いで熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間熱処理をすることによりセル内部の水を揮発させた。その後、リング内外周面の各表層30μmを研磨機を用いて研磨することで、気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片を得た。
また、上記と同一のシリコーンポリマー、増粘水、界面活性剤、硬化剤および硬化触媒を、上記と同一の組成となるようにヘラを用いて均一になるまで混合撹拌し、それぞれ厚さ2mm、3mm、及び9mmのシート形状となるよう、表面が平滑な金型を用いて70℃で30分間加熱硬化させ、その後熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間の熱処理を加えた。こうして、硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片をそれぞれ得た。
【0049】
[実施例2]
液状シリコーンベースポリマー(品名:Silopren液状シリコーンゴム、型番:LSR7060、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100重量部に対して、増粘剤(型番:CF-Y、住友精化株式会社製)を0.3wt%含有するよう調製したイオン交換水(増粘水)を80重量部、界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンオイル、品名:KF-6017、信越化学工業株式会社製)を5.0重量部加え、電動ドリル式ブレードミキサーにて10分間撹拌して乳化した。得られた乳化物に、硬化触媒(型番:XE15-C4881(A2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製製)を6.0重量部、及び硬化剤(型番:XE15-C4881(B2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を1.5重量部となるように加えてさらに3分間撹拌し、その後減圧下(0.001MPa)で3分間脱泡した。このようにして得られた液状コンパウンドを、厚さ3mmのシート形状となるよう表面が平滑な金型に流しいれ、70℃で30分間熱硬化させ、次いで熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間熱処理をすることによりセル内部の水を揮発させた。その後、得られたシートを内径φ16mm、外径φ21mmの打ち抜き刃にて同心円状に打ち抜くことで、気体透過性および防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片を得た。
なお、硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片については、上記液状コンパウンドを、それぞれ厚さ2mm、3mm、及び9mmのシート形状となるように表面が平滑な金型に流し入れ、70℃で30分間加熱硬化させ、その後熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間の熱処理を加えて製作したものを用いた。
【0050】
[実施例3]
表1に記載の組成とする以外は、実施例1と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0051】
[実施例4~8]
表1に記載の組成とする以外は、実施例2と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0052】
[実施例9]
液状シリコーンベースポリマー(品名:Silopren液状シリコーンゴム、型番:LSR7060、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)100重量部に対して、既膨張樹脂バルーン(商品名:マツモトマイクロスフェアー、登録商標、型番:FN-80SDE、松本油脂製薬株式会社製)を3.6重量部、及び多価アルコール誘導体(商品名:ジエチレングリコール鹿1級、関東化学株式会社製)を21.6重量部となるようにチャック付ポリ袋に入れ、チャックを閉じて袋の外から手で揉むことにより両成分を十分に均一化させた。その後、この混合物をシリコーンポリマーに加え、金属ヘラを使用して10分間混合した。得られた混合物に硬化触媒(型番:XE15-C4881(A2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を6.0重量部、及び硬化剤(型番:XE15-C4881(B2)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製製)を1.5重量部となるように加えてさらに10分混合し、その後減圧下(0.001MPa)で3分間脱泡した。このようにして得られた液状コンパウンドを、厚さ3mmのシート形状となるよう表面が平滑な金型に流しいれ、70℃で30分間加熱硬化させ、その後熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間熱処理することで樹脂バルーンを熱収縮させるとともに多価アルコール誘導体を揮発させた。その後、得られたシートを内径φ16mm、外径φ21mmの打ち抜き刃にて同心円状に打ち抜くことで、気体透過性および防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片を得た。
なお、硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片については、上記液状コンパウンドを、それぞれ厚さ2mm、3mm、及び9mmのシート形状となるように表面が平滑な金型に流し入れ、70℃で30分間加熱硬化させ、その後熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間の熱処理を加えて製作したものを用いた。
【0053】
[実施例10]
表1に記載の組成とする以外は、実施例9と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0054】
[実施例11]
用いた既膨張樹脂バルーンを、別のタイプの既膨張樹脂バルーン(商品名:マツモトマイクロスフェアー、登録商標、型番:F-65DE、松本油脂製薬株式会社製)に変更し、さらに表1に記載の組成とする以外は、実施例9と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0055】
[比較例1]
表1に記載の組成とする以外は、実施例2と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0056】
[比較例2]
用いた既膨張樹脂バルーンを、別のタイプの既膨張樹脂バルーン(商品名:マツモトマイクロスフェアー、登録商標、型番:F-65DE、松本油脂製薬株式会社製)に変更し、さらに表1に記載の組成とする以外は、実施例9と同様にして気体透過性及び防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片を作製した。
【0057】
[比較例3]
表1に記載の組成であって、かつ得られた液状コンパウンドを、得られる成型物が内径φ16mm、外径φ21mm、厚み3mmの角リング型となるように金型を用いて70℃で30分間熱硬化させ、次いで熱風オーブンによって200℃で8時間、さらに220℃で4時間熱処理をすることによりセル内部の水を揮発させ、研磨処理は施さずに、気体透過性および防水圧測定用の、連続気泡シリコーンゴム部材である角リング状試験片を作製した。
また、並びに硬さ・伸び・引張破断強度測定用、空隙率・連続気泡率測定用、及び圧縮永久歪測定用の連続気泡シリコーンゴム部材であるシート状試験片は、表1に記載の組成とする以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0058】
実施例1~11、比較例1及び2の各角リング状試験片は、研磨ないし打ち抜きにより形成された面である外周面から内周面に向けて、気体透過性が最も高くなる。
【0059】
<内部断面における平均セル径D1、及び貫通面における平均セル径D2の測定方法>
実施例1~11及び比較例1~3の物性測定用のシート状試験片をカッター刃により厚さ方向に半分に切断して、その断面の拡大写真を3D測定レーザー顕微鏡(型番:OLS4000、オリンパス株式会社製)にて、縦650μm、横650μm(倍率:216倍)となるように撮影した。得られた拡大写真(平面視画像)を縦横各2等分することにより計4区画に分け、その各区画からセルを無作為に5つずつ抽出して得られる合計20個のセルの直径を同顕微鏡のスケーリング機能で計測し、その平均値を平均セル径D1とした。なお、セルが真円状ではない場合、セルの最大径を直径として判断した。このシート状試験片を用いて決定した平均セル径D1は、角リング状試験片の外周から内周、さらに角リングの中心を通る直線の2つの貫通面(外周面と内周面)の中間の位置で、当該直線に対して垂直方向に切断した断面における平均セル径D1と事実上同じである。
また、実施例1~11及び比較例1~3の物性測定用のシート状試験片を、表1に記載の吸排気面加工方法に従って、表層30μmの研磨処理、打ち抜き処理、又は処理を施さないで、研磨面、打ち抜き面、及び未処理表面の拡大写真(平面視画像)を、上記レーザー顕微鏡を用いて上記と同様にして、平均セル径D2を決定した。このシート状試験片を用いて決定した平均セル径D2は、角リング状試験片の外周から内周、さらに角リングの中心を通る直線の2つの貫通面(外周面と内周面)、すなわち研磨面(実施例1、3)、打ち抜き面(実施例2、4~11、比較例1、2)、又は未処理表面(比較例3)の平均セル径D2と事実上同じである。
得られた測定結果を表1に示す。
【0060】
<内部断面におけるセルの総面積S
1、及び貫通面におけるセルの総面積S
2の測定方法>
上記D
1及びD
2を測定したシート状試験片を用いて、縦250μm、横250μmの面積62500μm
2の範囲の拡大画像を、画像処理ソフトImage Jを使用して下記に示すアルゴリズムによりシリコーンゴム部分とセル部分を色分けし、セル部分の総面積S
1及びS
2を算出した。なお、参考のため、
図1に色分け前の内部断面の拡大画像を示し、
図2に色分け前の研磨処理面の拡大画像を示した。
<Image Jアルゴリズム>
1)3D測定レーザー顕微鏡にて測定対象となる表面・断面の拡大画像を撮影(条件:倍率432倍、明るさ55)した。スケールから画像全体の面積(単位:μm
2)を算出した。
2)1で取得した画像をImage J ver.1.53aに取り込んだ。
3)自動算出される画像の全体面積を確認した(単位:ピクセル)。
4)画像2値化機能で輝度の閾値を80に調整することで、発泡ゴムのゴム部分を赤、セル部分を黒に色分けした。
5)粒子面積測定機能により各赤色部分の面積を測定し、その合計面積値(単位:ピクセル)を求めた。
6)下記(式2)から黒色部の面積(単位:μm
2)を求めた。
黒色部面積(μm
2)=(画像全体の面積(μm
2))×{1-(赤色部の面積合計値(ピクセル))/(画像の全面積値(ピクセル))} (式2)
得られた測定結果を表1に示す。
【0061】
<空隙率αの測定方法>
50mm×20mm×3mmの寸法にカットした物性測定用のシート状試験片の比重(嵩比重)を自動比重計(D-1、東洋精機株式会社製)にて0.001単位まで測定した。さらに、物性測定用のシート状試験片の組成から発泡剤成分を除いて作製した内部にセルを持たないゴム(ソリッドゴム)の比重も同様に測定した。得られた各比重値を用いて、下記(式3)から空隙率を算出した。
空隙率(%)=[1-{(物性測定用のシート状試験片の比重)/(ソリッドゴムの比重)}]×100 (式3)
なお、上記ソリッドゴムは増粘水、界面活性剤を配合していない以外は、実施例1と同様の方法で作製した。
上記で決定される空隙率αは、角リング状試験片の空隙率と事実上同じである。
得られた測定結果を表1に示す。
【0062】
<連続気泡率cの測定>
50mm×20mm×3mm程度の寸法にカットした物性測定用のシート状試験片を水中に沈め、減圧下(0.001MPa)で10分間静置することで、セル中の空気を水に置換した。その後吸収された水の質量を量り、水の比重を1.0として吸収された水の体積(cm3)を算出し、下記(式4)により連続気泡率cを算出した。得られた測定結果を表1に示す。
連続気泡率(%)={(吸水した水の体積)/(気泡部分体積)}×100 (式4)
【0063】
なお、気泡部分体積は、下記(式5)により算出した。
気泡部分体積(cm3)={(物性測定用のシート状試験片の質量)/(物性測定用のシート状試験片の比重)}-{(物性測定用のシート状試験片の質量)/(ソリッドゴムの比重)} (式5)
上記で決定される連続気泡率cは、角リング状試験片の連続気泡率と事実上同じである。
【0064】
<硬さ測定方法>
物性測定用のシート状試験片の硬さは、JIS K 7312に従い、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)を用いて測定した。その結果、実施例1~11の試験片の硬さは22~52°であり、本発明における好まし硬さの範囲内であった。
【0065】
<伸び・引張破断強度の測定>
物性測定用のシート状試験片の伸び・引張破断強度は、JIS K 6251に従い、引張り速度500mm/min、試験片はダンベル状3号型を使用して測定した。その結果、実施例1~11の伸びは50~70%であり、引張り強度は0.52~1.65MPaであった。いずれも、本発明における好ましい伸び、引張破断強度の範囲内であった。
【0066】
<圧縮永久歪の測定方法>
圧縮永久歪測定用の厚さ9mmのシート状試験片を、外径φ29mmの打ち抜き刃で同心円状に打ち抜き、それぞれ円柱状の試験片とした。これら試験片を、該試験片の厚みに対して75%の厚みとなるスペーサと並べて2枚のSUS板の間に挟み込んだ。その後、スペーサの厚みまで圧縮して固定することにより25%の圧縮を加えた状態で80℃に設定したギヤ―オーブンの中で72時間放置した。その後、試験片を圧縮したままの状態でギヤーオーブンから取り出し、室温で速やかに圧縮状態から解放した。次いで、試験片を木製板の上に30分間放置し、その時の厚みから、下記(式6)により圧縮永久歪を測定した。
圧縮永久歪(%)={(t0-t2)/(t0-t1)}×100 (式6)
t0:サンプルの元の厚み(mm)
t1:スペーサの厚み(mm)
t2:室温下で圧縮状態から解放した後の30分後の厚み(mm)
測定の結果、実施例1~11の試験片の圧縮永久歪は、9~17%であり、本発明における好ましい圧縮永久歪の範囲内であった。
【0067】
<気体透過性評価試験>
図13に示す試験方法で、気体透過性を評価した。具体的には、内径φ16mm、外径φ21mm、厚み3mmの角リング状試験片3を圧縮治具5に、圧縮率が厚み基準で30%となるように(厚さが70%となるように)圧縮して装着した。この治具を水深30cmに沈め、治具の下方から5kPaのエアー圧を加えた時、試験片外周面から透過する気体13をメスシリンダー12により捕集した。下記(式7)により求められる単位時間・単位表面積当たりに捕集される気体の体積を気体透過量(単位:mL/min・cm
3)として、これを気体透過性の尺度とした。得られた気体透過量を元に、下記評価基準により評価を行った。評価結果を表1に示す。
気体透過量(mL/min・cm
3)=(捕集された気体の体積)/{(測定時間)×(圧縮時のリング内周面の表面積)} (式7)
-評価基準-
A++:2.5mL/min・cm
3以上
A+:1.3mL/min・cm
3以上、2.5mL/min・cm
3未満
A:0.9mL/min・cm
3以上、1.3mL/min・cm
3未満
B:0.5mL/min・cm
3以上、0.9mL/min・cm
3未満
C:0.1mL/min・cm
3以上、0.5mL/min・cm
3未満
D:0.1mL/min・cm
3未満
【0068】
<防水性評価試験>
図14に示す試験方法で、防水性を評価した。具体的には、内径φ16mm、外径φ21mm、厚み3mmの角リング状試験片3を圧縮治具5に、圧縮率が厚み基準で30%となるように(厚さが70%となるように)圧縮して装着した。この治具の下方から、水レギュレーター6を介して昇圧速度100±5kPa/minで水圧を加えていき、試験片外周面から水滴が漏れ出した時の水圧値を防水圧とした。得られた防水圧の値を元に、下記評価基準により評価を行った。評価結果を表1に示す。
-評価基準-
A++:60kPa以上
A+:25kPa以上、60kPa未満
A:10kPa以上、25kPa未満
B:1kPa以上、10kPa未満
C:0.3kPa以上、1kPa未満
D:0.3kPa未満
【0069】
上記気体透過性及び防水性の評価基準より、下記の評価基準で総合評価を行った。評価結果を表1に示す。
-評価基準-
6:気体透過性・防水性がいずれもA++
5:評価6に該当せず、かつ、気体透過性・防水性がいずれもA+以上
4:評価5及び6のいずれにも該当せず、かつ、気体透過性・防水性がいずれもA以上
3:評価4~6のいずれにも該当せず、かつ、気体透過性・防水性がいずれもB以上
2:評価3~6のいずれにも該当せず、かつ、気体透過性・防水性がいずれもC以上
1:気体透過性・防水性のいずれかまたは両方がD未満
【0070】
【0071】
表1から明らかであるように、α2c2D2
2S2/D1S1の値が1.0×107を下回る比較例1では、気体透過性の評価が「D」(0.1mL/min・cm3未満)となり、総合評価で「1」となった。
また、α2c2D2
2S2/D1S1の値が2.5×109を上回る比較例2では、防水性の評価が「D」(0.3kPa未満)となり、総合評価で「1」となった。
また、角リング状試験片の吸排気面に当たる面を研磨していない比較例3では、α2c2D2
2S2/D1S1の値が1.0×107を大幅に下回っており、気体透過性の評価が「D」(0.1mL/min・cm3未満)となり、総合評価で「1」となった。
【0072】
これに対してα2c2D2
2S2/D1S1の値が1.0×107以上、2.5×109以下の範囲である実施例1~11では、いずれも気体透過性、防水性の評価が「B」以上であり、かつ総合評価も「3」以上であった。