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特開2022-60899複合粒子、複合粉末ならびに複合粉末を用いた複合部材の製造方法
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  • 特開-複合粒子、複合粉末ならびに複合粉末を用いた複合部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060899
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】複合粒子、複合粉末ならびに複合粉末を用いた複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20220408BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20220408BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20220408BHJP
   C22C 29/08 20060101ALI20220408BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220408BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220408BHJP
【FI】
B22F1/00 E
B22F3/105
B22F3/16
B22F1/00 Q
C22C29/08
B33Y70/00
B33Y10/00
B22F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168655
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000233066
【氏名又は名称】株式会社MOLDINO
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】久保 裕
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AB02
4K018AB07
4K018AC01
4K018AD06
4K018BA04
4K018BB04
4K018BC11
4K018BC12
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】積層造形した超硬合金において、粗大な脱炭相が形成され難くなる、複合粒子を提供する。
【解決手段】本発明の複合粒子は、炭化タングステンと金属とを含む複合粒子であって、複合粒子の表面に炭素粒子が分散していることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化タングステンと金属とを含む複合粒子であって、
前記複合粒子の表面に炭素粒子が分散していることを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記表面に分散している炭素粒子の円相当の平均粒径が0.3μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
炭化タングステン含有量が80質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記金属はコバルトであり、複合粒子に対するコバルト含有量が5~30質量%であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の複合粒子。
【請求項5】
前記複合粒子の圧縮強度は100MPa以上であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の複合粒子。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1項に記載の複合粒子を複数個含むことを特徴とする複合粉末。
【請求項7】
円相当の平均粒径が10~150μmであることを特徴とする請求項6に記載の複合粉末。
【請求項8】
請求項6または7の複合粉末を用いて粉末床溶融結合法で複合部材を積層造形することを特徴とする複合部材の製造方法。
【請求項9】
前記粉末床溶融結合法は電子ビームを用いることを特徴とする請求項8に記載の複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に積層造形に適用される複合粒子、複合粉末ならびに複合粉末を用いた複合部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超硬合金は、高硬度、高強度、高剛性の材料特性を有し、切削工具や金型等に適用されている。超硬合金の中でも、硬質な炭化タングステンがコバルト結合相によって結合されているWC基超硬合金は広く適用されている。
通常、WC基超硬合金の製造では、まず、原料粉末のスラリーを作製する。炭化タングステン粉末とコバルト粉末等の原料粉末に微量のカーボンおよびワックスを加えて混合粉末を作製する。作製した混合粉末をアルコール等の溶媒とともにアトライターやボールミル等で混合してスラリーを作製する。次いで、スラリーをスプレードライヤー等で乾燥させて複合粉末を作製する。次いで、複合粉末をプレス成形や押出成形によって所定の形状に成形する。成形物を真空焼結や加圧焼結により1350℃~1500℃程度の温度域で約1時間程度焼結することでWC基超硬合金となる。成形物の焼結過程で複合粉末に吸着した酸素と結合して炭素が失われる。原料粉末の混合時に添加するカーボンの量が少なすぎると脱炭相が形成される。一方、原料粉末の混合時に添加するカーボンの量が多すぎると遊離炭素が形成される。通常、原料粉末の総量の0.1質量%以下のカーボンを添加して混合される。
【0003】
近年、レーザーや電子ビームを用いた粉末床溶融結合法により、超硬合金を積層造形することが検討され始めている。例えば、下記特許文献1、2では、炭化タングステンとコバルトを含む複合粒子の強度を高めて積層造形時の複合粒子の破壊を防止するため、コバルトが液相となる温度で複合粒子を加熱処理することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表WO2017/150340号公報
【特許文献2】特開2016-172904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、粉末床溶融結合法で積層造形した超硬合金は、粗大な脱炭相が形成され易くなることを確認した。
本発明の目的は、積層造形した超硬合金において、粗大な脱炭相が形成され難くなる、複合粒子、複合粉末ならびに複合粉末を用いた複合部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、表面に炭素粒子が分散した炭化タングステンと金属を含む複合粉末を粉末床溶融結合法に適用することで、積層造形した超硬合金に粗大な脱炭相が形成され難くなることを確認して、本発明に到達した。
本発明の一様態は、炭化タングステンと金属とを含む複合粒子であって、前記複合粒子の表面に炭素粒子が分散していることを特徴とする複合粒子である。
【0007】
前記表面に分散している炭素粒子の円相当の平均粒径が0.3μm以上であることが好ましい。
炭化タングステン含有量が80質量%以上であることが好ましい。
前記金属はコバルトであり、複合粒子に対するコバルト含有量が5~30質量%であることが好ましい。
前記複合粒子の圧縮強度は100MPa以上であることが好ましい。
【0008】
本発明の一様態は、前記複合粒子を複数個含む複合粉末である。
複合粉末は、円相当の平均粒径が10~150μmであることが好ましい。
【0009】
本発明の一様態は、複合粉末を用いて粉末床溶融結合法で複合部材を積層造形する複合部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉末床溶融結合法で積層造形した超硬合金について、脱炭相を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明例の複合粉末の観察写真の一例である。
図2図2は、本発明例の複合粉末の炭素分析マッピング結果を示す一例である。
図3図3は、本発明例の複合粉末を用いて電子ビームを用いた粉末床溶融結合法で積層造形した超硬合金の組織写真の一例である。
図4図4は、粉末床溶融結合法で積層造形した超硬合金のX線回折結果を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪炭化タングステンと金属とを含み、表面に炭素粒子が分散している複合粒子≫
本実施形態の複合粒子は、炭化タングステンと金属とを含んでおり、複合粒子の表面に炭素粒子が分散している。
通常、超硬合金の焼結では、結合相が液相となる温度域で成形体を1時間程度保持するため、均一な組織が得られる。一方、粉末床溶融結合法では、複合粉末を堆積する工程と、堆積した層に電子ビームやレーザーを照射することにより、液相を瞬時に生成させ、急速に凝固させる工程とを順次繰り返して積層造形していく。粉末床溶融結合法では、瞬間的に高温となった部分において、炉内酸素と複合粉末の炭素が反応して局所的に炭素が減少する。そのため、溶融凝固による粒成長に伴って組織が不均一となり、粗大な脱炭相が形成され易いと推定される。溶融時に失われる炭素を補うために、複合粉末に追加で炭素を添加した混合粉末を用いても、積層造形時の高温下で炭素が優先的に反応してしまうため、不均一な組織になり易い。
【0013】
そこで、本発明者は、予め複合粉末に過多の炭素を均一に含ませることを検討した。そして、本発明者は、電子ビームやレーザーを用いた粉末床溶融結合法において、表面に炭素粒子を分散させた炭化タングステンと金属を含む複合粒子を用いることで、積層造形した超硬合金に粗大な脱炭相が形成され難くなることを確認した。
【0014】
本実施形態において、「複合粒子の表面に分散している炭素粒子」は、スラリー作製時に原料粉末と混合される炭素粉末である。実際には、複合粒子の内部にも炭素粒子は分散しているが、粒子内部の炭素は複合粒子を破壊しないと確認することができないため、表面に分散する炭素粒子を規定するものである。
【0015】
複合粒子の表面に分散する炭素粒子の平均粒径が小さすぎると組織が不均一になり易い。そのため、炭素粒子の円相当の平均粒径は0.3μm以上であることが好ましい。一方、分散する炭素粒子の円相当の平均粒径が大きくなり過ぎると遊離炭素を形成し易くなるし、複合粒子表面および内部への分散が均一となりにくい。分散する炭素粒子の円相当の平均粒径は好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0016】
本実施形態において、複合粒子の表面に分散する炭素粒子の円相当の平均粒径は、炭素マッピングの結果を画像解析ソフトで2値化処理することで求めることができる。このとき、粒径が0.1μm未満の粒子を含めると、測定上のノイズを多く含むため、平均粒径が実際とはかけ離れて大幅に小さくなる。そのため、2値化処理する際に0.1μm未満の粒径の粒子は測定結果から除外する。これにより、多くのノイズが排除されて、平均粒径を精度高く求めることができる。複合粒子の表面を複数視野観察して、粒径が0.1μm以上の炭素粒子が100個以上から平均粒径を求めることが好ましい。
【0017】
複合粒子に含まれる炭素の量が少なすぎると、複合粒子の表面に炭素粒子が分散せず、脱炭相の形成を抑制する効果が得られなくなる。本実施形態において、「複合粒子の表面に炭素粒子が分散していない」状態とは、複合粒子の表面において、2400μmの視野に0.3μm以上の円相当径を有する炭素粒子が3個以上観察されない状態である。
複合粒子に含まれる炭素が増えるに従って、複合粒子の表面に分散している炭素粒子の平均粒径が大きくなる。したがって、複合粒子における好適な炭素含有量は、複合粒子の表面に分散している炭素粒子の円相当の平均粒径が、0.3μm以上3μm以下の範囲内であるか否かによって判断することができる。複合粒子の表面に分散している炭素粒子の面積率は、0.3%以上5%以下であることが好ましい。複合粒子は、2400μmの視野に0.3μm以上の円相当径を有する炭素粒子が5個以上であることが好ましい。更には10個以上が好ましい。
本実施形態において「複合粒子」とは、硬質相である炭化タングステンと結合相である金属と炭素粒子とが3次元的に混ざり合った略球状の粒子である。
【0018】
本実施形態の複合粒子は炭化タングステンを80質量%以上含有する。複合粒子中に炭化タングステンを80質量%以上含むことで、積層造形により得られる複合部材の強度と硬度がより高まり好ましい。
本実施形態の複合粒子は炭化タングステン以外のセラミックスを含有してもよい。例えば、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、V(バナジウム)、Zr(ジルコニウム)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)およびTi(チタン)のうちの少なくとも一種の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物および硼化物から選択されるセラミックスを含有してもよい。
本実施形態の複合粒子は、炭化タングステン以外のセラミックスと、複合粒子中で金属相を構成する金属の含有比率(質量%)を100%とした場合、セラミックスの含有比率(質量%)を50%以上95%以下、金属の含有比率(質量%)を5%以上50%以下とすることができる。
【0019】
本実施形態の複合粒子が含有する金属は、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)のうちの少なくとも一種から選択されることが好ましい。
複合粒子が含有する金属はコバルトであることが好ましく、複合粒子に対するコバルト含有量が5~30質量%であることで、複合部材の靭性が高まり好ましい。
【0020】
複合粒子の圧縮強度は100MPa以上であることが好ましい。高強度の複合粒子とすることで、積層造形時の粒子の変形や破壊を効果的に抑制することができる。更には、複合粒子の圧縮強度は200MPa以上であることが好ましい。このような複合粒子を得るには、TAS0055-2017に準拠して測定した残留気孔がA04以下になる焼結温度(Ts)に対し、焼結温度を0.85Ts~1.0Tsにすることが好ましい。具体的に、Tsは1200~1450℃にするのが好ましく、1250~1400℃にするのがより好ましい。
【0021】
本実施形態の複合粉末は、上述した複合粒子を複数個含むことを特徴とする複合粉末である。複合粉末の中には上記実施形態の複合粒子が全体の60体積%以上含まれていれば、積層造形時に有利な効果が得られやすい。複合粒子の含有量は全体の80体積%以上としてもよい。本実施形態の複合粉末は、上記実施形態の複合粒子のみからなる構成であってもよい。本実施形態の複合粒子以外に本実施形態の複合粉末に加えられる粉としては、例えば金属粉末、カーボン粉末等がある。
【0022】
本実施形態の複合粉末は、体積累積粒度分布におけるD50の径dが10~150μmであることが好ましい。すなわち複合粉末の円相当の平均粒径が10μm以上150μm以下の範囲であることが好ましい。径dが10μm未満の場合、例えば積層造形時に粉末が飛散し易くなる。径dが150μmよりも大きい場合、積層造形物に粗大な残留ポアが発生し易い傾向にある。複合粉末の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定することができる。
【0023】
本実施形態の複合粉末は、複合粉末を堆積した後に、電子ビームやレーザーを瞬間的に当てて、溶融凝固させて層を形成することを順次繰り返して形成していく粉末床溶融結合法に適用することが好ましい。粉末床溶融結合法にはレーザー法と電子ビーム法とがあるが、真空中での造形である点、電子ビームによる予熱が可能である点、操作速度を大きくできる点等より電子ビーム法を用いることが好ましい。
【実施例0024】
原料粉末としてWC粉末(平均粒径0.6μm)、Co粉末(平均粒径0.6μm)、Cr粉末(平均粒径1μm)、TaC粉末(平均粒径1μm)を用いて、WC-10質量%Co-0.8質量%Cr-0.25質量%TaCの組成に配合した。
そして、試料No.1では、秤量した粉末に対して約0.5質量%のカーボン粉末と微量のパラフィンワックスを添加して、エタノールと一緒にアトライターで湿式混合して、混合粉末のスラリーを得た。そして、スラリーをスプレードライヤーにより造粒して造粒粉末を得た。得られた造粒粉末は1260℃、真空雰囲気中(1~2Pa)で焼結して複数の複合粒子からなる複合粉末を得た。得られた複数の複合粒子からなる複合粉末は150μmの篩で分級した。
【0025】
試料No.2は従来の超硬合金を製造する時と同様に極少量のカーボン粉末を添加した。具体的には、試料No.1では約0.5質量%のカーボン粉末を添加したのに対し、約0.05質量%程度のカーボン粉末を添加し、それ以外は試料No.1と同じとした。
【0026】
なお、試料No.1の複数の複合粒子からなる複合粉末を用いて、通常の工程であるプレス成形の後、通常の超硬合金と同様の真空焼結を行った場合、多量の遊離炭素が析出することを確認した。また、試料No.2の複数の複合粒子からなる複合粉末を用いて、No.1と同様に通常の工程にて真空焼結を行った場合、脱炭相や遊離炭素のない健全な組織になることを確認した。
【0027】
試料No.1、No.2の複合粉末について、表面観察、平均粒径の測定および複合粒子の強度測定を行った。複合粉末の流動度は、JISZ2502に準拠して測定した。複合粒子の圧縮強度は、微小圧縮強度試験機(MCT510、島津製作所製)を用い、207.4mN/secの負荷速度で求めた。複合粉末の平均粒径はマイクロトラック社製のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000II」を用い、乾式にて時間:30秒、粒子条件:造粒粉末、溶媒:エアの条件にて、体積累積粒度分布におけるD50を測定した。
【0028】
試料No.1については、株式会社日本電子製の電子プローブマイクロアナライザー装置(型番:JXA-8500F)を用いて表面観察および波長分散型電子プローブ微小分析(WDS-EPMA)で組成マッピング分析を行った。図1に試料No.1の複合粒子の表面の観察写真(倍率2000倍)の一例を示す。図2に複合粒子の表面の炭素分析結果の一例を示す。複合粒子の表面に炭素が分散していることが確認される。
画像処理ソフトImage-Proを用いて、炭素のマッピング結果に対する2値化処理を行って炭素の円相当の粒径を求めた。そして、10個以上の複合粒子を観察して、複合粒子の表面に分散する炭素の円相当の平均粒径D50と複合粒子の表面における炭素の面積率を求めた。このとき、0.1μm未満の炭素粒子はノイズとして測定から除外して平均粒径を求めた。また、各々の複合粒子における観察領域の面積と、観察領域内に位置する炭素粒子の個数とから、2400μm当たりの円相当径が0.3μm以上の炭素粒子の個数を算出した。
表1に測定結果を纏める。
【0029】
【表1】
【0030】
アーカム社製の電子ビーム積層造形装置を用いて、試料No.1、2の複合粉末を用いて、20mm×10mm×35mmの超硬合金を作製した。
【0031】
図3に電子ビームを用いた粉末床溶融結合法で積層造形した超硬合金の組織写真の一例を示す。通常の超硬合金と異なり炭化タングステンの粒子の内部にも空孔があるのが確認される。相対密度は、97%程度であった。積層造形後にHIP処理することで炭化タングステン内部以外の空孔を低減することができる。
【0032】
得られた焼結体(積層造形物)について、断面を研磨した後、X線回折装置パナリティカル社製EMPUREANを用いて、45kV-40mA、2θ:34~50°、スキャンスピード:0.5°/分の条件にて脱炭相(CoC)量を評価した。評価方法はWC(101)面の回折強度とCoC(511)面のピーク高さ比(%)により評価した。図4にX線回折結果の一部を示す。図4には、CoC(511)のピークを含む42°~43°の範囲を示す。図4より試料No.1は、試料No.2と比較して脱炭相が少なくなっていることが確認される。
以上、本発明の実施形態の複合粉末を用いることにより、電子ビーム積層造形した超硬合金において、従来方法では低減が難しかった脱炭相(CoC)を低減することが出来ることが明らかである。
図1
図2
図3
図4