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特開2022-60912流し込み耐火物のライニング構造及び流し込み耐火物ライニング用型枠
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  • 特開-流し込み耐火物のライニング構造及び流し込み耐火物ライニング用型枠 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060912
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】流し込み耐火物のライニング構造及び流し込み耐火物ライニング用型枠
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/02 20060101AFI20220408BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20220408BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
B22D41/02 D
F27D1/16 F
F27D1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168679
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 泰次郎
(72)【発明者】
【氏名】天羽 浩人
(72)【発明者】
【氏名】森山 大輔
【テーマコード(参考)】
4E014
4K051
【Fターム(参考)】
4E014BC01
4K051AA06
4K051AB03
4K051AB05
4K051BB03
4K051BB07
4K051LC04
(57)【要約】
【課題】流し込み耐火物のライニング構造において、メタル-スラグ境界部の寿命を延ばす。
【解決手段】取鍋又は樋2の内周面に内張りされる流し込み耐火物のライニング構造1である。ライニング構造1は、取鍋又は樋2の内側に向けて突出し、かつ他の部分よりも厚い増厚部113を有する。増厚部113は、取鍋又は樋2に収容される溶融金属AとスラグBとの境界に対応する位置D1に設けられる。増厚部113は少なくとも増厚部の下面113cと増厚部の側面113bとが連続する領域は角を有さない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋又は樋の内周面に内張りされる流し込み耐火物のライニング構造であって、
取鍋又は樋の内側に向けて突出し、かつ他の部分よりも厚い増厚部を有し、
前記増厚部は、取鍋又は樋に収容される溶融金属とスラグとの境界に対応する位置に設けられ、
前記増厚部は少なくとも前記増厚部の下面と前記増厚部の側面とが連続する領域は角を有さない、流し込み耐火物のライニング構造。
【請求項2】
前記流し込み耐火物は、スラグ材とメタル材とを有し、
前記増厚部は、スラグ材で形成されている、請求項1に記載の流し込み耐火物のライニング構造。
【請求項3】
取鍋又は樋の内周面に流し込み耐火物を内張りするための流し込み耐火物ライニング用型枠であって、
底面部と、前記底面部から立ち上がる側面部とを有し、
前記側面部の外周側には、前記側面部の内周側に突出する上面及び下面と、前記上面と前記下面を連結する連結面とから形成される凹部が設けられ、
少なくとも前記下面と前記連結面とは曲面で連続している、流し込み耐火物ライニング用型枠。
【請求項4】
前記上面、前記下面、及び前記連結面は全て曲面である、請求項3に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【請求項5】
前記上面、前記下面、及び前記連結面のうち少なくとも1つの面に、開口が設けられている、請求項3又は4に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【請求項6】
前記開口は、流し込み耐火物の流し込み施工時に当該流し込み耐火物が流れ出さない大きさである、請求項5に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【請求項7】
前記底面部は、それぞれ内部に空洞が形成された第1底面部及び第2底面部を有し、
前記第1底面部と前記第2底面部とは、前記空洞に挿入された底板で連結され、
前記底板は、前記第1底面部と前記第2底面部に対して相対的に移動可能となっている、請求項3から6のいずれか一項に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【請求項8】
前記第1底面部及び前記第2底面部は、前記側面部に回転軸を介して接続されている、請求項7に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋又は樋の内周面に内張りされる流し込み耐火物のライニング構造、及び取鍋又は樋の内周面に流し込み耐火物を内張りするための流し込み耐火物ライニング用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋や樋の内周面に内張りされる耐火物のライニング構造においては、取鍋や樋に収容される溶融金属(メタル)とスラグとの境界に対応する位置(以下「境界位置」ともいう。)、及びこの境界位置の直下の領域(以下、この境界位置とその直下の領域を総称して「メタル-スラグ境界部」ともいう。)が特に損耗しやすいことが知られている。このため、例えば特許文献1に開示されるように、メタル-スラグ境界部を他の部分より厚くしてその寿命を延ばすことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願平5-9184号(実開平6-70959号)のCD-ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタル-スラグ境界部は、溶融金属の量の増減によって、激しい温度変化にさらされる。そのため、単にメタル-スラグ境界部を他の部分より厚くした場合、その厚くした部分に亀裂が入りやすい。そして、亀裂が入った部分では溶融金属とスラグによる侵食が進みやすくなり、結果としてメタル-スラグ境界部の寿命が短くなる。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、流し込み耐火物のライニング構造において、メタル-スラグ境界部の寿命を延ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、次の流し込み耐火物のライニング構造及び流し込み耐火物ライニング用型枠が提供される。
1.
取鍋又は樋の内周面に内張りされる流し込み耐火物のライニング構造であって、
取鍋又は樋の内側に向けて突出し、かつ他の部分よりも厚い増厚部を有し、
前記増厚部は、取鍋又は樋に収容される溶融金属とスラグとの境界に対応する位置に設けられ、
前記増厚部は少なくとも前記増厚部の下面と前記増厚部の側面とが連続する領域は角を有さない、流し込み耐火物のライニング構造。
2.
前記流し込み耐火物は、スラグ材とメタル材とを有し、
前記増厚部は、スラグ材で形成されている、前記1に記載の流し込み耐火物のライニング構造。
3.
取鍋又は樋の内周面に流し込み耐火物を内張りするための流し込み耐火物ライニング用型枠であって、
底面部と、前記底面部から立ち上がる側面部とを有し、
前記側面部の外周側には、前記側面部の内周側に突出する上面及び下面と、前記上面と前記下面を連結する連結面とから形成される凹部が設けられ、
少なくとも前記下面と前記連結面とは曲面で連続している、流し込み耐火物ライニング用型枠。
4.
前記上面、前記下面、及び前記連結面は全て曲面である、前記3に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
5.
前記上面、前記下面、及び前記連結面のうち少なくとも1つの面に、開口が設けられている、前記3又は4に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
6.
前記開口は、流し込み耐火物の流し込み施工時に当該流し込み耐火物が流れ出さない大きさである、前記5に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
7.
前記底面部は、それぞれ内部に空洞が形成された第1底面部及び第2底面部を有し、
前記第1底面部と前記第2底面部とは、前記空洞に挿入された底板で連結され、
前記底板は、前記第1底面部と前記第2底面部に対して相対的に移動可能となっている、前記3から6のいずれか一項に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
8.
前記第1底面部及び前記第2底面部は、前記側面部に回転軸を介して接続されている、前記7に記載の流し込み耐火物ライニング用型枠。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流し込み耐火物のライニング構造において、メタル-スラグ境界部の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態である流し込み耐火物のライニング構造の断面図。
図2】高炉樋の下流端においてスラグと溶融金属(溶銑)とを分離する機構(ダンパー)の概念図。
図3図1のライニング構造における増厚部部分の拡大斜視図。
図4】増厚部の他の形態を示す図。
図5】増厚部のさらに他の形態を示す図。
図6】本発明の他の実施形態である流し込み耐火物ライニング用型枠の斜視図。
図7a】流し込み耐火物ライニング用型枠の他の実施形態を示す断面図(型枠セット・流し込み時の状態)。
図7b】流し込み耐火物ライニング用型枠の他の実施形態を示す断面図(養生・乾燥後の脱枠時の状態)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の一実施形態である流し込み耐火物のライニング構造(以下、単に「ライニング構造」ともいう。)について説明する。図1に、本発明の一実施形態であるライニング構造1の断面を示している。
本実施形態のライニング構造1は、高炉樋2の鉄皮21の内周面に流し込み耐火物11を内張りしてなる。流し込み耐火物11はスラグ材111とメタル材112とを有し、スラグ材111によって増厚部113が形成されている。増厚部113は高炉樋1の内側に向けて突出し、かつ流し込み耐火物11の他の部分より厚くなっている。
なお、スラグ材111としては、耐スラグ性及び耐熱スポール性に優れる材質、例えば、炭化珪素を多量に含有するアルミナ-炭化珪素-炭素質の流し込み耐火物を使用する。また、メタル材112としては、耐溶銑性及び耐FeO性に優れる材質、例えば、アルミナ・マグネシア系のスピネルを主材とするアルミナ-スピネル-炭化珪素-炭素質の流し込み耐火物を使用する。
【0010】
増厚部113は、高炉樋1に収容されて流れる溶融金属(溶銑)AとスラグBとの境界Cに対応する位置(境界位置)D1と、この境界位置D1の直下の領域D2とからなるメタル-スラグ境界部Dに設けられている。
なお、高炉樋1において溶銑AとスラグBとの境界Cは、例えば図2に示すように、高炉樋1の下流端で溶銑AとスラグBとを分離するために設けたダンパー22の高さと出銑速度により決定される。そして境界位置D1は、ダンパー22の高さと出銑速度により決定される境界Cに対応するように決定される。ただし、高炉樋1において境界Cは、高炉樋1を流れる溶銑Aの量の経時的変動に伴い変動し、これに伴い境界位置D1も上下に変動する。すなわち、境界C及びこれに対応する境界位置D1は、常に一定というものではなく所定の変動を含むものである。このため、本実施形態において増厚部113は、平均的な境界位置D1よりも上側及び下側の領域にも設けられている。
また、本実施形態において増厚部113は、平均的な境界位置D1よりも下側の領域D2まで延びているが、どの程度延ばすか(領域D2の長さをどの程度とするか)は高炉樋1の大きさ等に応じて適宜決定する。
【0011】
メタル-スラグ境界部Dは、上述の通り特に損耗しやすいことが知られている。すなわち、メタル-スラグ境界部Dでは、スラグと内張り材(本実施形態では流し込み耐火物11(スラグ材111)。以下同じ。)との反応に加え、スラグと溶銑と内張り材との反応(スラグと溶銑から生成するFeOと内張り材とが反応して、低融点化合物を生成する。)により、溶銑のみと接触している他の内張り部分と比べて溶損速度が著しく速い。
そのため、本実施形態では、境界位置D1及びその直下の領域D2であるメタル-スラグ境界部Dを他の内張り部分よりも厚い増厚部113としている。これにより、メタル-スラグ境界部Dの寿命を延ばすことができる。そのため、内張り材全体(ライニング構造1)の寿命を延ばすことができる。
【0012】
一方でメタル-スラグ境界部Dは、溶銑量の増減によって、温度の高いメタルに接触したり、あるいはメタルよりも温度の低いスラグや空気と接触したりするため、激しい温度変化にさらされる。そのため、単にメタル-スラグ境界部Dを他の部分より厚くした場合、温度変化による膨張・収縮によってその厚くした部分に亀裂が入りやすい。そこで、本実施形態では、増厚部113の少なくとも境界位置D1よりも下側の領域(メタル-スラグ境界部Dに対応する領域)は角を有さない構造としている。具体的には、増厚部113は少なくとも増厚部の下面113cと増厚部の側面113bとが連続する領域は角を有さない。増厚部113のメタル-スラグ境界部Dに対応する領域に角があると、その角の部分で最も温度変化が激しくなると共に、その角の部分に温度変化に伴う耐火物の膨張・収縮による応力が集中し、その角の部分を起点として亀裂が入りやすいからである。
なお、本実施形態では図3に示すように、増厚部113のメタル-スラグ境界部Dに対応する領域を含む全領域が角を有さない構造としている。具体的には、増厚部113の上面113aと側面113bとが曲面で連続すると共に、増厚部113の下面113cと側面113bとが曲面で連続するようにしている。すなわち、本実施形態では、増厚部113の少なくともコーナー部EをR形状とすることで、角を有さない構造としている。この場合、コーナー部EのR形状はR50mm以上であることが好ましい。
また、他の実施形態として、図4に示すように増厚部113の全面を曲面とすることや、増厚部113の少なくとも境界位置D1よりも下側の領域(メタル-スラグ境界部Dに対応する領域)を曲面とすることもできる。
このように少なくとも境界位置D1よりも下側の領域に角を有さない構造とすることで、高炉樋2のメタル-スラグ境界部Dには亀裂が入りにくくなり、増厚部113を延命することができる。
【0013】
上述の通り、本実施形態において増厚部113はスラグ材111で形成されるが、具体的には図1に示すように、増厚部113はメタル材112よりも上側に配置されていてもよいし、図5に示すように、増厚部113の一部がメタル材112を覆うように配置されていてもよい。このようにメタル材とスラグ材を任意の位置に施工するときは、スラグ材とメタル材を2回に分けて流し込み施工を行う。
【0014】
本実施形態のライニング構造1は高炉樋2に適用したものであるが、本発明のライニング構造は、溶銑や溶鋼などの溶融金属を収容する取鍋にも適用可能である。取鍋の場合、溶融金属とスラグとの境界は、取鍋に収容する溶融金属量により決定される。そして境界位置(取鍋に収容される溶融金属とスラグとの境界に対応する位置)は、取鍋に収容する溶融金属量により決定される前記境界に対応するように決定される。
【0015】
次に、本発明の他の実施形態である流し込み耐火物ライニング用型枠(以下、単に「型枠」ともいう。)について説明する。図6に、本発明の他の実施形態である型枠3を示している。
本実施形態の型枠3は、図1に示したライニング構造1を構築するためのもので、底面部31と、この底面部31から立ち上がる一対の側面部32とを有する。底面部31は高炉樋の底面部に対応する形状を有し、側面部32は高炉樋の側面部に対応する形状を有する。
【0016】
側面部32の外周側には、当該側面部32の内周側に突出する上面33a及び下面33bと、上面33aと下面33bを連結する連結面33cとから形成される凹部33が設けられている。この凹部33は、図3に示した増厚部113に対応する形状を有し、上面33aと連結面33c、及び下面33bと連結面33cはいずれも曲面で連続している。
なお、凹部33の形状は、形成する増厚部113の形状に応じて変更され、例えば図4に示した増厚部113を形成する場合、上面33a、下面33b及び連結面33cを全て曲面とする。いずれにしても本実施形態では、増厚部113の少なくとも境界位置D1よりも下側の領域(メタル-スラグ境界部Dに対応する領域)に角を有さない構造とするために、少なくとも凹部33の下面33bと連結面33cとは曲面で連続するようにする。
【0017】
本実施形態において、凹部33の上面33a及び連結面33cには開口34が複数設けられている。開口34は、流し込み耐火物の流し込み施工時に当該流し込み耐火物が当該開口34から流れ出さない大きさとする。具体的には開口34の大きさ(径)は、使用する流し込み耐火物中の最大原料粒子径以下とすることが好ましく、概ね5mm以下とすることが好ましい。
【0018】
この型枠3を用いたライニングは以下の手順で行う。
まず、高炉樋2の内側に型枠3を配置する。次に、型枠3と高炉樋2の鉄皮21との間に流し込み耐火物11(メタル材112及びスラグ材111)を順次流し込む。その後、養生し、加熱して流し込み耐火物11を乾燥する。このとき、増厚部113に対応する凹部33には複数の開口34があることから、養生・硬化時に発生する水素ガスや加熱・乾燥時に発生する水蒸気が開口34を通じてスムーズに放散される。このため、加熱・乾燥時に増厚部113に亀裂が入りにくい。
さらにこのとき、型枠3の凹部33と流し込み耐火物11との界面から外側へ水素ガスや水蒸気が連続的に放出されるため、流し込み耐火物11の養生・乾燥後に凹部33と流し込み耐火物11とが密着せずに隙間が生じる。そのため、型枠の凹部33を流し込み耐火物11から脱枠する場合に脱枠しやすくなる。
【0019】
ここで、型枠を流し込み耐火物11から脱枠するために、例えば図7a及び図7bに示す構造の型枠3Aを用いることができる。この型枠3Aにおいて底面部31は、第1底面部31aと第2底面部31bとを有する。第1底面部31a及び第2底面部31bは、それぞれ内部に底板31cを挿入可能な空洞を有している。この底板31cによって第1底面部と第2底面部とが連結され、全体として底面部31を構成している。この底板31cは、第1底面部31a及び第2底面部31bの空洞内でスライド可能となっている。そのため、図7a及び図7bに示すように、第1底面部31aと第2の底面部31bとの間の間隔をジャッキ35で調整することができる。このようにすることで底面部31の幅を調整できる。すなわち、この型枠3Aではその大きさおよび幅を高炉樋2の大きさおよび幅に合わせて調整可能となっている。
また、この型枠3Aでは、底面部31の両端部(第1底面部31a及び第2底面部31bの側面部32との連結部分)にそれぞれ回転軸36を介して側面部32を連結している。このため、側面部32を回転することで流し込み耐火物11に設けた増厚部113を凹部33から脱枠することができる。
【0020】
具体的には図7aに示すように、高炉樋2の内側に型枠3Aを配置し、型枠3Aと高炉樋2の鉄皮21との間に流し込み耐火物11を流し込む。その後、養生し、加熱して流し込み耐火物11を乾燥する。このようにして流し込み耐火物11を養生・乾燥した後、図7bに示すように、ジャッキ35の操作により第1底面部33aと第2底面33bの間隔を縮小しながら側面部32を回転することで、流し込み耐火物11の増厚部113から型枠3Aの凹部33を脱枠する。その後、上方に型枠3Aを引き抜くことで高炉樋2から型枠3Aを取り除くことができる。
【0021】
この型枠3Aにおいても、増厚部113に対応する凹部33には複数の開口34があることから、養生・硬化時に発生する水素ガスや加熱・乾燥時に発生する水蒸気が開口34を通じてスムーズに放散される。
また、型枠3及び型枠3Aにおいて開口34は、流し込み耐火物11の流し込み時にも脱気効果を発揮する。したがって、増厚部113に対応する凹部33内に流し込み耐火物11をスムーズに流し込むことができる。
なお、開口34は、凹部33のほか側面部32にも設けることができる。例えば、型枠3Aにおいて凹部33の上下の側壁部32にも開口34を設けると、凹部33と流し込み耐火物11との間に隙間が形成されやすくなり、増厚部113をより脱枠しやすくなる。特に増厚部113より上側の側壁部32に開口34を設けると、上側の側壁部32までガスや水蒸気が流れやすくなるので、より脱枠しやすくなる。
増厚部113に対応する凹部33のうち流し込み耐火物11と接することになる面には、予め有機繊維や孔の空いたフィルムなどを設けておいてもよい。このようにすることで、増厚部113に流し込み耐火物11が固着し難くなり、より脱枠が容易になる。
【0022】
型枠3及び型枠3Aは、その全体をメッシュ板で形成することもできる。この場合も、開口の大きさ(メッシュ径)は流し込み耐火物の流し込み施工時に当該流し込み耐火物が流れ出さない大きさとする。
【0023】
ここで、型枠3及び型枠3Aには増厚部113に対応する凹部33があることから、特に図6に示す型枠3のように底面部31に対して側面部32が固定されている場合、乾燥後に型枠3を脱枠しないことがある。このような場合、型枠3は操業時に溶融金属(溶銑)を流し込んだ段階で溶かすようにしてもよい。すなわち、型枠3は、溶融金属(溶銑)に溶ける材質、例えばアルミニウム合金、亜鉛合金等で形成してもよい。
【0024】
以上、本実施形態では高炉樋2のライニング用の型枠について説明したが、取鍋のライニング用の型枠も同様の構成とする。すなわち、取鍋のライニング用の型枠も、底面部と、この底面部から立ち上がる側面部を有し、底面部は取鍋の底面部に対応する形状を有し、側面部は取鍋の側面部に対応する形状を有するものとする。そして、取鍋のライニング用の型枠においても増厚部に対応する位置に凹部を設ける。
【符号の説明】
【0025】
1 流し込み耐火物のライニング構造
11 流し込み耐火物(内張り材)
111 スラグ材
112 メタル材
113 増厚部
113a 増厚部の上面
113b 増厚部の側面
113c 増厚部の下面
2 高炉樋
21 鉄皮
22 ダンパー
3、3A 流し込み耐火物ライニング用型枠
31 底面部
31a 第1底面部
31b 第2底面部
31c 底板
32 側面部
33 凹部
33a 凹部の上面
33b 凹部の下面
33c 凹部の連結面
34 開口
35 ジャッキ
36 回転軸
A 溶銑(溶融金属)
B スラグ
C 溶銑とスラグとの境界
D メタル-スラグ境界部
D1 境界位置(溶銑とスラグとの境界に対応する位置)
D2 境界位置の直下の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b