(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060913
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】耐火物の補修方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/16 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
F27D1/16 F
F27D1/16 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168680
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 泰次郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 辰彦
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA06
4K051LC00
4K051LH03
(57)【要約】
【課題】補修後の耐火物が損耗しにくい耐火物の補修方法を提供する。
【解決手段】取鍋又は樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2の補修方法であって、レーザーカッター3を用いて、耐火物2にレーザーを照射し、耐火物2を切断する第1レーザー照射工程と、取鍋又は樋1の内側に型枠を設置し、前記レーザー照射工程で切断された耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、
レーザーカッターを用いて、前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を切断する第1レーザー照射工程と、
前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記レーザー照射工程で切断された耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、
を有する、耐火物の補修方法。
【請求項2】
取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、
レーザーカッターを用いて、前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を溶融する第2レーザー照射工程と、
前記耐火物において、前記第2レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲に対して、打撃を加えて剥離させる打撃付与工程と、
前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記打撃付与工程で剥離した耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、
を有する、耐火物の補修方法。
【請求項3】
取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、
レーザーカッターを用いて、前記鉄皮の側面部と直交する鉛直断面において、一の方向から前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を溶融する第3レーザー照射工程と、
レーザーカッターを用いて、前記鉄皮の側面部と直交する鉛直断面において、他の方向から前記耐火物にレーザーを照射し、前記第3レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲の前記耐火物を剥離させる第4レーザー照射工程と、
前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記第4レーザー照射工程で剥離した耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、
を有する、耐火物の補修方法。
【請求項4】
前記レーザーカッターは、前記鉄皮の側面部と直交する鉛直断面において、前記鉄皮の側面部における前記耐火物の溶損が、前記鉄皮の側面部に最も近い位置まで進行した点Bと、前記耐火物の底面と前記鉄皮の側面部における前記耐火物の内側面とが交差する点Cと、を結ぶ直線Dに沿った方向に、レーザーを照射する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の耐火物の補修方法。
【請求項5】
前記レーザーカッターは、前記耐火物の内側面から前記直線Dに向かう複数の孔が設けられた後に、レーザーを照射する、請求項4に記載の耐火物の補修方法。
【請求項6】
前記レーザーが通過した部分にガスを吹き付けながら前記耐火物にレーザーを照射する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の耐火物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法に関する。
なお、本発明でいう「耐火物の補修方法」とは、取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の解体施工と解体後の補修施工とを含む概念である。
【背景技術】
【0002】
取鍋や樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物は、これら取鍋や樋に収容される溶鋼、溶銑等の溶融金属(メタル)やスラグにより損耗する。このため一般的に、損耗した耐火物を解体し、その後、同材質の補修材(流し込み耐火物)を流し込んで補修する方法が取られている。
従来、内張りされた耐火物の解体方法としては、特許文献1に開示されるような打撃解体による解体方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
打撃解体においては、内張りされた耐火物の損耗していない部分まで破壊することが多く、その結果、補修材の使用量が多くなりコスト高になっていた。また、解体後の耐火物に意図しない凹凸ができやすく、補修材の流し込みの際に凹凸間に空気やスラグが回り込みやすく、補修後の耐火物が損耗しやすくなっていた。さらに、解体後の耐火物に打撃解体時の機械的衝撃による内部欠陥が生じやすく、この点からも補修後の耐火物が損耗しやすくなっていた。
【0005】
そこで本発明が解決しようとする課題は、補修後の耐火物が損耗しにくい耐火物の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の耐火物の補修方法は、取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、レーザーカッターを用いて、前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を切断する第1レーザー照射工程と、前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記レーザー照射工程で切断された耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の耐火物の補修方法は、取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、レーザーカッターを用いて、前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を溶融する第2レーザー照射工程と、前記耐火物において、前記第2レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲に対して、打撃を加えて剥離させる打撃付与工程と、前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記打撃付与工程で剥離した耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の耐火物の補修方法は、取鍋又は樋の鉄皮の内側に内張りされた耐火物の補修方法であって、レーザーカッターを用いて、前記鉄皮の側面部と直交する鉛直断面において、一の方向から前記耐火物にレーザーを照射し、前記耐火物を溶融する第3レーザー照射工程と、レーザーカッターを用いて、前記鉄皮の側面部と直交する鉛直断面において、他の方向から前記耐火物にレーザーを照射し、前記第3レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲の前記耐火物を剥離させる第4レーザー照射工程と、前記取鍋又は樋の内側に型枠を設置し、前記第4レーザー照射工程で剥離した耐火物の切断面と前記型枠との間に補修材を流し込み、耐火物を補修する補修施工工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐火物の解体を最小限にすることができ、補修後の耐火物を損耗しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐火物の補修方法を概念的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る高炉樋において、一対の耐火物の側面部のそれぞれにおける最大溶損点を含み鉄皮の側面部と直交する、鉛直断面を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態である耐火物の補修方法において耐火物解体後の補修施工(補修材の流し込み施工)の要領を示す概念図である。
【
図4】
図3の補修施工完了後の状態を示す概念図である。
【
図5】本発明の他の実施形態である耐火物の補修方法を概念的に示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態である耐火物の補修方法を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1に、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る耐火物の補修方法を概念的に示している。本実施形態では、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2を解体後、補修施工を行う。
一般的に、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2は、耐火物2の鉛直断面において高炉桶1の上側である表層にスラグ材、スラグ材よりも下側に設けられる深層にメタル材を有するが、
図1に示すように、本発明ではスラグ材とメタル材とを区別することなく、一体の耐火物2として説明を行う。後述する
図2から
図6においても同様である。
なお、スラグ材としては、耐スラグ性及び耐熱スポール性に優れる材質、例えば、炭化珪素を多量に含有するアルミナ-炭化珪素-炭素質の耐火物を使用する。また、メタル材としては、耐溶銑性及び耐FeO性に優れる材質、例えば、アルミナ・マグネシア系のスピネルを主材とするアルミナ-スピネル-炭化珪素-炭素質の耐火物を使用する。
【0010】
本実施形態は、レーザーカッター3を用いて、耐火物2にレーザーを照射し、耐火物2を切断する第1レーザー照射工程と、取鍋又は高炉樋1の内側に型枠6を設置し、レーザー照射工程で切断された耐火物2の切断面24と型枠6との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する補修施工工程と、を有する。
レーザーカッター3はファイバーレーザーからなり、制御部5からロボットアーム4に沿って取り付けられ、ファイバーレーザーの照射部3aがロボットアーム4の先端にくるように取り付けられている。ロボットアーム4は、例えば6軸の垂直多関節ロボットアームであり、制御部5からの制御情報に基づき、先端に取り付けられた照射部3aの姿勢や位置を自在に動かすことができ、レーザーの照射位置や方向を変えることが可能である。
なお、レーザーカッター3におけるレーザー光源の種類や出力等は、切断する耐火物2の材質等に応じて適宜決定することができる。言い換えれば、レーザーカッター3のレーザー光源の種類や出力等は、耐火物2を切断できるように適宜決定される。
【0011】
第1レーザー照射工程は、耐火物2の上端面21において切断開始点を決定する。
図2に、切断開始点を決定する段階の一例を概念的に示している。
まず、鉄皮11の側面部12の一つにおいて、耐火物2の側面部22の溶損が、前記鉄皮11の側面部12に最も近い位置まで進行した点である、最大溶損点B(B1)を決定する。高炉樋1の鉄皮11は、対向する一対の側面部12を有するから、対向する逆側の側面部12における耐火物2の側面部22においても、最大溶損点B(B2)を決定する。
最大溶損点B(B1、B2)は、例えば側面部22の表面高さをレーザースキャンすることにより決定することができる。
なお、高炉樋1において耐火物2の側面部22の溶損は、高炉樋1の上側(耐火物2の上端面21側)の方が下側(耐火物2の底面23側)より大きくなる傾向が知られている。また、溶銑や溶鋼などの溶融金属を収容する取鍋においても同様の傾向となることが知られている。更に、高炉樋1や取鍋においては、溶銑や溶鋼が、高炉樋1や取鍋に充填されている際の、溶融金属(メタル)とスラグとの境界に対応する位置(以下「境界位置」という。)及びこの境界位置の直下の領域(以下、この境界位置とその直下の領域を総称して「メタル-スラグ境界部」という。)が、特に損耗しやすいことが知られている。このため、
図2における最大溶損点Bは、メタル-スラグ境界部に対応する。
【0012】
図2は、高炉樋1において、一対の耐火物2の側面部22のそれぞれにおける最大溶損点Bを含み鉄皮11の側面部12と直交する、鉛直断面を示している。この鉛直断面において、耐火物2の内底面23と鉄皮11の側面部22における(損耗後の)耐火物2の内側面22aとが交差する点を点Cとした場合に、最大溶損点Bと点Cとを通る直線Dが、耐火物2の上端面21と交差する点を、切断点Eとする。そして本実施形態では、切断点Eを、鉄皮11の側面部12に沿って高炉桶1の垂直端部まで移動させた点を、切断開始点Fとする(
図1参照)。
【0013】
また、本実施形態では
図1に示すように、切断開始点Fを含みかつ鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面において耐火物2の底面23と(損耗後の)耐火物2の内側面22aとが交差する点を切断終了点Gとする。すなわち、本実施形態の第1レーザー照射工程では、切断開始点Fから切断終了点Gに向けて、レーザーカッター3からレーザーを照射する。そして、レーザーカッター3の照射部3aを、鉄皮11の側面部22に沿って略水平方向に移動させることで、レーザーを切断開始点Fから鉄皮11の側面部12に沿って移動させ(
図1の矢印Aの方向へ移動させ)、耐火物2を鉄皮11の側面部12に沿った形状に切断する。
【0014】
レーザーカッター3の照射部3aを移動しながら耐火物2を切断するときに、照射されたレーザーが通過した部分(切断された側面部22と切断面24との間)に、溶融した耐火物が発生する。この溶融した耐火物は、切断された側面部22と切断面24との間に残留する可能性がある。この場合、溶融した耐火物が冷却されて再度固まるときに切断された側面部22と切断面24とを接着する。そのため、レーザーカッター3を移動しながら耐火物2を切断するときには、照射されたレーザーが通過した部分にガスを吹き付けながら耐火物2を切断することにより、切断された側面部22と切断面24との間に介在する溶融した耐火物を除去するようにしてもよい。ガスとしては、例えば、空気、アルゴン、窒素などを使用することができる。
【0015】
また、レーザーカッター3を用いて耐火物2を切断するときに発生する溶融した耐火物を除去するため、レーザーカッター3を用いて切断する前に、耐火物2の内側面22aから直線D(鉄皮11側)に向かって複数の孔を設けておくこともできる。このようにすることで、溶融した耐火物を孔から排出し除去することができる。孔の位置や数は特に限定されないが、特に側面部22の下部に孔を設けることが好ましい。
なお、孔を設けたうえで、レーザーカッター3を用いて耐火物2を切断するときに、レーザーが通過した部分にガスを吹き付けながら耐火物2を切断することで、溶融した耐火物を孔から効率的に排出し除去することができる。
【0016】
本実施形態は、第1レーザー照射工程に続いて、補修施工工程を有している。補修施工工程では、第1レーザー照射工程の終了後、
図3に示すように高炉樋1の内側に型枠6を設置し、型枠6の外側面61と耐火物2のレーザーカッター3で切断された切断面24との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する。なお、補修材7の材質は耐火物2の材質と同じである。
また、本実施形態において補修材7の流し込み施工は、型枠6の上端部と耐火物2の切断面24との間に例えばホース8などの材料供給部材を挿入して行う。このため、本実施形態において型枠6は、ホース8を挿入する側の型枠6の上端部と耐火物2の切断面24との間の幅がホース8の外径よりも大きくなるように設置されている。
なお、補修材7の流し込みはホース8を使わないで実施することもできる。例えば、材料供給部材として型枠6の上端部と耐火物2の切断面24との間に漏斗やホッパーの先端を挿入し、この材料供給部材を介して補修材7を流し込むこともできる。
【0017】
流し込み後、養生し、加熱して補修材7を乾燥する。その後、型枠6を引き抜く(脱枠する)と、
図4に示すように、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2の補修施工が完了する。
【0018】
以上の通り、本実施形態では、これら第1レーザー照射工程及び補修施工工程を、一対の側面部22のそれぞれについて実施する。これにより、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2の一対の側面部22を解体するとともに、復元することができる。
本実施形態では、耐火物2をレーザーカッター3を用いて切断することにより解体する(以下、この解体方法を「レーザー解体」という。)ことから、その切断面24は
図3に示すように凹凸の少ない平滑な面となる。したがって、補修材7の流し込みの際に凹凸間に空気やスラグが回り込みにくくなり、補修後の耐火物が損耗しにくくなる。また、本実施形態のようなレーザー解体によれば、特許文献1のような打撃解体に比べ解体後の耐火物に機械的衝撃による内部欠陥が生じにくくなり、この点からも補修後の耐火物が損耗しにくくなる。さらに本実施形態では、
図2で説明したように最大溶損点Bを通るようにレーザー解体を行うから、耐火物2の解体範囲を必要最小限に抑えることができる。これにより、補修材7の使用量も必要最小限に抑えることができ、コストを抑えることができる。
【0019】
なお、本実施形態では
図2に示したように、耐火物2の内底面23と鉄皮11の側面部22における(損耗後の)耐火物2の内側面22aとが交差する点Cと、最大溶損点Bとを通るように直線Dを引いたが、直線Dは、
図2において点Cと、最大溶損点Bよりも鉄皮11側にある耐火物2内部の点とを通るように引いてもよい。この場合、本実施形態に比べると耐火物2の解体範囲は若干大きくなるが、特許文献1のような打撃解体に比べると耐火物2の解体範囲を小さくできる。また、耐火物2の切断面も特許文献1のような打撃解体に比べると凹凸の少ない平滑な面となる。したがって、補修後の耐火物が損耗しにくくなる。
【0020】
また、本実施形態では、
図2に示した切断点Eを鉄皮11の側面部22に沿って高炉樋1の垂直端部まで移動させた点を切断開始点Fとしたが(
図1参照)、切断点Eをそのまま切断開始点とすることもできる。補修対象が取鍋の場合、切断点Eをそのまま切断開始点とする方が効率的である。
【0021】
<第2実施形態>
図5に、本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る耐火物の補修方法を概念的に示している。
本実施形態は、レーザーカッター3を用いて、耐火物2にレーザーを照射し、耐火物2を溶融する第2レーザー照射工程と、耐火物2において、第2レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲に対して、打撃を加えて剥離させる打撃付与工程と、取鍋又は樋1の内側に型枠6を設置し、前記打撃付与工程で剥離した耐火物2の切断面24と型枠6との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する補修施工工程と、を有する。
【0022】
本実施形態の第2レーザー照射工程では、
図5(a)に示すように、耐火物2の上端面21のレーザー照射開始点Fから、点Fを含み鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面にある耐火物2の内部の点Hに向かって、レーザーカッター3からレーザーを照射する。このときのレーザーの出力は予め耐火物2の内部の点Hまでを溶融する強度としておく。
【0023】
ここで、本実施形態においてレーザー照射開始点Fは、先の実施形態(第1実施形態)の切断開始点Fと同じである。すなわち、
図2に示す切断点Eをレーザー照射点とし、このレーザー照射点Eを、鉄皮11の側面部12に沿って高炉桶1の垂直端部まで移動させた点Fが、レーザー照射開始点Fとなる。また、耐火物2の内部の点Hは、レーザーによる溶融が及ぶ、深さ方向の限界位置である。
なお、
図2に示すレーザー照射点Eをレーザー照射開始点とし、同図に示す直線D上にある耐火物2の内部の点をレーザー照射終了点とすることもできる。また、直線Dは第1実施形態で説明した通り、
図2における点Cと、最大溶損点Bよりも鉄皮11側にある耐火物2内部の点とを通るように引いてもよい。
【0024】
図1のようにレーザー照射開始点Fから鉄皮11の側面部12に沿って平行にレーザーを移動しながら耐火物2を鉄皮11の側面部12に沿って溶融させる。
【0025】
このように本実施形態では、第2レーザー照射工程によって、耐火物2の側面部22に点Hまでの切り込みを入れる。又は、溶融した耐火物2を再凝固させ、側面部22のうち、レーザー照射開始点Fから点Hまでを部分的にガラス化する。このようにして
図5(b)に示すように、側面部22に境界部Iを作る。
なお、本実施形態においても第1実施形態と同様に、レーザーが通過した部分にガスを吹き付けながら耐火物2を溶融することもできる。また、レーザーカッター3を用いて切断する前に、耐火物2の内側面22aから鉄皮11側に向かって複数の孔を設けるようにすることもできる。
【0026】
本実施形態では打撃付与工程として、
図5(b)に示すように、耐火物2の内側面22a側から、第2レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲に対して、打撃装置9で打撃を加え、
図5(c)に示すように耐火物2の側面部22のうち内側面22a側から境界部Iまでの領域を剥離する。このとき、ガラス化して強度が増した境界部Iが、打撃装置9による耐火物2への打撃の浸透を抑制するので、側面部22のうち境界部Iよりも鉄皮11側の耐火物2は損傷しない。このようにすることで、側面部22の損傷を抑制することができる。
【0027】
本実施形態では、
図5(d)~(g)に示すように上述の第2レーザー照射工程から打撃付与工程までの工程を、耐火物2の上端面21から底面23まで繰り返し行う。このようにして、耐火物2の側面部22を解体する。
本実施形態では、その後、第1実施形態と同様に、補修施工工程を有する。補修施工工程では、第2レーザー照射工程の終了後、
図3に示すように高炉樋1の内側に型枠6を設置し、型枠6の外側面61と打撃付与工程で剥離した耐火物2の切断面24との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する。なお、補修材7の材質は耐火物2の材質と同じである。
以上の通り、本実施形態では、これら第2レーザー照射工程、打撃付与工程及び補修施工工程を、一対の側面部22のそれぞれについて実施する。これにより、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2の一対の側面部22を解体するとともに、復元することができる。
本実施形態では、耐火物2をレーザーカッター3を用いて一部溶融することで、耐火物2が剥離するきっかけを作ることができ、そうしたきっかけを持った溶融された箇所に対して、打撃を加えることで解体を行うので、耐火物2の解体を容易かつ迅速に行うことが可能となる。また、溶融させる範囲が一部の範囲に限定されることから、打撃の際に破壊が及ぶ耐火物2の範囲が限定されることになり、耐火物2の解体範囲を必要最小限に抑えることができる。これにより、補修材7の使用量も必要最小限に抑えることができ、コストを抑えることができる。また、溶融範囲を耐火物2の底面23まで及ぶようにする必要がなくなるため、レーザーカッター3に用いるレーザーの出力を小さいものとすることが可能となる。
【0028】
<第3実施形態>
図6に、本発明の他の実施形態(第3実施形態)に係る耐火物の補修方法を概念的に示している。
本実施形態は、レーザーカッター3を用いて、鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面において、一の方向から耐火物2にレーザーを照射し、耐火物2を溶融する第3レーザー照射工程と、レーザーカッター3を用いて、鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面において、他の方向から耐火物2にレーザーを照射し、前記第3レーザー照射工程におけるレーザーの照射の影響が及ぶ範囲の耐火物2を剥離させる第4レーザー照射工程と、取鍋又は樋1の内側に型枠を設置し、前記第4レーザー照射工程で剥離した耐火物の切断面と型枠7との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する補修施工工程と、を有する。
【0029】
本実施形態の第3レーザー照射工程では、
図6(a)に示すように、鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面において、一の方向である上側から、耐火物2にレーザーを照射する。すなわち、耐火物2の上端面21のレーザー照射開始点Fから、点Fを含み鉄皮11の側面部22と直交する鉛直断面にある耐火物2の内部の点Hに向かって、レーザーカッター3からレーザーを照射する。このときのレーザーの出力は予め耐火物2の内部の点Hまでを溶融する強度としておく。
図1のようにレーザー照射開始点Fから鉄皮11の側面部12に沿ってレーザーカッター3を移動しながら耐火物2を鉄皮11の側面部12に沿って溶融させる。
このように本実施形態では、第3レーザー照射工程によって、耐火物2の側面部22に点Hまでの切り込みを入れる。又は、溶融した耐火物2を再凝固させ、側面部22のうち、レーザー照射開始点Fから点Hまでを部分的にガラス化する。このようにして、側面部22に境界部Iを作る。
【0030】
次に、本実施形態の第4レーザー照射工程では、
図6(b)に示すように、鉄皮11の側面部12と直交する鉛直断面において、他の方向である下側(より詳細には、下方斜め側)から、耐火物2にレーザーを照射する。すなわち、第3レーザー照射工程によって耐火物2に生じた境界部Iに対し、耐火物2の境界部Iの下側となる位置に、下側方向からレーザーを照射し、耐火物2を溶融させ、耐火物2の側面部22のうち内側面22a側から境界部Iまでの領域を剥離する。このとき、第3レーザー照射工程による溶融で、耐火物2の側面部22に付着した部分と境界部Iとは、既に剥離しやすい状態になっているので、第4レーザー照射工程のレーザー照射によって、
図6(c)に示すように、耐火物2を境界部Iごと剥離することができ、耐火物2を不必要に損傷することがない。このようにすることで、側面部22の損傷を抑制することができる。
【0031】
本実施形態では、
図6(a)~(c)に示すように、上述の第3レーザー照射工程から第4レーザー照射工程までの工程を、耐火物2の上端面21から底面23まで繰り返し行う。このようにして、耐火物2の側面部22を解体する。
本実施形態では、その後、第1実施形態と同様に、補修施工工程を有する。補修施工工程では、第4レーザー照射工程の終了後、
図3に示すように高炉樋1の内側に型枠6を設置し、型枠6の外側面61と第4レーザー照射工程で剥離した切断面24との間に補修材7を流し込み、耐火物2を補修する。なお、補修材7の材質は耐火物2の材質と同じである。
以上の通り、本実施形態では、これら第3レーザー照射工程、第4レーザー照射工程及び補修施工工程を、一対の側面部22のそれぞれについて実施する。これにより、高炉樋1の鉄皮11の内側に内張りされた耐火物2の一対の側面部22を解体するとともに、復元することができる。
本実施形態では、耐火物2をレーザーカッター3を用いて上側から一部溶融することで、耐火物2が剥離するきっかけを作ることができ、そうしたきっかけを持った溶融された箇所に対して、下側からレーザー照射を加えることで解体を行うので、耐火物2の解体を容易かつ迅速に行うことが可能となる。また、溶融させる範囲が一部の範囲に限定されることから、レーザー照射の際に破壊が及ぶ耐火物2の範囲が限定されることになり、耐火物2の解体範囲を必要最小限に抑えることができる。これにより、補修材7の使用量も必要最小限に抑えることができ、コストを抑えることができる。また、溶融範囲を耐火物2の底面23まで及ぶようにする必要がなくなるため、レーザーカッター3に用いるレーザーの出力を小さいものとすることが可能となる。
なお、上述の説明は、一の方向を上側から、他の方向を下側からとしたが、これに限定されるものではなく、上下逆にしても良い。すなわち、本実施例の第4レーザー照射工程を第3レーザー照射工程よりも先に行ってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 高炉樋
11 鉄皮
12 鉄皮の側面部
2 耐火物
21 耐火物の上端面
22 耐火物の側面部
22a 耐火物の内側面
23 耐火物の内底面
24 切断面
3 レーザーカッター
3a レーザーカッターの照射部
4 ロボットアーム
5 制御部
6 型枠
7 補修材
8 ホース
9 打撃装置