IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図1
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図2
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図3
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図4
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図5
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図6
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図7
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図8
  • 特開-3レベル電力変換器の制御装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022060921
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】3レベル電力変換器の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/487 20070101AFI20220408BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220408BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168689
(22)【出願日】2020-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】奥山 涼太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA15
5H770DA03
5H770DA33
5H770DA34
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA25
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA04Y
5H770JA18W
(57)【要約】
【課題】出力電流が不平衡であっても、高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とのアンバランスを抑制できる3レベル電力変換器の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置100に備えられる補正回路10は、3レベル電力変換器の基本波の6次調波を生成する生成器14と、基本波の6次調波以外の偶数次調波を生成する生成器15~17と、6次調波と上記の偶数次調波とを出力電圧指令に加算する加算器23~25とを含む。生成器15は、基本波の2次調波を生成する。生成器16は、基本波の4次調波を生成する。生成器17は、基本波の8次調波を生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3レベルの直流電圧を交流電圧に変換する複数のスイッチング素子を含む3レベル電力変換器の制御装置であって、
前記3レベル電力変換器の出力電圧指令を補正する補正回路と、
前記補正回路によって補正された前記出力電圧指令に応じて前記複数のスイッチング素子を制御する制御回路とを備え、
前記補正回路は、
前記3レベル電力変換器の基本波の6次調波を生成する第1生成器と、
前記基本波の6次調波以外の偶数次調波を生成する少なくとも1つの第2生成器と、
前記6次調波と前記偶数次調波とを前記出力電圧指令に加算する加算器とを含む、制御装置。
【請求項2】
前記第1生成器は、正相電圧と前記3レベル電力変換器からの出力電流に含まれる正相電流成分との間の位相角の正負に応じて、前記6次調波の符号を決定し、
前記少なくとも1つの第2生成器は、逆相電圧と前記出力電流に含まれる逆相電流成分との間の位相角の正負に応じて、前記偶数次調波の符号を決定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記3レベル電力変換器は、第1端子と、前記第1端子よりも低電位の第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との中間電位点とを有する直流回路をさらに含み、
前記補正回路は、
前記第1端子と前記中間電位点との間の電圧と、前記中間電位点と前記第2端子との間の電圧との偏差に基づいて、前記第1生成器によって生成される前記6次調波と前記少なくとも1つの第2生成器によって生成される前記偶数次調波との振幅を調整する調整器をさらに含む、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調整器は、前記基本波の1周期における前記偏差の移動平均と予め定められた第1定数との積を前記6次調波と前記偶数次調波とに乗算する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2生成器は、前記基本波の2次調波を生成する2次調波生成器と、前記基本波の4次調波を生成する4次調波生成器と、前記基本波の8次調波を生成する8次調波生成器とのうちの少なくとも1つを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1生成器は、負荷の構成に応じて予め定められた第2定数を振幅とする前記6次調波を生成し、
前記少なくとも1つの第2生成器は、前記2次調波生成器と、前記4次調波生成器と、前記8次調波生成器とを有し、
前記2次調波生成器は、前記負荷の構成に応じて予め定められた第3定数を振幅とする前記2次調波を生成し、
前記4次調波生成器は、前記負荷の構成に応じて予め定められた第4定数を振幅とする前記4次調波を生成し、
前記8次調波生成器は、前記負荷の構成に応じて予め定められた第5定数を振幅とする前記8次調波を生成する、請求項5に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3レベル電力変換器の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力を交流電力に変換するNPC(Neutral-Point-Clamped)方式(中性点クランプ方式)の3レベル電力変換器が知られている。NPC方式の3レベル電力変換器では、コンデンサによって直流電圧を高電位側と低電位側とに均等に分割し、高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とを均等に保持する中性点電位制御が必要になる。
【0003】
特開2013-255317号公報(特許文献1)は、6次調波を出力電圧指令に加算して、出力電圧指令を補正する制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-255317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
6次調波は、3レベル電力変換器の出力電流が正相である場合に、高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とのアンバランスを抑制できる。しかしながら、3レベル電力変換器に接続される負荷の構成に応じて、3レベル電力変換器の出力電流が不平衡となり得る。すなわち、3レベル電力変換器の出力電流に逆相電流成分が含まれうる。逆相電流成分が大きくなると、6次調波では高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とのアンバランスを十分に抑制できない。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、出力電流が不平衡であっても、高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とのアンバランスを抑制できる3レベル電力変換器の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、3レベルの直流電圧を交流電圧に変換する複数のスイッチング素子を含む3レベル電力変換器の制御装置である。制御装置は、3レベル電力変換器の出力電圧指令を補正する補正回路と、補正回路によって補正された出力電圧指令に応じて複数のスイッチング素子を制御する制御回路とを備える。補正回路は、3レベル電力変換器の基本波の6次調波を生成する第1生成器と、基本波の6次調波以外の偶数次調波を生成する少なくとも1つの第2生成器と、6次調波と偶数次調波とを出力電圧指令に加算する加算器とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、出力電流が不平衡であっても、高電位側直流電圧と低電位側直流電圧とのアンバランスを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る3レベル電力変換器の全体構成を示す図である。
図2】参考形態に係る制御装置の構成を示す図である。
図3】制御装置に入力される出力電圧指令Vu,Vv,Vwと、出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算される高調波との一例を示す図である。
図4】高調波として6次調波を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路およびスイッチング回路のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
図5】本実施の形態に係る制御装置の内部構成を示す図である。
図6】高調波として2次調波を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路およびスイッチング回路のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
図7】高調波として4次調波を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路およびスイッチング回路のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
図8】高調波として8次調波を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路およびスイッチング回路のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
図9】変形例に係る3レベル電力変換器の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的には繰り返さないものとする。なお、以下で説明される実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0011】
<3レベル電力変換器の全体構成>
図1は、実施の形態に係る3レベル電力変換器の全体構成を示す図である。図1に示されるように、3レベル電力変換器1は、制御装置100と、直流回路200と、スイッチング回路300と、変流器3U,3V,3Wとを備える。
【0012】
直流回路200は、高電位端子Pと、低電位端子Nと、コンデンサC1,C2とを含む。
【0013】
高電位端子Pは、図示しない直流電源の正極に接続される。低電位端子Nは、直流電源の負極に接続される。これにより、低電位端子Nは、高電位端子Pよりも低電位となる。
【0014】
コンデンサC1,C2は、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。コンデンサC1,C2は、高電位端子Pと低電位端子Nとの間の直流電圧を、高電位側の電圧Vpcと低電位側の電圧Vcnとに分圧する。コンデンサC1とコンデンサC2とは、中性点Cで互いに接続される。
【0015】
スイッチング回路300は、直流回路200における3レベルの直流電圧を三相(U相,V相,W相)交流電圧に変換して、三相交流電圧を負荷5に供給する。スイッチング回路300によって生成される三相交流電圧の各々は、高電位端子Pの電位、中性点Cの電位、低電位端子Nの電位、中性点Cの電位、高電位端子Pの電位、・・・の順で変化する3レベルの交流電圧である。
【0016】
スイッチング回路300は、スイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wを含む。スイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wは、たとえば、ゲート信号によってオン、オフ可能なIGBTなどの自己消弧形半導体素子と逆並列接続ダイオードとによって構成されるスイッチングデバイスである。
【0017】
スイッチング素子S1U~S4Uは、直流電圧をU相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。スイッチング素子S1V~S4Vは、直流電圧をV相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。スイッチング素子S1W~S4Wは、直流電圧をW相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。
【0018】
図1には、T型NPC(Advanced Neutral-Point-Clamped)方式に従った3レベルインバータが示される。すなわち、スイッチング素子S1U,S2Uは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。スイッチング素子S1U,S2Uの接続点2Uと中性点Cとの間には、スイッチング素子S3U,S4Uが、互いに逆の耐圧方向に制御できる方向に直列接続されている。同様に、スイッチング素子S1V,S2Vは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。スイッチング素子S1V,S2Vの接続点2Vと中性点Cとの間には、スイッチング素子S3V,S4Vが、互いに逆の耐圧方向に制御できる方向に直列接続されている。スイッチング素子S1W,S2Wは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。スイッチング素子S1W,S2Wの接続点2Vと中性点Cとの間には、スイッチング素子S3W,S4Wが、互いに逆の耐圧方向に制御できる方向に直列接続されている。
【0019】
接続点2U,2V,2WからU相,V相,W相の交流電力が負荷5にそれぞれ出力される。
【0020】
接続点2Uの電位は、スイッチング素子S1U~S4Uの状態に応じて、高電位端子Pの電位、中性点Cの電位、低電位端子Nの電位のいずれかをとる。たとえば、スイッチング素子S1U,S4Uがオンであり、スイッチング素子S2U,S3Uがオフであるとき、接続点2Uの電位は、高電位端子Pの電位となる。スイッチング素子S1U,S4Uがオフであり、スイッチング素子S2U,S3Uがオンであるとき、接続点2Uの電位は、低電位端子Nの電位となる。スイッチング素子S1U,S2Uがオフであり、スイッチング素子S3U,S4Uがオンであるとき、接続点2Uの電位は、中性点Cの電位となる。
【0021】
同様に、接続点2Vの電位は、スイッチング素子S1V~S4Vの状態に応じて、高電位端子Pの電位、中性点Cの電位、低電位端子Nの電位のいずれかをとる。接続点2Wの電位は、スイッチング素子S1W~S4Wの状態に応じて、高電位端子Pの電位、中性点Cの電位、低電位端子Nの電位のいずれかをとる。
【0022】
変流器3U,3V,3Wは、接続点2U,2V,2Wと負荷5との間にそれぞれ設けられる。変流器3U,3V,3Wは、接続点2U,2V,2Wから負荷5に流出する出力電流iu,iv,iwの値をそれぞれ測定する。変流器3U,3V,3Wは、測定した出力電流iu,iv,iwの値を制御装置100に出力する。
【0023】
制御装置100は、スイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wの各々をPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより、接続点2U,2V,2WからU相,V相,W相の交流電力を出力させる。図1に示されるように、制御装置100は、補正回路10と、PWM制御回路40とを備える。
【0024】
補正回路10は、3レベル電力変換器1の出力電圧指令Vu,Vv,Vwを補正する。出力電圧指令Vuは、U相の出力電圧指令であり、制御装置100が記憶する位相θの正弦波sinθに同期した信号である。出力電圧指令Vvは、V相の出力電圧指令であり、出力電圧指令Vuに対して120°遅れた信号である。出力電圧指令Vwは、W相の出力電圧指令であり、出力電圧指令Vuに対して120°進んだ信号である。
【0025】
PWM制御回路40は、補正回路10によって補正された出力電圧指令Vu,Vv,Vwに応じてスイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wを制御する。具体的には、PWM制御回路40は、補正された出力電圧指令Vu,Vv,Vwと搬送波信号とを比較することにより、スイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wのオン/オフをそれぞれPWM制御する。
【0026】
<参考形態に係る制御装置>
本実施の形態に係る制御装置100の内部構成を説明する前に、図2を参照して、参考形態に係る制御装置の構成について説明する。
【0027】
図2は、参考形態に係る制御装置900の構成を示す図である。図2に示されるように、制御装置900は、演算部91と、極性判定器92と、正弦波発生器93と、減算器94と、アンプ95と、乗算器96と、加算器97~99と、PWM制御回路40とを備える。以下、図1に示す3レベル電力変換器1において制御装置100の代わりに制御装置900を適用したと仮定したときの、制御装置900の各構成の動作について説明する。
【0028】
演算部91は、出力電圧指令Vu,Vv,Vwと出力電流iu,iv,iwとに基づいて、3レベル電力変換器1から出力される無効電力を演算し、演算結果を出力する。演算部91から出力される無効電力は、出力電圧指令Vu,Vv,Vwに対して出力電流iu,iv,iwの位相が遅れているとき(つまり、誘導負荷に応じて遅れ無効電力を出力しているとき)、正となるように定義されている。演算部91から出力される無効電力は、出力電圧指令Vu,Vv,Vwに対して出力電流iu,iv,iwの位相が進んでいるとき(つまり、容量負荷に応じて進み無効電力を出力しているとき)、負となるように定義されている。
【0029】
演算部91は、たとえば、出力電圧指令と同じ位相の基準正弦波を用いて、出力電流iu,iv,iwをdq変換することにより得られるq軸成分に基づいて、無効電力を演算すればよい。
【0030】
極性判定器92は、演算部91から出力される無効電力の値の正負の判定結果を出力する。極性判定器92は、無効電力の値が正であるとき(つまり、誘導負荷に応じて遅れ無効電力を出力しているとき)、判定結果「1」を出力する。極性判定器92は、無効電力の値が負であるとき(つまり、容量負荷に応じて進み無効電力を出力しているとき)、判定結果「-1」を出力する。
【0031】
正弦波発生器93は、3レベル電力変換器1の基本波の6倍の周波数を有する6次調波を発生させる。正弦波発生器93は、発生させた6次調波に対して、極性判定器92から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された6次調波を出力する。
【0032】
なお、3レベル電力変換器1の基本波は、制御装置100が記憶する位相θの正弦波sinθに同期する。すなわち、基本波は、U相の出力電圧指令Vuと同期する。
【0033】
減算器94は、3レベル電力変換器1における電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差(Vpc-Vcn)を演算する。減算器94によって演算された偏差は、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスの度合いを示す。
【0034】
アンプ95は、減算器94によって演算された偏差に予め定められたゲインKを乗算し、乗算結果を出力する。
【0035】
乗算器96は、正弦波発生器93から出力される6次調波とアンプ95の出力とを乗算し、6次調波の振幅を調整する。
【0036】
乗算器96は、電圧Vpcと電圧Vcnとの大小関係に応じて、6次調波の符号を切り替える。アンプ95の出力の符号は、電圧Vpcと電圧Vcnとの大小関係に応じて、変化する。具体的には、電圧Vpc>電圧Vcnの場合、アンプ95の出力は正となる。電圧Vpc<電圧Vcnの場合、アンプ95の出力は負となる。そのため、乗算器96は、電圧Vpc>電圧Vcnの場合、正弦波発生器93から出力される6次調波の符号を反転させない。乗算器96は、電圧Vpc<電圧Vcnの場合、正弦波発生器93から出力される6次調波の符号を反転させる。
【0037】
加算器97~99は、U相,V相,W相の出力電圧指令Vu,Vv,Vwに乗算器96の出力を加算することにより、出力電圧指令Vu,Vv,Vwを補正する。
【0038】
PWM制御回路40は、加算器97~99によって補正された出力電圧指令Vu,Vv,Vwに応じてスイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wをそれぞれ制御する。
【0039】
3レベル電力変換器1において制御装置100の代わりに参考形態に係る制御装置900を適用すると、進み無効電力か遅れ無効電力かに応じて6次調波の符号が決定され、当該6次調波が出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算される。
【0040】
<参考形態に係る制御装置を適用したときの問題点>
次に、図2に示す参考形態に係る制御装置900を3レベル電力変換器1に適用したときの問題点について説明する。
【0041】
出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算される高調波の振幅(大きさ)をΔhとし、高調波の次数をhとし、基本波に対する高調波の位相差をφhとすると、出力電圧は以下の式で表される。
【0042】
【数1】
【0043】
式(1)は、U相の出力電圧kuを示す。式(2)は、V相の出力電圧kvを示す。式(3)は、W相の出力電圧kwを示す。出力電圧ku,kv,kwは、PWM制御回路40に入力される、補正後の出力電圧指令に対応する。
【0044】
3レベル電力変換器1に接続される負荷5の構成によっては、出力電流が不平衡となり、出力電流に逆相電流成分が生じうる。
【0045】
出力電流に含まれる正相電流成分の振幅(大きさ)をIp、正相電流成分の位相をφp、出力電流に含まれる逆相電流成分の振幅(大きさ)をIn、逆相電流成分の位相をφnとすると、出力電流は以下の式で表される。
【0046】
【数2】
【0047】
式(4)は、U相の出力電流iuを示す。式(5)は、V相の出力電流ivを示す。式(6)は、W相の出力電流iwを示す。
【0048】
図3は、制御装置に入力される出力電圧指令Vu,Vv,Vwと、出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算される高調波との一例を示す図である。図3において、実線50U,50V,50Wは、出力電圧指令Vu,Vv,Vwをそれぞれ示す。実線50Hは、高調波の一例である6次調波を示す。図3に示す例では、U相の出力電圧kuは、実線50Uと実線50Hとを加算した波形となる。V相の出力電圧kvは、実線50Vと実線50Hとを加算した波形となる。W相の出力電圧kwは、実線50Wと実線50Hとを加算した波形となる。
【0049】
図4は、高調波として6次調波(つまり、h=6)を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路200およびスイッチング回路300のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
【0050】
図4(a)には、出力電流が正相電流成分のみであると仮定したときの(つまり、In=0)、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力の結果が示される。図4(b)には、出力電流が逆相電流成分のみであると仮定したときの(つまり、Ip=0)、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力の結果が示される。図4(a)(b)に示されるグラフにおいて、横軸は、基本波に対する高調波の位相差φhを示し、縦軸は、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力を示す。抑制能力の絶対値が大きいほど、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差がより抑制されている。
【0051】
図4に示されるように、6次調波は、正相電流成分のみが出力されているとき、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。しかしながら、6次調波は、逆相電流成分のみが出力されているとき、Inおよびφhがどのような値であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できない。
【0052】
そのため、図2に示す制御装置900を3レベル電力変換器1に適用したとき、負荷5の構成に応じて出力電流が不平衡となり、出力電流に占める逆相電流成分が大きくなると、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを十分に抑制できなくなる。
【0053】
<本実施の形態に係る制御装置の構成>
図5は、本実施の形態に係る制御装置100の内部構成を示す図である。図5に示されるように、補正回路10は、演算部11と、極性判定器12,13と、生成器14~17と、加算器18~20と、減算器21と、調整器22と、加算器23~25とを含む。
【0054】
演算部11は、変流器3U,3V,3Wによって測定された出力電流iu,iv,iwの値に基づいて、出力電流に含まれる正相電流成分による無効電力(以下、「正相無効電力」と称する。)と、出力電流に含まれる逆相電流成分による無効電力(以下、「逆相無効電力」と称する。)とを演算する。
【0055】
演算部11から出力される正相無効電力は、正相電圧に対して正相電流成分の位相が遅れているとき(つまり、誘導負荷に応じて遅れ無効電力を出力しているとき)、正となるように定義されている。演算部11から出力される正相無効電力は、正相電圧に対して正相電流成分の位相が進んでいるとき(つまり、容量負荷に応じて進み無効電力を出力しているとき)、負となるように定義されている。
【0056】
同様に、演算部11から出力される逆相無効電力は、逆相電圧に対して逆相電流成分の位相が遅れているとき(つまり、誘導負荷に応じて遅れ無効電力を出力しているとき)、正となるように定義されている。演算部11から出力される逆相無効電力は、逆相電圧に対して逆相電流成分の位相が進んでいるとき(つまり、容量負荷に応じて進み無効電力を出力しているとき)、負となるように定義されている。
【0057】
演算部11は、たとえば三相二相変換などの公知の演算方法を用いて、出力電流iu,iv,iwから正相無効電力および逆相無効電力を演算すればよい。
【0058】
たとえば、演算部11は、以下の式(7)に従って、出力電流iu,iv,iwを交流電流iα,iβに三相二相変換する。
【0059】
【数3】
【0060】
次に、交流電流iα,iβを以下の式(8)に従ってdq変換する。dq変換により得られるd軸成分idおよびq軸成分iqは、有効電力および無効電力をそれぞれ示す。dq変換において、出力電圧の位相θを使用することにより、正相電流による有効電力と無効電力(正相無効電力)とが演算される。dq変換において、位相-θを使用することにより、逆相電流による有効電力と無効電力(逆相無効電力)とが演算される。
【0061】
【数4】
【0062】
q軸成分は、電圧に対して電流成分の位相が遅れているときに負となり、電圧に対して電流成分の位相が進んでいるときに正となる。そのため、演算部11は、q軸成分に-1を乗算することにより、正相無効電力および逆相無効電力を演算すればよい。
【0063】
演算部11は、演算された正相無効電力を極性判定器12に出力し、演算された逆相無効電力を極性判定器13に出力する。
【0064】
極性判定器12は、正相無効電力が正であるときに判定結果「1」を出力し、正相無効電力が負であるときに判定結果「-1」を出力する。
【0065】
極性判定器13は、逆相無効電力が正であるときに判定結果「1」を出力し、逆相無効電力が負であるときに判定結果「-1」を出力する。
【0066】
生成器14は、3レベル電力変換器1の基本波の6次調波を生成する。生成器14は、正弦波発生器27と、アンプ28とを有する。
【0067】
正弦波発生器27は、基本波の6倍の周波数を有する6次調波を発生させる。正弦波発生器27は、発生させた6次調波に対して、極性判定器12から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された6次調波を出力する。
【0068】
アンプ28は、正弦波発生器27から出力される6次調波に、負荷5の構成に応じて予め定められたゲインK2を乗算し、乗算結果を出力する。
【0069】
生成器15は、3レベル電力変換器1の基本波の2次調波を生成する。生成器15は、正弦波発生器29と、アンプ30とを有する。
【0070】
正弦波発生器29は、基本波の2倍の周波数を有する2次調波を発生させる。正弦波発生器29は、発生させた2次調波に対して、極性判定器13から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された2次調波を出力する。
【0071】
アンプ30は、正弦波発生器29から出力される2次調波に、負荷5の構成に応じて予め定められたゲインK3を乗算し、乗算結果を出力する。
【0072】
生成器16は、3レベル電力変換器1の基本波の4次調波を生成する。生成器16は、正弦波発生器31と、アンプ32とを有する。
【0073】
正弦波発生器31は、基本波の4倍の周波数を有する4次調波を発生させる。正弦波発生器31は、発生させた4次調波に対して、極性判定器13から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された4次調波を出力する。
【0074】
アンプ32は、正弦波発生器31から出力される4次調波に、負荷5の構成に応じて予め定められたゲインK4を乗算し、乗算結果を出力する。
【0075】
生成器17は、3レベル電力変換器1の基本波の8次調波を生成する。生成器17は、正弦波発生器33と、アンプ34とを有する。
【0076】
正弦波発生器33は、基本波の8倍の周波数を有する8次調波を発生させる。正弦波発生器33は、発生させた8次調波に対して、極性判定器13から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された8次調波を出力する。
【0077】
アンプ34は、正弦波発生器33から出力される8次調波に、負荷5の構成に応じて予め定められたゲインK5を乗算し、乗算結果を出力する。
【0078】
加算器18は、生成器16から出力される4次調波に生成器17から出力される8次調波を加算する。加算器19は、生成器15から出力される2次調波に加算器18の出力を加算する。加算器20は、生成器14から出力される6次調波に加算器19の出力を加算する。加算器20は、生成器14~17からそれぞれ出力される6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の和を出力する。
【0079】
減算器21は、3レベル電力変換器1における電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差(Vpc-Vcn)を演算する。減算器21によって演算された偏差は、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスの度合いを示す。
【0080】
調整器22は、減算器21によって演算された偏差に基づいて、加算器20から出力される6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の振幅を調整する。
【0081】
さらに、調整器22は、電圧Vpcと電圧Vcnとの大小関係に応じて、加算器20から出力される6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の符号を切り替える。具体的には、調整器22は、電圧Vpc>電圧Vcnの場合、6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の符号を反転させない。調整器22は、電圧Vpc<電圧Vcnの場合、6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の符号を反転させる。
【0082】
調整器22は、平均算出部35と、アンプ36と、乗算器37とを有する。平均算出部35は、基本波の1周期における偏差の移動平均を算出する。アンプ36は、平均算出部35によって算出された移動平均に予め定められたゲインK1を乗算する。乗算器37は、アンプ36の出力と加算器20の出力とを乗算する。このようにして、調整器22は、基本波の1周期における偏差の移動平均と予め定められたゲインK1との積を6次調波、2次調波、4次調波および8次調波に乗算する。
【0083】
加算器23~25は、U相,V相,W相の出力電圧指令Vu,Vv,Vwに調整器22の出力を加算することにより、出力電圧指令Vu,Vv,Vwを補正する。
【0084】
PWM制御回路40は、加算器23~25によって補正された出力電圧指令Vu,Vv,Vwに応じてスイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wを制御する。
【0085】
<作用・効果>
以上のように、本実施の形態に係る制御装置100は、補正回路10と、PWM制御回路40とを備える。補正回路10は、3レベル電力変換器1の出力電圧指令Vu,Vv,Vwを補正する。PWM制御回路40は、補正回路10によって補正された出力電圧指令に応じてスイッチング素子S1U~S4U,S1V~S4V,S1W~S4Wを制御する。
【0086】
補正回路10は、3レベル電力変換器1の基本波の6次調波を生成する生成器14と、基本波の6次調波以外の偶数次調波を生成する生成器15~17と、6次調波と上記の偶数次調波とを出力電圧指令に加算する加算器23~25とを含む。生成器15は、基本波の2次調波を生成する。生成器16は、基本波の4次調波を生成する。生成器17は、基本波の8次調波を生成する。
【0087】
図4を参照して上述したように、6次調波は、正相電流成分のみが出力されているとき、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。そのため、補正回路10が6次調波を生成する生成器14を含むことにより、出力電流に占める正相電流成分の割合が大きい場合であっても、制御装置100は、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0088】
図6は、高調波として2次調波(つまり、h=2)を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路200およびスイッチング回路300のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。図7は、高調波として4次調波(つまり、h=4)を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路200およびスイッチング回路300のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。図8は、高調波として8次調波(つまり、h=8)を出力電圧指令Vu,Vv,Vwに加算したときの、図1に示す直流回路200およびスイッチング回路300のモデルを用いたシミュレーション結果を示す図である。
【0089】
図6図8において、(a)には、出力電流が正相電流成分のみであると仮定したときの(つまり、In=0)、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力の結果が示される。(b)には、出力電流が逆相電流成分のみであると仮定したときの(つまり、Ip=0)、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力の結果が示される。図6~8に示されるグラフにおいて、横軸は、基本波に対する高調波の位相差φhを示し、縦軸は、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差の抑制能力を示す。抑制能力の絶対値が大きいほど、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差がより抑制されている。
【0090】
図6図8に示されるように、2次調波、4次調波および8次調波は、正相電流成分のみが出力されているとき、Ipおよびφhがどのような値であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できない。しかしながら、2次調波、4次調波および8次調波は、逆相電流成分のみが出力されているとき、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。そのため、補正回路10が2次調波、4次調波および8次調波をそれぞれ生成する生成器15~17を含むことにより、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合であっても、制御装置100は、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0091】
このように、制御装置100は、負荷5の構成に応じて出力電流が不平衡となり、出力電流に占める逆相電流成分が大きい場合であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0092】
生成器14は、負荷5の構成に応じて予め定められた定数であるゲインK2を振幅とする6次調波を生成する。生成器15は、負荷5の構成に応じて予め定められた定数であるゲインK3を振幅とする2次調波を生成する。生成器16は、負荷5の構成に応じて予め定められた定数であるゲインK4を振幅とする4次調波を生成する。生成器17は、負荷5の構成に応じて予め定められた定数であるゲインK5を振幅とする8次調波を生成する。
【0093】
負荷5の構成に応じて、出力電流に占める正相電流成分および逆相電流成分の割合は、異なる。そのため、3レベル電力変換器1に接続される負荷5の構成に応じて、ゲインK2~K5の大きさが予め定められることにより、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを効率的に抑制できる。
【0094】
また、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合、2次調波、4次調波および8次調波の各々による電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスの抑制効果は、負荷5の構成に応じて異なる。そのため、3レベル電力変換器1に接続される負荷5の構成に応じて、ゲインK3~K5の大きさが予め定められることにより、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを効率的に抑制できる。
【0095】
このように、生成器14~17によって生成される高調波の振幅(すなわち、ゲインK2~K5)が負荷5の構成に応じて予め定められることにより、様々な種類の負荷5に適用可能な3レベル電力変換器1を提供できる。言い換えると、3レベル電力変換器1に接続される負荷5の自由度を高めることができる。
【0096】
生成器14は、基本波の6倍の周波数を有する6次調波を発生させる正弦波発生器27を有する。正弦波発生器27は、発生させた6次調波に対して、極性判定器12から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された6次調波を出力する。極性判定器12は、正相無効電力が正であるときに判定結果「1」を出力し、正相無効電力が負であるときに判定結果「-1」を出力する。すなわち、生成器14は、正相電圧と3レベル電力変換器1からの出力電流に含まれる正相電流成分との間の位相角の正負に応じて、6次調波の符号を決定する。
【0097】
生成器15~17は、基本波の2,4,8倍の周波数を有する2次調波,4次調波,8次調波を発生させる正弦波発生器29,31,33をそれぞれ有する。正弦波発生器29,31,33は、発生させた偶数次調波に対して、極性判定器13から出力される判定結果を乗算し、判定結果が乗算された偶数次調波を出力する。極性判定器13は、逆相無効電力が正であるときに判定結果「1」を出力し、逆相無効電力が負であるときに判定結果「-1」を出力する。すなわち、生成器15~17は、逆相電圧と3レベル電力変換器1からの出力電流に含まれる逆相電流成分との間の位相角の正負に応じて、偶数次調波の符号を決定する。
【0098】
特許文献1に記載されているように、遅れ力率か進み力率に応じて、すなわち、遅れ無効電力か進み無効電力かに応じて、高調波の極性を切り替える必要がある。
【0099】
本実施の形態によれば、出力電流に占める正相電流成分の割合が大きい場合に電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制する6次調波の符号は、正相電圧と出力電流に含まれる正相電流成分との間の位相角の正負に応じて決定される。これにより、正相無効電力が遅れ無効電力および進み無効電力のいずれであっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0100】
同様に、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合に電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制する2次調波,4次調波,8次調波の符号は、逆相電圧と出力電流に含まれる逆相電流成分との間の位相角の正負に応じて決定される。これにより、逆相無効電力が遅れ無効電力および進み無効電力のいずれであっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0101】
補正回路10は、電圧Vpcと電圧Vcnとの偏差に基づいて、生成器14~17によってそれぞれ生成される6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の振幅を調整する調整器22をさらに含む。これにより、6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の振幅は、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスの抑制に適した大きさに調整される。
【0102】
調整器22は、基本波の1周期における偏差の移動平均と予め定められたゲインK1との積を6次調波、2次調波、4次調波および8次調波に乗算する。これにより、6次調波、2次調波、4次調波および8次調波の振幅の調整の際に、新たな高調波の発生を抑制できる。新たな高調波の発生が抑制されることにより、出力電圧へのノイズの発生が抑制される。
【0103】
<変形例>
上記の説明では、制御装置100の補正回路10は、6次調波以外の偶数次調波を生成する生成器として、3つの生成器15~17を含む。しかしながら、補正回路10は、生成器15~17のうちの1つまたは2つの生成器のみを含んでもよい。図6図8に示されるように、6次調波以外の2次調波、4次調波および8次調波の各々は、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを効率的に抑制できる。そのため、生成器15~17のうちの1つまたは2つの生成器のみを含むことにより、出力電流に占める逆相電流成分の割合が大きい場合であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを効率的に抑制できる。
【0104】
上記の説明では、スイッチング回路300は、T型NPC方式に従った3レベルインバータを構成する。しかしながら、スイッチング回路300の構成はこれに限定されない。たとえば、スイッチング回路は、NPC方式に従った3レベルインバータを構成してもよい。
【0105】
図9は、変形例に係る3レベル電力変換器の全体構成を示す図である。図9に示す3レベル電力変換器1Aは、図1に示す3レベル電力変換器1と比較して、スイッチング回路300の代わりにスイッチング回路300Aを備える。
【0106】
スイッチング回路300Aは、スイッチング素子S5U~S8U,S5V~S8V,S5W~S8Wと、ダイオードD1U,D2U,D1V,D2V,D1W,D2Wとを含む。
【0107】
スイッチング素子S5U~S8U,S5V~S8V,S5W~S8Wは、たとえば、ゲート信号によってオン、オフ可能なIGBTなどの自己消弧形半導体素子と逆並列接続ダイオードとによって構成されるスイッチングデバイスである。
【0108】
スイッチング素子S5U~S8Uは、直流電圧をU相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。スイッチング素子S5V~S8Vは、直流電圧をV相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。スイッチング素子S5W~S8Wは、直流電圧をW相の交流電圧に変換する3レベルインバータを構成する。
【0109】
図9には、NPC方式に従った3レベルインバータが示される。すなわち、スイッチング素子S5U~S8Uは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。ダイオードD1Uのカソードはスイッチング素子S5U,S6Uの接続点に接続され、ダイオードD1Uのアノードは中性点Cに接続される。ダイオードD2Uのアノードはスイッチング素子S7U,S8Uの接続点に接続され、ダイオードD2Uのカソードは中性点Cに接続される。
【0110】
同様に、スイッチング素子S5V~S8Vは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。ダイオードD1Vのカソードはスイッチング素子S5V,S6Vの接続点に接続され、ダイオードD1Vのアノードは中性点Cに接続される。ダイオードD2Vのアノードはスイッチング素子S7V,S8Vの接続点に接続され、ダイオードD2Vのカソードは中性点Cに接続される。
【0111】
スイッチング素子S5W~S8Wは、高電位端子Pと低電位端子Nとの間に直列に接続される。ダイオードD1Wのカソードはスイッチング素子S5W,S6Wの接続点に接続され、ダイオードD1Wのアノードは中性点Cに接続される。ダイオードD2Wのアノードはスイッチング素子S7W,S8Wの接続点に接続され、ダイオードD2Wのカソードは中性点Cに接続される。
【0112】
スイッチング素子S6U,S7Uの接続点4UからU相の交流電力が負荷5に出力される。スイッチング素子S6V,S7Vの接続点4VからV相の交流電力が負荷5に出力される。スイッチング素子S6W,S7Wの接続点4WからW相の交流電力が負荷5に出力される。
【0113】
接続点4U,4V,4Wの電位は、それぞれスイッチング素子S5U~S8U,S5V~S8V,S5W~S8Wの状態に応じて、高電位端子Pの電位、中性点Cの電位、低電位端子Nの電位のいずれかをとる。
【0114】
制御装置100は、図9に示すスイッチング回路300Aを備える3レベル電力変換器1Aにも適用される。これにより、出力電流が不平衡であっても、電圧Vpcと電圧Vcnとのアンバランスを抑制できる。
【0115】
今回開示された実施の形態がすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1,1A レベル電力変換器、2U,2V,2W,4U,4V,4W 接続点、3U,3V,3W 変流器、10 補正回路、11,91 演算部、12,13,92 極性判定器、14~17 生成器、18~20,23,25,97~99 加算器、21,94 減算器、22 調整器、27,29,31,33,93 正弦波発生器、28,30,32,34,36,95 アンプ、35 平均算出部、37,96 乗算器、40 PWM制御回路、100,900 制御装置、200 直流回路、300,300A スイッチング回路、C 中性点、C1,C2 コンデンサ、D1U,D2U,D1V,D2V,D1W,D2W ダイオード、N 低電位端子、P 高電位端子、S1U~S8U,S1V~S8V,S1W~S8W スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9