(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061007
(43)【公開日】2022-04-15
(54)【発明の名称】車両用のラジエーター組立体
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20220408BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220408BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20220408BHJP
F28F 1/06 20060101ALI20220408BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
F28F1/32 V
F28D1/053 Z
F28F1/02 Z
F28F1/06
F28F1/32 X
B60K11/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021151735
(22)【出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】10 2020 212 130.3
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504344886
【氏名又は名称】ブローズ ファールツォイクタイレ エスエー ウント シーオー. カーゲー, コブルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO. KG, COBURG
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ザンダー・ヤン
(57)【要約】
【課題】車両用の改良したラジエーター組立体の提供。
【解決手段】特に、一つのヒートシンク(1.1)で、ヒートシンク(1.1)の二つのクーラントの通路(10A、10B,10C)間に延びる複数のリブ(11)が、少なくとも二つの異なる冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の中に分割され、そこではラジエーター組立体のラジエーターファンモジュール(2)が、ラジエーターファンモジュール(2)からヒートシンク(1.1)の方向に向かう視線方向に沿って、少なくとも異なる冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の第一の冷却区域(Z1)を少なくとも部分的に覆い、また、第一の冷却区域(Z1)において隣り合う二つのリブ(11)の間にある隙間(111)の一つの隙間の幅(d2)が、少なくとも二つの異なる冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の第二の冷却区域(Z2A,Z2B)におけるよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
―互いに間隔を開けて延びる少なくとも二つのクーラントの通路(10A、10B,10C)を持つ少なくとも一つのヒートシンク(1.1)と、少なくとも二つのクーラントの通路の間に延びる複数のリブ(11)を有しており、その複数のリブ(11)のそれぞれ二つのリブ(11)の間に冷却空気を流すための隙間(111,112)が形成されるラジエーター(1)と、
―ヒートシンク(1.1)の方向に冷却空気の流れを向けるために少なくとも一つのファンホイール(21)を含むラジエーター・ファンモジュール(2)と、
を有する自動車用のラジエーター組立体において、
二つのクーラントの通路(10A、10B,10C)の間に延びる複数の前記リブ(11)が、前記ヒートシンク(1.1)の中で、少なくとも二つの異なる冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)に分割され、前記ラジエーターファンモジュール(2)が前記ラジエーターファンモジュール(2)からヒートシンク(1.1)の方向の視線に沿って、少なくとも異なる二つの前記冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の第一の冷却区域(Z1)を少なくとも部分的に覆い、また前記第一の冷却区域(Z1)で二つのリブ(11)の間にある隙間(111)の隙間幅(d2)が前記の少なくとも二つの異なる冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の第二の冷却区域(Z2A,Z2B)におけるより大きいことを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のラジエーター組立体において、少なくとも部分的に前記ラジエーターファンモジュール(2)で覆われた前記第一の冷却区域(Z2A,Z2B)の中で前記の複数のそれぞれ二つのリブ(11)の間の隙間(111)が異なったまたは同じ隙間の幅(d1)を持つことを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項3】
請求項2に記載のラジエーター組立体において、前記異なったまたは同じ隙間の幅(d1)がそれぞれ前記第二の冷却区域(Z2A,Z2B)のそれぞれ隣り合う二つのリブ(11)の間の前記隙間の幅(d1)より大きいことを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、前記第一の冷却区域(Z1)の中で隣り合う二つのリブ(11)の間の隙間の幅(d1)が、前記第二の冷却区域(Z2A,Z2B)の中の隣り合う二つのリブ(11)の間の最大の隙間の幅(d2)より、それぞれ少なくとも約1.2倍、大きいことを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、少なくとも二つの異なる前記冷却区域(Z1,Z2A,Z2B)の、それぞれ二つの隣り合う前記リブ(11)の間の異なる前記隙間の幅(d1,d2)が互いに調整されて与えられており、
前記ヒートシンク(1.1)の方に向かう、前記ラジエーター組立体への冷却空気の特定の流入によって特徴づけられる、少なくとも定められた動作点により、前記第一の冷却区域(Z1)の中の複数の前記リブ(11)に接して通る前記冷却空気の流れの一部分として流れる流入冷却空気の一部分の流速が、第二の前記冷却区域(Z2A,Z2B)の中の複数の前記リブ(11)に接して通る前記冷却空気の流れのその他の一部分として流れる流入冷却空気の一部分の流速に、実質的にまたは十分に等しいことを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、前記リブ(11)がそれぞれ直線的に延びるように形成されることを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、リブ(11)が二つのクーラントの通路(10A、10B; 10B,10C)を連結することを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、前記ラジエーター・ファンモジュール(2)が、影響を与える冷却空気の流れに関連して、前記ヒートシンク(1.1)の上流に配置されて、前記第一のラジエーター・ファンモジュール(2)で少なくとも部分的に覆われた冷却区域(Z1)が前記ヒートシンク(1.1)の中央の区域を含み、前記ラジエーター・ファンモジュール(2)が少なくとも二つのエッジ(24A,24B)を持ち、そこを通り過ぎて冷却空気が、前記ヒートシンク(1.1)の少なくとも二つの第二の冷却区域(Z2A,Z2B)の方向に流れることを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、少なくとも一つのクーラントの通路(10A、10B,10C)が、花の形の断面(100.1)を有することを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、少なくとも一つのクーラントの通路(10A、10B,10C)が、水滴のような形で後縁部(102B)に向かって先細りする切断面(100.2)を有することを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のラジエーター組立体において、少なくとも一つのクーラントの通路(10A、10B,10C)および/または前記複数のリブ(11)が付加製造されることを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項12】
互いに間隔を置いて延びる少なくとも二つのクーラントの通路(10A、10B,10C)を有する、少なくとも一つのヒートシンク(1.1)を有するラジエーター(1)を持つ自動車用のラジエーター組立体において、少なくとも一つのクーラントの通路(10A、10B,10C)が花の形の断面(100.1)を有することを特徴とするラジエーター組立体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のラジエーター組立体を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用のラジエーター組立体(Kuehlerbaugruppe)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用、特に自動車用のラジエーター組立体は広く公知である。このようなラジエーター組立体の部品は、車両の駆動用モータ(Antreibsmotor)を冷却するためのラジエーターで、この目的のために、複数のクーラントの通路を有するヒートシンク(Kuehlkoerper)を少なくとも一つ含んでいる。クーラントの通路は互いに間隔を明けて、典型的には平行に延びている。モーター室から熱を排出するために、クーラント通路の中を冷却液が流れる。排熱性を改善するために複数のリブが配置され、それらはそれぞれ少なくとも二つのクーラントの通路の間に延び、またそれらの間にラジエーターファンモジュールのための隙間が形成される。リブによって、クーラントの通路の冷却液からの熱を、流れている冷却空気に放出する。
【0003】
さらに、このようなラジエーター組立体において、ヒートシンクに向かう冷却空気の流れに影響を与えるために、少なくとも一つのファンホイール(Luefterrad)を含んでいるラジエーターファンモジュールを配置することは公知である。さらに、このようなラジエーターファンモジュールによって、例えば車両がゆっくり走行している、または停止している時、(追加の)冷却空気流が、少なくとも一つのファンホイールの回転によって生成される。車両の走行時、ラジエーター組立体にあたる冷却空気の流入に基づいて冷却空気
の流れを制御するために、要求に応じて調整可能な、そのために開閉が可能なラジエーターのフラップ装置が追加されたラジエーターファンモジュールが公知である。
【0004】
ヒートシンクのクーラントの通路は典型的には長方形の断面のパイプとして形成され、リブにより一対となって互いに連結される。ヒートシンクの前に組み込まれたラジエーターファンモジュールによって、ヒートシンクの少なくとも一部がラジエーターファンモジュールで覆われ、それにより冷却空気を含む流入が止められる。冷却空気流の流速は、従ってヒートシンクのラジエーターファンモジュールで覆われた区域においては、ヒートシンクのラジエーターファンモジュールで覆われていない区域より小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジエーター組立体の実用から公知となっているラジエーター組立体のこれらの形態を基にして、改良したラジエーター組立体を提案するという課題が本発明のベースであり、それによって、ヒートシンクのクーラント通路中に導かれたクーラントから、ラジエーターファンモジュールの上流にあるヒートシンクの隣り合うリブを通る冷却空気の流れへの熱伝達を改善させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1(第1の構成)のラジエーター組立体によっても、また請求項12
(第2の構成)のラジエーター組立体によっても解決できる。
【0007】
本発明の第1の構成によるラジエーター組立体においては、ラジエーターのヒートシンクに、二つのクーラント通路の間に延びる複数のリブが、少なくとも二つの異なる冷却区に分けられる。この冷却区域のいずれにおいても、クーラント通路から複数の(クーラの)リブに放出された熱を排出するために、冷却空気の流れは、二つの隣り合う隙間、それによる一対のリブの間の隙間を通って導かれる。この場合、ヒートシンクの方向に、また冷却空気の流れの方向に向かう視線に沿って、第一の冷却区域は、ラジエーターファンモジュールで少なくとも部分的に覆われる。この第一の冷却区域において、二つの(隣り合う)リブの間にある隙間の幅は、ヒートシンクの第二の冷却区域におけるより大きい。換言すれば、上流に配置されたラジエーターファンモジュールで少なくとも部分的に覆われた第一の冷却区域の隣り合うリブの間に大きな間隔がおかれ、またラジエーターファンモジュールで覆われないヒートシンクの第二の冷却区域の少なくとも一つの中における間隔より大きい隙間となる。
【0008】
提案されている解決策では、互いに間隔をあけて延びるヒートシンクのクーラント通路間のリブ構造のレイアウトのもとで、(冷却空気の流れの方向に基づき)ヒートシンクの前に、少なくともエリアごとにどの程度ラジエーターファンモジュールに流れの抵抗を形成するかの事情が直接考慮される。
上流に配置されたラジエーターファンモジュールによって冷却空気が影響を及ぼさない、または影響がわずかな第二の冷却区域の隣り合うリブの間よりも、量が多い冷却空気の流れが第一の冷却区域のリブの間に流される。冷却空気の流入の場合、ヒートシンクの少なくとも単一の区域が少なくとも部分的にラジエーターファンモジュールで覆われ、場合によって、この領域に僅かな量の冷却空気しか送られない(特にラジエーターファンモジュールの少なくとも一つのファンホイールが作動していない場合)にもかかわらず、このようにしてヒートシンク全体にわたって冷却空気の流れの平均化が可能になる。
【0009】
少なくとも部分的にラジエーターファンモジュールで覆われた第一の冷却区域の中で、複数のリブのそれぞれ隣り合う二つの間の隙間は全く異なる、または同じ隙間の幅を有している。したがって例えば前述のケースにおいてはヒートシンクの第一の冷却区域のリブは互いに等間隔に離れているのに対して、ある実施形態の変化形においては、第一のヒートシンクにおいて異なる幅の隙間となる様にしている。異なるまたは同じ隙間の幅は、この場合それぞれ、第二の冷却区域の二つの隣り合うリブの間の隙間の幅より大きくてもよい。これは特に、視線の方向にラジエーターファンモジュールで覆われていない、第二の冷却区域中の全ての(場合によって、互いに異なる、または同じ)隙間の幅が、第一の冷却区域の最小の隙間幅よりも小さい場合も含まれる。
【0010】
ある実施形態においては、第一の冷却区域における隣り合う二つのリブの間の隙間の幅は、第二の冷却区域における隣り合う二つのリブの最大の隙間の幅より、それぞれ少なくとも1.2倍大きい。
【0011】
例えば、少なくとも二つの異なる冷却区域の、それぞれ隣り合う二つのリブの間の異なる隙間の幅(すなわち第一の冷却区域のそれぞれ隣り合う二つのリブの隙間の幅と、第二の冷却区域の少なくとも一つのそれぞれ隣り合う二つのリブの隙間の幅)は、できる限り均一な冷却空気の流れがヒートシンク全体にわたり得られるように互いに調節して設定される。
特にこの場合、ヒートシンクの方向にラジエーター組立体への冷却空気の一定の流入によって特徴付けられる、少なくとも一つの定められた動作点により、冷却空気の流れの一部として複数のリブに接して、またそれを通って第一の冷却区域に流れる冷却空気の一部の流速と、冷却空気の流れの別の一部として複数のリブに接して、またそれを通って第二の冷却区域に流れる流入からの冷却空気の一部の流速とが、ほぼ、または完全に同じになるように隙間の幅が互いに調節され、設定される。
ラジエーターファンモジュールを介して、ラジエーターファンモジュールを通って、ヒートシンクの方向に、ラジエーター組立体への冷却空気の所定の流れによって特徴付けられる少なくとも一つの定められた動作点により、―ラジエーターファンモジュールの上流に設定された流入面を超える均一な流入の場合―、リブ間の異なる距離によって、またそれによる隙間の幅によって、第一の冷却区域における冷却空気の流れの部分の(中央の)流速と、少なくとも一つの第二の冷却区域の中の冷却空気の流れの部分の(中央の)流速とが、互いに合致する。
流速がほぼ同じ、特に第一と第二の冷却区域の中で中央の流速がほぼ同じ条件では、例えば流速に最大10%の偏差(Abweichung)が認められる。
【0012】
調節を行うための実現可能な動作点は、例えばラジエーターファンモジュールが停止しているファンホイールと、ラジエーター組立体への所定の流速の冷却空気の均一な、つまり(主に)一定の速度成分を持つ流入とによって特徴づけられる。これに基づいて、寸法、およびリブ間の間隔、すなわち隙間の幅の基準値が決まる。このようにして部分的にラジエーターファンモジュールに覆われて、またそれによって流体力学的にせき止められる第一の冷却区域の中に、好ましくない低速度の流速を持つ冷却空気の流れのみが発生するのを防止する。さらに冷却空気を持つヒートシンク全体で均一な貫流が得られる。
【0013】
ある実施形態においては、二つのクーラントの通路の間でリブがそれぞれ直線的に(例えばジグザグでないような形で)延びる。例えばクーラントの通路はそれぞれ互いに平行に延びるように配置されて長手方向に沿って延びる。リブはクーラントの通路の長手方向に対して直角に形成することができる。
【0014】
これに代わって、または補足して、複数のリブの少なくとも一つが、または全てのリブが、それぞれ二つのクーラントの通路を互いに連結することができる。これによって、場合によってはクーラントの通路からの直接的な排熱が改善する。しかしながら、他のクーラントの通路と連結することなしに、一つのクーラントの通路からリブだけが、もう一つのクーラントの通路の方向に延びるようにすることも考えられる。
【0015】
代替的な実施形態において、影響を与える冷却空気の流れに関して、ラジエーターファンモジュールはヒートシンクの上流側に配置され、ラジエーターファンモジュールによって少なくとも部分的に覆われた第一の冷却区域がヒートシンクの中央の区域を含み、またラジエーターファンモジュールは少なくとも二つのエッジを有し、そこを通り過ぎて、ヒートシンクの少なくとも二つの第二の冷却区域の方向に冷却空気が流れる。
冷却空気の流れが通過できるエッジは、この場合ラジエーターファンモジュールの外側の輪郭を明確にして、それによって、エッジを通過して流れる冷却空気は、ラジエーターファンモジュール自体を通り過ぎて、ヒートシンクの第二の冷却区域の方向に送られる。
このような第二の冷却区域は、例えば、それぞれヒートシンクの中央の区域から離れた、ヒートシンクのエッジの区域を含む。このような実施形態においては、したがってラジエーターファンモジュールが中央に配置されて、その後ろの、下流にあるヒートシンクを完全に覆うことがないため、中央の区域を離れて(例えば左右に)ヒートシンクの少なくとも二つの覆われていない冷却区域が存在し、その中では、リブの互いの距離は小さい。
【0016】
ヒートシンクのクーラント通路間の表面を増加するために、代替的な実施形態において、クーラント通路の少なくとも一つが花の形の断面を有している。このような花の形の断面とは、特に各クーラント通路の断面に、中心の(中空でそのためクーラントが通過して流れる)部分があり、そこには、中央部分にある中心または重心に対して、複数の(少なくとも二つの)放射状にラジアル方向に張り出した部分を備えている。この放射状に張り出した部分は例えば円のセグメントの形状に、または指の形にできる。花の形の断面は特に花弁のような状態で放射状に張り出す放射状のアームに形成され、そこに、ラジエーターの作動中に、例えば冷却液のようなクーラントが貫流する。
【0017】
これに代わって、または補足して、ラジエーターの少なくとも一つのクーラントの通路が水滴の形をして、後エッジ部分に向かって先細りする切断面を有する。そのため、このような形態においては、少なくとも一つのクーラントの通路は、冷却空気の流れの方向に関して、上流にある最先端部分と下流にある先細りしている後縁部分を有している。例えば、流れを最適化するために最先端部分は凸状のアーチとし、一方後縁部分は先端が尖ったように仕上げられる。ここでは、少なくとも一つのクーラントの通路の水滴状の断面は、基本的にはできるだけ流動抵抗を小さくし、クーラントの通路の下流での渦が発生することを予防することを目的としている。
【0018】
ヒートシンクの少なくとも一つのクーラントの通路に複雑な断面形状が必要な場合、および/またはリブに特別な形状が必要な場合に対して、代替的実施形態では少なくとも一つのクーラントの通路、および/または複数のリブを付加製造するようにしている。それによれば、少なくとも一つのクーラントの通路、および/または複数のリブは、付加製造
(additiven Fertigungsverfahren)の方法、例えば選択的レーザー溶解(selektive Laserschmelzen)によって製造される。
【0019】
先に説明した少なくとも一つのクーラントの通路の、必要に応じて花の形をした断面によって、表面が増加し、クーラントの通路から冷却空気の流れへの熱伝達が改善される。このようなバリエーションはこの方法と効果的に簡単に組み合わされることもできるが、この有利な効果は、何よりヒートシンクの異なる第一、および第二のヒートシンクの中の隣り合うリブ間の、異なる隙間の大きさに全く左右されない。
【0020】
それに対応して、本発明の第二の構成では、少なくとも一つのヒートシンクを含んでいるクーラを持つ車両用のラジエーター組立体が配置され、それにおいては、互いに間隔をおいて延びる少なくとも二つのクーラントの通路の少なくとも一つが花の形の断面を有している。
【0021】
さらに本発明は、前述した、または後述する実施態様に係るラジエーター・アセンブリを備える車両、特に自動車を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付された図は、提案された解決策の例示的な実施態様を示す。
【
図1】本発明によるラジエーター組立体の実施形態を示す概略図(互いに異なる間隔で、クーラントの通路を互いに連結するリブを有するヒートシンクを有し、またヒートシンクの前に配置されたラジエーターファンモジュールを有する)である。
【
図2A】
図1のラジエーター組立体のクーラント通路の実施形態を示す断面図である。
【
図2B】
図1のラジエーター組立体のクーラント通路の別の実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図1のラジエーター組立体に対するラジエーターファンモジュールの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図3は自動車のラジエーター組立体(Kuehlerbaugruppe)のためのラジエーターファンモジュール(Kuehlerlueftermodul)2の正面図である。ラジエーターファンモジュール2は、ここでは長方形の、特にファンホイール(Luefterrad)21を保持するブラケット(Traeger)20を有している。ファンホイール21は、ファンホイール21の回転軸区域の中央に配置されたモーター23により電気駆動される。ここではモーター23はブラケット20のモーター保持部22に取り付けられている。モーター保持部22は複数の放射状に延びる支柱220で周辺のブラケット20の保持部に連結されて、その中にファンホイール21を取り付けるための通路開口部が形成されている。ブラケット20とラジエーターファンモジュール2の外輪郭は、特に二つのエッジ24A と24Bで決まる。
図3ではこのエッジ24Aと24Bが、右と左に配置されている。
【0024】
図3のラジエーターファンモジュール2は自動車のクーラの前に設置するように考慮されている。その場合、ラジエーターファンモジュールは、例えば二つの機能モードで作動する。第一の機能モードでは、自動車の走行中にブラケット20に配置されたラジエーター・フラップが開閉して、クーラの方向への冷却空気の流れの強さを調整する。第二の機能モードでは、自動車がゆっくり走行する時または停止時、回転しているファンホイール21により、ラジエーターの方向に(追加の)冷却空気の流れが生成される。
【0025】
クーラ1とラジエーターファンモジュール2を持つラジエーター組立体を前から見た
図1の概略図で具体的に示すように、意図したとおりに取り付けた状態において、ラジエーターファンモジュール2は、前から見て、またラジエーターファンモジュール2からその後ろに配置されたラジエーター1の方向に向かう視線に沿って、ラジエーター1の少なくとも一部分を覆う。ラジエーター1の前に配置されたラジエーターファンモジュール2によって覆われた区域で、ラジエーター1のフローの少なくとも一部が止められる。そのために、特にファンホイール21が停止している時に、ラジエーターファンモジュール2は、ラジエーター1の冷却空気フローに対する流動抵抗となる。
【0026】
ラジエーター1は、複数のクーラントの通路(Kuehlmittelkanaele)10A,10Bおよび10Cが互いに平行に延びるヒートシンク1.1を有している。クーラントの通路10A,10Bおよび10Cは、空間方向zに沿って互いに間隔をおいて、また長手方向yに沿って互いに平行に延びる。複数のリブ11が長手方向yを横切って直線的に延びて配置され、それらがクーラントの通路10A,10B,および10Cを互いに連結する。自動車のエンジン室から熱を排出するための冷却液(Kuehlfluessigkeit)がクーラントの通路10A,10Bおよび10C内に導かれる。クーラントの通路10A,10Bおよび10Cの周りを冷却空気が流れることによって、および同じように冷却空気が周囲を流れるリブ11を介した連結によって、冷却液からの、およびそれと共にクーラント通路10A,10B,および10Cからの熱が冷却空気に伝達される。
【0027】
現状では中央に配置されヒートシンク1.1の冷却区域Z1はラジエーターファンモジュール2を通り抜ける冷却空気だけが流入できるのに対して、ラジエーターファンモジュール2の横を、特にそのエッジ24Aおよび24Bを通り過ぎてヒートシンク1.1に流れる冷却空気が、エッジ側の冷却区域Z2AとZ2Bに送られる。示された実施形態の場合、ヒートシンク1.1全体にわたって均一な冷却空気の流れを送るために、また特に、前から見て、少なくとも部分的にラジエーターファンモジュール2で覆われた、ヒートシンク1.1の区域において大量の冷却空気を送るために、ヒートシンク1.1に、異なる冷却区域Z1とZ2A,Z2Bが配置され、その中でリブ11は互いに異なる間隔を有している。そのため隣り合うリブ11は、少なくとも部分的にラジエーターファンモジュール2で覆われている第一の冷却区域Z1の中でより大きい間隔を持つ。従って互いに隣り合うリブ11の間に、隙間の幅d1を持つより大きい隙間111が配置され、それはラジエーターファンモジュール2で覆われていない冷却区域Z2A、Z2Bの中の隣り合う二つのリブ11の間の隙間112の隙間の幅d2より―場合によって何倍も、また特には少なくとも1,2倍―大きい。
【0028】
より小さいリブの間隔を配置することによって、それぞれ、エッジ側の冷却区域Z2A,Z2Bの中で小さい隙間の幅d2と、ラジエーターファンモジュール2で少なくとも部分的に覆われた中央の第一の冷却区域Z1の中でより大きい隙間の幅d1が可能となり、それによってリブ11の間に同等の流れの速度を持った冷却空気が流れるようにすることができる。これでヒートシンク1.1全体にわたって均一な冷却空気の流れが送られる。
【0029】
ここでは、流れのシミュレーションを使用するに当たって、異なる冷却区域Z1、Z2AおよびZ2Bの隣り合うリブ11の間の異なる隙間の幅d1とd2は、冷却空気を有するラジエーター組立体の、ヒートシンク1.1に向かってラジエーターファンモジュール2を通りぬけ、またその脇を通る、冷却空気の一定の流入によって表される、ラジエーター組立体の少なくとも1つの定められた動作点(Betriebspunkt)により、冷却空気の流れの一部として、複数のリブ11に接して通る第一の冷却区域Z1に流れる流入の冷却空気の一部分の中央の流速が、ほぼ(すなわち最大10%の差で)冷却空気の流れのその他の部分として複数のリブ11に接して通って第二の冷却区域Z2A,Z2Bに流れる流入の冷却空気の一部の中央の流速に適合するように互いに調節され、設定されることにより特徴づけられる。
例えば、このような動作点は、静止しているファンホイール21、および一定の流速を持つ冷却空気の均一な流入とラジエーター組立体の流れが入る断面積あたりの一定の速度分布により特徴づけられる。
この動作点、あるいは場合によって複数の動作点により、ヒートシンク1.1全体にわたり、できるだけ最適な均等流速分布が得られるようなリブ11間の間隔d1,d2が導かれる。
【0030】
排熱の改善のために、およびパイプ状に形成されたクーラントの通路10A,10Bおよび10Cの表面を大きくするために、
図2Bによると、例えば、花の形状をした断面
(bluetenfoermigen Querschnitt)を持つ、少なくとも一つのクーラントの通路、または全てのクーラントの通路10A,10Bおよび10Cが配置され、クーラントの通路10A,10B,および10Cは花形状の断面100.1を有する。このために、
図2Aの実施例において、断面100.1の中央部分から、または重心M部分から指の形で放射状に外側に、複数の放射状のアーム101が延びる。
【0031】
実施形態の一例においては、ヒートシンク1.1のクーラントの通路10A,10Bおよび10Cの少なくとも一つが、またはクーラントの通路10A,10Bおよび10Cの全てが
図2Bに対応して、流れが最適化された断面で形成される。従って、ここでは例えばクーラントの通路10A,10Bおよび10Cは、水滴状の断面(tropfenfoermige Querschnittsflaeche)100.2を有する。この水滴状の断面100.2は、上流にある凸のアーチ型の前縁部102Aと、下流側に先細りする、また必要に応じて先端が尖っている後縁部102Bと、を有する。
【0032】
必要に応じて、
図2Bに対応してクーラントの通路10A,10B,および10Cの内壁に、表面を大きくするために複数の内側に向かう膨らみまたは湾曲(Auswoelbungen oder
Ausbuchtungen)103が形成される。これによって熱交換のための表面が同じように大きくなる。
【0033】
特に、
図2Aおよび
図2Bの必要に応じて複雑な形をした切断面100.1、および100.2は付加製造法(additive Fertigung)で製造される。様々な断面形状を持つリブ11も、同じように付加製造することが可能である。
【0034】
さらなる実施形態において、複数の(冷却)リブ11がエネルギーを吸収する格子構造
(Gitterstruktur)の中に配置される。そのため例えば現状の直線的に延びて、互いに平行に走るリブ11に、必要に応じてクーラントの通路10A,10B,および10Cに対する最適化されたパイプ状断面を組み合わせて、実用化されている通常のラジエーター組立体に比べてより高い効率のラジエーター組立体が可能になるだけでなく、ラジエーター1の大きさと重量を減少させる。さらにエネルギーを吸収する格子構造の形成によって、リブ11を使用して、衝突によって発生するラジエーター組立体への力をよりよく吸収することが可能になる。
【符号の説明】
【0035】
1 ラジエーター
1.1 ヒートシンク
100.1、100.2 切断面
101 放射状のアーム
102A 前縁部
102B 後縁部
103 湾曲
10A、10B、10C クーラントの通路
11 リブ
111,112 隙間
2 ラジエーターファンモジュール
20 ブラケット
21 ファンホイール
22 モーター保持部
220 支柱
23 モーター
24A,24B エッジ
M 中心/重心
Z1,Z2A,Z2B 冷却区域
【外国語明細書】