IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電気機器 図1
  • 特開-電気機器 図2
  • 特開-電気機器 図3
  • 特開-電気機器 図4
  • 特開-電気機器 図5
  • 特開-電気機器 図6
  • 特開-電気機器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061051
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/12 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
H01F27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168800
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
(72)【発明者】
【氏名】林 孝紀
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050CB02
(57)【要約】
【課題】電気機器のタンク側面に取り付けたコルゲート型の放熱器において、当該放熱器をタンクとともに浴法によってめっき処理する際に、当該放熱器を構成する放熱リブ間にめっき溜りが生じることを確実に防止する。
【解決手段】コルゲート型放熱器8を構成する複数の放熱リブ8aの高さ寸法Xを所定値以下に制限する。また、放熱リブ8aの内側の幅寸法Yを所定値以上確保する。さらに、前記放熱器8をタンクの一~三面にのみ取り付ける。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器の放熱リブの高さ寸法を制限することにより、当該放熱リブの内側にめっき溜りが生じることを防止するように構成したことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器の放熱リブの内側の幅寸法を所定値以上確保することにより、当該放熱リブの内側にめっき溜りが生じることを防止するように構成したことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器をタンク側面の一面にのみ取り付けて構成したことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器をタンク側面の一面および、当該一面の反対側の面以外の側面に取り付けて構成したことを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器のタンク側面に取り付けられるコルゲート型の放熱器において、当該放熱器をタンクとともに浴法によりめっき処理する際に、当該放熱器を構成する放熱リブの内側にめっき溜りが生じることを防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油入変圧器などの電気機器は、巻線や鉄心などで発生する熱を絶縁油を介して外気に放出する必要がある。
【0003】
熱を外気へ放出する方法としては、下記特許文献1,2に示すようなパネル状リブを用いる方法や、下記特許文献3に示すようなパネル型の放熱器を用いる方法がある。
【0004】
パネル状リブは、下記特許文献1,2に示すように、変圧器タンクの側面に油道を形成する部材(以下、油道部材という)と、当該油道部材の両側面に取り付けられ、内部が前記油道とつながった複数の放熱リブを備えて構成されており、変圧器タンク内で加熱された絶縁油を油道部材の上部から放熱リブ上部へ流し込み、放熱リブの上部から下部へ流す過程で、放熱リブによって熱を外気へ放出し、これによって冷却された絶縁油を油道部材の下部から変圧器タンク内へ戻す構造となっている。
【0005】
パネル型の放熱器は、下記特許文献3に示すように、変圧器タンク側面の上下位置に送油管をそれぞれ取り付け、当該送油管の間に、複数の放熱パネルを備えている。当該放熱パネル内は空洞になっており、当該空洞が上下の送油管内とつながっており、変圧器タンク内で加熱された絶縁油は、上部の送油管内へ流れ込み、上部の送油管から複数の放熱パネル内へ流れ込む。
【0006】
放熱パネルに流れ込んだ絶縁油は、放熱パネル内を上から下に向けて流れる過程で、放熱パネルによって熱を外気へ放出し、これによって冷却された絶縁油を下部の送油管から変圧器タンク内へ戻す構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭58-8921号
【特許文献2】実開昭58-22712号
【特許文献3】実開昭52-114227号
【特許文献4】実開昭59-84815号
【特許文献5】実開昭56-141414号
【0008】
前述したパネル状リブやパネル型の放熱器を用いた放熱方法は、パネル部分の放熱面積を大きくとることができるので、放熱効果が高い利点を有する反面、放熱パネルが電気機器タンクの側面に取り付けられるので、電気機器のサイズが必然的に大型化してしまう。このことは、特許文献1~3に示すように、パネル状リブや放熱パネルが変圧器タンクの両側面に取り付けられる場合は、より顕著となる。
【0009】
このような問題を解決できる手段としては、上記特許文献4,5に示すようなコルゲート型放熱器を用いる方法が従来から知られている。
【0010】
コルゲート型放熱器は、上記特許文献4,5に示すように、金属薄板を波形に屈曲させ、その内部に冷却媒体である絶縁油を流す流路を形成した放熱リブを多数持った構造となっている。
【0011】
放熱リブを形成した金属薄板は、変圧器タンクの側面の一部を構成する。具体的には、変圧器タンクの側面開口部に放熱リブを形成した前記金属薄板を溶接等により取り付けることによって、変圧器タンク内と放熱リブ内がつながった構造となっており、変圧器タンク内および放熱リブ内には絶縁油が満たされた状態にある。
【0012】
変圧器の運転により巻線と鉄心などに発生した熱は周囲の絶縁油に伝えられ、絶縁油は温度上昇する。温度上昇した絶縁油は、巻線内部および鉄心表面に沿って上昇し、放熱リブ内を上部から下部へ下降する過程で冷却され、放熱リブ下部から巻線および鉄心下部へ戻されることにより、当該巻線及び鉄心を冷却する。
【0013】
このようなコルゲート型放熱器によれば、当該放熱器を変圧器タンク側面の両側に取り付けた場合においても、パネル状リブや放熱パネルを用いる場合と比較して、変圧器のサイズを小型化することができる。特に、放熱リブの波高さやピッチを自由に製作することができるので、サイズ調整が容易となる利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上述したコルゲート型放熱器を取り付けた変圧器等の電気機器を防錆処理する場合、放熱器を取り付けた状態の変圧器タンクをめっき処理する方法が知られている。
【0015】
めっき処理は、例えば、コンベアにハンガーを介して変圧器タンクを吊設し、これをコンベアによってめっき槽まで搬送して、めっき内に全没浸漬させることで、変圧器タンクと放熱器の内側と外側にめっきを施す。
【0016】
前述した変圧器タンクのめっき処理工程において、変圧器タンクをめっき槽から引き上げる場合は、変圧器タンクの開口部が底部の高さ位置より下側となるように傾斜させた状態で引き上げることによって、タンク内のめっきを開口部からめっき槽内へ排出し、タンク内にめっきが残らないようにする。
【0017】
このとき、変圧器タンクの側面に取り付けた放熱リブもめっきによって確実にめっき処理され、変圧器タンクの引き上げに伴い、各放熱リブ内に入り込んだめっきも、めっき槽内へ排出される。
【0018】
然るに、図6に示すように、変圧器タンク100の上側に位置する放熱リブ101a内のめっきは、めっき槽内に排出されやすいが、下側に位置する放熱リブ101a内のめっきは排出されにくい。
【0019】
放熱リブ101a内のめっきの排出が不完全な場合、放熱リブ101a内にめっき溜りが生じ、このめっき溜りによって放熱リブ101a内に絶縁油が入りにくくなる結果、放熱器101の放熱性能が悪化する可能性がある。
【0020】
また、コルゲート型放熱器101の平面図である図7に示すように、波形加工した放熱リブ101aは、その内側の隙間Y´が狭くなる傾向がある。
【0021】
この場合、放熱リブ101a内の狭い隙間Y´内に入り込んだめっきは、変圧器タンク100をめっき槽から引き上げた場合にも、めっきが当該隙間Y´から外部へ排出されにくくなり、放熱リブ101a内にめっき溜りが発生しやすい状況となり、放熱器101の放熱性能を損なう可能性がある。
【0022】
そこで、本発明は、コルゲート型放熱器を備えた変圧器等の電気機器タンクを浴法によって防錆処理する場合において、当該放熱器を構成する複数の放熱リブ内にめっき溜りが発生することを確実に防止できる放熱器を備えた電気機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1記載の発明は、タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器の放熱リブの高さ寸法を制限することにより、前記放熱リブの内側にめっき溜りが生じることを防止するように構成した。
【0024】
請求項2記載の発明は、タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器の放熱リブの内側の幅寸法を所定値以上確保することにより、当該放熱リブの内側にめっき溜りが生じることを防止するように構成した。
【0025】
請求項3記載の発明は、タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器をタンク側面の一面にのみ取り付けて構成した。
【0026】
請求項4記載の発明は、タンク側面にコルゲート型の放熱器を取り付け、当該タンクと該放熱器を浴法によってめっき処理する電気機器において、前記コルゲート型放熱器をタンク側面の一面および、当該一面の反対側の面以外の側面に取り付けて構成した。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、コルゲート型放熱器の放熱リブの高さ寸法を制限することにより、放熱器を構成する複数の放熱リブの内側の隙間が狭くなることを防止でき、放熱リブ内のめっきを良好に外部へ排出することができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、コルゲート型放熱器の放熱リブの内側の幅寸法を所定値以上確保することにより、放熱リブ内のめっきを良好に外部へ排出することができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、コルゲート型放熱器をタンク側面の一面にのみ取り付けて構成することにより、タンクをめっき槽から引き上げる際に当該一面が上側に位置するようにハンガーに吊設しておけば、当該放熱器を構成する複数の放熱リブ内のめっきを良好に外部へ排出することができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、コルゲート型放熱器をタンク側面の一面および、当該一面の反対側の面以外の側面に取り付けて構成することにより、タンクをめっき槽から引き上げる際に、当該放熱器を取り付けた面が下側に位置しないようにハンガーに吊設しておけば、当該放熱器を構成する複数の放熱リブ内のめっきを良好に外部へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の電気機器を示す平面図である。
図2】本発明の電気機器を示す正面図である。
図3】本発明の電気機器のタンク側面に取り付けるコルゲート型放熱器を示す平面図である。
図4】本発明の電気機器のタンク側面に取り付けるコルゲート型放熱器を示す正面図である。
図5】本発明の電気機器を吊設した状態を示す模式図である。
図6】従来の電気機器を吊設した状態を示す模式図である。
図7】従来の電気機器のタンク側面に取り付けるコルゲート型放熱器を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1は本発明の電気機器の一例としての変圧器を示す平面図であり、図2はその正面図である。図2において、1は鉄心やコイル等からなる変圧器本体を収納する変圧器タンクであり、その内部には絶縁油が充填されている。
【0033】
図1,2において、2は変圧器タンク1の上部カバーであり、3は上部カバー2に取り付けられる一次ブッシング、4は二次ブッシングを示している。
【0034】
5は吸湿呼吸器であり、上部カバー2を貫通する呼吸管6を介して変圧器タンク1内と連通している。7は変圧器タンク1の正面に取り付けられる制御箱を示している。
【0035】
図1,2において、8は本発明の要部である放熱器を示している。図3は当該放熱器8の平面図であり、図4はその正面図である。図3,4に示すように、放熱器8は、金属薄板を連続的に波状に折り曲げて、多数のひれ状張出し部を形成し、各ひれ状張出し部の上下方向両縁部を圧接させ溶接等によって油密にすることで、連続する複数の放熱リブ8aを形成した、所謂、コルゲート型の放熱器である。
【0036】
このように、複数の放熱リブ8aを形成した金属薄板の周縁部8bを、変圧器タンク1の側面に形成した開口部を塞ぐように溶接等によって油密に固定することによって、当該放熱器8は変圧器タンク1に取り付けられる。
【0037】
なお、本発明において、変圧器タンクの側面とは、変圧器タンクの正面、左右の側面、背面をいう。
【0038】
図3,4に示す9は、各放熱リブ8aの先端部を跨いで固定される支持部材であり、放熱リブ8aを支持・補強するものである。
【0039】
以上のように構成したコルゲート型放熱器8について、本発明では、各放熱リブ8aの高さ寸法Xを制限(小さく)することとした。
【0040】
放熱リブ8aの高さXを制限することによって、各放熱リブ8aが、その内側の幅寸法Yが狭くなる力を抑制することが可能となる。
【0041】
これにより、変圧器タンクをめっき処理した後、めっき槽から引き上げる際に、放熱リブ8a内に入り込んだめっきを、めっき槽内へ良好に排出することが可能となる。
【0042】
前記放熱リブ8aの高さXをどの程度制限するかは、放熱に必要な表面積を確保しつつ、可能な限り小さくすることが好ましい。
【0043】
当社の実験では、放熱リブ8aの高さXを70[mm]以下とすると、放熱リブ8aの内側寸法Yが狭くなることを防止できることがわかった。
【0044】
具体的には放熱リブ8aの内側の幅寸法Yを5[mm]以上確保すれば、放熱リブ8aの内側に発生するめっき溜りを防止することができる。
【0045】
また、本発明の放熱器8は、図1に示すように、変圧器タンク1の側面のうち、背面と左側面にのみ取り付けられる。または、変圧器タンク1の側面のうち、背面と右側面にのみ取り付けたり、背面と左右両面に取り付けられる。
【0046】
あるいは、変圧器タンク1の側面のうち、背面にのみ取り付けたり、変圧器タンク1の側面のうち、左側面または右側面にのみ取り付けても良い。
【0047】
また、変圧器タンク1の正面に制御箱7などがなく、設置スペースを確保できるのであれば、正面にのみ放熱器8を取り付けたり、正面と左右何れかの側面、或いは、正面と左右両面に取り付けることも可能である。
【0048】
つまり、変圧器タンク1をめっき処理した後、めっき槽から引き上げる際に、図5(a)(b)に示すように、放熱器8が下側に向かないようにハンガーに吊設することができるよう、変圧器タンク1の側面のうち一面を除いた最高三面に放熱器8を取り付けるのである。
【0049】
これにより、めっき槽から引き上げられた変圧器タンク1は、放熱器8が変圧器タンク1の上側に位置するため、放熱器8を構成する放熱リブ8a内に入り込んだめっきを確実にめっき槽内へ排出することが可能となり、放熱リブ8aの内側にめっき溜りが生じることを確実に防止することができる。
【0050】
めっき溜りの防止は、変圧器タンク1の放熱性能の低下を抑制することに貢献する。
【0051】
なお、前述の実施例では、本発明にかかる電気機器の一例として油入変圧器を例示して説明したが、本発明は、これに限定するものではなく、コルゲート型の放熱器を備え、浴法によってめっき処理するあらゆる電気機器に適用できることは当然である。
【0052】
以上説明したように、本発明の電気機器は、浴法によって変圧器タンクおよび放熱器をめっき処理する場合において、放熱器を構成する放熱リブ内にめっき溜りを生じることを確実に防止することを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
コルゲート型放熱器を備え、浴法によってめっき処理する種々の電気機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,100 変圧器タンク
2 上部カバー
3 一次ブッシング
4 二次ブッシング
5 吸湿呼吸器
6 呼吸管
7 制御箱
8,101 放熱器
8a,101a 放熱リブ
8b 周縁部
9 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7