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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061062
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】製紙用添加剤
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/20 20060101AFI20220411BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
D21H17/20
C08F220/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168820
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本多 剛
【テーマコード(参考)】
4J100
4L055
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AL03Q
4J100AL05Q
4J100AL08P
4J100BA31P
4J100BA32P
4J100CA04
4J100CA06
4J100DA09
4J100JA13
4L055AG08
4L055AG35
4L055AG56
4L055AG63
4L055AG71
4L055AH16
4L055AH18
4L055AH22
4L055EA25
4L055EA32
4L055FA06
4L055FA13
4L055FA21
4L055FA22
(57)【要約】
【課題】
製紙工程で紙の汚れや欠点による品質の低下や断紙の原因となるピッチ成分の除去効果、製紙効率を上げるために脱水後のパルプシート含水率の低減効果、紙力増強効果を備える製紙用添加剤を提供すること。
【解決手段】
カチオン性単量体が70~99質量%、疎水性単量体が1~30質量%を含有する単量体混合物を重合して得た高分子を製紙用添加剤として使用することで、ピッチ成分等の除濁性に優れ、脱水後のパルプシートの含水率を低下させ、更には成紙の紙力増強効果を併せ持つ。前記高分子を1質量%に溶解したときの、B型粘度計で回転数60rpmにおいて測定したときの粘度(25℃)が、15~150mPa・sであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性単量体が70~99質量%、疎水性単量体が1~30質量%を含有する単量体混合物を重合して得た高分子からなることを特徴とする製紙用添加剤。
【請求項2】
前記高分子を1質量%に溶解したときの、B型粘度計で回転数60rpmにおいて測定したときの粘度(25℃)が、15~150mPa・sである請求項1に記載の製紙用添加剤。
【請求項3】
請求項1の高分子からなることを特徴とするピッチコントロール剤。
【請求項4】
請求項1の高分子からなることを特徴とする濾水性向上剤。
【請求項5】
請求項1の高分子からなることを特徴とする紙力増強剤。














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙前の製紙工程における添加剤に関する。具体的には、製紙工程において悪影響を及ぼすコロイド状物質を効率よく除去し、ワイヤーパートでの濾水後のパルプシートの含水率を低減し、更には成紙の強度を増強する効果を有する製紙用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の製造において、古紙配合率の増加や、中性抄造化、抄紙系用水のクローズド化により製紙原料中のアニオントラッシュ(アニオン性夾雑物)、マイクロピッチ、濁度成分が増加している。これらアニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分が微細な状態で製紙原料中に存在している限り製紙へ欠陥として発生することは少ないが、攪拌やエアレーション、pH変化、薬剤添加により集塊化され紙製品の汚れや欠陥発生原因となる。パルプ繊維に定着せず集塊化が進んだピッチ分は、微細繊維や填料を巻き込んで粗大粘着物になり、ファンポンプ、配管内、ワイヤー、フェルト、ロール等の抄造装置や用具に付着するだけでなく、これら付着物が剥離して湿紙に乗り製紙欠陥となることが推定される。通常、アニオントラッシュやマイクロピッチは表面がアニオン性に帯電しているため、これらが成長、粗大化する(ピッチとなる)前にピッチコントロール剤と言われるカチオン性あるいは両性高分子を添加し、電荷の中和によりアニオントラッシュやマイクロピッチを処理する方法や粘着性を低下させる方法が汎用されている(特許文献1~4)。
又、紙の製造、特にライナーや中芯原紙などの板紙の製造では、抄紙工程における抄紙速度向上による生産効率改善の観点から、ワイヤーパートでの濾水性およびドライヤーパートでの乾燥性の向上が強く要望されている。濾水性向上剤として、ポリエチレンイミンやポリアクリルアミド(PAM)系が汎用されており、これらはカチオン化澱粉や硫酸アルミニウムと併用されることも多い。又、濾水性の向上を目的として、PAM系とコロイダルシリカとの併用(特許文献5)等も提案されている。
更には、紙に強度を付与する紙力増強剤としては、アニオン性、カチオン性又は両性のアクリルアミド系ポリマーが広く使用されている。しかし、近年、製紙工場では古紙の使用比率の増加により、古紙由来の短繊維が含まれた紙力強度の弱い原料パルプが使用されてきており、紙力増強剤の効果を発揮し難い状況となっている。
これらの抄紙環境に対して、紙力効果を維持するため、紙力増強剤を高分子量化する方法(特許文献6)、重量平均分子量および分子量分布を特定の範囲に制御した共重合体を含む紙力増強剤(特許文献7)が開示されている。
これらの製紙用添加剤は、いずれもそれぞれアニオントラッシュやマイクロピッチを処理する方法、濾水性や乾燥性を向上させる方法、紙力を増強させる方法に関するものであり、これらの効果を併せ持った高分子組成物については知られていない。
特許文献8、9には疎水性コポリマーを製紙用スラリーに添加することにより、歩留まりと濾水性を改良する方法が開示されている。具体的に合成されているのは、アニオン性の疎水性コポリマーのみであり、カチオン性の疎水性コポリマーについては合成されておらず、従って効果も確認されていない。またイオン性が異なればその効果は予測することもできず、カチオン性の疎水性コポリマーについては合成法、機能について何ら開示されていない。更に脱水後のパルプシートの乾燥性、成紙の強度については技術の目的とされていない。
【0003】
【特許文献1】特開2002-173893号公報
【特許文献2】特開2002-212897号公報
【特許文献3】特開2003-221798号公報
【特許文献4】特開2011-026746号公報
【特許文献5】特開平9-279498号公報
【特許文献6】特開平2-61197号公報
【特許文献7】特開2018-12909号公報
【特許文献8】特表2003-517104号公報
【特許文献9】特表2008-545892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、製紙工程で紙の汚れや欠点による品質の低下や断紙の原因となるピッチ成分の除去効果、製紙効率を上げるために脱水後のパルプシート含水率の低減効果、紙力増強効果を備える製紙用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、特定の構成比率のカチオン性単量体と疎水性単量体を主単量体とする単量体を重合して得られる高分子が、ピッチ成分等の除濁性に優れ、脱水したパルプシートの含水率を低下させ、更には成紙の紙力増強効果を有することを見出し、本発明に至った。
本発明における製紙用添加剤は、カチオン性単量体、疎水性単量体を必須成分とし、カチオン性単量体が70~99質量%、疎水性単量体が1~30質量%を含有する単量体混合物を重合して得た高分子からなる製紙用添加剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明における高分子からなる製紙用添加剤を製紙工程において使用することにより、アニオントラッシュ、マイクロピッチ、濁度成分等紙製品の汚れや欠陥発生原因となる物質を効率よく除去し、抄紙工程におけるパルプシートの濾水性、乾燥性が向上し抄紙速度向上による生産効率改善が可能となり、更には成紙の強度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明における高分子の重合は、水溶液重合、懸濁重合、塩水中分散重合等の公知の方法により行うことができるが、水溶液重合が好ましい。例えば、所定の反応容器に単量体混合物、水、界面活性剤、ラジカル重合開始剤を添加し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、攪拌、加温することにより目的の高分子を得ることができる。
【0008】
カチオン性単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の無機酸若しくは有機酸の塩類、又はこれら第三級アミノ基含有単量体とメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリン等の四級化剤との反応によって得られる第四級アンモニウム塩を有する単量体等が挙げられる。この内、第四級アンモニウム塩を有する単量体として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。カチオン性単量体は全単量体に対し、70~99質量%であり、好ましくは75~98質量%である。カチオン性単量体の量が少ないとパルプへの吸着性が低下し除濁効果、パルプシートの含水率低減効果、紙力増強効果が低下する。又、カチオン性単量体の量が多すぎると疎水性単量体の量が少なくなり、疎水性会合体の形成が不十分となり効果が低下する。
【0009】
ここで、疎水性単量体とは、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体を意味する。疎水性単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、エチルスチレン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。疎水性単量体は全単量体に対し、1~30質量%であり、好ましくは2~25質量%である。疎水性単量体の量が少ないと疎水性会合体の形成が不十分となり、除濁効果、パルプシートの含水率低減効果、紙力増強効果が低下する。疎水性単量体の量が多いとカチオン性単量体の量が少なくなり、パルプとの相互作用が低下し効果が低下する。
【0010】
本発明における高分子は重合成分としてさらにノニオン性単量体、アニオン性単量体、架橋性単量体等を含むことができる。これらの合計量は全単量体の10質量%以下が好ましい。
【0011】
ノニオン性単量体としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がある。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0012】
アニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
【0013】
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。架橋性単量体の添加率は全単量体に対し1質量%以下が好ましい。
【0014】
重合に際しては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、分子内に親水性基と疎水性基を有する物質であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物、ペンタオキシエチレンオレイルアルコールエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。界面活性剤存在下、水中で重合することで単量体を微細分散させる効果が作用し、共重合が促進される。界面活性剤の量が少ないと単量体を微細分散させる効果が小さく、多すぎると溶解時、使用時に発泡の原因となる。界面活性剤の添加率は全単量体に対して0.01質量%~5質量%であり、好ましくは0.05質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0015】
本発明においては連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。また、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸アンモニウム等のメタリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0016】
重合開始剤としては、例えば、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系の重合開始剤が挙げられる。又、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等も挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。重合開始剤の添加率は全単量体に対し0.01質量%~2質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0017】
重合反応は、通常温度30℃~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。得られる高分子の濃度は通常5~50質量%である。
【0018】
本発明によれば、除濁効果、パルプシートの含水率低減効果、紙力増強効果に優れた高分子からなる製紙用添加剤を得ることができる。
【0019】
得られた高分子は、高分子1質量%水溶液の粘度が15~150mPa・sであることが好ましい。粘度はB型粘度計で回転数60rpm、25℃で測定したものである。粘度が15mPa・sより小さいと効果が不十分となる。又、粘度が150mPa・sより大きいと溶解性が低下し取扱いが困難となる。B型粘度計として、東機産業株式会社製B8M型、TVB-10M型等の汎用品が適宜に使用される。粘度が100mPa・s以下の場合は、1号ローターを用いる。
【0020】
本発明における高分子からなる製紙用添加剤の添加場所について説明する。
添加場所としては、製紙工程上流のパルプ乾燥固形分濃度2.0質量%以上の抄紙前の製紙原料に添加することができる。製紙原料中の古紙や塗工損紙、樹脂に由来するピッチ類あるいはアニオン性物質、濁度成分は、紙の汚れ、欠陥、断紙、抄紙機の汚れといった様々なピッチトラブルを引き起こす。特に濁度成分やマイクロピッチが複合的に関与し成長することでピッチトラブルの大きな要因になることが考えられ、これらを処理することが必要である。そのために本発明における高分子を製紙原料に添加してピッチコントロール作用によりこれらを処理することができる。
【0021】
又、製紙工程において上流からパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%以上で移送されてきた高濃度の製紙原料が抄紙機の直前では白水や清水等によりパルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されている。一般的には0.5~1.5質量%に希釈されており、これらはインレット原料やヘッドボックス原料と呼ばれており、これら原料(以下、インレット原料とする。)に対して本発明における高分子を添加することができる。添加場所は、せん断工程であるファンポンプ前後やスクリーン前後が適用される。
本発明における高分子は、ピッチコントロール効果、濾水性向上効果(並びに搾水性向上効果)及び紙力増強効果を併せ持つため、従来のピッチコントロール剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の添加場所に限らず、製紙工程上流のパルプ乾燥固形分濃度2.0質量%以上でも良く、パルプ乾燥固形分濃度が2.0質量%より低い製紙原料に希釈されたインレット原料の何れでも適用できる。本発明における高分子のピッチコントロール効果、濾水性向上効果(並びに搾水性向上効果)及び紙力増強効果を併せ持つ効果を最大限に発揮するには、ワイヤーパートにより近いファンポンプ前後やスクリーン前後のインレット原料に添加するのが好ましい。
【0022】
本発明における高分子からなる製紙用添加剤を適用する紙の種類としては、新聞用紙、上質印刷用紙、中質印刷用紙、グラビア印刷用紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙、包装用紙、ライナーや中芯原紙の板紙等が挙げられる。この中でもピッチ抑制、濾水性向上、紙力増強の併せ持つ効果がより要求されるライナーや中芯原紙等の板紙が好ましい。添加率としては、パルプ乾燥固形分に対して、高分子純分で0.01~1質量%であり、好ましくは0.01~0.5質量%である。又、その他の紙力増強剤やサイズ剤、硫酸バンド、ピッチコントロール剤、歩留向上剤、濾水性向上剤等の製紙用薬品と併用することができる。
【0023】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例0024】
(実施例1)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン1.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.2g、35質量%塩酸25.5g、脱塩水183.4g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、45.7mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0025】
(実施例2)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン2.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート39.0g、35質量%塩酸24.7g、脱塩水183.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、41.9mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0026】
(実施例3)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン5.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート36.9g、35質量%塩酸23.4g、脱塩水184.4g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、25.7mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0027】
(実施例4)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン12.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート30.8g、35質量%塩酸19.5g、脱塩水184.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.1gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、21.9mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0028】
(実施例5)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン15.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート28.8g、35質量%塩酸18.4g、脱塩水187.2g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、21.6mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0029】
(実施例6)
500mLの4つ口フラスコに、ドデシルメタクリレート1.0g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド61.3g、脱塩水187.4g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05g、ジ亜リン酸ナトリウム0.075を仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、24.6mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0030】
(実施例7)
500mLの4つ口フラスコに、ドデシルメタクリレート0.5g、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド61.9g、脱塩水187.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05g、ジ亜リン酸ナトリウム0.091gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、18.6mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0031】
(実施例8)
500mLの4つ口フラスコに、80質量%アクリル酸0.5g、ブチルアクリレート0.5g、ヒドロキシエチルメタクリレート0.5g、メチルメタクリレート0.5g、スチレン1.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート38.6g、35質量%塩酸24.5g、脱塩水183.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.1g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、106.1mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
500mLの4つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.9g、35質量%塩酸26.0g、脱塩水182.3g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、43.8mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0033】
(比較例2)
500mLの4つ口フラスコに、スチレン20.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート24.7g、35質量%塩酸15.7g、脱塩水188.3g、ドデシル硫酸ナトリウム0.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.05gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、23.4mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0034】
(比較例3)
500mLの4つ口フラスコに、80質量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド62.5g、脱塩水187.5g、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(和光純薬工業製VA-044)0.1gを仕込み150rpmで撹拌しながら窒素ガスを通じた。30分後、50℃まで昇温し、3時間保持した。その後70℃で2時間保持した。その後冷却し、高分子水溶液を得た。得られた高分子の1質量%水溶液の粘度は、16.4mPa・sであった。この結果を表1に示す。
【0035】
(表1)
カチオン性単量体;DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
疎水性単量体;St:スチレン、DDM:ドデシルメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、BuA:ブチルアクリレート
ノ二オン性単量体;HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
アニオン性単量体;AAC:アクリル酸
【0036】
又、比較高分子試料として、市販のピッチコントロール剤、濾水性向上剤、紙力増強剤を用意した。これらの組成、物性を表2に示す。
【0037】
(表2)
形態;AQ:水溶液重合体、DR:塩水液中分散重合液
0.5質量%塩水溶液粘度:4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0038】
表1の高分子試料及び表2の市販試料を用いて、除濁試験、パルプシートの含水率測定試験及び紙力増強効果試験を実施した。紙料原料として、段ボール古紙をナイアガラ式ビーターで叩解し、叩解度320mLに調製、パルプ濃度2質量%のパルプスラリーとして使用した(pH7.3、電気伝導度117.1mS/m)。
【0039】
(実施試験例1)(除濁試験)
パルプ濃度2質量%のスラリー100gに対し、模擬ピッチとしてラテックスボンドSP210Nを対液167ppmになるように添加した後、200rpmで30秒間攪拌し、続いて表1の本発明における高分子試料をパルプ固形分に対し0.05質量%(高分子純分)になるように添加し200rpmで1分間攪拌した。その後、WhatmanNo.41濾紙で濾過し、HACH社濁度計2100Pを用いて濾液の濁度を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
(比較試験例1)
実施試験例1と同じパルプスラリーを用いて、実施試験例1と同様な試験を本発明の範囲外の高分子試料、市販ピッチコントロール剤及び市販紙力増強剤を用いて実施した。又、高分子試料無添加でも実施した。結果を表3に示す。
【0041】
(実施試験例2)(パルプシート含水率測定試験)
動的濾水性試験機DDA(Dynamic Drainage Analyzer、マツボー社製)による濾水性試験を実施した。パルプ濃度1%に希釈した前記段ボール古紙パルプスラリーを、底部に315メッシュワイヤーの付いたDDA攪拌槽に投入した。表1の本発明における高分子試料をパルプ固形分に対して0.05質量%(高分子純分)となるように添加、攪拌回転数800rpmで30秒間攪拌後、300mBarの減圧下で、紙料を吸引し、ワイヤー上にシートを形成した。シートを取り出し、重量を測定し、更に105℃送風乾燥機で約15時間乾燥後重量を測定し、シート含水率を求めた。結果を表3に示す。
【0042】
(比較試験例2)
実施試験例2と同じパルプスラリーを用いて、実施試験例2と同様な試験を本発明の範囲外の高分子試料、市販濾水性向上剤及び市販紙力増強剤を用いて実施した。又、高分子試料無添加でも実施した。結果を表3に示す。
【0043】
(実施試験例3)(紙力増強効果試験)
パルプ濃度1質量%に希釈した前記段ボール古紙パルプスラリー500mLに対し、パルプ固形分に対し0.1質量%(高分子純分)となるように表1の本発明における高分子試料を添加し、800rpmで1分間撹拌後、TAPPIスタンダード抄紙機にて抄紙(80メッシュワイヤー使用)し、続いて圧力410kPaで5分間プレスし、さらに回転型ドラムドライヤーを使用し105℃で3分間乾燥した。温度23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿して、坪量80g/mの紙を得た。得られた紙について、圧縮強度を測定し比圧縮強度で表した。圧縮強度は、ショートスパン圧縮試験機(L&W社製、Compressive Strength Tester STFI)を用いてJIS P 8126に従い実施した。結果を表3に示す。
【0044】
(比較試験例3)
実施試験例3と同じパルプスラリーを用いて、実施試験例3と同様な試験を本発明の範囲外の高分子試料、市販ピッチコントロール剤及び市販紙力増強剤を用いて実施した。又、高分子試料無添加でも実施した。結果を表3に示す。
【0045】
(表3)
【0046】
本発明における高分子からなる製紙用添加剤を添加した場合、本発明の範囲外の高分子及び市販品に比べて同等以上の濁度低減効果、シート含水率低減効果及び紙力増強効果が得られ、ピッチコントロール剤、濾水性向上剤及び紙力増強剤としての機能が確認できた。
【0047】
本発明における高分子試料のピッチコントロール効果、シート含水率低減効果及び紙力増強効果は、それぞれの機能を有する市販品と同等以上の効果を示し、これらの効果を併せ持つことが確認できた。本発明の範囲外の高分子及び市販品ではピッチコントロール効果、シート含水率低減効果及び紙力増強効果の何れかの効果が優れる場合であっても、それ以外の機能では大きな効果は認められなかった。本発明における高分子を製紙用添加剤として使用することで、一剤の添加により多機能を有し、製紙用添加剤として極めて有用である。