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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061129
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20220411BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20220411BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20220411BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20220411BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B29C43/18
B29C43/36
B29C33/42
B29C33/12
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168918
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】川本 佳久
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AG03
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB26
4F202CK12
4F202CK19
4F202CQ01
4F204AD05
4F204AG03
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FB22
4F204FN11
(57)【要約】
【課題】例えば一次成形品などの第1成形品をさらに樹脂成形した二次成形品などの第2成形品において、その品質及び外観を向上する。
【解決手段】樹脂成形された第1成形品P1に、キャビティ2Cが形成された第1型2及び当該第1型2に対向する第2型3を用いて、さらに樹脂成形して第2成形品P2を得る樹脂成形品の製造方法であって、キャビティ2C内に第1成形品P1が配置され、第1成形品P1の上に樹脂材料Jが配置された状態とする配置工程と、配置工程の後に第1型2及び第2型3を型締めする型締め工程とを備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形された第1成形品に、キャビティが形成された第1型及び当該第1型に対向する第2型を用いて、さらに樹脂成形して第2成形品を得る樹脂成形品の製造方法であって、
前記キャビティ内に前記第1成形品が配置され、前記第1成形品の上に樹脂材料が配置された状態とする配置工程と、
前記配置工程の後に前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程とを備える、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第1型及び前記第2型は、前記第1成形品の成形型を用いて構成されている、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1型のキャビティの深さを、前記第1成形品の樹脂成形時よりも前記第2成形品の樹脂成形時の方が深くなるように調整する、請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程は、
前記第1成形品を前記キャビティ内に配置する工程と、
前記キャビティ内に配置された前記第1成形品の上に樹脂材料を配置する工程とを有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記配置工程は、
前記第1成形品の上に樹脂材料を配置する工程と、
前記樹脂材料が配置された前記第1成形品を前記キャビティ内に配置する工程とを有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記配置工程の前に、前記第1成形品を加工する加工工程をさらに備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
自身の形状を保つ剛性を有するカバープレートにより前記第2型の型面を覆った状態で、前記型締め工程を行う、請求項1乃至6の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記カバープレートにおける前記樹脂材料と接触する面には、剥離シートが貼り付けられている、請求項7に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記カバープレートの平面視における外形形状が、前記キャビティの平面視における外形形状よりも大きい、請求項7又は8に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、一次成形により得られた一次成形品にさらに樹脂封止により二次成形して二次成形品である樹脂成形品を製造する方法がある。
【0003】
この製造方法の一例としては、図5に示すように、一次成形用の下型のキャビティに樹脂材料を収容するとともに、上型にキャリアを保持して、下型及び上型を型締めすることにより、一次成形品を得る(一次成形工程)。なお、一次成形品は、キャリアから剥離されて、その上面に再配線などの中間実装が行われる。そして、中間実装された一次成形品を上下反転させて、上型に吸着保持するとともに、二次成形用の下型に樹脂材料を収容して、二次成形用の下型と上型とを型締めすることにより、二次成形品を得る(二次成形工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/160231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の製造方法では、一次成形品を吸着保持して型締めすることにより二次成形品を得ているので、二次成形品に吸着痕が残ってしまい、二次成形品の外観が悪くなり、製品の信頼性に影響してしまう。
【0006】
また、二次成形において樹脂材料を下型のキャビティに収容すると、樹脂材料が下型から直接的に熱を受けて昇温することから、型締め後の樹脂材料の溶融時間が限られてしまう。そうすると、型締め後の樹脂材料の温度が均一になりにくく、樹脂材料の粘度のばらつきが生じてしまう。その結果、二次成形品に熱応力が加わり、反りが生じたり、表面に斑や流れ痕が生じたりする恐れがある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、例えば一次成形品などの第1成形品にさらに樹脂成形した二次成形品などの第2成形品において、その品質及び外観を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形された第1成形品に、キャビティが形成された第1型及び当該第1型に対向する第2型を用いて、さらに樹脂成形して第2成形品を得る樹脂成形品の製造方法であって、前記キャビティ内に前記第1成形品が配置され、前記第1成形品の上に樹脂材料が配置された状態とする配置工程と、前記配置工程の後に前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、例えば一次成形品などの第1成形品にさらに樹脂成形した二次成形品などの第2成形品において、その品質及び外観を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の一次成形時における構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の樹脂成形装置の二次成形時における構成を模式的に示す断面図である。
図3】同実施形態において一次成形品及び樹脂材料をキャビティ内に配置し、カバープレートを上型に吸着保持した状態を模式的に示す断面図である。
図4】同実施形態の樹脂成形品の製造方法の各工程を模式的に示す図である。
図5】従来の一次成形工程及び二次成形工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前述のとおり、樹脂成形された第1成形品に、キャビティが形成された第1型及び当該第1型に対向する第2型を用いて、さらに樹脂成形して第2成形品を得る樹脂成形品の製造方法であって、前記キャビティ内に前記第1成形品が配置され、前記第1成形品の上に樹脂材料が配置された状態とする配置工程と、前記配置工程の後に前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
この樹脂成形品の製造方法であれば、第1型のキャビティ内において第1成形品の上に樹脂材料を配置し、この状態で第1型及び第2型を型締めしているので、第1成形品を第2型に吸着保持させる必要がなく、第2成形品に吸着痕が発生しない。
また、樹脂材料は、第1成形品を介して第1型からの熱を受けるので、樹脂材料の昇温が緩やかになり、溶融時間を長くすることができ、樹脂材料の温度の均一性を向上させることができる。これにより、第2成形品に熱応力が残留しにくくなり、反りなどの変形を抑えることができる。また、樹脂材料の温度の均一性が向上することから、第2成形品の表面に斑や流れ痕を生じ難くすることができる。
【0014】
従来の二次成形品などの第2成形品の成形型(特に下型)は、一次成形品などの第1成形品の成形型とは異なるものが用いられている。この場合、第2成形品を得るためには成形型の交換が必要となり、その交換作業が煩雑となってしまう。また、イニシャルコスト(設備投資)も大きくなってしまう。
この問題を好適に解決するためには、前記第1型及び前記第2型は、前記第1成形品の成形型を用いて構成されていることが望ましい。
【0015】
この場合、前記第1型のキャビティの深さを、前記第1成形品の樹脂成形時よりも前記第2成形品の樹脂成形時の方が深くなるように調整することが考えられる。
【0016】
前記配置工程の具体的な実施の態様としては、以下の2つが考えられる。
1つ目の態様は、前記配置工程が、前記第1成形品を前記キャビティ内に配置する工程と、前記キャビティ内に配置された前記第1成形品の上に樹脂材料を配置する工程とを有する。
この態様によれば、第1成形品と樹脂材料とを別々にキャビティに搬送することになり、両者の搬送を確実に行うことができる。
【0017】
2つ目の態様は、前記配置工程が、前記第1成形品の上に樹脂材料を配置する工程と、前記樹脂材料が配置された前記第1成形品を前記キャビティ内に配置する工程とを有する。
この態様によれば、樹脂材料と第1成形品とを一挙にキャビティ内に配置することができる。
【0018】
例えば一次成形などの第1成形の成形型を用いて二次成形などの第2成形を行う場合、第1成形品の収縮量が小さいと、第2成形品の成形時において第1型のキャビティに入りにくくなることが考えられる。
この場合には、前記配置工程の前に、前記第1成形品を加工する加工工程をさらに備えることが望ましい。
この加工工程により、第1成形品の外周部の一部又は全部を除去することによって、第1型のキャビティに第1成形品を配置しやすくできる。
【0019】
自身の形状を保つ剛性を有するカバープレートにより前記第2型の型面を覆った状態で、前記型締め工程を行うことが望ましい。
この構成であれば、第2型に離型フィルムを用いることによるランニングコスト及び廃棄コストを削減することができる。また、カバープレートが自身の形状を保つ剛性を有し、自然状態において自身の形状を維持できる部材からなるので、当該カバープレートを搬送するカバープレート搬送機構を簡単にすることができる。例えば、第1成形品を搬送する搬送機構と同様の構成を有する搬送機構により搬送することができる。さらに、カバープレートが離型フィルムのように柔らかくなく、重力以外に外部から力が加えられていない自然状態で形状を維持するため、第2型の型面に装着した際に皺ができず、離型フィルムを用いた場合のように金型構造も複雑化することがない。
【0020】
前記カバープレートにおける前記樹脂材料と接触する面には、剥離シートが貼り付けられていることが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形後に剥離シートを剥がすだけで付着した樹脂を除去することができ、カバープレートを使い回すことができるとともに、カバープレートの洗浄作業を容易にすることができる。
【0021】
樹脂が第2型の型面に付着することを好適に防ぐためには、前記カバープレートの平面視における外形形状が、前記キャビティの平面視における外形形状よりも大きいことが望ましい。
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形品の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
本実施形態の樹脂成形品の製造方法は、例えば圧縮成形により樹脂成形された第1成形品に、キャビティ2Cが形成された第1型である下型2及び下型2に対向して配置された第2型である上型3を用いて、さらに圧縮成形により樹脂成形して樹脂成形品である第2成形品を製造するものである。以下では、一次成形によって得られた一次成形品P1を第1成形品とし、一次成形品P1をさらに樹脂成形して得られた二次成形品P2を第2成形品とする。
【0024】
具体的に樹脂成形品の製造方法は、キャリアである基板Wに樹脂成形して一次成形品P1を得る一次成形工程と、一次成形工程により得られた一次成形品P1にさらに樹脂成形して二次成形品P2を得る二次成形工程とを備えており、同一の樹脂成形装置100を用いて上記2つの工程が行われる。
【0025】
<樹脂成形装置100の構成>
樹脂成形装置100は、圧縮成形(コンプレッションモールド)方式のものであり、図1及び図2に示すように、キャビティ2Cが形成された下型2と、下型2のキャビティ2Cに対向して配置された上型3と、下型2及び上型3が取り付けられるとともに下型2及び上型3を型締めする型締め機構4とを有する。
【0026】
型締め機構4は、下型2が取り付けられる可動盤41と、上型3が取り付けられる上部固定盤42と、可動盤41を昇降移動させるための駆動機構43とを有している。
【0027】
可動盤41は、その上面に下型2が取り付けられるものであり、下部固定盤44に立て設けられた複数の支柱部45により昇降移動可能に支持されている。また、上部固定盤42は、その下面に上型3が取り付けられるものであり、複数の支柱部45の上端部において可動盤41と対向するように固定されている。
【0028】
駆動機構43は、可動盤41及び下部固定盤44の間に設けられており、可動盤41を昇降移動させて下型2及び上型3を型締めするものである。本実施形態の駆動機構43は、サーボモータ等の回転を直線移動に変換するボールねじ機構431を用いて可動盤41を昇降させる直動方式のものであるが、サーボモータ等の動力源を例えばトグルリンクなどのリンク機構を用いて可動盤41に伝達するリンク方式のものであっても良い。
【0029】
下型2と可動盤41との間には、下型保持部46が設けられている。この下型保持部46は、下型2を加熱するヒータプレート461と、ヒータプレート461の下面に設けられた断熱部材462と、ヒータプレート461の上面に設けられて下型2の周囲を取り囲む側壁部材463とを有している。また、上型3と上部固定盤42との間には、上型保持部47が設けられている。この上型保持部47は、上型3を加熱するヒータプレート471と、ヒータプレート471の上面に設けられた断熱部材472と、ヒータプレート471の下面に設けられて上型3の周囲を取り囲む側壁部材473と、側壁部材473の下端に設けられたシール部材474とを有している。そして、駆動機構43による型締め時において側壁部材463と側壁部材473のシール部材474とが密着して、下型2及び上型3を収容する空間が外気と遮断される。なお、シール部材は、側壁部材473の下端ではなく、側壁部材463の上端に設けても良い。
【0030】
下型2は、一次成形工程及び二次成形工程の両方に用いられるものである。下型2のキャビティ2Cは、一次成形工程では樹脂材料Jを収容し(図1参照)、二次成形工程では一次成形品P1及び樹脂材料Jを収容する(図2参照)。なお、樹脂材料Jとしては、例えば顆粒状樹脂を用いることができる。
【0031】
具体的に下型2は、キャビティ2Cの例えば平面状の底面を形成する単一の部材である底面部材201と、当該底面部材201を取り囲む側面部材202とを有している。この底面部材201の上面と側面部材202の内側周面によってキャビティ2Cが形成される。
【0032】
側面部材202は、底面部材201に対して相対的に上下移動可能に設けられている。具体的は、下型2のベースプレート203に対してコイルばね等の複数の弾性部材204によって支持されている。また、本実施形態の下型2は、一次成形品P1及び二次成形品P2の離型性を向上させるために離型フィルム5で覆われる。また、側面部材202の上面(側面部材202と基板Wとの当接面)に、空気やガスを排出するためエアベント(不図示)を設けても良い。
【0033】
ここで、下型2は、一次成形品P1の樹脂成形時(一次成形工程)のキャビティ2Cの深さよりも、二次成形品P2の樹脂成形時(二次成形工程)のキャビティ2Cの深さを深くなるように調整可能に構成されている。
【0034】
具体的には、図2に示すように、下型2のベースプレート203と弾性部材204との間に、例えばシムなどのスペーサ部材6を介在させることによって、底面部材201に対する側面部材202の相対高さを調整することにより、キャビティ2Cの深さを調整することが考えられる。例えば、一次成形工程では、ベースプレート203と弾性部材204との間に、スペーサ部材6を介在させず(図1参照)、二次成形工程では、ベースプレート203と弾性部材204との間に、スペーサ部材6を介在させることにより(図2参照)、二次成形工程のキャビティ2Cの深さを一次成形工程のキャビティ2Cの深さよりも深くすることが考えられる。その他、一次成形工程と二次成形工程とでスペーサ部材6の厚みを変更させることにより、それぞれのキャビティ2Cの深さを調整するようにしても良い。
【0035】
上型3は、一次成形工程及び二次成形工程の両方に用いられるものである。上型3の型面3Pは平面状をなすものであり、一次成形工程では基板Wの裏面を吸着して保持し(図1参照)、二次成形工程では離型フィルムの代わりとなるカバープレート7を吸着して保持する(図2参照)。ここで、図3に示すように、上型3の下面には吸引口3hが形成されており、上型3の内部には吸引口3hに繋がる吸引流路3Rが形成されている。この吸引流路3Rは外部の吸引装置(不図示)に接続されている。
【0036】
二次成形時に用いられるカバープレート7は、特に図3に示すように、樹脂材料Jが上型3の型面3Pに付着しないように上型3の型面3Pを覆うものである。本実施形態のカバープレート7は、自身の形状を保つ剛性を有するものであり、重力以外に外部から力が加えられていない自然状態において自身の形状(例えば平板状)を保つ剛性を有する部材からなる。カバープレート7は、例えば、金属製、樹脂製又は紙製のものである。
【0037】
また、カバープレート7の厚みは、材質によるが、通常、約0.2mm~約0.5mmであることが好ましい。約0.2mmより薄いと、上記の自然状態において自身の形状を保つことが困難となる場合がある。一方、約0.5mmより厚いと、サイズによっては自重を支えきれずに自然状態において自身の形状を保つことが困難となる場合があり、また、コストアップや重量増加による操作性の悪化をもたらしてしまう。特に紙の場合は、約0.5mmより厚いと、成形圧力で押されることによる変形量が大きくなってしまい、樹脂成形品の樹脂モールド部の平坦度が確保しにくくなる。
【0038】
ここで、「自身の形状を保つ剛性を有する」とは、カバープレート7の一端部を支持し、当該一端部を固定端とした片持ち状態において、カバープレート7が自重により変形しない、又は、自重による変形量が実用上無視できる程度に強度が設定されていることを意味する。或いは、「自身の形状を保つ剛性を有する」とは、カバープレート7を垂直にして下端部を支持した状態において、カバープレート7が起立した状態を維持できる程度に強度が設定されていることを意味する。なお、「自身の形状を保つ剛性を有する」とは、離型フィルムのように持ち上げると容易に変形し、自身の形状を保つことができずに皺ができてしまうものを除く意味である。
【0039】
金属製のものとしては、例えば、ステンレス鋼や銅製の平板を挙げることができる。樹脂製のものとしては、例えば、ガラスエポキシ樹脂等のプラスチック製の平板を挙げることができる。紙製のものとしては、例えば、防塵紙等の厚紙を挙げることができる。成形型(下型2、上型3)は加熱されるため、カバープレート7は耐熱性を有することが好ましい。
【0040】
ここで、カバープレート7における樹脂材料Jと接触する面には、図3に示すように、剥離シート8が貼り付けられていることが望ましい。ここで、剥離シート8を多層構造とした場合には、二次成形工程後に最外側の剥離シート8を剥離することで、次の二次成形工程で使用可能となり、剥離シート8を単層構造とした場合には、二次成形工程後に剥離シート8を剥離し、新しい剥離シート8をカバープレート7に貼り付けることにより、次の二次成形工程で使用可能となる。
【0041】
さらに、カバープレート7の平面視における外形形状は、キャビティ2Cの平面視における外形形状よりも大きい。例えば、キャビティ2Cが矩形状をなす場合には、当該キャビティ2Cよりも外形形状が大きい矩形状をなすカバープレート7を用いることが考えられ、キャビティ2Cが円形状をなす場合には、当該キャビティ2Cよりも外形形状が大きい円形状をなすカバープレート7を用いることが考えられる。このようにカバープレート7がキャビティ2Cよりも大きいので、溶融した樹脂材料Jが上型3の型面3Pに接触することを防ぐことができる。
【0042】
その上、カバープレート7は、一次成形工程に用いた基板Wと平面視において同一形状とすることが考えられる。これにより、上型3に設けられた基板Wの位置決めピン(不図示)を用いて、カバープレート7の位置決めを行うことができる。
【0043】
<樹脂成形品の製造方法の詳細>
次に、上記の樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品の製造方法の詳細について、図4を参照して説明する。
【0044】
<A.一次成形工程>
本実施形態の一次成形工程は、下型2のキャビティ2Cに樹脂材料Jを供給し、上型3にキャリアである基板Wを吸着保持させる供給・保持工程と、下型2及び上型3を型締めして、基板Wに樹脂成形する型締め工程と、樹脂成形により得られた一次成形品P1を基板Wから剥離する剥離工程とを有している。
【0045】
<A-1.供給・保持工程>
まず、型開きされた下型2のキャビティ2Cに、樹脂材料供給機構(不図示)により計量された樹脂材料Jを供給する。このとき、樹脂材料供給機構は、離型フィルム5上に計量された樹脂材料Jを載置し、当該樹脂材料Jが載置された離型フィルム5をキャビティ2Cに密着させることにより、キャビティ2Cに樹脂材料Jを供給することが考えられる。その他、離型フィルム5をキャビティ2Cに予め密着させておき、樹脂材料供給機構は、離型フィルム5が密着したキャビティ2Cに計量された樹脂材料Jを供給するようにしても良い。
【0046】
また、型開きされた上型3の型面3Pに、搬送機構(不図示)により基板Wを搬送して吸着保持させる。このとき、基板Wは、上型3の型面3Pに設けられた位置決めピン(不図示)により位置決めされる。
【0047】
<A-2.型締め工程>
そして、下型2で樹脂材料Jが溶融した後に、型締め機構4により下型2と上型3とは所定の型締め圧により型締めする。所定時間が経過した後、型締め機構4により下型2を下降させて下型2と上型3とを型開きする。これにより、基板W上に平板状の一次成形品P1が樹脂成形される。
【0048】
<A-3.剥離工程>
上記の型締め工程の後に搬送機構(不図示)により、型開きされた上型3から樹脂成形された基板W(一次成形品P1を有する基板W)を受け取る。そして、基板Wから一次成形品P1を剥離機構(不図示)により剥離する。剥離された一次成形品P1は、図示しない一次成形品収容部などに収容される。なお、型締め工程の後に下型2の離型フィルム5も別途取り除かれる。このようにして、一次成形工程が終了する。
【0049】
ここで、本実施形態の樹脂成形品の製造方法では、一次成形工程と二次成形工程との間に、一次成形品P1の収縮量が小さい場合には、後述する二次成形工程に合わせて一次成形品P1の外周部の一部又は全部を除去する加工工程と、一次成形品P1に再配線などの中間実装を行う中間実装工程とを備えている。
【0050】
<B.加工工程>
上記の剥離工程により剥離され、室温まで冷却された一次成形品P1の外形形状を計測する。一次成形品P1の樹脂収縮量が小さい場合には、必要に応じて、一次成形品P1の外周部を研磨などにより除去する。なお、一次成形品P1の外形形状を計測すること無く、一次成形品P1の外周部を一律で研磨などにより除去することもできる。これにより、二次成形工程において一次成形品P1を確実にキャビティ2Cに配置できるようにする。この加工工程は、上述した樹脂成形装置100とは別の加工装置を用いて行うことが考えられるが、上記の樹脂成形装置100に加工機能を持たせることにより樹脂成形装置100の内部で行うようにしても良い。
【0051】
<C.中間実装工程>
基板Wから剥離された一次成形品P1の一面(例えば基板Wから剥離された面)に、再配線(不図示)などの中間実装を行う。これにより一次成形品P1に中間実装面P1xが形成される。この中間実装工程は、上述した樹脂成形装置100とは別の中間実装装置を用いて行うことが考えられるが、上記の樹脂成形装置100に中間実装機能を持たせることにより樹脂成形装置100の内部で行うようにしても良い。
【0052】
<D.二次成形工程>
本実施形態の二次成形工程は、上記の中間実装工程の後に行われるものであり、二次成形工程を行う前に、二次成形品P2の厚みの設定値に基づいて、樹脂成形装置100の下型2のキャビティ2Cの深さが調整される。なお、キャビティ2Cの深さの調整方法は、図2に示すように、下型2のベースプレート203と弾性部材204との間に、例えばシムなどのスペーサ部材6を介在させることによって行うことが考えられる。
【0053】
具体的に二次成形工程は、キャビティ2C内に一次成形品P1が配置され、一次成形品P1の上に樹脂材料Jが配置された状態とする配置工程と、上型3にカバープレート7を保持させる保持工程と、下型2及び上型3を型締めして、一次成形品P1に樹脂成形する型締め工程と、樹脂成形により得られた二次成形品P2をカバープレート7から剥離する剥離工程と、を有している。
【0054】
<D-1.配置工程>
この配置工程は、一次成形品P1をキャビティ2C内に配置する工程と、キャビティ2C内に配置された一次成形品P1の上に樹脂材料供給機構(不図示)により計量した樹脂材料Jを配置する工程とを有する。ここで、キャビティ2C内に配置された一次成形品P1は、その中間実装面P1xが上を向くように配置される。また、樹脂材料Jは、一次成形品P1の上に配置された状態において、一次成形品P1を介して下型2からの熱を受けて溶融を開始する。
【0055】
なお、一次成形品P1をキャビティ2C内に配置する工程は、一次成形品P1を離型フィルム5上に載置し、一次成形品P1が載置された離型フィルム5をキャビティ2Cに吸着させると同時に、一次成形品P1をキャビティ2C内に配置することが考えられる。
【0056】
その他、配置工程は、一次成形品P1の上に計量した樹脂材料Jを配置する工程と、樹脂材料Jが配置された一次成形品P1をキャビティ2C内に配置する工程とを有するものであっても良い。
【0057】
なお、樹脂材料Jが配置された一次成形品P1をキャビティ2C内に配置する工程は、樹脂材料Jが配置された一次成形品P1を離型フィルム5上に載置し、一次成形品P1が載置された離型フィルム5をキャビティ2Cに吸着させると同時に、樹脂材料Jが配置された一次成形品P1をキャビティ2C内に配置することが考えられる。
【0058】
<D-2.保持工程>
保持工程では、型開きされた上型3の型面3Pに、搬送機構(不図示)によりカバープレート7を搬送して、吸着保持させる。このとき、カバープレート7は、上型3の型面3Pに設けられた位置決めピン(不図示)により位置決めされる。本実施形態のカバープレート7は、前記基板Wと同一形状をなすものであり、基板Wの位置決めピンを用いて位置決めされる。
【0059】
<D-3.型締め工程>
そして、下型2で樹脂材料Jが溶融した後に、型締め機構4により下型2と上型3とは所定の型締め圧により型締めする。所定時間が経過した後、型締め機構4により下型2を下降させて下型2と上型3とを型開きする。これにより、カバープレート7上に平板状の二次成形品P2が樹脂成形される。この二次成形品P2は、上記の一次成形品P1と平面視において実質的に同一外形を有する。なお、熱収縮又は周囲が除去された一次成形品P1は、キャビティ2Cに収容された状態で、キャビティ2Cの内側周面(側面部材202の内側周面)との間に隙間がある場合には、オーバーモールドされることになる。
【0060】
<D-4.剥離工程>
上記の型締め工程の後に搬送機構(不図示)により、型開きされた上型3から樹脂成形されたカバープレート7(二次成形品P2を有するカバープレート7)を受け取る。そして、カバープレート7から剥離機構(不図示)により二次成形品P2を剥離する。剥離された二次成形品P2は、図示しない二次成形品収容部などに収容される。なお、型締め工程の後に下型2の離型フィルム5も別途取り除かれる。このようにして、二次成形工程が終了する。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、下型2のキャビティ2C内において一次成形品P1の上に樹脂材料Jを配置し、この状態で下型2及び上型3を型締めしているので、一次成形品P1を上型3に吸着保持させる必要がなく、二次成形品P2に吸着痕が発生しない。
【0062】
また、樹脂材料Jは、一次成形品P1を介して下型2からの熱を受けるので、樹脂材料Jの昇温が緩やかになり、溶融時間を長くすることができ、樹脂材料Jの温度の均一性を向上させることができる。これにより、二次成形品P2に熱応力が残留しにくくなり、反りなどの変形を抑えることができる。また、樹脂材料Jの温度の均一性が向上することから、二次成形品P2の表面に斑や流れ痕を生じ難くすることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、一次成形及び二次成形に同一の成形型2、3を用いているので、一次成形と二次成形との間で成形型の交換作業を不要にすることができ、また、イニシャルコスト(設備投資)も抑えることができる。
【0064】
さらに、二次成形時においてカバープレート7により上型3の型面3Pを覆っているので、上型3に離型フィルムを用いることなく、上型3の型面3Pへの樹脂の付着を防止することができる。したがって、上型3に離型フィルムを用いることによるランニングコスト及び廃棄コストを削減することができる。
【0065】
その上、カバープレート7が自身の形状を保つ剛性を有し、自然状態において自身の形状を維持できる部材からなるので、当該カバープレート7を搬送するカバープレート搬送機構を簡単にすることができる。例えば、基板Wや一次成形品を搬送する搬送機構と同様の構成を有する搬送機構により搬送することができる。さらに、カバープレート7が離型フィルムのように柔らかくなく、重力以外に外部から力が加えられていない自然状態で形状を維持するため、上型3の型面3Pに装着した際に皺ができず、離型フィルムを用いた場合のように金型構造も複雑化することがない。
【0066】
また、カバープレート7における樹脂材料Pと接触する面には、剥離シート8が貼り付けられているので、二次成形後に剥離シート8を剥がすだけで付着した樹脂を除去することができ、カバープレート7の洗浄作業を容易にすることができる。
【0067】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0068】
例えば、前記実施形態では、第1成形品が一次成形品P1であり、第2成形品が二次成形品P2である場合を例示したが、第1成形品が二次成形品であり、第2成形品が三次成形品であっても良いし、第1成形品が三次成形品であり、第2成形品が四次成形品であっても良い。つまり、本発明は、第1成形品が2次以上の成形品であっても適用可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、二次成形時において上型3にカバープレート7を吸着保持する構成であったが、吸着保持する構成に加えてクランプ機構によりカバープレート7を保持する構成としても良い。あるいは、吸着保持する構成に代えて、クランプ機構によりカバープレート7を保持する構成としても良い。ここで、クランプ機構は、上型3の周囲に設けられ、カバープレート7の外縁部の下面に引っ掛かりカバープレート7を保持する。
【0070】
その上、カバープレート7自体を剥離可能なフィルムを複数重ね合わせて構成されたものとし、二次成形ごとにカバープレート7の最外側のフィルムを剥がして用いるものとしても良い。
【0071】
前記実施形態では、一次成形工程が加工工程を有するものであったが、加工工程を有さないものであっても良い。また、加工工程により一次成形品の外周部を除去することによって、二次成形時において一次成形品の周囲に樹脂成形される量(オーバーモールドの量)を調整するようにしても良い。
【0072】
前記実施形態では一次成形工程及び二次成形工程を同一の樹脂成形装置により行うものであったが、それぞれ別の樹脂成形装置を用いて行うものであっても良い。
【0073】
前記実施形態においては、樹脂材料は顆粒状樹脂であったが、液状樹脂であっても良い。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
100・・・樹脂成形装置
J ・・・樹脂材料
P1 ・・・一次成形品(第1成形品)
P2 ・・・二次成形品(第2成形品)
2 ・・・下型(第1型)
2C ・・・キャビティ
3 ・・・上型(第2型)
3P ・・・型面
7 ・・・カバープレート
8 ・・・剥離シート
図1
図2
図3
図4
図5