(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061172
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】甘酒粉末、甘酒含有食品およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20220411BHJP
【FI】
A23L2/38 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020168998
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】520388631
【氏名又は名称】町 啓介
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】町 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】町 啓介
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LE01
4B117LG12
4B117LK12
4B117LK14
4B117LK16
4B117LK17
4B117LK25
4B117LK29
4B117LK30
4B117LP03
4B117LP05
(57)【要約】
【課題】米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化することができる甘酒粉末の製造方法;米麹甘酒に本来的に含まれる成分が豊富な甘酒粉末;を提供する。
【解決手段】米、米麹および米と米麹の合計質量の半量以下の水を含む原料を混合して原料混合物を得、原料混合物を40℃以上60℃以下の温度条件下、15時間以上発酵させて半固形状甘酒を得、半固形状甘酒を30℃以上40℃以下の温度条件下、除湿乾燥することで甘酒粉末を得る、甘酒粉末の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米、米麹および前記米と前記米麹の合計質量の半量以下の水を含む原料を混合して原料混合物を得、
前記原料混合物を40℃以上60℃以下の温度条件下、15時間以上発酵させて半固形状甘酒を得、
前記半固形状甘酒を30℃以上40℃以下の温度条件下、除湿乾燥することで甘酒粉末を得る、甘酒粉末の製造方法。
【請求項2】
前記米と、前記米麹と、前記米および前記米麹の合計質量の0.16倍以上0.32倍以下の質量の水と、を混合して前記混合物を得る請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られた甘酒粉末。
【請求項4】
アミノ酸含有量が5,000mg/100g以上である甘酒粉末。
【請求項5】
グルタミン酸含有量が1,000mg/100g以上である甘酒粉末。
【請求項6】
ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6の合計含有量が0.3mg/100g以上である甘酒粉末。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか一項に記載の甘酒粉末に、更に旨味成分が添加された甘酒含有食品。
【請求項8】
前記旨味成分が魚介節由来のイノシン酸である請求項7に記載の甘酒含有食品。
【請求項9】
請求項3から6のいずれか一項に記載の甘酒粉末に、更に甘味成分が添加された甘酒含有食品。
【請求項10】
請求項3から6のいずれか一項に記載の甘酒粉末に、更に食物成分が加えられた甘酒含有食品。
【請求項11】
請求項3から6のいずれか一項に記載の甘酒粉末に、更に魚介節粉末と、醤油エキスと、本みりんエキスと、砂糖と、が添加された甘酒含有食品。
【請求項12】
請求項1または2に記載の製造方法により甘酒粉末を得、
醤油、本みりんおよび砂糖を混合して調味液を得、
魚介節粉末と前記調味液とを加熱下で混合し、前記魚介節粉末に前記調味液を吸収させた後、前記調味液を吸収した魚介節粉末を濾取し、50℃以下の温度下で乾燥して湿潤状態の副原料混合物を得、
前記甘酒粉末と、前記副原料混合物と、を混合することにより甘酒含有食品を得る甘酒含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘酒、特に粉末状の甘酒の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
甘酒は「飲む点滴」、「飲む美容液」と称される程、栄養価が高く、健康や美容によい飲料として注目を集めている。
【0003】
そして、通常は液状の甘酒を乾燥し、粉末状とした甘酒粉末も知られている。
【0004】
例えば、米麹及び酒粕を含む主素材と、高感度甘味料と、糖質甘味料と、水を含み、かつ組成物中の乾燥固形分100重量部に対して、水分含有量が250~350重量部、高感度甘味料含有量が、甘味度での砂糖換算で少なくとも30重量部であって、ブリックス糖度が10~25である組成物を凍結乾燥処理した甘酒用凍結乾燥食品が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の甘酒用凍結乾燥食品は酒粕甘酒(酒粕を水で溶き、砂糖で甘味を加えた甘酒)をベースとする甘酒粉末である。
【0007】
一方、「飲む点滴」、「飲む美容液」と称され、注目されているのは、米に麹菌を作用させ、米のデンプンを糖化させた米麹甘酒である。米麹甘酒は米のデンプンに由来するブドウ糖を豊富に含む。ブドウ糖は砂糖よりも甘みが自然であることに加え、消化吸収され易く、素早くエネルギーに変換される。また、米麹甘酒にはアミノ酸やビタミンB群、米糀に由来する酵素類が豊富で、栄養価が高く、旨味も強い。従って、米麹甘酒をベースとする甘酒粉末が求められている。
【0008】
しかし、米麹甘酒を加熱乾燥して甘酒粉末とすると、米麹甘酒に本来的に含まれる成分が熱変性により分解消失されてしまう;という課題があった。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。すなわち、本発明は、米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化することができる甘酒粉末の製造方法;米麹甘酒に本来的に含まれる成分が豊富な甘酒粉末;を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。そして、米を米麹に含まれる麹菌で発酵させる際に加える水を極力少なくし、通常より長時間をかけて発酵させ半固形状の甘酒を得ること;半固形状の甘酒を低温条件下、除湿乾燥すること;によって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
【0011】
[1]甘酒粉末の製造方法:
本発明は、米、米麹および前記米と前記米麹の合計質量の半量以下の水を含む原料を混合して原料混合物を得、前記原料混合物を40℃以上60℃以下の温度条件下、15時間以上発酵させて半固形状甘酒を得、前記半固形状甘酒を30℃以上40℃以下の温度条件下、除湿乾燥することで甘酒粉末を得る、甘酒粉末の製造方法;である。
【0012】
本発明の製造方法は、前記米と、前記米麹と、前記米および前記米麹の合計質量の0.16倍以上0.32倍以下の質量の水と、を混合して前記混合物を得る;ことが好ましい。
【0013】
[2]甘酒粉末:
本発明は、前記[1]の製造方法により得られた甘酒粉末;
アミノ酸含有量が5,000mg/100g以上である甘酒粉末;
グルタミン酸含有量が1,000mg/100g以上である甘酒粉末;
ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6の合計含有量が0.3mg/100g以上である甘酒粉末;である。
【0014】
[3]甘酒含有食品:
本発明は、前記[2]に記載の甘酒粉末に、更に旨味成分が添加された甘酒含有食品;である。本発明の甘酒含有食品は、前記旨味成分が魚介節由来のイノシン酸であること;が好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記[2]に記載の甘酒粉末に、更に甘味成分が添加された甘酒含有食品;
前記[2]に記載の甘酒粉末に、更に食物成分が加えられた甘酒含有食品;
前記[2]に記載の甘酒粉末に、更に魚介節粉末と、醤油エキスと、本みりんエキスと、黒糖粉末と、が添加された甘酒含有食品;である。
【0016】
[4]甘酒含有食品の製造方法;
本発明は、前記[1]に記載の製造方法により甘酒粉末を得、醤油、本みりんおよび砂糖を混合して調味液を得、魚介節粉末と前記調味液とを加熱下で混合し、前記魚介節粉末に前記調味液を吸収させた後、前記調味液を吸収した魚介節粉末を濾取し、50℃以下の温度下で乾燥して湿潤状態の副原料混合物を得、前記甘酒粉末と、前記副原料混合物と、を混合することにより甘酒含有食品を得る甘酒含有食品の製造方法;である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の甘酒粉末の製造方法は、米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化することができる。また、本発明の甘酒粉末は、米麹甘酒に本来的に含まれる成分が豊富である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、さらに具体的に説明する。但し、本発明は特許請求の範囲に記載された要件を満たす全ての形態を包含し、以下の記載に示された形態のみに限定されるものではない。
【0019】
[1]本発明の特徴:
本発明の甘酒粉末の製造方法は、米、米麹および前記米と前記米麹の合計質量より少量の水を含む原料を混合して原料混合物を得る。
【0020】
通常、発酵(糖化)を十分に進行させるため、米と米麹の合計質量と同量以上の質量の水を加えた状態で発酵(糖化)を行う。しかし、本発明においては、原料混合物中の水の量を極力減らすことで、液状の甘酒ではなく、半固形状の甘酒を得る。これにより、甘酒の乾燥を容易にし、乾燥時の加熱時間を短縮し、米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化する。
【0021】
また、本発明の甘酒粉末の製造方法は、前記原料混合物を40℃以上60℃以下の温度条件下、15時間以上発酵させて半固形状甘酒を得る。
【0022】
米と米麹の合計質量に対し、1.2倍以上の質量の水を加えた状態で発酵(糖化)を行う場合には、発酵時間は6時間から8時間である。前記原料混合物中の水が少ないと、発酵(糖化)が進み難いおそれがあるが、発酵時間を十分にとることによって、発酵(糖化)を十分に進行させることができる。本発明の方法によれば、従来の方法と同様に、糖度30から35の甘酒を得ることができる。
【0023】
更に、本発明の甘酒粉末の製造方法は、前記半固形状甘酒を30℃以上40℃以下の温度条件下、除湿乾燥することで甘酒粉末を得る。
【0024】
30℃以上40℃以下という低温条件下で乾燥することにより、米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化することができる。また、除湿乾燥することにより、低温条件下であっても迅速に前記半固形状甘酒を乾燥することができる。減圧条件下で除湿乾燥を行えば、更に効率的な乾燥を行うことができる。
【0025】
[2]甘酒粉末の製造方法:
以下、本発明の甘酒粉末の製造方法について説明する。
【0026】
[2-1]混合工程:
混合工程においては、米、米麹および前記米と前記米麹の合計質量の半量以下の水を含む原料を混合して原料混合物を得る。
【0027】
水は前記米および前記米麹の合計質量の0.16倍以上0.32倍以下の質量とすることが好ましい。米および米麹の合計質量の0.16倍以上の質量の水を加えることにより、米麹に水分が供給され、米麹中の酵素が活性化される。
【0028】
米としては蒸米を用いることが好ましい。米として蒸米を用いる場合、「米の質量」は蒸す前の米の質量、即ち乾燥状態の米の質量を意味するものとする。
【0029】
[2-2]発酵工程:
発酵工程においては、前記原料混合物を40℃以上60℃以下の温度条件下、15時間以上発酵させて半固形状甘酒を得る。
【0030】
「半固形状」とは、流動性が高い液状とは異なり、成形すれば一定時間その形状を維持する保形性を有する状態を意味する。
【0031】
発酵時間の上限は特に限定されないが、20時間以下とすることが好ましい。
【0032】
[2-3]乾燥工程:
乾燥工程においては、前記半固形状甘酒を30℃以上40℃以下の温度条件下、除湿乾燥することで甘酒粉末を得る。
【0033】
「除湿乾燥」とは、乾燥用の空気を冷凍機やクーラーユニットで冷却し、前記空気中の水分を凝結させて除去(除湿)することによりドライエアを得、そのドライエアを用いて乾燥を行う方法である。除湿乾燥は、例えば市販の低温除湿乾燥機を用いて行うことができる。
【0034】
[3]甘酒粉末:
以下、本発明の甘酒粉末について説明する。
【0035】
本発明の甘酒粉末は、本発明の甘酒粉末の製造方法により得られる。
【0036】
また、本発明の甘酒粉末は、アミノ酸含有量が5,000mg/100g以上である。
【0037】
この「アミノ酸含有量」とは、日本食品標準成分表に記載される17種のアミノ酸の合計含有量を意味する。17種のアミノ酸とは、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アルギニン、グリシン、アラニン、プロリン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、シスチン、リジン、ヒスチジン、チロシンである。
【0038】
一般的な酒粕甘酒のアミノ酸含有量が1,000mg/100g程度、従来の米麹甘酒のアミノ酸含有量が2,000mg/100g程度であるのに対し、本発明の甘酒粉末は顕著にアミノ酸含有量が高いという特徴がある。
【0039】
更に、本発明の甘酒粉末は、グルタミン酸含有量が1,000mg/100g以上である。
【0040】
一般的な酒粕甘酒のグルタミン酸含有量が200mg/100g程度、従来の米麹甘酒のグルタミン酸含有量が500mg/100g程度であるのに対し、本発明の甘酒粉末は顕著にグルタミン酸含有量が高いという特徴がある。
【0041】
なお、前記アミノ酸含有量、前記グルタミン酸含有量は、日本食品標準成分表に記載のタンパク質構成アミノ酸の分析方法に準じて高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)により測定した値を意味する。
【0042】
更にまた、本発明の甘酒粉末は、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)およびビタミンB6の合計含有量が0.3mg/100g以上である。
【0043】
一般的な甘酒のビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6の合計含有量が0.1mg/100g以上であるのに対し、本発明の甘酒粉末は顕著にビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6の合計含有量が高いという特徴がある。
【0044】
なお、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)の含有量は、日本食品標準成分表に記載の分析方法に準じて高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)により測定した値を意味する。また、ビタミンB6の含有量は、日本食品標準成分表に記載の分析方法に準じて微生物定量法により測定した値を意味する。
【0045】
甘酒粉末の粒径は特に限定されず、目的に応じて所望のサイズに調整すればよい。甘酒粉末を水に溶解して甘酒とする場合は、粉末が浮遊したり、沈降したりして溶解し難くなることを防止すべく、粒径が0.2mm以上0.5mm以下のものが好ましい。
【0046】
また、甘酒粉末を粉体と混合して使用する場合には、前記粉体と粒径を揃えた方が使いやすい。例えば、甘酒粉末を小麦粉と混合して使用する(パンを焼く等)場合には、小麦粉の粒径に合わせることが好ましい。
【0047】
なお、甘酒粉末の粒径は甘酒粉末を適宜粉砕し、分級することにより調整することができる。
【0048】
[4]甘酒含有食品:
本発明の甘酒含有食品は、本発明の甘酒粉末に、更に旨味成分が添加された甘酒含有食品である。
【0049】
「旨味成分」とは、主にアミノ酸と核酸である。アミノ酸系の旨味成分としてはグルタミン酸等;核酸系の旨味成分としてはイノシン酸、グアニル酸等;を挙げることができる。前記旨味成分としては、魚介節由来のイノシン酸であることが好ましく、鰹節由来のイノシン酸であることが特に好ましい。本発明の甘酒粉末はグルタミン酸を豊富に含む。異なる旨味成分であるイノシン酸を添加すると、旨味の相乗効果を得られる点において好ましい。
【0050】
旨味成分は純物質として添加する必要はない。例えば、旨味成分を含む食材を粉砕し、粉末化して加えることができる。旨味成分を含む食材は、例えば、グルタミン酸を含む食材としては、昆布、トマト等;イノシン酸を含む食材としては、鰹節等;グアニル酸を含む食材としては、干し椎茸等;を好適に用いることができる。
【0051】
本発明の甘酒含有食品は、本発明の甘酒粉末に、更に甘味成分が添加された甘酒含有食品である。
【0052】
「甘味成分」とは、主に糖である。糖は単糖でもオリゴ糖でもよく、例えばブドウ糖、砂糖(ショ糖)、果糖、麦芽糖、乳糖等を挙げることができる。糖の中でも、砂糖(ショ糖)、ビタミンB群を豊富に含む黒糖が好ましい。
【0053】
本発明の甘酒含有食品は、本発明の甘酒粉末に、更に食物成分が加えられた甘酒含有食品である。
【0054】
「食物成分」とは、前記旨味や前記甘味を有すると否とに拘らず、食物に由来する成分を全て包含する概念である。
【0055】
食物としては、例えば、魚介、海藻、肉、卵、乳製品、野菜、果物、穀物(米、麦、豆、いも等)、きのこ、茶、発酵食品(醤油、味噌、みりん等)等を挙げることができる。これらの食物は粉末、エキス等の状態で添加すればよい。より具体的には、大豆プロテイン粉末等を「食物成分」として添加することもできる。
【0056】
本発明の甘酒含有食品は、本発明の甘酒粉末に、前記旨味成分、前記甘味成分、前記食物成分を組み合わせて添加することも好ましい。
【0057】
例えば、本発明の甘酒粉末に、更に魚介節粉末と、醤油エキスと、本みりんエキスと、砂糖と、が添加された甘酒含有食品は好ましい形態の一つである。
【0058】
「魚介節」は、鰹節に拘らず、鯖節等であってもよい。「醤油エキス」、「本みりんエキス」とは、醤油や本みりんに含まれる水分やアルコール分を揮発させ、旨味成分を濃縮したものを指す。これらはエキスの状態で添加してもよいし、醤油や本みりんをそのまま加え、甘酒含有食品の製造過程で水分やアルコール分を揮発させてもよい。
【0059】
この形態においては、旨味成分であるイノシン酸を含む魚介節粉末と、旨味成分であるアミノ酸(特にグルタミン酸)を含む醤油と、甘味成分である砂糖と、が添加されている。このように複数の旨味成分と甘味成分を組み合わせることにより、各成分の相乗効果により旨味が飛躍的に向上する。このような形態の甘酒含有食品は、例えばふりかけ、調味料として好適に用いることができる。
【0060】
[5]甘酒含有食品の製造方法:
本発明の甘酒含有食品は、例えば以下のような方法により製造することができる。
【0061】
(1)本発明の製造方法により甘酒粉末を得る。
(2)醤油、本みりんおよび砂糖を混合して調味液を得る。
(3)魚介節粉末と前記調味液とを加熱下で混合し、前記魚介節粉末に前記調味液を吸収させた後、前記調味液を吸収した魚介節粉末を濾取し、50℃以下の温度下で乾燥して湿潤状態の副原料混合物を得る。
(4)前記甘酒粉末と、前記副原料混合物と、を混合することにより甘酒含有食品を得る。
【0062】
魚介節粉末と前記調味液の混合は、鍋に細かく刻んだ魚介節(花かつお等を用いても良い)を投入し、更に前記調味液を投入し、中火から弱火で加熱しながら混合する。魚介節に前記調味液が8割程度吸収させたら加熱を停止し、ザル等で魚介節粉末を濾取し、余分な調味液を除去する。
【0063】
乾燥については、50℃以下の低温で加熱乾燥することにより行うことができる。除湿乾燥は調味液を吸収した魚介節粉末を完全に乾燥する必要はなく、湿潤状態(表面に調味液の液滴は付着していないがウェットな状態)まで半乾燥すれば良い。
【0064】
乾燥の条件は特に限定されないが、40℃以上50℃以下の温度で、3時間以上5時間以下、低温除湿乾燥機で乾燥すれば良い。乾燥温度を50℃以下、乾燥時間を5時間以下とすることで、魚介節粉末をウェット状態に保つことができ、甘酒粉末が魚介節粉末の表面に付着した状態に留まらず、魚介節の内部にまで浸透する。また、甘酒含有食品(ふりかけ)の食感を柔らかく保つことができる。
【0065】
最後に、本発明の甘酒粉末と、湿潤状態の前記副原料混合物と、を混合することにより甘酒含有食品を得ることができる。このような甘酒含有食品は、甘酒の効果により魚介節の生臭さが抑えられ、食べやすく、食味にも優れる。
【0066】
各原料の仕込み比も特に限定されないが、鰹節100質量部に対して、本みりんを25質量部以上50質量部以下、醤油を50質量部以上80質量部以下、砂糖を25質量部以上50質量部以下、甘酒粉末を20質量部程度とすることが好ましい。
【実施例0067】
(実施例1)
蒸し米120g、米麹130gおよび60℃の温水50g(蒸し米と米麹の合計質量の0.2倍質量)を混合して原料混合物を得た。この原料混合物を40℃以上60℃以下の温度で15時間発酵させて半固形状甘酒を得た。具体的には、仕込み温度を50℃以上60℃以下とし、50℃で12時間、60℃で3時間発酵させて半固形状甘酒を得た。この半固形状甘酒を30℃の温度条件下、低温除湿乾燥機で除湿乾燥することで甘酒粉末を得た。この甘酒粉末に含まれる成分を分析した結果を表1および表2に示す。なお、実施例1、比較例1、比較例2のサンプルに関しては、一般社団法人・埼玉県食品衛生協会検査センターに提出し、タンパク質構成アミノ酸の分析を行った。
【0068】
(比較例1)
蒸し米150g、米麹100gおよび60℃の温水300g(蒸し米と米麹の合計質量の1.2倍質量)を混合して原料混合物を得た。この原料混合物を60℃で6時間発酵させて液状甘酒を得た。この液状甘酒を常圧で加熱乾燥することで甘酒粉末を得た。この甘酒粉末に含まれる成分を分析した結果を表1および表2に示す。
【0069】
(比較例2)
市販の粉末状酒粕甘酒に含まれる成分を分析した結果を表1および表2に示す。なお、この市販の粉末状酒粕甘酒は酒粕と糖類、糀粉末、デキストリン等を混合したものと考えられる。このような製法においては得られた混合物を乾燥しないことが一般的である。
【0070】
【0071】
【0072】
参考例1には日本食品標準成分表に記載の甘酒の値を記載した。
【0073】
なお、熱量、水分、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物、ナトリウム、食塩相当量については、全て日本食品標準成分表に記載の分析方法に準じて測定した値である。実施例1のサンプルに関しては、一般社団法人・埼玉県食品衛生協会検査センターに提出し、前記項目についての分析を行った。熱量に関してはエネルギー換算係数をたんぱく質4、脂質9、炭水化物4とした。水分は常圧加熱乾燥法、たんぱく質はケルダール法(換算係数6.25)、脂質は酸分解法、灰分は直接灰化法により分析した。炭水化物は全体質量から水分、たんぱく質、脂質、灰分の質量を差し引いて算出した。ナトリウムはICP発光分光分析法、食塩相当量はナトリウムの質量を2.54倍することで算出した。
【0074】
(評価)
実施例1の甘酒粉末は比較例1の甘酒粉末、比較例2の粉末状酒粕甘酒と比較して、アミノ酸含有量、グルタミン酸含有量、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6の合計含有量が顕著に高かった。即ち、本発明の製造方法によれば、米麹甘酒に本来的に含まれる成分を熱変性させることなく、米麹甘酒を粉末化することができ、本発明の甘酒粉末は、アミノ酸、ビタミンB群が従来の甘酒と比較して豊富であると言える。
【0075】
(実施例2)
醤油75g、本みりん45gおよび砂糖30gを混合して調味液を得た。
【0076】
鍋に、5mmから10mm幅で細かく刻んだ鰹節粉末を投入し、更に前記調味液を投入し、弱火で加熱しながら撹拌し、混合した。鰹節粉末に前記調味液が8割程度吸収された段階で加熱を停止し、ザルで鰹節粉末を濾取し、余分な調味液を除去した。
【0077】
濾取した鰹節粉末を40℃の温度下で3時間、乾燥して半乾燥状態の副原料混合物を得た。実施例1の甘酒粉末20gと前記副原料混合物とを混合することにより、実施例2の甘酒含有食品(ふりかけ)を得た。
【0078】
(評価)
実施例2の甘酒含有食品は鰹節の生臭さが抑えられており、しっとりと柔らかく、食べやすさと食味に優れていた。