(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061177
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ドライアイススノー洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B24C 1/00 20060101AFI20220411BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20220411BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20220411BHJP
B05B 7/26 20060101ALI20220411BHJP
B08B 7/02 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B24C1/00 A
B24C5/04 A
B24C11/00 E
B05B7/26
B08B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169010
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】西井 菜々子
【テーマコード(参考)】
3B116
4F033
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116BA06
3B116BA23
3B116BB32
3B116BB90
4F033QA10
4F033QB02X
4F033QB02Y
4F033QB11X
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QD02
4F033QD15
4F033QE06
4F033QF02X
4F033QF17X
4F033QK04X
4F033QK04Y
(57)【要約】
【課題】ドライアイススノーを広角に強く噴き付ける。
【解決手段】混合部150は、絞り部120を通過した液化炭酸を含む炭酸ガス10と噴射用ガス20とを混合して混合ガス30を生成する。ノズル160は、混合部150と接続され、混合ガス30を噴射する。ノズル160は、大径部170、縮径部180およびスリット部190をこの順で含む。大径部170は、混合部150と接続されて一定の内径171Dを有する第1内周面171を有する。縮径部180は、大径部170と接続され、大径部170から離れるにしたがって縮径する第2内周面181を有する。スリット部190は、ノズル160の軸方向と直交する方向に延在してノズル160を貫通しつつ、ノズル160の軸方向におけるノズル160の先端から第2内周面181と連続する位置まで設けられる。スリット部190の内側の空間は、第2内周面181の内側の空間と連通している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給系と、
噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給系と、
前記液化炭酸ガス供給系における下流側に設けられた絞り部と、
前記液化炭酸ガス供給系と前記噴射用ガス供給系とを接続し、前記絞り部を通過した液化炭酸を含む炭酸ガスと前記噴射用ガスとを混合して混合ガスを生成する混合部と、
前記混合部と接続され、前記混合ガスを噴射するノズルとを備え、
前記ノズルは、前記ノズルの軸方向の先端に向かって、大径部、縮径部およびスリット部をこの順で含み、
前記大径部は、前記混合部と接続されて一定の内径を有する第1内周面を有し、
前記縮径部は、前記大径部と接続され、前記軸方向において前記大径部から離れるにしたがって縮径する第2内周面を有し、
前記スリット部は、前記軸方向と直交する方向に延在して前記ノズルを貫通しつつ、前記軸方向における前記ノズルの先端から前記第2内周面と連続する位置まで設けられており、
前記スリット部の内側の空間は、前記第2内周面の内側の空間と連通している、ドライアイススノー洗浄装置。
【請求項2】
前記混合部から前記軸方向における前記ノズルの先端までの長さは、前記絞り部から前記軸方向における前記ノズルの先端までの長さに対して、0.09倍以上0.8倍以下である、請求項1に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射用ガス供給系における前記噴射用ガスの圧力は、0.6MPa以上0.9MPa以下である、請求項1または請求項2に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【請求項4】
前記混合部から前記軸方向における前記ノズルの先端までの長さは、20mm以上141mm以下である、請求項2に記載のドライアイススノー洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイススノー洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイススノー洗浄装置の構成を開示した先行文献として、特開2016-101625号公報(特許文献1)および特開2001-179634号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1に記載されたドライアイススノー洗浄装置は、液化炭酸ガス供給系と、噴射用ガス供給系と、絞り部と、混合部と、ノズルとを備える。液化炭酸ガス供給系から供給される液化炭酸ガスは、絞り部を通過することにより生成されるドライアイススノーを含む炭酸ガスとなる。混合部において、ドライアイススノーを含む炭酸ガスと、噴射用ガス供給系から供給される噴射用ガスとが、混合されて混合ガスとなる。混合ガスは、混合部と接続されるノズルの噴射口から噴射される。
【0004】
特許文献2に記載された洗浄用ドライアイススノー噴射装置は、内管と、外筒と、ドライアイススノー噴射ノズルとを備える。内管には、液化炭酸ガスが流れる。外筒は、内管を囲繞する。噴射ガスは、外筒と内管との間を流れて噴射用ガス噴射口から噴出する。ドライアイススノー噴射ノズルは、内管との接続側近傍に絞り部を有して内管と接続されて、先端を偏平形状とした噴射口に向かって広がるテーパ形状を有している。液化炭酸ガスが絞り部を通過して生成されたドライアイススノーは、噴射口から一定の噴射幅を有して広角に噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-101625号公報
【特許文献2】特開2001-179634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、ドライアイススノーを広角に噴射できるようにする余地がある。
【0007】
特許文献2においては、ドライアイススノー噴射ノズルの外周に位置する噴射用ガス噴射口から噴射用ガスをドライアイススノーとは別に噴射しており、噴射用ガスの噴射によってドライアイススノーの噴射速度はほとんど上がらないため、ドライアイススノーを強く噴き付けることが難しい。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ドライアイススノーを広角に強く噴き付けることができる、ドライアイススノー洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づくドライアイススノー洗浄装置は、液化炭酸ガス供給系と、噴射用ガス供給系と、絞り部と、混合部と、ノズルとを備える。液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガスを供給する。噴射用ガス供給系は、噴射用ガスを供給する。絞り部は、液化炭酸ガス供給系における下流側に設けられている。混合部は、液化炭酸ガス供給系と噴射用ガス供給系とを接続し、絞り部を通過した液化炭酸を含む炭酸ガスと噴射用ガスとを混合して混合ガスを生成する。ノズルは、混合部と接続され、混合ガスを噴射する。ノズルは、ノズルの軸方向の先端に向かって、大径部、縮径部およびスリット部をこの順で含む。大径部は、混合部と接続されて一定の内径を有する第1内周面を有する。縮径部は、大径部と接続され、上記軸方向において大径部から離れるにしたがって縮径する第2内周面を有する。スリット部は、上記軸方向と直交する方向に延在してノズルを貫通しつつ、上記軸方向におけるノズルの先端から第2内周面と連続する位置まで設けられている。スリット部の内側の空間は、第2内周面の内側の空間と連通している。
【0010】
本発明の一形態においては、混合部から上記軸方向におけるノズルの先端までの長さは、絞り部から上記軸方向におけるノズルの先端までの長さに対して、0.09倍以上0.8倍以下である。
【0011】
本発明の一形態においては、噴射用ガス供給系における噴射用ガスの圧力は、0.6MPa以上0.9MPa以下である。
【0012】
本発明の一形態においては、混合部から上記軸方向におけるノズルの先端までの長さは、20mm以上141mm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドライアイススノーを広角に強く噴き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置が備える液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2の液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
【
図4】
図2の液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【
図5】
図3のV部を拡大してドライアイススノーが生成される状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置において、スリット部の延在する方向に直交する方向から見てドライアイススノーが生成される状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置の構成を示す模式図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置が備える液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルの構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4は、
図2の液化炭酸ガス供給系、混合部およびノズルをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
【0017】
以下の説明においては、ノズルの軸方向をX軸方向、ノズルの軸方向に直交かつスリット部の延在方向に平行な方向をY軸方向、ノズルの軸方向およびスリット部の延在方向に直交する方向をZ軸方向とする。なお、
図4においては、ノズルを拡大して示している。
【0018】
図1~
図4に示すように、本実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1は、液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給系と、噴射用ガスを供給する噴射用ガス供給系と、混合部150と、ノズル160とを備える。
【0019】
図1に示すように、液化炭酸ガス供給系は、液化炭酸ガス貯蔵容器100と、炭酸ガス管101と、第1開閉部110と、絞り部120とを含む。液化炭酸ガス供給系は、炭酸ガス管101の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられ、液化炭酸ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0020】
液化炭酸ガス貯蔵容器100は、液化炭酸ガスを貯蔵している。炭酸ガス管101は、液化炭酸ガス貯蔵容器100に接続されて液化炭酸ガスまたは炭酸ガスの流路を構成している。
【0021】
第1開閉部110は、炭酸ガス管101の途中に設けられている。第1開閉部110は、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。なお、第1開閉部110は、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。
【0022】
図1~
図3に示すように、絞り部120は、液化炭酸ガス供給系における第1開閉部110より下流側に設けられている。絞り部120は、本発明の一実施の形態においては、オリフィス板により構成されている。液化炭酸ガス10Lの流量は、絞り部120により調整される。なお、絞り部120は、オリフィス板による構成に限られず、たとえば、ニードル弁などにより構成されていてもよい。
【0023】
図3に示すように、本発明の一実施の形態における絞り部120の内径120Dは、たとえば、0.3mm以上0.7mm以下である。内径120Dは、オリフィス板を変更することにより調整することができる。後述するドライアイススノーの粒子径を大きくする場合、内径120Dは大きい方が好ましいが、内径120Dを大きくしすぎると液化炭酸ガス10Lの消費量が多くなるため、ドライアイススノーの粒子径および液化炭酸ガス10Lの消費量の双方を考慮して内径120Dを設定することが好ましい。
【0024】
図1に示すように、噴射用ガス供給系は、噴射用ガス供給源130と、噴射用ガス管131と、第2開閉部140とを含む。噴射用ガス供給系は、噴射用ガス管131の内部の圧力を測定する圧力計、および、圧力計の下流側に設けられて噴射用ガス中の不純物を取り除くフィルタをさらに含む。
【0025】
噴射用ガス供給源130は、噴射用ガスを供給する。噴射用ガス管131は、噴射用ガス供給源130に接続されて噴射用ガスの流路を構成している。
【0026】
噴射用ガス供給源130または噴射用ガス管131は、必要に応じてヒータなどの加熱器により加熱される。噴射用ガス供給源130または噴射用ガス管131を加熱することにより、被洗浄物の汚れの種類および状態に応じて洗浄効果が高まるように噴射用ガスの温度を調整できるとともに被洗浄物が結露することを抑制できる。
【0027】
第2開閉部140は、噴射用ガス管131の途中に設けられ、手動で開閉可能なバルブにて構成されている。なお、第2開閉部140が、自動で開閉可能なバルブにて構成されていてもよい。噴射用ガスは、たとえば、ドライエアー、窒素ガス、アルゴンガスまたは炭酸ガスなど、炭酸ガスに対して不活性なガスである。
【0028】
図1~
図3に示すように、混合部150は、液化炭酸ガス供給系と噴射用ガス供給系とを接続し、絞り部120を通過した液化炭酸を含む炭酸ガス10と噴射用ガス20とを混合して混合ガス30を生成する。具体的には、混合部150を構成する混合部配管151が、炭酸ガス管101の先端、噴射用ガス管131の先端およびノズル160の後端の各々と、気密に接続されている。混合ガス30は、液化炭酸を含む炭酸ガス10と噴射用ガス20とが混合された気液混相状態となる。
【0029】
図2および
図3に示すように、混合部配管151は、2本の円筒管が互いに直交してT字状に接続されている。混合部配管151の2本の円筒管の各々の仮想中心軸は、混合部基準位置150dにおいて互いに直交している。なお、本発明の一実施の形態における混合部150は、2本の円筒管が互いに直交しているが、これに限定されず、2本の円筒管が互いに斜めに交差していてもよい。
【0030】
混合部配管151のX軸方向の一方側の内周面は、ノズル160の後端側の第1内周面と連続している。すなわち、混合部配管151の先端側の内径は、後述するノズル160の大径部170の内径と略同じである。
【0031】
図2~
図4に示すように、ノズル160は、X軸方向の一方側にテーパ状の外形を有している。ノズル160は、混合部150と接続され、液化炭酸を含む炭酸ガス10と噴射用ガス20との混合ガス30を噴射する。ノズル160は、ノズル160の軸方向(X軸方向)の先端に向かって、大径部170、縮径部180およびスリット部190をこの順で含んでいる。
【0032】
図3および
図4に示すように、大径部170は、混合部150と接続されて一定の内径を有する第1内周面171を有している。本実施の形態における第1内周面171は、混合部配管151の内周面に連続して、X軸方向に沿って一定の内径171Dを有している。本発明の一実施の形態における大径部170の内径171Dは、たとえば、15mmである。
【0033】
縮径部180は、第2内周面181と、開口部182とを含んでいる。第2内周面181は、大径部170と接続され、ノズル160の軸方向(X軸方向)において大径部170から離れるにしたがって縮径している。第2内周面181は、円錐面状である。本実施の形態における第2内周面181は、X軸方向の他端側において、第1内周面171に連続している。
【0034】
開口部182は、第2内周面181のX軸方向の一端側と接続されている。開口部182は、Z軸方向において縦幅182Wを有し、Y軸方向において横幅182Lを有している。縦幅182Wは、たとえば、0.5mm以上0.9mm以下であり、0.6mm以上0.8mm以下がより好ましい。横幅182Lは、たとえば、2mm以上20mm以下であり、10mm以上15mm以下がより好ましい。横幅182Lは、縦幅182Wの10倍以上40倍以下であることが好ましい。
【0035】
スリット部190は、ノズル160の軸方向と直交する方向(Y軸方向)に延在してノズル160を貫通しつつ、ノズル160の軸方向(X軸方向)におけるノズル160の先端から縮径部180の第2内周面181と連続する位置まで設けられている。具体的には、スリット部190と第2内周面181との境界に、開口部182が位置している。スリット部190は、大径部170とは離間している。すなわち、スリット部190は、大径部170の第1内周面171とは連続していない。
【0036】
スリット部190の内側の空間は、第2内周面181の内側の空間と連通している。すなわち、スリット部190の内側の空間は、開口部182を通じて第2内周面181の内側の空間と連通している。これにより、混合ガス30は、大径部170、縮径部180およびスリット部190をこの順で流れる。
【0037】
スリット部190は、正面噴射口191と、側面噴射口192とを含んでいる。正面噴射口191は、ノズル160のX軸方向の一端側の先端に設けられている。正面噴射口191は、Z軸方向において縦幅191Wを有し、Y軸方向において横幅191Lを有している。縦幅191Wは、たとえば、0.5mm以上0.9mm以下であり、0.6mm以上0.8mm以下がより好ましい。横幅191Lは、たとえば、20.0mm以上21.0mm以下であり、20.5mm以上20.9mm以下がより好ましい。なお、縦幅191Wは、開口部182の縦幅182Wと同じ寸法であることが好ましい。
【0038】
図2および
図4に示すように、側面噴射口192は、スリット部190のY軸方向の両端に設けられている。側面噴射口192は、Z軸方向において縦幅192Wを有し、Y軸方向において横幅192Lを有している。
【0039】
図2に示すように、縦幅192Wは、たとえば、0.5mm以上0.9mm以下であり、0.6mm以上0.8mm以下がより好ましい。なお、縦幅192Wは、縦幅182W,191Wと同じ寸法であることが好ましい。
【0040】
図4に示すように、横幅192Lは、たとえば、4.00mm以上10.35mm以下であり、6.0mm以上6.5mm以下がより好ましい。開口部182の横幅182Lは、側面噴射口192の横幅192Lの寸法に対応して変化する。すなわち、横幅182Lは、横幅192Lが広くなるにつれて広くなり、横幅192Lが狭くなるにつれて狭くなる。
【0041】
開口部182から放射状に噴射されたドライアイススノーは、正面噴射口191および側面噴射口192から、Y軸方向に広がりつつX軸方向に向けて噴射される。
【0042】
図3に示すように、混合部150からノズル160の軸方向(X軸方向)におけるノズル160の先端までの長さは、絞り部120からノズル160の軸方向(X軸方向)におけるノズル160の先端までの長さに対して、0.09倍以上0.8倍以下である。具体的には、X軸方向における混合部基準位置150dから正面噴射口191までの長さL1が、X軸方向における絞り部120の中心から正面噴射口191までの長さL2に対して、0.09倍以上0.8倍以下である。
【0043】
本発明の一実施の形態においては、混合部150からノズル160の軸方向(X軸方向)におけるノズル160の先端までの長さは、20mm以上141mm以下である。具体的には、混合部基準位置150dからX軸方向における正面噴射口191までの長さL1が、20mm以上141mm以下である。
【0044】
ドライアイススノー洗浄装置1は、生成されるドライアイススノーの粒子の数を増やすことにより洗浄加工能力を高めることができる。ドライアイススノーの粒子の数を増やすためには、ノズル160の長さを短くして外部から混合ガス30に対する入熱を低減し、混合ガス30中に含まれる液化炭酸の気化を抑制することが必要となる。本実施の形態に示すように、混合部基準位置150dからX軸方向における正面噴射口191までの長さL1を、絞り部120からX軸方向における正面噴射口191までの長さL2に対する比率として規定する、または、混合部基準位置150dからX軸方向における正面噴射口191までの長さL1を定量的に規定することにより、外部から混合ガス30に対する入熱を低減させることによって、ノズル160の内部における混合ガス30中に含まれる液化炭酸の気化を抑制することができるため、スリット部190まで導入された混合ガス30からドライアイススノーが生成されやすくすることができる。
【0045】
以下、本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1の動作について説明する。
【0046】
まず、
図1および
図3に示すように、液化炭酸ガス供給系においては、液化炭酸ガス貯蔵容器100から液化炭酸ガス管101内に液化炭酸ガス10Lを流入させる。炭酸ガス管101に設けられる圧力計によって、液化炭酸ガス管101内の液化炭酸ガス圧力が測定される。液化炭酸ガス10Lの圧力は、たとえば、6.2MPa以上7.6MPa以下である。本発明の一実施の形態における液化炭酸ガス10Lの圧力は、7.0MPaである。
【0047】
次に、第1開閉部110が開いて、液化炭酸ガス管101内の液化炭酸ガス10Lは、絞り部120を通過する。液化炭酸ガス10Lは、絞り部120を通過すると、絞り部120を通過した液化炭酸ガス10Lは、混合部150およびノズル160の内部の圧力と均圧される。その結果、液化炭酸ガス10Lは、断熱膨張により温度が約-49℃まで低下して、液化炭酸を含む炭酸ガス10となる。液化炭酸を含む炭酸ガス10は、混合部150の内部に流入する。
【0048】
噴射用ガス供給系においては、噴射用ガス供給源130から噴射用ガス管131内に噴射用ガス20を流入させる。噴射用ガス管131に設けられた圧力計によって、噴射用ガス管131内の噴射用ガスの圧力が測定される。次に、第2開閉部140が開いて、噴射用ガス管131内の噴射用ガスは、混合部150の内部に流入する。噴射用ガス供給系における噴射用ガス20の圧力は、0.6MPa以上0.9MPa以下である。噴射用ガス20の圧力は、第2開閉部140により調整される。
【0049】
混合部150において、炭酸ガス10と噴射用ガス20とが混合されて、混合ガス30が生成する。混合部150にて生成された混合ガス30は、ノズル160の大径部170の内部に流入する。混合ガス30の圧力は、炭酸ガス10に比べて噴射用ガス20の圧力が支配的であり、噴射用ガス20の圧力に追従して変動する。
【0050】
図5は、
図3のV部を拡大してドライアイススノーが生成される状態を示す断面図である。
図6は、本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置において、スリット部の延在する方向に直交する方向から見てドライアイススノーが生成される状態を示す断面図である。
図6においては、
図4と同一の断面視にて示している。
【0051】
図5および
図6に示すように、ノズル160の大径部170に流入した混合ガス30は、縮径部180に流入する。混合ガス30は、縮径部180を通過する際に加速され、開口部182を通過する時にはその流速が音速となる。スリット部190の内部において、混合ガス30は、圧力がノズル160の内部の圧力から低下しつつ低温になる。その結果、スリット部190の内部において、ドライアイススノー31が生成される。
【0052】
X軸方向におけるドライアイススノー31の生成される位置は、開口部182のYZ平面における断面積の大きさによって変位する。ノズル160の内部の混合ガス30の圧力は、開口部182の断面積の大きさによって変化する。開口部182の断面積が大きくなると、ノズル160の内部の混合ガス30の圧力が低下する。そのため、ドライアイススノー31がノズル160の内部で生成する圧力まで、混合ガス30の圧力が低下する場合がある。この場合、大径部170および縮径部180の内部においてドライアイススノー31が生成し、開口部182においてドライアイススノー31の詰まりが引き起こされることがある。
【0053】
上記のように大径部170および縮径部180の内部においてドライアイススノー31が生成しないようにするために、噴射用ガス20の圧力および開口部182のYZ平面における断面積の大きさが調整される。開口部182のYZ平面における断面積は、縦幅182Wおよび横幅182Lによって決定される。
【0054】
ドライアイススノー31を含む混合ガス30は、スリット部190においてさらに加速され、正面噴射口191から噴射される時には流速が超音速になっている。ドライアイススノー31を含む混合ガス30は、スリット部190の内側形状に沿って、Y軸方向に放射状に広がりながらX軸方向へと流れる。
【0055】
スリット部190から噴射されたドライアイススノー31を含む混合ガス30は、圧力が低下しつつ低温になり、ドライアイススノー31の粒子がさらに大きく成長する。大きく成長したドライアイススノー31を含む混合ガス30は、Y軸方向に放射状に広がりながら広角に噴射される。
【0056】
正面噴射口191から被洗浄物までの距離を20mmとした場合、本発明の一実施の形態におけるドライアイススノー洗浄装置1による被洗浄物が洗浄されるY軸方向の幅は、20mm以上45mm以下である。被洗浄物に対するドライアイススノー31を含む混合ガス30の最大衝突圧力は、30MPa以上40MPa以下であり、少なくとも30MPa以上の最大衝突圧力が確保されていればよい。このように、Y軸方向に広角にドライアイススノー31を被洗浄物に強く噴き付けることにより、被洗浄物の広い範囲を一度に強力に洗浄することができる。
【0057】
本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1においては、スリット部190は、ノズル160の軸方向と直交する方向に延在してノズル160を貫通しつつ、ノズル160の軸方向におけるノズル160の先端から縮径部180の第2内周面181と連続するまで設けられている。これにより、炭酸ガス10および噴射用ガス20が混合されてスリット部190に流入する混合ガス30は、縮径部180の内部において加速しつつスリット部190の内部においてドライアイススノー31が生成され、ノズル160の軸方向と直交する方向に放射状に広がって流れるとともに、スリット部190の内部および正面噴射口191の付近においてドライアイススノー31の粒子を大きく成長させることができるため、ドライアイススノー31を広角に強く噴き付けることができる。
【0058】
本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1においては、混合部基準位置150dからX軸方向における正面噴射口191までの長さを、絞り部120からX軸方向における正面噴射口191までの長さノズル長さに対して0.09倍以上0.8倍以下であることにより、混合ガス30に対する外部からの入熱を減らしてノズル190内部での混合ガス30の温度上昇を抑制できるため、スリット部190まで導入された混合ガス30からドライアイススノー31を生成しやすくして、洗浄能力を向上させることができる。
【0059】
本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1においては、噴射用ガス20の圧力を0.6MPa以上0.9MPa以下とすることにより、ノズル160の内部の混合ガス30の圧力を0.6MPa以上0.9MPa以下に維持して、X軸方向におけるドライアイススノー31が生成される位置をスリット部190の内部にすることができるため、開口部182でのドライアイススノー31の詰まりを抑制して、安定的にドライアイススノー31を噴射することができる。
【0060】
本発明の一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1においては、混合部基準位置150dからX軸方向における正面噴射口191までの長さを、20mm以上141mm以下に規定することにより、混合ガス30に対する外部からの入熱を減らしてノズル160の内部での混合ガス30の温度上昇を抑制できるため、スリット部190まで導入された混合ガス30からドライアイススノー31を生成しやすくして、洗浄能力を向上させることができる。
【0061】
以下、本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置について説明する。本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル260は、縮径部、開口部およびスリット部の構成が一実施の形態に係るドライアイススノー洗浄装置1のノズル160と異なるため、本発明の一実施の形態に係るノズル160と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0062】
図7は、本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置のノズルを示す断面図である。
図7においては、
図5と同一の断面視にて図示している。
【0063】
図7に示すように、本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置のノズル260においては、スリット部290は、ノズル260の軸方向(X軸方向)におけるノズル260の先端から縮径部280の途中の位置まで設けられている。
【0064】
本発明の一実施の形態の変形例に係るドライアイススノー洗浄装置においても、炭酸ガスおよび噴射用ガスが混合されてスリット部290に流入する混合ガス30は、縮径部280の内部において加速しつつスリット部290の内部においてドライアイススノーが生成され、ノズル260の軸方向と直交する方向に放射状に広がって流れるとともに、スリット部290の内部および正面噴射口191の付近においてドライアイススノーの粒子を大きく成長させることができるため、ドライアイススノーを広角に強く噴き付けることができる。
【0065】
上記のドライアイススノー洗浄装置は、樹脂加工製品、ゴム製品、電子機器、ガラス製品、印刷機器、プリンテッドエレクトロニクス分野の部品または装置などに付着した、バリ、油(有機物)、パーティクル(粉)、スケール、錆(酸化膜)、離型剤、接着剤などの除去、および、グラファイト(炭素)製品などの研磨加工に対して、有効な洗浄加工能力を有し、特に、機械加工時に付着する油(有機物)に対して高い洗浄加工能力を有している。
【0066】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ドライアイススノー洗浄装置、10 炭酸ガス、10L 液化炭酸ガス、20 噴射用ガス、30 混合ガス、31 ドライアイススノー、100 液化炭酸ガス貯蔵容器、101 炭酸ガス管、110 第1開閉部、120 絞り部、120D,171D 内径、130 噴射用ガス供給源、131 噴射用ガス管、140 第2開閉部、150 混合部、150d 混合部基準位置、151 混合部配管、160,260 ノズル、170 大径部、171 第1内周面、180,280 縮径部、181 第2内周面、182 開口部、182L,191L,192L 横幅、182W,191W,192W 縦幅、190,290 スリット部、191 正面噴射口、192 側面噴射口。