IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寺脇 大の特許一覧

<>
  • 特開-電子医療システム、および方法 図1
  • 特開-電子医療システム、および方法 図2
  • 特開-電子医療システム、および方法 図3
  • 特開-電子医療システム、および方法 図4
  • 特開-電子医療システム、および方法 図5
  • 特開-電子医療システム、および方法 図6
  • 特開-電子医療システム、および方法 図7
  • 特開-電子医療システム、および方法 図8
  • 特開-電子医療システム、および方法 図9
  • 特開-電子医療システム、および方法 図10
  • 特開-電子医療システム、および方法 図11
  • 特開-電子医療システム、および方法 図12
  • 特開-電子医療システム、および方法 図13
  • 特開-電子医療システム、および方法 図14
  • 特開-電子医療システム、および方法 図15
  • 特開-電子医療システム、および方法 図16
  • 特開-電子医療システム、および方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061195
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】電子医療システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20220411BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G16H50/20
H04M11/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169035
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】519338658
【氏名又は名称】寺脇 大
(74)【代理人】
【識別番号】100170014
【弁理士】
【氏名又は名称】蓼沼 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】寺脇 大
【テーマコード(参考)】
5K201
5L099
【Fターム(参考)】
5K201AA08
5K201BA19
5K201CC10
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】患者や医師が物理的制約を受けることなく、かつ有効性や安全性を確保した医療をオンラインで提供すること。
【解決手段】
患者端末が、患者の身体状態を示す身体状態情報および当該患者の症状を示す症状情報を含む患者情報、並びに医師端末の医師アドレスを含む診察要求トランザクションを生成し、診察要求トランザクションをブロックチェーンに送信し、医師端末が、自身の医師アドレスを含む診察要求トランザクションをブロックチェーンから取得し、取得した診察要求トランザクションの患者情報に基づいて医師が診察した結果である診察結果、および患者端末の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを作成し、診察結果トランザクションをブロックチェーンに送信し、更に、患者端末が、自身の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを取得し、取得した診察結果トランザクションに含まれる診察結果を患者に提示することを特徴とする電子医療システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者端末と医師端末とを備え、ブロックチェーンを利用して医療サービスを提供する電子医療システムであって、
前記患者端末は、
患者の身体状態を示す身体状態情報および当該患者の症状を示す症状情報を含む患者情報、並びに前記医師端末の医師アドレスを含む診察要求トランザクションを生成し、当該診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、
前記医師端末は、
自身の医師アドレスを含む前記診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記診察要求トランザクションの前記患者情報に基づいて医師が診察した結果である診察結果、および前記患者端末の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを作成し、当該診察結果トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、
前記患者端末は、自身の患者アドレスを含む前記診察結果トランザクションを取得し、取得した前記診察結果トランザクションに含まれる前記診察結果を患者に提示することを特徴とする電子医療システム。
【請求項2】
前記患者情報は、前記患者の公開可能な属性情報および当該患者に影響を及ぼす環境に関する環境情報である公開患者情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子医療システム。
【請求項3】
薬剤師端末を更に備え、
前記診察結果トランザクションは、前記医師が診察した結果に基づいて作成する処方せんを含み、
前記患者端末は、
取得した前記診察結果トランザクションに含まれる処方せん、および前記薬剤師端末の薬剤師アドレスを含む調剤要求トランザクションを生成し、当該調剤要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、
前記薬剤師端末は、
自身の薬剤師アドレスを含む前記調剤要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記調剤要求トランザクションの処方せんに基づいて、前記薬剤師が処方せんの内容が適正か否かを判断した結果調剤受任の可否を含む調剤受任情報、および前記患者アドレスを含む調剤受任トランザクションを作成し、当該調剤受任トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、
前記患者端末は、自身の患者アドレスを含む前記調剤受任トランザクションを取得し、取得した前記調剤受任トランザクションに含まれる調剤受任情報を患者に提示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子医療システム。
【請求項4】
前記調剤要求トランザクションは、前記公開患者情報を含み、
前記調剤受任情報は、取得した前記調剤要求トランザクションの処方せんおよび前記公開患者情報に基づいて、前記薬剤師が処方せんの内容が適正か否かを判断した結果を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子医療システム。
【請求項5】
更に、前記患者の非公開情報を記憶する非公開情報データベース、および前記非公開情報データベースを管理する第1の管理装置を備え、
前記診察要求トランザクションは、前記非公開情報データベース内の前記患者の非公開情報に対するアクセス権限を含み、
前記第1の管理装置は、
前記非公開情報データベース内の前記患者の非公開情報にアクセスがあった際に、前記診察要求トランザクションのアクセス権限に基づいて、アクセスした端末にアクセス権があると判断した場合に、前記非公開情報を当該アクセスした端末に送信することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子医療システム。
【請求項6】
更に、前記医師が作成する、前記診察結果に対応する診療記録を記憶する診療記録データベース、および前記診療記録データベースを管理する第2の管理装置を備え、
前記診察結果トランザクションは、前記診療記録データベース内の診療記録へのアクセス権限を含み、
前記第2の管理装置は、
前記診療記録データベース内の診療記録にアクセスがあった際に、前記診察結果トランザクションのアクセス権限に基づいて、アクセスした端末にアクセス権があると判断した場合に、前記診療記録を当該アクセスした端末に送信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子医療システム。
【請求項7】
患者端末と医師端末とを備え、ブロックチェーンを利用して医療サービスを提供する電子医療システムにおける電子医療処理方法であって、
前記患者端末が、患者の身体状態を示す身体状態情報および当該患者の症状を示す症状情報を含む患者情報、並びに前記医師端末の医師アドレスを含む診察要求トランザクションを生成し、当該診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信する第1のステップと、
前記医師端末が、自身の医師アドレスを含む前記診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記診察要求トランザクションの前記患者情報に基づいて医師が診察した結果である診察結果、および前記患者端末の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを作成し、当該診察結果トランザクションを前記ブロックチェーンに送信する第2のステップと、
前記患者端末が、自身の患者アドレスを含む前記診察結果トランザクションを取得し、取得した前記診察結果トランザクションに含まれる前記診察結果を患者に提示する第3のステップと、
を含むことを特徴とする電子医療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子医療システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、医師と患者とをスマートフォンやPCのビデオ通話機能を利用した、リアルタイムの診察である、オンライン診療が注目を集めている。オンライン診療は、2018年3月に厚生労働省により指針が取りまとめられ、同4月に保険診療適用となり、スタートした入院・外来・在宅に続く第四の医療概念である。そして、2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行に伴った“初診対面の原則”の時限的な規制緩和により、徐々に広まりつつある。また、薬剤師による服薬指導をスマートフォンやPCのビデオ通話機能を利用して行うオンライン服薬指導も2020年4月から認められ、オンライン診療と共に今後広まっていくと考えられる。
【0003】
オンライン診療については、例えば、患者が端末装置を用いて診察予約を行ったり、問診情報を端末装置に対して設定入力したりして、ビデオ通話によって医師の診察を受けるシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-146914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子政府や電子国家などと呼ばれ注目を集めているエストニアは、行政や公共機関のほとんどの手続きがオンラインで可能となっている。そして、エストニアを端緒として、今後、世界の現実社会の生活は、オンラインで実現される方向に進むと考えられる。
【0006】
現実社会の生活がオンラインで実現されると、生活の場は世界となる。そのため、上述した、リアルタイムかつ対面が原則である現在のオンライン診療やオンライン服薬指導だけでなく、場所や時間といった物理的制約を受けない非対面や非リアルタイムでのオンライン診療やオンライン服薬指導といった、新たな医療提供のニーズも増えてくることが予測される。
【0007】
しかしながら、患者や医師が場所や時間といった物理的制約を受けない、非対面や非リアルタイムでのオンライン診療やオンライン服薬指導を実現するシステムは提案されておらず、特許文献1にも開示されていない。また、非対面および非リアルタイムでの診察や服薬指導であっても、対面と同等の有効性や安全性を確保しなければならないという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して、患者や医師が物理的制約を受けることなく、かつ有効性や安全性を確保した医療をオンラインで提供が可能な電子医療システム、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、患者端末(患者端末10,11に相当)と医師端末(医師端末20,21に相当)とを備え、ブロックチェーン(ブロックチェーン40に相当)を利用して医療サービスを提供する電子医療システム(電子医療システム1に相当)であって、前記患者端末は、患者の身体状態を示す身体状態情報および当該患者の症状を示す症状情報を含む患者情報、並びに前記医師端末の医師アドレスを含む診察要求トランザクションを生成し、当該診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、前記医師端末は、自身の医師アドレスを含む前記診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記診察要求トランザクションの前記患者情報に基づいて医師が診察した結果である診察結果、および前記患者端末の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを作成し、当該診察結果トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、前記患者端末は、自身の患者アドレスを含む前記診察結果トランザクションを取得し、取得した前記診察結果トランザクションに含まれる前記診察結果を患者に提示することを特徴とする電子医療システムである。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記患者情報は、前記患者の公開可能な属性情報および当該患者に影響を及ぼす環境に関する環境情報である公開患者情報を含むことを特徴とする電子医療システムである。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、薬剤師端末(薬剤師端末30,31に相当)を更に備え、前記診察結果トランザクションは、前記医師が診察した結果に基づいて作成する処方せんを含み、前記患者端末は、取得した前記診察結果トランザクションに含まれる処方せん、および前記薬剤師端末の薬剤師アドレスを含む調剤要求トランザクションを生成し、当該調剤要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、前記薬剤師端末は、自身の薬剤師アドレスを含む前記調剤要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記調剤要求トランザクションの処方せんに基づいて、前記薬剤師が処方せんの内容が適正か否かを判断した結果調剤受任の可否を含む調剤受任情報、および前記患者アドレスを含む調剤受任トランザクションを作成し、当該調剤受任トランザクションを前記ブロックチェーンに送信し、前記患者端末は、自身の患者アドレスを含む前記調剤受任トランザクションを取得し、取得した前記調剤受任トランザクションに含まれる調剤受任情報を患者に提示することを特徴とする電子医療システムである。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記調剤要求トランザクションは、前記公開患者情報を含み、前記調剤受任情報は、取得した前記調剤要求トランザクションの処方せんおよび前記公開患者情報に基づいて、前記薬剤師が処方せんの内容が適正か否かを判断した結果を含むことを特徴とする電子医療システムである。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、更に、前記患者の非公開情報を記憶する非公開情報データベース(非公開患者情報DB70に相当)、および前記非公開情報データベースを管理する第1の管理装置(管理装置60に相当)を備え、前記診察要求トランザクションは、前記非公開情報データベース内の前記患者の非公開情報に対するアクセス権限を含み、前記第1の管理装置は、前記非公開情報データベース内の前記患者の非公開情報にアクセスがあった際に、前記診察要求トランザクションのアクセス権限に基づいて、アクセスした端末にアクセス権があると判断した場合に、前記非公開情報を当該アクセスした端末に送信することを特徴とする電子医療システムである。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、更に、前記医師が作成する、前記診察結果に対応する診療記録を記憶する診療記録データベース(診療記録DB80に相当)、および前記診療記録データベースを管理する第2の管理装置(管理装置60に相当)を備え、前記診察結果トランザクションは、前記診療記録データベース内の診療記録へのアクセス権限を含み、前記第2の管理装置は、前記診療記録データベース内の診療記録にアクセスがあった際に、前記診察結果トランザクションのアクセス権限に基づいて、アクセスした端末にアクセス権があると判断した場合に、前記診療記録を当該アクセスした端末に送信することを特徴とする電子医療システムである。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、患者端末と医師端末とを備え、ブロックチェーンを利用して医療サービスを提供する電子医療システムにおける電子医療処理方法であって、前記患者端末が、患者の身体状態を示す身体状態情報および当該患者の症状を示す症状情報を含む患者情報、並びに前記医師端末の医師アドレスを含む診察要求トランザクションを生成し、当該診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンに送信する第1のステップ(ステップS1,S2)と、前記医師端末が、自身の医師アドレスを含む前記診察要求トランザクションを前記ブロックチェーンから取得し、取得した前記診察要求トランザクションの前記患者情報に基づいて医師が診察した結果である診察結果、および前記患者端末の患者アドレスを含む診察結果トランザクションを作成し、当該診察結果トランザクションを前記ブロックチェーンに送信する第2のステップ(ステップS4~S7)と、前記患者端末が、自身の患者アドレスを含む前記診察結果トランザクションを取得し、取得した前記診察結果トランザクションに含まれる前記診察結果を患者に提示する第3のステップ(ステップS9)と、を含むことを特徴とする電子医療方法である。
【発明の効果】
【0016】
患者や医師が物理的制約を受けることなく、かつ有効性や安全性を確保した医療をオンラインで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子医療システム1の概要を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る患者端末10の機能構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る各種トランザクションのデータ構造の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る医師端末20の機能構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る薬剤師端末30の機能構成を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る電子医療システム1の電子医療処理フローを示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る電子医療システム1の患者情報取得処理フローを示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る電子医療システム1の調剤要求フローを示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る電子医療システム2の概要を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る患者端末11の機能構成を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る各種トランザクションのデータ構造の一例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る医師端末21の機能構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る薬剤師端末31の機能構成を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る電子医療システム2の電子医療処理フローを示す図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る電子医療システム2の診察処理フローを示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る電子医療システム2の患者情報取得処理フローを示す図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る電子医療システム2の調剤要求フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0019】
本発明の電子医療システムは、ブロックチェーンを利用して、患者と医療従事者との間の情報の連携を行うことで、患者や医療従事者が物理的制約を受けることなく、かつ有効性や安全性を確保した医療をオンラインで提供するシステムである。
本発明において、医療従事者は医師および薬剤師とするが、これらに限られず、歯科医師、看護師、介護福祉士など広く医療に従事するものであってもよい。
<第1の実施形態>
【0020】
第1の実施形態は、ブロックチェーンを利用して、診療をオンラインで提供する電子医療システムである。本実施形態において、診療とは、医師の診察だけでなく、薬の調剤を受任するまでを言う。具体的には、電子医療システムは、ブロックチェーンを利用して、患者は自身の健康状態等の情報を医師に送信して、送信された情報に基づいて非対面および任意のタイミングで行われる医師の診察による診察結果を受け取る。また、医師が処方せんを発行した場合には、患者は診察結果と併せて処方せんも受け取る。そして、処方せんを受け取った場合には、患者は、また、ブロックチェーンを利用して、処方せんを薬剤師に送信して、薬剤師は送信された処方せんの調剤要求の受付や確認を非対面および/または任意のタイミング(非リアルタイムでもよい)で行う。
【0021】
このように、患者と医師、患者と薬剤師との間で情報の連携にブロックチェーンを利用することで、データが署名者(送信者)により作成されたこと、データが改ざんされていないことを検証できるので、非対面および/または非リアルタイムでのオンライン診療であっても、有効性や安全性を確保した診療を提供することができる。また、非対面および/または非リアルタイムでの診療が可能であるので、患者は、物理的制約を受けることなく、簡便に診療を受けることができる。
【0022】
また、ブロックチェーンには患者の診療履歴が残り、患者の診療履歴は参照可能であるので、患者、医師、および薬剤師が患者の健康状況や診療状況を経時的に把握することができ、診療の有効性や安全性を向上させることができる。ブロックチェーンの患者の診療履歴は、保険、健康維持といった医療以外の分野においても使用することができる。
【0023】
(電子医療システムの概要)
図1は、本実施形態に係る電子医療システム1の概要を示す図である。電子医療システム1は、患者端末10、医師端末20、薬剤師端末30、およびブロックチェーン40を備え、互いにネットワークNを介して接続されている。それぞれの接続は、有線または無線のいずれであってもよく、例えば、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN:Local Area Network)、インターネットのような広域網(WAN:Wide Area Network)、WiFi、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))などである。
【0024】
ここで、ブロックチェーンは、ブロックと呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結していくことにより、データを保管するデータベースである。ブロックチェーンは、特定箇所に情報が集中しないため、何らかのトラブルによって、システム全体が停止することがない。また、ブロックチェーンは、その性質上、内容を改ざんすることが事実上不可能になっている。なお、薬剤師端末30は備えられていなくてもよい。
【0025】
それぞれのブロックには、1または2以上の対象データが、トランザクションデータとして格納される。トランザクションを格納したブロックは、ブロックチェーンネットワークに送信され、PoW(Proof of Work)、PoS(Proof of Stake)などのアルゴリズムによる合意形成を経て、最後に確定したブロックの次につないで記録される。
【0026】
本実施形態において、ブロックチェーンにトランザクションを送信することで、すなわち、ブロックチェーンを構成するノードにトランザクションを送信することで、ノードがトランザクションをブロックに格納し、ブロックチェーンにトランザクションが登録される。
【0027】
本実施形態において、ブロックチェーン40は、中央管理者のいないパブリック型の構成として説明するが、これに限定されずプライベート型や、コンソーシアム型でもよい。また、図において、ブロックチェーン40は、患者端末10、医師端末20、および薬剤師端末30を含んでいないが、含んでもよい。
【0028】
(患者端末)
患者端末10は、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等、患者が使用する端末であり、計測器50と有線または無線で接続される。
【0029】
計測器50は、患者の身体状態を示す身体状態情報を計測し、患者端末10へ送信する。身体状態情報は、例えば、身長、体重、体脂肪率、血圧、心拍数、体温、眼球運動等の数値データや、心電図、睡眠時呼吸時波形、脳波等の非数値データを含む。計測器50は、例えば、患者が装着するウェアラブル端末や、電波や画像情報から患者をセンシングするセンシング端末であるが、患者の身体状態情報を計測できる機器であればこれらに限られない。なお、本実施形態において、計測器50は、患者端末10から独立しているが、患者端末10に含まれてもよい。
【0030】
図2は、患者端末10の機能構成を示す図である。患者端末10は、患者秘密鍵、患者秘密鍵に対応する患者公開鍵、患者のブロックチェーンにおける患者アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して医師端末20、薬剤師端末30と情報の連携を行う。
【0031】
図に示すように、患者端末10は、処理部100、記憶部140、入出力部150、および通信部160を備える。処理部100は、患者端末10の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部100は、患者情報処理部110、トランザクション処理部(以下、Tx処理部という)120、および出力情報処理部130を備える。
【0032】
患者情報処理部110は、患者の情報の取得や作成を行い、患者情報を取得するとTx処理部120に患者情報を送信する。患者情報処理部110は、図に示すように、身体状態情報取得部111、公開患者情報作成部112、および症状情報作成部113を備える。
【0033】
身体状態情報取得部111は、計測器50から患者の身体状態情報を取得する。身体状態情報取得部111は、予め設定されたタイミングで計測器50から身体状態情報を取得してもよいし、患者からの指示や、トランザクション作成部(以下、Tx作成部という)121と連動して計測器50から身体状態情報を取得してもよい。予め設定されたタイミングで計測器50から身体状態情報を取得する場合には、取得した身体状態情報を、取得日時と対応付けて記憶部140に記憶しておく。
【0034】
公開患者情報作成部112は、患者の入出力部150への入力に基づいて、公開患者情報を作成し、記憶部140に記録する。公開患者情報は、性別、およその年齢を示す年代、血液型、家族構成といった患者の性質や特徴を表す属性情報と、運動・喫煙、飲酒等の生活習慣、嗜好、既往歴、家族歴等の患者に影響を及ぼす環境に関する環境情報とを含み、診察の際に参考となる情報である。なお、属性情報は、公開可能な情報のみであって、特に、患者を特定可能な情報は含まない。
【0035】
例えば、公開患者情報作成部112は、患者からの指示に応じて、予め準備された公開患者情報作成フォームを入出力部150に表示させる。そして、公開患者情報作成部112は、患者が公開患者情報作成フォームに入出力部150を介して入力した情報を取得し、公開患者情報を作成し、記憶部140に記憶する。
【0036】
上述したように公開患者情報は、短期間で変更となることが少ない情報のため、患者は医師による診察を受ける度に入力する必要はなく、内容に変更が生じた際に、公開患者情報作成部112は、患者が入出力部150を介して入力した情報を取得し、記憶部140の情報を更新すればよい。なお、公開患者情報作成部112は備えていなくてもよい。
【0037】
症状情報作成部113は、患者の入出力部150への入力に基づいて、症状情報を作成する。症状情報は、咳がでる、頭痛があるといった症状、症状が現れた時期、症状の経過状況といった、医療機関で診察を受ける際に問診表に記入したり、医師や看護師に説明したりする症状に関する情報である。なお、症状情報作成部113は、取得した症状情報を記憶部140に記憶しておいてもよいし、Tx作成部121に直接送信してもよい。
【0038】
例えば、症状情報作成部113は、患者からの指示に応じて、予め準備された症状情報作成フォームを入出力部150に表示させる。そして、症状情報作成部113は、患者が症状情報作成フォームに入出力部150を介して入力した情報を取得し、症状情報を作成し、記憶部140に記憶する。
【0039】
Tx処理部120は、ブロックチェーン40と送受信するトランザクションの作成や取得を行い、Tx作成部121およびトランザクション取得部(以下、Tx取得部という)122を備える。
【0040】
Tx作成部121は、医師に診察を要求する診察要求トランザクション(以下、診察要求Txという)と、薬剤師に調剤を要求する調剤要求トランザクション(以下、調剤要求Txという)と、を作成する。
【0041】
診察要求Txを作成する場合には、Tx作成部121は、患者情報処理部110から患者情報を受信したことに応じて、患者情報処理部110で取得した患者情報を含み、診察を受けたい医師の医師端末20に診察要求をする診察要求Txを作成する。
【0042】
(トランザクションのデータ構造)
図3は、Tx作成部121が生成する本実施形態に係る各種トランザクションのデータ構造の一例を示す図である。図に示すように、診察要求Txは、患者秘密鍵による電子署名、患者公開鍵、患者アドレス(送信元)、医師アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、身体状態情報、公開患者情報、症状情報、および送信日時を含む。なお、その他に、トランザクションID、トランザクションの作成に用いられたソフトウェアや方式の名称やバージョン情報といった情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。
【0043】
患者秘密鍵による電子署名は、診察要求Txを作成した患者の患者秘密鍵によって生成された情報であって、患者が作成したことを証明してなりすましの検出に使用される情報である。患者公開鍵は、患者秘密鍵による電子署名を複合することが可能な情報である。電子署名の復号結果に基づいてなりすましが行われたか否かの検証が可能になる。
【0044】
患者アドレス(送信元)は、診察要求Txを作成した患者端末10およびそのユーザである患者を識別可能な情報である。患者アドレス(送信元)は、診察要求トランザクションに対応する診察結果トランザクション(以下、診察結果Txという)の作成の際に利用される。
【0045】
医師アドレス(送信先)は、診察要求Txを受信する医師端末20およびそのユーザである医師を識別可能な情報である。医師アドレス(送信先)に基づいて、後述する医師端末20は自身宛ての診察要求Txを取得する。診察要求Txには、複数の医師アドレス(送信先)を指定できる。それにより、複数の医師の診察を1つのトランザクションで要求することができ、セカンドオピニオンも容易に受けることができる。なお、診察要求Txの作成に用いる医師アドレスは、患者が取得できる状態になっていて、患者は必要に応じて取得する。例えば、医師アドレスが、医師や医師が所属する病院のサイト上等で公開されたり、予め、診療システム1に参加する患者に配布されたりすることで、患者は医師アドレスを取得できる。
【0046】
直前トランザクションデータのハッシュ値は、患者端末10による前回の診察要求Txで開始されたトランザクションのやり取りにおいて、最後にブロックチェーンに記録されたトランザクションのハッシュ値である。最後にブロックチェーンに記録されたトランザクションは、処方せん情報を含まない診察結果Tx、または調剤受任トランザクション(以下、調剤受任Txという)のハッシュ値である。それにより、同一の患者に関するトランザクションデータ間の繋がりが示される。
【0047】
身体状態情報、公開患者情報、および症状情報は、それぞれ上述した身体状態情報取得部111、公開患者情報作成部112、および症状情報作成部113から取得した情報である。これらの情報が診察要求Txに含まれることにより、診察要求Txを受信した医師端末20の医師が、対面診察の際に得られる情報をトランザクションから得られるので、非対面でも対面と同等の診察を提供することが可能になる。
【0048】
Tx作成部121は、図3に一例を示す診察要求Txを作成すると、Tx作成部121は、作成した診察要求Txを通信部400によりブロックチェーン40に送信する。ブロックチェーン40に送信された診察要求Txは、ブロックチェーン40に記憶される。
【0049】
また、調剤要求Txを作成する場合には、Tx作成部121は、後述するTx取得部122で取得した診察結果Txから処方せん情報を取得したことに応じて、処方せん情報を含み、調剤を要求する薬剤師の薬剤師端末30に調剤要求をする調剤要求Txを作成する。
【0050】
図3に示すように、調剤要求Txは、患者秘密鍵による電子署名、患者公開鍵、患者アドレス(送信元)、薬剤師アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、公開患者情報、処方せん情報、および送信日時を含む。診察要求Txと同様に、その他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。なお、診察要求Txと同一の名の構成要素については、同一の内容であるので、その詳細な説明は省略する。
【0051】
薬剤師アドレス(送信先)は、調剤要求Txを受信する薬剤師端末30およびそのユーザである薬剤師を識別可能な情報である。薬剤師アドレス(送信先)に基づいて、後述する薬剤師端末30は自身宛ての調剤要求Txを取得する。なお、調剤要求Txの作成に用いる薬剤師アドレスは、医師アドレスと同様に、患者が取得できる状態になっている。
【0052】
直前トランザクションデータのハッシュ値は、調剤要求Txに含める処方せんデータが含まれていた診察結果Txのハッシュ値である。それにより、同一の患者に関するトランザクションデータ間の繋がりが示される。
【0053】
処方せん情報は、後述するTx取得部122で取得した診察結果Txに含まれる処方せん情報である。処方せん情報は、診察要求Txを受信した医師端末20の医師が、診察要求Txの情報に基づいて行った診察の結果、投薬が必要と判断して作成した処方せんの情報である。処方せん情報は、発行日、処方内容等を含み、患者や医師を特定可能な情報は含まない。なお、処方せん情報は、テキストデータ、CDAデータ、画像データ等である。
【0054】
患者は、調剤要求Txを用いて、処方せん情報を薬剤師に送信することができ、物理的制約を受けることなく薬剤師に調剤要求をすることができる。また、処方せん情報と併せて公開患者情報が調剤要求Txに含まれると、調剤要求Txを受けとった薬剤師端末30の薬剤師が、対面による調剤受付の際に得られる情報をトランザクションから得られるので、非対面でも対面と同等の服薬における安全性を確保して調剤を受け付けることが可能になる。
【0055】
Tx作成部121は、図3に一例を示す調剤要求Txを作成すると、Tx作成部121は、作成した調剤要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する。ブロックチェーン40に送信された調剤要求Txは、ブロックチェーン40に記録される。
【0056】
Tx取得部122は、ブロックチェーン40のブロックに含まれるトランザクションの中から、送信先に患者端末10の患者アドレスを指定しているトランザクションを取得する。ここで、取得するトランザクションは、診察要求Txを送信した医師端末20からの診察結果Tx、または調剤要求Txを送信した薬剤師端末30からの調剤受任Txである。トランザクションの取得は、患者端末10のユーザである患者の指示に応じて行われてもよいし、任意のタイミングで行われてもよい。取得する診察結果Txまたは調剤要求Txは、Tx取得部222がまだ取得していないものが望ましく、例えば、診察要求Txの送信日時を参照して、前回の取得後に追加されたものである。
【0057】
図3に示すように、診察結果Txは、医師秘密鍵による電子署名、医師公開鍵、医師アドレス(送信元)、患者アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、診察結果情報、処方せん情報、および送信日時を含む。診察要求Txと同様に、その他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。なお、診察要求Txまたは調剤要求Txと同一の名の構成要素については、同一の内容であるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
医師秘密鍵による電子署名は、診察結果Txを作成した医師の医師秘密鍵によって生成された情報であって、医師が作成したことを証明してなりすましの検出に使用される情報である。医師公開鍵は、医師秘密鍵による電子署名を複合することが可能な情報である。電子署名の復号結果に基づいてなりすましが行われたか否かの検証が可能になる。
【0059】
医師アドレス(送信元)は、診察結果Txを送信した医師端末20およびそのユーザである医師を識別可能な情報である。患者アドレス(送信先)は、診察結果Txを受信する患者端末10およびそのユーザである患者を識別可能な情報であって、診察要求Txから取得される。そして、患者アドレスに基づいて、患者端末10は自身宛ての診察結果Txを取得する。
【0060】
直前トランザクションデータのハッシュ値は、診察結果Txにおいては、診察要求Txのハッシュ値である。それにより、同一の患者に関するトランザクションデータ間の繋がりが示される。
【0061】
診察結果情報は、診察要求Txを受信した医師端末20の医師が、診察要求Txの患者情報に基づいて行った診察の結果である。診察結果情報が診察結果Txに含まれることにより、診察結果Txを受けとった患者端末10の患者は、対面診察の際に医師が説明する診察結果をトランザクションから得られるので、非対面でも対面と同等の診察を受けることが可能になる。
【0062】
また、図3に示すように、調剤受任Txは、薬剤師秘密鍵による電子署名、薬剤師公開鍵、薬剤師アドレス(送信元)、患者アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、調剤受任情報、および送信日時を含む。調剤要求Txと同様に、その他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。なお、診察要求Txおよび調剤要求Txと同一の名の構成要素については、同一の内容であるので、その詳細な説明は省略する。
【0063】
薬剤師秘密鍵による電子署名は、調剤受任Txを作成した薬剤師の薬剤師秘密鍵によって生成された情報であって、薬剤師が作成したことを証明してなりすましの検出に使用される情報である。薬剤師公開鍵は、薬剤師秘密鍵による電子署名を複合することが可能な情報である。電子署名の復号結果に基づいてなりすましが行われたか否かの検証が可能になる。
【0064】
薬剤師アドレス(送信元)は、調剤受任Txを送信する薬剤師端末30およびそのユーザである薬剤師を識別可能な情報である。
【0065】
直前トランザクションデータのハッシュ値は、調剤受任Txにおいては、調剤要求Txのハッシュ値である。それにより、同一の患者に関するトランザクションデータ間の繋がりが示される。
【0066】
調剤受任情報は、調剤要求を受け付け、調剤を受任したことを示すメッセージである。調剤受任情報に、調剤薬受け渡し薬局、調剤薬の受け渡し可能日時などを含めてもよい。
【0067】
図2に戻って、出力情報処理部130は、Tx取得部122で取得した診察結果Txおよび調剤受任Txの情報を、入出力部150に出力し、情報を患者に提示する。例えば、あらかじめ用意されている診察結果ページに診察結果Txから取得した情報を表示する。
【0068】
記憶部140は、ハードディスクまたはフラッシュメモリを用い、処理部100が参照するプログラムを記憶する。また、記憶部140は、患者情報処理部110で取得や作成した情報、身体状態情報、公開患者情報、および症状情報を記憶する。なお、身体状態情報および症状情報は、診療が完了した時点、例えば、診察結果Txまたは調剤受領TxをTx取得部122で取得したタイミングで削除されるのが望ましい。
【0069】
さらに、記憶部140は、患者秘密鍵、患者公開鍵、患者アドレスを記憶している。患者公開鍵は、患者秘密鍵と一対であり、患者秘密鍵から生成される。患者アドレスは、患者秘密鍵に一方向性ハッシュ関数を用いて生成される。本実施形態において、秘密鍵と公開鍵とは、秘密鍵で暗号化を行い公開鍵で複合化を行う公開鍵暗号方式の鍵として説明するが、これに限られない。
【0070】
なお、患者秘密鍵は、必ずしも記憶部140に記憶されている必要はなく、例えば、秘密鍵と署名を行うアプリケーションがネットワーク上に存在するホットウォレットや、秘密鍵を完全にネットワークから切り離して紙媒体等で記録するコールドウォレットを用いてもよい。また、記憶部140にシードやマスタ秘密鍵を記憶しておき、必要に応じて、患者秘密鍵、患者公開鍵、および患者アドレスを作成してもよい。後述する医師秘密鍵、医師公開鍵、医師アドレス、および薬剤師秘密鍵、薬剤師公開鍵、薬剤師アドレスは、上述した患者秘密鍵、患者公開鍵、患者アドレスそれぞれと同様である。
【0071】
入出力部150は、患者端末10に対する各種操作を入力する入力装置、および、患者端末10で処理された処理結果を出力する出力装置を含む。入出力部150は、入力装置と出力装置とが一体化していてもよいし、入力装置と出力装置とに分離していてもよい。
【0072】
出力装置は、例えば、液晶パネルや有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置、スピーカー、プリンタ等、またはそれらの組み合わせである。入力装置は、例えば、キーボード等の文字情報入力デバイス、マウス等のポインティングデバイス、ディスプレイ内蔵のタッチパネル、カメラ、マイク等、またはそれらの組み合わせである。
【0073】
通信部160は、ネットワークNを介して医師端末20、薬剤師端末30、ブロックチェーン40に接続するための通信インターフェースであり、通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。
【0074】
(医師端末)
図4は、医師端末20の機能構成を示す図である。医師端末20は、患者端末10と同様にスマートフォン、携帯電話、コンピュータ等であって、医師が使用する端末である。そして、医師端末20は、医師秘密鍵、医師公開鍵、および医師のブロックチェーンにおける医師アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して患者端末10、薬剤師端末30と情報の連携を行う。
【0075】
図に示すように、医師端末20は、処理部200、記憶部240、入出力部150、および通信部160を備える。なお、患者端末10と同一の符号を付す構成要素については、同一の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0076】
処理部200は、医師端末20の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部200は、診察情報処理部210、Tx処理部220、および出力情報処理部230を備える。
【0077】
診察情報処理部210は、受信した診察要求Txの患者情報に基づいて患者の診察を行った医師の入出力部150への入力に基づいて、診察情報を作成する。診察情報処理部210は、図に示すように、診察結果作成部211、および処方せん作成部212を備える。
【0078】
診察結果作成部211は、患者の診察を行った医師の入出力部150への入力に基づいて、診察結果情報を作成する。ここで、診察結果情報は、対面診察において診察後に医師から患者へ説明される、病名、治療方針、処方薬の説明といった診察結果の情報である。
【0079】
処方せん作成部212は、患者の診察を行った医師の入出力部150への入力に基づいて、処方せん情報を作成する。なお、処方せん情報は、投薬が必要と判断した場合のみ作成される。
【0080】
Tx処理部220は、ブロックチェーン40と送受信するトランザクションの作成や取得を行い、Tx作成部221およびTx取得部222を備える。
【0081】
Tx取得部222は、ブロックチェーン40のブロックに含まれるトランザクションの中から、送信先に医師アドレスを指定しているトランザクション、すなわち診察要求Txを取得する。トランザクションの取得は、医師端末20のユーザである医師の指示に応じて行われてもよいし、任意のタイミングで行われてもよい。取得する診察要求Txは、Tx取得部222がまだ取得していないものが望ましく、例えば、診察要求Txの送信日時を参照して、前回の取得後に追加されたものである。Tx取得部222が取得した診察要求トランザクションの情報は、後述する出力情報処理部230により、入出力部150に出力される。
【0082】
Tx作成部221は、診察した患者の患者端末10に診察結果を通知する診察結果Tx(図3参照)を作成する。具体的には、Tx作成部221は、診察情報処理部210が診察情報を作成したことに応じて、診察結果Tx(図3参照)作成する。そして、Tx作成部221は、診察結果Txを作成すると、作成した診察結果Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する。ブロックチェーン40に送信された診察結果Txは、ブロックチェーン40に記録される。
【0083】
出力情報処理部230は、Tx取得部222で取得した診察要求Txを、入出力部150に出力し、患者情報を医師に提示する。例えば、あらかじめ用意されている診察要求ページに診察要求Txから取得した患者情報、患者の身体状態情報、公開患者情報、および症状情報を表示する。なお、出力情報処理部230は、診察要求Txに含まれる送信日時や、患者アドレス(送信元)といったその他の情報も併せて入出力部150に出力させてもよい。医師は入出力部150に出力された身体状態情報、基礎情報、および症状情報に基づいて、患者の診察を行い、診察結果情報や処方せん情報を作成する。
【0084】
記憶部240は、ハードディスクまたはフラッシュメモリを用い、処理部200が参照するプログラムを記憶する。また、記憶部240は、医師秘密鍵、医師公開鍵、医師アドレスを記憶している。
【0085】
(薬剤師端末)
図5は、薬剤師端末30の機能構成を示す図である。薬剤師端末30は、患者端末10および医師端末20と同様にスマートフォン、携帯電話、コンピュータ等であって、薬剤師が使用する端末である。そして、薬剤師端末30は、薬剤師秘密鍵、薬剤師公開鍵、および薬剤師のブロックチェーンにおける薬剤師アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して患者端末10、医師端末20と情報の連携を行う。
【0086】
図に示すように、薬剤師端末30は、処理部300、記憶部340、入出力部150、および通信部160を備える。なお、患者端末10と同一の符号を付す構成要素については、同一の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0087】
処理部300は、薬剤師端末30の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部300は、受任結果作成部310、Tx処理部320、および出力情報処理部330を備える。
【0088】
受任結果作成部310は、薬剤師の入出力部150への入力に基づいて、受任結果情報を作成する。薬剤師は、処方せんの内容が適正であるか否かの確認を行った結果、調剤を受任する場合には「調剤受任」を、調剤を受任できない場合には「調剤受任不可」を入出力部150に入力し、受任結果情報を作成する。ここで、調剤を受任できない場合とは、例えば、処方箋の有効期限が切れている場合などである。なお、受任結果情報に、調剤薬を受け渡す薬局の情報や、調剤薬が配達される日時等を含めてもよい。
【0089】
Tx処理部320は、ブロックチェーン40と送受信するトランザクションの作成や取得を行い、Tx作成部321およびTx取得部322を備える。
【0090】
Tx取得部322は、ブロックチェーン40のブロックに含まれるトランザクションの中から、送信先に薬剤師端末30の薬剤師アドレスを指定しているトランザクション、すなわち調剤要求Txを取得する。トランザクションの取得は、薬剤師端末30のユーザである薬剤師の指示に応じて行われてもよいし、任意のタイミングで行われてもよい。取得する調剤要求Txは、診察要求Txと同様に、Tx取得部322がまだ取得していないものが望ましい。Tx取得部322が取得した調剤要求Txの情報は、後述する出力情報処理部330により、入出力部150に出力される。
【0091】
Tx作成部321は、調剤要求をした患者の患者端末10に調剤要求の受任結果を通知する調剤受任Txを作成する。具体的には、Tx作成部321は、受任結果作成部310が受任結果情報を作成したことに応じて、受任結果情報を含み、患者に受任結果を通知する調剤受任Tx(図3参照)作成する。そして、Tx作成部321は、調剤受任Txを作成すると、作成した調剤受任Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する。ブロックチェーン40に送信された調剤受任Txは、ブロックチェーン40に記録される。
【0092】
出力情報処理部330は、Tx取得部322で取得した調剤要求Txを、入出力部150に出力し、情報を薬剤師に提示する。例えば、あらかじめ用意されている調剤要求ページに調剤要求Txから取得した情報、患者の公開患者情報、および処方せん情報を表示する。なお、出力情報処理部330は、調剤要求Txに含まれる送信日時や、患者アドレス(送信元)といったその他の情報も併せて入出力部150に出力させてもよい。薬剤師は、入出力部150に出力された情報に基づいて、処方せんの内容が適正であるか否かの確認を行う。
【0093】
なお、薬剤師は、処方せんの内容が適正であるか否かを確認し、適正と判断した場合には、薬剤師は調剤を行う、または、別の薬剤師に調剤の指示を行う。処方せんの内容が適正でない場合には、医師に内容の確認(いわゆる疑義照会)を行った後に、薬剤師は調剤を行う、または、別の薬剤師に調剤の指示を行う。医師への疑義照会や別の薬剤師への調剤の指示もブロックチェーンを利用してトランザクションを介して行うのが望ましい。調剤された薬は、薬局にて直接手渡し、または配達などの手段により患者提供される。
【0094】
記憶部340は、ハードディスクまたはフラッシュメモリを用い、処理部300が参照するプログラムを記憶する。また、記憶部340は、薬剤師秘密鍵、薬剤師公開鍵、薬剤師アドレスを記憶している。
【0095】
(電子医療処理フロー)
図6は、本実施形態に係る電子医療システム1の電子医療処理フローを示す図である。本フローにおいて、診察要求Txの送信先は医師端末20の医師アドレス、診察結果Txの送信先は患者端末10の患者端末アドレスとする。
【0096】
患者端末10の患者情報処理部110は、患者情報の取得および作成をする患者情報処理を行う(ステップS1)。患者情報処理については、図7を用いて説明する。そして、患者端末10のTx作成部121は、ステップS1で取得および作成した患者情報、および医師アドレスを含む診察要求Txを作成し、作成した診察要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS2)。
【0097】
ステップS2でブロックチェーン40に送信された診察要求Txが、ブロックチェーン40で承認され、記録される(ステップS3)。
【0098】
医師端末20のTx取得部222は、ステップS3でブロックチェーン40に記録された診察要求Txをブロックチェーン40から受信する。そして、Tx取得部222は、受診した診察要求Txの情報を、出力情報処理部230を介して入出力部150に出力し、医師に情報を提示する(ステップS4)。
【0099】
医師端末20の診察結果作成部211は、ステップS4で提示された情報に基づいて医師が診察を行った結果を、医師が入出力部150に入力したことに応じて、診察結果情報を作成する(ステップS5)。次に、医師端末20の処方せん作成部212は、ステップS4で提示された情報に基づいて診察を行った結果、患者への投薬が必要と判断した医師が入出力部150に入力したことに応じて、処方せん情報を作成する(ステップS6)。なお、患者への投薬が必要でない場合には、医師は、入出力部150への入力を行わず、処方せん情報は作成されない。
【0100】
そして、医師端末20のTx作成部221は、ステップS5で作成された診察結果情報、患者アドレス、および/またはステップS6で作成された処方せん情報を含む診察結果Txを作成し、作成した診察要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS7)。なお、ステップS6で処方せん情報が作成されなかった場合には、診察結果Txには処方せん情報は含まれない。
【0101】
ステップS7でブロックチェーン40に送信された診察結果Txが、ブロックチェーン40で承認され、記録される(ステップS8)。
【0102】
患者端末10のTx取得部122が、ステップS8でブロックチェーン40に記録された診察結果Txをブロックチェーン40から受信する。そして、患者端末10のTx取得部122は、受診した診察結果Txの情報を入出力部150に出力し、患者に情報を提示する(ステップS9)。
【0103】
図7は、本実施形態に係る電子医療システム1の患者情報処理フローを示す図である。
【0104】
症状情報作成部113は、患者の入出力部150への入力に基づいて、症状情報を作成する(ステップS21)。次に、身体状態情報取得部111は、計測器50から患者の身体状態情報を取得する。身体状態情報取得部111は、記憶部140に身体状態情報が記録されている場合には、それも併せて取得する(ステップS22)。
【0105】
公開患者情報作成部112は、公開患者情報が記憶部140に記憶されているかの有無を確認する(ステップS23)。そして、公開患者情報作成部112は、記憶部140に公開患者情報が記憶されていない場合には、患者の入出力部150への入力に基づいて、公開患者情報を作成し取得するとともに、記憶部140に記憶する。また、記憶部140に公開患者情報が記憶されていて、患者が公開患者情報を更新する指示を行わない場合には、公開患者情報作成部112は、記憶部140から公開患者情報を取得する。さらに、記憶部140に公開患者情報が記憶されていて、患者が公開患者情報を更新する指示を行った場合には、更新した公開患者情報を作成し取得するとともに、記憶部140に記憶する(ステップS24)。なお、ステップS21,S22、S23およびS24の順は、入れ替わってもよい。
【0106】
図8は、本実施形態に係る電子医療システム1の調剤要求フローを示す図である。本フローにおいて、調剤要求Txの送信先は薬剤師端末30の薬剤師アドレス、調剤受領Txの送信先は患者端末10の患者端末アドレスとする。
【0107】
患者端末10のTx取得部122は、図6のステップS9で取得した診察結果Txの処方せん情報の有無を確認する。処方せん情報が含まれる場合には、Tx取得部122は、診察結果Txから処方せんを取得し、処方せん情報が含まれなかった場合には、処理を終了する(ステップS10)。
【0108】
そして、患者端末10のTx作成部121は、ステップS10で取得した処方せん情報および記憶部140に記憶されている公開患者情報を含む調剤要求Tx(図3参照)を作成し、作成した調剤要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS11)。なお、公開患者情報は、調剤要求Txに含まれなくともよい。
【0109】
ステップS11でブロックチェーン40に送信された調剤要求Txが、ブロックチェーン40で承認され、記録される(ステップS12)。
【0110】
薬剤師端末30のTx取得部322は、ステップS12でブロックチェーン40に記録された調剤要求Txをブロックチェーン40から受信する。そして、Tx取得部322は、受診した調剤要求Txの情報を、出力情報処理部2330を介して入出力部150に出力し、薬剤師に情報を提示する(ステップS13)。
【0111】
薬剤師端末30の受任結果作成部310は、ステップS13で提示された情報に基づいて、薬剤師が処方せん内容のチェックを行った結果を入出力部150に入力したことに応じて、受任結果情報を作成する(ステップS14)。次に、薬剤師端末30のTx作成部321は、ステップS14で作成された受任結果情報を含む調剤受領Txを作成し、作成した調剤受任Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS15)。
【0112】
ステップS15でブロックチェーン40に送信された調剤受領Txが、ブロックチェーン40で承認され、記録される(ステップS16)。
【0113】
患者端末10のTx取得部122が、ステップS8でブロックチェーン40に記録された調剤受領Txをブロックチェーン40から受信する。そして、患者端末10のTx取得部122は、受診した調剤受領Txの情報を入出力部150に出力し、患者に情報を提示する(ステップS17)。
【0114】
以上、説明したように、本実施形態によれば、患者の診療を、患者、医師、および/または薬剤師とのネットワークを介した情報のやり取りによって行い、この情報はブロックチェーンを利用して連携する。それにより、情報が署名者(送信者)により作成されたこと、情報が改ざんされていないことを検証できるので、非対面および/または非リアルタイムでのオンライン診療(調剤受付を含む)であっても、有効性や安全性を確保した診療を提供することができる。また、非対面および/または非リアルタイムでの診療(調剤受付を含む)が可能であるので、患者は、物理的制約を受けることなく、簡便に診療を受けることができる。
【0115】
また、ブロックチェーンには、診察要求Tx、診察結果Tx,調剤要求Tx,および調剤受任Txを含む診療履歴が残り、患者の診療履歴は参照可能であるので、患者、医師、および/または薬剤師が患者の健康状況や診療状況を経時的に把握することができ、診療の有効性や安全性を向上させることができる。ブロックチェーンの患者の診療履歴は、保険、健康維持といった医療以外の分野においても使用することができる。
<第2の実施形態>
【0116】
第2の実施形態では、ブロックチェーンへの記録に適さない、秘匿性の高い情報や容量の大きい情報を、ブロックチェーンとは別システムで管理し、ブロックチェーンと別システムとを連携させることで、より適切な医療をオンラインで提供するものである。なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同一の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0117】
具体的には、第2の実施形態は、患者の個人情報といった秘匿性の高い情報や患者の検査結果や画像データをも含む診察記録といった容量の大きい情報を記憶するデータベースと、このデータベースを管理する管理装置と、を含むシステムを、第1の実施形態の電子医療システム1に追加した形態である。そして、データベースに記憶されている情報へのアクセス権限に関する情報は、ブロックチェーンで管理する。
【0118】
このように、秘匿性の高い情報を別システムで管理し、アクセス権限を有するユーザにのみ情報を提供するようにアクセス権限をブロックチェーンで管理することで、セキュアに秘匿性の高い情報を患者、医師、および/または薬剤師の間で連携することができる。また、ブロックチェーンへの記録に適さない容量の大きい情報をも、データベースを利用して、患者、医師、および/または薬剤師との間で連携することができ、非対面および/または非リアルタイムでのオンライン診療であっても、画像診断等による高度な検査結果を基にした高度な診療についても、対面と同等に提供することが可能になる。
【0119】
(電子医療システムの概要)
図9は、第2の実施形態に係る電子医療システム2の概要を示す図である。電子医療システム2は、患者端末11、医師端末21、薬剤師端末31、管理装置60、非公開患者情報データベース(DB)70、診療記録DB80、およびブロックチェーン40を備え、互いにネットワークNを介して接続されている。なお、管理装置60は1台であるが、非公開患者情報DB70、診療記録DB80のそれぞれに1台あってもよい。また、非公開患者情報DB70、診療記録DB80を合わせて1台のDBとしてもよい。
【0120】
非公開患者情報DB70は、電子医療システム2を利用する患者の非公開患者情報を記憶する。具体的には、非公開患者情報DB70は、患者IDに非公開患者情報を対応付けて記憶する。患者IDは、管理装置60が、非公開患者情報DB70に非公開患者情報を記憶する際に作成するものであって、患者を識別できる情報であり、任意の英数字や記号で構成され、非公開患者情報のハッシュ値を用いてもよい。また、非公開患者情報とは、患者を特定可能な情報や公開患者情報のうち患者が公開しないと判断した情報を含み、例えば、氏名と生年月日や住所の組み合わせ、保険証番号である。
【0121】
診療記録DB80は、電子医療システム2を利用した診療において医師などが作成する診療記録情報を記憶する。具体的には、診療記録DB80は、診療録IDに診療記録情報を対応付けて記憶する。診療記録IDは、管理装置60が診療記録DB80に診療記録情報を記憶する際に作成するものであって、診療記録を識別できる情報であり、任意の英数字や記号で構成され、診療記録情報のハッシュ値を用いてもよい。
【0122】
診療記録情報とは、医師が作成する診療内容や経過等の記録(診療録)であって、いわゆるカルテに限らず、検査結果、画像検査結果、処方せん、紹介状等広く診療に関する情報を含んでもよい。本実施形態において、診療記録情報は、医療関係者が情報共有することを目的として作成されるものであって、患者に提示される診察結果のより詳細な情報である。
【0123】
管理装置60は、非公開患者情報DB70および診療記録DB80を管理する装置である。具体的には、患者端末11からの要求に応じて非公開患者情報DB70に非公開患者情報を記憶する。非公開患者情報DB70に非公開患者情報を記憶する際には、患者IDを付与した後、患者IDと非公開患者情報とを対応付けて記憶する。そして、管理装置60は、付与した患者IDを患者端末11に送信する。
【0124】
また、管理装置60は、医師端末21または薬剤師端末31からの要求に応じて、非公開患者情報DB70の非公開患者情報を提供する。この際、管理装置60は、要求があった非公開患者情報の権限情報を、ブロックチェーン40に記録されているトランザクションの中から抽出し、医師端末21または薬剤師端末31のアクセス権限に応じて、指定された非公開患者情報を提供する。
【0125】
さらに、管理装置60は、医師端末21からの要求に応じて、診療記録DB80に診療記録情報を記憶する。この時、管理装置60は、診療記録DB80に診療記録情報を記憶する際に、診療録IDを付与した後、診療録IDと診療記録情報とを対応付けて記憶する。そして、管理装置60は、付与した診療記録IDを医師端末21に送信する。診療記録情報の権限情報も、非公開患者情報と同様にブロックチェーン40に記録されているトランザクションに記載され、管理装置60は要求があった際にはトランザクションの権限情報を参照し、情報を提供するか否か判断する。
【0126】
(患者端末)
図10は、患者端末11の機能構成を示す図である。患者端末11は、患者秘密鍵、患者公開鍵、患者のブロックチェーンにおける患者アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して医師端末21、薬剤師端末31と情報の連携を行うとともに、非公開患者情報DB70および診療記録DB80を用いて、秘匿性の高い情報や容量の大きい情報を管理装置60を介して医師端末21、薬剤師端末31と情報の連携を行う。
【0127】
図に示すように、患者端末11は、処理部170、記憶部140、入出力部150、および通信部160を備える。処理部170は、患者端末11の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部170は、患者情報処理部180、Tx処理部120、および出力情報処理部130を備える。
【0128】
患者情報処理部180は、患者の情報の取得や作成を行い、患者情報を取得するとTx処理部120に患者情報を送信する。患者情報処理部180は、図に示すように、身体状態情報取得部111、公開患者情報作成部112、症状情報作成部113、非公開患者情報作成部114、および権限設定部115を含む。
【0129】
非公開患者情報作成部114は、患者の入出力部150の入力に基づいて、非公開患者情報を作成し、作成した非公開患者情報を非公開患者情報DB70に記録する要求を管理装置60にする。そして、非公開患者情報作成部114は、要求を受信した管理装置60から患者IDを取得する。患者IDは、記憶部140に記憶される。
【0130】
権限設定部115は、患者の入出力部150への入力に基づいて、非公開患者情報作成部114で非公開患者情報DB70に記録した非公開患者情報への権限情報を設定する。権限情報は非公開患者情報に対するアクセスの可否を示す情報であって、非公開患者情報を作成した患者のみが設定することができる。権限情報には、例えば、許可対象、許可操作、許可制限が含まれる。許可対象は、非公開患者情報へのアクセスを許可する対象者を特定できる情報であればよく、例えば、医療機関や薬局といった業種、医療機関や薬局の名称、患者アドレス、医師アドレス、および薬剤師アドレスといった個人のアドレスが設定される。許可操作は、非公開患者情報に対して許可する操作が設定され、閲覧や取得等が設定される。なお、変更、追加、削除を設定してもよい。許可制限は、許可操作に関する制限情報が設定され、許可操作が可能な期間、許可操作が可能な回数等が設定される。
【0131】
Tx作成部121は、第1の実施形態のTx作成部と機能は同じであるが、作成する診察要求Txおよび調剤要求Txのデータ構造が、第1の実施形態と異なるため、その点について説明する。
【0132】
(トランザクションのデータ構造)
図11は、Tx作成部121が生成する本実施形態に係る各種トランザクションのデータ構造の一例を示す図である。なお、調剤受任トランザクションについては、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略している。
【0133】
図に示すように、第2の実施形態に係る診察要求Txは、患者秘密鍵による電子署名、患者公開鍵、患者アドレス(送信元)、医師アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、身体状態情報、公開患者情報、症状情報、患者ID、(患者ID)権限情報、診療記録ID、および送信日時を含む。その他にトランザクションの作成に用いられたソフトウェアや方式の名称やバージョン情報といったその他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。また、第1の実施形態に係る診察要求Txと同一の名の構成要素については、同一の内容であるので、その詳細な説明は省略する。
【0134】
患者IDは、非公開患者情報作成部114で管理装置60から取得した患者IDである。患者IDが非公開患者情報のハッシュ値である場合には、非公開患者情報DB70に記憶される非公開患者情報が改ざんされていないか否かを検知するのに用いることができる。なお、非公開患者情報のハッシュ値が患者IDとは独立して、診察要求Txに含まれてもよい。
【0135】
(患者ID)権限情報は、権限設定部115で設定された、非公開患者情報DB70に記憶されている非公開患者情報の権限情報である。非公開患者情報DB70へアクセスがあった際に、管理装置60が、権限を有する者のアクセスか、アクセスを許可する場合には、どの操作を許可するか判定する際に用いられる。
【0136】
診療記録IDは、後述する診療記録作成部214で管理装置60から取得した診療記録IDであり、診察結果情報に対応している、診療記録DB80の診療記録情報を示す。診療記録IDが診療記録情報のハッシュ値である場合には、診療記録DB80に記憶される診療記録情報が改ざんされていないか否かを検知するのに用いることができる。なお、診療記録情報のハッシュ値が診療記録IDとは別に、診察結果Txに含まれてもよい。
【0137】
また、図11に示すように、調剤要求Txは、患者秘密鍵による電子署名、患者公開鍵、患者アドレス(送信元)、薬剤師アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、公開患者情報、処方せん情報、患者ID、(患者ID)権限情報、および送信日時を含む。診察要求Txと同様に、その他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。なお、第2の実施形態に係る調剤要求Txに含まれる情報は、診察要求Txおよび第1の実施形態に係る調剤要求Txに含まれている情報であるため、その詳細な説明は省略する。
【0138】
(医師端末)
図12は、医師端末21の機能構成を示す図である。医師端末21は、患者端末11と同様にスマートフォン、携帯電話、コンピュータ等であって、医師が使用する端末である。そして、医師端末21は、医師秘密鍵、医師公開鍵、および医師のブロックチェーンにおける医師アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して患者端末11、薬剤師端末31と情報の連携を行うとともに、非公開患者情報DB70および診療記録DB80を用いて、秘匿性の高い情報や容量の大きい情報を管理装置60を介して患者端末11、薬剤師端末31と情報の連携を行う。
【0139】
図に示すように、医師端末21は、処理部270、記憶部240、入出力部150、および通信部160を備える。処理部270は、医師端末21の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部270は、診察情報処理部280、Tx処理部220、および出力情報処理部231を備える。
【0140】
診察情報処理部280は、受信した診察要求Txの情報に基づいて非公開患者情報DB70から取得した情報、および受信した診察要求Txの情報に基づいて患者の診察を行った医師の入出力部150への入力等に基づいて、診察情報および診察記録を作成する。診察情報処理部280は、図に示すように、診察結果作成部211、処方せん作成部212、非公開患者情報取得部213、診療記録作成部214、および権限設定部215を備える。
【0141】
非公開患者情報取得部213は、Tx取得部222で取得した診察要求Txから患者IDを取得する。そして、非公開患者情報取得部213は、患者IDおよび医師アドレスを含む、非公開患者情報DB70へのアクセス要求を管理装置60に送信する。管理装置60において、アクセス要求された患者IDに対応付けられた非公開患者情報へのアクセスが医師アドレスに許可されていると判断された場合には、非公開患者情報取得部213は、管理装置60から患者IDに対応付けられた非公開患者情報を受信する。受信した非公開患者情報は、後述する出力情報処理部231により、入出力部150に出力される。
【0142】
診療記録作成部214は、患者の診察を行った医師の入出力部150への入力に基づいて、診療記録情報を作成し、作成した診療記録情報を診療記録DB80に記録する要求を管理装置60にする。そして、診療記録作成部214は、要求を受信した管理装置60から診療記録IDを取得する。診療記録IDは、記憶部240に記憶される。
【0143】
権限設定部215は、医師の入出力部150への入力に基づいて、診療記録作成部214で診療記録DB80に記録した診療記録情報への権限情報として(診療記録ID)権限情報を設定する。(診療記録ID)権限情報は診療記録情報に対するアクセスの可否を示す情報であって、診療録情報を作成した医師と診察記録情報の患者が設定することができる。権限情報には、非公開患者情報と同様に、例えば、許可対象、許可操作、許可制限が含まれる。
【0144】
Tx作成部221は、第1の実施形態のTx作成部と機能は同じであるが、作成する診察結果Txのデータ構造が、第1の実施形態と異なるため、その点について説明する。
【0145】
図11に示すように、第2の実施形態に係る診察結果Txは、医師秘密鍵による電子署名、医師公開鍵、医師アドレス(送信元)、患者アドレス(送信先)、直前トランザクションデータのハッシュ値、診察結果情報、処方せん情報、診療録ID、(診療録ID)権限情報、および送信日時を含む。診察結果Txは、その他の情報を含んでもよいし、上記情報全てを必ずしも含まなくてもよい。なお、診察結果Txは、医師アドレス(送信先)を含めることで、医師が診察結果について他の医師に意見を求めることができる。診察要求Txおよび第1の実施形態に係る診察結果Txと同一の名の構成要素については、同一の内容であるので、その詳細な説明は省略する。
【0146】
(診療記録ID)権限情報は、権限設定部215で設定された、診療記録DB80に記憶されている診療記録情報の権限情報である。(診療記録ID)権限情報は、診療記録DB80へのアクセスがあった際に、管理装置60が、権限を有する者のアクセスか、アクセスを許可する場合にはどの操作を許可するか判定する際に用いられる。
【0147】
診察結果Txに含まれる診療記録IDおよび(診療記録ID)権限情報は、診療記録を医師間および/または医師と薬剤師間で共有するために用いることができる。医師間で共有する場合には、患者が次に診察を受ける医師が診療記録にアクセスできるようにするために、診察結果Txに含まれる診療記録IDは、患者が次に診察を受ける時に作成される診察要求Txに、患者端末11のTx作成部121によって含められる。また、医師と薬剤師間で共有する場合には、調剤を要求された薬剤師が診療記録にアクセスできるようにするために、診察結果Txに含まれる診療記録IDは、診察結果Txの処方せんを含む調剤要求Txに、患者端末11のTx作成部121によって含められる。
【0148】
診療記録DB80に記憶されている診療記録情報の権限情報は、患者も設定することができ、診療記録が医師間および/または医師と薬剤師間で共有されるのを制限するために用いることができる。この場合には、診療記録IDとともに、患者が設定した診療記録情報の権限情報、(診療記録ID)患者設定権限情報が、診察要求Txまたは調剤要求Txに含められる。そして、管理装置60は、診療記録DB80に記憶されている診療記録情報に対して、医師が設定した(診療記録ID)権限情報および(診療記録ID)患者設定権限情報の両方に基づいて、権限を有する者のアクセスか、アクセスを許可する場合にはどの操作を許可するか判定する。(診療記録ID)権限情報および(診療記録ID)患者設定権限情報が反する内容となる場合もあるので、その場合にどちらの権限情報を優先するかの優先付けをしておくと望ましい。
【0149】
出力情報処理部231は、Tx取得部222で取得した診察要求Txと、非公開患者情報取得部213で取得した非公開患者情報とを、入出力部150に出力し、情報を医師に提示する。例えば、あらかじめ用意されている診察要求ページに診察要求Txから取得した患者情報、患者の身体状態情報、公開患者情報、症状情報、および非公開患者情報取得部380で取得した非公開患者情報の氏名、住所、保険証番号等を表示する。なお、出力情報処理部231は、診察要求Txに含まれる送信日時や、患者アドレス(送信元)といったその他の情報も併せて入出力部150に出力させてもよい。医師は入出力部150に出力された身体状態情報、基礎情報、症状情報、および非公開患者情報に基づいて、患者の診察を行い、診察結果情報や処方せん情報を作成する。
【0150】
(薬剤師端末)
図13は、薬剤師端末31の機能構成を示す図である。薬剤師端末31は、患者端末11および医師端末21と同様にスマートフォン、携帯電話、コンピュータ等であって、薬剤師が使用する端末である。そして、薬剤師端末31は、薬剤師秘密鍵、薬剤師公開鍵、および薬剤師のブロックチェーンにおける薬剤師アドレスを管理し、ブロックチェーン40を利用して患者端末11、医師端末21と情報の連携を行うとともに、非公開患者情報DB70および診療記録DB80を用いて、秘匿性の高い情報や容量の大きい情報を管理装置60を介して患者端末11、医師端末21と情報の連携を行う。
【0151】
図に示すように、薬剤師端末31は、処理部370、記憶部340、入出力部150、および通信部160を備える。処理部370は、薬剤師端末31の処理全般を実現する機能構成であり、スマートフォン、携帯電話、コンピュータ等において一般的に行われるOSによる処理等を実現してもよい。図に示すように、処理部370は、受任結果作成部310、Tx処理部320、出力情報処理部331、および非公開患者情報取得部380を備える。
【0152】
非公開患者情報取得部380は、Tx取得部322で取得した調剤要求Txから患者IDを取得する。そして、非公開患者情報取得部380は、患者IDおよび薬剤師アドレスを含む、非公開患者情報DB70へのアクセス要求を管理装置60に送信する。管理装置60において、アクセス要求された患者IDに対応付けられた非公開患者情報へのアクセスが許可されていると判断された場合には、非公開患者情報取得部380は、管理装置60から患者IDに対応付けられた非公開患者情報を受信する。
【0153】
出力情報処理部331は、Tx取得部322で取得した調剤要求Txの情報と、非公開患者情報取得部380で取得した非公開患者情報とを、入出力部150に出力し、情報を薬剤師に提示する。例えば、あらかじめ用意されている調剤要求ページに調剤要求Txから取得した情報、患者の公開患者情報、処方せん情報、および非公開患者情報取得部380で取得した非公開患者情報の氏名、住所、保険証番号等を表示する。なお、出力情報処理部331は、調剤要求Txに含まれる送信日時や、患者アドレス(送信元)といったその他の情報も併せて入出力部150に出力させてもよい。薬剤師は、入出力部150に出力された情報に基づいて、処方せんの内容が適正であるか否かの確認を行う。
【0154】
(電子医療処理フロー)
図14は、第2の実施形態に係る電子医療システム2の電子医療処理フローを示す図である。本フローにおいて、診察要求Txの送信先は医師端末21の医師アドレス、診察結果Txおよび調剤受領Txの送信先は患者端末11の患者端末アドレス、調剤要求Txの送信先は薬剤師端末31とする。
【0155】
患者端末11の患者情報処理部180は、患者情報処理を行う(ステップS101)。患者情報処理については、図15を用いて説明する。そして、患者端末11のTx作成部121は、ステップS101において処理した患者情報、具体的には、身体状態情報、公開患者情報、症状情報、患者ID、および権限情報を含む診察要求Tx(図11参照)を作成し、作成した診察要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS102)。
【0156】
医師端末21のTx取得部222は、ステップS3でブロックチェーン40に記録された診察要求Txをブロックチェーン40から受信する(ステップS104)。次に、医師端末21の診察情報処理部280は、診察情報処理を行う(ステップS105)。診察情報処理については、図16を用いて説明する。そして、医師端末21のTx作成部221は、ステップS105で作成された診察結果情報、診療記録ID、(診療記録ID)権限情報、および/または処方せん情報を含む診察結果Tx(図11参照)を作成し、作成した診察要求Txを通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS107)。なお、ステップS105で処方せん情報が作成されなかった場合には、診察結果Txには処方せん情報は含まれない。
【0157】
患者端末11のTx作成部121は、ステップS10で取得した処方せん情報と、記憶部140に記憶されている公開患者情報と、ステップS9で取得した診察結果Txの患者IDおよび(患者ID)権限情報を含む、調剤要求Tx(図11参照)を通信部160によりブロックチェーン40に送信する(ステップS111)。
【0158】
薬剤師端末31のTx取得部322は、ステップS12でブロックチェーン40に記録された調剤要求Txをブロックチェーン40から受信する(ステップS113)。そして、薬剤師端末31の処理部370は、調剤受任処理を行う(ステップS114)。調剤受任処理については、図17を用いて説明する。
【0159】
図15は、第2の実施形態に係る電子医療システム2の患者情報処理フローを示す図である。
【0160】
患者端末11の非公開患者情報作成部114は、患者の入出力部150への入力に基づいて、非公開患者情報を作成する(ステップS125)。そして、患者端末11の非公開患者情報作成部114は、ステップS125で作成した非公開患者情報を非公開患者情報DB70に記録する要求を管理装置60に送信する(ステップS126)。
【0161】
管理装置60は、患者端末11から受信した非公開患者情報に患者IDを付与する(ステップS127)。次に、管理装置60は、ステップS127で付与した患者IDと、患者端末11から受信した非公開患者情報とを対応つけて非公開患者情報DB70に記録する(ステップS128)。そして、管理装置60は、患者端末11に患者IDを送信する(ステップS129)。
【0162】
患者端末11の権限設定部115は、ステップS129で管理装置60から送信された患者IDを取得したことに応じて、ステップS128で非公開患者情報DB70に記録された非公開患者情報の権限情報を、患者の入出力部150への入力に基づいて、作成する(ステップS130)。
【0163】
図16は、第2の実施形態に係る電子医療システム2の診察情報処理フローを示す図である。
【0164】
医師端末21の診察情報処理部280は、ステップS104で受信した診察要求Txから患者IDを取得し、患者IDおよび医師アドレスを含む、非公開患者情報DB70へのアクセス要求を管理装置60に送信する(ステップS141)。
【0165】
管理装置60は、非公開患者情報DB70において、取得した患者IDに対応付けられている非公開患者情報へのアクセスが、アクセス要求した医師端末21の医師アドレスに付与されているかアクセス権限チェックを行う(ステップS142)。具体的には、管理装置60は、医師アドレスを送信先とし、患者IDを含む最新の診察要求Txをブロックチェーン40から検索する。そして、管理装置60は、条件に該当する診察要求Txから権限情報を取得し、患者IDに対応付けられている非公開患者情報に、医師アドレスの医師端末21がアクセスできるか否かを判断する。
【0166】
管理装置60は、医師アドレスの医師端末21がアクセスできると判断した場合には、患者IDに対応付けられている非公開患者情報を医師端末21に送信する(ステップS143)。なお、管理装置60は、医師端末21がアクセスできないと判断した場合には、医師端末21にその旨を通知する。
【0167】
医師端末21の出力情報処理部231は、ステップS104で取得した診察要求Txの身体状態情報、公開患者情報、および症状情報と、ステップS143で管理装置60から送信された非公開患者情報と、を入出力部150に出力する(ステップS144)。
【0168】
医師端末21の診療記録作成部214は、患者の診察を行った医師の入出力部150への入力に基づいて、診療記録情報を作成する(ステップS145)そして、医師端末21の診療記録作成部214は、ステップS145で作成した診療記録情報を診療記録DB80に記録する要求を管理装置60に送信する(ステップS146)。
【0169】
管理装置60は、ステップS146で医師端末21から送信された診療記録情報に診療記録IDを付与する(ステップS147)。次に、管理装置60は、ステップS147で付与した診療記録IDと、ステップS146で医師端末21から送信された診療記録情報とを対応つけて診療記録DB80に記録する(ステップS148)。そして、管理装置60は、医師端末21に診療記録IDを送信する(ステップS149)。
【0170】
医師端末21の権限設定部215は、管理装置60から診療記録IDを取得したことに応じて、ステップS148で診療記録DB80に記録された診療記録情報の権限情報を、医師端末21の入出力部150への入力に基づいて、作成する(ステップS150)。
【0171】
図17は、第2の実施形態に係る電子医療システム2の調剤受任処理フローを示す図である。
【0172】
薬剤師端末31の非公開患者情報取得部380は、ステップS113で受信した調剤要求Txから患者IDを取得し、患者IDおよび薬剤師アドレスを含む、非公開患者情報DB70へのアクセス要求を管理装置60に送信する(ステップS161)。
【0173】
管理装置60は、非公開患者情報DB70において、取得した患者IDに対応付けられている非公開患者情報へのアクセスが、アクセス要求した薬剤師端末31の薬剤師アドレスに付与されているかアクセス権限チェックを行う(ステップS162)。具体的なアクセス権限チェックはステップS142で説明した通りである。
【0174】
管理装置60は、薬剤師アドレスの薬剤師がアクセスできると判断した場合には、患者IDに対応付けられている非公開患者情報を薬剤師端末31に送信する(ステップS163)。なお、管理装置60は、薬剤師端末31がアクセスできないと判断した場合には、薬剤師端末31にその旨を通知する。
【0175】
薬剤師端末31の出力情報処理部331は、ステップS113で取得した調剤要求Txの公開患者情報、処方せん情報と、ステップS163で管理装置60から送信された非公開患者情報と、を入出力部150に出力する(ステップS164)。
【0176】
以上、説明したように、本実施形態によれば、秘匿性の高い情報を別システムで管理し、アクセス権限を有するユーザにのみ情報を提供し、アクセス権限はブロックチェーンで管理することで、セキュアに秘匿性の高い情報を患者、医師、および/または薬剤師との間で連携することができる。また、ブロックチェーンへの記録に適さない容量の大きい情報をも、データベースを利用して、患者、医師、および/または薬剤師との間で連携することができ、非対面および/または非リアルタイムでのオンライン診療であっても、画像診断等による高度な検査結果を基にした高度な診療についても、対面と同等に提供することが可能になる。
<変形例>
【0177】
(医療システム)
第1および第2の実施形態では、患者と医師、患者と薬剤師との間における、ブロックチェーンを利用した情報を連携する電子医療システムであったが、患者と看護師、看護師と医者、医者と薬剤師、患者と介護福祉士等、患者および医療従事者との間でのブロックチェーンを利用した医療情報を連携する電子医療システムとすることもできる。第1および第2の実施形態と同様に、公開してもよい情報はブロックチェーンで記録管理する。また、非公開の情報はDBで記録管理し、ブロックチェーンでアクセス管理をする。それにより、ブロックチェーンに履歴が残り、患者および医療従事者が容易に情報共有することができる。
【0178】
(各種医療文書)
また、第1および/または第2の実施形態では、診察結果情報、処方せん情報、診察記録情報といった医療文書をブロックチェーンおよび/またはDBで記録管理しているが、これらに限らず、医療情報提供書、訪問看護指示書、診断書、証明書等の医療文書もブロックチェーンおよび/またはDBで記録管理することもできる。その場合には、公開してもよい情報はブロックチェーンで記録管理し、非公開の情報はDBで記録管理し、ブロックチェーンでアクセス管理をする。
【0179】
(トランザクション情報の暗号化)
また、第1および/または第2の実施形態では、トランザクション内の情報は暗号化していないが、暗号化してもよい。例えば、医師端末20,21が、医師アドレスおよび医師公開鍵を含む鍵トランザクション(以下鍵Tx)をブロックチェーン40に送信し、ブロックチェーン40に鍵Txが記録される。次に、患者端末10,11が、診察を受けたい医師のアドレスをキーに鍵Txを受信し、医師公開鍵を取得する。そして、患者端末10,11は、取得した医師公開鍵で暗号化した患者情報を診察要求Txに含め、診察要求Txを受信した医師端末20,21は、自身の医師秘密鍵で患者情報を復号する。
【0180】
同様に、患者アドレスおよび患者公開鍵を含む鍵トランザクション、薬剤師アドレスおよび薬剤師公開鍵を含む鍵Txをブロックチェーン40に送信することで、診察結果Tx、調剤要求Tx、および調剤受任Txに含まれる情報も暗号化することができる。それにより、トランザクションに含める情報を暗号化できることで、プライバシーを守ることができる。
【0181】
(医師マッチング)
また、第1および/または第2の実施形態では、医師アドレスは患者が取得できる状態になっていて、患者は必要に応じて取得するが、ブロックチェーンを用いて、患者の要望に合った医師の医師アドレスを取得してもよい。例えば、患者の要望に合った医師をマッチングし、マッチングした医師を患者に通知するマッチングプログラムをスマートコントラクトとして記録する(以下、マッチングコントラクトという)。マッチングコントラクトは医師毎に登録され、医師の専門や経歴などを含む属性情報および医師アドレスを保持する。
【0182】
患者が診察を要求する医師の条件および患者アドレスを含むマッチング要求トランザクション(以下、マッチング要求Tx)が患者端末10,11からブロックチェーン40に送信され記録されると、マッチングコントラクトは、保持する属性情報がマッチング要求Txの条件とマッチングするか否か判断する。そして、マッチングコントラクトは、マッチングすると判断した場合には、保持する医師アドレスを含む、マッチング要求Txの患者アドレス宛のマッチング結果トランザクション(以下、マッチング結果Tx)をブロックチェーンに送信し、ブロックチェーン40にマッチング結果Txが記録される。患者端末10,11は、ブロックチェーン40から自身宛てのマッチング結果Txを受信し、受信したマッチング結果Txから医師アドレスを取得する。この取得した医師アドレスを診察要求Txの宛先とする。
【0183】
(仮想通貨による支払い)
また、第1および第2の実施形態では、診察や調剤にかかった医療費を、仮想通貨を使用して支払うこともできる。例えば、ブロックチェーンにおける仮想通貨を用いて決済を行う決済プログラムをスマートコントラクトとしてブロックチェーンに記録する(以下、決済コントラクトという)。決済コントラクトは患者毎に登録され、仮想通貨の送金元として、患者アドレスを保持する。医師や薬剤師から、送金先アドレスとして医師アドレスや薬剤師アドレス、および送金する医療費の情報を含む、患者アドレス宛の請求Txがブロックチェーンに送信されると、決済コントラクトは、請求Txに指定された送金先アドレス宛に、医療費として指定された額の仮想通貨を支払う処理をする。
【0184】
(保険システム)
また、第1および第2の実施形態では、ブロックチェーンを利用して非対面の保険システムを提供することもできる。例えば、患者が保険料を仮想通貨で支払うことで、保険契約が成立するプログラムをスマートコントラクトとしてブロックチェーンに記録し、非対面で、患者と保険会社とが医療保険の契約を結ぶことができるようする。そして、保険契約をしている患者の診察結果Txや調剤受領Txがブロックチェーンに登録されたことに応じて、予め指定された額の保険金を支払うプログラムのスマートコントラクトをブロックチェーンに記録することで、非対面で、仮想通貨により保険金が支払われる保険システムを提供することができる。保険金を支払うプログラムのスマートコントラクトは、診察Txや調剤Txの内容に基づいて、保険金の支払いを判断したり、保険金額を決定するようにしてもよい。
【0185】
(医療モール)
また、第1および第2の実施形態において、ブロックチェーンはパブリック型の構成として説明したが、患者のプライバシー保護を重視するのであれば、限られた人や組織が使えるプライベート型やコンソーシアム型の構成であるのが望ましい。また、診療の専門分野毎や、医療コンセプト毎にブロックチェーンを構成することで、より高いレベルの医療を提供できる仮想医療モールを構築してもよい。
【0186】
(Tx取得部のスマートコントラクト)
また、第1および第2の実施形態では、患者端末、医師端末、および薬剤師端末それぞれがTx取得部を備えるが、各端末にTx取得部を備えず、Tx取得部を、スマートコントラクト機能を用いて実現してもよい。
【0187】
(その他のトランザクション)
第1および第2の実施形態では、診察要求Tx、診察結果Tx、調剤要求Tx、調剤結果Txの4つトランザクションで、患者、医師、および薬剤師が情報を連携しているが、適宜その他のトランザクションを用いて情報の連携を行ってもよい。例えば、非公開患者情報DBの非公開患者情報や、診療録DBの診療録情報の権限を付与するトランザクションや、上述した仮想通貨による支払のためのトランザクション、保険システムのためのトランザクションがある。
【0188】
(処方せん情報をDB管理)
第1および第2の実施形態では、処方せん情報は、トランザクションに含まれ、ブロックチェーンに記録されるが、第2の実施形態の診療録情報と同様に、DBに記憶し、アクセス権限をブロックチェーンで管理してもよい。それにより、処方せん情報をセキュアに管理することができる。
【0189】
(DBに記録される情報の暗号化)
第2の実施形態において、非公開患者情報DBに記録される非公開患者情報、および診療録DBに記録される診療録情報を、情報へのアクセスを許可する者の公開鍵で暗号化することにより、データベースの情報をよりセキュアに記録管理できる。
【0190】
(分散型DBを利用)
また、第2の実施形態において、非公開患者情報DB70および診療記録DB80を分散型DBとし、記録する非公開患者情報や診療録情報を分散させて記録管理することで、よりセキュアに記録管理できる。この場合には、分散されて記録された非公開患者情報や診療録情報を復元するための方法を、情報のIDおよび権限情報と併せてトランザクションに含める。
【0191】
なお、患者端末、医師端末、および薬剤師端末の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録された患者端末、医師端末、および薬剤師端末に読み込ませ、実行することによって本発明の患者端末、医師端末、および薬剤師端末を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0192】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0193】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0194】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0195】
1電子医療システム、10,11患者端末、20,21医師端末、30,31薬剤師端末、40ブロックチェーン、50計測器、60管理装置、70非公開患者情報DB、80診療記録DB、100,170,200,270,300,370処理部、110,180患者情報処理部、120,220,320Tx処理部、130,230,231,330,331出力情報処理部、140,240,340記憶部、150入出力部、160通信部、210診察情報処理部、310受任結果作成部、Nネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17