(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061209
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】食肉加工食品、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/40 20160101AFI20220411BHJP
A23B 4/00 20060101ALI20220411BHJP
A23B 4/12 20060101ALI20220411BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
A23L13/40
A23B4/00 F
A23B4/12 Z
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169061
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】520094433
【氏名又は名称】プログレス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513072754
【氏名又は名称】上坂 喜美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100136205
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅和
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC06
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK13
4B042AK15
4B042AK17
4B042AP19
4B065AA30X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA21
4B065CA10
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】 乳酸菌を用いて、長期間にわたる抗大腸菌効果を発揮できる食肉加工食品、及び、その製造方法の提供。
【解決手段】 鶏もも肉加工食品100は、受託番号FERM P-20747の乳酸菌と、受託番号FERM P-20750の乳酸菌との2種類の乳酸菌を含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748の乳酸菌と、受託番号FERM P20749の乳酸菌との2種類の乳酸菌を含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質、及び、蛋白質で乳酸発酵することで得られ、前記乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、10
7cfu/g以上であり、前記乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液を、前記ホモ型植物由来乳酸菌、及び、前記ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にした乳酸菌粉末を、鶏もも肉に付着したものである。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質、及び、蛋白質で乳酸発酵することで得られる乳酸菌液であって、前記乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、前記乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液を、前記ホモ型植物由来乳酸菌、及び、前記ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にした乳酸菌粉末を、食肉に付着した食肉加工食品。
【請求項2】
請求項1に係る食肉加工食品において、
前記乳酸菌粉末は、
前記食肉に用いる下処理用の他の材料と混合されて、前記食肉に付着していること、
を特徴とする食肉加工食品。
【請求項3】
請求項2に係る食肉加工食品において、
前記乳酸菌粉末は、
前記下処理用の他の材料としての味噌、及び/又は、ヨーグルトと混合されて、前記食肉に付着していること、
を特徴とする食肉加工食品。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに係る食肉加工食品において、
前記食肉は、
鶏もも肉であること、
を特徴とする食肉加工食品。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに係る食肉加工食品において、さらに、
前記乳酸菌粉末を付着させた前記食肉は、真空パックされていること、
を特徴とする食肉加工食品。
【請求項6】
受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質、及び、蛋白質で乳酸発酵することで得られる乳酸菌液であって、前記乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、前記乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液を、前記ホモ型植物由来乳酸菌、及び、前記ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にした乳酸菌粉末を、前記食肉に用いる下処理用の他の材料と混合し、下処理用混合物を生成する下処理用混合物生成工程、
前記食肉を、前記下処理用混合物に混ぜ合わせることによって、前記乳酸菌粉末を前記食肉に付着させる乳酸菌粉末付着工程、
を有する食肉加工食品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に係る食肉加工食品の製造方法において、
前記下処理用混合物生成工程は、
前記下処理用の他の混合物として、味噌、及び/又は、ヨーグルトを用いること、
を特徴とする食肉加工食品の製造方法。
【請求項8】
請求項6、又は、請求項7に係る食肉加工食品において、
前記乳酸菌粉末付着工程は、
前記食肉として、鶏もも肉を用いること、
を特徴とする食肉加工食品の製造方法。
【請求項9】
請求項6~請求項8のいずれかに係る食肉加工食品において、さらに、
前記乳酸菌粉末を付着させた前記食肉を、真空パックするパック工程、
を有する食肉加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌を利用した食肉加工食品、及び、その製造方法に関し、特に、乳酸菌をバイオプリザバティブとして利用するものに関する。
【0002】
従来の乳酸菌を利用した食肉加工食品(以下、乳酸菌利用食肉加工食品とする)について、以下において説明する。乳酸菌利用食肉加工食品は、乳酸菌の生菌を接種して、30~50℃の温度範囲で1~36時間保持(インキュベート)することで得られ、106~109cfu/gの乳酸菌を含有することを特徴とするものである。また、乳酸菌利用食肉加工食品は、乾燥食肉製品である。さらに、乳酸菌利用食肉加工食品で利用する乳酸菌は、少なくともラクトバシラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の乳酸菌であり、また、乳酸菌が、ラクトバシラス・ブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバシラス・アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌(Bifidobacterium bifidum)からなる群から選ばれる少なくとも一つの菌であることを特徴とするものである(以上、特許文献1参照)。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の乳酸菌利用食肉加工食品には、以下に示すような改善すべき点がある。前述の乳酸菌利用食肉加工食品は、乾燥食肉製品を対象としており、乾燥食肉製品以外、特に、生肉について、同様の乳酸菌によるバイオプリザバティブ効果を得られるか否かについては、不明である。
【0005】
また、前述の乳酸菌利用食肉加工食品では、乳酸菌は、少なくともラクトバシラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の乳酸菌であり、また、乳酸菌が、ラクトバシラス・ブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバシラス・アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌(Bifidobacterium bifidum)からなる群から選ばれる少なくとも一つの菌であり、他の乳酸菌で、同様の効果が得られるかについては不明である。
【0006】
そこで、本発明では、乳酸菌を用いて、長期間にわたる抗大腸菌効果を発揮できる食肉加工食品の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明における課題を解決するための手段、及び、発明の効果を以下に示す。
【0008】
本発明に係る食肉加工食品は、受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質、及び、蛋白質で乳酸発酵することで得られる乳酸菌液であって、前記乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、前記乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液を、前記ホモ型植物由来乳酸菌、及び、前記ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にした乳酸菌粉末を、食肉に付着した。
【0009】
これにより、食肉において、所定の乳酸菌粉末による抗大腸菌群効果が得ることができ、ひいては、長期間にわたる保存が可能となる。
【0010】
本発明に係る食肉加工食品では、前記乳酸菌粉末は、前記食肉に用いる下処理用の他の材料と混合されて、前記食肉に付着していること、を特徴とする。
【0011】
これにより、乳酸菌の付着工程を下処理に合わせてできるため、従来処理から変更することなく、効率よく食肉に抗大腸菌群効果を与えることができる。
【0012】
本発明に係る食肉加工食品では、前記乳酸菌粉末は、前記下処理用の他の材料としての味噌、及び/又は、ヨーグルトと混合されて、前記食肉に付着していること、を特徴とする。
【0013】
これにより、食肉に、所定の風味、柔らかさを与えながら、抗大腸菌群効果を与えることができる。
【0014】
本発明に係る食肉加工食品では、前記食肉は、鶏もも肉であること、を特徴とする。
【0015】
これにより、鶏肉に、長期間にわたる抗大腸菌群効果を与えることができる。
【0016】
本発明に係る食肉加工食品では、さらに、前記乳酸菌粉末を付着させた前記食肉は、真空パックされていること、を特徴とする。
【0017】
これにより、抗大腸菌群効果を与えた食肉を、適切に、保存することができる。
【0018】
本発明に係る食肉加工食品の製造方法は、受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質、及び、蛋白質で乳酸発酵することで得られる乳酸菌液であって、前記乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、前記乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液を、前記ホモ型植物由来乳酸菌、及び、前記ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にした乳酸菌粉末を、前記食肉に用いる下処理用の他の材料と混合し、下処理用混合物を生成する下処理用混合物生成工程、前記食肉を、前記下処理用混合物に混ぜ合わせることによって、前記乳酸菌粉末を前記食肉に付着させる乳酸菌粉末付着工程、を有する。
【0019】
これにより、乳酸菌の付着工程を下処理に合わせてできるため、従来処理から変更することなく、抗大腸菌群効果を与えた食肉を効率よく製造できる。
【0020】
本発明に係る食肉加工食品の製造方法では、前記下処理用混合物生成工程は、前記下処理用の他の混合物として、味噌、及び/又は、ヨーグルトを用いること、を特徴とする。
【0021】
これにより、食肉に、所定の風味、柔らかさを与えながら、抗大腸菌群効果を与えた食肉を製造できる。
【0022】
本発明に係る食肉加工食品では、前記乳酸菌粉末付着工程は、前記食肉として、鶏もも肉を用いること、を特徴とする。
【0023】
これにより、抗大腸菌群効果を与えた鶏もも肉を、容易に製造できる。
【0024】
本発明に係る食肉加工食品では、さらに、前記乳酸菌粉末を付着させた前記食肉を、真空パックするパック工程、を有する。
【0025】
これにより、長期間保存できる、抗大腸菌群効果を与えた食肉を製造できる。
【0026】
なお、発明者は、食肉、特に、生肉の鶏もも肉に対して、所定の乳酸菌粉末を付着させることによって、大腸菌群の増加を抑制できる抗大腸菌群効果を有し、長期間の保存が可能となる食肉加工食品を提供できることを見出し、本発明を為すに至った。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る食肉加工食品の一実施例である鶏もも肉加工食品100の製造方法を示す図である。
【
図2】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図3】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図4】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図5】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図6】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図7】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図8】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図9】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図10】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図11】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【
図12】鶏もも肉加工品の抗大腸菌群効果を示すための実験結果を示す図であり、Aは実験結果の実数を、BはAの片対数グラフを、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0028】
以下、本発明に係る食肉加工食品について、食肉である鶏もも肉を加工した鶏もも肉加工食品100を例に、以下において説明する。なお、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。
【0029】
第1 鶏もも肉加工食品100
鶏もも肉加工食品100は、乳酸菌粉末101を付着させた鶏もも肉103である。特に、鶏もも肉加工食品100において、乳酸菌粉末101は、味噌、及び、ヨーグルトに添加され、攪拌された下処理用混合物に鶏もも肉103を漬け込むことによって、鶏もも肉103に付着される。
【0030】
1.乳酸菌粉末
鶏もも肉加工食品100で用いる乳酸菌粉末としては、「受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合し、当該配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質及び蛋白質で乳酸発酵することで得られる乳酸菌液であって、本乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、本乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする乳酸菌液」をフリーズドライ(凍結乾燥)させて、ホモ型植物由来乳酸菌、及び、ヘテロ型植物由来乳酸菌を生菌の状態で粉末状にしたものを用いる。
【0031】
ここで、ホモ型乳酸菌とは、乳酸発酵による代謝物の100%が(炭酸ガスを除いて)乳酸である乳酸菌を意味し、ヘテロ型乳酸菌とは、乳酸発酵による代謝物の50%以上が(炭酸ガスを除いて)乳酸であり、その他の代謝物が乳酸以外の有機酸(例えば、エタノール、酢酸、ギ酸等)である乳酸菌を意味する。そして、植物由来乳酸菌(植物性乳酸菌、植物系乳酸菌)とは、耐熱性、耐塩性、耐酸性を有する微好気性菌であり、腸内環境を改善できる善玉菌である。なお、動物由来乳酸菌(動物性乳酸菌、動物系乳酸菌)とは、チーズやヨーグルトの生成に利用される嫌気性菌であるが、耐熱性、耐塩性、耐酸性のいずれも無く、ヒトを含む動物が摂取しても、胃酸やコール酸(胆汁)で死滅し、環境温度が41.9度以上になると細胞膜が損傷・破壊される。植物由来乳酸菌は、動物由来乳酸菌が自然の厳しい環境の下、植物細胞内で生き延びて嫌気性菌から微好気性菌に変異した特別な菌である。
【0032】
また、上述の受託番号の植物由来乳酸菌は、ラクトバチルス桿菌属である。植物由来乳酸菌は、通常の方法により凍結乾燥した乳酸菌、又は冷蔵保存した乳酸菌を用いることが出来る。
【0033】
なお、ホモ型植物由来乳酸菌とヘテロ型植物由来乳酸菌との配合方法に特に限定は無く、一般に使用されている通常の配合方法を採用することが出来る。例えば、ホモ型植物由来乳酸菌及びヘテロ型植物由来乳酸菌の増殖率に基づいて、乳酸発酵後のホモ型植物由来乳酸菌の量と乳酸発酵後のヘテロ型植物由来乳酸菌の量とが同等となるように配合することが出来る。この場合、増殖率が高い植物由来乳酸菌の配合量は、増殖率が低い植物由来乳酸菌の配合量と比較して減らしておく。又、特定の植物由来乳酸菌を他の植物由来乳酸菌と比較して多く配合して、全体のバランスを取るようにしても良い。ホモ型植物由来乳酸菌とヘテロ型植物由来乳酸菌とが通常の配合方法によりバランスよく配合されていれば良い。
【0034】
また、乳酸菌液中に含まれる植物由来乳酸菌の生菌数に特に限定は無いが、例えば、107cfu/g~108cfu/gであると好ましく、107cfu/g~109cfu/gであると更に好ましく、107cfu/g~1012cfu/gであると最も好ましい。
【0035】
さらに、ホモ型植物由来乳酸菌とヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合する際に、目的に応じて、他の菌を添加しても構わない。例えば、受託番号FERM P-20888で特定されるバチルス・サブチルス菌(枯草菌)、真菌類、酵素菌等を適宜添加しても構わない。
【0036】
又、前記配合物を乳酸発酵する方法に特に限定は無いが、例えば、通常の培養方法(乳酸発酵方法)が利用される。具体的には、前記配合物を培養釜に投入するとともに、当該配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質及び蛋白質を投入し、当該培養釜を所定の培養温度(例えば、40度)で所定の培養時間(例えば、24時間~36時間)保持する。基質に対する配合物の接種量は、少量で構わない。
【0037】
ここで、培養温度及び培養時間の条件は、例えば、乳酸発酵後の乳酸菌液のpHが3.5~4.0となり、生菌数が107cfu/g以上となる条件に設定される。乳酸発酵後の乳酸菌液のpHが3.5~4.0の弱酸性に設定されることで、乳酸菌液による制菌、殺菌等のバイオプリザベーション効果を発揮し、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌等を24時間程度で死滅させることが可能となる。又、乳酸菌液のpHが3.5~4.0であることで、pHが2.0~2.5の酢酸のような強酸の刺激が無く、まろやかな味とすることが出来る。更に、生菌数が107cfu/g以上となることで、プロバイオティクス効果を確実に得ることが可能となる。
【0038】
また、培養温度は、例えば、30℃~55℃の範囲内に設定され、培養時間は、例えば、10時間~48時間の範囲内に設定される。培養時間は、乳酸発酵後における積算培養温度に基づいて決定されるため、培養温度が高い場合は、培養時間は短く設定され、培養温度が低い場合は、培養時間は長く設定される。
【0039】
さらに、前記配合物を糖質及び蛋白質で培養する際に、そのまま糖質及び蛋白質に接触させて培養しても良いし、糖質及び蛋白質を調理して味付けしたものに前記配合物を接触させて培養しても良い。
【0040】
基質となる糖質に特に限定は無いが、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の小腸吸収糖質やラフィノース(オリゴ糖)、希少糖等の小腸非吸収糖質、てんさい糖、砂糖大根等を挙げることが出来る。基質となる蛋白質に特に限定は無いが、例えば、大豆等の豆類、植物由来蛋白質、食肉等を挙げることが出来る。蛋白質は、例えば、大豆の全粒粉を採用しても良い。これにより、大豆のポリフェノール(イソフラボン)を十分に利用することが出来る。又、基質の糖質及び蛋白質の他に、他の素材を添加しても良い。例えば、葉野菜、根菜類、トマト等の実野菜等を粉砕して、粉砕物を基質に添加しても良い。又、基質として、例えば、豆乳等、糖質及び蛋白質を兼ね備える原材料を採用しても良い。
【0041】
糖質及び蛋白質の添加比率に特に限定は無く、例えば、植物由来の乳酸菌を乳酸発酵させる際の通常の添加比率を採用すれば良い。例えば、糖質及び蛋白質の基質の全量に対する糖質の添加比率は、1.0w%~20.0w%の範囲内であると好ましい。豆乳であれば、豆乳単体だけでも基質となり得る。
【0042】
前記配合物の乳酸発酵では、ホモ型植物由来乳酸菌とヘテロ型植物由来乳酸菌とが基質に基づいて同時に乳酸発酵するため、基質の糖質が乳酸及び他の有機酸に変換され、基質の蛋白質が分子化し、ペプチド、アミノ酸に変換される。
【0043】
乳酸発酵後の配合物である乳酸菌液は、例えば、所定の冷却温度(例えば、-4℃~4℃の範囲内)まで冷却又は冷蔵されることで、生菌のまま安定保存することが出来る。ここで、通常の乳酸菌液では、冷却温度が0度未満となると、乳酸菌液に含まれる水が針状結晶となり、乳酸菌を死滅させてしまうが、本発明に係る乳酸菌液では、ヘテロ型植物由来乳酸菌が乳酸以外の有機酸(エタノール等)を産出することで、水の氷点が降下して、冷却温度が0度未満になっても、水の針状結晶が生じず、凍らない。そのため、本発明に係る乳酸菌液では、例えば、-3℃~-4℃まで冷蔵しても、凍らずに生菌のままであり、凍結寸前の温度まで冷却して保存することが出来る(チルド)。又、基質に味が付けられている場合には、この冷却保存により乳酸菌液が熟成してまろやかな味を付すことが出来る。味付けは、嗜好の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0044】
なお、乳酸菌液をスターター(親菌)として更に増殖培養しても良い。例えば、最初の乳酸発酵を一次培養とし、当該増殖培養を二次培養とした場合、二次培養では、乳酸菌液をスターターとして乳酸発酵を行って発酵物を得ることが出来る。例えば、乳酸菌液に、乳酸発酵に必要な基質を添加し、上述した培養条件で乳酸発酵させる。二次培養でも、乳酸菌液は、基質に対して少量で良く、基質に他の素材を添加しても良く、一次培養と同様である。例えば、二次培養の際に、豆乳(基質)とトマト(他の素材)との比率を1:9に設定し、全体の量が400kgであっても、乳酸菌液は少量添加して混ぜるだけでも良い。二次培養後の発酵物は、一次培養後の乳酸菌液と同様の利用形態で利用することが出来る。
【0045】
さらに、フリーズドライは、例えば、凍結させた乳酸菌液を真空状態にし、乳酸菌液中の水分を昇華させることで乾燥状態にすることを意味する。これにより、液体状の乳酸菌液と比較して長期的に(2年以上)安定して保存できる。
【0046】
なお、粉末状にする前の乳酸菌液の製造方法は、受託番号FERM P-20747で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P-20750で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むホモ型植物由来乳酸菌と、受託番号FERM P-20748で特定される乳酸菌と、受託番号FERM P20749で特定される乳酸菌との2種類の乳酸菌を少なくとも含むヘテロ型植物由来乳酸菌とを配合する配合ステップと、 前記配合物を、前記配合物の植物由来乳酸菌の基質である糖質及び蛋白質で乳酸発酵して乳酸菌液を得る乳酸発酵ステップと、を備え、本乳酸菌液の植物由来乳酸菌の生菌数は、107cfu/g以上であり、本乳酸菌液のpHは、3.5~4.0であることを特徴とする。
【0047】
具体的には、例えば、粉末状にする前の乳酸菌液は、ホモ型植物由来乳酸菌とヘテロ型植物由来乳酸菌とを通常の配合方法によりバランスよく 配合し、その配合した配合物を市販の培養釜に入れ、通常の基質(蛋白質及び糖質)を追加し、40度の培養温度で24時間の培養時間だけ培養し、乳酸発酵させ、乳酸発酵後の乳酸菌液のpHが4.0であり、生菌数が10cfu/g以上とすることよって生成する。
【0048】
2.鶏もも肉103
鶏もも肉103は、市販の鶏もも肉を用いる。なお、鶏もも肉加工食品100に用いる食肉は、鶏もも肉103以外に、畜獣、例えば、牛、豚、鶏、馬、猪等の食肉を用いることができる。食肉の部位、形状については、乳酸菌粉末を付着させることができ、所定期間経過後に大腸菌群等の雑菌が、局所的にも、増加することがないような部位、形状であれば、特に限定されない。
【0049】
第2 鶏もも肉加工食品100の製造方法
鶏もも肉加工食品100の製造方法について、
図1を用いて、以下で説明する。鶏もも肉加工食品100の製造方法は、1.所定の味噌、所定のヨーグルト、及び、乳酸菌粉末101を混合した下処理用混合物を生成する下処理用混合物生成工程と、2.下処理用混合物に、用意した鶏もも肉103を漬け込み、乳酸菌粉末101を鶏もも肉103に付着する乳酸菌付着工程と、3.乳酸菌粉末101を付着させた鶏もも肉103を真空パックするパック工程と、を含むことが好ましい。
【0050】
1.下処理用混合物生成工程
適量の所定の味噌、ヨーグルト、及び、乳酸菌粉末101を、所定の容器に取得して混合し、撹拌することによって、下処理用混合物を形成する。この時、下処理用混合物において、乳酸菌粉末101、ひいては、乳酸菌粉末101に含まれる乳酸菌が均一に含まれるようにする。
【0051】
2.乳酸菌付着工程
用意した鶏もも肉103を、生成した下処理用混合物に、所定時間、漬け込む。これにより、味噌、及び、ヨーグルトを鶏もも肉に浸透させることによって、鶏もも肉103に、所定の風味、及び、所定の柔らかさを与えるとともに、乳酸菌粉末101を、鶏もも肉103の少なくともの表面に付着させる。
【0052】
なお、鶏もも肉103を下処理用混合物に漬け込む時間については、製品として要求される風味、柔らかさ等を考慮して、適宜、決定する。
【0053】
3.パック工程
乳酸菌粉末101を付着させた鶏もも肉103を、一般的な機械を用いて、真空パックし、所定の温度、4℃以下で保存する。
【0054】
なお、市販品として出荷する際には、真空パックによる保存後、12時間経過後に、大腸菌群数の計測等、所定の検査実施後、所定の条件を満たしているか否かを確認する。
【0055】
なお、その他に、一般的な食肉加工食品に用いることができる添加剤等を、本発明の効果を損なわない限りにおいて、適宜、用いるようにしても良い。
第3 実験例
【0056】
以下において、本発明に係る食肉加工食品の一実施例である鶏もも肉加工食品100の抗大腸菌群効果を示すために以下の実験を行った。ここで、抗大腸菌群効果とは、所定期間における大腸菌群の増加を抑えることができる能力をいう。また、「大腸菌群」は、グラム陰性の無芽胞桿菌で35℃、48時間以内に乳糖を分解して酸とガスを産生する好気性または通性嫌気性菌(「食品衛生検査指針 微生物編」参照)をいう。未加熱の食品から検出される大腸菌群数が多いほど、食品の取り扱いが悪くなるリスクが高いことを示す。なお、本発明の効果を以下の実験を例に挙げて説明するが、これらにより限定されるものではない。
【0057】
以下の材料を用意し、実験に合わせて、必要なものを選択した。
【表1】
【0058】
1.実験概要
(1)実験A
5cm角の鶏もも肉×4、味噌A、及び、ヨーグルトAを用意した。味噌A、及び、ヨーグルトAを混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、味噌A、及び、ヨーグルトAは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2:1となるようにする。
【0059】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0060】
保存時、保存3日後、保存6日後、保存7日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式(デソキシコレート寒天平板培養法(以下の、実験において同様))に基づき測定した。
【0061】
【0062】
(2)実験B
5cm角の鶏もも肉×6、味噌A、ヨーグルトA、及び、乳酸菌粉末を用意した。味噌A、ヨーグルトA、及び、乳酸菌粉末を混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、乳酸菌粉末を、味噌A、及び、ヨーグルトAに対して、重量比、8%で、混ぜ合わせる。また、味噌A、ヨーグルトAは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2:1となるようにする。
【0063】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0064】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0065】
【0066】
(3)実験C
5cm角の鶏もも肉×4、味噌B、及び、ヨーグルトBを用意した。味噌B、及び、ヨーグルトBを混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、味噌B、及び、ヨーグルトBは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2:1となるようにする。
【0067】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0068】
保存時、保存3日後、保存6日後、保存7日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0069】
【0070】
(4)実験D
5cm角の鶏もも肉×6、味噌B、ヨーグルトB、及び、乳酸菌粉末を用意した。味噌B、ヨーグルトB、及び、乳酸菌粉末を混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、乳酸菌粉末を、味噌B、及び、ヨーグルトBに対して、重量比、8%で、混ぜ合わせる。また、味噌B、ヨーグルトBは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2:1となるようにする。
【0071】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0072】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0073】
【0074】
(5)実験E
5cm角の鶏もも肉×4、及び、味噌Aを用意した。味噌Aを下処理用混合物とする。ここで、味噌Aは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2となるようにする。
【0075】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0076】
保存時、保存3日後、保存6日後、保存7日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0077】
【0078】
(6)実験F
5cm角の鶏もも肉×6、味噌A、及び、乳酸菌粉末を用意した。味噌A、及び、乳酸菌粉末を混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、乳酸菌粉末を、味噌Aに対して、重量比、8%で、混ぜ合わせる。また、味噌Aは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:2となるようにする。
【0079】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0080】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0081】
【0082】
(7)実験G
5cm角の鶏もも肉×4、及び、ヨーグルトBを用意した。ヨーグルトBを下処理用混合物とする。ここで、ヨーグルトBは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:1となるようにする。
【0083】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0084】
保存時、保存3日後、保存6日後、保存7日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0085】
【0086】
(8)実験H
5cm角の鶏もも肉×6、ヨーグルトB、及び、乳酸菌粉末を用意した。ヨーグルトB、及び、乳酸菌粉末を混ぜ合わせ、下処理用混合物を生成する。ここで、乳酸菌粉末を、ヨーグルトBに対して、重量比、8%で、混ぜ合わせる。また、ヨーグルトBは、用意した鶏もも肉に対して、重量比、7:1となるようにする。
【0087】
用意した鶏もも肉を、下処理用混合物と混ぜ合わせる。混ぜ合わせた鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0088】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0089】
【0090】
(9)実験I
5cm角の鶏もも肉×4を用意した。鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0091】
保存時、保存3日後、保存6日後、保存7日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0092】
【0093】
(10)実験J
5cm角の鶏もも肉×6、及び、乳酸菌粉末を用意した。用意した鶏もも肉に乳酸菌粉末を付着させた。鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0094】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0095】
【0096】
(11)実験K
5cm角の鶏もも肉×6、及び、乳酸菌液を用意した。用意した鶏もも肉を、所定時間、乳酸菌液に漬け込んだ。鶏もも肉毎に、真空パックし、4℃で冷蔵保存した。なお、真空パックした1つ1つの鶏もも肉を1検体として、利用する。
【0097】
保存1日後、保存15日後、保存29日後、保存43日後、保存44日後、及び、保存45日後に、検体の1つを選択し、その大腸菌群数を測定した。なお、大腸菌群数は、法定の検査方式に基づき測定した。
【0098】
【0099】
2.実験評価
実験A~実験Kにおいて、評価「陰性」は、所定の検査法で大腸菌群が検出されなかったことを示す。
【0100】
実験A、実験C、実験E、実験G、実験Iに示すように、乳酸菌粉末、又は、乳酸菌液が付着していない鶏もも肉については、大腸菌群数は、実験開始後、7日後までは、ほぼ直線状に増加する。また、実験開始後、7日目には、大腸菌群数が、所定の数を上回り、一般製品として用いることができないことが確認される。
【0101】
一方、実験B、実験D、実験F、実験H、実験Jに示すように、乳酸菌粉末が付着している鶏もも肉については、乳酸菌粉末が付着していないもの(実験A、実験C、実験E、実験G、実験I参照)に比して、大腸菌群数は、概ね29日目までに、増加のピークを迎え、その後、44日目まで、減少している。なお、大腸菌群数のピークの値は、概ね、1.0×103を上回ることがない。つまり、実験開始後7日目には、大腸菌群数が、概ね、1.0×105前後となる乳酸菌粉末が付着していないもの(実験A、実験C、実験E、実験G、実験I参照)に比して、明かに、大腸菌群数の増加を抑制できていることがわかる。
【0102】
なお、実験Fにおいては、他の同様の実験B、実験D、実験H、実験Jに比して、実験開始15日後から29日後までにおいて、大腸菌群数の増加が、比較的、大きいが、実験開始後29日後までは大腸菌群数が増加し、その後、実験開始後44日後に向かって、大きく、減少するという、全体的な傾向については、他の同様の実験と変わらない。したがって、実験Fにおいても、大腸菌群数の増加を抑制できていることがわかる。
【0103】
また、乳酸菌粉末が付着している鶏もも肉については、乳酸菌粉末が付着していないものに比して、大腸菌群数の増加のペースも低く、実験開始後45日後であっても、1.0×105よりもはるかに低い値であることがわかり、一般製品として用いることができることが確認される。
【0104】
つまり、鶏もも肉に、乳酸菌粉末を付着させることによって、大腸菌群数の増加を抑制する抗大腸菌効果を発揮していることが確認される。
【0105】
また、実験J、実験Kより、乳酸菌粉末を用いる方が、乳酸菌液を用いるよりも、抗大腸菌群効果が大きいことがわかる。これは、乳酸菌粉末を用いる方が、乳酸菌液を用いるよりも、鶏もも肉に付着する乳酸菌量を多くできることによると思われる。
【0106】
[その他の実施形態]
(1)食肉:前述の実施例1においては、食肉として、鶏もも肉を示したが、例示のものに限定されない。例えば、豚肉や牛肉であってもよい。また、食肉を所定形状に加工したもの、例えば、スライスしたものでもよい。
【0107】
(2)乳酸菌101の付着:前述の実施例1においては、乳酸菌粉末101を、味噌等と混合した下処理用混合物を生成した上で、鶏もも肉103に付着させたが、鶏もも肉103に、直接的に、付着させる(実験J)等、食肉に乳酸菌粉末101を付着させることができるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、醤油等の液体に、乳酸菌粉末101を混合して下処理用混合物を生成し、鶏もも肉と混ぜ合わせるようにしてもよい。