(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061224
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】三次元画像生成システム、三次元画像生成方法、三次元画像生成プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220411BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220411BHJP
G03B 13/30 20210101ALI20220411BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20220411BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20220411BHJP
G03B 35/00 20210101ALI20220411BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20220411BHJP
G06T 7/571 20170101ALI20220411BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G03B15/00 T
G03B13/30
G03B13/36
G02B7/28 N
G03B35/00 Z
G02B7/08 B
G06T7/571
H04N5/232 960
H04N5/232 290
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169098
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】盧 存偉
(72)【発明者】
【氏名】辻野 和広
【テーマコード(参考)】
2F065
2H011
2H044
2H059
2H151
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA12
2F065DD02
2F065FF10
2F065FF44
2F065FF51
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL04
2F065PP24
2F065QQ06
2F065QQ29
2F065QQ42
2H011AA01
2H011EA10
2H044BE01
2H044DA01
2H044DA02
2H044DB02
2H044DC01
2H059AA18
2H059CA01
2H151AA01
2H151DD09
2H151EB04
5C122EA61
5C122FA09
5C122FD10
5C122FE02
5C122FE05
5C122FH11
5C122FH18
5C122GG26
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB06
5C122HB10
5L096AA09
5L096CA06
5L096FA32
5L096FA66
(57)【要約】
【課題】撮影領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を得て三次元画像を生成すること。
【解決手段】カメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影する撮影手段11と、撮影手段11により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する計測用画像生成手段12と、計測用画像生成手段12により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する全視野画像生成手段14と、全視野画像生成手段14により生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する三次元画像生成手段15とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する計測用画像生成手段と、
前記計測用画像生成手段により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する全視野画像生成手段と、
前記全視野画像生成手段により生成された全視野画像の各画素に対応する前記計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する三次元画像生成手段と
を含む三次元画像生成システム。
【請求項2】
前記三次元画像生成手段は、前記計測対象物の表面の計測点と撮影された画像におけるこの計測点に対応する画素の二次元座標との射影関係と、各画素が鮮明に撮影されたときの焦点距離と、この鮮明に撮影された各画素に対応する前記計測対象物の表面の計測点の奥行き距離値との対応関係に基づき、前記全視野画像の各画素に対応する計測点の三次元世界座標を計算し、前記計測対象物の表面形状の三次元画像を生成するものである請求項1記載の三次元画像生成システム。
【請求項3】
前記計測用画像生成手段により生成された各焦点距離の計測用画像の微小な位置ずれを調節する計測用画像位置調節手段を含む請求項1または2に記載の三次元画像生成システム。
【請求項4】
前記計測用画像位置調節手段は、前記カメラ装置のキャリブレーション際に奥行きの基準値を取得するときに使用された焦点距離で撮影した計測用画像を調節基準画像とし、各焦点距離の計測用画像からそれぞれ複数個の特徴点を抽出し、これらの特徴点と調節基準画像から抽出した基準特徴点との間の空間距離を最小にするように位置調節用パラメータを求め、この位置調節用パラメータを用い、各焦点距離の計測用画像の位置を微調節するものである請求項3記載の三次元画像生成システム。
【請求項5】
前記計測用画像生成手段は、前記撮影手段において各焦点距離の写真撮影が一回だけの場合、その撮影写真を前記各焦点距離の計測用画像とし、M枚の写真が撮影された場合、それらのM枚の撮影写真の各画素の色強度値に対し、高域限界以上の値と低域限界以下の値を除いた画素の平均値を各画素の色強度の値とするものである請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元画像生成システム。
【請求項6】
前記全視野画像生成手段により生成された全視野画像の合成誤差を生じている画素の色強度値を補正する全視野画像補正手段を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の三次元画像生成システム。
【請求項7】
前記全視野画像補正手段は、前記合成誤差を生じている画素についてその周囲の画素の色強度値を用いて補正するものである請求項6記載の三次元画像生成システム。
【請求項8】
前記三次元画像生成手段により生成された三次元画像の座標値が異常な部分を補正する三次元画像補正手段を含む請求項7記載の三次元画像生成システム。
【請求項9】
前記三次元画像補正手段は、三次元世界座標の異変がある画素を除外し、周囲の画素の三次元世界座標を用い、その異変がある画素の三次元世界座標を補正するものである請求項8記載の三次元画像生成システム。
【請求項10】
イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影すること、
計算機により、前記各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成すること、
計算機により、前記生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成すること、
計算機により、前記生成された全視野画像の各画素に対応する前記計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成すること
を含む三次元画像生成方法。
【請求項11】
イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する計測用画像生成手段と、
前記計測用画像生成手段により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する全視野画像生成手段と、
前記全視野画像生成手段により生成された全視野画像の各画素に対応する前記計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する三次元画像生成手段と
としてコンピュータを機能させるための三次元画像生成プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の三次元画像生成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写界深度が深い全視野画像を得て三次元画像を生成する三次元画像生成システム、三次元画像生成方法、三次元画像生成プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な計測対象物を観察するために光学顕微鏡がよく使われている。光学顕微鏡の視野は、倍率が高ければ高いほど狭くなり、広い奥行き範囲の観測を実現するために、レンズの焦点を頻繁に調節する必要がある。
【0003】
レンズの焦点距離を調節することにより、異なる焦点距離の写真を複数枚撮影し、レンズ焦点法という三次元画像計測の原理に基づいて計測対象物表面の三次元写真を生成することができる。しかし、高精度にレンズの焦点距離を調節する必要があるので、コストが高い。また、レンズの電動調節機能がついている顕微鏡は体積が大きく、重量が重いので、通常は実験室に設置されており、現場に持って行って、現場で使用するのは困難である。
【0004】
最近、例えば特許文献1に記載のような干渉法に基づく顕微鏡を用いた三次元形状計測方法が提案されている。また、特許文献2に記載のような複数の拡大倍率の異なる写真による合成手法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-40644号公報
【特許文献2】特開2014-219623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の三次元形状計測方法では、光学システムの構成が複雑であるという問題がある。また、上記特許文献2に記載の合成手法では、レンズの拡大倍率の調節や分光システムを具備する必要がある。
【0007】
そこで、本発明においては、撮影領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を得て三次元画像を生成することが可能な三次元画像生成システム、三次元画像生成方法、三次元画像生成プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の三次元画像生成システムは、イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影する撮影手段と、撮影手段により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する計測用画像生成手段と、計測用画像生成手段により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する全視野画像生成手段と、全視野画像生成手段により生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する三次元画像生成手段とを含むものである。
【0009】
本発明の三次元画像生成方法は、イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影すること、計算機により、各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成すること、計算機により、生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成すること、計算機により、生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成することを含むことを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影し、各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成し、生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成し、この生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成し、計測対象物の表面形状の三次元画像を得ることができる。
【0011】
また、本発明の三次元画像生成システムは、三次元画像生成手段により生成された三次元画像の座標値が異常な部分を補正する三次元画像補正手段を含むものであることが望ましい。これにより、三次元画像生成手段により生成された三次元画像の不連続や欠損などの不自然な部分を滑らかにすることができる。
【0012】
本発明の三次元画像生成プログラムは、イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影する撮影手段と、撮影手段により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する計測用画像生成手段と、計測用画像生成手段により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する全視野画像生成手段と、全視野画像生成手段により生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する三次元画像生成手段としてコンピュータを機能させるためのものである。このプログラムを実行したコンピュータによれば、上記本発明の三次元画像生成システムと同様の作用、効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0013】
(1)イメージセンサおよび電気的信号により焦点距離を変化させることが可能な可変焦点レンズを有するカメラ装置を用いて計測対象物に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影し、各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成し、生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成し、生成された全視野画像の各画素に対応する計測対象物の表面の三次元世界座標を算出して三次元画像を生成する構成により、低廉なイメージセンサおよび可変焦点レンズを用いて被写界深度が深い全視野画像を得て計測対象物の表面形状の三次元画像を得ることが可能となる。
【0014】
(2)三次元画像生成手段により生成された三次元画像の座標値が異常な部分を補正する三次元画像補正手段を含む構成により、三次元画像生成手段により生成された三次元画像の不連続や欠損などの不自然な部分を滑らかにすることができ、自然な三次元画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における三次元画像生成システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の照明装置の下面の発光部分の説明図である。
【
図3】
図1の三次元画像生成システムのブロック図である。
【
図8】異なる焦点距離画像による全視野画像生成のイメージ図である。
【
図9】各焦点距離の計測用画像から鮮明に撮影された画素を抽出するイメージ図である。
【
図11】
図1の三次元画像生成システムによる計測の流れを示すフロー図である。
【
図12】
図11のステップS101の処理の詳細を示すフロー図である。
【
図13】
図11のステップS110の処理の詳細を示すフロー図である。
【
図14】
図1の三次元画像生成システムにおいて計測用画像位置補正処理を行う場合の計測の流れを示すフロー図である。
【
図15】本実施形態における三次元画像生成システムによる全視野画像および三次元画像の生成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態における三次元画像生成システムの概略構成図、
図2は
図1の照明装置の下面の発光部分の説明図、
図3は
図1の三次元画像生成システムのブロック図である。
【0017】
図1において、本実施形態における三次元画像生成システムは、計測対象物5の顕微鏡写真を撮影するカメラ装置1と、計測対象物に照明する照明装置2と、各部の制御や演算処理等を行うパーソナルコンピュータ(PC)などの計算機3と、計算機3とカメラ装置1との通信ケーブル4などより構成される。なお、計算機3とカメラ装置1との通信は、通信ケーブル4に代えて、Wi-Fi(商標)、Bluetooth(商標)や赤外線などの無線通信を用いることも可能である。
【0018】
カメラ装置1は、イメージセンサ1Aおよび可変焦点レンズ1Bを有する。イメージセンサ1Aは、照明装置2により照明した計測対象物5を可変焦点レンズ1Bを介して撮影するものである。可変焦点レンズ1Bは、電気信号により焦点距離を変化させることが可能な電動レンズや液体レンズなどのレンズである。本実施形態においては、カメラ装置1は顕微鏡である。
【0019】
照明装置2は、計測対象物5の表面の凹凸の全ての面に照明するため、下面に
図2に示すように複数の発光部2A~2Hがリング状に配設されたものである。各発光部2A~2Hには、LED(Light Emitting Diode)等の素子が用いられている。各発光部2A~2Hは、それぞれ独立に点灯、消灯および明るさ調節が可能となっている。
【0020】
計算機3は、本発明の実施の形態における画像計測プログラムを実行することにより、
図3に示す照明パターン生成手段10、撮影手段11、計測用画像生成手段12、全視野画像生成手段13、全視野画像補正手段14、三次元画像生成手段15、三次元画像補正手段16、キャリブレーション手段17、計測結果出力手段18、計測用画像位置調節手段19および記憶手段20として機能するコンピュータである。画像計測プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体により計算機3に読み取られ、実行される。
【0021】
[照明パターン生成手段10]
照明パターン生成手段10は、照明装置2の各発光部2A~2Hの点灯、消灯および明るさ調節により、本実施形態における顕微鏡計測に必要な照明パターン、例えば、
図4~
図7に示すような連続または不連続なリング状の照明パターンを生成するものである。照明パターン生成手段10により生成するデフォルトの照明パターンは、すべての発光部2A~2Hを全点灯する全照明パターンである。
【0022】
なお、計測対象物5の反射が強い場合、デフォルトの全照明パターンではハイライトを生じやすい。また、写真撮影の際、ハイライトのところで画像が飽和しやすく、反射の弱い部分や形状により反射光がイメージセンサ1Aに届きにくい部分では光量不足が生じやすいという問題がある。これらの問題を解決するために、本実施形態においては、
図4~
図7のような照明パターンを使用する。
図4~
図7での各図において、白い部分は点灯、灰色部分は消灯を意味する。
【0023】
図4の例は、(A)~(D)に示すように、照明装置2のリング状に配置された全ての発光部2A~2Hを2つずつ2つおきに順番に点灯、すなわち全体の1/4ずつを順番に点灯する照明パターンである。(A)では発光部2G、2Hを点灯し、発光部2A~2Fを消灯する。(B)では発光部2A,2Bを点灯し、発光部2C~2Hを消灯する。(C)では発光部2C,2Dを点灯し、発光部2A,2B,2E~2Hを消灯する。(D)では発光部2E,2Fを点灯し、発光部2A~2D,2G,2Hを消灯する。
【0024】
図5の例は、(A)~(D)に示すように、全ての発光部2A~2Hを6つずつ2つおきに順番に点灯、すなわち全体の3/4ずつを順番に点灯する照明パターンである。(A)では6つの発光部2A~2Fを点灯し、2つの発光部2G,2Hを消灯する。(B)では6つの発光部2C~2Hを点灯し、2つの発光部2A,2Bを消灯する。(C)では6つの発光部2E~2H,2A,2Bを点灯し、2つの発光部2C,2Dを消灯する。(D)では6つの発光部2A~2D,2G,2Hを点灯し、2つの発光部2E,2Fを消灯する。
【0025】
図6の例は、(A),(B)に示すように、全ての発光部2A~2Hの対向する2つずつを交互に点灯、すなわち全体の対面する1/2の部分を2つずつ点灯する照明パターンである。(A)では対向するそれぞれ2つの発光部2C,2Dと発光部2G,2Hとを点灯し、対向するそれぞれ2つの発光部2A,2Bと発光部2E,2Fとを消灯する。(B)では対向するそれぞれ2つの発光部2A,2Bと発光部2E,2Fとを点灯し、対向するそれぞれ2つの発光部2C,2Dと発光部2G,2Hとを消灯する。
【0026】
図7の例は、(A),(B),・・・,(H)に示すように、全ての発光部2A~2Hを1つずつ順番に点灯、すなわち全体の1/8ずつを順番に点灯する照明パターンである。(A)では1つの発光部2Hを点灯し、残りの発光部2A~2Gを消灯する。(B)では1つの発光部2Aを点灯し、残りの発光部2B~2Hを消灯する。(H)では1つの発光部2Gを点灯し、残りの発光部2H,2A~2Fを消灯する。
【0027】
[撮影手段11]
撮影手段11は、カメラ装置1を用いて計測対象物5に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が深い写真を撮影する。撮影手段11は、可変焦点レンズ1Bの焦点距離をN回変更し、各焦点距離において、照明パターン手段10で生成した照明パターンを用い、一枚もしくはM枚の写真を撮影する。
【0028】
撮影手段11は、まずデフォルトの全照明パターンを用い、計測対象物5の写真を一枚撮影する。撮影手段11は、この写真の色強度分布を解析し、画素のRGB各チャンネルにおける強度分布を計算し、飽和や不足があるかどうかを判断する。撮影手段11は、飽和と不足がほとんどなく、強度変化が大体線形的に分布している状態であれば計測に使えると判断し、この焦点距離での写真撮影がこの一回で完了する。
【0029】
なお、光沢の強い計測対象物5の場合、写真にはハイライトが生じやすい。ハイライトが生じた場合には、全照明パターンで撮影した画像は、色強度の飽和や不足が生じやすく、計測に使いにくくなることが多い。そこで、全照明パターンで撮影した画像が計測に使いにくいと判断された場合には、撮影手段11は、前述の
図4から
図7までの照明パターンを選び、照明パターンを変更しながら写真撮影を行う。
【0030】
撮影手段11は、
図4~
図7のような照明パターンを用いて写真撮影を行う場合、(A)~(H)のそれぞれで1枚ずつ、計M枚の画像を撮影する。すなわち、撮影手段11は、N個の焦点距離において、合計N×M枚の撮影画像を得る。これらのM枚の写真は、異なる方向から照明しているので、計測対象物5の表面のどの部分にも色強度の飽和と不足が生じにくいので、計測に使えることが保証される。すなわち、本実施形態における三次元画像生成システムでは、照明パターン生成手段10により生成した照明パターンと上記撮影手段11の融合により、計測対象物5の写真撮影の際に生じるハイライトや反射不足などの問題を解決することができる。
【0031】
[計測用画像生成手段12]
計測用画像生成手段12は、撮影手段11により各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成する。撮影手段11において各焦点距離(各焦点n)の写真撮影が一回だけの場合、計測用画像生成手段12は、この撮影写真を各焦点距離(各焦点n)の計測用画像とする。計測用画像生成手段12は、各焦点距離でM枚の写真が撮影された場合、ハイライトにより生じた飽和を防ぐために、画像の色強度値が高域限界と呼ばれるある閾値を超えた画素は使用しない。同様に、色強度値の不足を防ぐために、画像の色強度値が低域限界と呼ばれるある閾値を下回った画素は使用しない。
【0032】
すなわち、計測用画像生成手段12は、撮影手段11においてM枚の写真が撮影された場合、それらのM枚の撮影写真において、各画素のRGBチャンネルの色強度値に対し、高域限界以上の値と低域限界以下の値を除いた画素の平均値を取って、各画素の色強度値とする。計測用画像生成手段12は、こうして生成した画像を各焦点nの計測用画像とする。
【0033】
[全視野画像生成手段13]
全視野画像生成手段13は、計測用画像生成手段12により生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する。顕微鏡を用いて計測対象物5の写真を撮影する際、計測表面物Xの奥行き変化がある場合には、異なる焦点距離に対して、焦点が合う部分しか鮮明に撮影できず、焦点が合わない部分はぼやけており鮮明に撮影できない。
【0034】
そこで、全視野画像生成手段13では、計測用画像生成手段12により得られた各焦点距離におけるN枚の計測用画像を用い、各焦点距離の計測画像における一番鮮明に撮影された画素を抽出し、各焦点距離の計測用画像から抽出した鮮明な画素を足し合わせ、各画素が鮮明に撮影された被写界深度が深い全視野画像を生成する。
【0035】
図8は異なる焦点距離画像による全視野画像生成のイメージ図である。全視野画像生成手段13は、
図8に示すような焦点距離が異なる複数の焦点n(図示例では、n=1~5の5つの焦点)の計測用画像から全視野画像を生成する。以下、焦点nで撮影して生成した計測用画像を焦点n画像と称す。例として、焦点1で撮影して生成した計測用画像(焦点1画像)では、鮮明に撮影された画素は灰色で表示された画素だけであり、他の白色で表示された画素は鮮明に撮影されてない。そこで、全視野画像生成手段13は、焦点1画像から灰色で表示された画素だけを抽出し、焦点1鮮明画素とする。
【0036】
焦点2画像では、鮮明に撮影された画素は格子状の模様で表示されている画素だけであり、他の白色で表示された画素は鮮明に撮影されてない。そこで、全視野画像生成手段13は、焦点2画像から格子状模様で表示された画素だけを抽出し、焦点2鮮明画素とする。同様に、残りの焦点3~5の鮮明画素を抽出する。全視野画像生成手段13は、すべての焦点1~5の画像から抽出した焦点1~5の鮮明画素を足し合わせ、全視野画像、すなわちすべての焦点距離にピントが合い、鮮明に撮影されたような全焦点画像を生成する。
【0037】
次に、各焦点距離の計測用画像から、鮮明に撮影された画素を抽出する方法について説明する。各焦点距離の計測用画像では、焦点に合う部分の画素が鮮明に撮影され、焦点が合わない部分の画素がぼやけており、鮮明に撮影されていない。鮮明に撮影されている画素は、周辺の画素との差が、鮮明に撮影されてない部分より大きいので、この特徴により鮮明に撮影されている画素を抽出する。全視野画像生成手段13は、まず、各焦点距離の計測用画像の特徴点を抽出し、特徴強度を0%~100%に正規化し、N枚の特徴強度画像とする。次に、各画素に対し、N枚の特徴強度画像から特徴強度の一番強い画像(焦点距離kである画像)の色強度値を選び、鮮明に撮影された画素の候補とする。
【0038】
図9は各焦点距離の計測用画像から鮮明に撮影された画素を抽出するイメージ図である。この例では、N=5、すなわち焦点距離の異なる5枚の計測用画像があるとする。
図9は、上からそれぞれ焦点1の計測用画像である焦点1画像から焦点5の計測用画像である焦点5画像までの各画像のあるy座標(例えば、y1)におけるx座標方向の正規化した特徴強度の分布を表している。x座標(x1)においては、焦点3画像の特徴強度の値が一番大きいので、焦点3画像のx座標(x1)にある画素は鮮明に撮影された画素として抽出し、焦点3画像の座標(x1,y1)の画素の色強度値を全焦点画像の画像座標(x1,y1)の色強度値とする。
【0039】
同様に、x座標(x2)においては、焦点4画像の特徴強度の値が一番大きいので、焦点4画像のx座標(x2)にある画素は鮮明に撮影された画素として抽出し、焦点4画像の座標(x2,y1)の画素の色強度値を全焦点画像の画像座標(x2,y1)の色強度値とする。同様に、画像座標(x3,y1)は焦点1画像の座標(x3,y1)の色強度値、画像座標(x4,y1)は焦点2画像の座標(x4,y1)の色強度値、画像座標(x5,y1)は焦点5画像の色強度値をそれぞれ用いる。
【0040】
全視野画像生成手段13は、このような処理により、すべての画素の色強度値をそれぞれの焦点距離の計測用画像から取得することができ、これらの取得した画素を足し合わせると、一枚の全視野画像、すなわちすべての焦点距離にピントが合い、すべての画素が鮮明に撮影されたような全焦点画像を生成することができる。
【0041】
[全視野画像補正手段14]
上記全視野画像生成手段13により生成した全視野画像には、各焦点距離の計測用画像から抽出した鮮明に撮影された画素の不連続性や誤抽出などにより生じた全視野画像合成誤差がある。このような合成誤差を軽減するために、その合成誤差を生じている該当画素の色強度を補正することが望ましい。そこで、本実施形態においては、全視野画像生成手段13により生成した全視野画像における画素に何らかの原因で欠損や異常が生じた場合、全視野画像補正手段14によって、該当画素の周囲の画素の色強度値を用い、該当画素の色強度値を補正することにより、全視野画像生成手段13により生成された全視野画像の画素の不連続や欠損などの不自然な部分を滑らかにする。
【0042】
図10は全視野画像補正のイメージ図である。
図10に示す例では、全視野画像生成手段13により生成した全視野画像に何等かの原因により、3行2列の画素のところに欠損が存在し、画像の色強度が真っ黒になっている。各焦点距離の画像においても、真っ黒の画素はないので、この真っ黒の画素が欠損画素であることが分かる。全視野画像生成手段13は、画素の色強度変化の連続性から、この画素の周りの8画素、すなわち左上、真上、右上、左、右、左下、真下および右下の画素の値を用い、この真っ黒の画素の色強度値を算出して補正する。
【0043】
[三次元画像生成手段15]
三次元画像生成手段15は、計測対象物5の表面の形状や三次元世界座標が分かる三次元画像を生成する。三次元画像生成手段15は、計測対象物5の表面の計測点と撮影された画像におけるこの計測点に対応する画素の二次元座標との射影関係と、各画素が鮮明に撮影されたときの焦点距離と、この鮮明に撮影された各画素に対応する計測対象物5の表面の計測点の奥行き距離値との対応関係に基づき、全視野画像の各画素に対応する計測点の三次元世界座標を計算し、計測対象物の表面形状の三次元画像を生成する。三次元画像における各画素に対応する計測点の三次元世界座標を求めるために、下記(式1)の数学モデルを用いる。
【0044】
【0045】
ここで、(X,Y,Z)は計測される計測対象物5の表面の計測点の三次元世界座標、(x,y)は該当計測点の全視野画像における画像座標、(X0,Y0,Z0)は該当計測点の三次元世界座標の初期値、fは該当画素の写真撮影時の焦点距離、kx,ky,kfはレンズの焦点距離や計測用画像の画像座標と計測点の三次元世界座標との対応関係を示す係数である。
【0046】
なお、(X0,Y0,Z0)は、カメラ装置1の固有パラメータである。この固有パラメータは、三次元画像の生成過程において変化しないので、事前のキャリブレーションにより求めることができる。キャリブレーションの一例としては、チェスボートなどの模様を印刷した紙をカメラ装置1の可変焦点レンズ1Bの下に置いて撮影し、撮影画像の中心位置とチェスボードなどの模様の中心位置との対応関係よりX0とY0の値を決める。また、チェスボードなどの模様を印刷した紙の印刷面とカメラ装置1の可変焦点レンズ1Bの中心との間の距離値は、該当画像を撮影する際の焦点距離に対応するZ0の値(奥行きの基準値)とする。
【0047】
kx,ky,kfは、カメラ装置1の可変焦点レンズ1Bの固有パラメータである。この固有パラメータも三次元画像の生成過程において変化しないので、事前のキャリブレーションにより決められる。kx,kyは、上記X0,Y0を求めた際の撮影方法を用い、撮影画像におけるチェスボードの大きさと実際のチェスボードの寸法との対応関係により求める。kfは、カメラ装置1の可変焦点レンズ1Bの焦点距離と計測対象物5の奥行き変化、すなわち高さの変化との比例関係を示すものである。高さが既知のサンプルに対し、異なる焦点距離において撮影を行い、焦点が合う画素の撮影時の焦点距離と高さとの関係に基づき、それぞれの焦点距離fに対応するkfを求める。
【0048】
次に、全視野画像から三次元画像を生成する方法について説明する。全視野画像における計測点の画素座標を(x,y)とし、算出された三次元世界座標を(X,Y,Z)とする。全視野画像において、該当画素(x,y)がどの焦点距離での計測用画像を用いたものであるかを調べ、その計測用画像を撮影したときの焦点距離をfとする。この(x,y)とfの値を式1に代入し、該当画素の三次元世界座標(X,Y,Z)を求める。これにより、撮影した画像の画像座標(x,y)と撮影時の焦点距離fの値とから、簡単に計測対象物5の表面の三次元世界座標(X,Y,Z)を算出することができる。
【0049】
[三次元画像補正手段16]
三次元画像補正手段16は、三次元画像生成手段15により生成した三次元画像の座標値が異常な部分を補正する。前述のような全視野画像における画素の不連続や誤抽出などの欠損は、三次元画像を生成する際にも生じる。このような欠損の補正は、全視野画像補正と類似する手法を用いる。すなわち、三次元画像補正手段16は、三次元世界座標の異変がある画素を除外し、周囲の画素の三次元世界座標を用い、その異変がある画素の三次元画像を補正する。例えば、三次元画像補正手段16は、注目欠損画素の周囲の8近傍の画素の奥行き距離値を用い、その注目欠損画素の奥行き距離値を補正する。
【0050】
[キャリブレーション手段17]
キャリブレーション手段17は、画像計測精度を向上するために、カメラ装置1のキャリブレーションを行う。ここでいうキャリブレーションは、主に(式1)におけるkx,ky,kf およびX0,Y0,Z0の値を求めることである。
【0051】
[計測結果出力手段18]
計測結果出力手段18は、生成された全視野画像や三次元画像を、画像形式やCG形式などのファイル形式で出力する。計測結果出力手段18により出力されるファイルは、本実施形態における画像計測プログラムはもちろん、市販のソフトウエアやフリーソフトウエアなどでも閲覧可能である。
【0052】
[計測用画像位置調節手段19]
カメラ装置1の性能にもよるが、異なる焦点距離での撮影画像における対象物のサイズや位置が微妙に変化することがある。このサイズや位置の微妙な変化は画像計測の精度に影響する。計測用画像位置調節手段19では、画像計測の精度を向上させるために、各焦点距離での撮影画像にアフィン変換処理を加え、各焦点距離の計測用画像の微小な位置ずれを、微小な拡大、縮小、回転、平行移動の処理を行い調節する。調節は下記の数式を用いる。
【0053】
【0054】
ここで、(x,y)は各焦点距離における撮影画像の画素座標、(x’,y’)は調節後の画素座標、a,b,c,d,tx,tyは位置調節用パラメータである。
【0055】
まず、前述のキャリブレーションの際に奥行きの基準値Z0を取得するときに使用された焦点距離で撮影した計測用画像を調節基準画像とする。この調節基準画像より複数個の特徴点を抽出し、基準特徴点とする。次に、各焦点距離の計測用画像からもそれぞれ複数個の特徴点を抽出し、これらの特徴点と調節基準画像から抽出した基準特徴点との間の空間距離を最小にするように、式2の位置調節用パラメータa,b,c,d,tx,tyを逆算する。最後に、逆算された位置調節用パラメータを用い、式2により、各焦点距離の計測用画像の位置を微調節し、計測対象物の寸法が均一である調節後計測用画像を求める。この調節後計測用画像を用い、三次元画像を求める。
【0056】
もし各焦点距離の計測用画像における計測対象物のサイズや位置の変化が、ある閾値以内であれば、この計測用画像位置調節手段19を省略することが可能である。また、この計測用画像位置調節手段19は前述の全視野画像生成にも使用可能である。
【0057】
[記憶手段20]
記憶手段20は、主に計算機1の内蔵メモリや、SSD(ソリッドステートドライブ)やHDD(ハードディスクドライブ)などのデータ保存装置により構成される。
図3に示すように、記憶手段20は、主に照明パターン生成手段10、撮影手段11、計測用画像生成手段12、全視野画像生成手段13、全視野画像補正手段14、三次元画像生成手段15、三次元画像補正手段16、キャリブレーション手段17、計測結果出力手段18および計測用画像位置調節手段19により、照明装置2とカメラ装置1の制御、カメラ装置1により撮影画像の取り込みと画像処理、処理結果の保存と出力、カメラ装置1のキャリブレーションなどに利用される。
【0058】
図11は
図1の三次元画像生成システムによる計測の流れを示すフロー図である。計測にはまず計測対象物5をカメラ装置1の可変焦点レンズ1Bの下に設置する(S100)。続いて、撮影手段11はカメラ装置1によりテスト撮影を行い、計測対象物5の反射特性を調べ、計測のために焦点距離が異なる各焦点nにおいてデフォルトの全照明の状態で一枚の写真撮影で十分かどうかを判断する。一枚の全照明画像が十分でない場合は、必要な照明パターンと必要な撮影枚数Mを決定する(S101)。
【0059】
次に、撮影手段11は可変焦点レンズ1Bの焦点距離を調節し、各焦点距離nでの撮影を準備する(S102)。撮影手段11は各焦点距離nにおいてデフォルトの全照明パターンで一枚の写真を撮影するか照明パターンを変更しながらM枚の画像を撮影する(S103)。カメラ装置1は撮影した一枚もしくはM枚の写真を計算機3に送信し(S104)、計算機3は計測用画像生成手段12により各焦点nの計測用画像を生成する(S105)。
【0060】
その後、計測に必要な全ての焦点距離での撮影が終わったかどうかを調べ(S106)、終わっていない場合は、可変焦点レンズ1Bの焦点距離を調節することにより撮影のための焦点nを更新し(S107)、新たな写真撮影を準備する(S102)。必要な写真撮影が全部終わった場合、全視野画像生成手段13により計N枚の各焦点距離の被写界深度が浅い計測用画像に基づき、被写界深度が深い全視野画像を生成する(S108)。また、全視野画像を生成する際に、画素の欠損などの問題が生じる可能性があるため、必要に応じて全視野画像補正手段14により全視野画像を補正する(S109)。
【0061】
また、計算機3は、三次元画像生成手段15により、各焦点距離で撮影した写真の各画素の鮮明度と撮影時の焦点距離との対応関係より、各画素の三次元世界座標における奥行き距離値を算出し、三次元画像を生成する(S110)。なお、前述の全視野画像補正と同じ理由により、必要に応じて三次元画像補正手段16により三次元画像を補正する(S111)。最後に、計測結果を画像方式やテキスト方式などの方式で出力する(S112)。
【0062】
図12は
図11のステップS101の照明パターンと撮影枚数Mを決定する処理の詳細を示すフロー図である。まず、デフォルトの全照明パターンを生成し、計測対象物5を照明する(S200)。このデフォルト照明において写真撮影し(S201)、カメラ装置1から計算機3に画像を送信する(S202)。計算機では、このデフォルト照明写真を解析し、計測に適した画像かどうかを判断する(S203)。
【0063】
このとき、ハイライトや照明不足なところが存在せず、計測に適した画像であると判断されれば、計測用の照明パターンをデフォルトの全照明パターンとし、各焦点距離での計測に必要な撮影回数を1回とする(S205)。当該画像にハイライトや照明不足なところが存在する場合は、この画像が計測に適してないと判断し、照明パターンを更新し(S203)、異なる方向と異なる明るさの照明環境での画像を複数枚撮影し、一枚の計測に適した画像を生成する。これらの照明パターンを計測に必要な照明パターンとし、撮影回数は各焦点距離での計測に必要な撮影回数Mとする(S205)。
【0064】
図13は
図11のステップS110の三次元画像生成の詳細を示すフロー図である。まず、
図11のステップS108とステップS109より生成された全視野画像を左上から右下へ画素ごとに走査し(S300)、該当画素を撮影する際に使っている焦点距離fを特定する(S301)。次に、事前のキャリブレーション(S305)により求められたカメラ装置1のパラメータと焦点距離fを用い、式1により該当画素の三次元世界座標を算出する(S302)。
【0065】
その後、全視野画像のすべての画素について上記の処理を行ったかどうか、すなわち走査が完了したかどうかを判定し(S303)、走査完了の場合は、上記の処理で算出された各画素の三次元世界座標を合わせて三次元画像を生成する(S304)。走査が完了してない場合は、ステップS300の処理に戻り、走査が完了するまで、ステップS300、ステップS301およびステップS302の処理を繰り返し行う。
【0066】
図14は
図1の三次元画像生成システムにおいて計測用画像位置補正処理を行う場合の計測の流れを示すフロー図である。
図11のフロー図との違いは、ステップS106の撮影終了の後、ステップS108の全視野画像生成の前に、計測用画像調節処理(S408、S409、S410)を入れたものである。
【0067】
具体的には、ステップS106の撮影終了の後、まず各計測用画像の特徴点と標準画像の特徴点との位置ズレを求め(S408)、各画像の位置調節の必要性を判定する(S409)。位置調節が必要と判定された場合、各計測用画像に対し、式2の手法を用いて拡大縮小・回転・平行移動の処理を行い、位置を調節する(S410)。その後、全視野画像生成の処理(S108)を行う。位置調節の必要性がない場合、計測画像位置調節の処理(S410)を行わず、全視野画像生成の処理(S108)を行う。
【0068】
図15は本実施形態における三次元画像生成システムによる全視野画像および三次元画像の生成例を示す図である。計測対象物は同図(A)に示すネジの先端部分であり、計測範囲は横幅2mm程度である。
【0069】
図15(B)~(D)は計測用画像生成手段12により生成された3つの異なる焦点距離画像であり、(B)は背景が鮮明に撮影された画像、(C)は中央部分が鮮明に撮影された画像、(D)は前景が鮮明に撮影された画像である。
図15(E)は、これらの3つの異なる焦点距離画像から全視野画像生成手段13により生成された全視野画像である。
図15(F)は三次元画像生成手段15により生成された三次元画像である。
【0070】
以上のように、本実施形態における三次元画像生成システムでは、イメージセンサ1Aおよび可変焦点レンズ1Bを有するカメラ装置1を用いて計測対象物5に対して複数の異なる焦点距離にピントを合わせ、各焦点距離において一枚もしくは複数枚の被写界深度が浅い写真を撮影し、各焦点距離で撮影された一枚もしくは複数枚の写真から各焦点距離の計測用画像を生成し、生成された各焦点距離の計測用画像に基づき撮影された領域のすべての焦点距離にピントが合う被写界深度が深い全視野画像を生成する構成により、低廉なイメージセンサおよび可変焦点レンズを用いて被写界深度が深い全視野画像を得ることが可能となる。例えば、本実施形態における三次元画像生成システムは、カメラ装置1として廉価なハンディ型などの小型顕微鏡を用い、照明装置2として廉価なLED照明を用いることができ、体積が小さく、重量が軽い、現場での使用も容易なシステムを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の三次元画像生成システム、三次元画像生成方法、三次元画像生成プログラムおよび記録媒体は、ハンディ型などの小型顕微鏡をカメラ装置として使用して、電化製品、ICT機器、文物や工業製品などの表面の高精度な品質検査や欠損検査に適用できる。具体的な応用例としては、自動車の車体やタイヤのキズ、ヘコミ、塗装ムラや亀裂などの損傷検査、大型計測物の一部の精密検査、印刷基盤などの生産ラインにおける品質検査、スマートフォンの表面の微小キズのサイズと深さの検査、頭皮や皮膚などの精密検査、骨董などの鑑定、名画解析などに応用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 カメラ装置
1A イメージセンサ
1B 可変焦点レンズ
2 照明装置
3 計算機
4 通信ケーブル
5 計測対象物
10 照明パターン生成手段
11 撮影手段
12 計測用画像生成手段
13 全視野画像生成手段
14 全視野画像補正手段
15 三次元画像生成手段
16 三次元画像補正手段
17 キャリブレーション手段
18 計測結果出力手段
19 計測用画像位置調節手段
20 記憶手段