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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061244
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】燃焼装置用窓ガラス及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/06 20060101AFI20220411BHJP
   F24C 15/18 20060101ALI20220411BHJP
   F24H 9/02 20060101ALI20220411BHJP
   C03B 13/08 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
F24C15/06 D
F24C15/18 H
F24H9/02 302Z
C03B13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169133
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土谷 武史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕二
(72)【発明者】
【氏名】花本 圭史
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚平
【テーマコード(参考)】
3L037
【Fターム(参考)】
3L037BA12
(57)【要約】
【課題】燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、外部からの炎の形状を視認しにくくして燃焼装置の美観性を向上させることができる、燃焼装置用窓ガラスを提供する。
【解決手段】燃焼装置に用いられる窓ガラス1であって、ガラス基板2を備え、ガラス基板2の一方側主面2aが、燃焼装置外部から窓ガラス1を視たときに燃焼装置内部の炎の形状を視認し難くするための凹凸形状を有する、燃焼装置用窓ガラス1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置に用いられる窓ガラスであって、
ガラス基板を備え、
前記ガラス基板の一方側主面が、前記燃焼装置外部から前記窓ガラスを視たときに前記燃焼装置内部の炎の形状を視認し難くするための凹凸形状を有する、燃焼装置用窓ガラス。
【請求項2】
前記凹凸形状における凸部頂点における平均高さが、0.05mm以上、1.5mm以下である、請求項1に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項3】
JIS K7136(2000)に準拠して測定したヘイズが、65%以上である、請求項1又は2に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項4】
前記凹凸形状が、畝状の形状又は複数の半球面状の凸部により構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項5】
前記畝状の形状又は前記複数の半球面状の凸部において、凸部の頂点間におけるピッチが、0.1mm以上、8mm以下であり、凸部頂点における平均高さが、0.05mm以上、1.5mm以下である、請求項4に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項6】
前記凹凸形状が、霞模様により構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項7】
前記ガラス基板の他方側主面が、凹凸形状を有していない、請求項1~6のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項8】
前記ガラス基板の他方側主面上に設けられている、遮光層をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項9】
前記ガラス基板が、透明結晶化ガラスにより構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項10】
前記ガラス基板が、曲面形状を有するガラスである、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項11】
前記ガラス基板が、固形燃料を使用する燃焼装置に用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の燃焼装置用窓ガラスを備える、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーブや暖炉等の燃焼装置に用いられる窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房効果のある燃焼装置として、薪、ガス、石炭、石油等を燃焼させるストーブや暖炉が使用されている。このような燃焼装置には、火炎の様子を外部から視認できるように窓ガラスが備え付けられている。燃焼装置用窓ガラスとしては、可視光に対して透明であるとともに、高い耐熱衝撃性も備える必要があることから、一般に低膨張の透明結晶化ガラス板が用いられている。例えば、下記の特許文献1では、燃焼装置用の窓ガラスとして、SiO-Al-LiO系透明結晶化ガラスが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-003140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温暖化対策の観点から、間伐材や非化石燃料の利用が進められており、ストーブなどの燃焼装置の燃料としても、薪に代えて、木くず、おがくず、あるいは樹皮などを圧縮して固めたペレットが用いられる傾向にある。
【0005】
しかしながら、ペレットを燃料とした炎の形状は、薪ストーブのそれがゆらめく炎となるのに対して、ゆらめく炎とはならず、自然な暖かみが感じにくいという問題がある。特に、特許文献1のような燃焼装置用窓ガラスは、可視光に対して透明であることから、外部から炎が視認され易く、燃焼装置の美観性が損なわれるという問題がある。一方、炎の形状を見え難くすることを目的として、燃焼装置用窓ガラスの表面をコーティングしたり、材料そのものに着色されたガラスを用いたりした場合は、コスト面やデザイン面から好ましくないという問題がある。また、燃焼装置用窓ガラスの透過率を下げすぎると、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することが難しく、利便性が損なわれるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、外部からの炎の形状を視認しにくくして燃焼装置の美観性を向上させることができる、燃焼装置用窓ガラス及び該燃焼装置用窓ガラスを用いた燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃焼装置用窓ガラスは、燃焼装置に用いられる窓ガラスであって、ガラス基板を備え、前記ガラス基板の一方側主面が、前記燃焼装置外部から前記窓ガラスを視たときに前記燃焼装置内部の炎の形状を視認し難くするための凹凸形状を有することを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記凹凸形状における凸部頂点における平均高さが、0.05mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、JIS K7136(2000)に準拠して測定したヘイズが、65%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記凹凸形状が、畝状の形状又は複数の半球面状の凸部により構成されていることが好ましい。前記畝状の形状又は前記複数の半球面状の凸部において、凸部の頂点間におけるピッチが、0.1mm以上、8mm以下であり、凸部頂点における平均高さが、0.05mm以上、1.5mm以下であることがより好ましい。
【0011】
本発明においては、前記凹凸形状が、霞模様により構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記ガラス基板の他方側主面が、凹凸形状を有していないことが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記ガラス基板の他方側主面上に設けられている、遮光層をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明においては、前記ガラス基板が、透明結晶化ガラスにより構成されていることが好ましい。
【0015】
本発明においては、前記ガラス基板が、曲面形状を有するガラスであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記ガラス基板が、固形燃料を使用する燃焼装置に用いられることが好ましい。
【0017】
本発明に係る燃焼装置は、本発明に従って構成される燃焼装置用窓ガラスを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、外部からの炎の形状を視認しにくくして燃焼装置の美観性を向上させることができる、燃焼装置用窓ガラス及び該燃焼装置用窓ガラスを用いた燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスを示す模式的斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿う部分の模式的断面図であり、図1(c)は、図1(b)の一部を拡大した模式的断面図である。
図2図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスの第1の変形例を示す模式的斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のB-B線に沿う部分の模式的断面図である。
図3図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスの第2の変形例を示す模式的斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のC-C線に沿う部分の模式的断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスを示す模式的斜視図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る燃焼装置を示す模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0021】
[燃焼装置用窓ガラス]
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスを示す模式的斜視図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿う部分の模式的断面図である。また、図1(c)は、図1(b)の一部を拡大した模式的断面図である。
【0022】
図1(a)及び(b)に示すように、燃焼装置用窓ガラス1は、ガラス基板2を備える。また、本実施形態において、燃焼装置用窓ガラス1は、矩形板状の形状を有する。もっとも、本発明において、燃焼装置用窓ガラス1の形状は、特に限定されない。
【0023】
ガラス基板2は、対向している第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。第1の主面2aは、燃焼装置に取り付ける際に、燃焼装置の外側に設けられる主面である。また、第2の主面2bは、燃焼装置に取り付ける際に、燃焼装置の内側に設けられる主面である。
【0024】
ガラス基板2の第1の主面2aは、燃焼装置外部から窓ガラス1を視たときに燃焼装置内部の炎の形状を視認し難くするための凹凸形状を有する。本実施形態においては、第1の主面2aの凹凸形状が、畝状の形状により構成されている。
【0025】
従来、ペレットを燃料とした炎の形状は、薪ストーブのそれがゆらめく炎となるのに対して、ゆらめく炎とはならず、自然な暖かみが感じにくいという問題があった。特に、燃焼装置用窓ガラスは、可視光に対して透明であることから、燃焼装置用窓ガラスを通して炎が視認され易く、燃焼装置の美観性が損なわれるという問題があった。一方、炎の形状を見え難くすることを目的として、燃焼装置用窓ガラスの表面をコーティングしたり、材料そのものに着色されたガラスを用いたりした場合は、コスト面やデザイン面から好ましくないという問題があった。また、燃焼装置用窓ガラスの透過率を下げすぎると、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することが難しく、利便性が損なわれるという問題もあった。
【0026】
本発明者らは、燃焼装置用窓ガラス1を構成するガラス基板2において、燃焼装置に取り付ける際に、燃焼装置の外側に設けられる、第1の主面2aの形状に着目し、第1の主面2aの形状を凹凸形状とすることにより、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状を見え難くできることを見出した。
【0027】
従って、本実施形態の燃焼装置用窓ガラス1によれば、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、ペレットを燃料とした場合においても燃焼装置の美観性を向上させることができる。
【0028】
なお、凹凸形状における凸部頂点における平均高さは、0.05mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。凹凸形状における凸部頂点における平均高さが上記範囲にある場合、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。
【0029】
本発明において、燃焼装置用窓ガラス1のヘイズは、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。燃焼装置用窓ガラス1のヘイズが上記範囲内にある場合、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。燃焼装置用窓ガラス1のヘイズは、例えば、JIS K7136(2000)に準拠して測定することができる。
【0030】
なお、第1の主面2aの凹凸形状が、畝状の形状又は複数の半球面状の凸部により構成されていると、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。特に、本実施形態のように、第1の主面2aの凹凸形状が、畝状の形状により構成されている場合は、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。
【0031】
畝状の形状又は複数の半球面状の凸部において、凸部の頂点間におけるピッチは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。凸部の頂点間におけるピッチが上記範囲内にある場合、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。
【0032】
畝状の形状又は複数の半球面状の凸部において、凸部の頂点における平均高さは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下である。凸部の頂点における平均高さが上記範囲内にある場合、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。
【0033】
なお、凸部の頂点間におけるピッチは、隣り合う凸部の頂点間の間隔Lを任意で10箇所測定したときの平均値である。また、凸部の頂点における平均高さは、凸部の高さHを任意で10箇所測定したときの平均値である。凸部の頂点間の間隔L及び凸部の高さHは、例えば、ノギスや表面形状測定器(サーフコム)を用いて測定することができる。
【0034】
本発明において、ガラス基板2の第1の主面2aにおける算術平均粗さRaは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。ガラス基板2の第1の主面2aにおける算術平均粗さRaが上記範囲内にある場合、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状をより一層見え難くすることができる。
【0035】
また、第1の主面2aの凹凸形状は、畝状の形状や複数の半球面状の凸部により構成されている形状でなくてもよく、霞模様により構成されていてもよい。その場合であっても上記の効果を得ることができる。
【0036】
また、ガラス基板2の第2の主面2bは、凹凸形状を有しておらず、平滑であることが好ましい。この場合、ガラス基板2の第2の主面2bに、後述するような遮光層を形成するときに、より均一な層を形成することができる。
【0037】
ガラス基板2の第2の主面2bにおける算術平均粗さRaは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。ガラス基板2の第2の主面2bにおける算術平均粗さRaが上記範囲内にある場合、ガラス基板2の第2の主面2bに、後述するような遮光層を形成するときに、より均一な層を形成することができる。
【0038】
なお、算術平均粗さRaは、JIS B 0601:2013に準拠して測定することができる。
【0039】
本発明において、ガラス基板2は、透明結晶化ガラス板であることが好ましい。なかでも、ガラス基板2は、SiO-Al-LiO系透明結晶化ガラス板であることが好ましい。この場合、可視光に対する透明性をより一層高めつつ、耐熱衝撃性をより一層高めることができる。
【0040】
ガラス基板2は、30℃~750℃の温度範囲において、-10×10-7/℃~+30×10-7/℃の熱膨張係数を有することが好ましく、-10×10-7/℃~+20×10-7/℃の熱膨張係数を有することがより好ましい。ガラス基板2の熱膨張係数が上記範囲内である場合、加熱と冷却が繰り返されたときに、クラックが発生することをより一層抑制することができる。
【0041】
上記のような熱膨張係数を有する結晶化ガラスとしては、質量%で、SiO 50%~75%、Al 10%~30%、MgO 0%~8%、BaO 0%~8%、ZnO 0%~10%、LiO 1%~7%、NaO 0%~7%、KO 0%~7%、TiO 1%~5%、TiO+ZrO 1%~10%、P 0%~10%、及び清澄剤0.1%~3%を含有し、内部にβ-石英固溶体結晶を析出してなる結晶化ガラスが挙げられる。
【0042】
なかでも、質量%で、SiO 55%~70%、Al 15%~25%、MgO 0%~5%、BaO 0%~5%、ZnO 0%~5%、LiO 3%~5%、NaO 0%~2%、KO 0%~2%、TiO 1.3%~3%、TiO+ZrO 2%~6%、P 0%~5%、及び清澄剤0.1%~2%を含有することが好ましい。
【0043】
なお、上記清澄剤としては、As、Sb、SnO、及びClを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0044】
また、ガラス基板2として、質量%で、SiO 60%~70%、Al 14%~28%、MgO 0.1%~2%、CaO 0%~2%、BaO 0%~3%、ZnO 0.1%~3%、LiO 2.5%~5.5%、NaO 0.1%~2%、KO 0%~1%、TiO 0%~6%、ZrO 0%~3%及びV 0.03%~0.5%の組成を含有し、β-石英固溶体結晶を析出してなり、外観が黒色を呈する着色結晶化ガラスを用いてもよい。
【0045】
本発明において、ガラス基板2の厚みは、特に限定されないが、例えば、2mm以上、8mm以下とすることができる。
【0046】
(製造方法)
以下、燃焼装置用窓ガラス1の製造方法の一例について説明する。
【0047】
燃焼装置用窓ガラス1を構成するガラス基板2は、例えば、公知の組成を含有するガラス原料を溶融して得られたガラス生地を、ロール成型によりロールアウトすることにより得ることができる。
【0048】
ガラス原料を溶融する際の溶融温度は、例えば、1500℃以上、1800℃以下とすることができる。
【0049】
ガラス基板2の第1の主面2aにおける畝状、半球面及び霞模様の形状は、ロール成型時に使用される成型ロールに、畝状、半球面及び霞模様の形状に対応する形状を有するロールを用いることで形成することができる。具体的には、成型ロールに加工成型した畝状、半球面及び霞模様の凹凸形状に対応する形状をガラス生地に転写することで形成することができる。
【0050】
他方、凹凸を有さない平滑な成型ロールを用いることで、凹凸を有さないガラス基板2の第2の主面2bを形成することができる。
【0051】
成型後、熱処理を行うことにより、結晶化されたガラス基板2を得て、燃焼装置用窓ガラス1を製造することができる。
【0052】
熱処理の温度は、例えば、800℃以上、920℃以下とすることができる。また、熱処理の時間は、例えば、30分以上、3時間以下とすることができる。
【0053】
(変形例)
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスの第1の変形例を示す模式的斜視図である。また、図2(b)は、図2(a)のB-B線に沿う部分の模式的断面図である。
【0054】
図2(a)及び(b)に示すように、燃焼装置用窓ガラス21では、ガラス基板2が曲げガラスである。このようなガラス基板2は、第1の実施形態で成形して得られた結晶化前の前駆体ガラスを、例えば、加熱により曲げ加工して結晶化することにより得ることができる。なお、曲げ加工する際の加熱温度は、例えば、700℃以上、800℃以下とすることができる。また、加熱時間は、1分以上、120分以下とすることができる。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0055】
第1の変形例のように、燃焼装置用窓ガラス21は、意匠性、実用性等を考慮して、曲面形状を有していてもよい。また、屈曲形状等の非平面形状を有していてもよい。
【0056】
第1の変形例においても、第1の主面2aの形状を凹凸形状とすることにより、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、燃焼装置の外観を向上させることができる。
【0057】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスの第2の変形例を示す模式的斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のC-C線に沿う部分の模式的断面図である。
【0058】
図3(a)及び(b)に示すように、燃焼装置用窓ガラス31では、ガラス基板2の第2の主面2b上に、遮光層3が設けられている。もっとも、ガラス基板2の第2の主面2bの一部には、火炎の様子を外部から視認できるように窓部4が設けられており、窓部4には、遮光層3が設けられていない。
【0059】
遮光層3は、燃焼装置用窓ガラス31を固定する際に用いる接着剤やガスケットなどの固定部材が配置される部分に設けられている。従って、遮光層3により、接着剤やガスケットなどの固定部材を隠蔽することができる。なお、遮光層3は、接着剤やガスケットなどの固定部材を隠蔽できる限りにおいて、その設けられる位置や寸法は特に限定されない。
【0060】
本発明において、遮光層3は、ガラス粉末及び無機顔料粉末を含有することが好ましい。
【0061】
ガラス粉末としては、例えば、B-SiO系ガラス、NaO-CaO-SiO系ガラス、LiO-Al-SiO系ガラス、ZnO-Al-P系ガラス等を用いることができる。
【0062】
遮光層3中におけるガラス粉末の含有量は、特に限定されず、好ましくは50質量%~70質量%であり、より好ましくは50質量%~60質量%である。ガラス粉末の含有量が少なすぎると、遮光層3が多孔質になるため、水分や接着剤等が付着した際にシミが発生し易くなる。また、ガラス粉末の含有量が多すぎると、遮光層3を形成する際に熱処理を施した後に、あるいは燃焼装置用窓ガラス31としての使用において加熱と冷却が繰り返された際に、遮光層3においてクラックが発生し易くなる。また、十分な遮光性が得られ難くなる。
【0063】
無機顔料粉末としては、例えば、Cr-Fe-Co-Ni系、Cu-Cr系、Cu-Cr-Fe系、Cu-Cr-Mn系等の酸化物黒色顔料;TiO、ZrO、ZrSiO等の酸化物白色顔料;Co-Al-Zn系、Co-Al-Si系、Co-Al-Ti系等の酸化物青色顔料;Co-Al-Cr系、Co-Ni-Ti-Zn系等の酸化物緑色顔料;Ti-Sb-Cr系、Ti-Ni系等の酸化物黄色顔料;Co-Si系等の酸化物赤色顔料;Ti-Fe-Zn系、Fe-Zn系、Fe-Ni-Cr系、Zn-Fe-Cr-Al系等の酸化物茶色顔料等が挙げられる。なかでも、無機顔料粉末は、Cr-Fe-Co-Ni系の黒色顔料であることが好ましい。この場合、燃焼装置用窓ガラス31の製造工程において、高温で熱処理を行った際に生じる劣化や変色をより一層抑制することができる。
【0064】
無機顔料粉末の平均粒子径(D50)は、好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。これにより、遮光層3における無機顔料粉末の充填率をより一層高めることができ、遮光性のより一層の向上を図ることができる。無機顔料粉末の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。なお、無機顔料粉末の平均粒子径が小さすぎると、取扱いが困難になる、製造コストが上昇する、凝集しやすくなる等の不具合が発生し易くなる。
【0065】
遮光層3中における無機顔料粉末の含有量は、特に限定されず、好ましくは30質量%~50質量%であり、より好ましくは40質量%~50質量%である。無機顔料粉末の含有量が少なすぎると、遮光層3を形成する際に熱処理を施した後に、あるいは燃焼装置用窓ガラス31としての使用において加熱と冷却が繰り返された際に、遮光層3においてクラックが発生し易くなる。また、十分な遮光性が得られ難くなる。また、無機顔料粉末の含有量が多すぎると、遮光層3が多孔質になるため、水分や接着剤等が付着した際にシミが発生し易くなる。
【0066】
遮光層3の厚みは、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは2μm~5μmである。遮光層3の厚みが薄すぎると、遮光性が不十分になる傾向がある。一方、遮光層3の厚みが厚すぎると、製造工程又は燃焼装置使用時にクラックが発生し易くなる。また、クラックの発生により、シミが発生し易くなる。
【0067】
遮光層3を形成するに際しては、上述したロールアウトにより得られた結晶化前の前駆体ガラスを用意する。一方で、ガラス粉末と無機顔料粉末とを混合し、有機溶剤等を添加してペースト化する。得られたペーストは、上述のようにして用意した前駆体ガラスに、例えば、スクリーン印刷や転写の方法で印刷し、乾燥させた後、焼成する。それによって、遮光層3を形成することができる。
【0068】
焼成は、例えば電気炉で行われる。焼成条件は、ガラス粉末及び無機顔料粉末が十分に焼結するように、適宜調整すればよい。例えば、焼成温度は200℃~1000℃とすることができ、特に250℃~900℃とすることが好ましい。焼成時間は、例えば、10分~1時間とすることができ、特に30分~1時間であることが好ましい。
【0069】
遮光層3を形成した後、熱処理を行うことにより、曲げ加工を行い前駆体ガラスを作製し、前駆体ガラスを結晶化させることにより、燃焼装置用窓ガラス31を得ることができる。なお、遮光層3は、曲げ加工を行った後、前駆体ガラスに形成してもよいし、結晶化させて得たガラス基板2に形成してもよい。
【0070】
その他の点は、第1の変形例と同様である。
【0071】
第2の変形例のように、ガラス基板2の第2の主面2b上に遮光層3を形成してもよい。なお、第2の変形例では、遮光層3が、ガラス基板2の第2の主面2bにおける窓部4以外の部分に形成されている場合について説明した。もっとも、遮光層3は、ガラス基板2の全面に形成されていてもよい。この場合、ガスケットや接着剤等の固定部材を隠蔽する部分の遮光層3を厚く形成し、窓部4が設けられる領域には、内部の火炎を適度に視認することができるように遮光層3を薄く形成してもよい。
【0072】
第2の変形例においても、第1の主面2aの形状を凹凸形状とすることにより、燃焼装置における燃焼の有無を窓部4から確認することを可能にしつつ、燃焼装置の外観を向上させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る燃焼装置用窓ガラスを示す模式的斜視図である。図4に示すように、燃焼装置用窓ガラス41では、ガラス基板2の第1の主面2aにおける凹凸形状が、霞模様により構成されている。
【0074】
ガラス基板2の第1の主面2aにおける霞模様の凹凸形状は、例えば、公知の組成を含有するガラス原料を溶融して得られたガラス生地を、ロール成型によりロールアウトすることにより得ることができる。特に、ロール成型時に使用される成型ロールに、霞模様の凹凸形状に対応する形状を有するロールを用いることで形成することができる。具体的には、成型ロールに加工成型した霞模様の凹凸形状に対応する形状をガラス生地に転写することで形成することができる。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
第2の実施形態においても、第1の主面2aの形状を凹凸形状とすることにより、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状を見え難くすることができる。従って、本実施形態の燃焼装置用窓ガラス41によれば、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、ペレットを燃料とした場合においても、外観を向上させることができる。
【0076】
[燃焼装置]
図5は、本発明の一実施形態に係る燃焼装置を示す模式的正面図である。図5に示すように、燃焼装置51は、上述した燃焼装置用窓ガラス1を備える。燃焼装置用窓ガラス1は、接着剤やガスケットなどの固定部材によって、燃焼装置本体52の枠に固定されている。
【0077】
本実施形態では、燃焼装置51が、燃焼装置用窓ガラス1を備えるので、燃焼装置51における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状を見え難くすることができる。従って、燃焼装置51における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、ペレットを燃料とした場合においても、外観を向上させることができる。
【0078】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0079】
(実施例1)
まず、質量%で、SiO 67.0%、Al 22.3%、MgO 0.7%、BaO 1.0%、LiO 3.7%、NaO 0.4%、KO 0.3%、TiO 2.5%、ZrO 1.9%、及びSnO 0.2%の組成を含有するように、ガラス原料を調合し、1700℃で2時間溶融した。次に、溶融したガラス融液をロールアウト製板法でガラスを冷却しながら成形して結晶化前の前駆体ガラスを作製した。この際、作製した前駆体ガラスにおいては、ロール成型時に使用される成型ロールに、畝状の凹凸形状に対応する形状を有するロールを用いることで、畝状の凹凸形状(ピッチ:5mm、平均高さ:1mm)を有する一方側主面を形成した。また、凹凸を有さない平滑な成型ロールを用いることで、凹凸を有さない他方側主面を形成した。
【0080】
次に、市販のCr-Fe-Co-Ni系黒色無機顔料45質量部と、B-SiO系ガラス粉末(SiO含有量:63質量%、B含有量:19質量%)55質量部とを混合し、さらに樹脂及び有機溶剤を添加してペーストを作製した。
【0081】
次に、このペーストを、前駆体ガラスの凹凸を有さない他方側主面にスクリーン印刷した。続いて、720℃で2時間保持することによって、前駆体ガラスの凹凸を有さない他方側主面への遮光層の形成、前駆体ガラスの曲げ加工及び前駆体ガラスに結晶核の形成を行った後、900℃で1時間熱処理することにより結晶化させた。これにより、燃焼装置用窓ガラスを得た。
【0082】
(実施例2)
ロール成型時に使用される成型ロールに、霞模様の凹凸形状に対応する形状を有するロールを用いることで、霞模様の凹凸形状を有する一方側主面を形成した。また、凹凸を有さない平滑な成型ロールを用いることで、凹凸を有さない他方側主面を形成した。その他の点は、実施例1と同様にして、燃焼装置用窓ガラスを得た。
【0083】
(比較例1)
ロール成型時に使用される成型ロールに、凹凸を有さない平滑な成型ロールを用いることで、凹凸形状を有さない一方側主面を形成した。また、凹凸を有さない平滑な成型ロールを用いることで、凹凸を有さない他方側主面を形成した。その他の点は、実施例1と同様にして、燃焼装置用窓ガラスを得た。
【0084】
[評価]
(ヘイズ)
燃焼装置用窓ガラスのヘイズは、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名「NDH-7000II」)を用いて、JIS K7136(2000)に準拠して測定した。
【0085】
(炎の外観)
炎の外観を以下の評価基準で評価した。
【0086】
[評価基準]
〇…炎の形が見え難い
×…炎の形が見え易い
【0087】
結果を下記の表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1より、実施例1~2では、ヘイズが、65%以上であることが確認できた。他方、比較例1では、ヘイズが、65%未満であった。
【0090】
また、実施例1~2では、燃焼装置における燃焼の有無を外部から確認することを可能にしつつ、炎の形状を見え難くでき、燃焼装置の外観を向上できることが確認できた。他方、比較例1では、炎の形状が見え易く、燃焼装置の外観を向上できなかった。
【符号の説明】
【0091】
1,21,31,41…燃焼装置用窓ガラス
2…ガラス基板
2a…第1の主面
2b…第2の主面
3…遮光層
4…窓部
51…燃焼装置
52…燃焼装置本体
図1
図2
図3
図4
図5