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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061307
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169228
(22)【出願日】2020-10-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.アフターボンド
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397006508
【氏名又は名称】中外道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】中西 正継
(72)【発明者】
【氏名】切山 貴文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英之
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 雅和
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 進
(72)【発明者】
【氏名】杉内 松二
(72)【発明者】
【氏名】葭 順一
(72)【発明者】
【氏名】正田 伸幸
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋梁付属物に対する床版の取り替え作業を容易に行うことができる接合構造及び接合方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る接合構造1は、床版10と、床版10の上部に位置するプレキャスト壁高欄50の接合構造1であって、床版10の厚さ方向に貫通する床版挿通孔12と、プレキャスト壁高欄50に形成された上面58b及び下面57fに開口する橋梁付属物挿通孔57hと、床版挿通孔12及び橋梁付属物挿通孔57hに挿通されたアンカー部材52と、橋梁付属物挿通孔57hの上端においてアンカー部材52をプレキャスト壁高欄50に固定する上部固定部材59と、床版挿通孔12の下端においてアンカー部材52を床版10に固定する下部固定部材53と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版と、前記床版の上部に位置する橋梁付属物との接合構造であって、
前記床版の厚さ方向に貫通する床版挿通孔と、
前記橋梁付属物に形成された上面及び下面に開口する橋梁付属物挿通孔と、
前記床版挿通孔及び前記橋梁付属物挿通孔に挿通されたアンカー部材と、
前記橋梁付属物挿通孔の上端において前記アンカー部材を前記橋梁付属物に固定する上部固定部材と、
前記床版挿通孔の下端において前記アンカー部材を前記床版に固定する下部固定部材と、
を備える接合構造。
【請求項2】
前記橋梁付属物挿通孔、及び前記橋梁付属物と前記床版との間、に充填された充填材を備える、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記橋梁付属物挿通孔及び前記床版挿通孔に通されており、前記アンカー部材の外周を覆う筒状部材を備える、
請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記橋梁付属物は、地覆と、前記地覆において内側に窪む窪み部とを有し、
前記橋梁付属物挿通孔の上端が前記窪み部において開口している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項5】
前記橋梁付属物は、前記床版の橋軸方向の端部に設けられる伸縮装置であり、
前記伸縮装置は、前記床版の上部においてコンクリートに埋め込まれており、
前記床版から前記コンクリートに突出するせん断キーを備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項6】
床版と、前記床版の上部に位置する橋梁付属物とを互いに接合する接合方法であって、
厚さ方向に貫通する床版挿通孔を有する前記床版を設置する工程と、
上面及び下面に開口する橋梁付属物挿通孔を有する前記橋梁付属物を設置する工程と、
前記床版挿通孔及び前記橋梁付属物挿通孔にアンカー部材を挿通する工程と、
前記橋梁付属物挿通孔の上端において上部固定部材によって前記アンカー部材を前記橋梁付属物に固定する工程と、
前記床版挿通孔の下端において下部固定部材によって前記アンカー部材を前記床版に固定する工程と、
を備える接合方法。
【請求項7】
前記橋梁付属物は、壁高欄を含んでおり、
前記橋梁付属物を設置する工程は、前記壁高欄の高さを合わせる工程を有し、
前記アンカー部材を前記橋梁付属物に固定する工程、及び前記アンカー部材を前記床版に固定する工程の後に、前記橋梁付属物挿通孔、及び前記橋梁付属物と前記床版との間、に充填材を充填する工程を備える、
請求項6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記橋梁付属物は、前記床版の橋軸方向の端部に設けられる伸縮装置を含んでおり、
前記アンカー部材を挿通する工程を前記橋梁付属物を設置する工程の前に実行し、
前記橋梁付属物を設置する工程は、前記伸縮装置と前記アンカー部材とを互いに固定する工程を有し、
前記上部固定部材によって前記アンカー部材を前記橋梁付属物に固定する工程では、前記アンカー部材及び前記伸縮装置にコンクリートを充填して前記コンクリートに前記アンカー部材及び前記伸縮装置を埋設する、
請求項6に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床版に橋梁付属物を接合する接合構造及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-71907号公報には、コンクリート床版の上にコンクリート壁高欄が接合されたコンクリート壁高欄の取付け構造が記載されている。このコンクリート壁高欄の取付け構造では、コンクリート床版上において、車道長さ方向に沿って複数のコンクリート壁高欄が並んでいる。
【0003】
コンクリート壁高欄には、コンクリート床版に固定されたアンカーボルトを取り付けるための固定用取付部が、コンクリート壁高欄の側面よりも内側に窪んだ位置に形成されている。固定用取付部には、コンクリート床版に固定された状態で上方に延びるように配置されるアンカーボルトを挿通させる挿通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-71907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、床版に橋梁付属物が接合される接合構造においては、床版取り替え工事が行われることが想定される。前述したコンクリート壁高欄の取付け構造では、アンカーボルトの下端がコンクリート床版の内部に固定されており、アンカーボルトの上端はコンクリート壁高欄の固定用取付部に固定されている。従って、アンカーボルトの下端が床版内部に固定され、アンカーボルトの上端がプレキャスト壁高欄ブロックに埋設されるので、プレキャスト壁高欄ブロックから床版を容易に分離できないという問題がある。
【0006】
また、プレキャスト壁高欄ブロックから床版を分離しても、アンカーボルトが床版及びプレキャスト壁高欄ブロックに固定された状態となっているため、アンカーボルトを外す作業が煩雑となりうる。更に、新しいアンカーボルトを設置するときに、再度床版及びプレキャスト壁高欄ブロックに挿通孔を形成しなければならないので、新しい床版の設置作業が繁雑となりうる。従って、プレキャスト壁高欄ブロック等の橋梁付属物に対する床版の取り替え作業を効率よく行えないという問題がある。
【0007】
本開示は、橋梁付属物に対する床版の取り替え作業を容易に行うことができる接合構造及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る接合構造は、床版と、床版の上部に位置する橋梁付属物との接合構造であって、床版の厚さ方向に貫通する床版挿通孔と、橋梁付属物に形成された上面及び下面に開口する橋梁付属物挿通孔と、床版挿通孔及び橋梁付属物挿通孔に挿通されたアンカー部材と、橋梁付属物挿通孔の上端においてアンカー部材を橋梁付属物に固定する上部固定部材と、床版挿通孔の下端においてアンカー部材を床版に固定する下部固定部材と、を備える。
【0009】
この接合構造では、床版挿通孔が床版の厚さ方向に貫通しており、床版の上部に位置する橋梁付属物は上面及び下面に開口する橋梁付属物挿通孔を有する。アンカー部材は床版を厚さ方向に貫通する床版挿通孔及び橋梁付属物挿通孔に挿通される。そして、アンカー部材の上部は上部固定部材によって橋梁付属物に固定され、アンカー部材の下部は下部固定部材によって床版に固定されている。従って、橋梁付属物をアンカー部材と共に切断することにより、アンカー部材を床版の下部から引き抜くことができるので、アンカー部材を容易に外すことができる。また、上記のように橋梁付属物と共にアンカー部材を切断する場合、床版を傷めずに床版の取り替えを行うことができる。更に、新たにアンカー部材を設置するときには、床版の床版挿通孔に再度アンカー部材を挿通することができるので、再度床板に挿通孔を形成する必要がない。すなわち、既設の床板挿通孔に何度でもアンカー部材の着脱を行うことができるので、新しい床板の設置作業を容易に行うことができる。従って、橋梁付属物に対する床板の取り替え作業を効率よく行うことができる。
【0010】
前述した接合構造は、橋梁付属物挿通孔、及び橋梁付属物と床版との間、に充填された充填材を備えてもよい。この場合、橋梁付属物挿通孔に充填材が充填されることにより、床板に対する橋梁付属物の高さ調整を容易に行うことができると共に、橋梁付属物と床板との一体性を高めることができる。
【0011】
前述した接合構造は、橋梁付属物挿通孔及び床版挿通孔に通されており、アンカー部材の外周を覆う筒状部材を備えてもよい。この場合、橋梁付属物挿通孔及び床板挿通孔とアンカー部材との間に筒状部材が設けられることにより、橋梁付属物と床版との間の浸入水からアンカー部材を保護することができると共に、アンカー部材の腐食を防止できる。また、アンカー部材をより外しやすくすることができる。
【0012】
橋梁付属物は、地覆と、地覆において内側に窪む窪み部とを有し、橋梁付属物挿通孔の上端が窪み部において開口していてもよい。この場合、橋梁付属物が地覆の内側に窪む窪み部を有し、窪み部において橋梁付属物挿通孔の上端が開口していることにより、橋梁付属物挿通孔の全長を短くすることができる。従って、橋梁付属物挿通孔に充填材を充填する場合には、充填材の量を減らすことができる。
【0013】
橋梁付属物は、床版の橋軸方向の端部に設けられる伸縮装置であり、伸縮装置は、床版の上部においてコンクリートに埋め込まれており、床版からコンクリートに突出するせん断キーを備えてもよい。この場合、床版の橋軸方向の端部に設けられる伸縮装置がコンクリートに埋め込まれるので、伸縮装置を強固に接合することができる。また、床版からコンクリートに突出するせん断キーを備えるので、せん断力をより高めることができる。
【0014】
本開示に係る接合方法は、床版と、床版の上部に位置する橋梁付属物とを互いに接合する接合方法であって、厚さ方向に貫通する床版挿通孔を有する床版を設置する工程と、上面及び下面に開口する橋梁付属物挿通孔を有する橋梁付属物を設置する工程と、床版挿通孔及び橋梁付属物挿通孔にアンカー部材を挿通する工程と、橋梁付属物挿通孔の上端において上部固定部材によってアンカー部材を橋梁付属物に固定する工程と、床版挿通孔の下端において下部固定部材によってアンカー部材を床版に固定する工程と、を備える。
【0015】
この接合方法では、厚さ方向に貫通する床版挿通孔、並びに、上面及び下面に開口を有する橋梁付属物挿通孔にアンカー部材が挿通され、アンカー部材の上端が橋梁付属物に上部固定部材によって固定され、アンカー部材の下端が床版に下部固定部材によって固定される。よって、橋梁付属物をアンカー部材と共に切断することにより、アンカー部材を床版の下部から引き抜くことができるので、アンカー部材を容易に外すことができると共に、床版を傷めずに床版の取り替えを行うことができる。また、新たにアンカー部材を設置するときには、前のアンカー部材が挿通されていた床版挿通孔に新しいアンカー部材を挿通することができるので、前述した接合構造と同様、新たに床版に挿通孔を形成する必要がない。従って、既設の床版挿通孔に何度でもアンカー部材の着脱を行うことができるので、新しい橋梁付属物の設置作業を容易に行うことができ、床版に対する橋梁付属物の取り替え作業を効率よく行うことができる。
【0016】
橋梁付属物は、壁高欄を含んでおり、橋梁付属物を設置する工程は、壁高欄の高さを合わせる工程を有し、アンカー部材を橋梁付属物に固定する工程、及びアンカー部材を床版に固定する工程の後に、橋梁付属物挿通孔、及び橋梁付属物と床版との間、に充填材を充填する工程を備えてもよい。この場合、壁高欄の高さを合わせた後に橋梁付属物挿通孔に充填材を充填することにより、壁高欄と床版との一体性を高めることができる。
【0017】
橋梁付属物は、床版の橋軸方向の端部に設けられる伸縮装置を含んでおり、アンカー部材を挿通する工程を橋梁付属物を設置する工程の前に実行し、橋梁付属物を設置する工程は、伸縮装置とアンカー部材とを互いに固定する工程を有し、上部固定部材によってアンカー部材を橋梁付属物に固定する工程では、アンカー部材及び伸縮装置にコンクリートを充填してコンクリートにアンカー部材及び伸縮装置を埋設してもよい。この場合、伸縮装置とアンカー部材とを互いに固定させた後に、伸縮装置とアンカー部材とをコンクリートに埋設するので、伸縮装置とアンカー部材とを強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、橋梁付属物に対する床版の取り替え作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る接合構造及び接合方法が適用される床版取り替えが実施される現場を模式的に示す平面図である。
図2図1の現場における床版、壁高欄、及び中央分離帯を示す側面図である。
図3図2の床版及び壁高欄を示す縦断面図である。
図4図3の壁高欄を幅員方向から見た側面図である。
図5図3の壁高欄のモルタル注入孔を示す縦断面図である。
図6図2の中央分離帯を示す縦断面図である。
図7図1の現場における伸縮装置を示す縦断面図である。
図8】実施形態に係る床版及び壁高欄の施工の手順を示す図である。
図9図8の床版の上に壁高欄を設置した状態を示す縦断面図である。
図10】実施形態に係る床版及び伸縮装置の施工の手順を示す縦断面図である。
図11図10の施工の手順の続きを示す縦断面図である。
図12図11の施工の手順の続きを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る接合構造及び接合方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0021】
図1は、実施形態に係る接合構造及び接合方法が適用される現場Aを模式的に示す平面図である。図2は、現場Aを橋軸方向D1に沿って見た図である。図1及び図2に示されるように、接合構造1及び接合構造2が設けられる現場Aは、道路Dの床版取り替えを行う現場であり、例えば、幅員方向D2(橋軸直角方向)に沿って床版10,20が並べられる。
【0022】
床版10及び床版20の少なくともいずれかは、超高強度繊維補強コンクリート(UFC;Ultra High reinforced Concrete)によって構成されていてもよく、例えば、現場Aでは既存の鉄筋コンクリート床版からUFC床版である床版10,20への取り替え工事が行われる。UFC床版である床版10,20は、例えば、既設の鉄筋コンクリート床版よりも薄い床版である。一例として、床版10,20の厚さは140mmである。
【0023】
床版10及び床版20は、橋軸方向D1及び幅員方向D2に延びる路面部位を構成する。すなわち、床版10の上面11、及び床版20の上面21は、道路Dの路面を構成しており、自動車の荷重を受ける。上面11及び上面21は、例えば、長方形状を成している。床版10及び床版20は、例えば、予め工場で製造されたプレキャスト床版であってもよい。床版10及び床版20は、高さ方向D3に厚みを有する。
【0024】
高さ方向D3は、橋軸方向D1及び幅員方向D2の双方に直交する方向であり、橋軸方向D1及び幅員方向D2は互いに直交する。なお、上面11及び上面21の形状は、長方形状に限られず、例えば、台形状又は扇形状であってもよく、適宜変更可能である。また、上面11及び上面21には、防水層又はアスファルト層が設けられてもよい。
【0025】
床版10及び床版20は、幅員方向D2に沿って並ぶと共に高さ方向D3に沿って延びる複数の桁材30と、各桁材30と床版10又は床版20との間に設けられる間詰材40とによって支持されている。桁材30は、橋軸方向D1に延びる鋼材である。例えば、間詰材40は、床版10及び床版20の間にも介在する。間詰材40は、例えば、UFCによって構成されている。
【0026】
床版10及び床版20には、橋梁付属物が設けられる。橋梁付属物は、例えば、プレキャスト壁高欄、プレキャスト中央分離帯、伸縮装置、遮音壁、及び排水装置を含む。図1及び図2の例では、床版10及び床版20の上に、幅員方向D2の端部のそれぞれに設けられる一対のプレキャスト壁高欄50(壁高欄)と、床版10及び床版20の間に設けられるプレキャスト中央分離帯60とが設けられる。更に、床版10及び床版20の橋軸方向D1の端部に伸縮装置70が設けられる。
【0027】
図3は、プレキャスト壁高欄50及び床版10を幅員方向D2及び高さ方向D3に延びる平面で切断したときの断面図を示している。図3に示されるように、接合構造1は、床版10と、床版10の上部に位置するプレキャスト壁高欄50との接合構造である。床版10は、高さ方向D3に貫通する床版挿通孔12を有する。
【0028】
橋軸方向D1及び幅員方向D2に延びる平面で切断したときの床版挿通孔12の断面は、例えば、円形状とされている。床版挿通孔12には、例えば、筒状部材51と、筒状部材51の内部を通るアンカー部材52とが挿通されている。筒状部材51は、一例として、CD管(又は塩ビ管)であり、アンカー部材52はアンカーボルトである。
【0029】
筒状部材51の外径は、例えば、床版挿通孔12の内径よりも小さい。筒状部材51の内径は、例えば、アンカー部材52の外径よりも大きい。床版挿通孔12の下端には、アンカー部材52の下部を固定する下部固定部材53が設けられる。下部固定部材53は、床版挿通孔12の下端においてアンカー部材52を床版10に固定する。
【0030】
下部固定部材53は、例えば、アンカー部材52が挿通される貫通孔53bを有すると共に床版10の下面13に面接触するアンカープレート53cと、アンカープレート53cの下面においてアンカー部材52が螺合する下部ナット53dと、下方からアンカープレート53cを介して床版10にねじ込まれるボルト53fとを有する。
【0031】
下部固定部材53は、例えば、複数のボルト53fを含む。アンカープレート53cは、前述した貫通孔53bの他、ボルト53fが挿通される複数の挿通孔53gを有する。また、床版10の下面13の各挿通孔53gに対応する部分にはインサート14が埋設されている。
【0032】
複数のボルト53fのそれぞれが下から各挿通孔53gに通されて各インサート14にねじ込まれることによってアンカープレート53cが下面13に固定される。ボルト53fは、例えば、六角ボルトであり、ボルト53fとアンカープレート53cとの間に座金(一例として丸座金)が介在していてもよい。
【0033】
床版10とプレキャスト壁高欄50との間には、封止部材54及び充填材55が介在している。封止部材54は、例えば、プレキャスト壁高欄50の下部であって且つ幅員方向D2の端部のそれぞれに設けられる。封止部材54は、例えば、パッキンである。封止部材54の材料は、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)である。
【0034】
例えば、一対の封止部材54のうち、床版10の幅員方向D2の端部側に位置する封止部材54の高さは、床版10の幅員方向D2の中央側に位置する封止部材54の高さよりも(僅かに)高い。充填材55は、床版10及びプレキャスト壁高欄50の間に介在する一対の封止部材54の間に形成された空間S1に充填されている。充填材55は、例えば、モルタル(一例として無収縮モルタル)である。
【0035】
プレキャスト壁高欄50は、例えば、地覆部56(地覆)と、地覆部56に対して鉛直上方に延びる壁高欄部57とを有する。地覆部56は、壁高欄部57の下端において幅員方向D2の中央側に突出している。地覆部56は、例えば、斜め上方を向く傾斜面56bと、傾斜面56bの下端から鉛直下方に延びる鉛直面56cとを有する。
【0036】
壁高欄部57は、幅員方向D2の中央側を向く内側面57bと、天面部57cと、幅員方向D2の端部側を向く外側面57dと、下面57fとを有する。下面57fと、一対の封止部材54と、床版10の上面11とによって空間S1が画成されている。内側面57bは、地覆部56の上端から高さ方向D3に延在している。
【0037】
天面部57cは、内側面57bの上端から外側面57dの上端まで延びている。天面部57cは、例えば、内側面57bから外側面57dに向かうに従って高くなる傾斜面を有していてもよい。天面部57cの内側面57b側の端部、及び天面部57cの外側面57d側の端部のそれぞれに面取り部が形成されていてもよい。
【0038】
図4は、壁高欄部57の内側面57b及び地覆部56を示す側面図である。図3及び図4に示されるように、例えば、壁高欄部57の天面部57cにはインサート57gが設けられている。壁高欄部57は、例えば、橋軸方向D1に沿って並ぶ複数(一例として2つ)のインサート57gを備える。
【0039】
プレキャスト壁高欄50は、壁高欄部57の内側面57b及び地覆部56の傾斜面56bから内側に窪む窪み部58を有する。壁高欄部57は、橋軸方向D1に沿って並ぶ複数の窪み部58を有する。窪み部58は、後述する橋梁付属物挿通孔57hが形成された上面58bと、窪み部58の奥側の端部において高さ方向D3に延びる内側面58cと、内側面58cの上端から内側面57bまで延びる天井面58dとによって画成される。上面58bは、例えば、橋軸方向D1及び幅員方向D2に延びており、天井面58dは、内側面58cから離れるに従って上方に傾斜していてもよい。
【0040】
窪み部58の上面58bには、橋梁付属物挿通孔57hが開口している、橋梁付属物挿通孔57hは、例えば、円筒状を呈する。橋梁付属物挿通孔57hの内径は、前述した床版10の床版挿通孔12の内径よりも大きい。一例として、橋梁付属物挿通孔57hの内径は、上面58bから下方に向かうに従って徐々に大きくなっていてもよい。
【0041】
橋梁付属物挿通孔57hには、床版挿通孔12から上方に延びる筒状部材51と、筒状部材51の内部を通るアンカー部材52とが挿通されている。橋梁付属物挿通孔57hの上端には、アンカー部材52の上部を固定する上部固定部材59が設けられる。上部固定部材59は、橋梁付属物挿通孔57hの上端においてアンカー部材52をプレキャスト壁高欄50に固定する。
【0042】
上部固定部材59は、例えば、アンカー部材52が挿通される貫通孔59bを有すると共にプレキャスト壁高欄50の上面58bに面接触するアンカープレート59cと、アンカープレート59cの上面においてアンカー部材52が螺合する上部ナット59dとを備える。
【0043】
例えば、アンカープレート59cの下面には、筒状部材51の上端が対向している。すなわち、筒状部材51の上端はアンカープレート59cの付近にまで達している。なお、筒状部材51の上端には、筒状部材51を封止するコーキング51bが設けられていてもよい。コーキング51bは、例えば、弾性シーリング材である。一例として、上部ナット59dは六角ナットであり、上部ナット59dとアンカープレート59cとの間に座金(一例として丸座金)が介在していてもよい。
【0044】
前述した空間S1、窪み部58、及び橋梁付属物挿通孔57hには充填材55が充填される。橋梁付属物挿通孔57hは、アンカー部材52の径方向外側、及び筒状部材51の径方向外側に、充填材55の充填領域を形成する。図3図4及び図5に示されるように、プレキャスト壁高欄50は、例えば、充填材55が空間S1、橋梁付属物挿通孔57h、及び窪み部58に注入される注入孔50bを有する。
【0045】
注入孔50bは、例えば、窪み部58とは異なる箇所に設けられており、一例として、窪み部58の橋軸方向D1の隣接位置に設けられる。プレキャスト壁高欄50は、複数の注入孔50bを有しており、例えば、複数の注入孔50bが橋軸方向D1に沿って並んでいる。注入孔50bは、地覆部56の傾斜面56bから斜め下方に延在しており、注入孔50bの下端は空間S1に連通している。
【0046】
注入孔50bを介して空間S1に注入された充填材55は、空間S1から橋梁付属物挿通孔57hに入り込み、橋梁付属物挿通孔57hにおいて上昇し、複数の窪み部58のそれぞれに達する。そして、充填材55は、アンカー部材52及び上部固定部材59を埋設して表面が傾斜面56b及び内側面57bに均されることによって形成される。
【0047】
次に、図6を参照しながらプレキャスト中央分離帯60と床版10との接合構造2について説明する。図6は、橋梁付属物がプレキャスト中央分離帯60である例を示している。接合構造2は、床版10と、床版10の上部に位置するプレキャスト中央分離帯60との接合構造である。接合構造2の一部の構成は、前述した接合構造1の一部の構成と同一であるため、接合構造1と重複する説明を適宜省略する。
【0048】
床版10には、幅員方向D2に沿って並ぶ複数の床版挿通孔12が形成されており、各床版挿通孔12には、筒状部材61と、筒状部材61の内部を通るアンカー部材62とが挿通されている。筒状部材61及びアンカー部材62は、例えば、前述した筒状部材51及びアンカー部材52と同一であってもよい。
【0049】
接合構造2は、幅員方向D2に沿って並ぶ、一対の筒状部材61及び一対のアンカー部材62を備える。各床版挿通孔12の下端には、アンカー部材62の下部を固定する下部固定部材63が設けられる。下部固定部材63は、床版挿通孔12の下端においてアンカー部材62を床版10に固定する。
【0050】
下部固定部材63は、例えば前述した下部固定部材53と同様、アンカー部材62が挿通される貫通孔63bを有すると共に床版10の下面13に面接触するアンカープレート63cと、アンカープレート63cの下面においてアンカー部材62が螺合する下部ナット63dと、下方からアンカープレート63cを介して床版10にねじ込まれるボルト63fとを有する。アンカープレート63cは、前述した貫通孔63bの他、ボルト63fが挿通される複数の挿通孔を有する。また、床版10の下面13の各ボルト63fに対応する部分には前述したインサート14と同様のインサートが埋設されている。
【0051】
床版10とプレキャスト中央分離帯60との間には、例えば前述した封止部材54及び充填材55と同様、封止部材64及び充填材65が介在している。充填材65は、床版10及びプレキャスト中央分離帯60の間に介在する一対の封止部材64の間に形成された空間S2に充填されている。
【0052】
プレキャスト中央分離帯60は、例えば、幅員方向D2に並ぶ一対の地覆部66(地覆)と、一対の地覆部66の上端から上方に延びる高欄部67とを有する。地覆部66は、高欄部67の下端において幅員方向D2に突出している。地覆部66は、例えば、斜め上方を向く傾斜面66bと、傾斜面66bの下端から鉛直下方に延びる鉛直面66cとを有する。
【0053】
高欄部67は、幅員方向D2側を向く一対の側面67bと、天面部67cと、下面67fとを有する。例えば、一対の側面67bは、地覆部66から天面部67cに向かうに従って高欄部67の幅が狭くなるように斜め上方に延在している。天面部67cは、一対の側面67bを互いに接続しており、例えば、橋軸方向D1及び幅員方向D2に沿って延在している。
【0054】
プレキャスト中央分離帯60は、例えば、橋軸方向D1に沿って高欄部67の貫通孔67dを貫通する緊張材60bを備える。緊張材60bは、橋軸方向D1に沿って並ぶ複数のプレキャスト中央分離帯60を緊張させるために設けられる。緊張材60bは、例えば、PC鋼線、PC鋼棒、又はPC鋼より線等のPC鋼材である。一例として、緊張材60bは、アフターボンドPC鋼より線である。
【0055】
プレキャスト中央分離帯60は、地覆部66の傾斜面66bから内側に窪む窪み部68を有する。高欄部67は、幅員方向D2に沿って並ぶ一対の窪み部68を有する。各窪み部68は、前述した窪み部58と同様、橋梁付属物挿通孔67hが形成された上面68bと、窪み部68の奥側の端部において高さ方向D3に延びる内側面68cと、内側面68cの上端から側面67bまで延びる天井面68dとによって画成される。
【0056】
幅員方向D2に沿って並ぶ一対の橋梁付属物挿通孔67hのそれぞれには、筒状部材61及びアンカー部材62が挿通されている。橋梁付属物挿通孔67hの上端には、アンカー部材62の上部を固定する上部固定部材69が設けられる。上部固定部材69は、例えば前述した上部固定部材59と同様、アンカー部材62が挿通される貫通孔を有するアンカープレート69cと、上部ナット69dとを備える。例えば、筒状部材61の上端とアンカープレート69cとの間には筒状部材61を封止する、コーキング51bと同様のコーキングが設けられる。
【0057】
空間S2、窪み部68、及び橋梁付属物挿通孔67hには充填材65が充填される。プレキャスト中央分離帯60は、例えば、プレキャスト壁高欄50の注入孔50bと同様、充填材65を空間S2、窪み部68、及び橋梁付属物挿通孔67hに注入する注入孔を有する。この注入孔を介して空間S2に充填材65が注入され、充填材65は空間S2から橋梁付属物挿通孔67hに入り込み、橋梁付属物挿通孔67hにおいて上昇し、複数の窪み部68のそれぞれに達する。そして、充填材65は、アンカー部材62及び上部固定部材69を埋設して表面が傾斜面66bに均されることによって形成される。
【0058】
続いて、図7を参照しながら伸縮装置70と床版10との接合構造3について説明する。例えば、伸縮装置70は床版10の橋軸方向D1の端部に設けられる。接合構造3は、伸縮装置70と、コンクリート71とを含んでいる。図7では、床版10が新設のUFC床版であり、床版10が既設のRC床版である床版Fと接合される例を示している。
【0059】
接合構造3は、床版10と、床版10の上部に位置する伸縮装置70と、コンクリート71とを備える。コンクリート71は、例えば、後述するアンカー部材82を固定する機能を有する。例えば、伸縮装置70及びコンクリート71は、床版10の橋軸方向D1の端部に設けられる段差部15に設けられる。段差部15は、床版10の上面11の橋軸方向D1の端部から窪んだ凹状部15bを有し、凹状部15bに伸縮装置70が設けられる。
【0060】
一例として、伸縮装置70は、床版10と床版Fの間に介在している。伸縮装置70は、例えば、床版10と床版Fとの間に介在するジョイント部72と、ジョイント部72から橋軸方向D1に延びる複数の第1鉄筋73と、幅員方向D2に延びる複数の第2鉄筋74とを備える。
【0061】
ジョイント部72は、例えば、平面視において蛇行するように設けられており、伸縮ゴムを備えていてもよい。例えば、幅員方向D2に沿って複数本の第1鉄筋73が並んでおり、橋軸方向D1に沿って複数の第2鉄筋74が並ぶように配置されている。一例として、第1鉄筋73は伸縮装置70の主筋であり、第2鉄筋74は伸縮装置70の補強鉄筋である。
【0062】
例えば、既設の床版Fは、床版10と同様、凹状部F2が形成された段差部F1を有し、凹状部F2の底面にはコンクリートアンカーF3が埋め込まれている。コンクリートアンカーF3は、例えば、金属拡張アンカー(あと施工アンカー)である。コンクリートアンカーF3において凹状部F2の底面から突出するアンカーボルトF4と第1鉄筋73と第2鉄筋74とは、互いに固定されている。例えば、アンカーボルトF4と第1鉄筋73と第1鉄筋73とは溶接によって互いに固定された状態で、コンクリート71に埋設されている。
【0063】
床版10は、段差部15の凹状部15bにおいて、高さ方向D3に貫通する床版挿通孔12を有する。床版10は、例えば、複数の床版挿通孔12を有し、複数の床版挿通孔12は、橋軸方向D1に沿って並んでいる。床版挿通孔12には、例えば、筒状部材81と、筒状部材81の内部を通るアンカー部材82とが挿通されている。筒状部材81及びアンカー部材82のそれぞれの構成は、例えば前述した筒状部材51及びアンカー部材52のそれぞれの構成と同一である。
【0064】
床版挿通孔12の下端には、アンカー部材82の下部を固定する下部固定部材83が設けられる。下部固定部材83は、例えば、アンカー部材82が挿通される貫通孔83bを有すると共に床版10の下面13に面接触するワッシャ83cと、ワッシャ83cの下面においてアンカー部材82が螺合する下部ナット83dとを有する。
【0065】
筒状部材81は、凹状部15bの底面から上方に突出している。例えば、筒状部材81の上端には、筒状部材81を封止する止水のためのコーキング81bが設けられている。コーキング81bは、一例として、弾性シーリング材である。アンカー部材82の上部は、筒状部材81よりも上方に突出している。
【0066】
アンカー部材82の上部には、上部ナット84が螺合しており、例えば、上部ナット84は筒状部材81の上端から離間している。上部ナット84は、伸縮装置70の落下防止機能を備える。具体的には、上部ナット84は、ジョイント部72から橋軸方向D1に延びる第1鉄筋73を落下しないように支持している。すなわち、上部ナット84には第1鉄筋73が載せられている。
【0067】
例えば、平面視において第1鉄筋73及び第2鉄筋74は格子状に配置されており、アンカー部材82は第1鉄筋73と第2鉄筋74とが交差する部分に固定(又は仮固定)されている。一例として、アンカー部材82は、第1鉄筋73及び第2鉄筋74の双方に溶接によって固定されている。しかしながら、アンカー部材82の伸縮装置70への固定手段は、溶接に限られない。例えば、アンカー部材82は、結束バンドによって第1鉄筋73及び第2鉄筋74に固定されていてもよい。
【0068】
床版10の凹状部15bには、床版10からコンクリート71に突出するせん断キー90が設けられる。例えば、せん断キー90は、床版10の凹状部15bにおける床版挿通孔12と異なる箇所に埋設されたインサート91と、インサート91にねじ込まれるボルト92とを備える。
【0069】
一例として、インサート91はセラミックインサートであり、ボルト92は六角ボルトである。ボルト92は、凹状部15bにおいて上方に突出する頭部92bを有し、例えば、頭部92bと凹状部15bの底面との間にワッシャが介在してもよい。この場合、ワッシャの枚数が調整されることによって、せん断キー90の突出高さを調整可能である。
【0070】
次に、現場Aにおける各部の施工方法の例について説明する。まず、プレキャスト壁高欄50と床版10とを接合させる接合方法の例について説明する。図8に示されるように、例えば、床版挿通孔12及びインサート14が形成されており、床版挿通孔12に筒状部材51が固定された床版10を用意する。そして、クレーン等の揚重機で床版10を吊り上げて床版10を間詰材40を介して桁材30の上に載置する(床版を設置する工程)。
【0071】
そして、図9に示されるように、一対の封止部材54を配置し、床版10の床版挿通孔12の平面位置にプレキャスト壁高欄50の橋梁付属物挿通孔57hの平面位置を合わせ、当該平面位置を合わせた状態で床版10の上面11にプレキャスト壁高欄50を載せる(橋梁付属物を設置する工程)。
【0072】
また、下から床版挿通孔12及び橋梁付属物挿通孔57hに筒状部材51及びアンカー部材52を挿通する(アンカー部材を挿通する工程)。そして、プレキャスト壁高欄50の高さ合わせを行う。具体的には、プレキャスト壁高欄50の壁高欄部57の天面部57cの高さが所定の高さとなるように調整を行う(壁高欄の高さを合わせる工程)。その後、アンカー部材52の下部を下部固定部材53で床版10に固定する(アンカー部材を床版に固定する工程)。そして、アンカー部材52の上部を上部固定部材59でプレキャスト壁高欄50に固定する(アンカー部材を橋梁付属物に固定する工程)。
【0073】
アンカー部材を床版に固定する工程として、具体的には、インサート14の平面位置に下部固定部材53の挿通孔53gの平面位置を合わせつつアンカープレート53cの貫通孔53bにアンカー部材52の下部を通すと共にアンカープレート53cの下側に下部ナット53dをねじ込む。
【0074】
そして、挿通孔53g及びインサート14のそれぞれにボルト53fをねじ込んでアンカープレート53cを床版10の下面13に固定する。アンカー部材を橋梁付属物に固定する工程として、具体的には、アンカープレート59cの貫通孔59bにアンカー部材52の上部を通すと共にアンカープレート59cの上側に上部ナット59dをねじ込む。
【0075】
以上のように、アンカー部材52の下部を床版10に固定し、アンカー部材52の上部をプレキャスト壁高欄50に固定した後には、充填材55を充填する(充填材を充填する工程)。具体的には、型枠の設置後、注入孔50bに硬化前の充填材55を注入して空間S1に充填材55を充填し、窪み部58からあふれ出る直前まで当該充填を継続する。その後、充填材55の表面を均して時間をかけて充填材55を硬化させた後に、型枠を撤去して、例えば図3に示される接合構造1が完成する。
【0076】
プレキャスト中央分離帯60と床版10とを接合させる接合方法は、例えば、プレキャスト壁高欄50と床版10との接合方法と同一であってもよい。プレキャスト中央分離帯60と床版10との接合方法におけるプレキャスト壁高欄50と床版10との接合方法との相違点は、例えば図6に示されるように、緊張材60bが設けられる点である。
【0077】
緊張材60bによるプレキャスト中央分離帯60の緊張は、例えば、アンカー部材62の締め付け(下部固定部材63によるアンカー部材62の下部の固定、及び上部固定部材69によるアンカー部材62の固定)の前に行われる。具体的には、高欄部67の貫通孔67dに緊張材60bを通してプレキャスト中央分離帯60を橋軸方向D1に緊張する。なお、プレキャスト中央分離帯60の緊張のタイミングは、アンカー部材62の締め付けの前に限られず、アンカー部材62の締め付けの後に行われてもよい。
【0078】
続いて、伸縮装置70と床版10とを接合させる接合方法の例について説明する。以下では、図10図12を参照しながら、床版10の更新と共に伸縮装置70を新しい伸縮装置70に更新する方法について説明する。まず、図10に示されるように、例えば、床版10の凹状部15bの内側面及び底面、並びに、床版Fの凹状部F2の内側面及び底面に沿う切断ラインLに沿ってコンクリート71を切断する。
【0079】
コンクリート71の切断は、例えば、ワイヤソーによって行われる。このコンクリート71の切断は、筒状部材81の上端よりも高い位置で行い、筒状部材81を切断しないようにしつつアンカー部材82及びアンカーボルトF4を切断する。このとき、アンカー部材82は床版10の下から引き抜くことが可能であるが、アンカーボルトF4は下から引き抜くことはできない。
【0080】
そして、図10及び図11に示されるように、切断した伸縮装置70、コンクリート71、アンカー部材82及びアンカーボルトF4を撤去し、凹状部15bの底面に残ったコンクリート71を斫って凹状部15bの底面から筒状部材81及びせん断キー90を突出させる。なお、このとき、床版Fでは、コンクリートアンカーF3が残された状態とされている。
【0081】
その後、図12に示されるように、床版Fに対しては、新たに凹状部F2の底面に挿入孔を形成し、当該挿入孔に新たなコンクリートアンカーF3を設置して、新たな伸縮装置70の第1鉄筋73及び第2鉄筋74にコンクリートアンカーF3のアンカーボルトF4を溶接等によって固定させる。
【0082】
一方、床版10に対しては、既存の筒状部材81に新たなアンカー部材82を挿通する(アンカー部材を挿通する工程)。そして、アンカー部材82の下部を下部固定部材83で固定すると共に、伸縮装置70を設置する(橋梁付属物を設置する工程)。伸縮装置70の設置後には、上部ナット84を介してアンカー部材82を第1鉄筋73及び第2鉄筋74に溶接等によって固定させる(伸縮装置とアンカー部材とを互いに固定する工程)。なお、アンカー部材82の筒状部材81から露出する部分等に防錆処理を施してもよい。
【0083】
上記のように、床版10では、床版挿通孔12に挿通された既存の筒状部材81を使えるのでアンカー部材82の設置を容易に且つスムーズに行うことができる。更に、新たにアンカー挿入用の挿入孔を形成する必要がないので、床版10を傷めないようにすることが可能である。
【0084】
そして、型枠を設置して凹状部15b及び凹状部F2にコンクリート71を打設し、図7に示されるように、伸縮装置70、筒状部材81、アンカー部材82、及びアンカーボルトF4をコンクリート71に埋設してコンクリート71を硬化させる(上部固定部材によってアンカー部材を伸縮装置に固定する工程)。その後、型枠を外して床版10と伸縮装置70との接合構造3が完成する。
【0085】
次に、本実施形態に係る接合構造1及び接合方法から得られる作用効果について説明する。図3に示されるように、本実施形態に係る接合構造1及び接合方法では、床版挿通孔12が床版10の厚さ方向(高さ方向D3)に貫通しており、床版10の上部に位置するプレキャスト壁高欄50は上面58b及び下面57fに開口を有する橋梁付属物挿通孔57hを有する。
【0086】
アンカー部材52は床版10を厚さ方向に貫通する床版挿通孔12及び橋梁付属物挿通孔57hに挿通される。そして、アンカー部材52の上端は上部固定部材59によってプレキャスト壁高欄50に固定され、アンカー部材52の下端は下部固定部材53によって床版10に固定されている。従って、プレキャスト壁高欄50をアンカー部材52と共に切断(例えば、傾斜面56bの高さの水平面に沿って切断)することにより、アンカー部材52を床版10の下部から引き抜くことができるので、アンカー部材52を容易に外すことができる。
【0087】
また、上記のようにプレキャスト壁高欄50と共にアンカー部材52を切断する場合、床版10を傷めずに床版10の取り替えを行うことができる。更に、新たにアンカー部材52を設置するときには、床版10の床版挿通孔12に再度アンカー部材52を挿通することができるので、再度床版10に挿通孔を形成する必要がない。
【0088】
すなわち、既設の床版挿通孔12に何度でもアンカー部材52の着脱を行うことができるので、挿通孔を形成する必要がない分、新しい床版10の設置作業を容易に且つ効率よく行うことができる。従って、プレキャスト壁高欄50に対する床版10の取り替え作業を効率よく行うことができる。
【0089】
接合構造1は、橋梁付属物挿通孔57h、及びプレキャスト壁高欄50と床版10との間、に充填された充填材55を備える。よって、橋梁付属物挿通孔57hに充填材55が充填されることにより、床版10に対するプレキャスト壁高欄50の高さ調整を容易に行うことができると共に、プレキャスト壁高欄50と床版10との一体性を高めることができる。
【0090】
接合構造1は、橋梁付属物挿通孔57h及び床版挿通孔12に通されており、アンカー部材52の外周を覆う筒状部材51を備える。よって、橋梁付属物挿通孔57h及び床版挿通孔12とアンカー部材52との間に筒状部材51が設けられることにより、プレキャスト壁高欄50と床版10との間の浸入水からアンカー部材52を保護することができると共に、アンカー部材52の腐食を防止できる。また、アンカー部材52をより外しやすくすることができる。以上の作用効果は、プレキャスト中央分離帯60と床版10との接合構造2、及び伸縮装置70と床版10との接合構造3からも同様に得られる。
【0091】
プレキャスト壁高欄50は、地覆部56と、地覆部56において内側に窪む窪み部58とを有し、橋梁付属物挿通孔57hの上端が窪み部58において開口している。よって、プレキャスト壁高欄50が地覆部56の内側に窪む窪み部58を有し、窪み部58において橋梁付属物挿通孔57hの上端が開口していることにより、橋梁付属物挿通孔57hの全長を短くすることができる。従って、橋梁付属物挿通孔57hに充填材55を充填する場合には、充填材55の量を減らすことができる。この作用効果はプレキャスト中央分離帯60と床版10との接合構造2からも同様に得られる。
【0092】
図7に示されるように、橋梁付属物は、例えば、床版10の橋軸方向D1の端部に設けられる伸縮装置70であり、伸縮装置70は、床版10の上部においてコンクリート71に埋め込まれており、床版10からコンクリート71に突出するせん断キー90を備える。よって、床版10の橋軸方向D1の端部に設けられる伸縮装置70がコンクリート71に埋め込まれるので、伸縮装置70を強固に接合することができる。また、床版10からコンクリート71に突出するせん断キー90を備えるので、せん断力をより高めることができる。
【0093】
本実施形態に係る接合方法において、橋梁付属物は、図3に示されるように、プレキャスト壁高欄50を含んでおり、橋梁付属物を設置する工程は、壁高欄部57の高さを合わせる工程を有し、アンカー部材52をプレキャスト壁高欄50に固定する工程、及びアンカー部材52を床版10に固定する工程の後に、橋梁付属物挿通孔57h、及びプレキャスト壁高欄50と床版10との間、に充填材55を充填する工程を備える。従って、プレキャスト壁高欄50の高さを合わせた後に橋梁付属物挿通孔57hに充填材55を充填することにより、プレキャスト壁高欄50と床版10との一体性を高めることができる。以上の作用効果は、プレキャスト中央分離帯60からも同様に得られる。
【0094】
橋梁付属物は、図7に例示されるように、床版10の橋軸方向D1の端部に設けられる伸縮装置70を含んでおり、アンカー部材82を挿通する工程を伸縮装置70を設置する工程の前に実行し、伸縮装置70を設置する工程は、伸縮装置70とアンカー部材82とを互いに固定する工程を有し、コンクリート71によってアンカー部材82を伸縮装置70に固定する工程では、アンカー部材82及び伸縮装置70にコンクリート71を充填してコンクリート71にアンカー部材82及び伸縮装置70を埋設する。よって、伸縮装置70とアンカー部材82とを互いに固定させた後に、伸縮装置70とアンカー部材82とをコンクリート71に埋設するので、伸縮装置70とアンカー部材82とを強固に接合することができる。
【0095】
以上、本開示に係る接合構造及び接合方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る接合構造及び接合方法は、前述した実施形態に限定されず、請求項に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、接合構造の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様、並びに、接合方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0096】
例えば、前述の実施形態では、せん断キー90が設けられる接合構造3について説明した。しかしながら、せん断キー90の構成は、前述したインサート91及びボルト92を備える構成に限られず適宜変更可能である。また、せん断キー90を有しない伸縮装置70の接合構造であってもよい。
【0097】
また、前述の実施形態では。床版挿通孔12及びインサート14が形成された床版10について説明した。しかしながら、床版挿通孔及びインサートの形状、大きさ、数及び配置態様は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。また、インサート14を有しない床版であってもよい。
【0098】
また、前述の実施形態では、無収縮モルタルである充填材55が充填される接合構造1について説明した。しかしながら、充填材の材料は、無収縮モルタルに限られず適宜変更可能である。更に、本開示に係る接合構造は、充填材が充填されない接合構造であってもよい。
【0099】
また、前述の実施形態では、アンカー部材52がアンカーボルトである例について説明した。しかしながら、アンカー部材は、アンカーボルト以外のものであってもよい。例えば、アンカー部材は、PC鋼棒、緊張材、引張部材、又はケーブル状部材等であってもよく、適宜変更可能である。
【0100】
また、前述の実施形態では、床版10とプレキャスト壁高欄50とを接合する接合構造1、床版10とプレキャスト中央分離帯60とを接合する接合構造2、及び床版10と伸縮装置70とを接合する接合構造3、を備える道路Dの現場Aについて説明した。しかしながら、本開示に係る接合構造及び接合方法は、道路Dの現場A以外の種々の現場に適用させることが可能であり、現場の種類は特に限定されない。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3…接合構造、10,20…床版、11,21…上面、12…床版挿通孔、13…下面、14…インサート、15…段差部、15b…凹状部、30…桁材、40…間詰材、50…プレキャスト壁高欄(橋梁付属物、壁高欄)、50b…注入孔、51…筒状部材、51b…コーキング、52…アンカー部材、53…下部固定部材、53b…貫通孔、53c…アンカープレート、53d…下部ナット、53f…ボルト、53g…挿通孔、54…封止部材、55…充填材、56…地覆部(地覆)、56b…傾斜面、56c…鉛直面、57…壁高欄部、57b…内側面、57c…天面部、57d…外側面、57f…下面、57g…インサート、57h…橋梁付属物挿通孔、58…窪み部、58b…上面、58c…内側面、58d…天井面、59…上部固定部材、59b…貫通孔、59c…アンカープレート、59d…上部ナット、60…プレキャスト中央分離帯(橋梁付属物)、60b…緊張材、61…筒状部材、62…アンカー部材、63…下部固定部材、63b…貫通孔、63c…アンカープレート、63d…下部ナット、63f…ボルト、64…封止部材、65…充填材、66…地覆部(地覆)、66b…傾斜面、66c…鉛直面、67…高欄部、67b…側面、67c…天面部、67d…貫通孔、67f…下面、67h…橋梁付属物挿通孔、68…窪み部、68b…上面、68c…内側面、68d…天井面、69…上部固定部材、69b…貫通孔、69c…アンカープレート、69d…ナット、70…伸縮装置(橋梁付属物)、71…コンクリート(上部固定部材)、72…ジョイント部、73…第1鉄筋、74…第2鉄筋、81…筒状部材、81b…コーキング、82…アンカー部材、83…下部固定部材、83b…貫通孔、83c…ワッシャ、83d…下部ナット、84…上部ナット、90…せん断キー、91…インサート、92…ボルト、92b…頭部、A…現場、D…道路、D1…橋軸方向、D2…幅員方向(橋軸直角方向)、D3…高さ方向、L…切断ライン、S1,S2…空間。
図1
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図12