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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061308
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】充填砂
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/46 20060101AFI20220411BHJP
   B22D 41/22 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B22D41/46
B22D41/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169231
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】591136193
【氏名又は名称】キンセイマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】末本 智紀
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 清一
(72)【発明者】
【氏名】井筒 一希
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014FA01
4E014MA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼結開始温度を高温化でき、かつ、溶鋼の浸透を抑えることができる充填砂を提供する。
【解決手段】充填砂は、クロマイトを含む。この充填砂が、二次粒子10を含む。この二次粒子10が複数の一次粒子12を含む。それら複数の一次粒子12の粒径が0マイクロメートルを超え50マイクロメートル以下である。この二次粒子10に含まれる複数の一次粒子12の少なくとも一部がクロマイトを含む。好ましくは、上述された一次粒子12が、20重量%以上50重量%未満のCrと、10重量%以上30重量%未満のFeOとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマイトを含む充填砂であって、
前記充填砂は、粒径が0マイクロメートルを超え50マイクロメートル以下である複数の一次粒子を含む二次粒子を含み、
前記二次粒子に含まれる複数の前記一次粒子の少なくとも一部が前記クロマイトを含むことを特徴とする充填砂。
【請求項2】
前記二次粒子が、
20重量%以上50重量%未満のCrと、
10重量%以上30重量%未満のFeOとを含むことを特徴とする請求項1に記載の充填砂。
【請求項3】
前記Crの重量%が37.1重量%以上46.3重量%以下であり、
前記FeOの重量%が21.1重量%以上26.4重量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の充填砂。
【請求項4】
前記二次粒子は粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子を含み、
前記粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が前記充填砂に占める重量%が90重量%以上100重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の充填砂。
【請求項5】
前記粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が前記充填砂に占める重量%が95重量%以上であり、
前記粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子のうち前記粒径が300マイクロメートルを超え850マイクロメートル以下の粒子の前記充填砂に占める重量%が53重量%以上77重量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の充填砂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充填砂に関する発明である。本発明は特にスライディングノズル内への充填に適した充填砂に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
取鍋とは溶鋼を受けるための容器のことである。その取鍋の底部には例えばスライディングノズルが設けられている。スライディングノズルは、取鍋に入っている溶鋼を排出する。溶鋼が取鍋に入る前に、このスライディングノズルの内部には耐火性の充填砂が充填される。充填砂が充填されるのは、スライディングノズル内で溶鋼が凝固することを防止するためである。溶鋼が取鍋に入った後にこのスライディングノズルが開かれると、自然に充填砂は落下する。充填砂が落下すると、取鍋内の溶鋼はスライディングノズルから流出する。以下、取鍋底部の排出路に充填された充填砂が落下することにより溶鋼が排出路から流出可能となることは、「自然開孔」と称される。自然開孔が生じなければ、作業者が人為的に充填砂を落下させる作業が必要となる。その作業は危険な作業である。また、作業者が人為的に充填砂を落下させなければならない場合、その分、取鍋からの溶鋼の排出は遅くなる。その際、溶鋼が空気に触れることがある。溶鋼が空気に触れるとその品質に悪影響が生じることがある。そのような悪影響が生じることは損害の発生につながる。そのため、自然開孔率が100%である充填砂の実現が望まれている。
【0003】
特許文献1は、充填砂を開示する。この充填砂は、取鍋出鋼口に詰められる。この充填砂は、出鋼口内での溶鋼の凝固を防止する。この充填砂において、SiOの重量%は98重量%以上である。この充填砂において、アルカリ酸化物の重量%は1重量%未満である。特許文献1に開示された充填砂は、スライディングノズルを開いても充填砂が流出しない現象を抑制できる。
【0004】
特許文献2は、充填砂を開示する。この充填砂は、シリカ砂10~50重量%と、クロマイト砂50~90重量%とを配合してなる。そのシリカ砂は、粒径0.425mm以上1.18mm未満のものを95重量%以上含む。そのクロマイト砂は、粒径0.075mm以上0.85mm未満のものを95重量%以上含む。そのうち、0.106mm以上0.212mm未満のものは10重量%以上、0.3mm以上0.6mm未満のものは30重量%以上である。特許文献2に開示された充填砂によれば、より低いクロマイト砂含有量であっても炉外精錬を伴う高温長時間処理において高い自然開孔率を得ることができるである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64-48662号公報
【特許文献2】特開2006-198671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された充填砂には、自然開孔率の向上に限界があるという問題点がある。自然開孔率の向上に限界があるのは、焼結は防止できるものの、粒間の空隙に溶鋼が浸透してしまうためである。SiOの濃度を低くしたり低融点物を添加したりすると充填砂の粒子間が溶融物で満たされる。これにより溶鋼の浸透は防止される。しかしながら、SiOの濃度を低くしたり低融点物を添加したりすると、充填砂が長時間高温に晒されるような条件では、充填砂の焼結が進行してしまう。焼結が進行してしまった充填砂は自然開孔しなくなる。
【0007】
特許文献2に開示された充填砂にも、自然開孔率の向上に限界があるという問題点がある。自然開孔率の向上に限界があるのは、高い自然開孔率を得られるといえども高温環境下での焼結開始が避けられないためである。より高い自然開孔率を得るためには焼結開始温度をより高温化することが必要である。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するものである。本発明の目的は、焼結開始温度を高温化でき、かつ、溶鋼の浸透を抑えることができる充填砂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述された課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる充填砂は、クロマイトを含む。この充填砂が、二次粒子を含む。この二次粒子が複数の一次粒子を含む。それら複数の一次粒子の粒径が0マイクロメートルを超え50マイクロメートル以下である。この二次粒子に含まれる複数の一次粒子の少なくとも一部がクロマイトを含む。
【0010】
また、本発明の請求項2にかかる充填砂は、請求項1にかかる発明の構成に加えて、二次粒子が、20重量%以上50重量%未満のCrと、10重量%以上30重量%未満のFeOとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3にかかる充填砂は、請求項2にかかる発明の構成に加えて、Crの重量%が37.1重量%以上46.3重量%以下であり、FeOの重量%が21.1重量%以上26.4重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4にかかる充填砂は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項にかかる発明の構成に加えて、二次粒子が粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子を含み、その粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が90重量%以上100重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5にかかる充填砂は、請求項4にかかる発明の構成に加えて、粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が95重量%以上であり、粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子のうち粒径が300マイクロメートルを超え850マイクロメートル以下の粒子の充填砂に占める重量%が53重量%以上77重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の充填砂は、焼結開始温度を高温化でき、かつ、溶鋼の浸透を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のある実施形態にかかる充填砂が含む二次粒子の構成が示される概念図である。
図2】本発明のある実施形態にかかる充填砂製造方法の工程が示される概念図である。
図3】本発明のある実施形態にかかる充填砂の配合割合が表形式で示される図である。
図4】本発明のある実施形態にかかる充填砂の粒度分布が表形式で示される図である。
図5】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例1にかかるテストピースが示される写真である。
図6】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例2にかかるテストピースが示される写真である。
図7】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例3にかかるテストピースが示される写真である。
図8】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例4にかかるテストピースが示される写真である。
図9】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例5にかかるテストピースが示される写真である。
図10】焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の比較例1~2にかかるテストピースが示される写真である。
図11】本発明のある実施形態にかかる冷間強度が表形式で示される図である。
図12】本発明のある実施形態にかかる粒度比率と冷間強度との関係が表形式で示される図である。
図13】本発明のある実施形態にかかるエネルギ分散型X線分析結果が表形式で示される図である。
図14】本発明のある実施形態にかかる実施例と比較例との浸透深さが表形式で示される図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号が付されている。それらの名称および機能は同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
[充填砂の構成]
図1は、本実施形態にかかる充填砂が含む二次粒子10の構成が示される概念図である。本実施形態にかかる充填砂は、二次粒子10を含む。この二次粒子10が複数の一次粒子12を含む。それら複数の一次粒子12の粒径が0マイクロメートルを超え50マイクロメートル以下である。この二次粒子10に含まれる複数の一次粒子12の少なくとも一部がクロマイトを含む。
【0018】
好ましくは、上述された一次粒子12が、20重量%以上50重量%未満のCrと、10重量%以上30重量%未満のFeOとを含む。
【0019】
より好ましくは、上述されたCrの重量%が37.1重量%以上46.3重量%以下であり、上述されたFeOの重量%が21.1重量%以上26.4重量%以下である。
【0020】
好ましくは、上述された二次粒子10が、粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子を含む。その粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が90重量%以上100重量%以下である。
【0021】
より好ましくは、上述された粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が95重量%以上100重量%以下である。その粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子のうち粒径が300マイクロメートルを超え850マイクロメートル以下の粒子の充填砂に占める重量%が53重量%以上77重量%以下である。
【0022】
好ましくは、上述された二次粒子10はバインダ14を含む。バインダ14の種類は特に限定されない。二次粒子10および充填砂に占めるバインダ14の重量%は特に限定されない。バインダ14の例には、水、有機溶媒、無機バインダ、および、有機バインダがある。
【0023】
より好ましくは、上述されたバインダ14は、有機溶媒、又は、有機溶媒に溶解した有機バインダである。有機溶媒、又は、有機溶媒に溶解した有機バインダがバインダ14としてより好ましいのは、バインダ14が水分を含む場合のように二次粒子10に水分が残留しないためである。有機バインダの例には、デンプン、デキストリン、たん白、天然ゴム、タール、熱可塑性レジン、熱硬化性レジンがある。デンプンの例にはコーンスターチがある。たん白の例には、にかわ、カゼイン、大豆たん白がある。天然ゴムの例には、ラテックス、アラビアゴムがある。タールの例には、ピッチ、加工タールがある。熱可塑性レジンの例には、ビニール、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、アクリル、ポリアミド、ポリエチレン、セルロースがある。熱硬化性レジンの例には、ユリア、メラミン、フェノール、フラン、エポキシ、ポリエステル、ポリウレタンがある。
【0024】
[充填砂の製造方法]
本実施形態にかかる充填砂の製造方法は特に限定されない。例えば、本実施形態にかかる充填砂は、次に述べられる方法により製造されてもよい。その方法は、原料混合粉砕工程S40と、造粒工程S42と、粒度分布調整工程S44とを備える。
【0025】
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、シリカ系原料とクロマイト系原料とを所定の化学成分となるように混合する。シリカ系原料とクロマイト系原料とが混合されると、作業者は、そのシリカ系原料とクロマイト系原料との混合物を粒径50マイクロメートル以下になるまで粉砕する。本発明において、「シリカ系原料」とは、SiOの供給源となる原料をいう。シリカ原料の例には、珪砂、珪石、および、溶融シリカがある。「クロマイト系原料」とは、Cr、および、FeOの供給源となる原料をいう。クロマイト系原料の例には、クロマイト砂、および、クロマイトフラワーがある。シリカ系原料、および、クロマイト系原料は、これら例示したものに限定されない。さらに、シリカ系原料として上述したものの中から選ばれた1種又は複数種の混合体が用いられてもよい。クロマイト系原料として上述したものの中から選ばれた1種又は複数種の混合体が用いられてもよい。シリカ系原料としてどのようなものが用いられるかということ、および、クロマイト系原料としてどのようなものが用いられるかということは、充填砂の性状には大きな影響を与えない。上述されたシリカ系原料、および、上述されたクロマイト系原料には、Fe、TiO、CaO、MgO、NaO、KOの少なくとも一種が、本発明にかかる充填砂の作用を阻害しない範囲で含まれていてもよい。充填砂の総含有量に占めるその含有の割合は5重量%以下であることが好ましい。なお、原料混合粉砕工程S40において、シリカ系原料とクロマイト系原料とは、各々が粉砕された後に混合されてもよい。
【0026】
造粒工程S42において、作業者は、粒径50マイクロメートル以下になるまで粉砕されたシリカ系原料と粒径50マイクロメートル以下になるまで粉砕されたクロマイト系原料との混合物を周知の転動造粒機に投入する。好ましくは、作業者は、バインダ系原料もその転動造粒機に投入する。本発明において、「バインダ系原料」とは、二次粒子10のバインダ14となる物質の原料をいう。そのバインダ系原料の量は、公知の方法に準じて適宜決定すればよい。例えば、バインダ14としてポリビニールブチラールが使用される場合、作業者は、これを2-プロパノールに5~15重量%溶液となるように溶解させたものを、シリカ系原料、および、クロマイト系原料の混合物に対して10~30重量%添加する。その後、作業者は、その転動造粒機を作動させる。これにより、それらの混合物を含む(バインダ系原料が転動造粒機に投入された場合はこれも含む)粒子が製造される。なお、本実施形態において、造粒に用いる転動造粒機として公知のものが何ら制限を受けることなく用いられる。例えば、パン型造粒機、マルメライザー造粒機、高速撹拌造粒機などが造粒に用いる転動造粒機として用いられる。中でも、高速撹拌造粒機は造粒物の粒度分布の制御が容易であることなどから好適である。また、本工程における、転動造粒機への上述された混合物およびバインダ系原料の供給には、周知の転動造粒において使用されているものと同様のものが使用され得る。例えば、上述された混合物を転動造粒機へ供給するために、振動フィーダ又はスクリューフィーダが用いられ得る。振動フィーダおよびスクリューフィーダは供給量を制御し易い。上述されたバインダ系原料を転動造粒機へ供給するために、振動フィーダ又はスクリューフィーダが用いられ得る。高速撹拌造粒機が用いられる場合には、好ましくは、バインダ系原料は滴下により添加するか霧状に噴霧することで添加する。
【0027】
粒度分布調整工程S44において、作業者は、造粒工程S42にて製造された粒子の集合体から、1180マイクロメートルよりも大きい粒子と106マイクロメートル以下の小さな粒子とを除去する。除去のための具体的な手段は特に限定されない。除去のための具体的な手段の例には篩分けがある。これにより、1180マイクロメートルよりも大きい粒子と106マイクロメートル以下の小さな粒子とが除去された粒子の集合体を粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子の重量%が90重量%以上100重量%以下である充填砂とすることができる。なお、本実施形態において、粒度分布調整工程S44は実施されなくてもよい。
【0028】
[充填砂の使用方法]
本発明にかかる充填砂は、取鍋の底部に設けられた溶鋼の排出路に充填されるために用いられる。好ましくは、本発明にかかる充填砂は、溶鋼が取鍋に入る前にスライディングノズル内に充填される。溶鋼が取鍋に入った後にこのスライディングノズルが開かれると、自然に充填砂は落下する。充填砂が落下することによって自然開口が生じる。
【実施例0029】
以下、本発明の一実施形態における実施例1~5が比較例1~2と共に説明される。
[実施例1]
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、クロマイト砂(商品名はSamancor Chrome Limited社製のChromite sand Foundry grade AFS44-50である。以下の実施例および比較例においても同様である。)を原料収容部が内径34センチメートルで高さ32センチメートルの円柱型であるボールミルに投入し、そのクロマイト砂の粒径が50マイクロメートル以下になるまで粉砕した。造粒工程S42において、作業者は、原料混合粉砕工程S40において得られたクロマイト一次粒子を転動造粒機(装置名は松坂技研株式會社製のレディゲ・ミキサーM20である)に投入し、10分間撹拌した。これにより、クロマイト二次粒子の集合体が得られた。粒度分布調整工程S44において、作業者は、造粒工程S42にて得られたクロマイト二次粒子の集合体を円型振動ふるい機(装置名は株式会社興和工業所製のKGO-500である)に投入し、そのクロマイト二次粒子の集合体から1180マイクロメートルよりも大きい粒子と106マイクロメートル以下の小さな粒子とを除去した。それらの粒子が除去された後のクロマイト二次粒子の集合体が、本実施例にかかる充填砂である。
【0030】
[実施例2]
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、珪砂(商品名は株式会社田代硅砂砿業所製の6号珪砂である。以下の実施例1~7においても同様である。)20重量%とクロマイト砂80重量%とを上述されたボールミルに投入し、それらの砂の粒径が50マイクロメートル以下になるまで粉砕した。以降は、実施例1と同様の手順で本実施例にかかる充填砂を得た。
【0031】
[実施例3]
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、珪砂30重量%とクロマイト砂70重量%とを上述されたボールミルに投入し、それらの砂の粒径が50マイクロメートル以下になるまで粉砕した。以降は、実施例1と同様の手順で本実施例にかかる充填砂を得た。
【0032】
[実施例4]
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、珪砂40重量%とクロマイト砂60重量%とを上述されたボールミルに投入し、それらの砂の粒径が50マイクロメートル以下になるまで粉砕した。以降は、実施例1と同様の手順で本実施例にかかる充填砂を得た。
【0033】
[実施例5]
原料混合粉砕工程S40において、作業者は、珪砂50重量%とクロマイト砂50重量%とを上述されたボールミルに投入し、それらの砂の粒径が50マイクロメートル以下になるまで粉砕した。以降は、実施例1と同様の手順で本実施例にかかる充填砂を得た。
【0034】
[実施例6]
作業者は、実施例3にかかる充填砂に対して、いったん除去された粒子のうち粒径が106マイクロメートル以下の小さな粒子を再び添加した。その小さな粒子の添加量は添加前の充填砂の5重量%となる量であった。その小さな粒子が添加された充填砂が、本実施例にかかる充填砂である。
【0035】
[実施例7]
作業者は、実施例3にかかる充填砂に対して、いったん除去された粒子のうち粒径が106マイクロメートル以下の小さな粒子を再び添加した。その小さな粒子の添加量は添加前の充填砂の10重量%となる量であった。その小さな粒子が添加された充填砂が、本実施例にかかる充填砂である。
【0036】
[比較例1]
作業者は、珪砂(商品名は三河珪石株式会社製の4号珪砂である。)30重量%とクロマイト砂70重量%とを混合し充填砂を得た。その充填砂が、本比較例にかかる充填砂である。
【0037】
[比較例2]
作業者は、珪砂(商品名は三河珪石株式会社製の5号珪砂である。)30重量%とクロマイト砂70重量%とを混合し充填砂を得た。その充填砂が、本比較例にかかる充填砂である。
【0038】
[実施例にかかる充填砂の効果]
[充填砂の成分]
作業者は、実施例1~5にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂との配合割合を、蛍光X線分析装置(装置名は株式会社リガク製のZSX100eである。)によって分析した。図3には実施例1~5にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂との配合割合が示される。
【0039】
[充填砂の粒度分布]
作業者は、実施例1~7にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂との粒度分布を、鋳型砂の粒度試験方法(JISZ2601)によって測定した。すなわち、篩の呼び寸法が、2360マイクロメートル、1180マイクロメートル、850マイクロメートル、600マイクロメートル、425マイクロメートル、300マイクロメートル、212マイクロメートル、150マイクロメートル、106マイクロメートル、75マイクロメートル、53マイクロメートル、となる標準篩を選び、それらを重ねて試料100グラムを投入して、ロータップ篩機で15分間篩い分けた。そして各篩の上に残った重量を計測して分布割合とした。図4には実施例1~7にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂との粒度分布が示される。
【0040】
[充填砂の冷間強度および表面成分ならびに粒径]
作業者は、実施例1にかかる充填砂1キログラムに対して成型用硬化剤(製品名は花王クエーカー株式会社製のカオーステップ(登録商標)DH-35である)2.7グラム、成型用樹脂(製品名は花王クエーカー株式会社製のカオーステップ(登録商標)SH-8010である)14グラムを添加しそれらを混錬した。混錬された充填砂と成型用バインダとの混合物は「テストピース用試料」と称される。作業者は、テストピース用試料をφ30ミリメートル×30ミリメートルの型に充填した。作業者は同様の手順でテストピース用試料を合計4個の型に充填した。合計4個の型にテストピース用試料が作成されると、作業者は、電気炉(装置名は小鳥居電気炉製作所製のカンタルスーパー電気炉である)にてそれらテストピース用試料が充填された型を2時間(7200秒)焼成した。それらの型が焼成される温度は互いに異なっていた。それらの型が焼成される温度は、1000℃(1273.15ケルビン)、1200℃(1473.15ケルビン)、1400℃(1673.15ケルビン)、1600℃(1873.15ケルビン)であった。焼成終了後、テストピース用試料は型から取り出された。型から取り出されたテストピース用試料は「テストピース」と称される。図5は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後のテストピースが示される写真である。図5から明らかなように、そのテストピースは型から取り出されたとき流れ出た。その結果、そのテストピースが焼結していないことは明らかである。テストピースは常温となるまで冷却された。テストピースの冷却後、作業者は、抗圧力試験機(装置名は高千穂精機株式会社製のH―3000Dである)にてそのテストピースの冷間強度を測定した。ただし型から取り出された際に形状が崩れたテストピースについては冷間強度が測定されなかった。作業者は、実施例2~5にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂とについても同様の手順で冷間強度を測定した。図6は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例2にかかるテストピースが示される写真である。図7は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例3にかかるテストピースが示される写真である。図8は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例4にかかるテストピースが示される写真である。図9は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型から取り出された直後の実施例5にかかるテストピースが示される写真である。図6乃至図9から明らかなように、それらのテストピースはいずれも型から取り出されたとき流れ出た。その結果、それらのテストピースが焼結していないことは明らかである。図10は、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)の場合における型に充填された状態の比較例1~2にかかるテストピースが示される写真である。図10においてトングに挟まれていないのが比較例1にかかるテストピースである。図10においてトングに挟まれているのが比較例2にかかるテストピースである。作業者は、実施例6~7にかかる充填砂についてはテストピースを1個ずつ作成した。それらのテストピースの焼成温度は1600℃(1873.15ケルビン)であった。また、作業者は、比較例1に用いられたクロマイト砂を用いて同様の手順によりテストピースを4個作成した。そのテストピースが焼成される温度は、1000℃(1273.15ケルビン)、1200℃(1473.15ケルビン)、1400℃(1673.15ケルビン)、1600℃(1873.15ケルビン)であった。作業者は、そのテストピースについても同様の手順で冷間強度を測定した。
【0041】
図11には実施例1~7にかかるテストピースと比較例1~2にかかるテストピースとにかかる冷間強度が示される。図11に示される通り、実施例1~5にかかるテストピースは焼成温度1400℃(1673.15ケルビン)以下のとき冷間強度が0メガパスカルであった。これは、型から取り出された際にテストピースの形状が崩れたためである。このことはそれらのテストピースが焼結していなかったことを示す。一方、比較例1~2にかかるテストピースは焼成温度に関わらず冷間温度が0メガパスカルではなかった。このことはそれらのテストピースが焼結したことを示す。焼成温度1600℃(1873.15ケルビン)以下のとき、実施例1~7にかかるテストピースと比較例1~2にかかるテストピースとにかかる冷間強度はいずれも大きな違いはなかった。
【0042】
図12には粒度比率と冷間強度との関係が示される。表4から明らかな通り、実施例1~3と実施例6とにかかるテストピースの焼成温度1600℃(1873.15ケルビン)における冷間強度は、比較例1にかかるテストピースの焼成温度1600℃(1873.15ケルビン)における冷間強度と同程度の値となる。
【0043】
[アイアンビードの形成に対する影響]
作業者は、実施例1~5にかかるテストピースと比較例1に用いられたクロマイト砂にかかるテストピースとの表面成分を測定した。表面成分の測定には、焼成温度1200℃(1473.15ケルビン)のテストピースと、焼成温度1400℃(1673.15ケルビン)のテストピースと、焼成温度1600℃(1873.15ケルビン)のテストピースとが用いられた。表面成分の測定にはエネルギ分散型X線分析装置(装置名はオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のINCA(登録商標) Penta FET x3である)が用いられた。その測定の結果である、FeOに対するCrの重量%が図13に示されている。図13に示されているように、実施例1~5にかかるテストピースのうち焼成温度が1200℃(1473.15ケルビン)であるものの値が大きい。このことは、実施例1~5にかかるテストピースのうち焼成温度が1200℃(1473.15ケルビン)のものにおいてCrの重量%が大きいことを示す。上述されたように、充填砂の焼結性はクロマイト砂が焼成された際のアイアンビードの析出に起因する所が大きい。アイアンビードはFeを含む。これらのことから、充填砂表面のFeOに対するCrの重量%は焼結性との関係性を有すると推測される。そのような関係性があると推測されるので、実施例1~5にかかる充填砂については焼成温度が1200℃(1473.15ケルビン)のときアイアンビードの析出が抑えられていると推測される。アイアンビードの析出が抑えられていると推測されるので、実施例1~5にかかる充填砂については焼成温度が1200℃(1473.15ケルビン)のとき焼結性が低いと推測される。
【0044】
[溶鋼の浸透に対する効果]
作業者は、実施例1にかかる充填砂からテストピースを作成した。テストピースの作成手順は上述されたものと同様である。作成者は、実施例2~5にかかる充填砂と比較例1~2にかかる充填砂とによっても同様にテストピースを作成した。それらのテストピースが作成されると、作業者は、それらのテストピースを上述された電気炉で焼成した。その際、それらのテストピースの上には鉄球が載せられていた。1つのテストピースの上には5グラムの鉄球が載せられていた。それらの鉄球の寸法はΦ1ミリメートルであった。それらの鉄球の名称はW Abrasives社製のスチールショットであった。電気炉での焼成温度は1600℃(1873.15ケルビン)であった。焼成時間は2時間(7200秒)であった。焼成されたテストピースは常温となるまで空気中で放置された。それらのテストピースの温度が常温になると、作業者は、それらのテストピースを切断した。それらのテストピースは、鉄球が載せられていた個所の断面が露出するように切断された。それらのテストピースが切断されると、作業者は、テストピースの表面から溶鋼が浸透することによって形成された層の厚さ(浸透深さ)を測定した。図14には、その浸透深さが示される。図14から明らかな通り、実施例1~5にかかるその浸透深さは、比較例1~2にかかるその浸透深さに比べて薄い。特に、実施例1~2にかかるその浸透深さは、比較例1~2および実施例3~5にかかるその浸透深さに比べて大幅に薄い。
【0045】
[まとめ]
以上の説明から明らかな通り、充填砂が次に述べられる要件を満たすとき、焼結開始温度を高温化でき、かつ、溶鋼の浸透を抑えることができる。その要件は、充填砂が二次粒子10を含み、粒径が0マイクロメートルを超え50マイクロメートル以下である複数の一次粒子12をその二次粒子10が含み、かつ、二次粒子10に含まれる複数の一次粒子12の少なくとも一部がクロマイトを含むというものである。
【0046】
また、充填砂が上述された要件に加えて次に述べられる2つの要件を満たすとき、焼結開始温度を特に高温化できる。その第1の要件は、二次粒子10のうち粒径が300マイクロメートル超850マイクロメートル以下のものの充填砂に占める重量%が53重量%以上77重量%以下であるというものである。その第2の要件は、二次粒子10のうち粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が95重量%以上であるというものである。二次粒子10のうち粒径が106マイクロメートルを超え1180マイクロメートル以下の粒子が充填砂に占める重量%が99.9重量%以上であるとき、焼結開始温度を一層高温化できる。しかもその場合にはクロマイト砂の使用量を抑えることも可能となる。
【0047】
また、充填砂が上述された要件に加えて次に述べられる要件を満たすとき、溶鋼の浸透を特に抑えることができる。その要件は、一次粒子12が、37.1重量%以上46.3重量%以下のCrと21.1重量%以上26.4重量%以下のFeOとを含むというものである。
【符号の説明】
【0048】
10…充填砂
12…二次粒子
14…一次粒子
16…バインダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
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図13
図14