IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山崎産業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061321
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】液状防汚洗浄剤組成物及び防汚方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/382 20060101AFI20220411BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 1/40 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 1/58 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20220411BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20220411BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C11D3/382
C11D1/75
C11D1/62
C11D1/40
C11D1/58
C11D3/20
C11D3/33
C11D1/68
C09K3/00 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169252
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】垣内 秀介
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC14
4H003AE02
4H003AE05
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA06
4H003DA09
4H003DA12
4H003DB02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB08
4H003EB15
4H003EB16
4H003EB46
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA06
4H003FA07
4H003FA17
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】 親水性表面、疎水性表面を問わず硬質表面全般にわたり処理対象の防汚性が長く継続し得る硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物及び防汚方法の提供。
【解決手段】 a)キサンタンガム:0.01~5重量%、b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%、c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%を含有し、pHが3~11である硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物。a)キサンタンガム:0.01~5重量%、b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%、c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%を含有し、pHが3~11である液状組成物を用いて親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面を処理する防汚方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)キサンタンガム:0.01~5重量%
b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%
c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%
を含有し、pHが3~11である硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物。
【請求項2】
上記b)のカチオン性を有する状態にある界面活性剤が、アルキルアミンオキシド、アルケニルアミンオキシド、アルキルアミン塩型、アルケニルアミン塩型、第4級アンモニウム塩型、及び、ピリジン環塩含有型からなる群から選ばれる1又は2以上の界面活性剤である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
上記b)のカチオン性を有する状態にある界面活性剤が、炭素数6~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つ有するものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
キサンタンガム中のアニオン基(-COO)のモル濃度(但し、主鎖がグルコース2分子、側鎖がマンノース2分子とグルクロン酸1分子で構成される繰り返し単位毎に2つのカルボン酸を有しているとした計算によるモル濃度)と、カチオン性を有する状態にある界面活性剤中のカチオン基(N)のモル濃度の比(COO/N)が0.02~15である請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記c)における金属キレート能を有するポリカルボン酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレントリ酢酸、及び、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸からなる群から選ばれる1又は2以上のポリカルボン酸である請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アルキルグルコシドを0.5~10重量%含有する請求項1乃至5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ジエチレングリコールモノブチルエーテルを2~15重量%含有する請求項1乃至6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記硬質表面が、親水性材料又は疎水性材料からなるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記硬質表面が、合成樹脂、セラミックス、ステンレス鋼又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記硬質表面が合成樹脂からなるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
上記合成樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプレピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂又はウレタン樹脂である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
上記硬質表面がセラミックスからなるものである請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
a)キサンタンガム:0.01~5重量%
b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%
c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%
を含有し、pHが3~11である液状組成物を用いて親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面を処理する防汚方法。
【請求項14】
上記硬質表面が、合成樹脂、セラミックス、ステンレス鋼又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金からなるものである請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面を処理することにより汚れの抑制を行い得る液状防汚洗浄剤組成物及び防汚方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住居内では様々な場所で汚れが発生する。それらの汚れを除去するために各種の洗浄剤が提供されている。
【0003】
特に台所や浴室、洗面台、トイレなどの水回りは、使用頻度も高く、住居内で最も汚れが気になる場所である。そのため、掃除頻度も高く、清潔を維持するのに手間のかかる場所となっている。
【0004】
そういう状況を背景に、トイレなどでは掃除を簡単にするための製品が数多く提案されている。その中には、トイレの手洗いタンクの蛇口下に設置して、水を流す際に、少量の洗浄剤が供給されて、便器の内側の汚れを洗浄し、汚れをつきにくくするような水洗オート洗浄剤が提案されている。
【0005】
あるいはまた、便器の内外や便器回りに直接スプレーして、汚れを除去し汚れをつきにくくする洗浄剤も提供されている。
【0006】
このような汚れをつきにくくする、いわゆる防汚性の技術は、これまで数多くのものが見出されている。
【0007】
例えば、特開2002-060784には、分子量1000~6000000で、4級アンモニウム基を有するモノマー単位の比率が全モノマーに対して10~100モル%である重合体、及び分子量1000以下の4級アンモニウム基を有する殺菌剤を含む硬質表面用殺菌洗浄剤が記載されている。
【0008】
特開2002-146395には、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤、並びに4級アンモニウム基又は3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を含有する硬質表面用洗浄剤が記載されている。
【0009】
特開2003-313600には、分子中にアミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマーと、-SO-で表されるモノマーとを含む硬質表面用防汚洗浄剤が記載されている。
【0010】
以上のように、親水性の硬質表面(陶器タイル)が主であるトイレには多様な製品が提案されているが、疎水性の硬質表面(人工大理石、プラスチック、ステンレスなど)が主である浴槽やシンクなどの表面に吸着して、表面を親水化し、油汚れや皮脂汚れの付着を防止するような製品は、ほとんど認められない。
【0011】
もともと、疎水性表面は油汚れや皮脂汚れとの親和性が高く、汚れが付着しやすいため、浴槽などでは使用する度に洗浄剤で擦り洗いなどを実施している方が多数存在する。特に高齢者や妊婦などにとっては、たいへん過酷な作業となっている。そのような中で、疎水性表面の親水化改質をもたらす技術も提案されている。
【0012】
例えば、特表2008-523184には、疎水性基を含有するカチオン性アクリル系ポリマーを含む洗浄補助剤が記載されている。
【0013】
特表2009-545642には、両親媒性ブロックコポリマーからなる組成物が記載されている。
【0014】
特開2015-206020、特開2015-206021、特開2016-199679、特開2016-222773には、スルホベタイン構造を有するモノマーとアルキル基(疎水部)を有するモノマーとの共重合体を含有する洗浄剤が記載されている。
【0015】
しかしながら、疎水性表面の防汚に関しては、実使用上、充分な防汚効果とその効果の持続性において課題があり、そのような製品はほとんど実用化されていない。また、例えば、浴室浴槽の材質なども、鏡、タイル、ホーロー、人口大理石(ポリエステル、アクリルなど)、塩化ビニル、ステンレスなど様々あり、親水性面から疎水性面まであらゆる硬質表面の防汚性が、一つの洗浄剤で達成されることが望まれる。
【0016】
また、例えば、特許2963065には、塩化ベンザルコニウム、金属キレート剤、水溶性溶剤、増粘多糖類(キサンタンガムなど)を含有し、pH6~8の台所用洗浄剤が記載されている。該明細書中の<発明の効果>では、特にケイ酸やカルシウムを主体とする無機複合汚れや水アカ等の汚れに対する高い洗浄力を有すると共に、すすぎ性、拭き取り性に優れ、仕上り性も良好との記載がある。実施例においても、一般家庭の流しに貼り付けたステンレスピースに付着した実際汚れの洗浄性を評価している。しかしながら、硬質表面の防汚に関する記載は認められない。
【0017】
特許5779390には、有機酸および無機酸から選択される酸、アニオン性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、増粘多糖類(キサンタンガムなど)を必須とするpH3以下のトイレ用洗浄剤が開示されている。その段落0035には、便器への洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性を向上させる目的で増粘性多糖類を用いることが記載されているが、油性汚れの防汚性、プラスチック面の防汚に関する記載は認められない。また、段落0044には、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤を用いると、アニオン界面活性剤の機能が低下し、洗剤残留性、水垢抑制性、広がり性を著しく低下するために、カチオン性界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましいとの記載がある。
【0018】
特許5637586には、スルファミン酸、アルキルアミンオキシド、プロピレングリコール、多糖類から選択される増粘剤(キサンタンガムなど)を必須とする洗浄剤が開示されている。該明細書中段落0006には、カルシウムやケイ酸等の除去しにくい蓄積無機汚れに対して高い洗浄力を持つとされるが、油性汚れの防汚性、プラスチック表面の防汚に関する記載は認められない。
【0019】
特開2017-78134には、非イオン界面活性剤、グリコール系溶剤、アミノカルボン酸型キレート剤、水溶性高分子(キサンタンガムなど)を含有する、細管粘度計で測定される動粘度が1.5~20mm/sである浴室用洗浄剤が開示されている。その段落0006には、洗浄剤の付着滞留性と広がり性の両方を有することで、垂直面に対しても優れた洗浄力が得られることが記載されている。また段落0037には、水溶性高分子は、浴槽の垂直面における付着滞留性と広がり性を付与するために用いられると記載される。また、実施例では、ガラス繊維強化プラスチックのテストピースを用いた洗浄力評価が記載されている。一方、油性汚れ、皮脂汚れの防汚、プラスチック表面の防汚に関する記載は認められない。
【0020】
特許6584004には、非石鹸系アニオン界面活性剤、水溶性溶剤、アミノカルボン酸型キレート剤、水溶性高分子を必須とし、pH10~12に調整された泡吐出洗浄剤が開示されている。当該発明では、水が入れられた浴槽内の喫水線部周囲に洗浄剤の泡を直接付着させ、ついで浴槽内から水を排出する洗浄方法を開示している。これにより、従来の擦り洗いを省く利便性を提供している。段落0030には、水溶性高分子は水溶性溶剤と併用することで、容器から吐出された泡が水中に拡散されるのを抑制し、泡の保持性が高められると記載される。一方、油性汚れ、皮脂汚れの防汚、プラスチック表面の防汚に関する記載は認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2002-60784号公報
【特許文献2】特開2002-146395号公報
【特許文献3】特表2008-523184号公報
【特許文献4】特表2009-545642号公報
【特許文献5】特開2015-206020号公報
【特許文献6】特開2015-206021号公報
【特許文献7】特開2016-199679号公報
【特許文献8】特開2016-222773号公報
【特許文献9】特許2963065号公報
【特許文献10】特許5779390号公報
【特許文献11】特許5637586号公報
【特許文献12】特開2017-78134号公報
【特許文献13】特許6584004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、親水性表面、疎水性表面を問わず硬質表面全般にわたり処理対象の防汚性が長く継続し得る硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物及び防汚方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、例えば次のように表すことができる。
a)キサンタンガム:0.01~5重量%
b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%
c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%
を含有し、pHが3~11である硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物。
【0024】
本発明はまた、次のように表すことができる。
a)キサンタンガム:0.01~5重量%
b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%
c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%
を含有し、pHが3~11である液状組成物を用いて親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面を処理する防汚方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、親水性表面、疎水性表面を問わず硬質表面全般にわたり処理対象の防汚性が長く継続し得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1) 本発明の硬質表面用の液状防汚洗浄剤組成物及び本発明の親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面を処理する防汚方法に用いる液状組成物は、
a)キサンタンガム:0.01~5重量%
b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤:0.02~10重量%
c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩:0.1~15重量%
を含有するものであり、そのpHは3~11である。
【0027】
(1-1) 本発明において防汚機能を発現するのは前記「a)キサンタンガム」である。
【0028】
キサンタンガムは、下記一般式(I)で表される多糖類であり、分子量は約200万又は1300万から5000万とされ、主鎖がグルコース2分子、側鎖がマンノース2分子とグルクロン酸1分子で構成される繰り返し単位からなる。
【0029】
【化1】
....(I)
【0030】
キサンタンガムは、グルクロン酸に含まれるカルボキシル基及び末端のマンノース残基が持っていることがあるピルビン酸により、マイナスの荷電を有する水溶性高分子である。本発明における前記液状組成物(以下、「液状防汚洗浄剤組成物」を含めて「液状組成物」とも言う。)が硬質表面に適用された場合に、このマイナス荷電が、その硬質表面の親水化をもたらすものと推定される。
【0031】
多糖類としては、種々のものが挙げられるが、陶器タイルなどの親水性硬質表面からプラスチックやステンレス鋼などの疎水性硬質表面までを改質して、優れた防汚性を発揮できるのはキサンタンガムであり、この点は従来知られていない。
【0032】
陶器タイル、陶磁器、ガラス、ホーローを含むセラミックス等の親水性硬質表面については、キサンタンガム単独での処理でも処理対象表面に吸着して防汚機能を発揮し得るが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等のプラスチック(合成樹脂)やステンレス鋼、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等の疎水性硬質表面について防汚機能を発揮するには、上記「b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤」を併用することを要する。
【0033】
しかしながら、キサンタンガムが側鎖にカルボン酸を有するため、キサンタンガムとカチオン性を有する状態にある界面活性剤(以下、「カチオン状態界面活性剤」とも言う。)が相当量併用された場合、直ちに不溶性のコンプレックスを形成してしまい、洗浄剤又は防汚剤として利用できなくなる。そこで、更に上記「c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩」を含有することが必要となる。
【0034】
本発明における前記液状組成物を用いて前記のような疎水性硬質表面を処理した場合、カチオン状態界面活性剤におけるアルキル基やアルケニル基等の疎水部が、疎水性相互作用によりその疎水性硬質表面に吸着し、更にカチオン状態界面活性剤におけるカチオン基とキサンタンガムのアニオン基が静電的に引き合うことにより、前記疎水性硬質表面にキサンタンガムが吸着するものと推定される。これにより、前記疎水性硬質表面が、親水性に改質され、油性汚れが付着しづらくなるものと考えられる。
【0035】
本発明における前記液状組成物を用いて前記のような親水性硬質表面を処理した場合、その親水性硬質表面は二酸化ケイ素等により構成されてマイナス荷電を有するので、カチオン状態界面活性剤が静電的に吸着する。更に、キサンタンガムのアニオン基が、カチオン状態界面活性剤におけるカチオン基に静電的に引き寄せられることで、キサンタンガムが親水性硬質表面に吸着することになると推定される。これにより、キサンタンガム単独で処理した場合に比べて親水性硬質表面に対し更に優れた防汚効果を発揮し得ると考えられる。
【0036】
(1-2) このように、本発明の液状防汚洗浄剤組成物及び本発明の防汚方法は、例えば住居内外全般、特に、浴室や浴槽、風呂桶、風呂椅子、洗面台、流し台、便器等の水回りにおける、ガラスや陶器、陶器タイル、ホーローなどの親水性硬質表面、並びに、人工大理石、FRP、ポリプロピレン、塩化ビニルなどのプラスチック、ステンレス鋼、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等の疎水性硬質表面を改質して、油性汚れ、皮脂汚れ、石鹸カス、タンパク質等の疎水性汚れの付着を持続的に抑制し、付着した汚れを除去し易くする防汚作用を発揮し得る。
【0037】
カチオン性を有する界面活性剤は、浴室・浴槽の代表的な汚れである石鹸カスと称される脂肪酸金属塩の金属イオンと置換反応を起こして、汚れを分解しやすくする効果があると考えられる。
【0038】
更に、本発明の液状防汚洗浄剤組成物及び方法を、浴槽に多く用いられる種々のプラスチックやステンレス鋼、アルミニウム若しくはアルミニウム合金といった疎水性硬質表面に適用することにより、その硬質表面にキサンタンガムを吸着させて、持続的な防汚効果を実現し得る。その疎水性硬質表面を水で繰り返し濯いでも、プラスチックやステンレス鋼、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の表面は親水性を保ち、石鹸カスの付着や皮脂汚れなどの油性汚れの付着が抑制される。 また、浴室の壁や床、洗面台などに利用されている陶器タイルや鏡等の二酸化ケイ素等からなる親水性硬質表面に適用した場合も、その親水性硬質表面の親水性が増し、油性汚れの付着を持続的に抑制し得る。
【0039】
(2) キサンタンガム
【0040】
前記本発明における液状組成物中の「a)キサンタンガム」の濃度は、0.01~5重量%である。
【0041】
0.01重量%未満であると、充分な防汚効果が発揮されない。5.0重量%を超えると、粘度が高くなりすぎて、洗浄剤のハンドリング性を損なうことになる。好ましくは、0.025~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.25~0.6重量%である。
【0042】
本発明で用いられるキサンタンガムは、多糖類の一つであるが、種々の多糖類の中でも、とりわけプラスチック(合成樹脂)やステンレス鋼、アルミニウム若しくはアルミニウム合金などの疎水性硬質表面(特にプラスチックからなる疎水性硬質表面)に対する防汚性が優れている。
【0043】
また、キサンタンガムは、他の多糖類に比較して低濃度で高粘度を示す特性を有する一方、攪拌等におけるシェア(shear 剪断力)がかかると急激に粘度が下がる性質を有する。そのため、キサンタンガムを含有させた液状組成物は、例えば、泡吐出容器などでのスムーズな吐出が可能である、界面活性剤による起泡性を損なわない、浴槽や浴室壁などの垂直面に留まりやすい等の性質を示し、洗浄剤としての洗浄性や防汚剤としての防汚性の機能発現を、使いやすさの面から後押しするものである。
【0044】
(3) カチオン性を有する状態にある界面活性剤
【0045】
(3-1) 前記本発明における液状組成物には、「b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤」が用いられる。
【0046】
カチオン性を有する状態にある界面活性剤というのは、カチオン性界面活性剤の他、例えばpHが一定の範囲である場合にカチオン性を有する界面活性剤を含む。例えば、pHが一定の範囲にあって、カチオン性のみ有する状態にある両性界面活性剤は含むが、カチオン性とアニオン性を一分子内に同時に有するような状態の両性界面活性剤は含まない。
【0047】
前記液状組成物において、カチオン状態界面活性剤は、上述のように、キサンタンガムが疎水性硬質表面又は親水性硬質表面に吸着して、水で濯いでもキサンタンガムが除去されることを、一定程度(防汚効果を発揮し得る程度、例えば硬質表面を薄くコートする状態となし得る程度)防ぎ得る定着剤として機能する。
【0048】
前記本発明における液状組成物中の「b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤」の濃度は0.02~10重量%である。0.02重量%未満であると、疎水性表面でのキサンタンガムの防汚性が充分でなく、10.0重量%を超えると過剰量となる。
【0049】
キサンタンガム中のアニオン基(-COO)のモル濃度と、カチオン性を有する状態にある界面活性剤中のカチオン基(N)のモル濃度の比(COO/N)は、0.02~15であることが好ましい。より好ましくは、0.05~6、更に好ましくは0.1~3、更に一層好ましくは0.2~1.5である。
【0050】
キサンタンガム中のアニオン基(-COO)のモル濃度は、以下のようにして算出される。キサンタンガムの1ユニット単位(主鎖がグルコース2分子、側鎖がマンノース2分子とグルクロン酸1分子で構成される繰り返し単位)の構造は一般式(I)で表される。キサンタンガム中の全てのユニットには、グルクロン酸と末端のマンノースに連結するピルビン酸由来の2つのカルボン酸を有していると仮定して計算する。カルボン酸の対イオンとして、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)も存在しているが、ここでは-COOHとして計算する。そうすると、1ユニットあたりの化学式はC35H49O29と表され、分子量は933となる。従って、カルボン酸当量は466.5となる。これらより、アニオン基(-COO)のモル濃度を算出する。
【0051】
一方、カチオン状態界面活性剤中のカチオン基(N)のモル濃度は、カチオン状態界面活性剤の分子量より算出される。例えば、ドデシルアミンオキシドであれば、分子量は229.4、ドデシルトリメチルアンモニウム塩であれば、分子量は263.9であり、それらよりカチオン基(N)のモル濃度を算出する。
【0052】
(3-2) 前記本発明における「b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤」としては、pH8以下で使用されるアルキルアミンオキシド及びアルケニルアミンオキシド、並びに、アルキルアミン塩型若しくはアルケニルアミン塩型、第4級アンモニウム塩型、ピリジン環塩含有型が好ましいが、これらに限られるものではない。カチオン性を有する状態にある界面活性剤は、何れか1種を用いることができる他、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
(i) アルキルアミンオキシド及びアルケニルアミンオキシドは、pHによって、カチオン性と非イオン性の両方の性質を示し、下記のように中性~酸性側のpHでカチオン性を呈する。
【0054】
【化2】
【0055】
アルキルアミンオキシド及びアルケニルアミンオキシドの一方又は両方を、前記本発明における液状組成物中で、親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面にキサンタンガムを吸着させる定着剤として機能させるには、すなわち、カチオン性を有する状態(カチオン性を帯びた状態)にある界面活性剤として含有するには、その液状組成物のpHは3~8に調整されることが好ましい。より好ましくはpH3~6である。pHを中性~酸性側に調整する剤としては、有機酸又は無機酸を使用することができる。pHの安定性の点からは有機酸が好ましく、特にクエン酸が好ましい。
【0056】
アルキルアミンオキシドにおけるアルキル基(又はアルケニルアミンオキシドにおけるアルケニル基)の炭素数は、6~18であることが好ましい。より好ましくは炭素数10~16である。具体的には、炭素数10~16のアルキル基を有するアミンオキシドがより好ましい。更には、ドデシル(ラウリル)アミンオキシドが特に好ましい。
【0057】
(ii) アルキルアミン塩型及びアルケニルアミン塩型としては、モノアルキル(又はアルケニル)アミン、ジアルキル(又はジアルケニル)アミン、トリアルキル(又はトリアルケニル)アミンが好ましい。
【0058】
アルキルアミン塩型におけるアルキル基(又はアルケニルアミン塩型におけるアルケニル基)の炭素数は、6~20であることが好ましい。より好ましくは炭素数10~18である。アルキル基(又はアルケニル基)は、直鎖又は分岐鎖とすることができるが、好ましくは直鎖である。好ましい具体例としては、LONZA社のLONZABAC12[N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン](「LONZABAC」は商標)が挙げられる。
【0059】
(iii) 第4級アミン塩型としては、テトラアルキル(又はテトラアルケニル)アンモニウム塩、あるいはベンジルトリアルキル(又はトリアルケニル)アンモニウム塩が好ましい。
【0060】
第4級アミン塩型におけるアルキル基またはアルケニル基の炭素数は、6~20であることが好ましい。より好ましくは炭素数10~18である。アルキル基(又はアルケニル基)は、直鎖又は分岐鎖とすることができるが、好ましくは直鎖である。好ましい具体例としては、塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム、塩化テトラデシルトリメチル4級アンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチル4級アンモニウム、炭素数8~17のアルキル基を有する塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、N,N-ジデシル-N-メチルポリ(オキシエチル)アンモニウムプロピオネートが特に好ましい。
【0061】
(iv) ピリジン環塩含有型としては、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウム塩が好ましい。アルキル基(又はアルケニル基)の炭素数は6~20であることが好ましい。より好ましくは炭素数10~18である。好ましい具体例としては、塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0062】
(4) 金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩
【0063】
(4-1) 前記本発明における液状組成物には、「c)金属キレート能を有するポリカルボン酸(すなわち、金属イオンと結合してキレート化合物を形成する二座以上の配位子をもつ、二価以上のカルボン酸)および/またはその塩(以下、「本キレート剤」とも言う。)」が用いられる。
【0064】
上述のように、側鎖にカルボン酸を有しアニオン性であるキサンタンガムとカチオン状態界面活性剤が混合された状態においては、静電的な相互作用によりコンプレックスを形成して強固なゲルが生成してしまい、不均一組成となるために洗浄剤及び防汚剤としての機能を果たせなくなる。そこで、コンプレックス形成による強固なゲルの生成を抑制して、均一状態に混合し得るものとするために、前記液状組成物は、本キレート剤を所要量含有することが必要となる。
【0065】
前記本発明における液状組成物中の「c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩」の濃度は0.1~15重量%であり、キサンタンガムとカチオン状態界面活性剤の濃度に依存する。
【0066】
前記本発明における液状組成物のpHは3~11である。より好ましくはpH4~10である。素手でも使用できるp Hに調整することで、皮膚や眼などへの刺激を特に気にせずに手軽に安全に使用することができる。また、素手で掃除することができる場合、汚れの落ち方を指で触りながら確認することも可能となる。
【0067】
(4-2) 前記本発明における「c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩」における「金属キレート能を有するポリカルボン酸」及び「その塩」の好ましい例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレントリ酢酸、及び、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、並びに、それぞれの塩(例えばナトリウム塩)を挙げることができる。特に好ましい例としては、クエン酸3ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムを挙げることができる。
【0068】
「金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩」は、何れか1種を用いることができる他、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0069】
(5) 前記本発明における液状組成物が含有し得るa)、b)及びc)以外の成分の例
【0070】
(5-1) 本発明においては、カチオン状態界面活性剤の他に、起泡性と洗浄後のすすぎ性を向上させる観点から、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を用いることが好ましい。起泡性は、清掃対象面への洗浄剤の供給状態を分かり易く示し、またスポンジやブラシのスムーズな動きにも寄与する。
【0071】
(i) 非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシブチレンアルキルエーテル、ポリオキシブチレンアルケニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪族アルカノールアミド、脂肪酸グリセリンモノエステル、及びアルキルグリコシドから選ばれる少なくとも1つ以上が好ましい。これらの非イオン性界面活性剤におけるアルキル基又はアルケニル基の炭素数は8~18であることが好ましい。
【0072】
これらの中でも、起泡性、泡の維持性、洗剤の垂直硬質表面への付着性の観点から、アルキルグルコシドが特に好ましい。具体的には下記式(II)で表されるものが挙げられる。
-(OR)nGm
....(II)
[式(II)中、Rは炭素数8~16のアルキル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Gは還元糖に由来する基、nは平均付加モル数(0~5)、mは平均縮合度(1~3)を示す。前記還元糖はアルドースとケトースの何れであってもよいが、好ましくはグルコースである。]
【0073】
アルキルグルコシドとしては、例えば、オクチルポリグルコシド、2-エチルヘキシルポリグルコシド、デシルポリグルコシド、ラウリルポリグルコシド、ミリスチルポリグルコシド、パルミチルポリグルコシド、ステアリルラウリルポリグルコシド、オレイルポリグルコシド等が挙げられるが、アルキル基の炭素数が14以下のアルキルグルコシドがとりわけ好ましい。
【0074】
アルキルグルコシドは、前記本発明における液状組成物中に、0.5~10重量%含有されることが好ましい。0.5重量%未満では起泡性や泡の維持性、硬質表面に対する付着性が充分でない。10重量%を超えると泡の特性は変化しなくなる。
【0075】
(ii) 両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチル-プロピルスルホベタインなどが好ましい。好ましい両性界面活性剤のより具体的な例としては、ラウリン酸アミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、コカミドアミドプロピル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等を挙げることができる。
【0076】
(iii) また、前記本発明における液状組成物は、必要に応じてアニオン性界面活性剤を含有することもできる。含有し得るアニオン界面活性剤の具体的な例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩(石鹸)などが挙げられる。
【0077】
なお、アニオン性界面活性剤は、前記「b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤」と不溶性のコンプレックスを形成する可能性があるため、「c)金属キレート能を有するポリカルボン酸および/またはその塩」を配合することにより不溶性のコンプレックスの生成を抑制して、均一な液状組成物とする必要がある。
【0078】
(5-2) 前記本発明における液状組成物は、石鹸カスや皮脂汚れの洗浄性を更に高めるために、水溶性溶剤を含有することが好ましい。
【0079】
具体的には、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。これらの中でも、前記液状組成物に含有される成分の均一可溶化、洗浄力及びニオイや感触の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。その中でも、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。水溶性溶剤は、前記液状組成物中に2~15重量%含有されるのが好ましい。2%未満では、油性汚れの洗浄力が充分に発揮されず、15重量%を超えると、起泡性や泡の維持性が低下し、ニオイでも不快に感じる場面が生じやすい
【0080】
(5-3) また、前記本発明における液状組成物には、石鹸カスや皮脂汚れの洗浄性を向上すべく、アルカノールアミン等のアルカリ剤を0.5~5重量%を配合し得、清涼感の向上や洗浄剤粘度の調整のためのエタノールやイソプロピルアルコールなどを0.5~10重量%配合し得、その他に、殺菌剤、漂白剤、防腐剤、消臭剤、香料、着色剤、顔料、キサンタンガム以外の増粘剤、水などを配合することができる。
【0081】
(6) 本発明の液状防汚洗浄剤組成物を硬質表面に使用する場合、及び、本発明の方法により液状組成物を用いて親水性材料又は疎水性材料からなる硬質表面を処理する場合に、硬質表面に対しそれぞれの液状組成物を供給する手段としては、例えば、トリガースプレーヤーやエアゾールスプレーヤー等のスプレーヤーを用いて対象硬質表面に直接スプレーすることにより供給する手段、スクイズボトルを用いてスクイズしながら対象硬質表面に直接吐出させて供給する手段、水洗オートクリーナー等のように洗浄水吐出時に水と共に対象硬質表面である便器に供給する手段等が挙げられ、好ましい手段としては、液状組成物の起泡性を利用して発生させた泡の付着性を塗布又は洗浄に活用することができる手段、すなわち、トリガー式やスクイズ式等の泡吐出器を用いて対象硬質表面に泡状の液状組成物を直接供給する手段が挙げられる。
【0082】
硬質表面に供給された液状組成物は、例えば、布状、スポンジ状、ブラシ状又はその他の形態の洗浄若しくは塗布等のための用具を用いて又は素手で若しくはゴム手袋等を用いて対象硬質表面に適用し、洗浄又は塗布等を行なうことができる。或いは例えば、前記のような用具に液状組成物を供給した上で、その用具を用いて対象硬質表面に適用し、洗浄又は塗布等を行なうこともできる。
【実施例0083】
実施例1
【0084】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS[「KELZAN」は商標]、CP KELCO社製)、カチオン状態界面活性剤としてラウリルジメチルアミンオキシド(商品名:アンヒトール20N[「アンヒトール」は商標]、花王株式会社製)、金属キレート能を有するポリカルボン酸としてクエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)、及びpH調整剤としてクエン酸(結晶物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表1の実施例1-1に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製した。
【0085】
また、ラウリルジメチルアミンオキシドの代わりに、塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB[「ニッサンカチオン」は商標]、日油株式会社製)を用い、クエン酸を用いないこと以外は実施例1-1と同じ物を用いて表1の実施例1-2に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製した。
【0086】
次いで、それぞれのpHを測定し外観を観察し、その後、各液状防汚洗浄剤を用いて防汚性試験及び評価を実施した。結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
【0088】
実施例1のキサンタンガムと、カチオン性を有しない[すなわち、b)カチオン性を有する状態にある界面活性剤に該当しない]下記界面活性剤を用いて、表1の比較例1-1乃至1-4に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製した。
比較例1-1:ラウリルグルコシド(商品名:マイドール12[「マイドール」は商標]、花王株式会社製)
比較例1-2:ポリオキシエチレンドデシル硫酸ナトリウム(商品名:エマール20CM[「エマール」は商標]、花王株式会社製)
比較例1-3:ラウリン酸ナトリウム(商品名:ノンサールLN-1[「ノンサール」は商標]、日油株式会社製)
比較例1-4:ラウリルヒドロキシスルホベタイン(商品名:アンヒトール20HD、花王株式会社製)
【0089】
また、実施例1のキサンタンガムのみを用いて、表1の比較例1-5に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製した。
【0090】
次いで、比較例1-1乃至1-5のpHを測定し外観を観察し、その後、各液状防汚洗浄剤を用いた防汚性試験、並びに液状防汚洗浄剤を用いない比較例1-6の防汚性試験を実施し、それぞれ評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
<防汚性試験と評価>
【0092】
硬質表面のテスト板として、45mm×45mm×7mmの白色陶器タイル(白色モザイクタイル)、50mm×50mm×5mmの透明ポリエステル板(ペテック[「ペテック」は商標]、タキロンシーアイ社製)、50mm×50mm×5mmの透明アクリル板(コモグラス[「コモグラス」は商標]、クラレ社製)、50mm×50mm×5mmの透明塩化ビニル板(タキロンシーアイ社製)、50mm×50mm×5mmのステンレス板(SUS304切板NO.1シャ―リング切断)を用意した。
【0093】
これらのテスト板のそれぞれに、調製した液状防汚洗浄剤2mlを、テスト板天面を覆うように滴下することによりその硬質表面に防汚処理を施した。3分間(180秒)放置した後、テスト板を垂直に傾けて液状防汚洗浄剤を流し去ると同時に、処理した硬質表面を20mlのイオン交換水ですすぎ、その後、室温で自然乾燥させた。
【0094】
乾燥後、テスト板の天面中央を目掛けて水道水を25ml/秒の流速で8秒間(合計200ml)かけることにより濯いだ後、50℃に維持した恒温乾燥機で30分間乾燥させた。
【0095】
この水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥を3回(200ml×3回=600ml相当のすすぎ)繰り返した。
【0096】
このようにして防汚処理並びにイオン交換水でのすすぎ及び室温自然乾燥が1回行われた後で3回繰り返して水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥が行われたテスト板を得た。なお、液状防汚洗浄剤による防汚処理を施さない未処理のテスト板についての比較例1-6の防汚性試験においては、防汚処理以外は、実施例1及び比較例1-1乃至1-5と同様に、イオン交換水でのすすぎ及び室温自然乾燥が1回行われた後で3回繰り返して水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥が行われてテスト板を得た。
【0097】
得られたテスト板のうち、ポリエステル板、アクリル板、及び塩化ビニル板(すなわち、陶器タイル及びステンレス板以外)については、それぞれの防汚処理面の裏側の面と、50mm×50mm×5mmのガラス板の一方の面を、両者の輪郭が一致するように両面テープを用いて貼り合わせた。ビーカーの底にテスト板を置いてビーカー壁面を伝わらせて水道水を満たしていく際に、そのテスト板が浮いてしまうのを防ぐためである。
【0098】
得られたテスト板及びガラス板と貼り合わせたテスト板の1枚毎に、防汚処理面である天面を上側にして容量600mlの透明ガラスビーカーの底面中央に置き、そのテスト板の天面中央にモデル汚れ(オレイン酸50gとナタネ油50gを混合したものにメチルレッド0.04gを添加して加熱溶解させたもの)0.5mlを滴下した。
【0099】
その状態で、ビーカーの壁面を伝わるように、ゆっくりと水道水を満たしていくと、ビーカー内の水道水の水位が上がるに従い、テスト板の天面(防汚処理面)が周囲から水に濡れていき、それが進むに従ってモデル汚れのローリングアップが促進され、最終的にはモデル汚れの大半がテスト板の天面から離れて水面に浮ぶようになった。
【0100】
水面に浮遊したモデル汚れをスポイトで回収した直後に、テスト板の天面に残留する汚れの状態を上方から撮影し、更に上方撮影から5分経過後に水平方向からテスト板の天面に残留する汚れの付着状態を撮影した。
【0101】
汚れ落ちの評価は、上方から撮影した平面写真によりテスト板の天面に対する残留面積率を近似的に求め、更に断面写真(水平方向の写真)によりテスト板の天面に残留する汚れの水中下での接触角を求めた。接触角はモデル汚れの断面写真において汚れ(油滴)がテスト板の天面と接触している長さ(b)と汚れの高さ(a)から、θ=tan-12a/bの式で概算した。
【0102】
防汚性のレベルは、下記の指標に基づいて性能を位置付けた。
AAA:汚れの残留が全くない。
AA:残留面積率(S)≦1.0%かつ汚れの接触角(θ)≧30°
A:残留面積率(S)≦2.0%かつ汚れの接触角(θ)≧20°
BBB:残留面積率(S)≦3.0%かつ汚れの接触角(θ)≧15°
BB:残留面積率(S)≦4.0%かつ汚れの接触角(θ)≧15°
B:残留面積率(S)≦5.0%かつ汚れの接触角(θ)≧10°
CCC:残留面積率(S)≦7.5%かつ汚れの接触角(θ)≧5°
CC:残留面積率(S)≦10%かつ汚れの接触角(θ)≧0°
C:残留面積率(S)≦20%かつ汚れの接触角(θ)≧0°
D:残留面積率(S)≦100%かつ汚れの接触角(θ)≧0°(上記レベルの何れにも入らないもの)
結果を表1に示す
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1の液状防汚洗浄剤を用いた防汚処理は、未処理(比較例1-6)、キサンタンガム単独処理(比較例1-5)、キサンタンガム及びカチオン性を有しない界面活性剤を含有する処理剤による処理(比較例1-1乃至1-4)との比較において、各材質のテスト板に対して、優れた防汚効果を発揮した。
【0105】
実施例2
【0106】
3種類のキサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、KELZAN AR、KERZAN、何れもCP KELCO社製)に、それぞれ塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)及びクエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を配合して表2の実施例2-1乃至2-3に示す液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、実施例1と同様の方法により、透明ポリエステル板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0107】
比較例2
【0108】
キサンタンガム以外の下記多糖類
比較例2-1:ダイユータンガム(商品名:KELCO-CRETE DG[「KELCO」は商標]、CP KELCO社製)
比較例2-2:カルボキシメチルセルロース(商品名:FINNFIX[「FINNFIX」は商標]、CP KELCO社製)
比較例2-3:グアーガム(商品名:SUPERGEL CSA200/50、Pakistan Gum & Chemicals社製)
比較例2-4:ヒドロキシプロピルグアーガム(商品名:ESAFLOR 4W[「ESAFLOR」は商標]、Lamberti社製)
比較例2-5:ヒドロキシエチルセルロース(商品名:SANHEC[「SANHEC」は商標]、三晶株式会社製)
比較例2-6:イオタ・カラギーナン(商品名:ゲニュービスコPJ-JPE[「ゲニュービスコ」は商標]、CP KELCO社製)
比較例2-7:カチオン化グアーガム(商品名:JAGUAR C-14S[「JAGUAR」は商標]、Solvay Novecare社製)
並びに塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)、及び、比較例2-1、2-2及び2-6についてはクエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を配合して、表2の比較例2-1乃至2-7に示す液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、実施例1と同様の方法により、透明ポリエステル板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
各種多糖類を用いた液状防汚洗浄剤の中で、プラスチック板において良好な防汚性能を発揮したのは、キサンタンガムを用いたものであった。
【0111】
実施例3
【0112】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、CP KELCO社製)、ラウリルジメチルアミンオキシド(商品名:アンヒトール20N、花王株式会社製)、クエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)及びクエン酸(結晶物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表3の実施例3-1乃至3-7に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。
【0113】
その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、実施例1と同様の方法により、白色陶器タイル、透明ポリエステル(PET)板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。
【0114】
また、キサンタンガム中のアニオン基(-COO)のモル濃度とカチオン性を有する界面活性剤中のカチオン基(N)のモル濃度の比(COO/N)を上記方法で算出した。
【0115】
結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
前記モル濃度の比(COO/N)が0.02~15に含まれる0.123~12.6である何れの液状防汚洗浄剤を用いて処理した何れのテスト板についても防汚性能が発揮された。
【0118】
実施例4
【0119】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、CP KELCO社製)、塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)及びクエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表4の実施例4-1乃至4-5に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。
【0120】
その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、実施例1と同様の方法により、白色陶器タイル、透明ポリエステル(PET)板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。
【0121】
また、キサンタンガム中のアニオン基(-COO)のモル濃度とカチオン性を有する界面活性剤中のカチオン基(N)のモル濃度の比(COO/N)を上記方法で算出した。
【0122】
結果を表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
前記モル濃度の比(COO/N)が0.02~15に含まれる0.123~12.6である何れの液状防汚洗浄剤を用いて処理した何れのテスト板についても防汚性能が発揮された。
【0125】
実施例5
【0126】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、CP KELCO社製)、ラウリルジメチルアミンオキシド(商品名:アンヒトール20N、花王株式会社製)、塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)、クエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)及びクエン酸(結晶物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表5の実施例5-1及び5-2に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定した。
【0127】
その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥の繰り返し回数を除き実施例1と同様の方法により、白色陶器タイル、透明ポリエステル(PET)板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥の繰り返しについては、6回(200ml×6回=1200ml相当のすすぎ)、12回(200ml×12回=2400ml相当のすすぎ)及び18回(200ml×18回=3600ml相当のすすぎ)の3通りとした。
【0128】
結果を表5に示す。
【0129】
比較例5
【0130】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、CP KELCO社製)及びラウリルグルコシド(商品名:マイドール12、花王株式会社製)を用いて、表5の比較例5-1に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、pHを測定した。
【0131】
その後、その液状防汚洗浄剤を用いて、実施例5と同様の方法により、白色陶器タイル、透明ポリエステル(PET)板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。なお、液状防汚洗浄剤による防汚処理を施さない未処理のテスト板についての比較例5-2の防汚性試験においては、防汚処理以外は、実施例5及び比較例5-1のうち他のものと同様に、イオン交換水でのすすぎ及び室温自然乾燥が1回行われた後で所定回数繰り返して水道水による流水すすぎと50℃恒温乾燥が行われてテスト板を得た。
【0132】
結果を表5に示す。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例の液状防汚洗浄剤を用いて処理したテスト板、特にポリエステル(PET)板及びアクリル板は、すすぎと乾燥を繰り返し続けても、比較例の液状防汚洗浄剤を用いて処理したテスト板に比べて良好な防汚性能を発揮した。
【0135】
実施例6
【0136】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AP-AS、CP KELCO社製)、各種のカチオン性を有する状態にある界面活性剤、クエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム(EDTA-4Na)(試薬)及びクエン酸(結晶物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表6に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。
【0137】
用いたカチオン性を有する状態にある界面活性剤は、次の通りである。
ラウリルジメチルアミンオキシド(商品名:アンヒトール20N、花王株式会社製)
塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)
塩化ベンザルコニウム(商品名:ハイアミン3500J [「ハイアミン」は商標]、LONZA社製)
塩化セチルピリジニウム(Vertellus Health & Speciality Products社製)
ジデシルメチルポリアンモニウムプロピオネート(商品名:Bardap26[「Bardap」は商標]、LONZA社製)
ドデシルジプロピルアミン(商品名:Lonzabac12[「Lonzabac12」は商標]、LONZA社製)
ヤシアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名:ニッサンカチオンFB、日油株式会社製)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名:ニッサンカチオンPB-300、日油株式会社製)
オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド(商品名:ニッサンカチオンAB、日油株式会社製)
【0138】
その後、各液状防汚洗浄剤を用いて、実施例1と同様の方法により、白色陶器タイル、透明ポリエステル板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。
【0139】
【表6】
【0140】
実施例6のカチオン性を有する状態にある界面活性剤と本キレート剤とキサンタンガムを配合した液状防汚洗浄剤は、ポリエステル板及びアクリル板について良好な防汚性を発現した。
【0141】
実施例7
【0142】
キサンタンガム(商品名:KELZAN AR、CP KELCO社製)、ラウリルジメチルアミンオキシド(ユニセーフA-LM 日油株式会社製)、塩化ドデシルトリメチル4級アンモニウム(商品名:ニッサンカチオンBB、日油株式会社製)、塩化ベンザルコニウム(商品名:ハイアミン3500J 、LONZA社製)、クエン酸3ナトリウム(無水物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)、クエン酸(結晶物)(試薬、和光純薬工業株式会社製)、ラウリルグルコシド(商品名:マイドール12、花王株式会社製)、ブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)、エタノール(試薬、和光純薬工業株式会社製)を用いて、表7の実施例7-1乃至7-3に示す組成の液状防汚洗浄剤を調製し、それぞれのpHを測定し、外観を観察した。
【0143】
各液状防汚洗浄剤を市販のトリガースプレー容器(フレッシュブリーズ用スプレー容器[「フレッシュブリーズ」は商標]、山崎産業株式会社製)に入れて、スプレーした際の泡立ち性、垂直面への泡の付着性、及び浴槽モデル汚れ洗浄力の試験、並びに実施例1と同様の方法により白色陶器タイル、透明ポリエステル板及び透明アクリル板についての防汚性試験及び評価を実施した。
【0144】
<スプレー時の泡立ち性評価>
【0145】
各液状防汚洗浄剤100gを前記市販のトリガースプレー容器に入れて、垂直に立てかけた黒色のアクリル板(横32cm×縦55cm×厚み0.2cm、アクリル表面硬化板「801、MR00」、アクリサンデー株式会社製)に対して、20cm離れた位置にトリガーノズル先端を設定し、液状防汚洗浄剤をスプレーしたときの泡立ち性と泡の密着性を下記の基準で観察した。
【0146】
[泡立ち性の評価基準]
○:泡がしっかり形成される
△:泡の量が少なく、液体と混じった状態である
×:泡の量は非常に少なく、液に近い状態である
【0147】
[泡の密着性の評価基準]
【0148】
スプレーして30秒後の泡の付着状態を観察して評価する。
A:スプレー直後に付着した場所に、そのまま泡で留まっている状態である
B:スプレー直後に付着した場所を起点として下方に泡がゆっくり垂れて広がっている状態
C:スプレー直後に付着した場所から、泡の状態でゆっくり下方に垂れて移動している状態
D:スプレー直後に付着した場所から、泡の状態ですばやく下方に垂れて移動している状態
E:スプレー直後に付着した場所から、下方に垂れて移動しており、かつ泡も消え始めている状態
【0149】
<洗浄力評価>
【0150】
一般家庭の浴槽内側壁面に、テスト板としてポリエステル板(幅20cm×長さ20cm×厚み0.3cm)とアクリル板(幅16cm×長さ18cm×厚み0.3cm)を固定した。
【0151】
成人男性2名、成人女性2名、中学生男子1名が3か月間毎日1回入浴(その間、風呂水は2日間に一回入れ替え、ポリエステル板、アクリル板は洗浄せずに使用)し、テスト板表面に皮脂汚れを付着させた。
【0152】
この汚れが付着したテスト板を室温で自然乾燥させた後、テスト板上に実施例7の各液状防汚洗浄剤0.5mlを円状に塗布し、幅1cm×長さ2cm×厚み2cmに裁断したスポンジで、軽く5回擦り洗いした。
【0153】
その直後、35ml/秒の流速に定めた水道水ですすぎ流し、そのテスト板を乾燥させ、汚れの落ち具合を下記の基準で目視観察した。
【0154】
[洗浄力の評価基準]
〇:汚れがきれいに落ちている
△:わずかに、汚れが残留している
×:汚れの残留が目立っている
【0155】
【表7】
【0156】
各液状防汚洗浄剤は、ラウリルグルコシドや水溶性溶剤を適量添加することで、泡立ち性が良くなるとともに、親水性材料又は疎水性材料の硬質表面に対して、より優れた防汚性能を発現した。