(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061353
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】コンクリート剥落防止材及びその配設方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/08 20060101AFI20220411BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20220411BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220411BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220411BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C08J5/08 CFC
E21D11/10 Z
E01D22/00 A
E04G23/02 D
B32B5/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169310
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 靖
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
【テーマコード(参考)】
2D059
2D155
2E176
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059BB39
2D059GG01
2D059GG02
2D059GG39
2D155LA16
2D155LA17
2E176AA01
2E176BB03
2E176BB14
4F072AA04
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD09
4F072AD23
4F072AE01
4F072AG03
4F072AJ16
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AL17
4F100AE01
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4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AT00C
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4F100GB90
4F100JB14A
4F100JN01B
4F100JN02D
4F100JN18A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】感光性樹脂材料を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の経時変化を観察し易く、コンクリートの含水率が高い状態でも施工可能で、保管や取扱いも容易なコンクリート剥落防止材及びその配設方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート剥落防止材10は、ガラス繊維14に感光性樹脂15を含侵させ、プリプレグの状態になっているFRP層12を具える。感光性樹脂15の屈折率が1.51~1.59であるため、感光性樹脂15を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の視認性に優れ、補修後のコンクリート製構造物の表面の経時変化を簡便に観察することができる。コンクリート剥落防止材10を接着させるコンクリートの素地調整を行い、コンクリートの表面にプライマーを塗布し、FRP層12をコンクリートの表面に貼り付け、FRP層12に光線を照射することによって、コンクリート剥落防止材10を配設することにより、コンクリートの含水率が高い状態でも施工可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維に感光性樹脂を含侵させたFRP層を具えるシート状のコンクリート剥落防止材であって、
前記感光性樹脂の屈折率が1.51~1.59であることを特徴とする、
コンクリート剥落防止材。
【請求項2】
前記FRP層の一方の面の全体に、光線を透過させる光透過フィルムが貼り付けられている、請求項1のコンクリート剥落防止材。
【請求項3】
前記FRP層の一方の面又は他方の面の全体のいずれかを覆う、最も外側に位置する、前記光線を遮断する保護フィルムが貼り付けられている、請求項1又は2のコンクリート剥落防止材。
【請求項4】
前記保護フィルムが外側に位置するようにロール状に巻かれている、請求項3のコンクリート剥落防止材。
【請求項5】
前記保護フィルムが貼り付けられている面とは反対の面の全体を覆う、最も外側に位置する、光線を遮断する内側保護フィルムが貼り付けられている、請求項3又は4のコンクリート剥落防止材。
【請求項6】
前記コンクリート剥落防止材の全体を包み、光線を遮断する包装保護フィルムを具える、請求項1から5のいずれかのコンクリート剥落防止材。
【請求項7】
ガラス繊維に感光性樹脂を含侵させたFRP層を具えるシート状のコンクリート剥落防止材であって、
前記感光性樹脂の屈折率が1.51~1.59であるコンクリート剥落防止材の配設方法であって、
前記コンクリート剥落防止材を接着させるコンクリートの素地調整を行う素地調整ステップと、
前記コンクリートの表面にプライマーを塗布するプライマー塗布ステップと、
前記FRP層を前記コンクリートの表面に貼り付けるシート貼付ステップと、
前記FRP層に光線を照射する光線照射ステップを有することを特徴とする、
コンクリート剥落防止材の配設方法。
【請求項8】
前記FRP層の一方の面の全体に、光線を透過させる光透過フィルムが貼り付けられ、
前記シート貼付ステップの後に、前記光透過フィルムの上から前記FRP層を前記コンクリートの表面に対して押付ける圧着ステップと、
前記光線照射ステップの後に、前記光透過フィルムを剥がす光透過フィルム剥離ステップをさらに有する、
請求項7のコンクリート剥落防止材の配設方法。
【請求項9】
前記FRP層の一方の面又は他方の面の全体のいずれかを覆う、最も外側に位置する、前記光線を遮断する保護フィルムが貼り付けられ、
前記シート貼付ステップにおいて、前記保護フィルムを剥がす、
請求項7又は8のコンクリート剥落防止材の配設方法。
【請求項10】
前記保護フィルムが外側に位置するように前記コンクリート剥落防止材がロール状に巻かれ、
前記プライマー塗布ステップの後に、前記コンクリート剥落防止材を展開する展開ステップをさらに有する、
請求項9のコンクリート剥落防止材の配設方法。
【請求項11】
前記保護フィルムが貼り付けられている面とは反対の面の全体を覆う、最も外側に位置する、光線を遮断する内側保護フィルムが貼り付けられ、
前記保護フィルム剥離ステップの前又は後に、前記内側保護フィルムを剥がす内側保護フィルム剥離ステップをさらに有する、
請求項9又は10のコンクリート剥落防止材の配設方法。
【請求項12】
前記コンクリート剥落防止材の全体を包み、光線を遮断する包装保護フィルムを具え、
前記プライマー塗布ステップの次に、前記包装保護フィルムを開梱する開梱ステップをさらに有する、
請求項7又は11のいずれかのコンクリート剥落防止材の配設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの表面に配設されるコンクリート剥落防止材及びその配設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の構造物は、経年劣化により表面層のひび割れ、剥離が発生する。特にコンクリート製の橋梁や高架橋は、コンクリート片が落下すると、その下を通行する人や車両へ危害を及ぼす可能性がある。そこで、コンクリートにひび割れ等がないかを定期的に点検し、劣化が認められる場合に、コンクリートの剥落を防止するための対策が行われている。この対策に使用されるコンクリート剥落防止材又はその配設方法として、特許文献1,2に示すものが開発されている。また、補修を行った後にも、コンクリート製構造物の表面の経時変化を観察できるコンクリート剥落防止材として、特許文献3に示すものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-293692号公報
【特許文献2】特開2003-307034号公報
【特許文献3】特開2018-53601号公報
【0004】
特許文献1には、コンクリートの断面処理、下地表面処理を行った後、プライマーを塗布し、その上から感光性樹脂材料を塗布し、それを光照射によって硬化させ、補強材を貼付け、その後、感光性樹脂材料の塗布・硬化を2回行うというコンクリート剥落防止材の配設方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、コンクリートの表面にプライマーを塗布し、その上に1液型エポキシ樹脂組成物を含有する不陸調整材を塗布し硬化させて不陸調整材層を形成し、さらにその上に、1液型エポキシ樹脂組成物を含有する含浸材を塗布して剥落防止用シートを貼り付けて、剥落防止用シートに含浸材を含浸させ、さらにこの剥落防止用シートに含浸材を含浸させる工程を必要回数繰り返すというコンクリート剥落防止材の配設方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、第1の(メタ)アクリル系感圧接着剤層と、第1の(メタ)アクリル系感圧接着剤層上の、ガラス繊維又はポリマーモノフィラメントを含む補強基材と、補強基材上の第2の(メタ)アクリル系感圧接着剤層とを有し、補強基材の屈折率が約1.40~約1.60であり、補強基材が第1及び/又は第2の(メタ)アクリル系感圧接着剤層の接着剤で含浸されているコンクリート剥落防止材が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、紫外線、可視線、近赤外線などの光線によって硬化する感光性樹脂材料を使用したコンクリート剥落防止材の場合、感光性樹脂材料を硬化させると、コンクリート製構造物の表面の経時変化を観察し難い。また、プライマー及び感光性樹脂材料を塗布するコンクリートの表面が濡れている場合、乾燥させる必要があり、これに工数や時間が掛かる。また、感光性樹脂材料の保管や取扱いには細心の注意を要するという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑み、感光性樹脂材料を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の経時変化を観察し易く、さらには、コンクリートの含水率が高い状態でも施工可能で、保管や取扱いも容易なコンクリート剥落防止材及びその配設方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガラス繊維に感光性樹脂を含侵させたFRP層を具えるシート状のコンクリート剥落防止材であって、
前記感光性樹脂の屈折率が1.51~1.59であることを特徴とするコンクリート剥落防止材、
又は、
ガラス繊維に感光性樹脂を含侵させたFRP層を具えるシート状のコンクリート剥落防止材であって、
前記感光性樹脂の屈折率が1.51~1.59であるコンクリート剥落防止材の配設方法であって、
前記コンクリート剥落防止材を接着させるコンクリートの素地調整を行う素地調整ステップと、
前記コンクリートの表面にプライマーを塗布するプライマー塗布ステップと、
前記FRP層を前記コンクリートの表面に貼り付けるシート貼付ステップと、
前記FRP層に光線を照射する光線照射ステップを有することを特徴とするコンクリート剥落防止材の配設方法によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
一般的に産業用E-ガラス繊維の屈折率は1.55程度であり、透明な樹脂とガラス繊維との複合材料において良好な透明性を得るには、樹脂とガラス繊維との屈折率の差を小さくする必要がある。本発明のコンクリート剥落防止材は、ガラス繊維に感光性樹脂を含侵させたFRP層を具えるシート状のコンクリート剥落防止材であって、感光性樹脂の屈折率が1.51~1.59であるため、本発明のコンクリート剥落防止材及びその配設方法によれば、感光性樹脂を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の視認性に優れ、亀裂の発生やその進行具合が、特殊な機器に頼らず、目視で確認することができる。よって、補修後のコンクリート製構造物の表面の経時変化を簡便に観察することができる。また、本発明のコンクリート剥落防止材を用いて、コンクリート剥落防止材を接着させるコンクリートの素地調整を行い、コンクリートの表面にプライマーを塗布し、FRP層をコンクリートの表面に貼り付け、FRP層に光線を照射することによって、コンクリート剥落防止材を配設することにより、コンクリートの含水率が高い状態でも施工可能である。
【0011】
また、FRP層の一方の面の全体に、光線を透過させる光透過フィルムが貼り付けられている構成とすれば、FRP層をコンクリートの表面に貼り付けた後に、ローラ等で光透過フィルムの上からFRP層をコンクリートの表面に対して押付けることができ、FRP層をコンクリートの表面に接着させ易く、FRP層の厚みを調整し易いので、感光性樹脂を硬化させた後の透明度を高め易い。
【0012】
また、FRP層の一方の面又は他方の面の全体のいずれかを覆う、最も外側に位置する、感光性樹脂を硬化させる光線を遮断する保護フィルムが貼り付けられている構成とすれば、感光性樹脂が光線による影響を受けることを防止することができるので、保管や取扱いが容易となる。さらに、保護フィルムが外側に位置するようにロール状に巻かれていれば、FRP層が保管時又は運搬時などの使用前に、感光性樹脂が光線による影響を受けることを一層防止することができる。
【0013】
また、保護フィルムが貼り付けられている面とは反対の面の全体を覆う、最も外側に位置する、光線を遮断する内側保護フィルムが貼り付けられている構成にする、或いは、ロール状のコンクリート剥落防止材の全体を包み、光線を遮断する包装保護フィルムを具える構成とすれば、感光性樹脂が光線による影響を受けることを防止することができるので、保管や取扱いがさらに容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態のコンクリート剥落防止材を展開した状態の側面図。
【
図2】
図1のコンクリート剥落防止材をロール状にした状態の斜視図。
【
図3】
図2のコンクリート剥落防止材が包装保護フィルムを具えた状態の概略図。
【
図4】
図1のコンクリート剥落防止材の配設方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を
図1~4を参照して説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるコンクリート剥落防止材10を展開した状態の側面図である。コンクリート剥落防止材10は、ガラス繊維14に感光性樹脂15を含侵させ、プリプレグの状態になっているFRP層12を具え、展開させた状態はシート状である。ガラス繊維14は、図示しているようなガラスクロスを用いるのがよい。
【0017】
感光性樹脂15は、屈折率が1.51~1.59の範囲内にある、紫外線、可視線、近赤外線などの光線によって硬化する公知の光硬化性樹脂を用いる。一般的に産業用E-ガラス繊維の屈折率は1.55程度であり、感光性樹脂15とガラス繊維14との複合材料において良好な透明性を得るには、感光性樹脂15とガラス繊維14との屈折率の差を小さくする必要がある。この点、コンクリート剥落防止材10の感光性樹脂15の屈折率は、1.51~1.59であるため、感光性樹脂15を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の視認性に優れ、亀裂の発生やその進行具合が、特殊な機器に頼らず、目視で確認することができるようになる。よって、補修後のコンクリート製構造物の表面の経時変化を簡便に観察することができる。
【0018】
FRP層12の一方の面(
図1では、上側の面)の全体には、光線を透過させる光透過フィルム17を貼り付けることができる。これにより、光透過フィルム17が表面となるようにFRP層12をコンクリートの表面に貼り付け、その後、ローラ等で光透過フィルム17の上からFRP層12をコンクリートの表面に対して押付けることができるので、FRP層12をコンクリートの表面に接着させ易く、FRP層12の厚みを調整し易いので、感光性樹脂15を硬化させた後の透明度を高め易い。
【0019】
また、FRP層12の一方の面の全体であって、最も外側には、保護フィルム18が貼り付けられている。保護フィルム18は、感光性樹脂15が硬化する種類の光線を遮断するフィルム又はシートである。保護フィルム18は、最も外側に位置していれば、FRP層の他方の面(
図1の下側の面)に貼り付けることも可能である。これにより、感光性樹脂15が光線による影響を受けることを防止することができるので、保管や取扱いが容易となる。
【0020】
また、保護フィルム18が貼り付けられている面とは反対の面(
図1では、下側の面)には、全体を覆う、最も外側に位置する、光線を遮断する内側保護フィルム16を貼り付けることもできる。内側保護フィルム16は、保護フィルム18と同様に、感光性樹脂15が硬化する種類の光線を遮断するものとすればよい。これにより、感光性樹脂15が光線による影響を受けることを一層防止することができる。
【0021】
図2に示すように、コンクリート剥落防止材10は、使用するとき以外、ロール状にするのがよい。このとき、保護フィルム18が外側に位置するようにする。本構成とすることで、コンクリート剥落防止材10の保管時又は運搬時などの使用前に、感光性樹脂15が光線による影響を受けることを防止することができるので、保管や取扱いがさらに容易となる。なお、コンクリート剥落防止材10をロール状にし易いように、中心に芯材11を設けてもよい。
【0022】
ここで、コンクリート剥落防止材10のように、内側保護フィルム16を設けていれば、コンクリート剥落防止材10をロール状にしたときに、感光性樹脂15が光線による影響を受けることをさらに防止することができる。
【0023】
また、
図3に示すように、ロール状のコンクリート剥落防止材10の全体を包む、包装保護フィルム13を設けた構成としてもよい。例えば、袋状の包装保護フィルム13にロール状のコンクリート剥落防止材10を入れる構成や、シート状の包装保護フィルム13でコンクリート剥落防止材10を巻く構成とすることができる。包装保護フィルム13は、保護フィルム16と同様に、感光性樹脂15が硬化する種類の光線を遮断するものとすればよい。本構成によれば、FRP層12が光線による影響を受けることをさらに防止することができるので、保管や取扱いがさらに容易になる。
【0024】
次に、
図4を用いて、コンクリート剥落防止材10の配設方法を説明する。まず、素地調整ステップS10を行う。素地調整ステップS10では、補修を行うコンクリートの表面の素地調整を行う。具体的には、コンクリートの表面に浮きやひび割れ等がある場合、断面処理を行い、その後、サンディングや高圧洗浄によりコンクリート剥落防止材10を接着させ易い状態にする。
【0025】
素地調整ステップS10の後、プライマー塗布ステップS12を行う。プライマー塗布ステップS12では、素地調整を行ったコンクリートの表面にプライマーを塗布する。プライマーとしては、公知のコンクリートプライマーを用いればよい。
【0026】
ここで、コンクリート剥落防止材10が包装保護フィルム13を有する場合には、包装保護フィルム13を開梱する開梱ステップS13を行う。開梱ステップS13がプライマー塗布ステップS12の次に行われることにより、FRP層12が光線による影響を受けることを抑えることができる。
【0027】
コンクリート剥落防止材10がロール状とされている場合には、プライマー塗布ステップS12又は開梱ステップS13の後、コンクリート剥落防止材10を展開する展開ステップS14を行う。コンクリート剥落防止材10が芯材11を有する場合には、芯材11を除去する。
【0028】
また、コンクリート剥落防止材10が内側保護フィルム16を有する場合には、シート貼付ステップS16に進む前に、内側保護フィルム16を剥がす内側保護フィルム剥離ステップS15を行う。
【0029】
展開ステップS14又は内側保護フィルム剥離ステップS15の後、シート貼付ステップS16を行う。シート貼付ステップS16は、FRP層12をコンクリートの表面に貼り付ける工程からなる。このとき、コンクリート剥落防止材10が保護フィルム18を有する場合には、保護フィルム18を剥がしてからFRP層12をコンクリートの表面に貼り付けるか、或いは、FRP層12をコンクリートの表面に貼り付けてから保護フィルム18を剥がせばよい。
【0030】
コンクリート剥落防止材10が光透過フィルム17を有する場合には、シート貼付ステップS16の後に、圧着ステップS17を行う。圧着ステップS17では、ローラ等で光透過フィルム17の上からFRP層12をコンクリートの表面に対して押付ける作業を行う。この作業は、次の光線照射ステップS18を実行しながら行ってもよい。
【0031】
次に、光線照射ステップS18を行う。光線照射ステップS18では、FRP層12の感光性樹脂15に光線を照射する。このとき、光線は、感光性樹脂15が硬化する種類の光線である必要がある。感光性樹脂15を硬化させ、FPR層12をコンクリートの表面に密着させる。
【0032】
コンクリート剥落防止材10が光透過フィルム17を有する場合には、最後に、光透過フィルム17を剥がす光透過フィルム剥離ステップS19を行い、施工完了となる。
【0033】
ここで、コンクリート剥落防止材10を上述した配設方法で配設したものの押し抜き試験結果は以下のとおりである。本試験は、公益社団法人土木学会基準のJSCE-K533に基づく試験方法により行った。プライマーは、アクリル系の主剤100に対し、エポキシ系の硬化剤20が混合された、2液硬化型アクリル/エポキシ系のコンクリートプライマーを用いた。
【0034】
次に、コンクリートを飽和湿潤させた状態で押し抜き試験を行った。具体的には、素地調整ステップS10による素地調整を行ったコンクリートを2日~4日間、完全浸水させた後、半浸水の状態に置き、表面の水分を布で拭き取り、プライマー塗布ステップS12によるプライマーを塗布し、24時間後、シート貼付ステップS16及び光線照射ステップS18を行い、コンクリート剥落防止材10を配設した。その押し抜き試験結果が表1である。なお、浸水前のコンクリートの含水率は、約8%HRであった。
【表1】
【0035】
上述した試験結果に示されているように、本発明によれば、コンクリートの含水率が高い状態でも、施工が可能で、かつ、コンクリートの剥落を防止する強度とされる押し抜き強度1.5kN以上の強度を有することが確認できた。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、感光性樹脂材料を硬化させた後もコンクリート製構造物の表面の経時変化を観察し易く、さらには、コンクリートの含水率が高い状態でも施工可能で、保管や取扱いも容易なコンクリート剥落防止材及びその配設方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 コンクリート剥落防止材
12 FRP層
13 包装保護フィルム
14 ガラス繊維
15 感光性樹脂
16 内側保護フィルム
17 光透過フィルム
18 保護フィルム
S10 素地調整ステップ
S12 プライマー塗布ステップ
S13 開梱ステップ
S14 展開ステップ
S15 内側保護フィルム剥離ステップ
S16 シート貼付ステップ
S17 圧着ステップ
S18 光線照射ステップ
S19 光透過フィルム剥離ステップ