(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061356
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】操作パネル用殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220411BHJP
B66B 1/46 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A61L2/10
B66B1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169315
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】518450577
【氏名又は名称】株式会社ミューズ・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】千原 悠聖
【テーマコード(参考)】
3F502
4C058
【Fターム(参考)】
3F502HB10
3F502MA26
3F502MA31
4C058AA24
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】操作ボタンのキートップを満遍なく殺菌することができ、既存のエレベータにも容易に設置することが可能な操作パネル用殺菌装置を提供する。
【解決手段】操作パネル用殺菌装置10は、操作パネルPの前方に被せるように配置され、操作パネルPの操作ボタンBに対応する位置に、操作するための指が挿入される貫通孔21aが形成されたカバー部20と、カバー部20の裏面側に配置され、最上段の操作ボタン(「9」と表示された9階ボタンと、「10」と表示された10階ボタン)から最下段の操作ボタン(最下段ボタンである「開」と表示された開くボタンおよび「閉」と表示された閉じるボタン)までの範囲を照射する殺菌光を発光する殺菌部30とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルの前方に被せるように配置され、前記操作パネルの操作ボタンに対応する位置に、操作するための指が挿入される貫通孔が形成されたカバー部と、前記カバー部の裏面側に配置され、最上段の操作ボタンから最下段の操作ボタンまでの範囲を照射する殺菌光を発光する殺菌部とを備えた操作パネル用殺菌装置。
【請求項2】
前記カバー部は、上下方向の上端部が内部空間と外部とが連通した開放状態に形成された請求項1記載の操作パネル用殺菌装置。
【請求項3】
前記カバー部は、上下方向の下端部も内部空間と外部とが連通した開放状態に形成された請求項2記載の操作パネル用殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの操作パネルにおける操作ボタンのキートップを殺菌する操作パネル用殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感染症の流行により、飛沫感染を予防するために、外出時や職場にてマスクを装着する者が多い。また、感染者が触れたものを触れることにより感染する接触感染が気になる者も多い。
例えば、エレベータの操作ボタンでは、以前に誰が触れたかわからないため、感染者が操作したことで、目に見えない菌やウィルスが付着しているおそれがあるのでは、と疑念を抱いてしまいがちである。
このような心配ごとが懸念される状況下において、例えば、特許文献1,2にはエレベータの操作ボタンを殺菌するものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のエレベータボタンの殺菌装置は、本体と、本体内に設置し殺菌光を発する殺菌灯とを含み、本体はエレベータ操作パネル上に固定され、尚且つ、殺菌灯を操作パネル上の各ボタンに照射して、各ボタンに持続的な殺菌を行う、というものである。
この殺菌装置は、本体の底端に長形穴が設けられ、殺菌灯の発する殺菌光が長形穴から外側に照射され、照射光の範囲が各ボタンを覆う範囲であり、全ボタンに対して持続的な殺菌処理を行っている。
【0004】
特許文献2に記載のエレベータの操作ボタン装置は、エレベータを利用する乗客が手で触れて操作するボタントップと、ボタントップの裏面側にそのボタントップと対向して設けられた紫外線発光ダイオードとを備えており、乗客がボタントップを手で操作すると、スイッチ素子が動作して紫外線発光ダイオードが点灯し、この点灯によりボタントップに紫外線が照射され、ボタントップが殺菌され、かつ照光される、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3174620号公報
【特許文献2】特開2011-143994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエレベータボタンの殺菌装置は、エレベータ操作パネルの上側に固定されるため、殺菌装置に近い側の操作ボタンと遠い側のボタンとでは、殺菌灯までの距離が変わるため、遠い側のボタンは殺菌効果が得られ難い。
【0007】
また、特許文献2に記載のエレベータの操作ボタン装置は、紫外線発光ダイオードの点灯と、ボタン自体の照明とを兼ねたものである。そのため、開くボタンや閉めるボタンが点灯しない場合では殺菌できない。また、開くボタンまたは閉めるボタンが押下されたときだけ点灯する場合では、紫外光を照射する時間が短いため、効果的に殺菌するのは困難である。
【0008】
そこで本発明は、操作ボタンのキートップを満遍なく、かつ効果的に殺菌することが可能な操作パネル用殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の操作パネル用殺菌装置は、操作パネルの前方に被せるように配置され、前記操作パネルの操作ボタンに対応する位置に、操作するための指が挿入される貫通孔が形成されたカバー部と、前記カバー部の裏面側に配置され、最上段の操作ボタンから最下段の操作ボタンまでの範囲を照射する殺菌光を発光する殺菌部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の操作パネル用殺菌装置によれば、カバー部には、操作パネルの操作ボタンに対応する位置に、キートップを臨ませる貫通孔が形成されているので、貫通孔から指を挿入することで、操作ボタンを押下することができる。また、殺菌部は、最上段ボタンから最下段ボタンまでの長さに形成されているため、全部の操作ボタンに殺菌光を、連続的に照射することができる。
【0011】
前記カバー部は、上下方向の上端部が内部空間と外部とが連通した開放状態に形成されたものとすることができる。
殺菌部から殺菌光を照射せる際に発生する熱が上昇して、カバー部の上から抜けるため、カバー部内の温度上昇を抑えることができる。
【0012】
前記カバー部は、上下方向の下端部も内部空間と外部とが連通した開放状態に形成されたものとすることができる。
カバー部の上部から手を入れたり、下部から手を入れたりすることで、殺菌部の装着や取り外しなどメンテナンスが容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の操作パネル用殺菌装置は、操作ボタン全体に殺菌光を照射できるので、操作ボタンのキートップを満遍なく、連続的に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る操作パネル用殺菌装置が操作パネルに設置された状態の正面図である。
【
図2】
図1に示す操作パネル用殺菌装置の底面図である。
【
図3】
図1に示す操作パネル用殺菌装置の殺菌部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る操作パネル用殺菌装置を図面に基づいて説明する。
本実施の形態に係る操作パネル用殺菌装置は、エレベータの操作パネルにおける操作ボタンのキートップを殺菌するものである。
図1(A)および同図(B)に示す操作パネルPは、エレベータのかご室に設置されるものである。そのため、操作ボタンBは、「1」から「10」までの行き先階ボタンと、ドア開閉ボタンとが配置されている。
【0016】
図1(A)および同図(B)に示すように、操作パネル用殺菌装置10は、カバー部20と、殺菌部30とを備えている。
【0017】
カバー部20は、殺菌部30からの殺菌光に対して劣化しない、または劣化し難い材質のものが望ましい。例えば、カバー部20は金属製とすることができる。また、カバー部20は、カバー部20の表面にウィルスなどが付着したときに、ウィルスなどの生存する期間が、樹脂製より短期間な金属製が望ましく、銅またはステンレス、あるいはアルマイト処理を施したアルミニウム製とするのが特に望ましい。カバー部20が金属製であれば、殺菌部30からの殺菌光が透過しないため、この観点からも金属製が望ましい。更に、カバー部20に抗菌処理が施されているのが望ましい。
【0018】
カバー部20は、操作パネルPの前方に位置する第1カバー部21と、第1カバー部21と操作パネルPとの間に空間を確保するための第2カバー部22と、カバー部20を設置場所に固定するための第3カバー部23とを備えている。
【0019】
第1カバー部21は、平板状に形成され、操作パネルPの操作ボタンBに対応する位置に、操作ボタンBのキートップTの形状に合わせ、操作するための指が挿入される矩形状の貫通孔21aが形成されている。
【0020】
第2カバー部22には、第1カバー部21の両方の側部21bから操作パネルPに接近しながら外側に拡がる傾斜部22aと、傾斜部22aからかご室の壁面Wに向かうように形成され、カバー部20の側面となる側面部22bとを備えている。
第3カバー部23は、側面部22bから操作パネルPの側面(厚み面)に向かうように、壁面Wに接触した状態で形成されている。第3カバー部23を、壁面Wに固定するときには、両面テープまたはねじ止めにより固定することができる。第3カバー部23をネジ止めにより固定する場合には、ねじ締めのための貫通孔を傾斜部22aに設けると共に、第3カバー部23にねじ穴を設ける。
【0021】
このようにカバー部20が形成されていることで、カバー部20の上下方向F1の両方の端部は、内部空間と外部とが連通した開放状態に形成されている。
【0022】
殺菌部30は、
図3に示すように、殺菌灯31と、点灯回路32と、表示パネル33とを備えている。
殺菌灯31は殺菌光として紫外線を照射するものである。殺菌灯31は、カバー部20の第1カバー部21の裏面側に、上下方向F1に沿って配置されている。殺菌灯31は、紫外線を発光する直管蛍光管によるUVランプまたはLEDを列状に並べたUVランプとすることができる。
殺菌灯31は、操作パネルPの最上段ボタンである「9」と表示された9階ボタンと、「10」と表示された10階ボタンから、最下段ボタンである「開」と表示された開くボタンおよび「閉」と表示された閉じるボタンまでの長さに形成されている。
【0023】
点灯回路32は、カバー部20の内側に設置されている。殺菌灯31が直管蛍光管によるUVランプであれば、各種のスターター方式の点灯回路とすることができる。また、点灯回路32は、殺菌灯31が紫外線発光のLEDによるUVランプであれば、LEDへ電流を流すための定電流回路とすることができる。更に、点灯回路32は、殺菌灯31を点灯させているときには、表示パネル33に文字を表示させる機能を有する。
【0024】
表示パネル33は、小型のLCDパネルや、文字を点灯させるパネルとすることができる。本実施の形態では、表示パネル33は、「殺菌中」と表示する。
【0025】
本実施の形態では、殺菌灯31は、第1カバー部21における両方の側部21bの内側面にそれぞれ2本設けられているが、殺菌灯31による殺菌が1本でも十分であれば、第1カバー部21の左右方向F2の中央部に、上下方向F1に沿って1本設けるようにしてもよい。
殺菌部30の電源は、操作パネルPの電源から取ることができる。その場合、操作パネルPのパネル板を穿孔して、操作パネルP内の電源と殺菌灯31を接続する。
【0026】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る操作パネル用殺菌装置10の使用状態を図面に基づいて説明する。
カバー部20における操作パネルPの前方に位置する第1カバー部21には、操作パネルPの操作ボタンBに対応する位置に、キートップTを臨ませる貫通孔21aが形成されている。従って、貫通孔21aから指を挿入することで、操作ボタンBである、行き先階ボタンおよびドア開閉ボタンを押下することができる。
【0027】
電源が供給された点灯回路32は、殺菌灯31を点灯させる。
殺菌灯31は、最上段ボタン(「9」ボタン,「10」ボタン)から最下段ボタン(「開」ボタン,「閉」ボタン)までの長さに形成されているため、全部の操作ボタンBを満遍なく、連続的に、殺菌光である紫外光を照射することができる。従って、操作パネル用殺菌装置10は、満遍なく全てのキートップTを殺菌することができる。
【0028】
特許文献2に記載のエレベータの操作ボタン装置では、ボタントップの裏面側に紫外線発光ダイオードが設けられているため、既存のエレベータに設置するときには操作パネル全体を入れ替える必要がある。
【0029】
操作パネル用殺菌装置10は、操作パネルPに被せるように設置されるので、カバー部20内(殺菌灯31)からの配線を操作パネルP内に挿入させ、接続することで、カバー部20の外側から電源線を引っ張ることなく、電源を取得することができる。
【0030】
また、カバー部20の第1カバー部21に太陽光発電モジュールを貼り付け、かご室の照明による発電により、殺菌灯31を点灯させるようにすれば、電源を取るための操作パネルP内への配線が不要になる。このとき、カバー部20の内側に、太陽光発電モジュールによる充電される二次電池を設ければ、かご室の照明が不点灯状態でも殺菌部30は殺菌光を照射することができる。
【0031】
また、電源は、大容量の一次電池としたり、二次電池を単独で使用したりすることもできる。電源を電池とすれば、外部から電源を引き込むことが不要となる。
このように操作パネル用殺菌装置10が構成されているため、既存のエレベータに、容易に設置することが可能である。
【0032】
また、カバー部20は、上端部が、内部空間と外部とが連通した開放状態に形成されているので、殺菌灯31からの熱が上昇して、カバー部20の上から抜けるため、カバー部20内の温度上昇を抑えることができる。
【0033】
更に、カバー部20は、下端部も、内部空間と外部とが連通した開放状態に形成されているので、カバー部20の上部から手を入れたり、下部から手を入れたりすることで、殺菌灯31の装着や取り外しなどメンテナンスが容易である。
カバー部20内の熱が籠もるようであれば、必要に応じて、カバー部20の下端部から上端部へ、または上端部から下端部に抜ける風を送るファンを設けることも可能である。
【0034】
点灯回路32は、消毒中であることを表示パネル33に表示するので、かご室に乗った乗客は、安心して操作ボタンBを操作することができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、エレベータのかご室内に設置された操作パネルPを対象に、操作パネル用殺菌装置10を設置した状態を説明したが、乗り場の操作ボタンである乗り場ボタン(最上段となる上ボタンおよび最下段となる下ボタン)でも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の操作パネル用殺菌装置は、各種ビルやマンション、一般家庭など、各種のエレベータが設置されていれば適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 操作パネル用殺菌装置
20 カバー部
21 第1カバー部
21a 貫通孔
21b 側部
22 第2カバー部
22a 傾斜部
22b 側面部
23 第3カバー部
30 殺菌部
31 殺菌灯
32 点灯回路
33 表示パネル
P 操作パネル
B 操作ボタン
T キートップ
W 壁面
F1 上下方向
F2 左右方向