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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061370
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】乾燥期間推定装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/00 20060101AFI20220411BHJP
   F26B 9/06 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
A01G23/00 551Z
F26B9/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169334
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 礼知
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 巧
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅人
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB01
3L113AC69
3L113BA05
3L113CA02
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】目標含水率になるまでの乾燥期間を推定する。
【解決手段】乾燥期間推定装置100は、伐採された木材の初期含水率を取得する情報取得部210と、取得された初期含水率と、所定の乾燥速度とに基づき、木材の含水率が目標含水率に到達する期間を推定する推定部220と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伐採された木材の初期含水率を取得する情報取得部と、
取得された前記初期含水率と、所定の乾燥速度とに基づき、前記木材の含水率が目標含水率に到達する期間を推定する推定部と、
を備える乾燥期間推定装置。
【請求項2】
前記乾燥速度は、前記木材の樹種、前記木材の太さ、前記木材の長さ、前記木材における樹皮の有無、および、前記木材の伐採時期のうちのいずれか1または複数に基づいて導出される請求項1に記載の乾燥期間推定装置。
【請求項3】
前記木材の樹種、前記木材の太さ、前記木材の長さ、前記木材における樹皮の有無、および、前記木材の伐採時期と、前記初期含水率と、最終含水率と、前記初期含水率から前記最終含水率に到達するまでの期間のうちのいずれか1または複数と、前記初期含水率から最終含水率に到達するまでの期間における木材の保管場所の気象情報とに基づき、機械学習によって前記乾燥速度を補正する機械学習部を備える請求項1または2に記載の乾燥期間推定装置。
【請求項4】
前記乾燥速度は、前記木材の載置場所の状態、前記載置場所における木材の保管態様、および、前記載置場所における空調の状態のうちのいずれか1または複数に基づいて導出される請求項2または3に記載の乾燥期間推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乾燥期間推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
森林で伐採された間伐材等の木材は、街土場において所定期間保管され、保管されている間に自然乾燥される。街土場において自然乾燥された木材は、木材利用設備に輸送される。木材利用設備は、木材を粉砕したり、木材を燃焼したり、木材から化学原料または製紙原料を製造したりする。
【0003】
木材利用設備として、例えば、発電所が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、粉砕装置、乾燥装置、燃焼キルン、蒸気タービン発電機を含む。粉砕装置は、木材を粉砕してチップとする。乾燥装置は、チップを乾燥させる。燃焼キルンは、乾燥したチップを燃焼して水蒸気を生成する。蒸気タービン発電機は、燃焼キルンで生成された水蒸気を利用して発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-13552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、木材利用設備が所望する目標含水率になるまでの、街土場における木材の乾燥期間(保管期間)は、街土場の気温等の様々な要因によって変動する。このため、目標含水率になるまでの乾燥期間を推定できる技術の開発が希求されている。
【0006】
本開示は、目標含水率になるまでの乾燥期間を推定することが可能となる乾燥期間推定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る乾燥期間推定装置は、伐採された木材の初期含水率を取得する情報取得部と、取得された初期含水率と、所定の乾燥速度とに基づき、木材の含水率が目標含水率に到達する期間を推定する推定部と、を備える。
【0008】
また、乾燥速度は、木材の樹種、木材の太さ、木材の長さ、木材における樹皮の有無、および、木材の伐採時期のうちのいずれか1または複数に基づいて導出されてもよい。
【0009】
また、上記乾燥期間推定装置は、木材の樹種、木材の太さ、木材の長さ、木材における樹皮の有無、および、木材の伐採時期と、初期含水率と、最終含水率と、初期含水率から最終含水率に到達するまでの期間のうちのいずれか1または複数と、初期含水率から最終含水率に到達するまでの期間における木材の保管場所の気象情報とに基づき、機械学習によって乾燥速度を補正する機械学習部を備えてもよい。
【0010】
また、乾燥速度は、木材の載置場所の状態、載置場所における木材の保管態様、および、載置場所における空調の状態のうちのいずれか1または複数に基づいて導出されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、目標含水率になるまでの乾燥期間を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】森林で伐採された木材の移動を説明する図である。
図2】実施形態にかかる乾燥期間推定装置を説明する図である。
図3】計測データを説明する図である。
図4】樹種テーブルの一例を説明する図である。
図5】直径テーブルの一例を説明する図である。
図6】長さテーブルの一例を説明する図である。
図7】樹皮テーブルの一例を説明する図である。
図8】伐採時期が冬である場合の街土場における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。
図9】伐採時期が春である場合の街土場における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。
図10】伐採時期が夏である場合の街土場における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。
図11】伐採時期が秋である場合の街土場における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。
図12】伐採時期テーブルの一例を説明する図である。
図13】場所状態テーブルの一例を説明する図である。
図14】保管態様テーブルの一例を説明する図である。
図15】空調のテーブルの一例を説明する図である。
図16】推定部によって導出される乾燥期間のイメージを説明する図である。
図17】実施形態にかかる乾燥期間推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、森林10で伐採された木材の移動を説明する図である。森林10で伐採された木材は、まず、山土場20に保管される。山土場20は、森林10の近傍に設けられた集積場である。山土場20は、例えば、数百m以上数千m以下の広さである。森林10で伐採された木材(例えば、間伐材)は、山土場20において、枝払いされ、適当な長さに玉切りされた状態に加工され、保管される。以下、枝払いされ、適当な長さに玉切りされた木材を「短幹材」と称する。木材は、短幹材に加工されたり、林内輸送されたり、まとまった数量になってから山土場20から街土場30に輸送されたりする。このため、短幹材は、伐採されてから所定期間(例えば、2か月~5か月程度)、山土場20に保管されることになる。なお、山土場20において、短幹材は、1台のトレーラ車に積載可能な本数(例えば、100本)ごとに集積される。山土場20に保管された短幹材は、集積単位(1グループ(一山))ごとにトレーラ車によって街土場(中間土場)30に輸送される。
【0015】
街土場30は、山土場20と木材利用設備40との間に設けられた集積場である。短幹材は、複数の山土場20から1の街土場30に、集積単位で輸送される。街土場30は、例えば、20000m(2ha)程度の広さである。街土場30は、公道に接しており、トレーラ車(牽引自動車)が到達可能な場所に設けられる。公道は、例えば、市道、都道、道道、府道、県道等アスファルト舗装もしくは砕石舗装が為されている道路である。街土場30において、短幹材は、上記集積単位で保管される。街土場30に保管されている間、短幹材の自然乾燥が進む。なお、街土場30における短幹材の保管態様(積み方)は、はい積み、または、平積みである。街土場30に保管された短幹材は、集積単位ごとにトレーラ車によって木材利用設備40に輸送される。
【0016】
木材利用設備40は、短幹材を粉砕したり、短幹材を燃焼したり、短幹材から化学原料または製紙原料を製造したりする設備である。木材利用設備40は、例えば、ペレット製造工場、火力発電所、バイオ燃料製造工場、製紙工場、原料を合成するプラントである。
【0017】
木材利用設備40が所望する目標含水率(例えば25%)になるまでの、街土場30における短幹材の乾燥期間(保管期間)は、街土場30の気温等の様々な要因によって変動する。このため、目標含水率の短幹材を街土場30から出荷する場合、街土場30において、出荷のたびに、短幹材の含水率を計測しなければならなかった。
【0018】
そこで、本実施形態では、街土場30に短幹材を受け入れてから目標含水率になるまでの乾燥期間を推定する乾燥期間推定装置100について説明する。
【0019】
[乾燥期間推定装置100]
図2は、本実施形態にかかる乾燥期間推定装置100を説明する図である。乾燥期間推定装置100は、通信部110と、中央制御部120と、メモリ130とを含む。
【0020】
通信部110は、通信網50を介して、気象サーバ60、伐採サーバ70、出荷サーバ80、利用設備サーバ90と通信を行う。
【0021】
気象サーバ60は、気象情報提供事業者に設けられる。気象情報提供事業者は、例えば、気象庁、POTEKA(登録商標)等である。気象サーバ60は、街土場30の地域の気象情報を保持する。気象情報には、気温、湿度、天気、風向き、風速、日照時間等が含まれる。
【0022】
伐採サーバ70は、伐採業者に設けられる。伐採サーバ70は、森林10の生産者(例えば、森林組合)から取得した地域の森林10の生産計画に基づき、伐採計画を作成する。伐採計画は、伐採する森林10の場所、伐採時期、伐採する面積、伐採度合い(間伐度合、皆伐等)、伐採する樹種、樹種の平均サイズ、樹高、胸高直径、用途別の区分を含む。伐採する森林10、伐採する面積、および、伐採度合いに基づき、伐採する木材の本数が決定される。
【0023】
伐採業者は、伐採計画に基づいて、森林10において木材を伐採し、山土場20において木材を短幹材に加工して保管する。なお、伐採業者は、山土場20へ輸送するまでの間、もしくは、山土場20において木材(短幹材)にICタグを取り付ける。例えば、伐採業者は、山土場20に保管されている集積単位の短幹材に対し、1本の短幹材にICタグを取り付ける。また、本実施形態において、伐採業者は、短幹材の伐採日、樹種、直径D(cm)、長さL(m)、樹皮の有無が実質的に等しい短幹材で集積単位を形成する。
【0024】
また、伐採作業当日の日報には、伐採日、伐採場所、伐採に利用した重機の情報、伐採した木材の情報が、伐採業者によって入力される。重機の情報は、作業機種(アタッチメントを含む)、台数、消費エネルギー量[kWh]、燃料使用量等である。木材の情報は、森林10の立木情報(樹種、胸高直径、樹高、林齢、伐採履歴)、伐採した木材の重量Wi(kg)、直径Dの平均値、長さL、ICタグに記憶された識別番号等である。
【0025】
なお、伐採業者は、伐採した直後に木材を短幹材に加工し、加工した直後に、ICタグがつけられた短幹材の重量Wi、直径D、長さLを計測する。
【0026】
そして、伐採業者は、パーソナルコンピュータ(例えば、ノートPC、タブレット型PC)を通じて、日報およびICタグに情報を入力する。パーソナルコンピュータを通じて日報に入力された情報は、伐採サーバ70に転送され、記憶される。
【0027】
また、伐採サーバ70は、ICタグがつけられた短幹材の重量Wi、直径D、長さL、樹種に基づいて、短幹材の初期含水率Xi(%)を導出する。本実施形態において、伐採サーバ70は、下記式(1)~式(3)に基づき、短幹材の初期含水率Xiを導出する。
体積Ms(m)=(直径Dの平均値÷2÷100)×長さL×π …式(1)
絶乾時の重量Wzs(kg)=絶乾比重Z(kg/m)×体積Ms …式(2)
初期含水率Xi=[重量Wi-絶乾時の重量Wzs]÷絶乾時の重量Wzs×100 …式(3)
なお、絶乾比重Zは、樹種の固有値であり、スギの絶乾比重Zは、例えば、0.38(kg/m)である。
【0028】
そして、伐採サーバ70は、導出した初期含水率Xiを、集積単位を構成する短幹材の全体の初期含水率Xiとして保持する。
【0029】
出荷サーバ80は、短幹材を街土場30から木材利用設備40に出荷する出荷業者に設けられる。出荷サーバ80は、街土場30における短幹材の載置場所の状態、街土場30における短幹材の保管態様、街土場30における空調の有無、山土場20から短幹材を受け入れた日(受入日)、短幹材を木材利用設備40に出荷する日(出荷日)を保持する。載置場所の状態とは、例えば、アスファルト敷、コンクリート敷、砕石敷(排水機構あり)、または、土である。
【0030】
また、出荷業者は、受入日および出荷日に加えて、受入日と出荷日との間の乾燥期間において、所定間隔(例えば、1か月ごと)で、ICタグがつけられた短幹材の表面の含水率(以下、「表面含水率」と称する)を、接触式含水率計を用いて計測してもよい。接触式含水率計によって計測された表面含水率は、出荷サーバ80に保持される。
【0031】
利用設備サーバ90は、木材利用設備40に設けられる。木材利用設備40において、街土場30から輸送されたトレーラ車1台分の短幹材の重量Wf(t)、および、トレーラ車1台に積載された短幹材の総本数が計測される(台貫チェック)。そして、利用設備サーバ90は、計測されたトレーラ車1台分の短幹材の重量Wf、および、トレーラ車1台に積載された短幹材の総本数、ならびに、ICタグに関連付けられた直径D、長さL、および、樹種に基づいて、短幹材が木材利用設備40に輸送された日(輸送日)の最終含水率Xf(%)を導出する。本実施形態において、利用設備サーバ90は、上記式(1)、および、下記式(4)、式(5)に基づき、最終含水率Xfを導出する。
絶乾時の重量Wzt(t)=絶乾比重Z(kg/m)×体積Ms×総本数 …式(4)
最終含水率Xf=[重量Wf-絶乾時の重量Wzt]÷絶乾時の重量Wzt×100 …式(5)
【0032】
中央制御部120は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部120は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部120は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して乾燥期間推定装置100全体を管理および制御する。
【0033】
メモリ130は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。メモリ130は、中央制御部120に用いられるプログラムや各種データを記憶する。
【0034】
本実施形態において、中央制御部120は、情報取得部210、推定部220、機械学習部230としても機能する。
【0035】
情報取得部210は、気象サーバ60から気象情報(気温、湿度、天気、風向き、風速、日照時間)を取得する。また、情報取得部210は、伐採日、樹種、直径D、長さL、および、樹皮の有無、初期含水率Xiを示す情報を、集積単位ごとに伐採サーバ70から取得する。また、情報取得部210は、街土場30における短幹材の載置場所の状態、街土場30における短幹材の保管態様、街土場30における空調の有無、受入日、出荷日、および、表面含水率を示す情報を、出荷サーバ80から取得する。また、情報取得部210は、利用設備サーバ90から最終含水率Xfを示す情報を取得する。
【0036】
そして、情報取得部210は、集積単位ごとに計測データを作成する。図3は、計測データを説明する図である。図3に示すように、計測データは、伐採サーバ70から取得した伐採日、樹種、直径D、長さL、樹皮の有無、初期含水率Xi、および、重量Wiと、出荷サーバ80から取得した載置場所の状態、保管態様、空調の有無、受入日の表面含水率、所定の計測日の表面含水率、出荷日の表面含水率と、利用設備サーバ90から取得した輸送日の最終含水率Xfとが含まれる。
【0037】
情報取得部210は、計測データに示される伐採日から木材利用設備40の輸送日までの期間の気象情報と、計測データとを関連付けて、メモリ130に保存する。このように、集積単位ごとに作成された計測データは、気象情報に関連付けられてメモリ130に蓄積される。
【0038】
推定部220は、情報取得部210によって取得された初期含水率Xiと、所定の乾燥速度とに基づき、街土場30において、短幹材の含水率が所定の目標含水率Xoに到達する期間(乾燥期間)を推定する。乾燥速度は、街土場30に保管された、集積単位を構成する短幹材の樹種、直径D、長さL、樹皮の有無、伐採時期、載置場所の状態、載置場所における短幹材の保管態様、および、載置場所における空調の状態に基づいて導出される。
【0039】
本実施形態において、推定部220は、下記式(6)、式(7)に基づき、乾燥期間Kを導出する。
乾燥期間K=[初期含水率Xi(%)-目標含水率Xo]/乾燥速度(%/日) …式(6)
乾燥速度(%/日)=初期係数α×P1×P2×P3×P4×P5×P6×P7×P8 …式(7)
ここで、初期係数αは、木材乾燥の理論値であり、例えば、0.6である。パラメータP1~パラメータP8は、乾燥速度に寄与する変数である。パラメータP1~パラメータP8は、寄与率が高い、つまり、乾燥速度を高くする要因となる度合いが大きいほど、大きい値となる。
【0040】
パラメータP1は、樹種に関する変数である。図4は、樹種テーブルの一例を説明する図である。樹種と樹種テーブルとによってパラメータP1が決定される。図4に示すように、樹種テーブルでは、樹種がスギである場合に最も大きい値が決定される。また、樹種テーブルでは、樹種がヒノキである場合、スギである場合よりも小さい値が決定される。樹種テーブルでは、樹種がカラマツである場合、スギである場合よりも小さく、ヒノキである場合よりも大きい値が決定される。
【0041】
パラメータP2は、木材の直径Dに関する変数である。図5は、直径テーブルの一例を説明する図である。直径Dと直径テーブルとによってパラメータP2が決定される。図5に示すように、直径テーブルでは、直径Dが小さいほど大きい値が決定される。換言すれば、直径テーブルでは、直径Dが大きいほど小さい値が決定される。
【0042】
パラメータP3は、木材の長さLに関する変数である。図6は、長さテーブルの一例を説明する図である。長さLと長さテーブルとによってパラメータP3が決定される。図6に示すように、長さテーブルでは、長さLが短いほど大きい値が決定される。換言すれば、長さテーブルでは、長さLが長いほど小さい値が決定される。
【0043】
パラメータP4は、樹皮の有無に関する変数である。図7は、樹皮テーブルの一例を説明する図である。樹皮の有無と樹皮テーブルとによってパラメータP4が決定される。図7に示すように、樹皮テーブルでは、樹皮がある場合、樹皮がない場合よりも小さい値が決定される。
【0044】
パラメータP5は、木材の伐採時期に関する変数である。街土場30における木材の含水率(%)を実測し、推移をまとめた結果、下記のようになった。なお、実測した際の街土場30の載置場所は、コンクリート敷とした。また、街土場30において、木材の保管態様は、平積みとした。
【0045】
図8は、伐採時期が冬である場合の街土場30における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。図9は、伐採時期が春である場合の街土場30における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。図10は、伐採時期が夏である場合の街土場30における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。図11は、伐採時期が秋である場合の街土場30における木材の含水率、気温、および、湿度の推移を説明する図である。なお、図8図11中、左の縦軸は、木材の含水率(%)および湿度(%)を示し、右の縦軸は気温(℃)を示す。また、図8図11中、横軸は、日付を示す。図8図11中、丸は含水率を示し、三角は10日間の平均気温を示し、四角は10日間の平均湿度を示す。なお、上記したように、短幹材は、伐採された後、所定期間(例えば、140日程度)、山土場20に保管され、その後、山土場20から街土場30へ輸送される。このため、街土場30の受入日の短幹材の含水率は、初期含水率よりも低い値となっている。
【0046】
図8に示すように、伐採時期が冬(例えば、12月から2月)である場合、街土場30の受入日の木材の含水率が140%程度と低いことが分かった。また、上記したように、木材は山土場20に4か月程度保管されるため、伐採時期が冬である場合、街土場30の保管期間(6月初旬から9月初旬まで)中、街土場30の気温は高温となる。このため、伐採時期が冬である場合、街土場30に受け入れてから、目標含水率Xo(ここでは、25%)に到達するまでの期間が短い(図8では、80日程度)。
【0047】
また、図9に示すように、伐採時期が春(例えば、3月から5月)である場合、街土場30の受入日の木材の含水率は200%程度と高いものの、街土場30の保管期間(8月中旬から11月中旬まで)のうち初期(8月中旬)において、街土場30の気温は、伐採時期が冬である場合よりも高温となる。このため、伐採時期が春である場合、街土場30に受け入れてから、目標含水率Xoに到達するまでの期間が最も短くなる(図9では、70日程度)。
【0048】
また、図10に示すように、伐採時期が夏(例えば、6月から8月)である場合、街土場30の受入日の木材の含水率は160%程度と低いものの、街土場30の保管期間(11月中旬から2月中旬)中、街土場30の気温は、伐採時期が冬である場合よりも低温となる。このため、伐採時期が夏である場合、街土場30に受け入れてから、目標含水率Xoに到達するまでの期間が、伐採時期が冬である場合よりも長くなる(図10では、86日程度)。
【0049】
また、図11に示すように、伐採時期が秋(例えば、9月から11月)である場合、街土場30の受入日の木材の含水率が210%程度と高く、街土場30の保管期間(1月初旬から4月初旬まで)中、街土場30の気温は、伐採時期が冬である場合よりも低温となる。このため、伐採時期が秋である場合、街土場30に受け入れてから、目標含水率Xoに到達するまでの期間が、最も長くなる(図11では、90日程度)。
【0050】
したがって、パラメータP5は、上記伐採時期の結果に基づいて設定される。図12は、伐採時期テーブルの一例を説明する図である。伐採時期と伐採時期テーブルとによって、パラメータP5が決定される。図12に示すように、伐採時期テーブルでは、伐採時期が、秋、夏、冬、春の順で大きい値が決定される。
【0051】
パラメータP6は、街土場30における短幹材の載置場所の状態に関する変数である。図13は、場所状態テーブルの一例を説明する図である。短幹材の載置場所の状態と場所状態テーブルとによって、パラメータP6が決定される。図13に示すように、場所状態テーブルでは、土、砕石敷、コンクリート敷、アスファルト敷の順で大きい値が決定される。
【0052】
パラメータP7は、街土場30における短幹材の保管態様に関する変数である。短幹材の保管態様と保管態様テーブルとによって、パラメータP7が決定される。図14は、保管態様テーブルの一例を説明する図である。図14に示すように、保管態様テーブルでは、短幹材の保管態様が平積みである場合、はい積みである場合よりも大きい値が決定される。また、保管態様テーブルでは、短幹材の保管態様がはい積みである場合、はい積みを構成する短幹材の本数が多いほど小さい値が決定される。
【0053】
パラメータP8は、街土場30における空調の有無に関する変数である。空調の有無と空調テーブルとによってパラメータP8が決定される。図15は、空調テーブルの一例を説明する図である。図15に示すように、空調テーブルでは、空調がある場合、空調がない場合よりも大きい値が決定される。
【0054】
機械学習部230は、情報取得部210によってメモリ130に蓄積される計測データと、計測データを取得したときの過去の気象情報とに基づき、機械学習によって、パラメータP1~パラメータP8を補正する。
【0055】
図16は、推定部220によって導出される乾燥期間Kのイメージを説明する図である。機械学習部230によって、パラメータP1~パラメータP8が補正されると、上記式(7)によって導出される乾燥速度が補正される。そうすると、図16に示す含水率の傾きが補正されることになる。機械学習部230を備えることにより、推定部220は、乾燥期間Kを高精度に推定することが可能となる。
【0056】
[乾燥期間推定方法]
続いて、乾燥期間推定装置100を用いた乾燥期間推定方法について説明する。図17は、本実施形態にかかる乾燥期間推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。図17に示すように、乾燥期間推定方法は、木材情報取得工程S110と、保管情報取得工程S120と、乾燥速度導出工程S130と、推定工程S140とを含む。以下、各工程について説明する。なお、乾燥期間推定方法は、例えば、出荷業者が、山土場20から街土場30に短幹材を受け入れた日に開始される。
【0057】
[木材情報取得工程S110]
情報取得部210は、街土場30に輸送された集積単位の短幹材のうちの1の短幹材に付されたICタグの識別情報を取得する。そして、情報取得部210は、ICタグの識別情報に関連付けられた、伐採日、短幹材の樹種、直径D、長さL、および、樹皮の有無、初期含水率Xiを示す情報を伐採サーバ70から取得する。
【0058】
[保管情報取得工程S120]
情報取得部210は、街土場30における短幹材の載置場所の状態、街土場30における短幹材の保管態様、街土場30における空調の有無を、出荷サーバ80から取得する。
【0059】
[乾燥速度導出工程S130]
推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した樹種と、上記樹種テーブル(図4参照)とに基づき、パラメータP1を決定する。
【0060】
また、推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した直径Dと、上記直径テーブル(図5参照)とに基づき、パラメータP2を決定する。
【0061】
推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した長さLと、上記長さテーブル(図6参照)とに基づき、パラメータP3を決定する。
【0062】
また、推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した樹皮の有無と、上記樹皮テーブル(図7参照)とに基づき、パラメータP4を決定する。
【0063】
推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した伐採日(伐採時期)と、上記伐採時期テーブル(図12参照)とに基づき、パラメータP5を決定する。
【0064】
また、推定部220は、保管情報取得工程S120で取得した短幹材の載置場所の状態と、場所状態テーブル(図13参照)とに基づき、パラメータP6を決定する。
【0065】
推定部220は、保管情報取得工程S120で取得した街土場30における短幹材の保管態様と、保管態様テーブル(図14参照)とに基づき、パラメータP7を決定する。
【0066】
また、推定部220は、保管情報取得工程S120で取得した街土場30における空調の有無と、空調テーブル(図14参照)とに基づき、パラメータP8を決定する。
【0067】
そして、推定部220は、決定したパラメータP1~P8と、上記式(7)を用いて、乾燥速度を導出する。
【0068】
[推定工程S140]
推定部220は、利用設備サーバ90から目標含水率Xoを取得する。そして、推定部220は、木材情報取得工程S110で取得した初期含水率Xiと、S130で導出した乾燥速度と、目標含水率Xoとに基づき、上記式(6)を用いて、乾燥期間Kを導出する。
【0069】
推定部220は、乾燥期間Kを示す情報をICタグの識別番号に関連付けて、メモリ130に保持する。
【0070】
そして、推定部220は、山土場20から街土場30に短幹材を受け入れた日、すなわち、木材情報取得工程S110を実行した日から乾燥期間Kが経過したときに、その旨を報知する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態にかかる乾燥期間推定装置100は、初期含水率Xiに基づき、目標含水率Xoになるまでの乾燥期間Kを推定することができる。したがって、乾燥期間推定装置100は、街土場30において、出荷時に短幹材の含水率を計測せずとも、伐採日からの経過期間を把握するだけで、目標含水率Xoの短幹材を木材利用設備40に出荷することが可能となる。
【0072】
また、上記したように、乾燥期間Kの導出に用いられる乾燥速度は、パラメータP1(樹種)、パラメータP2(直径D)、パラメータP3(長さL)、パラメータP4(樹皮の有無)、パラメータP5(伐採時期)、パラメータP6(載置場所の状態)、パラメータP7(保管態様)、および、パラメータP8(空調の有無)に基づいて導出される。これにより、乾燥期間推定装置100は、乾燥速度を高精度に導出することができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上述した実施形態において、伐採サーバ70が、上記式(1)~式(3)に基づいて、初期含水率Xiを導出する場合を例に挙げた。しかし、伐採サーバ70は、短幹材の重量Wi、直径D、長さL、樹種に、初期含水率Xiが関連付けられたテーブルを保持しておき、テーブルを参照して、短幹材の重量Wi、直径D、長さL、樹種に基づき初期含水率Xiを抽出してもよい。
【0075】
同様に、利用設備サーバ90は、短幹材の重量Wf、直径D、長さL、樹種に、最終含水率Xfが関連付けられたテーブルを保持しておき、テーブルを参照して、短幹材の重量Wf、直径D、長さL、樹種に基づき最終含水率Xfを抽出してもよい。
【0076】
また、上記実施形態において、推定部220が、短幹材の太さとして、直径Dを用いる場合を例に挙げた。しかし、推定部220は、短幹材の半径、または、断面積を短幹材の太さとしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、推定部220が、空調の有無に基づいて、乾燥速度を導出する場合を例に挙げた。しかし、推定部220は、空調の状態、例えば、風速、温度等に基づいて、乾燥速度を導出してもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、推定部220が、短幹材の樹種、直径D、長さL、樹皮の有無、伐採時期、載置場所の状態、保管態様、および、載置場所における空調の有無に基づいて、乾燥速度を導出する場合を例に挙げた。しかし、推定部220は、少なくとも、短幹材の樹種、直径D、長さL、樹皮の有無、伐採時期のうちのいずれか1または複数に基づいて、乾燥速度を導出すればよい。
【0079】
また、上記実施形態において、乾燥期間推定装置100と出荷サーバ80とが別体である場合を例に挙げた。しかし、乾燥期間推定装置100と出荷サーバ80とは一体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、乾燥期間推定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 乾燥期間推定装置
210 情報取得部
220 推定部
230 機械学習部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図15
図16
図17