(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061391
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】実験支援装置、実験支援システム、実験支援方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169376
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】堀 博文
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】入戸野 司
(72)【発明者】
【氏名】小宮 隆之
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GD07
(57)【要約】
【課題】実験における一連の作業を効率化する。
【解決手段】実験支援装置は、命令を含む1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、命令を実行する1つ以上のプロセッサと、を含む。命令は、1つ以上のプロセッサに動作を実行させるよう構成され、動作は、実験条件の入力に応じて、表示装置に、測定を行うべき実験条件を示す条件表TBを表示させることと、条件表TBのセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、表示装置に、測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、セル内に表示させることと、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
命令を含む1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、
前記命令を実行する1つ以上のプロセッサと、を含み、
前記命令は、前記1つ以上のプロセッサに動作を実行させるよう構成され、
前記動作は、
実験条件の入力に応じて、表示装置に、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示させることと、
前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記表示装置に、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示させることと、を含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実験支援装置において、
前記表示装置に、前記測定結果又は前記解析結果の少なくとも一方を前記セル内に表示させることは、前記測定装置を用いて取得した前記測定データが入力される度に、前記表示装置に、前記条件表の表示を更新させること、を含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の実験支援装置において、
前記表示装置に前記条件表を表示させることは、前記測定データ毎に指定される前記実験条件の数である条件数に応じた形式で前記条件表を作成することを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の実験支援装置において、
前記条件数が2のとき、前記表示装置に前記条件表を表示させることは、前記測定データ毎に指定される第1の実験条件の値の集合と前記測定データ毎に指定される第2の実験条件の値の集合が互いに交差するように配置されることを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の実験支援装置において、
前記表示装置に前記条件表を表示させることは、
前記第1の実験条件の値の数値または程度の順に前記第1の実験条件の値が前記条件表内に並べられることと、
前記第2の実験条件の値の数値または程度の順に前記第2の実験条件の値が前記条件表内に並べられることと、を含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項6】
請求項3に記載の実験支援装置において、
前記条件数が2以外のとき、前記表示装置に前記条件表を表示させることは、前記測定データ毎に指定される1つ以上の実験条件の各々の値の集合が互いに交差しないように配置されることを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の実験支援装置において、
前記表示装置に前記条件表を表示させることは、前記1つ以上の実験条件のうちの少なくとも1つの実験条件の値の数値または程度の順に前記少なくとも1つの実験条件の値が前記条件表内に並べられることを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の実験支援装置において、
前記動作は、さらに、指定された1つ以上の解析方法を用いて前記測定データを解析して前記解析結果を示す解析データを生成することを含み、
前記表示装置に、前記測定結果又は前記解析結果の少なくとも一方を前記セル内に表示させることは、前記表示装置に、前記解析結果を前記セル内に表示させること、を含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載の実験支援装置において、
前記動作は、さらに、前記解析データに基づいて、前記解析結果を表示する前記条件表内の1つ以上のセルを色分けすることを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の実験支援装置において、
前記動作は、さらに、前記条件表のセルに対応する実験条件下で前記測定装置を用いて取得した前記測定データのファイル名を、前記測定データを取得したときの実験条件を用いて命名することを含む
ことを特徴とする実験支援装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の実験支援装置と、
前記測定データを前記実験支援装置へ出力する測定装置と、を備える
ことを特徴とする実験支援システム。
【請求項12】
請求項11に記載の実験支援システムにおいて、
前記測定装置は、試料の画像データを取得する顕微鏡装置を含む
ことを特徴とする実験支援システム。
【請求項13】
請求項12に記載の実験支援システムにおいて、
前記顕微鏡装置は、レーザ走査型顕微鏡装置を含む
ことを特徴とする実験支援システム。
【請求項14】
実験条件の入力に応じて、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示することと、
前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示することと、を含む
ことを特徴とする実験支援方法。
【請求項15】
実験条件の入力に応じて、表示装置に、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示させ、
前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記表示装置に、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示させる
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、実験支援装置、実験支援システム、実験支援方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
研究開発、品質解析、生産技術などの部門における工業用製品(例えば、半導体部品、電子部品、素材、金属、自動車部品などを含む)の加工の条件出しは、様々な加工条件で作製されたサンプルを測定装置で測定し、測定結果を比較することによって行われている。
【0003】
このような手法は、バイオ産業においても利用可能である。例えば、培地交換の頻度、継代の回数、インキュベータ内の温度、酸素や二酸化炭素の濃度など様々な異なる培養条件で培養した試料を撮影し、試料の画像を比較することによって、望ましい培養条件を見出すことができる。
【0004】
条件出しのために行われるこれらの実験では、まず、実験計画を作成して実験ノートに記載する。その後、実験ノートに記載された実験計画に従って、測定装置を使用してサンプルを測定し、測定結果を整理して実験ノートに記録する、といった作業が、実験者によって繰り返される。この際、何度も繰り返し発生する実験ノートと測定装置との間の往復が実験者の業務効率を低下させる一要因となっている。
【0005】
このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、取得した複数の測定データをそれぞれ複数の解析手法で解析し、測定データ毎に複数の解析手法による解析結果を並べて表示する三次元形状測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術によれば、測定データを複数の解析手法で解析し、解析結果を並べて表示することで、実験者による測定データの検討を支援することができる。しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合であっても、実験計画は、引き続き実験ノートで管理する必要があるため、実験ノートと装置との間の往復に伴う作業負荷は軽減されない。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、実験における一連の作業を効率化する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る実験支援装置は、命令を含む1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、前記命令を実行する1つ以上のプロセッサと、を含み、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサに動作を実行させるよう構成され、前記動作は、実験条件の入力に応じて、表示装置に、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示させることと、前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記表示装置に、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示させることと、を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係る実験支援システムは、上記の態様に係る実施権支援装置と、前記測定データを前記実験支援装置へ出力する測定装置と、を備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係る実験支援方法は、実験条件の入力に応じて、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示することと、前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示することと、を含む。
【0012】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、実験条件の入力に応じて、表示装置に、測定を行うべき実験条件を示す条件表を表示させ、前記条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置を用いて取得した測定データの入力に応じて、前記表示装置に、前記測定データに基づく測定結果、又は、前記測定データの解析結果の少なくとも一方を、前記セル内に表示させる処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上記の態様によれば、実験における一連の作業を効率化する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実験支援システム1の構成を例示した図である。
【
図3】実験支援装置100の構成を例示した図である。
【
図4】実験支援装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実験支援装置100が行う処理の別の例を示すフローチャートである。
【
図8】条件設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】2条件マトリクスである条件表TBが作成されたメイン画面141を例示した図である。
【
図11】条件一覧マトリクスである条件表TBが作成されたメイン画面141を例示した図である。
【
図12】データ登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】データ取得前のデータ取得画面143を例示した図である。
【
図14】データ取得後のデータ取得画面143を例示した図である。
【
図15】解析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】解析前の解析画面144を例示した図である。
【
図17】解析後の解析画面144を例示した図である。
【
図18】セルの色分け方法について説明するための図である。
【
図19】測定及び解析後のメイン画面141の一例を示した図である。
【
図20】測定及び解析後のメイン画面141の別の例を示した図である。
【
図21】測定及び解析後のメイン画面141の更に別の例を示した図である。
【
図22】測定及び解析後のメイン画面141の更に別の例を示した図である。
【
図23】測定及び解析後のメイン画面141の更に別の例を示した図である。
【
図24】測定及び解析後のメイン画面141の更に別の例を示した図である。
【
図25】2条件マトリクス設定画面を例示した図である。
【
図27】測定装置300の構成を例示した図である。
【
図28】光源ユニット304と撮影ユニット305の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実験支援システム1の構成を例示した図である。実験支援システム1は、
図1に示すように、実験支援装置100と、測定データを実験支援装置100へ出力する1つ以上の測定装置(測定装置200、測定装置300、測定装置400)を含んでいる。実験支援システム1及び実験支援装置100は、異なる実験条件で繰り返し行われる、サンプル又は試料(以降、特に区別しない場合には、どちらも試料と記す。)の測定実験を支援するシステム及び装置であり、測定実験の実施と、測定結果及び実験条件の検討及び評価と、を支援する。
【0016】
具体的には、実験支援システム1及び実験支援装置100は、測定実験の計画(以降、単に実験計画と記す。)の作成と管理、並びに、測定結果及び/又は測定データの解析結果の一覧表示を行う。より具体的には、実験支援システム1及び実験支援装置100は、どのような実験条件で測定を行うべきかを示した条件表を作成し、表示装置に表示する。さらに、実験支援システム1及び実験支援装置100は、作成した条件表の各セルにそのセルに対応する実験条件下で測定した測定データ及び/又は測定データに基づいて生成される解析データを関連付けることで、条件表上に測定結果及び/又は解析結果を一覧表示する。
【0017】
条件表は測定を行うべき実験条件を示している。このため、実験支援システム1及び実験支援装置100では、実験者は、測定を行うべき実験条件を確認するために実験ノートを参照する必要がない。また、実験支援システム1及び実験支援装置100では、条件表上に測定結果及び/又は解析結果が一覧表示される。このため、実験ノートに測定結果や解析結果を整理して記録する必要がなく、また、実験ノートを参照することなく測定結果、解析結果、実験条件の検討が可能である。このように、条件表は従来の実験ノートの役割のうちの少なくとも一部を担うことができる。このため、実験者は条件表を参照することで実験ノートの参照を省略することができる。従って、実験支援システム1及び実験支援装置100によれば、実験ノートと装置との往復を最小限に抑えて実験における一連の作業を効率化することが可能であり、その結果、実験者の負担を軽減することができる。
【0018】
なお、本明細書における測定データとは、測定装置が測定を行うことで生成されるデータであり、測定結果とは、測定データに基づいて表示装置に表示される情報をいう。例えば、測定データが画像データであれば、測定結果は画像データに基づいて表示される画像である。また、本明細書における解析データとは、測定データを所定の解析手法で解析することで実験支援装置によって生成されるデータであり、解析結果とは、解析データに基づいて表示装置に表示される情報をいう。例えば、測定データが画像データであれば、解析データは画像データを解析して得られた画像を代表する代表値などであり、解析結果は代表値などを数字などの記号、色、濃度などによって可視化した画像である。
【0019】
実験条件とは、測定実験により得られる測定結果や解析結果を再現するために必要な条件全般をいう。実験条件には、試料について条件(以降、試料条件と記す。)、測定装置についての条件(以降、装置条件と記す。)、試料と装置以外の実験環境についての条件(環境条件と記す。)などが含まれる。試料条件には、試料が加工製品の場合であれば加工条件(例えば、製品加工時の温度、湿度、加工速度、加工時間など)が含まれる。試料条件には、試料の成分条件(例えば、試料に含有される特定の成分の量、又は、含有比率など)も含まれる。装置条件には、装置の各種設定が含まれる。装置条件には、撮影装置の場合であれば撮影条件(例えば、照明強度、露光時間、撮影倍率など)が含まれる。環境条件には、試料及び/又は測定装置が置かれている環境を特定する条件が含まれる。環境条件には、測定装置によって光学式の測定が行われる場合であれば測定時における環境光の強度(明るさ)などが含まれる。
【0020】
図2は、測定装置200の構成を例示した図である。測定データを生成する測定装置の一例である測定装置200は、試料の画像データを取得する顕微鏡装置であり、より具体的には、レーザ走査型顕微鏡装置である。即ち、実験支援システム1に含まれる又は実験支援装置100に測定データを出力する測定装置には、顕微鏡装置が含まれてもよい。また、測定装置には、レーザ走査型顕微鏡装置が含まれてもよく、測定装置200と実験支援装置100を含む実験支援システム1は、レーザ走査型顕微鏡システムであってもよい。以下、
図2を参照しながら、測定装置200の構成について具体的に説明する。
【0021】
測定装置200は、レーザ光源201、偏光ビームスプリッタ(以降、PBSと記す)202、試料206を走査する走査手段である走査部203、1/4λ板204、対物レンズ205、結像レンズ207、ピンホール板208、光検出器209、AD変換器210、レボルバ211、X-Yステージ214、白色光源215、結像レンズ216、及び、カメラ217を備えている。
【0022】
レボルバ211は、対物レンズ205を切り替える手段であるとともに、対物レンズ205と試料206との間の相対距離を変更する手段としても機能する。即ち、実験支援システム1では、レボルバ211は、試料206を対物レンズ205の光軸方向に走査する走査手段の一例であり、走査部203は、試料206を光軸と直交する方向に走査する走査手段の一例である。また、X-Yステージ214は、試料206を対物レンズ205に対して対物レンズ205の光軸と直交する方向に移動させる手段の一例である。
【0023】
レーザ光源201から出射したレーザ光は、PBS202を透過した後、走査部203に入射する。走査部203は、例えば、互いに直交する方向に光を走査可能なガルバノスキャナとレゾナントスキャナを含んでいる。走査部203で偏向されたレーザ光は、1/4λ板204で直線偏光から円偏光に変換された後に、レボルバ211に装着されている対物レンズ205を経由して試料206へ照射される。
【0024】
測定装置200では、走査部203に含まれる一対のスキャナは対物レンズ205の瞳位置と光学的に共役な位置又はその近傍に配置されている。このため、走査部203がレーザ光を偏向させることで、レーザ光の集光位置が対物レンズ205の焦点面上を、対物レンズの光軸と直交するXY方向に移動し、これによって、試料206がレーザ光で二次元に走査される。
【0025】
ここで、走査部203による二次元走査(XY走査)と、対物レンズ205の光軸方向(Z方向)へのレボルバ211の駆動(Z走査)は、測定装置200を制御する実験支援装置100によって制御される。即ち、実験支援装置100は、走査手段を制御する走査制御手段の一例である。なお、走査部203による二次元走査の手法としては、特に限定しないが、例えば、共焦点顕微鏡で一般的に使用されている、ラスタスキャンが採用されてもよい。また、レボルバ211の回転駆動により測定装置200の光路上に配置される対物レンズ205の切替と、対物レンズ205の光軸と直交する方向(XY方向)へのX-Yステージ214の駆動も、実験支援装置100によって制御される。
【0026】
試料206の表面で反射したレーザ光(以降、反射光と記す)は、対物レンズ205を経由して入射する1/4λ板204で円偏光から直線偏光に変換された後に、走査部203を経由してPBS202に入射する。このとき、PBS202に入射する反射光は、レーザ光源201側からPBS202に入射するレーザ光の偏光面とは直交する偏光面を有しているため、PBS202で反射して、結像レンズ207に導かれる。
【0027】
結像レンズ207は、PBS202で反射した反射光を集光させる。PBS202からの反射光路上に設けられたピンホール板208には、対物レンズ205の焦点面に形成されるレーザ光の集光位置と光学的に共役な位置にピンホールが形成されている。このため、試料206表面のある部分が対物レンズ205によるレーザ光の集光位置にある場合には、この部分からの反射光は、ピンホールに集光されて当該ピンホールを通過する。その一方、試料206表面のある部分が対物レンズ205によるレーザ光の集光位置からずれている場合には、この部分からの反射光は、ピンホールに集光しないので、ピンホールを通過せず、ピンホール板208によって遮断される。
【0028】
ピンホールを通過した光は、光検出器209で検出される。光検出器209は、例えば、光電子増倍管(PMT)である。光検出器209は、このピンホールを通過した光、すなわち、試料206の表面のうち対物レンズ205によるレーザ光の集光位置に一致する部分からの反射光を受光し、その受光光量に応じた大きさの検出信号を、当該部分の輝度を示す輝度信号として出力する。アナログ信号であるこの輝度信号は、AD変換器210でアナログ-デジタル変換された上で、当該部分の輝度を示す輝度値情報として実験支援装置100に入力される。即ち、測定装置200は、この輝度値情報と走査部203からの走査位置情報とからなる測定データを実験支援装置100へ出力する。なお、この場合、測定データは、各座標における輝度値の集合である共焦点画像データであり、実験支援装置100は、測定装置200から取得した測定データに基づいて測定結果の一例である共焦点画像を表示することができる。
【0029】
一方、白色光源215から出射した光(白色光)は、レボルバ211に装着されている対物レンズ205の瞳位置に集光して、その後、試料206に照射される。これにより、ケーラー照明法で試料206が照明される。試料206表面で反射した反射光は、結像レンズ216へ入射し、結像レンズ216は、この反射光をカメラ217の受光面に集光する。
【0030】
カメラ217は、対物レンズ205の焦点面と光学的に共役な位置に受光面を有するカメラであり、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサを有するカラーCCDカメラ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサを有するカラーCMOSカメラである。カメラ217は受光面に集光された反射光を用いて試料206を撮影し、撮影により得られた非共焦点画像データを実験支援装置100へ出力する。即ち、測定装置200は、試料206の非共焦点画像データである測定データを実験支援装置100へ出力する。なお、この場合、測定データは、各座標における色情報の集合である非共焦点画像データであり、実験支援装置100は、測定装置200から取得した測定データに基づいて測定結果の一例である非共焦点画像を表示することができる。
【0031】
図3は、実験支援装置100の構成を例示した図である。測定装置から測定データを取得する実験支援装置の一例である実験支援装置100は、顕微鏡装置である測定装置200とともに顕微鏡システムを構成する顕微鏡制御装置である。ただし、測定装置から測定データを取得する実験支援装置は、必ずしも測定装置を制御しなくともよく、測定装置は、実験支援装置とは別の装置によって制御されてもよい。以下、
図3を参照しながら、実験支援装置100の構成について具体的に説明する。
【0032】
実験支援装置100は、測定装置を制御する装置であり、その測定装置で生成された測定データを取得する。具体的には、実験支援装置100は、測定装置200による試料の撮影を制御し、撮影により得られた測定データを測定装置200から取得する。なお、実験支援装置100は、命令を含む1つ以上の非一時的なコンピュータ読取可能媒体と、命令を実行する1つ以上のプロセッサと、を含むコンピュータであればよく、命令は、1つ以上のプロセッサに所定の動作を実行させるよう構成されていればよい。
【0033】
より具体的には、実験支援装置100は、例えば、
図3に示すように、例えば、1つ以上のプロセッサ110と、1つ以上の記憶装置120と、入力装置130と、表示装置140と、通信装置150を備えていてもよく、それがバス160を通じて接続されていてもよい。
【0034】
1つ以上のプロセッサ110のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などを含むハードウェアであり、1つ以上の記憶装置120に記憶されているプログラム121を実行することで、プログラムされた処理を行う。また、1つ以上のプロセッサ110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを含んでもよい。
【0035】
1つ以上の記憶装置120のそれぞれは、例えば、1つ又は複数の任意の半導体メモリを含み、さらに、1つ又は複数のその他の記憶装置を含んでもよい。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、プログラマブルROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。RAMには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが含まれてもよい。その他の記憶装置には、例えば、磁気ディスクを含む磁気記憶装置、光ディスクを含む光学記憶装置などが含まれてもよい。
【0036】
なお、1つ以上の記憶装置120は、非一時的なコンピュータ読取可能媒体であり、実験支援システム1の記憶部の一例である。記憶装置120の少なくとも1つは、測定装置から取得した測定データを記憶する。
【0037】
入力装置130は、実験者が直接操作する装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。表示装置140は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。ディスプレイには、タッチパネルが内蔵されてもよい。通信装置150は、有線通信モジュールであっても、無線通信モジュールであってもよい。
【0038】
なお、
図3に示す構成は、実験支援装置100のハードウェア構成の一例であり、実験支援装置100はこの構成に限定されるものではない。実験支援装置100は、汎用装置に限らず、専用装置であってもよい。また、実験支援装置100は、測定装置200と一体に構成されてもよい。即ち、実験支援システム1は、単一の装置によって構成されてもよく、複数の装置によって構成されてもよい。
【0039】
以上のように構成された実験支援装置100は、プロセッサ110がプログラム121を実行することで、測定装置200から出力された測定データである共焦点画像データ又は非共焦点画像データに基づいて、測定結果を示す様々な形式の画像データを生成し、様々な形式の測定結果を表示装置140に表示してもよい。
【0040】
例えば、実験支援装置100は、測定装置200を制御して、試料206と対物レンズ205との相対距離を変更してもよく、相対距離が所定値だけ変化する毎に、測定装置200から共焦点画像データと非共焦点画像データを取得してもよい。その後、実験支援装置100は、取得した複数の画像データにおける同一座標の画素(Z方向に直交する平面上のおいて同一座標の画素)の輝度値を比較してもよい。そして、画素毎に、最大の輝度値と、その最大の輝度値を有する画像データを取得したときのZ方向の位置情報(高さ情報)とを検出してもよい。実験支援装置100は、複数の画像データ、画素毎の最大輝度値、及び、高さ情報に基づいて、レーザエクステンド画像データ、カラーエクステンド画像データ、高さ画像データなどの三次元(3D)データを生成してもよい。
【0041】
なお、レーザエクステンド画像データは、複数の共焦点画像データに基づいて生成されたエクステンドフォーカス画像のデータである。また、カラーエクステンド画像データは、複数の非共焦点画像データに基づいて生成されたエクステンドフォーカス画像のデータである。さらに、高さ画像データは、複数の共焦点画像データに基づいて生成された、高さをカラーテーブルの色や濃淡で表した画像のデータである。実験支援装置100は、これらの画像データに基づいて、それぞれの画像を測定結果として二次元表示及び/又は三次元表示してもよい。
【0042】
さらに、実験支援装置100は、対物レンズ205の光軸と直交する方向の座標が互いに異なる試料206の複数の領域が撮影されるように、測定装置200を制御してもよい。また、各領域において、それぞれ光軸方向の座標が互いに異なる複数の位置で撮影が行われるように、測定装置200を制御してもよい。さらに、実験支援装置100は、撮影によって得られた複数の共焦点画像データと非共焦点画像データに基づいて、マップ画像データを生成してもよい。
【0043】
なお、マップ画像データは、複数の共焦点画像データ又は複数の非共焦点画像データに基づいて生成された、複数の異なる画像データを貼り合わせた画像のデータである。実験支援装置100は、マップ画像データに基づいて、マップ画像を測定結果として二次元表示及び/又は三次元表示してもよい。
【0044】
図4は、実験支援装置100が行う処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、実験支援装置100が行う処理の別の例を示すフローチャートである。
図6は、条件表TBを例示した図である。以下、
図4から
図6を参照しながら、実験支援装置100において行われる実験支援方法について説明する。なお、
図4及び
図5に示す処理は、それぞれ実験支援方法の一例であり、例えば、プロセッサ110がプログラム121を実行することにより行われる。
【0045】
図4に示す処理が開始されると、実験者は、入力装置130を用いることで、予め検討した実験条件を実験支援装置100へ入力する。実験支援装置100は、実験者による入力を検出して、条件設定を行う(ステップS1)。より具体的には、プロセッサ110は、実験条件の入力に応じて条件表を作成し、表示装置140に作成した条件表を表示させる。
【0046】
ここで、条件表とは、測定を行うべき実験条件(複数の実験条件の組み合わせを含む)を示す表のことである。条件表は、実験条件毎に1つ以上の専用の領域(セル)を有し、特に限定しないが、典型的には二次元の表(マトリクス)である。また、実験条件の入力とは、例えば、実験条件数の入力、実験条件の名称の入力、実験条件の値の入力、又は、これらの組み合わせの入力をいう。実験条件数は、実験条件の数、より詳細には、実験条件の種類の数をいう。実験条件の値は、数値、文字列などを含み得る。
【0047】
条件設定が終了すると、実験支援装置100は、条件表のセルにデータを登録する(ステップS2)。より具体的には、プロセッサ110は、実験者が選択した条件表のセルに、そのセルに対応する実験条件下で測定装置200を用いて取得した測定データを登録する。即ち、プロセッサ110は、条件表のセルに測定データを関連付ける。なお、セルに登録される測定データは、セル選択前に予め測定装置200を用いて取得した測定データであってもよく、セル選択後に実験支援装置100が測定装置200を制御することで測定装置200を用いて取得した測定データであってもよい。
【0048】
さらに、実験支援装置100は、セル選択後に実験支援装置100が測定装置200を制御することで測定データを取得すると、取得した測定データのファイル名を、測定時の実験条件(つまり、セルに対応する実験条件)を用いて命名してもよい。また、実験支援装置100は、セル選択前に予め取得した測定データをセルに登録するときに、その測定データのファイル名を測定時の実験条件を用いてリネイムしてもよい。即ち、実験支援装置100は、ステップS2において、条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置200を用いて取得した測定データのファイル名を、測定データを取得したときの実験条件を用いて命名してもよい。
【0049】
条件表のセルにデータが登録されると、実験支援装置100は、そのセル内に測定結果を表示する(ステップS3)。より具体的には、プロセッサ110は、表示装置140に、ステップ2で登録された測定データに基づく測定結果を、ステップS2で測定データが登録されたセル内に表示させる。換言すると、プロセッサ110は、ステップS3において、条件表のセルに対応する実験条件下で測定装置200を用いて取得した測定データの入力に応じて、表示装置140に、その測定データに基づく測定結果をセル内に表示させる。
【0050】
その後、実験支援装置100は、終了指示の有無を判断し(ステップS4)、終了指示がない場合には(ステップS4NO)、ステップS2及びステップS3の処理を繰り返す。これにより、条件表のセルに測定データが登録される度に、そのセルに対応する実験条件下で測定された測定データに基づく測定結果が追加される。即ち、プロセッサ110は、測定装置200を用いて取得した測定データが入力される度に、表示装置140に、条件表の表示を更新させる。
【0051】
また、実験支援装置100は、
図4に示す処理の代わりに、
図5に示す処理を行ってもよい。
図5に示す処理が開始されると、実験者は、入力装置130を用いることで、予め検討した実験条件を実験支援装置100へ入力する。実験支援装置100は、実験者による入力を検出して、条件設定を行い(ステップS11)、作成された条件表のセルにデータを登録する(ステップS12)。なお、ステップS11及びステップS12の処理は、
図4のステップS1及びステップS2の処理と同様である。
【0052】
条件表のセルにデータが登録されると、実験支援装置100は、さらに、登録された測定データを解析する(ステップS13)。より具体的には、プロセッサ110は、1つ以上の解析方法を用いて測定データを解析して解析結果を示す解析データを生成する。1つ以上の解析方法は、実験者によって明示的に指定されてもよい。また、実験支援装置100における過去の解析履歴などに基づいて決定された1つ以上の解析方法が測定データに対して指定されてもよい。
【0053】
ステップS13で生成された解析データは、測定データとともにセルに登録されてもよい。即ち、プロセッサ110は、条件表のセルに測定データと解析データを関連付けてもよい。また、実験支援装置100は、ステップS13において、解析データに対応する測定データを取得したときの実験条件を用いて解析データのファイル名を命名してもよく、実験条件と解析に用いた解析方法の名称とを用いて解析データのファイル名を命名してもよい。
【0054】
測定データの解析が終了すると、実験支援装置100は、測定データと解析データが登録されたセルを色分けする(ステップS14)。具体的には、プロセッサ110は、ステップS13で生成された解析データに基づいて、解析データが登録されたセルに割り当てる色を決定することで、条件表内のセルを色分けする。より具体的には、プロセッサ110は、解析データの値に応じてセルに割り当てる色を決定してもよく、例えば、値が大きいほどセルの色を赤などの暖色に近づけ、値が小さいほどセルの色を青などの寒色に近づけてもよい。また、色分けは、色相の違いによって異なる色をセルに割り当ててもよく、明度の違いによって異なる色をセルに割り当ててもよく、また、色相と明度の組み合わせの違いによって異なる色をセルに割り当ててもよい。また、色には、有彩色に加えて、無彩色も含まれる。即ち、グレースケールで色分けが行われてもよい。
【0055】
実験支援装置100は、色分けが終了すると、そのセル内に測定結果と解析結果の少なくとも一方を表示する(ステップS15)。より具体的には、プロセッサ110は、表示装置140に、ステップ12で登録された測定データに基づく測定結果と、ステップS13で生成された解析データに基づく解析結果の少なくとも一方を、測定データと解析データが登録されたセル内に表示させる。このとき、セルの色(より詳細には、セルの背景色)は、ステップS14での色分けによって決定された色で表示される。
【0056】
その後、実験支援装置100は、終了指示の有無を判断し(ステップS16)、終了指示がない場合には(ステップS16NO)、ステップS12からステップS15の処理を繰り返す。これにより、条件表のセルに測定データと解析データが登録される度に、そのセルに対応する実験条件下で測定された測定データに基づく測定結果と解析結果の少なくとも一方が追加で表示される。なお、以降では、測定結果と解析結果を特に区別しない場合には、これらを実験結果と総称する。
【0057】
実験支援装置100は、
図4又は
図5に示す実験支援方法を実施することで、
図6に示すような測定すべき実験条件毎にセルを有する条件表TBを作成し、その条件表TB内に実験結果を一覧表示することできる。これにより、実験者は、
図6に示すように、条件表TBを参照することで、測定すべき実験条件について測定済みの実験条件か未測定の実験条件かを区別して認識することができる。このため、実験ノートを参照することなく、実験者が新たに行うべき測定における実験条件を特定し、実験を効率よく継続することができる。また、測定すべき実験条件を見逃しにくくなるため、測定もれの発生を未然に回避することができる。
【0058】
また、実験結果が一覧表示されるため、実験条件の違いに起因する実験結果の傾向や異常の把握が容易になる。さらに、セルにデータが登録される度に条件表の表示が更新されるため、測定データを取得しながら得られた実験結果を随時評価することができる。従って、全ての実験条件での測定が終了する前に特定の実験条件と実験結果との相関の有無を予測することが可能である。特に、
図5に示す実験支援方法を実施することで、
図6に示すように条件表のセルが色分けされるため、特定の実験条件と実験結果との相関の有無をより直感的に把握することができる。このため、実験結果を踏まえた各実験条件での測定の要否を容易に且つ早期に判断することが可能となり、例えば、相関のない実験条件のみが異なる実験条件の組み合わせでの測定を省略するなどして、実験者の作業負担を軽減することができる。以上のように、上述した実験支援装置100及び実験支援システム1によれば、実験ノートと装置の間の往復を大幅に減少させることが可能であり、実験における一連の作業を効率化することできる。
【0059】
なお、
図4では、セルに測定データが登録される例を、
図5では、セルに測定データと解析データが登録される例を示したが、セルには測定データと解析データの少なくとも一方が登録されればよく、その結果として、セルに測定結果と解析結果の少なくとも一方が表示されればよい。従って、セルには、解析データのみが登録されてもよく、解析結果のみが表示されてもよい。また、各セルには、1つ以上の測定データと1つ以上の解析データの少なくとも一方が登録されればよい。従って、各セルには、同じ実験条件で測定された複数の測定データが登録されてもよく、登録された複数の測定データのうちのいずれかの測定結果が各セルに表示されてもよく、複数の測定結果が各セルに表示されてもよい。また、複数の解析データが各セルに登録されてもよい。登録された複数の解析データのうちのいずれかの解析結果が各セルに表示されてもよく、複数の解析結果が各セルに表示されてもよく、複数の解析結果を用いて算出された1つ以上の新たな解析結果(例えば、複数の解析結果の平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値など)が各セルに表示されてもよい。
【0060】
図5に示す実験支援方法の各工程における処理について、さらに詳細に説明する。
図7は、メイン画面141を例示した図である。
図8は、条件設定処理の一例を示すフローチャートである。
図9は、条件設定手順を説明するための図である。
図10は、2条件マトリクスである条件表TBが作成されたメイン画面141を例示した図である。
図11は、条件一覧マトリクスである条件表TBが作成されたメイン画面141を例示した図である。以下、
図7から
図11を参照しながら、
図5のステップS11の条件設定処理についてさらに詳細に説明する。
【0061】
実験支援装置100のプロセッサ110が実験支援アプリケーションプログラム(以降、単に、プログラムと記す。)を実行すると、
図7に示すメイン画面141が表示装置140に表示される。
図8に示す条件設定処理は、例えば、実験者がメイン画面141の条件設定ボタン(ボタンB1)を押下することで開始される。
【0062】
図8に示す処理が開始されると、プロセッサ110は、まず、
図9に示す条件設定画面142を表示装置140に表示させる(ステップS21)。その後、プロセッサ110は、実験者が条件設定画面142に入力した実験条件を取得する(ステップS22)。実験者は、
図9に示すように、条件設定画面142上で、測定データ毎に指定される実験条件の数である条件数を指定可能である。実験者が条件設定画面142上で条件数を指定すると、プロセッサ110は、指定された条件数を取得する。また、実験者は、
図9に示すように、入力領域142a内で、条件名と条件値を指定可能である。実験者が入力領域142a内で条件名と条件値を指定すると、プロセッサ110は、指定された条件名と条件値を取得する。
【0063】
その後、プロセッサ110は、指定された条件数を判定し(ステップS23)、条件数に応じた形式で条件表を作成し(ステップS24、ステップS25)、表示装置140に、作成した表をメイン画面141に表示させる(ステップS26)。
【0064】
具体的には、プロセッサ110は、ステップS23において、条件数が2であると判定すると、条件表として2条件マトリクス表を作成し(ステップS24)、表示装置140に、作成した2条件マトリクス表をメイン画面141上に表示させる(ステップS26)。より具体的には、プロセッサ110は、条件数が2であると判定すると、
図9に示すように、入力領域142aに条件名を入力する2つのセルと、条件名毎に条件値を入力する複数のセルを作成し、実験者に条件名と条件値の入力を促す。その後、実験者が条件名(
図9では、温度と湿度)と条件値(
図9では、温度の条件値として20、25、30、湿度の条件値として70、80、83、86)を入力すると、プロセッサ110は、2条件マトリクス表である条件表TBを作成し、表示装置140に、
図10に示すように、メイン画面141上に条件表TBを表示させる。
【0065】
なお、2条件マトリクス表とは、測定データ毎に指定される2つの実験条件のうちの一方を第1の実験条件とし、他方を第2の実験条件とするとき、第1の実験条件の値の集合C1と第2の実験条件の値の集合C2が互いに交差するように配置された条件表のことをいう。なお、
図10には、集合C1と集合C2が直交するように配置された例が示されている。
【0066】
また、2条件マトリクス表内では、第1の実験条件の値の数値または程度の順に第1の実験条件の値が並べられることが望ましく、第2の実験条件の値の数値または程度の順に第2の実験条件の値が並べられることが望ましい。なお、
図10には、第1の実験条件(温度)の値がその数値の昇順(20、25、30の順)に並べられ、第2の実験条件(湿度)の値がその数値の昇順(70、80、83、86の順)に並べられた例が示されている。
【0067】
一方、プロセッサ110は、ステップS23において、条件数が2以外であると判定すると、条件一覧マトリクス表を作成し(ステップS25)、表示装置140に、作成した条件一覧マトリクス表をメイン画面141上に表示させる(ステップS26)。より具体的には、プロセッサ110は、条件数が2以外であると判定すると、入力領域142aに条件名を入力する条件数と同じ数のセルと、条件名毎に条件値を入力する複数のセルを作成し、実験者に条件名と条件値の入力を促す。その後、実験者が条件名(例えば、温度と湿度と照明)と条件値(例えば、温度の条件値として20、25、30、湿度の条件値として70、80、83、86、照明の条件値として“強”、“弱”)を入力すると、プロセッサ110は、条件一覧マトリクス表である条件表TBを作成し、表示装置140に、
図11に示すように、メイン画面141上に条件表TBを表示させる。
【0068】
なお、条件一覧マトリクス表とは、測定データ毎に指定される1つ以上の実験条件の各々の値の集合が互いに交差しないように配置された条件表のことをいう。なお、
図11には、第1の実験条件の値の集合C1と第2の実験条件の値の集合C2と第3の実験条件の値の集合C3が平行に配置された例が示されている。
【0069】
また、条件一覧マトリクス表内では、1つ以上の実験条件のうちの少なくとも1つの実験条件の値の数値または程度の順に少なくとも1つの実験条件の値が並べられることが望ましい。なお、
図11には、第1の実験条件(温度)の値がその数値の昇順(20、25、30の順)に並べられた例が示されている。
【0070】
図12は、データ登録処理の一例を示すフローチャートである。
図13は、データ取得前のデータ取得画面143を例示した図である。
図14は、データ取得後のデータ取得画面143を例示した図である。以下、
図12から
図14を参照しながら、
図5のステップS12のデータ登録処理についてさらに詳細に説明する。
【0071】
図12に示すデータ登録処理は、例えば、実験者がメイン画面141上に表示された条件表のセルを選択することで開始される。より具体的には、
図10に示す2条件マトリクス表の空欄のセル、又は、
図11に示す条件一覧マトリクス表の空欄のセルを選択することで、開始される。なお、実験者は、セルを選択する前、又は、セルを選択した後に、測定装置200のX-Yステージ214上に選択するセル又は選択したセルに対応する実験条件に合致する試料206を配置する。
【0072】
図12に示す処理が開始されると、プロセッサ110は、まず、
図13に示すデータ取得画面143を表示装置140に表示させる(ステップS31)。データ取得画面143には、測定装置200で取得した画像データに基づいて画像を表示する領域R1と、マップ画像と現在の観察位置を表示する領域R2と、測定装置200を用いた観察の設定を行う領域R3と、ボタンB2押下後に行われるデータ取得処理の設定を行う領域R4が含まれている。
【0073】
なお、
図12では、領域R1にライブ画像が表示されている。また、領域R3には、測定装置200が非共焦点画像データ(カラー)と共焦点画像データ(レーザ)の両方を、5倍の対物レンズ(ズーム倍率1倍)を用いて取得する設定例が示されている。また、領域R4には、1つのエリアに対して3Dデータ(レーザエクステンド画像データ、カラーエクステンド画像データ、高さ画像データ)を自動で取得する設定例が示されている。
【0074】
実験者がデータ取得画面143上で必要な設定を行った後にボタンB2を押下すると、プロセッサ110は、測定データを取得する(ステップS32)。具体的には、プロセッサ110が測定装置200を制御し、測定装置200がプロセッサ110の制御下で試料206の測定を行う。そして、プロセッサ110は、測定により得られた測定データを測定装置200から取得する。より具体的には、測定装置200は、試料206と対物レンズ205との相対距離が異なる複数の状態のそれぞれで画像データを生成するzスタック撮影を行い、複数の共焦点画像データと複数の非共焦点画像データを測定データとして実験支援装置100へ出力する。実験支援装置100はこれらの画像データを測定データとして取得する。
【0075】
測定データを取得したプロセッサ110は、測定データのファイル名をセルに対応する実験条件を用いて命名する(ステップS33)。プロセッサ110は、例えば、温度20、湿度70の実験条件下で取得した測定データのファイル名を、“temperature20_humidity70”と命名し、記憶装置120に保存してもよい。
【0076】
その後、プロセッサ110は、表示装置140に、記憶装置120に保存した測定データに基づく測定結果を、データ取得画面143上に表示させる(ステップS34)。より具体的には、プロセッサ110は、
図14に示すように、表示装置140に、データ取得画面143の領域R1に、測定結果を表示させる。なお、
図14には、測定結果として、レーザエクステンド画像を三次元表示する例を示したが、測定結果は、この例に限らない。カラーエクステンド画像、高さ画像を測定結果として表示してもよい。
【0077】
実験者は、表示された測定結果を確認して、解析を行うか否かを選択してもよい。測定データに対して解析を行う場合には、実験者は、例えば、データ取得画面143に表示されたボタンB3を押下する。解析を行わない場合には、実験者は、再度、試料206の観察を行い、測定データを取り直してもよい。
【0078】
図15は、解析処理の一例を示すフローチャートである。
図16は、解析前の解析画面144を例示した図である。
図17は、解析後の解析画面144を例示した図である。以下、
図15から
図17を参照しながら、
図5のステップS13の解析処理についてさらに詳細に説明する。
【0079】
図15に示す解析処理は、例えば、実験者がデータ取得画面143上に表示された測定結果を確認し、解析を指示することで開始される。より具体的には、
図14に示すデータ取得画面143のボタンB3を押下することで、開始される。
【0080】
図15に示す処理が開始されると、プロセッサ110は、まず、
図16に示す解析画面144を表示装置140に表示させる(ステップS41)。解析画面144において、画面左側の領域には解析対象の測定データのファイルF1がファイル名とともに表示される。また、画面中央の領域144aには、画面右側の領域に表示されている各種画像のサムネイル(レーザエクステンド画像D1、カラーエクステンド画像D2、高さ画像D3、マップ画像D4)を用いて選択された画像が二次元表示又は三次元表示される。なお、
図16には、領域144aにレーザエクステンド画像D1が三次元表示されている例が示されている。
【0081】
その後、実験者が解析手法と注目領域(ROI)を指定することで、プロセッサ110は、測定データを解析する(ステップS42)。より具体的には、プロセッサ110は、解析画面144上のショートカットバーに表示されている解析手法(解析A、解析B、解析C、解析D)から実験者によって選択された解析手法を用いて、領域144aに表示されている画像上で指定された注目範囲ROIを解析し、解析データを生成する。
【0082】
解析データを生成したプロセッサ110は、解析データのファイル名を、測定データを取得したときの実験条件を用いて命名する(ステップS43)。なお、プロセッサ110は、実験条件に加えて解析手法の名称を用いて解析データのファイル名を命名し、記憶装置120に保存してもよい。
【0083】
その後、プロセッサ110は、表示装置140に、解析データに基づいて解析結果を解析画面144上に表示させる(ステップS44)。より具体的には、プロセッサ110は、
図17に示すように、表示装置140に、領域144a内の注目領域ROI近傍に、解析結果RSを表示させる。なお、
図17には、領域144aにレーザエクステンド画像を二次元表示した上で解析手法Aを用いて注目領域ROIを解析し、解析結果RSとして、表面粗さのパラメータであるSa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)、Sq(二条平均平方根高さ)が計測された様子が示されている。即ち、この例では、解析手法Aは、表面粗さ計測の手法である。
【0084】
図17では、解析手法の一例として表面粗さ計測を例示したが、プロセッサ110が行う解析手法には、表面粗さ計測の他に、幅計測、段差(高さ)計測、体積計測、面角度計測、球計測など、様々な計測が含まれ得る。さらに、画像上の任意のラインに沿った輝度や高さを計測するプロファイル計測、基準画像との高さプロファイルの差分を計測する差分解析、複数の注目領域(面)間の段差を計測する面間段差計測、特定形状の個数や面積などを計測する平面計測、画像データを二値化処理して画像内から抽出した領域を計測する粒子解析などが含まれてもよい。
【0085】
図18は、セルの色分け方法について説明するための図である。以下、
図18を参照しながら、
図5のステップS14の色分け処理についてさらに詳細に説明する。
【0086】
解析により解析データが生成され、測定データの解析結果が確定すると、プロセッサ110は、測定データ及び解析データが登録された条件表内のセルを、解析データに基づいて色分けする。色分けの方法は特に限定しないが、例えば、
図18に示すように、解析データの値(解析値)に対して予め色を割り当てることで、解析値に応じた色を条件表内のセルに割り当ててもよい。
【0087】
図19から
図24は、それぞれ測定及び解析後のメイン画面141の例示した図である。以下、
図19から
図24を参照しながら、
図5のステップS15の表示処理についてさらに詳細に説明する。
【0088】
測定及び解析が終了すると、プロセッサ110は、表示装置140に、メイン画面141を最前面に表示させ、
図19に示すように、ステップS12のデータ登録処理で選択した条件表TBのセル(例えば、温度20、湿度70の実験条件に対応するセル)内に測定結果MS1を表示させる。セル内に表示する結果(測定結果、解析結果)は、ショートカットバーに表示されたボタン操作で切り替えることができる。
図19には、測定ボタンが有効化され、その結果、条件表TB内に測定結果が表示された様子が示されている。なお、セル内に表示する結果は、ボタンに限らず任意のUIコンポーネントによって切り替えることが可能であり、例えば、タブ操作によって切り替え可能であってもよい。
【0089】
さらに、別のセル(例えば、温度25、湿度70の実験条件に対応するセル)が選択され、測定及び解析が終了すると、プロセッサ110は、
図20に示すように、新たに選択されたセル内に測定結果MS2を表示させる。このようにセルの選択、測定、解析が繰り返されることで、条件表TB内のセルに測定結果が1つずつ追加される。このため、測定していない実験条件(例えば
図21の条件表TBが表示されている場合であれば、温度25、湿度80の実験条件)を一目で認識することができる。
【0090】
また、ショートカットバー上のボタンを操作するだけで、
図22及び
図23に示すように、解析結果をセル内に表示した条件表TBを表示することもできる。なお、
図22には、解析手法A(例えば、表面粗さ測定)を用いた解析結果をセル内に表示した例が、
図23には、解析手法D(例えば、体積測定)を用いた解析結果をセル内に表示した例が示されている。
【0091】
解析結果が条件表TBに一覧表示されることで、実験条件と実験結果との相関を、条件表TBを参照するだけで把握することができる。例えば、
図22に示す条件表TBを参照することで、温度に依存して表面粗さが粗くなる傾向を把握することができる。また、
図23に示す条件表TBを参照することで、温度が高いほど、また、湿度が高いほど、体積が増加する傾向を把握することができる。また、解析結果に応じてセルが色分けされていることで、これらの傾向を一目で把握することが可能であり、従来の実験ノートでの検討に比べて、実験者の作業効率を大幅に改善することができる。
【0092】
図19から
図23では、条件表TBとして2条件マトリクス表が表示される例を示したが、メイン画面141には、
図24に示すように、条件表TBとして条件一覧マトリクス表が表示されてもよい。なお、条件一覧マトリクス表がメイン画面141に表示される場合には、ショートカットバーに2条件マトリクスボタンが追加されてもよい。条件一覧マトリクス表での表示では、実験結果が一方向に整列されるため、ある特定の1つの実験条件と実験結果との相関を容易に把握することが可能である。これに対して、2条件マトリクス表を用いた表示では、実験結果が2次元的に整列されるため、2つの実験条件と実験結果との相関を容易に把握することが可能であり、条件一覧マトリクス表での表示よりも効率よく実験結果を評価することができる。
【0093】
実験者が2条件マトリクスボタンを押下すると、プロセッサ110は、例えば、
図25に示す2条件マトリクス設定画面145を、表示装置140に表示させる。2条件マトリクス設定画面145では、実験者は、条件一覧マトリクス表を構成する複数の実験条件の中から2条件マトリクス表を構成する2つの実験条件を選択条件として選択し、さらに、残りの実験条件の値を固定する条件を固定条件として選択することができる。なお、
図25では、温度と湿度を選択条件として選択し、残りの実験条件である照明の値を“強”に固定する設定が例示されている。
【0094】
プロセッサ110は、
図25に示す設定を実行することで、
図24に示す条件一覧マトリクス表から
図23に示す2条件マトリクス表を作成し、表示装置140に表示される条件表TBを2条件マトリクス表に変更することができる。2条件マトリクス表を表示することで実験条件と実験結果の相関を、条件一覧マトリクス表を表示した場合に比べて容易に把握することができる。また、条件一覧マトリクス表を一旦作成することで、条件一覧マトリクス表に含まれる任意の実験条件を用いて2条件マトリクス表を簡単な操作で作成することができる。このため、実験条件を切り替えて様々な実験条件の組み合わせに対応する2条件マトリクス表を表示することで、実験結果と相関のある実験条件を見つけ出すことができる。
【0095】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の実験支援装置、実験支援システム、実験支援方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0096】
例えば、上述した実施形態では、工業用顕微鏡装置である測定装置200で測定した測定データを用いて実験支援装置100が実験支援方法を実施する例を示したが、実験支援装置100は、他の測定装置で測定した測定データを用いてもよい。測定装置は、例えば、生物用顕微鏡装置、STM(走査型トンネル顕微鏡)やAFM(原子間力顕微鏡)に代表されるSPM(走査型プローブ顕微鏡)、白色干渉計などであってもよい。また、測定装置は、任意の撮影装置であってもよく、例えば、培養容器に収容された試料を撮影する撮影装置である測定装置300で測定した測定データを用いてもよい。
【0097】
図26は、測定装置300の斜視図である。
図27は、測定装置300の構成を例示した図である。
図28は、光源ユニット304と撮影ユニット305の構成を例示した図である。
図26に示す測定装置300は、試料をインキュベータから取り出すことなく撮影するために、例えば、インキュベータ内に配置された状態で使用されてもよい。以下、
図26から
図28を参照しながら、測定装置300の構成について説明する。
【0098】
測定装置300は、
図26及び
図27に示すように、培養容器10が測定装置300の透過窓301に載置された状態でインキュベータ内に配置され、例えば、実験支援装置100からの指示に従って培養容器10内の試料を撮影し、画像データを生成する。なお、透過窓301は、測定装置300の筐体302の上面を構成する透明な天板であり、培養容器を載置する載置面を構成する。透過窓301は、例えば、ガラスや透明な樹脂などからなる。
【0099】
測定装置300は、
図26に示すように、培養容器10が配置される透明な透過窓301を上面とする箱型の筐体302と、透過窓301(載置面)上で培養容器10を所定の位置へ位置決めする位置決め部材20を備えている。なお、位置決め部材20は、筐体302に固定されている。ただし、位置決め部材20は、必要に応じて取り外すことが可能であり、使用される容器に応じて形状の異なる別の位置決め部材と交換されてもよい。
【0100】
測定装置300は、
図27及び
図28に示すように、さらに、筐体302内を移動するステージ303と、試料を照明する1対の光源ユニット304と、試料を撮影する撮影ユニット305と、を備えている。ステージ303と光源ユニット304と撮影ユニット305は、筐体302内部に収容されている。光源ユニット304と撮影ユニット305は、ステージ303上に設置されていて、筐体302内でステージ303が移動することで培養容器10に対して移動する。ステージ303は、透過窓301(載置面)と平行で且つ互いに直交しているX方向とY方向に移動可能である。ただし、ステージ303は、さらに、X方向とY方向の両方に直交するZ方向にも移動してもよい。
【0101】
なお、
図27及び
図28には、光源ユニット304と撮影ユニット305がステージ303上に設置され、その結果、一体となって筐体302内を移動する例が示されているが、光源ユニット304と撮影ユニット305は、それぞれ独立して筐体302内を移動してもよい。また、
図27及び
図28には、1対の光源ユニット304が撮影ユニット305を挟んで左右に配置されている例を示したが、光源ユニット304の配置と数はこの例に限らない。例えば、光源ユニット304は、ステージ303上に3つ以上設けられてもよく、1つだけ設けられてもよい。
【0102】
光源ユニット304は、
図28に示すように、光源306と、拡散板307を備えている。光源306は、例えば、発光ダイオード(LED)などを含んでいる。光源306は、白色LEDを含んでもよく、R(赤)、G(緑)、B(青)など、複数の異なる波長の光を出射する複数のLEDを含んでもよい。光源306から出射した光は、拡散板307に入射する。
【0103】
拡散板307は、光源306から出射した光を拡散させる。拡散板307は、特に限定しないが、例えば、表面に凹凸を形成したフロスト型の拡散板である。ただし、拡散板307は、表面をコーティングしたオパール型の拡散板であってもよく、その他のタイプの拡散板であってもよい。さらに、拡散板307には拡散光の出射領域を制限するためのマスク307aが形成されてもよい。拡散板307から出射した光は、様々な方向に進行する。
【0104】
撮影ユニット305は、
図28に示すように、光学系308と、撮像素子309を備えている。光学系308は、透過窓301を透過することによって筐体302内に入射した光を集光する。光学系308は、特に限定しないが、例えば、有限な位置に像を形成する有限遠補正型の対物レンズである。ただし、光学系308は、無限遠補正型の対物レンズを含んでもよく、光学系308全体として有限遠補正光学系を構成すればよい。試料が存在する培養容器10の底面に焦点を合わせた光学系308が筐体302内に入射した光を撮像素子309上に集光することで、撮像素子309上に試料の光学像が形成される。
【0105】
撮像素子309は、検出した光を電気信号に変換する光センサである。撮像素子309は、具体的には、イメージセンサであり、特に限定しないが、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。
【0106】
以上のように構成された測定装置300では、位相物体である培養容器10内の試料を可視化するために、偏射照明が採用されている。具体的には、光源306が発した光は、拡散板307で拡散し、光学系308を経由することなく筐体302外へ出射する。即ち、光源ユニット304は、光学系308を経由することなく、筐体302外へ向けて様々な方向へ進行する光を出射する。その後、筐体302外へ出射した光のうちの一部が、例えば、培養容器10の上面などで反射することで、試料上方で偏向され、さらに、試料上方で偏向された光のうちの一部が、試料に照射され、試料及び透過窓301を透過することによって筐体302内に入射する。そして、筐体302内に入射した光のうちの一部が、光学系308によって集光され、撮像素子309上に試料の像を形成する。即ち、光学系308は、透過窓301に載置された培養容器10内の試料の像を撮像素子309上に形成するために、透過窓301を透過することによって筐体302内に入射した光を集光する。最後に、測定装置300は、撮像素子309から出力された電気信号に基づいて試料の画像データを生成し、画像データを測定データとして実験支援装置100へ出力する。
【0107】
実験支援装置100は、測定装置300から取得した測定データに基づいて、上述した実験支援方法を実施してもよい。なお、測定装置300を用いて実験を行う場合、実験条件としては、特に限定しないが、例えば、培地交換の頻度、培地の種類、細胞培養の継代数、培養時間、温度、CO2濃度、O2濃度などが例示される。また、解析手法としては、特に限定しないが、例えば、細胞数、細胞密度、コロニー数、増殖速度、分裂回数、コロニー面積、コロニー高さを計測する手法が例示される。
【0108】
上述した実施形態では、条件表内の選択したセルに合わせて、試料を手動で測定装置に配置して測定を行う例を示したが、試料の配置はセルの選択に応じて自動的に行われてもよい。例えば、予め様々な実験条件に応じた試料が保管されていて、実験者が選択したセルに応じた試料が搬送装置によって測定装置へ搬送されてもよい。この場合、搬送装置は、例えば、実験条件に応じた試料を、試料を収容する容器に付された識別情報に基づいて特定してもよい。識別情報は、例えば、バーコードなどの一次元コードであってもよく、QRコード(登録商標)などの二次元コードであってもよい。
【0109】
また、搬送装置は、様々な実験条件に応じた試料を順番に測定装置に配置してもよく、測定装置は、搬送装置によって搬送された試料を順番に測定して測定データを生成してもよい。測定装置は、測定時に試料の容器に付された識別コードで試料に応じた実験条件を特定してもよく、特定した実験条件を測定データとともに実験支援装置へ出力してもよい。この場合、実験支援装置は、測定装置から出力される実験条件に基づいて、条件表が作成された後、実験者によるセルの選択なしに自動的に条件表のセルに測定データ及び解析データを登録してもよい。
【0110】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味し、さらに、“少なくともAに部分的に基づいて”をも意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよく、Aの一部に基づいてよい。
【0111】
本明細書において、名詞を修飾する“第1の”、“第2の”などの用語は、名詞で表現される要素の量又は順序を限定するものではない。これらの用語は、2つ以上の要素間を区別するために用いられ、それ以下でもそれ以上でもない。従って、“第1の”と“第2の”要素が特定されていることは、“第1の”要素が“第2の”要素に先行することを意味するものではなく、また、“第3の”要素の存在を否定するものでもない。
【符号の説明】
【0112】
1 ・・・実験支援システム
100 ・・・実験支援装置
110 ・・・プロセッサ
120 ・・・記憶装置
121 ・・・プログラム
140 ・・・表示装置
200、300、400・・・測定装置
206 ・・・試料
C1、C2 ・・・実験条件
C2 ・・・実験条件
MS1、MS2 ・・・測定結果
RS ・・・解析結果
TB ・・・条件表